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特許6997703熱交換器のための熱交換管、熱交換器、およびその組立方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】熱交換器のための熱交換管、熱交換器、およびその組立方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/40 20060101AFI20220107BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20220107BHJP
   F28F 9/16 20060101ALI20220107BHJP
   F28F 1/00 20060101ALI20220107BHJP
   B21D 53/08 20060101ALI20220107BHJP
   B21D 39/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F28F1/40 G
F28F1/32 C
F28F9/16
F28F1/00 E
B21D53/08 H
B21D53/08 J
B21D39/06 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018509907
(86)(22)【出願日】2016-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2016094852
(87)【国際公開番号】W WO2017032228
(87)【国際公開日】2017-03-02
【審査請求日】2019-07-08
(31)【優先権主張番号】201510528384.9
(32)【優先日】2015-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515258882
【氏名又は名称】ダンフォス・マイクロ・チャンネル・ヒート・エクスチェンジャー・(ジャシン)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ウェンジアン
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第9315296(DE,U1)
【文献】特開2000-218332(JP,A)
【文献】特開2012-002399(JP,A)
【文献】特開2015-090219(JP,A)
【文献】特開2002-340441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/40
F28F 1/32
F28F 9/16
F28F 1/00
B21D 53/08
B21D 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
別体である少なくとも2つの熱交換副管を含む一体化熱交換管として構成され、前記少なくとも2つの熱交換副管の隣接するもの同士が接しながら一体化した状態にあるときこれら熱交換副管によって全周が囲まれた空間が前記一体化熱交換管の中心に形成され、前記空間は、挿入体を収容することにより、前記一体化熱交換管の外側面の形状に対応するフィン穴内において前記一体化熱交換管の拡をもたらし、これにより前記一体化熱交換管と前記フィン穴とを結合するために使用されることを特徴とする熱交換器のための熱交換管。
【請求項2】
前記一体化熱交換管の外側面は円形であり、および前記フィン穴は前記一体化熱交換管と同じ形状であることを特徴とする、請求項1に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項3】
前記少なくとも2つの熱交換副管の外側面の一部は、前記熱交換管の前記中心にある前記空間を囲むことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項4】
前記一体化熱交換管は、前記少なくとも2つの熱交換副管の前記外側面が連結シートを介して互いに連結されるように形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項5】
前記連結シートは、前記挿入体を使用することによって前記少なくとも2つの熱交換副管を前記フィン穴内で拡張および結合する場合に伸長されるかまたは割れることを特徴とする、請求項4に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項6】
前記少なくとも2つの熱交換副管はN個の熱交換副管であり、ここで、Nは2以上の自然数であり、前記N個の熱交換副管のそれぞれは、1/Nの円弧を有する熱交換副管であり、前記N個の熱交換管のそれぞれは、前記それぞれの円弧に対応するその中心に凹部を有し、および前記凹部は、前記熱交換副管の伸長方向に沿って前記熱交換副管のチャネルに向かって内側に陥凹されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項7】
前記N個の凹部は、前記N個の熱交換副管が共に一体化される場合に円形の空間を形成することを特徴とする、請求項6に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項8】
各熱交換副管のチャネル数は少なくとも1であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項9】
