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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ブレーカー及び安全回路
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/04 20060101AFI20220107BHJP
   H01H 37/54 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01H37/04 A
H01H37/54 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018148678
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020024852
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 将起
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-162448(JP,A)
【文献】特開2003-331702(JP,A)
【文献】特開2013-186953(JP,A)
【文献】特開平09-161650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/04
H01H 37/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
板状に形成され弾性変形する弾性部及び該弾性部の先端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、
前記固定接点、前記可動片及び前記熱応動素子を収容する第1ケースと、
前記可動片及び前記熱応動素子の少なくとも一部を覆って前記第1ケースに装着される第2ケースとを備えたブレーカーであって、
前記第2ケースの前記可動片の側を向く内表面には、前記可動片を介して前記固定接点と対向する領域で、前記固定接点から離れる方向に退避する退避部が局所的に形成され
前記第2ケースは、前記可動片に対向して配された板状のカバー片を含み、
前記退避部は、前記カバー片を貫通している、ことを特徴とするブレーカー。
【請求項2】
固定接点と、
板状に形成され弾性変形する弾性部及び該弾性部の先端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、
前記固定接点、前記可動片及び前記熱応動素子を収容する第1ケースと、
前記可動片及び前記熱応動素子の少なくとも一部を覆って前記第1ケースに装着される第2ケースとを備えたブレーカーであって、
前記第2ケースの前記可動片の側を向く内表面には、前記可動片を介して前記固定接点と対向する領域で、前記固定接点から離れる方向に退避する退避部が局所的に形成され、
前記退避部は、前記第2ケースを貫通している、ことを特徴とするブレーカー。
【請求項3】
前記可動片は、前記弾性部の基端側に、前記第1ケース及び前記第2ケースによって固定される固定部を有し、
前記退避部は、前記弾性部の長手方向に沿って前記固定接点と対向する領域から前記基端側にのびている、請求項1又は2に記載のブレーカー。
【請求項4】
前記退避部の前記基端側の端縁は、該基端から前記弾性部の長さの70%以下の位置に配されている、請求項3記載のブレーカー。
【請求項5】
前記可動片は、前記弾性部の基端側に、前記第1ケース及び前記第2ケースによって固定される固定部を有し、
前記退避部は、前記弾性部の長手方向に沿って前記固定接点と対向する領域から前記基端側にのび、
前記退避部の前記基端側の端縁は、該基端から前記弾性部の長さの48%以上の位置に配されている、請求項2記載のブレーカー。
【請求項6】
前記内表面には、前記弾性部に向って突出する突出部が形成されている、請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項7】
前記弾性部は、過電流で変形した前記熱応動素子によって塑性変形される、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のブレーカーを備えたことを特徴とする安全回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の安全回路に用いて好適な小型のブレーカー等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置(安全回路)としてブレーカーが使用されている。ブレーカーは、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。このような保護装置として用いられるブレーカーは、機器の安全を確保するために、温度変化に追従して正確に動作する(良好な温度特性を有する)ことと、通電時の抵抗値が安定していることが求められる。
【0003】
ブレーカーには、温度変化に応じて作動し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片、端子片、可動片、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、ケースに収納されてなり、固定片及び端子片の端子がケースから突出し、電気機器の電気回路に接続されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2011/105175号公報
