(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】住宅の設計方法、設計装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20220128BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20220128BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20220128BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20220128BHJP
G06F 111/16 20200101ALN20220128BHJP
G06F 119/06 20200101ALN20220128BHJP
【FI】
G06F30/13
G06Q50/08
G06F30/20
E04H1/02 ESW
G06F111:16
G06F119:06
(21)【出願番号】P 2018234538
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 啓二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義浩
(72)【発明者】
【氏名】来山 栄作
(72)【発明者】
【氏名】岡 希光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 曜
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-126946(JP,A)
【文献】特開2002-304519(JP,A)
【文献】特開2018-173932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
G06Q 50/08
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根面に太陽光発電装置を有する住宅の設計方法であって、
施主が希望する前記住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である省エネルギー要望情報を
、コンピュータに記憶する工程と、
前記住宅のエネルギー消費性能を計算するために必要な複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報を
、前記コンピュータに記憶する工程と、
前記コンピュータが、前記複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報を、前記第1設計情報を用いて推定する工程と、
前記コンピュータが、前記施主との間で前記第2設計情報が決定される前段階で、前記第1設計情報及び前記推定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を計算する工程と、
前記コンピュータが、前記第2設計情報が決定される前段階で、計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算する工程
と、
前記施主との間で決定された前記第2設計情報を、前記コンピュータに入力する工程と、
前記コンピュータが、前記第1設計情報及び前記決定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を再計算する工程と、
前記コンピュータが、前記再計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の前記仕様に関する第2次情報を計算する工程とを含む、
住宅の設計方法。
【請求項2】
前記省エネルギー要望情報は、第1省エネルギー基準と、前記第1省エネルギー基準よりも厳しい省エネルギー基準である第2省エネルギー基準とを含む、請求項1記載の住宅の設計方法。
【請求項3】
前記第1設計情報は、前記住宅の建設予定地を特定する情報と、前記住宅の床面積と、前記住宅のオール電化の有無に関する情報とを含む、請求項1又は2に記載の住宅の設計方法。
【請求項4】
前記第2設計情報は、前記住宅の間取りを決定した後に決まる前記住宅の情報である、請求項1ないし3のいずれかに記載の住宅の設計方法。
【請求項5】
前記第2設計情報を推定する工程は、前記第2設計情報を、前記第1設計情報と、予め定められた関係式とを用いて推定する工程を含む、請求項4記載の住宅の設計方法。
【請求項6】
前記第2設計情報は、前記住宅のリビングルームの床面積、リビングルーム以外の居室の床面積及び非居室の床面積を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の住宅の設計方法。
【請求項7】
前記第2設計情報は、前記住宅の外皮平均熱貫流率、冷房期の平均日射熱取得率及び暖房期の平均日射熱取得率を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の住宅の設計方法。
【請求項8】
前記太陽光発電装置の前記仕様は、前記省エネルギー要望情報を満たす必要出力数である、請求項1ないし7のいずれかに記載の住宅の設計方法。
【請求項9】
屋根面に太陽光発電装置を有する住宅の設計装置であって、
施主が希望する前記住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である省エネルギー要望情報が入力される省エネルギー要望取得部と、
前記住宅のエネルギー消費性能を計算するために必要な複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報を取得する第1設計情報取得部と、
前記複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報を、前記第1設計情報を用いて推定する第2設計情報推定部と、
前記施主との間で前記第2設計情報が決定される前段階で、前記第1設計情報及び前記推定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を計算する消費性能計算部と、
前記第2設計情報が決定される前段階で、計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算する第1次情報計算部と、
前記施主との間で決定された前記第2設計情報が記憶される第2設計情報記憶部と、
前記第1設計情報及び前記決定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を再計算する前記消費性能計算部と、
前記再計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の前記仕様に関する第2次情報を計算する第2次情報計算部とを含む、
住宅の設計装置。
【請求項10】
屋根面に太陽光発電装置を有する住宅を設計するための方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
施主が希望する前記住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である省エネルギー要望情報を取得させる工程と、
前記住宅のエネルギー消費性能を計算するのに必要な複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報を取得させる工程と、
前記複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報を、前記第1設計情報を用いて推定させる工程と、
前記施主との間で前記第2設計情報が決定される前段階で、前記第1設計情報及び前記推定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を計算させる工程と、
前記第2設計情報が決定される前段階で、計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算させる工程と、
前記施主との間で決定された前記第2設計情報を取得させる工程と、
前記第1設計情報及び前記決定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を再計算させる工程と、
前記再計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の前記仕様に関する第2次情報を計算させる工程とを実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根面に太陽光発電装置が設けられる住宅を設計するための方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力需給の逼迫や、エネルギー価格の不安定化などに伴い、太陽光などの再生可能エネルギーを導入した省エネルギー住宅への関心が高まっている。このような住宅のうち、国土交通省が定めた省エネルギー基準を満たす住宅の一例としては、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や、ZEHよりも省エネルギー率が高いLCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)などが挙げられる。