前記挿入体は内部拡張管であり、かつ前記空間に対応する形状を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項10】
前記内部拡張管は中空、中実または多孔質であることを特徴とする、請求項9に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項11】
外側に突出する突起は前記内部拡張管の外側面に設けられ、前記突起は、前一体化熱交換管の前記拡張によって互いに接する前記少なくとも2つの熱交換副管が離間することで形成されるギャップに挿入されることを特徴とする、請求項9または10に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項12】
前記内部拡張管は、それぞれの前記フィン穴内の前記熱交換副管の数と同じ数の突起を有することを特徴とする、請求項11に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項13】
前記突起は、前記内部拡張管の伸長方向に沿って延びることを特徴とする、請求項11または12に記載の熱交換器のための熱交換管。
【請求項14】
それぞれフィン穴を設けられた複数のフィンと、
前記複数のフィンを互いに積み重ねるようにそれぞれ前記フィン穴を貫通する複数の熱交換管と
を含む熱交換器であって、前記複数の熱交換管の少なくとも1つは、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱交換管である、熱交換器。
【請求項15】
請求項14に記載の熱交換器の組立方法であって、
複数のフィンを互いに積み重ねるように複数の熱交換管のそれぞれを前記複数のフィンの対応するフィン穴に通すことと、
各熱交換管が拡張されかつ前記フィン穴の内壁と結合されるように、各熱交換管の中心にある空間に挿入体を挿入することと
を含む組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「Heat Exchange Tube for Heat Exchanger,Heat Exchanger and Assembly Method Thereof」という名称の2015年8月25に出願された中国特許出願公開第201510528384.9号明細書の優先権を主張するものであり、この特許は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、加熱、換気、空調、自動車、冷凍および輸送の分野に関し、特に蒸発器、凝縮器、ヒートポンプ熱交換器、水タンクなどで使用される熱交換器と、熱交換器の組立方法と、熱交換器で使用される熱交換管とに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、一般的に、熱交換器を製造するための2種類の技術があり、その技術の一方は機械式管拡張技術であり、他方はろう付け技術である。
【0004】
一般的な管-フィン型の熱交換器10は、図1~3に示す通りである。管-フィン型の熱交換器10は、それぞれフィン穴2を設けられた複数のフィン1と、複数のフィンを互いに積み重ねるようにそれぞれ対応するフィン穴を貫通する複数の熱交換管3と、複数の熱交換管3の対応する2つの熱交換管と連通するようにそれぞれ構成された少なくとも1つの曲げ部4と、対応する熱交換管3に流体を配給し、かつ最後に管-フィン型の熱交換器10から流体を排出するように構成された少なくとも1つの収集パイプ5とを含む。特に、冷媒は熱交換管を通り、一方で空気などの媒体はフィンを通る。
【0005】
図示するように、通常、熱交換管3は円形であり、フィン穴2も円形である。フィン穴2の直径が熱交換管3の直径よりも若干大きい状態で、熱交換管3がフィン1を貫通し、すべてのフィンを取り付けた後、拡管具の拡張ヘッド6が管を拡張するように熱交換管3内に突出する。拡管具の拡張ヘッド6の直径は、フィン穴2の直径よりも若干大きい。管が拡張した後、熱交換管3がフィン1に密着することを保証することができる。
【0006】
微小チャネル/平行流熱交換器20は図4に示す通りである。熱交換器20は、2つのマニホルド21と、2つのマニホルド21間に延びる複数の平熱交換管22と、隣接する熱交換管22間に設けられた複数のフィン23とを含む。加えて、マニホルド21の一端に取り付けられた端部カバー24と、マニホルド21の空洞に設けられたバッフル25と、熱交換器20の片側に取り付けられたサイドプレート26と、マニホルド21に設けられた入口/出口管継手27とがさらに示されている。
【0007】
熱交換器20のすべての構成要素は、アルミニウムでできている。図示するように密接して束ねられた後、平熱交換管22およびフィン23は、ろう付けを行うためにろう付け炉に送られ、ろう付け炉を出た後、互いに溶接される。ろう付けプロセスには、ろう付け用フラックスの吹き付け、乾燥、加熱、溶接、および冷却などがある。
【0008】
一方、公知のように、所与の容量の熱交換器に対して熱交換管の水力直径が小さいほど、熱交換器の性能は高くなり、材料コストは安くなる。しかし、機械式管拡張技術は、熱交換管の直径に大きく影響され、現在では直径が5mmを超える熱交換管にのみ適用することができる。
【0009】
さらに、従来の熱交換管の場合、コストおよび熱交換効率などの因子を考慮して、肉厚は、通常、非常に薄く設計され、機械式管拡張技術が採用された場合、管壁は破裂するまで拡張されて、製品が廃棄されることになりやすい。
【0010】