【0005】
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化又は低背化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。
【0006】
上記ブレーカーにあっては、何らかの事情により、可動片が遮断状態にあるブレーカーに衝撃等が加えられた場合、固定接点と可動接点との瞬間的な導通が生ずる虞がある。このような瞬間的な導通は、遮断状態での固定接点と可動接点との間隙を十分に確保することにより抑制できる。しかしながら、遮断状態での固定接点と可動接点との間隙を十分に確保するためには、ケースの内部空間を大きくする必要があり、ケースの低背化を阻む一因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、遮断状態での固定接点と可動接点との間隙を十分に確保しつつ、容易に低背化を図ることができるブレーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のブレーカーは、固定接点と、板状に形成され弾性変形する弾性部及び該弾性部の先端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、前記固定接点、前記可動片及び前記熱応動素子を収容する第1ケースと、前記可動片及び前記熱応動素子の少なくとも一部を覆って前記第1ケースに装着される第2ケースとを備えたブレーカーであって、前記第2ケースの前記可動片の側を向く内表面には、前記可動片を介して前記固定接点と対向する領域で、前記固定接点から離れる方向に退避する退避部が局所的に形成されている、ことを特徴とするブレーカー。
【0009】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記第2ケースは、前記可動片に対向して配された板状のカバー片を含む、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記退避部は、前記カバー片を貫通している、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記退避部は、前記第2ケースを貫通している、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記可動片は、前記弾性部の基端側に、前記第1ケース及び前記第2ケースによって固定される固定部を有し、前記退避部は、前記弾性部の長手方向に沿って前記固定接点と対向する領域から前記基端側にのびている、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記退避部の前記基端側の端縁は、該基端から前記弾性部の長さの70%以下の位置に配されている、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記可動片は、前記弾性部の基端側に、前記第1ケース及び前記第2ケースによって固定される固定部を有し、前記退避部は、前記弾性部の長手方向に沿って前記固定接点と対向する領域から前記基端側にのび、前記退避部の前記基端側の端縁は、該基端から前記弾性部の長さの48%以上の位置に配されている、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記内表面には、前記弾性部に向って突出する突出部が形成されている、ことが望ましい。
【0016】
本発明に係る上記ブレーカーにおいて、前記弾性部は、過電流で変形した前記熱応動素子によって塑性変形される、ことが望ましい。
【0017】
本発明の安全回路は、上記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のブレーカーでは、固定接点、可動片及び熱応動素子を収容する第1ケースと、可動片及び熱応動素子の少なくとも一部を覆って第1ケースに装着される第2ケースとを備える。第2ケースの内表面には、可動片を介して固定接点と対向する領域で、固定接点から離れる方向に退避する退避部が形成されている。従って、可動片が遮断状態にあるとき、弾性部の先端部が退避部に収容されるので、先端部と蓋部材との干渉が抑制され、固定接点と可動接点との距離が十分に確保される。これにより、何らかの事情により、可動片が遮断状態にあるブレーカーに衝撃等が加えられた場合であっても、固定接点と可動接点との瞬間的な導通が抑制される。また、退避部は、固定接点と対向する領域に局所的に形成されるので、ケース全体を肥大させることなく、容易に低背化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるブレーカーの概略構成を示す組み立て前の斜視図。
図2】通常の充電又は放電状態における図1のブレーカーを示す断面図。
図3】過充電状態又は異常時などにおける図1のブレーカーを示す断面図。
図4】上記ブレーカーの蓋部材を第1面側から視た斜視図である。
図5】上記ブレーカーの平面図である。
図6】上記ブレーカーの内部構成を示す断面図である。
図7】本発明の上記ブレーカーを備えた2次電池パックの構成を示す平面図。
図8】本発明の上記ブレーカーを備えた安全回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて、図面を参照して説明する。図1乃至図3は、ブレーカーの構成を示している。図1及び図3に示されるように、ブレーカー1は、一部がケース10から外部に露出する一対の端子22及び42を備える。端子22及び42が外部回路(図示せず)と電気的に接続されることにより、ブレーカー1は、電気機器の安全回路の主要部を構成する。