【0003】
上記のような省エネルギー住宅を設計するには、住宅のエネルギー消費性能を知ることが必要となる。エネルギー消費性能の計算には、例えば、下記非特許文献1のプログラムが用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】国立研究開発法人建築研究所、「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」、[online]、[平成30年11月14日検索]、インターネット<URL:http://house.app.lowenergy.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記プログラムには、エネルギー消費性能の計算に必要な、住宅の様々な仕様に基づく複数の情報が入力される。これらの情報の中には、例えば、住宅の具体的な間取りや設備仕様等のプランニングが確定した後でなければ決定できない情報が含まれている。したがって、従来では、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)において、その住宅のエネルギー消費性能やそれに対応する太陽光発電装置の仕様を計算することができなかった。
【0006】
このため、住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)に住宅のエネルギー消費性能を計算した場合、それに対応する太陽光発電装置の仕様やコストが、施主が想定していたものとはかけ離れたものになることがある。このような場合、住宅の再設計が必要になるなど、住宅設計の効率低下を招く場合や、過剰に太陽光発電装置を搭載させてしまう場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、施主の省エネルギー要望を満たす住宅を効率良く設計することができる方法等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、屋根面に太陽光発電装置を有する住宅の設計方法であって、施主が希望する前記住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である省エネルギー要望情報を取得する工程と、前記住宅のエネルギー消費性能を計算するために必要な複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報を取得する工程と、前記複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報を、前記第1設計情報を用いて推定する工程と、前記施主との間で前記第2設計情報が決定される前段階で、前記第1設計情報及び前記推定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を計算する工程と、前記第2設計情報が決定される前段階で、計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記第2設計情報を決定する工程と、前記第1設計情報及び前記決定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を再計算する工程と、前記再計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の前記仕様に関する第2次情報を計算する工程とを含でもよい。
【0010】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記省エネルギー要望情報は、第1省エネルギー基準と、前記第1省エネルギー基準よりも厳しい省エネルギー基準である第2省エネルギー基準とを含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記第1設計情報は、前記住宅の建設予定地を特定する情報と、前記住宅の床面積と、前記住宅のオール電化の有無に関する情報とを含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記第2設計情報は、前記住宅の間取りを決定した後に決まる前記住宅の情報であってもよい。
【0013】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記第2設計情報を推定する工程は、前記第2設計情報を、前記第1設計情報と、予め定められた関係式とを用いて推定する工程を含んでもよい。
【0014】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記第2設計情報は、前記住宅のリビングルームの床面積、リビングルーム以外の居室の床面積及び非居室の床面積を含んでもよい。
【0015】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記第2設計情報は、前記住宅の外皮平均熱貫流率、冷房期の平均日射熱取得率及び暖房期の平均日射熱取得率を含んでもよい。
【0016】
本発明に係る前記住宅の設計方法において、前記太陽光発電装置の前記仕様は、前記省エネルギー要望情報を満たす必要出力数であってもよい。
【0017】
本発明は、屋根面に太陽光発電装置を有する住宅の設計装置であって、施主が希望する前記住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である省エネルギー要望情報が入力される省エネルギー要望取得部と、前記住宅のエネルギー消費性能を計算するために必要な複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報を取得する第1設計情報取得部と、前記複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報を、前記第1設計情報を用いて推定する第2設計情報推定部と、前記施主との間で前記第2設計情報が決定される前段階で、前記第1設計情報及び前記推定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を計算する消費性能計算部と、前記第2設計情報が決定される前段階で、計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算する第1次情報計算部とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明は、屋根面に太陽光発電装置を有する住宅を設計するための方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記コンピュータに、施主が希望する前記住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である省エネルギー要望情報を取得させる工程と、前記住宅のエネルギー消費性能を計算するのに必要な複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報を取得させる工程と、前記複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報を、前記第1設計情報を用いて推定させる工程と、前記施主との間で前記第2設計情報が決定される前段階で、前記第1設計情報及び前記推定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を計算させる工程と、前記第2設計情報が決定される前段階で、計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算させる工程とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の住宅の設計方法は、施主が希望する前記住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である省エネルギー要望情報を取得する工程と、前記住宅のエネルギー消費性能を計算するために必要な複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報を取得する工程と、前記複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報を、前記第1設計情報を用いて推定する工程とを含んでいる。さらに、本発明の住宅の設計方法は、前記施主との間で前記第2設計情報が決定される前段階で、前記第1設計情報及び前記推定された前記第2設計情報に基づいて、前記エネルギー消費性能を計算する工程と、計算された前記エネルギー消費性能に基づいて、前記省エネルギー要望情報を満たす前記太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算する工程とを含んでいる。