他方のはんだ付け技術に関して、この技術は、水力直径が小さい熱交換管を有する熱交換器に使用することができる。微小チャネル熱交換器は、通常、この技術を使用し、比較的良好な熱交換性能を有する。しかし、一方では、複雑なろう付けプロセス、高い設備投資、および不安定な製品品質などの問題が微小チャネル熱交換器の市場競争力を大きく制限している。他方では、製品は、高温溶接される必要があるため、防食層または親水層をフィンの材料に形成することは不可能であり、管-フィン型の熱交換器よりも防食性能および排水能力が低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の2つのろう付け技術の欠陥または欠点を解決するかまたは少なくとも緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、熱交換器のための熱交換管、熱交換器、およびその組立方法が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、熱交換器のための熱交換管が提供され、熱交換管は、中心に空間を有する一体化熱交換管であり、この空間は、挿入体を収容して、熱交換器の対応するフィン穴内で一体化熱交換管を拡張および結合するために使用される。
【0014】
一例では、一体化熱交換管の外側面は略円形であり、およびフィン穴は一体化熱交換管と同じ形状である。
【0015】
一例では、一体化熱交換管は、互いから分離された少なくとも2つの熱交換副管を含む。
【0016】
一例では、少なくとも2つの熱交換副管の外側面は、連結シートを介して互いに連結される。
【0017】
一例では、連結シートは、挿入体を使用することによって少なくとも2つの熱交換副管をフィン穴内で拡張および結合する場合に伸長されるかまたは割れる。
【0018】
一例では、少なくとも2つの熱交換副管はN個の熱交換副管であり、ここで、Nは2以上の自然数であり、N個の熱交換副管のそれぞれは、1/Nの円弧を有する熱交換副管であり、N個の熱交換管のそれぞれは、それぞれの円弧に対応するその中心に凹部を有し、およびこの凹部は、熱交換副管の伸長方向に沿って熱交換副管のチャネルに向かって内側に陥凹される。
【0019】
一例では、N個の凹部は、N個の熱交換副管が共に一体化される場合に略円形の空間を形成する。
【0020】
一例では、各熱交換副管のチャネル数は少なくとも1である。
【0021】
一例では、挿入体は内部拡張管であり、かつ空間に対応する形状を有する。
【0022】
一例では、内部拡張管は中空、中実または多孔質である。
【0023】
一例では、外側に突出する突起が内部拡張管の外側面に設けられ、この突起は、熱交換副管をフィン穴内で拡張および結合する場合に2つの隣接する熱交換副管間のギャップに挿入される。
【0024】
一例では、内部拡張管は、それぞれの前記フィン穴内の熱交換副管の数と同じ数の突起を有する。
【0025】
一例では、突起は、内部拡張管の伸長方向に沿って延びる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、
それぞれフィン穴を設けられた複数のフィンと、
複数のフィンを互いに積み重ねるようにそれぞれフィン穴を貫通する複数の熱交換管と
を含む熱交換器が提供され、複数の熱交換管の少なくとも1つは、上記の熱交換管である。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、熱交換器の組立方法が上記に従って提供され、その組立方法は、
複数のフィンを互いに積み重ねるように複数の熱交換管のそれぞれを複数のフィンの対応するフィン穴に通すことと、
各熱交換管が拡張されかつフィン穴の内壁と結合されるように、各熱交換管の中心にある空間に挿入体を挿入することと
を含む。
【0028】
本発明の実施形態では、本発明の技術的解決策は、以下の有益な技術的効果を有する。
1.本発明の実施形態は、微小であるかまたは小さい内径を有する熱交換管をフィンに合わせて拡張しかつフィンに結合するか、または組み付けるという課題に対処する。
2.本発明の実施形態は、ろう付けプロセスを使用する必要がなく、それにより、製造コストを大幅に削減する。
3.本発明の実施形態は、従来の熱交換管の内部拡張による破裂のリスクを軽減する。
4.本発明の実施形態は、様々な流体が同じ熱交換管を通ることを可能にするように、熱交換管を少なくとも2つの副管に分割する。
【0029】
添付図面に関連した好ましい実施形態についての以下の説明から、本発明のこれらおよび/または他の態様および利点が明らかになり、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】先行技術の管-フィン型熱交換器の構造図である。
図2a-2b】それぞれ図1の側面図および正面図である。
図3】拡管具によって管拡張された図1のフィンの図である。
図4】先行技術の微小チャネル/平行流熱交換器の構造図である。
図5a-5b】それぞれ、本発明の実施形態による共に組み立てられたフィンおよび熱交換管の構造図および正面図である。
図5c図5bの円部Aの詳細図である。
図5d】フィンの正面図である。
図6a-6b】それぞれ図5aの熱交換副管の一例を示す正面図および構造図である。
図6c-6d】それぞれ図5aの熱交換副管の別の例を示す正面図および構造図である。
図6e-6f】それぞれ図6aおよび図6bの熱交換副管を含む一体化熱交換管を示す正面図および構造図である。
図6g-6h】それぞれ図6cおよび図6dの熱交換副管を含む一体化熱交換管を示す正面図および構造図である。
図7a-7b】それぞれ、本発明の別の実施形態による共に組み立てられたフィンおよび熱交換管の構造図および正面図である。