【0021】
図1に示されるように、ブレーカー1は、固定接点21及び端子22を有する固定片2と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5等によって構成されている。
【0022】
固定片2、可動片4及び熱応動素子5は、ケース10に収容されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0023】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより板状に形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。
【0024】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により、形成されている。固定接点21は、固定片2の先端部すなわち可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている凹部73による内部空間に露出されている。
【0025】
固定片2の他端部には外部回路と電気的に接続される端子22が形成されている。端子22は、ケース本体7の側壁から露出し、外部回路と溶接又ははんだ付け等の手法により接続される。固定片2は、固定接点21と端子22の間に埋設部23を有している。固定片2は、埋設部23においてケース本体7に埋め込まれている。
【0026】
可動片4は、銅等を主成分とする金属材料をプレス加工することにより板状に形成されている。可動片4は、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0027】
可動片4の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、固定接点21と同等の材料によってメッキ又は塗布等の手法によって形成されている。
【0028】
可動片4の他端部には外部回路と電気的に接続される端子42が形成されている。端子42は、ケース本体7の側壁から露出し、外部回路と溶接又ははんだ付け等の手法により接続される。
【0029】
可動片4は、可動接点41と端子42との間に、固定部43及び弾性部44を有している。固定部43は、端子42と弾性部44との間に形成されている。固定部43は、ケース本体7と蓋部材8とによって挟み込まれることにより、ケース10に埋め込まれ固定されている。固定部43は、端子42と弾性部44との間で、可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部43aを有する。突出部43aが設けられていることにより、固定部43が幅広く大きな領域でケース本体7及び蓋部材8によって挟み込まれ、可動片4がケース10に対して強固に固定される。
【0030】
弾性部44は、固定部43から可動接点41の側に延出されている。弾性部44は、固定部43の側を基端44sとし、その反対側に先端部44eを有する。弾性部44の先端部44eには可動接点41が形成されている。弾性部44及び可動接点41は、凹部73による内部空間に露出されている。
【0031】
固定部43がケース10に埋め込まれることにより固定され、弾性部44が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0032】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、作動温度及び可動接点41の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。弾性部44には、熱応動素子5に向って突出する一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部44に伝達される(図1及び図3参照)。
【0033】
本出願においては、特に断りのない限り、可動片4において、弾性部44が熱応動素子5に対向している側の面(すなわち図1乃至図3において下側の面)を第1面、その反対側の面を第2面として説明している。可動片4に沿って配された他の部品、例えば、固定片2、熱応動素子5、ケース10等についても同様である。
【0034】
熱応動素子5は、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で逆反り変形する限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましく、小型でありながら弾性部44を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅-ニッケル-マンガン合金又はニッケル-クロム-鉄合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0035】
ケース10を構成するケース本体7、蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の絶縁材料を適用してもよい。
【0036】
ケース本体7には、固定接点21、可動接点41、弾性部44及び熱応動素子5などを収容するための内部空間を構成する凹部73が形成されている。凹部73は、平面視で可動片4及び熱応動素子5の外縁に沿う形状に形成されている。ケース本体7に凹部73が形成されていることにより、弾性部44が弾性変形可能となり、熱応動素子5が逆反り変形可能となる。