【0020】
前記設計方法は、前記住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)において、前記住宅の前記エネルギー消費性能や、それに対応する前記太陽光発電装置の仕様(前記第1次情報)を計算することができる。これにより、前記設計方法は、前記住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)において、前記住宅のエネルギー消費性能を計算した場合に、それに対応する太陽光発電装置の仕様やコストが、施主の想定範囲を超えるのを抑制することができる。したがって、本発明の設計方法は、住宅の再設計が必要となる状況を防ぐことができるため、施主の省エネルギー要望を満たす住宅を効率良く設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】住宅の設計方法が実施されるコンピュータ(設計装置)の一例を示すブロック図である。
【
図2】住宅の設計方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】省エネルギー要望情報の選択肢が表示された画面の一例を示す図である。
【
図4】第1取得工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」を入力するための画面の一例を示す図である。
【
図6】第1設計情報の「住宅の床面積」を入力するための画面の一例を示す図である。
【
図7】第1設計情報の「住宅のオール電化の有無」を入力するための画面の一例を示す図である。
【
図8】第2推定工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報が出力された画面の一例を示す図である。
【
図10】本発明の他の実施形態の住宅の設計方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】地域の区分:3、オール電化、及び、ZEHの住宅について、住宅の床面積と、第1次情報との関係を示すグラフである。
【
図12】第2設計情報が決定される前段階の第1次情報と、第2設計情報が決定された後の第2次情報との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の住宅の設計方法(以下、単に「設計方法」ということがある。)では、屋根面に太陽光発電装置を有する住宅が設計される。
【0023】
図1は、本実施形態の設計方法が実施されるコンピュータ(設計装置)の一例を示すブロック図である。本実施形態のコンピュータ1は、入力デバイスとしての入力部2、出力デバイスとしての出力部3、及び、後述のエネルギー消費性能等を計算する演算処理装置4を有しており、住宅を設計するための設計装置5として構成されている。コンピュータ1には、例えば、パーソナルコンピュータや、タブレット型携帯情報等を採用することができる。
【0024】
入力部2は、例えば、キーボード、マウス、又は、タッチパネル等が用いられる。出力部3は、例えば、ディスプレイ装置又はプリンタ等が用いられる。演算処理装置4は、各種の演算を行う演算部(CPU)6、データやプログラム等が記憶される記憶部7、及び、作業用メモリ8が含まれている。
【0025】
記憶部7は、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。記憶部7には、データ部9及びプログラム部10が設けられている。
【0026】
データ部9は、住宅の設計に必要な情報を記憶するためのものである。本実施形態のデータ部9は、省エネルギー要望記憶部11、第1設計情報記憶部12、第2設計情報記憶部13、エネルギー消費性能記憶部14、第1次情報記憶部15、第2次情報記憶部16、及び、設計データ記憶部17を含んでいる。
【0027】
プログラム部10は、コンピュータ1(演算部6)に、本実施形態の設計方法を実行させるためのプログラムである。本実施形態のプログラム部10には、省エネルギー要望取得部21、省エネルギー要望判断部22、第1設計情報取得部23、第2設計情報決定部24、第2設計情報推定部25、消費性能計算部26、第1次情報計算部27、第2次情報計算部28、住宅設計部29、及び、許容範囲判断部30を含んでいる。
【0028】
本実施形態では、例えば、国土交通省が定めた省エネルギー基準を満たす住宅が設計される。複数の省エネルギー基準のうち、平成30年省エネルギー基準(ZEH基準)を満たす住宅(省エネルギー住宅)の一例としては、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEHよりも省エネルギー率が低いNearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、及び、ZEHよりも省エネルギー率が高いLCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)などが挙げられる。本実施形態の設計方法は、ZEH、Nearly ZEH、及び、LCCM住宅の全ての設計に用いることができるが、いずれか一つの設計にのみ用いられるものでもよい。
【0029】
ZEHは、太陽光などの再生可能エネルギーを導入することで、一次エネルギー消費量の収支をゼロにする(即ち、一次エネルギー消費量を100%削減する)ことを目指した住宅である。一方、Nearly ZEHは、一次エネルギー消費量を75%~100%(本例では、75%)の削減を目指した住宅である。
【0030】
LCCM住宅は、太陽光などの再生可能エネルギーを導入することで、住宅の建設時、運用時、及び、廃棄時を含むライフサイクル全体を通じて、CO2排出量をマイナスにする住宅である。即ち、LCCM住宅では、運用時の一次消費エネルギーに、住宅の建設時、解体時及び再利用時に用いられる材料の一次消費エネルギーを加算した一次消費エネルギーの収支をマイナス(即ち、運用時、建設時、解体時及び再利用時の一次エネルギー消費量を100%以上削減する)にすることを目指している。
【0031】
上記のような省エネルギー住宅を設計するには、住宅のエネルギー消費性能(一次エネルギー消費量)を知ることが必要となる。エネルギー消費性能の計算には、例えば、上記非特許文献1のプログラムが用いられる。
【0032】
上記プログラムには、エネルギー消費性能の計算に必要な、住宅の様々な仕様に基づく複数の情報(以下、単に「住宅設計情報」ということがある。)が入力される。住宅設計情報の詳細については、上記非特許文献1、及び、先行技術文献(国立研究開発法人建築研究所、「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」、[online]、[平成30年11月14日検索]、インターネット<URL:https://www.kenken.go.jp/becc/house.html>)等に記載のとおりである。
【0033】
複数の住宅設計情報には、複数の住宅設計情報のうちの一部である第1設計情報と、複数の住宅設計情報の残りの情報である第2設計情報とが含まれる。
【0034】
本実施形態の第1設計情報は、住宅の具体的な間取りや設備仕様等のプランニングが確定する前において、施主の希望によって決定可能な情報である。第1設計情報については、プランニングが確定する前に決定可能な情報であれば、適宜選択することができる。本実施形態の第1設計情報は、「住宅の建設予定地を特定する情報」、「住宅の床面積」、及び、「住宅のオール電化の有無に関する情報」を含んでいる。
【0035】
第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「地域の区分」及び「年間日射地域区分の指定」に相当する。「地域の区分」は、主に外気条件を評価軸として、全国の市町村を8つの地域(1~8の地域区分)に分けた区分である。「年間日射量地域区分」は、水平面全天日射量の年間積算値を指標として、日本全国を日射の少ない地域から多い地域までを5地域に分類した地域区分である。これらの情報は、施主が希望する住宅の建設予定地に基づいて決定される。
【0036】
第1設計情報の「住宅の床面積」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「合計床面積(m2)」に相当する。「合計床面積」は、例えば、「主たる居室の床面積(m2)」、「その他の居室の床面積(m2)」、及び、「非居室の床面積(m2)」の合計値である。「主たる居室」とは、住宅に設けられた居室のうち、就寝を除いた日常生活で在室時間が長い居室のことであり、リビングルームに相当する。「その他の居室」は、住宅に設けられた居室のうち、主たる居室(リビングルーム)以外の居室である。「非居室」は、居室以外の空間をいい、例えば、トイレ、洗面所、及び、浴室等に相当する。上記の床面積のうち、「合計床面積(m2)」については、施主が希望する住宅の規模に基づいて決定される。
【0037】
第1設計情報の「住宅のオール電化の有無」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「給湯設備」及び「給湯熱源機」等に相当する。「給湯設備」は、給湯設備の有無を判断するための項目である。本実施形態の「給湯設備」には、オール電化である場合、及び、オール電化でない場合の双方において、「給湯設備がある(浴室等がある)」が選択される。一方、「給湯熱源機」は、給湯器の種類を特定する項目である。本実施形態において、オール電化である場合には、給湯熱源機として「電気ヒートポンプ給湯機」が選択される。一方、オール電化でない場合には、給湯熱源機として「ガス潜熱回収型給湯器」が選択される。これらの情報は、施主が希望する給湯方式等に基づいて決定される。
【0038】
第2設計情報は、第1設計情報とは異なり、住宅の間取りを決定した後(プランニングが確定した後)に決まる情報である。本実施形態の第2設計情報は、リビングルームの床面積、リビングルーム以外の居室の床面積、及び、非居室の床面積を含んでいる。なお、リビングルーム、リビングルーム以外の居室、及び、非居室については、上述のとおりである。
【0039】
第2設計情報の「リビングルームの床面積」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「主たる居室の床面積」に相当する。第2設計情報の「リビングルーム以外の居室の床面積」は、「その他の居室の床面積」に相当する。第2設計情報の「非居室面積」は、「主たる居室の床面積」と、「その他の居室の床面積」との合計値を、「合計床面積」から減じた値に相当する。
【0040】
さらに、本実施形態の第2設計情報は、外皮の面積、住宅の外皮平均熱貫流率、冷房期の平均日射熱取得率、及び、暖房期の平均日射熱取得率が含まれる。
【0041】
第2設計情報の「外皮の面積」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「外皮面積の合計」に相当する。外皮面積の合計は、外気等に接する天井(小屋裏又は天井裏が外気と通じていない場合にあっては、屋根)、壁、床、及び、開口部、並びに、当該単位住戸以外の建築物の部分に接する部分の面積を合計した値である。
【0042】
第2設計情報の「住宅の外皮平均熱貫流率」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「外皮平均熱貫流率(UA)」に相当する。外皮平均熱貫流率は、単位住戸の内外の温度差1℃当たりの総熱損失量(換気による熱損失量を除く)を、外皮の面積(外皮面積の合計)で除した値である。
【0043】
第2設計情報の「冷房期の平均日射熱取得率」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「冷房期平均日射熱取得率(ηAC)」に相当する。冷房期平均日射熱取得率は、冷房期において、屋根、外壁、及び、窓等の外皮の各部位から入射する日射量を、外皮の面積(外皮面積の合計)で除した値である。
【0044】
第2設計情報の「暖房期の平均日射熱取得率」は、上記非特許文献1のプログラムにおいて、「暖房期平均日射熱取得率(ηAH)」に相当する。暖房期平均日射熱取得率は、暖房期において、屋根、外壁、及び、窓等の外皮の各部位から入射する日射量を、外皮の面積の合計で除した値である。
【0045】
また、本実施形態の第2設計情報は、上記非特許文献1のプログラムに基づいて、「主たる居室の通風の利用」、「その他の居室の通風の利用」、「蓄熱の利用」、「床下空間を経由して外気を導入する換気方式の利用」、「暖房方式の選択」、「主たる居室及びその他の居室の暖房設備機器等の選択」、「冷房方式の選択」、及び、「主たる居室及びその他の居室の冷房設備機器等の選択」を含んでいる。さらに、本実施形態の第2設計情報は、上記非特許文献1のプログラムに基づいて、「換気設備の方式の選択」、「ダクト式換気設備を設置する場合の評価方法」、「換気回数」、「熱交換型換気設備の設置」、「配管方式」、「水栓」、「浴槽」、「主たる居室等の昭明」、「太陽光発電設備」、「液体集熱式太陽熱利用設備」、「空気集熱式太陽熱利用設備」、及び、「コージェネレーション設備」等を含んでいる。これらの第2設計情報に入力される値の詳細については、上記非特許文献1、及び、先行技術文献に記載のとおりである。
【0046】
上記非特許文献1のプログラムにおいて、第1設計情報と、第2設計情報とが入力されることで、住宅のエネルギー消費性能(一次エネルギー消費量)が計算される。
【0047】
上述したように、第2設計情報は、プランニングが確定した後に決まる情報である。したがって、従来では、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)において、その住宅のエネルギー消費性能や、それに対応する太陽光発電装置の仕様を計算することができなかった。
【0048】
このため、住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)に住宅のエネルギー消費性能を計算した場合、それに対応する太陽光発電装置の仕様やコストが、施主が想定していたものとはかけ離れたものになることがある。このような場合、住宅の再設計が必要になるなど、住宅設計の効率低下を招くという問題がある。
【0049】
本実施形態の設計方法では、第2設計情報を、第1設計情報を用いて推定することで、第2設計情報が決定される前段階(プランニング前)で、エネルギー消費性能と、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算している。
図2は、住宅の設計方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態の設計方法では、先ず、省エネルギー要望情報が取得される(工程S1)。省エネルギー要望情報は、施主が希望する住宅の省エネルギー化度合いに関する情報である。本実施形態の省エネルギー要望情報は、第1省エネルギー基準と、前記第1省エネルギー基準よりも厳しい省エネルギー基準である第2省エネルギー基準とを含んでいる。
【0051】
第1省エネルギー基準、及び、第2省エネルギー基準としては、適宜選択することができる。本実施形態の第2省エネルギー基準には、現行の省エネルギー基準のうち、住宅に推奨されるエネルギー基準(本例では、平成30年省エネルギー基準(ZEH基準))が選択される。一方、第1省エネルギー基準には、第2省エネルギー基準よりも低い省エネルギー基準であれば、適宜選択することができる。本実施形態の第1省エネルギー基準には、平成4年省エネルギー基準が選択される。
【0052】
工程S1では、先ず、
図1に示されるように、プログラム部10の省エネルギー要望取得部21が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、省エネルギー要望取得部21が、演算部6によって実行される。
図3は、省エネルギー要望情報の選択肢が表示された画面の一例を示す図である。
【0053】
工程S1では、設計装置5の出力部3(ディスプレイ装置)に、省エネルギー要望情報の選択肢が表示される。本実施形態の出力部3には、平成4年省エネルギー基準(即ち、第1省エネルギー基準)のオプションボタン31と、平成30年省エネルギー基準(ZEH基準)(即ち、第2省エネルギー基準)のオプションボタン32とが表示されている。次に、工程S1では、施主等によって、施主が希望する省エネルギー基準(第1省エネルギー基準及び第2省エネルギー基準のいずれか)のオプションボタンが選択され、「次へ」ボタン37が押下される。これにより、工程S1では、選択された省エネルギー基準が、省エネルギー要望情報として特定され、省エネルギー要望記憶部11に記憶される。
【0054】
次に、本実施形態の設計方法では、省エネルギー要望情報が、第2省エネルギー基準であるか否かが判断される(工程S2)。工程S2では、先ず、
図1に示されるように、省エネルギー要望記憶部11に記憶されている省エネルギー要望情報、及び、プログラム部10の省エネルギー要望判断部22が、作業用メモリ8に入力される。そして、省エネルギー要望判断部22が、演算部6によって実行される。
【0055】