【0037】
蓋部材8は、可動片4及び熱応動素子5の少なくとも一部を覆うように、ケース本体7に装着される。本実施形態の蓋部材8には、カバー片9がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片9は、上述した銅等を主成分とする金属又はステンレス鋼等の金属をプレス加工することにより板状に形成される。カバー片9は、蓋部材8のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。なお、蓋部材8を構成する樹脂等によって十分な剛性・強度が得られる場合には、蓋部材8からカバー片9が省かれていてもよい。
【0038】
図1に示されるように、固定片2、可動片4及び熱応動素子5等を収容したケース本体7に、蓋部材8がケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって互いに接合される。このとき、ケース本体7と蓋部材8とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の強度及び剛性が向上する。
【0039】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持(逆反り前)している。弾性部44によって可動接点41が固定接点21の側に押圧されることにより、可動接点41と固定接点21とが接触し、ブレーカー1の固定片2と可動片4とが導通可能な状態とされる。
【0040】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、作動温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部44が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。ブレーカー1の内部で熱応動素子5が変形し、可動片4を押し上げるときの熱応動素子5の作動温度は、例えば、70℃~90℃である。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断される。
【0041】
図4は、蓋部材8を第1面側から視た斜視図である。蓋部材8の第1面、すなわち可動片4の側を向く内表面81には、蓋部材8の厚さ方向(可動片4の厚さ方向)すなわち固定接点21から離れる方向D1に退避する退避部82が形成されている。退避部82は、可動片4を介して固定接点21(可動片4の先端部)と対向する領域で、局所的に形成されている。
【0042】
蓋部材8に退避部82が形成されることにより、図3に示されるように、可動片4が遮断状態にあるとき、弾性部44の先端部44eが退避部82に収容される。これにより、先端部44eと蓋部材8との干渉が抑制され、固定接点21と可動接点41との距離が十分に確保される。従って、何らかの事情により、可動片4が遮断状態にあるブレーカー1に衝撃等が加えられた場合であっても、固定接点21と可動接点41との瞬間的な導通が抑制される。また、退避部82は、固定接点21と対向する領域に局所的に形成されるので、ケース10全体を肥大させることなく、容易に低背化を図ることが可能となる。
【0043】
退避部82は、カバー片9の一部を貫通しているのが望ましい。これにより、退避部82の深さを容易に確保することが可能となり、固定接点21と可動接点41との距離を一層大きくすることができる。本実施形態では、カバー片9の端縁にノッチが形成されることにより退避部82が実現されているが、カバー片9が固定接点21と対向する領域を超えて端子22の側に延出されている形態では、カバー片9に形成された貫通孔によって退避部82が実現されていてもよい。
【0044】
本実施形態の蓋部材8では、その内表面81に、熱応動素子との干渉を避けるための凹部85が形成されている。凹部85によってカバー片9の第2面は、ケース10の内部空間に露出している。そして、退避部82は、凹部85からさらに陥没して形成されている。これにより、先端部44eと蓋部材8との干渉がより一層抑制される。
【0045】
図5は、ブレーカー1の平面図である。可動片4が遮断状態にある弾性部44と蓋部材8との干渉を避けるため、退避部82は、弾性部44の外縁に沿って形成されているのが望ましい。「弾性部44の外縁に沿って」とは、弾性部44の外縁に対して干渉しない程度のクリアランス(例えば、0.03mmから0.30mm)を隔てて、形成されていることを意味し、弾性部44の外縁から大きく(例えば、0.80mm程度)離れて、熱応動素子5の外縁に沿う形態は除かれる。
【0046】
退避部82は、蓋部材8を貫通しているのが望ましい。本実施形態では、退避部82は、蓋部材8を厚さ方向に貫通する貫通孔83によって構成されている。これにより、先端部44eと蓋部材8との干渉がより一層容易に抑制され、図3に示される遮断状態において、固定接点21と可動接点41との距離を一層大きくすることができる。
【0047】
本ブレーカー1では、退避部82によって先端部44eと蓋部材8との干渉が抑制されるので、逆反り時の変形量(すなわち、可動片4の押し上げ量)の大きい熱応動素子5を適用することにより、弾性部44の変形を塑性領域まで拡大できる。弾性部44が塑性変形することにより、図3に示される遮断状態において、熱応動素子5の温度が低下することに伴い熱応動素子5が図2に示される形状に復元した後にあっても、弾性部44の逆反り変形は維持される。従って、可動接点41が固定接点21から離れた遮断状態が維持されるので、可動片4の遮断状態を保持するブレーカー1の自己保持機能が、上記特許文献1に示されるPTCサーミスターを用いることなく、簡素な構成で実現される。そして、PTCサーミスターが省かれた構成によって、ブレーカー1のさらなる低背化を容易に実現できる。