工程S2において、省エネルギー要望情報が、第2省エネルギー基準であると判断された場合(工程S2において、「Y」)、次の第1取得工程S3が実行される。一方、省エネルギー要望情報が、第2省エネルギー基準ではない(即ち、第1省エネルギー基準である)と判断された場合(工程S2において、「N」)、第1省エネルギー基準を推奨しない旨のメッセージ(図示省略)を出力部3に出力し(工程S4)、工程S1及び工程S2が再度実施される。これにより、本実施形態の設計方法では、第2省エネルギー基準が選択されなかった場合に、例えば、第2省エネルギー基準を満たすことの重要性やメリット等を施主に説明する機会を得ることができるため、その重要性等を施主に理解してもらった上で、省エネルギー率の高い(第2省エネルギー基準を準拠した)住宅を設計することが可能となる。
【0056】
次に、本実施形態の設計方法では、第1設計情報が取得される(第1取得工程S3)。本実施形態の第1取得工程S3では、上述した第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」、「住宅の床面積」及び「住宅のオール電化の有無に関する情報」が取得される。
【0057】
第1取得工程S3では、先ず、
図1に示されるように、プログラム部10の第1設計情報取得部23が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、第1設計情報取得部23が、演算部6によって実行される。
図4は、第1取得工程S3の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0058】
本実施形態の第1取得工程S3では、先ず、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」が取得される(工程S31)。
図5は、住宅の建設予定地を特定する情報を入力するための画面の一例を示す図である。
【0059】
工程S31では、先ず、設計装置5の出力部3(ディスプレイ装置)に、住宅の建設予定地の郵便番号を入力するためのテキストボックス33が表示される。次に、工程S31では、施主等によって、テキストボックス33に郵便番号が入力され、「次へ」ボタン38が押下される。これにより、工程S31では、入力された郵便番号に基づいて、上記非特許文献1のプログラムでの「地域の区分」、及び、「年間日射地域区分の指定」が特定される。これらの特定には、例えば、郵便番号と、「地域の区分」及び「年間日射地域区分の指定」とを対応させたデータベースが用いられるのが望ましい。これにより、本実施形態では、住宅の建設予定地の郵便番号から、「地域の区分」及び「年間日射地域区分の指定」を容易に特定することができる。
【0060】
特定された「地域の区分」、及び、「年間日射地域区分の指定」は、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」として、第1設計情報記憶部12に記憶される。なお、
図5において「戻る」ボタン41が押下された場合には、
図3に示した画面を表示して、省エネルギー要望情報を取得する工程S1が実施されるのが望ましい。
【0061】
次に、本実施形態の第1取得工程S3では、第1設計情報の「住宅の床面積」が取得される(工程S32)。
図6は、「住宅の床面積」を入力するための画面の一例を示す図である。工程S32では、先ず、設計装置5の出力部3(ディスプレイ装置)に、住宅の床面積を入力するためのテキストボックス34が表示される。次に、工程S32では、施主等によって、テキストボックス34に住宅の床面積が入力され、「次へ」ボタン39が押下される。これにより、工程S32では、入力された住宅の床面積が、上記非特許文献1のプログラムでの「合計床面積」として特定される。特定された合計床面積は、第1設計情報の「住宅の床面積」として、第1設計情報記憶部12に記憶される。なお、
図6において、「戻る」ボタン42が押下された場合、
図5に示した画面を表示して、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」を取得する工程S31が実施されるのが望ましい。
【0062】
次に、本実施形態の第1取得工程S3では、第1設計情報の「住宅のオール電化の有無」が取得される(工程S33)。
図7は、「住宅のオール電化の有無」を入力するための画面の一例を示す図である。工程S33では、先ず、設計装置5の出力部3(ディスプレイ装置)に、住宅のオール電化の有無(本例では、オール電化を希望するか否か)に関する選択肢が表示される。本実施形態の出力部3には、はい(即ち、オール電化を希望する)のオプションボタン35と、いいえ(即ち、オール電化を希望しない)のオプションボタン36とが表示される。
【0063】
次に、工程S33では、施主等によって、オプションボタン35及び36のいずれかが選択され、「次へ」ボタン40が押下される。これにより、工程S33では、選択されたオプションボタン35及び36のいずれかに基づいて、上記非特許文献1のプログラムでの「給湯設備」及び「給湯熱源機」が特定される。
【0064】
図7において、「はい(即ち、オール電化を希望する)」のオプションボタン35が選択された場合には、「給湯設備」として「給湯設備がある(浴室等がある)」が選択され、かつ、「給湯熱源機」として「電気ヒートポンプ給湯機」が選択される。一方、
図7において、「いいえ(即ち、オール電化を希望しない)」のオプションボタン36が選択された場合には、「給湯設備」として「給湯設備がある(浴室等がある)」が選択され、かつ、「給湯熱源機」として「ガス潜熱回収型給湯器」が選択される。選択された「給湯設備」及び「給湯熱源機」は、第1設計情報の「住宅のオール電化の有無」として、第1設計情報記憶部12に記憶される。なお、
図7において、「戻る」ボタン43が押下された場合、
図6に示した画面を表示して、第1設計情報の「住宅の床面積」を取得する工程S32が実施されるのが望ましい。
【0065】
次に、本実施形態の設計方法では、第1設計情報を用いて、第2設計情報が推定される(第2推定工程S5)。第2推定工程S5は、施主との間で第2設計情報が決定される前段階において、第2設計情報が推定される。
【0066】
第2推定工程S5では、先ず、
図1に示されるように、第1設計情報記憶部12に記憶されている第1設計情報、及び、プログラム部10の第2設計情報推定部25が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、第2設計情報推定部25が、演算部6によって実行される。
図8は、第2推定工程S5の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0067】
本実施形態の第2推定工程S5では、先ず、第1設計情報と、予め定められた関係式とを用いて、第2設計情報が推定される(工程S51)。工程S51では、上述の第2設計情報のうち、リビングルームの床面積、リビングルーム以外の居室の床面積、非居室の床面積、及び、外皮の面積が推定される。
【0068】
工程S51では、第1設計情報の住宅の床面積(合計床面積)Fと、下記の関係式(1)~(4)とを用いて、第2設計情報のリビングルームの床面積F1、リビングルーム以外の居室の床面積F2、非居室の床面積F3、及び、外皮の面積F4が推定される。
F1=0.34×F…(1)
F2=0.35×F…(2)
F3=0.31×F…(3)
F4=2.7×F…(4)
【0069】
上記の関係式(1)~(4)は、住宅の床面積(合計床面積)Fに、予め定められた係数を乗じたものである。関係式(1)~(3)の係数(0.34、0.35及び0.31)は、住宅の床面積(合計床面積)Fに対する各床面積F1~F3の割合である。これらの係数は、例えば、これまで建設されてきた住宅の実績に基づいて設定される。
【0070】
関係式(4)の係数(2.7)は、住宅の床面積(合計床面積)Fに対する外皮の面積の割合である。このような係数は、例えば、これまで建設されてきた住宅の実績に基づいて設定される。このように、本実施形態の設計方法では、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)において、住宅の間取りを決定した後(プランニングが確定した後)に決まる第2設計情報を推定することができる。なお、上記関係式(1)~(4)は一例であり、例えば、これまで建設されてきた住宅の実績に基づいて、適宜変更することができる。
【0071】
次に、本実施形態の第2推定工程S5では、第1設計情報から、第2設計情報が推定される(工程S52)。工程S52では、先ず、第2設計情報の「住宅の外皮平均熱貫流率」、「冷房期の平均日射熱取得率」、及び、「暖房期の平均日射熱取得率」が推定される。これらの第2設計情報は、建設予定地が同一地域の住宅においては略同一であるが、異なる地域の住宅においては大きく異なる傾向がある。とりわけ、ある程度仕様が決められている工業化住宅の場合には、同一地域の住宅において略同一となる傾向がある。したがって、本実施形態の工程S52では、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報(即ち、「地域の区分」及び「年間日射地域区分の指定」)」に基づいて、上記の第2設計情報が推定される。