【0048】
本実施形態では、退避部82が貫通孔83によって構成されているので、先端部44eと蓋部材8との干渉がより一層抑制され、弾性部44を容易に塑性変形させることが可能である。なお、逆反り時の変形量の大きい熱応動素子5は、例えば、上述した熱膨張率が大きく異なる薄板材を積層することにより、容易に実現されうる。
【0049】
図6は、ブレーカー1の断面を拡大して示している。退避部82は、弾性部44の長手方向に沿って形成されている。より具体的には、退避部82は、弾性部44のうち固定接点21と対向する領域から、固定部43の側すなわち弾性部44の基端44s側にのびている。このような退避部82によって、遮断状態での弾性部44の先端部44eが効率よく収容される。
【0050】
弾性部44の基端44sから退避部82の端縁82eまでの可動片4の長手方向の距離L1は、基端44sから弾性部44の長さL2の70%以下であることが望ましい。すなわち、端縁82eは、基端44sから長さL2の70%以下の位置に配されているのが望ましい。「弾性部44の長さL2」とは、基端44sから可動片4の端子22側の先端までの距離である。端縁82eが、基端44sから長さL2の70%以下の位置に配されていることにより、図3に示される遮断状態において、固定接点21と可動接点41との距離を十分に確保することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態のように、退避部82が貫通孔83によって構成されているブレーカー1にあっては、上記距離L1は、上記長さL2の48%以上であることが望ましい。すなわち、端縁82eは、基端44sから長さL2の48%以上の位置に配されているのが望ましい。端縁82eが、基端44sから長さL2の48%以上の位置に配されていることにより、図3に示される遮断状態において、弾性部44の先端部44eが蓋部材8の第2面(外表面)から突出することが抑制される。
【0052】
蓋部材8の内表面81には、弾性部44に向って突出する突出部84が形成されているのが望ましい。本実施形態では、カバー片9の第1面に形成された突出部91によって突出部84が実現されている。
【0053】
突出部91は、図3に示される遮断状態において、弾性部44の第2面と当接する。これにより、弾性部44と突出部91との当接箇所が支点となって可動片4が押し上げられ、固定接点21と可動接点41との距離が容易に維持される。また、突出部91との当接箇所の周辺で弾性部44にかかる応力が集中し、弾性部44の塑性変形が生じ易くなる。かかる観点から、突出部91は、端縁82e又はその近傍に設けられるのが望ましい。
【0054】
本発明のブレーカー1は、上記実施形態の構成に限られることなく、種々の態様に変更して実施されうる。すなわち、ブレーカー1は、少なくとも、固定接点21と、板状に形成され弾性変形する弾性部44及び弾性部44の先端部に可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5と、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5を収容するケース本体7と、可動片4及び熱応動素子5の少なくとも一部を覆ってケース本体7に装着される蓋部材8とを備えたブレーカー1であって、蓋部材8の可動片4の側を向く内表面81には、可動片4を介して固定接点21と対向する領域で、固定接点21から離れる方向に退避する退避部82が局所的に形成されていればよい。
【0055】
例えば、ケース本体7と蓋部材8との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース10は、ケース本体7と蓋部材8等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって構成されていればよい。
【0056】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカー1等の構成が簡素化されて、小型化を図ることができる。
【0057】
また、本発明のブレーカー1等は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図7は2次電池パック500を示す。2次電池パック500は、2次電池501と、2次電池501の出力端回路中に設けたブレーカー1等とを備える。図8は電気機器用の安全回路502を示す。安全回路502は2次電池501の出力回路中に直列にブレーカー1等を備えている。ブレーカー1等を備えたコネクタを含むケーブルによって安全回路502の一部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :ブレーカー
4 :可動片
5 :熱応動素子
7 :ケース本体(第1ケース)
8 :蓋部材(第2ケース)
9 :カバー片
21 :固定接点
41 :可動接点
43 :固定部
44 :弾性部
44e :先端部
44s :基端
81 :内表面
82 :退避部
82e :端縁
83 :貫通孔
84 :突出部
91 :突出部
500 :2次電池パック
502 :安全回路
D1 :方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8