【0072】
本実施形態の工程S52では、例えば、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報(本例では、地域の区分、及び、年間日射地域区分の指定)」と、第2設計情報の「住宅の外皮平均熱貫流率」、「冷房期の平均日射熱取得率」及び「暖房期の平均日射熱取得率」とを対応させたデータベースが用いられるのが望ましい。なお、第2設計情報の「住宅の外皮平均熱貫流率」、「冷房期の平均日射熱取得率」及び「暖房期の平均日射熱取得率」の数値は、これまで建設されてきた住宅の実績に基づいて設定される。これにより、工程S52では、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」に基づいて、第2設計情報の「住宅の外皮平均熱貫流率」、「冷房期の平均日射熱取得率」、及び、「暖房期の平均日射熱取得率」を容易に推定することができる。
【0073】
次に、工程S52では、第2設計情報の「主たる居室の通風の利用」、「その他の居室の通風の利用」、「蓄熱の利用」、「床下空間を経由して外気を導入する換気方式の利用」、「暖房方式の選択」、「主たる居室及びその他の居室の暖房設備機器等の選択」、「冷房方式の選択」、及び、「主たる居室及びその他の居室の冷房設備機器等の選択」が推定される。
【0074】
さらに、工程S52では、第2設計情報の「換気設備の方式の選択」、「ダクト式換気設備を設置する場合の評価方法」、「換気回数」、「熱交換型換気設備の設置」、「配管方式」、「水栓」、「浴槽」、「主たる居室等の昭明」、「太陽光発電設備」、「液体集熱式太陽熱利用設備」、「空気集熱式太陽熱利用設備」、及び、「コージェネレーション設備」が推定される。
【0075】
これらの第2設計情報も、建設予定地が同一地域の住宅においては略同一であるが、異なる地域の住宅においては大きく異なる傾向がある。したがって、本実施形態の工程S52では、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報(即ち、「地域の区分」及び「年間日射地域区分の指定」)」に基づいて、上記の第2設計情報が推定される。
【0076】
本実施形態では、例えば、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報(本例では、地域の区分、及び、年間日射地域区分の指定)」と、上記の第2設計情報とを対応させたデータベースが用いられるのが望ましい。これにより、工程S52では、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」に基づいて、上記の第2設計情報を容易に推定することができる。
【0077】
このように、第2推定工程S5では、施主との間で第2設計情報が決定される前段階(即ち、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前))において、第1設計情報を用いることで、第2設計情報を推定することができる。推定された第2設計情報は、第2設計情報記憶部13に記憶される。
【0078】
次に、本実施形態の設計方法では、第1設計情報、及び、推定された第2設計情報に基づいて、エネルギー消費性能が計算される(工程S6)。本実施形態の工程S6では、施主との間で第2設計情報が決定される前段階において、エネルギー消費性能が計算される。
【0079】
工程S6では、先ず、
図1に示されるように、第1設計情報記憶部12に記憶されている第1設計情報、第2設計情報記憶部13に記憶されている第2設計情報、及び、プログラム部10の消費性能計算部26が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、消費性能計算部26が、演算部6によって実行される。
【0080】
工程S6では、第1設計情報、及び、推定された第2設計情報が、例えば、上記非特許文献1のプログラムや、国立研究開発法人建築研究所によって提供されているエネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)APIに入力される。これにより、工程S6では、施主との間で第2設計情報が決定される前段階において、エネルギー消費性能(一次エネルギー消費量(GJ/年))を計算することができる。計算されたエネルギー消費性能は、エネルギー消費性能記憶部14に記憶される。
【0081】
次に、本実施形態の設計方法では、計算されたエネルギー消費性能に基づいて、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報が計算される(工程S7)。本実施形態の工程S7では、施主との間で第2設計情報が決定される前段階において、第1次情報が計算される。
【0082】
工程S7では、先ず、
図1に示されるように、エネルギー消費性能記憶部14に記憶されているエネルギー消費性能、及び、プログラム部10の第1次情報計算部27が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、第1次情報計算部27が、演算部6によって実行される。
【0083】
第1次情報は、省エネルギー要望情報を満たす太陽光発電装置の仕様に関するものである。本実施形態の仕様としては、省エネルギー要望情報を満たす必要出力数である。上述したように、省エネルギー要望情報には、第2省エネルギー基準(平成30年省エネルギー基準(ZEH基準))が選択されている。このため、本実施形態の工程S7では、第2省エネルギー基準を満たすZEH、Nearly ZEH、及び、LCCM住宅に必要な太陽光発電装置の出力数がそれぞれ計算される。なお、これらの出力数のうち、いずれか一つの出力数のみが計算されるものでもよい。
【0084】
本実施形態の工程S7では、先ず、ZEHに必要な太陽光発電装置の出力数(W)が計算される。上述したように、ZEHは、一次エネルギー消費量の収支をゼロにする(即ち、一次エネルギー消費量を100%削減する)ことを目指した住宅である。このため、工程S7では、工程S6で計算されたエネルギー消費性能(一次エネルギー消費量(GJ/年))をW(ワット)に変換することで、ZEHに必要な太陽光発電装置の出力数が計算される。
【0085】
次に、本実施形態の工程S7では、Nearly ZEHに必要な太陽光発電装置の出力数(W)が計算される。上述したように、Nearly ZEHは、一次エネルギー消費量を75%~100%(本例では、75%)の削減を目指した住宅である。本実施形態の工程S7では、先ず、工程S6で計算されたエネルギー消費性能(一次エネルギー消費量(GJ/年))値をW(ワット)に変換する。この変換した値は、一次エネルギー消費量を100%削減するために必要な太陽光発電装置の出力数である。そして、この変換した値に、例えば0.75を乗じることで、一次エネルギー消費量の75%削減を目指したNearly ZEHに必要な太陽光発電装置の出力数(W)を計算することができる。
【0086】
次に、本実施形態の工程S7では、LCCM住宅に必要な太陽光発電装置の出力数(W)が計算される。上述したように、LCCM住宅は、運用時の一次消費エネルギーに、住宅の建設時、解体時及び再利用時に用いられる材料の一次消費エネルギーを加算した一次消費エネルギーの収支を、マイナス(即ち、一次エネルギー消費量を100%以上削減する)にすることを目指したものである。本実施形態の工程S7では、先ず、工程S6で計算されたエネルギー消費性能(一次エネルギー消費量(GJ/年))をW(ワット)に変換する。この変換した値は、一次エネルギー消費量を100%削減するために必要な1年間の太陽光発電装置の出力数である。そして、この変換した値に、建設時、解体時及び再利用時に用いられる材料の一次消費エネルギーを100%削減するために必要な太陽光発電装置の出力数(例えば、5kW)が加算されることで、LCCM住宅に必要な太陽光発電装置の出力数(W)を計算することができる。なお、加算される出力数については、これまで建設されてきた住宅の実績に基づいて設定されるのが望ましい。
【0087】
次に、工程S7では、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報が、設計装置5の出力部3(ディスプレイ装置)に表示される。
図9は、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報が出力された画面の一例を示す図である。本実施形態では、ZEH、Nearly ZEH、及び、LCCM住宅に必要な太陽光発電装置の出力数がそれぞれ表示されている。これらの第1次情報(出力数)により、施主は、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)に、ZEH、Nearly ZEH、及び、LCCM住宅に必要な太陽光発電装置の仕様やコスト等を容易に把握することができる。第1次情報は、
図1に示した第1次情報記憶部15に記憶される。
【0088】
このように、本実施形態の設計方法では、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)において、住宅のエネルギー消費性能や、それに対応する前記太陽光発電装置の仕様(第1次情報)を計算することができる。これにより、本実施形態の設計方法は、太陽光発電装置の仕様やコストを事前に把握することができるため、住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)にエネルギー消費性能を計算した場合に、それに対応する太陽光発電装置の仕様やコストが、施主の想定を超えるのを抑制することができる。したがって、本実施形態の設計方法は、住宅の再設計が必要となる状況を防ぐことができるため、施主の省エネルギー要望を満たす住宅を効率良く設計することができる。
【0089】
図9において、「次へ」ボタン44が押下されることにより、次の工程S8が実施される。一方、「戻る」ボタン45が押下された場合、
図7に示した画面を表示して、第1設計情報の「住宅のオール電化の有無」を取得する工程S33が実施されるのが望ましい。
【0090】
次に、本実施形態の設計方法では、第2設計情報が決定される(工程S8)。本実施形態の工程S8では、先ず、第1次情報記憶部15に記憶されている第1次情報、及び、プログラム部10の第2設計情報決定部24が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、第2設計情報決定部24が、演算部6によって実行される。
【0091】
工程S8では、先ず、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報に基づいて、施主へのヒアリング等により、施主が希望する具体的な間取りや設備仕様等の情報が取得される。そして、工程S8では、取得された情報に基づいて、第2設計情報が決定される。第2設計情報の詳細については、上述のとおりである。
【0092】
工程S8では、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報に基づいて、太陽光発電装置を載せるのに必要な屋根面の面積が計算されるのが望ましい。そして、計算された屋根面の面積に基づいて間取りが決定されることにより、省エネルギー要望情報を満たす太陽光発電装置を屋根面に確実に載せることができるため、省エネルギー要望情報を満たす住宅の第2設計情報を確実に決定することができる。決定された第2設計情報は、第2設計情報記憶部13に記憶される。
【0093】
本実施形態の工程S8は、例えば、工程S7の処理が終了してから数日後に実施されてもよいし、数日間に亘って工程S8が実施されてもよい。
【0094】
次に、本実施形態の設計方法では、第1設計情報、及び、決定された第2設計情報に基づいて、省エネルギー要望情報を満たす住宅が設計される(工程S9)。工程S9では、先ず、第1設計情報記憶部12に記憶されている第1設計情報、第2設計情報記憶部13に記憶されている第2設計情報、及び、プログラム部10の住宅設計部29が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、住宅設計部29が、演算部6によって実行される。住宅設計部29としては、例えば、コンピュータ支援設計(CAD)等が挙げられる。
【0095】
工程S9では、第1設計情報及び第2設計情報に基づいて、オペレータが住宅を設計する。これにより、本実施形態の設計方法は、施主の省エネルギー要望を満たす住宅を効率良く設計することができる。住宅の設計データは、設計データ記憶部17に記憶される。そして、この住宅の設計データに基づいて、住宅が建設される。
【0096】
本実施形態の工程S9は、例えば、工程S8の処理が終了してから数日後に実施されてもよいし、数日間に亘って工程S9が実施されてもよい。
【0097】
図10は、本発明の他の実施形態の住宅の設計方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0098】
この実施形態の設計方法では、第2設計情報を決定する工程S8が実施された後、第1設計情報、及び、決定された第2設計情報に基づいて、エネルギー消費性能が再計算される(工程S10)。工程S10では、先ず、
図1に示されるように、第1設計情報記憶部12に記憶されている第1設計情報、第2設計情報記憶部13に記憶されている第2設計情報、及び、プログラム部10の消費性能計算部26が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、消費性能計算部26が、演算部6によって実行される。
【0099】
工程S10では、第1設計情報、及び、決定された第2設計情報が、例えば、上記非特許文献1のプログラムや、エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)APIに入力される。これにより、工程S10では、住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)において、エネルギー消費性能(一次エネルギー消費量(GJ/年))を再計算することができる。再計算されたエネルギー消費性能は、エネルギー消費性能記憶部14に記憶される。
【0100】
次に、この実施形態の設計方法では、再計算されたエネルギー消費性能に基づいて、省エネルギー要望情報を満たす太陽光発電装置の仕様に関する第2次情報が計算される(工程S11)。この実施形態の工程S11では、住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)において、第2次情報を計算することができる。
【0101】
工程S11では、先ず、
図1に示されるように、エネルギー消費性能記憶部14に記憶されている再計算されたエネルギー消費性能、及び、プログラム部10の第2次情報計算部28が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、第2次情報計算部28が、演算部6によって実行される。
【0102】
第2次情報は、第1次情報と同様に、省エネルギー要望情報を満たす太陽光発電装置の仕様に関するものである。この実施形態の工程S11では、ZEH、Nearly ZEH、及び、LCCM住宅に必要な太陽光発電装置の出力数が計算される。第2次情報の計算方法については、第1次情報の計算方法と同様である。そして、工程S11では、第2次情報が、設計装置5の出力部3(ディスプレイ装置)に表示される。このように、工程S11では、第2設計情報が決定した後に、太陽光発電装置の仕様やコストを再確認することができる。第2次情報は、
図1に示した第2次情報記憶部16に記憶される。
【0103】
次に、この実施形態の方法では、第2次情報が許容範囲内か否かが判断される(工程S12)。この実施形態の工程S12では、第2次情報から第1次情報を減じた値が、許容範囲内か否かが判断される。工程S12では、先ず、
図1に示されるように、第1次情報記憶部15に記憶されている第1次情報、第2次情報記憶部16に記憶されている第2次情報、及び、プログラム部10の許容範囲判断部30が、作業用メモリ8に読み込まれる。そして、許容範囲判断部30が、演算部6によって実行される。
【0104】
工程S12では、先ず、第2次情報から第1次情報を減じた値が求められる。この値が大きいほど、住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)に計算された第2次情報が、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)に計算された第1次情報から大きく乖離していることを示している。このような値の許容範囲については、適宜設定することができる。この実施形態の許容範囲は、±1kWに設定される。
【0105】
工程S12において、第2次情報から第1次情報を減じた値が、許容範囲内であると判断された場合(工程S12において、「Y」)、前実施形態と同様に、住宅を設計する工程S9が実施され、この住宅の設計データに基づいて、住宅が建設される。一方、第2次情報から第1次情報を減じた値が、許容範囲外であると判断された場合(工程S12において、「N」)、工程S8、工程S10、工程S11及び工程S12が再度実施され、住宅が再設計される。これにより、この実施形態の設計方法では、太陽光発電装置の仕様やコストが、施主の想定範囲を超えた住宅が設計されるのを防ぐことができる。
【0106】
これまでの実施形態では、第1設計情報及び推定された第2設計情報に基づいて、エネルギー消費性能、及び、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報が計算されたが、このような態様に限定されない。たとえば、第1設計情報のみに基づいて、エネルギー消費性能、及び、第1次情報が計算されてもよい。
【0107】
この実施形態の設計方法では、第1設計情報の「住宅の床面積」を変数とする関係式を用いて、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報が計算される。この実施形態では、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」、及び、「住宅のオール電化の有無に関する情報」の全ての組み合わせにおいて、関係式がそれぞれ特定される。
【0108】
この実施形態において、上記組み合わせに用いられる第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」は、上記非特許文献1のプログラムの「地域の区分」の1~8(8種類)である。一方、第1設計情報の「住宅のオール電化の有無に関する情報」は、オール電化、及び、ガス給湯(2種類)である。これにより、第1設計情報の「住宅の建設予定地を特定する情報」、及び、「住宅のオール電化の有無に関する情報」の全ての組み合わせは16種類あるため、16個の関係式が特定される。さらに、この実施形態では、ZEH、Nearly ZEH、及び、LCCM住宅(全3種)ごとに、16個の関係式がそれぞれ特定される。したがって、この実施形態では、48個の関係式が特定される。
【0109】
上記のような関係式を特定するには、先ず、各組み合わせ(組み合わせの一例として、地域の区分:3、オール電化、及び、ZEH)において、第2設計情報が推定される。第2設計情報の推定方法については、上述のとおりである。次に、複数種類の住宅の床面積(例えば、100m2、120m2、140m2、160m2及び180m2)毎に、第1設計情報、及び、推定された第2設計情報が、例えば、上記非特許文献1のプログラムや、エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)APIに入力される。これにより、各組み合わせにおいて、複数種類の住宅の床面積ごとに、エネルギー消費性能(一次エネルギー消費量(GJ/年))が計算される。
【0110】
次に、計算されたエネルギー消費性能に基づいて、複数種類の住宅の床面積ごとに、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報(太陽光発電装置の出力数(W))が計算される。
図11は、地域の区分:3、オール電化、及び、ZEHの住宅について、住宅の床面積と、第1次情報との関係を示すグラフである。
【0111】
図11に示されるように、住宅の床面積、及び、第1次情報(太陽光発電装置の出力数(W))の回帰直線が求められる。この回帰直線が、住宅の床面積を変数とする第1次情報の関係式(本例では、一次関数)として特定される。
【0112】
この実施形態の設計方法では、これらの関係式のうち、取得された第1設計情報(「住宅の建設予定地を特定する情報」、及び、「住宅のオール電化の有無に関する情報」)、及び、省エネルギー住宅(ZEH、Nearly ZEH、及び、LCCM住宅)の条件に適合する一つの関係式を特定し、その特定された関係式に第1設計情報の「住宅の床面積」が代入される。これにより、この実施形態の設計方法では、第2設計情報が決定される前段階で、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を計算することができる。
【0113】
このように、この実施形態の設計方法では、上記の関係式が予め特定されていることにより、上記非特許文献1のプログラムや、エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)APIを用いなくても、第1設計情報のみに基づいて、太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報を容易に求めることができる。したがって、この実施形態の設計方法では、第2設計情報を決定する必要がないため、上記非特許文献1のプログラムや、エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)APIにアクセスできない環境において、施主の省エネルギー要望を満たす住宅を効率良く設計することができる。
【0114】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0115】
屋根面に太陽光発電装置を有する住宅が設計された(実施例)。実施例では、
図2、
図4及び
図8に示した処理手順に基づいて、屋根面に太陽光発電装置を有する住宅が設計された。そして、実施例では、施主との間で第2設計情報が決定される前段階で、第1設計情報及び推定された第2設計情報に基づいて、エネルギー消費性能を計算する工程と、計算されたエネルギー消費性能に基づいて、省エネルギー要望情報を満たす太陽光発電装置の仕様に関する第1次情報(ZEH)を計算する工程とが実施された。
【0116】
さらに、実施例では、第1次情報が計算された住宅について、施主との間で第2設計情報を決定した後に、第1設計情報及び決定した第2設計情報に基づいて、エネルギー消費性能を再計算する工程と、再計算されたエネルギー消費性能に基づいて、省エネルギー要望情報を満たす太陽光発電装置の仕様に関する第2次情報(ZEH)を計算する工程とが実施された。そして、第1次情報と第2次情報との相関が求められた。共通仕様は、次のとおりである。
設計された住宅:51棟
省エネルギー要望情報:第2省エネルギー基準(平成30年省エネルギー基準(ZEH基準))
第1設計情報:
住宅の建設予定地を特定する情報:
地域区分の範囲:4~7
年間日射地域区分の範囲:A2~A4
住宅の床面積:
合計床面積の範囲:100~180m2
住宅のオール電化の有無に関する情報:
オール電化のみ選択:
給湯設備:給湯設備がある(浴室等がある)
熱源機の分類:給湯専用型
給湯熱源機:電気ヒートポンプ給湯機
効率(エネルギー消費効率):3.6%
ふろ機能の種類:ふろ給湯機(追焚あり)
第2設計情報(床面積及び外皮の面積以外については、地域区分4~7で共通した値に設定される):
リビングルームの床面積F1:上記式(1)に基づいて推定
リビングルーム以外の居室の床面積F2:上記式(2)に基づいて推定
非居室の床面積F3:上記式(3)に基づいて推定
外皮の面積F4:上記式(4)に基づいて推定
住宅の外皮平均熱貫流率(UA):0.6W/m2・K
冷房期の平均日射熱取得率(冷房期平均日射熱取得率(ηAC)):1.5
暖房期の平均日射熱取得率(暖房期平均日射熱取得率(ηAH)):1.5
主たる居室の通風の利用:利用しない
その他の居室の通風の利用:利用しない
蓄熱の利用:利用しない
床下空間を経由して外気を導入する換気方式の利用:通年利用する
暖房方式の選択:居室のみ暖房する
主たる居室及びその他の居室の暖房設備機器等の選択:ルームコンディショナー
評価方法の選択:区分(い)
冷房方式の選択:居室のみ冷房する
主たる居室及びその他の居室の冷房設備機器等の選択:ルームコンディショナー
評価方法の選択:区分(い)
換気設備の方式の選択:ダクト式第一種換気設備
ダクト式換気設備を設置する場合の評価方法(比消費電力):0.4W/(m3/h)
換気回数:0.5回/h
熱交換型換気設備の設置:設置しない
配管方式:ヘッダー方式(13Aより大きい)
水栓:2バルブ水栓
浴槽の保温措置:高断熱浴槽を使用する
主たる居室の昭明:
設置の有無:設置する
照明器具の種類:全てLED
多灯分散照明方式の採用:採用しない
調光が可能な制御:採用しない
その他の居室の昭明:
設置の有無:設置する
照明器具の種類:全てLED
調光が可能な制御:採用しない
非居室の昭明:
設置の有無:設置する
照明器具の種類:全てLED
調光が可能な制御:採用しない
液体集熱式太陽熱利用設備:設置しない
空気集熱式太陽熱利用設備:設置しない
コージェネレーション設備:設置しない
【0117】
図12は、第2設計情報が決定される前段階の第1次情報と、第2設計情報が決定された後の第2次情報との関係を示すグラフである。
図12に示されるように、第1次情報と第2次情報とは、正の相関があった。したがって、実施例の設計方法は、住宅の設計初期段階(例えば、プランニング前)において、住宅の前記エネルギー消費性能、及び、それに対応する前記太陽光発電装置の仕様(第1次情報)を高い精度で計算することができた。これにより、実施例の設計方法は、住宅の設計がある程度進んだ設計後期段階(例えば、プランニング後)において、太陽光発電装置の仕様やコストが、施主の想定範囲を超えるのを抑制することができた。したがって、実施例の設計方法は、住宅の再設計が必要となる状況を防ぐことができ、施主の省エネルギー要望を満たす住宅を効率良く設計できることを確認できた。
【符号の説明】
【0118】
S1 省エネルギー要望情報を取得する工程
S3 第1設計情報を取得する工程
S5 第2設計情報を推定する工程
S6 エネルギー消費性能を計算する工程
S7 第1次情報を計算する工程