図7c図7bの円部Bの詳細図である。
図7d-7f】挿入体の様々な例の図である。
図8a-8b】挿入体が挿入された、図5aおよび図5bに示すフィンおよび熱交換管からなる構造体の構造図および正面図である。
図8c図8bの円部Cの詳細図である。
図8d】熱交換管の別の形態が採用された場合の図8bの円部Cの詳細図を示す。
図9a-9b】本発明の別の実施形態による、挿入体が挿入されたフィンおよび熱交換管からなる構造体の構造図および正面図である。
図9c図9bの円部Dの詳細図である。
図10】本発明の別の実施形態による一体化熱交換管を示す図である。
図11a-11b】挿入体が挿入された図10の一体化熱交換管を使用した熱交換器の構造体の構造図および正面図である。
図11c図11bの円部Eの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の実施形態を用いておよび図1~11cに関連して、本発明の技術的解決策がさらに具体的に説明される。説明における同一または同様の参照符号は、同一または同様の構成要素を示す。添付図面を参照した本発明の実施形態の以下の説明は、本発明の包括的発明概念を説明することが意図され、本発明を限定するものと解釈すべきでない。
【0032】
本発明の実施形態に従って、共に組み立てられた熱交換管51およびフィン52を有する構造体50の図は、図5aおよび図5bに示す通りであり、背景技術のセクションで説明したように、本発明の実施形態で説明する熱交換管51およびフィン52からなる一体化構造体は管-フィン型の熱交換器で使用することができ、微小チャネル/平行流熱交換器で使用することもできることが当業者に分かるであろう。管-フィン型の熱交換器および微小チャネル/平行流熱交換器の構造は、背景技術で詳細に説明したことから、管-フィン型熱交換器および微小チャネル/平行流熱交換器の特定の構造はここで詳細に説明しない。当業者は、上記の対応する熱交換器のそれぞれの部品を部分的に置き換えて、本発明の実施形態で提示される、共に組み立てられたフィンおよび熱交換管を有する構造体を直接使用することができる。換言すると、本発明の熱交換管は、必要に応じて、上記の熱交換器の特定のタイプに限定されることなく様々な熱交換器に適用することができる。
【0033】
実際の組立中、フィン52は、最初に一層ずつ共に積み重ねられ、次いで熱交換管51によって直列に連結されて、図5aに示す構造体を形成する。
【0034】
一例では、熱交換管51の外側面は略円形であり、相応してフィン穴53も略円形形状である。すなわち、フィン穴53の形状および熱交換管51の形状は、同一であるかまたは対応している必要がある。熱交換管51がフィン52のフィン穴53を貫通することを可能にするために、熱交換管51の外径は、通常、フィン穴53の内径よりも若干小さいように設定される。当然ながら、熱交換管の外径とフィン穴の内径との間の寸法関係は、必要に応じて当業者が設定することができる。
【0035】
図5cおよび図5dを参照すると、熱交換管51とフィン穴53との間にある程度の空間またはギャップ54があることが分かる。ギャップ54は、熱交換管51に対するフィン穴53の余裕代であり、フィンの積み重ねられた層またはフィンパッケージを熱交換管51が貫通することを容易にする。
【0036】
図5a~5cに示すように、熱交換管51は、中心に空間55を有する一体化熱交換管である。空間55は、(下記に詳細に説明される)挿入体57を収容して、熱交換器の対応するフィン穴53内で一体化熱交換管を拡張および結合するために使用される。
【0037】
特に、一体化熱交換管51は、互いから分離された少なくとも2つの熱交換副管58を含む。図5cに示すように、一体化熱交換管51は、2つの熱交換副管58を含む。少なくとも2つの熱交換副管58の外側面の一部は、熱交換管51の中心にある空間55を囲んでいる。
【0038】
一例では、少なくとも2つの熱交換副管58はN個の熱交換副管であり、ここで、Nは2以上の自然数であり、N個の熱交換副管58のそれぞれは、1/Nの円弧を有する熱交換副管であり、N個の熱交換管58のそれぞれは、それぞれの円弧に対応するその中心に凹部59を有し、および凹部59は、熱交換副管58の伸長方向に沿って熱交換副管58のチャネル56に向かって内側に陥凹されている。N個の凹部59は、N個の熱交換副管58が共に一体化される場合に略円形の空間55を形成する。
【0039】
図5cは、一体化熱交換管58が2つの略半円形の熱交換副管58を含むことを示す。各熱交換副管58は、それぞれの円弧に対応するその中心に略半円形の凹部59を有し、凹部59は、熱交換副管58の伸長方向において熱交換副管内のチャネル56に向かって内側に陥凹されている。各熱交換副管58はチャネル56を有する。当然ながら、当業者は、図示した例に限定されることなく、挿入体57の形状に応じて凹部59の形状を具体的に設計することになる。
【0040】
当然のことながら、図5cでは、熱交換副管58は、半円形または略半円形であるが、熱交換副管58自体は、拡張および結合に関係しないため、熱交換副管58の断面は、任意の形状を取ることができ、多孔質とするかまたは毛細孔を有することもできる。
【0041】
図5cに示され、半円形凹部59を有する半円形の熱交換副管58が図6aおよび図6bに示されている。
【0042】
図6aおよび図6bに示したものと略同じであり、それぞれチャネル56の代わりに毛細管の形態を取る点で異なる熱交換副管58が図6cおよび図6dに示されている。図に具体的に示すように、3つのチャネル56が示されている。図示するように、各熱交換管58において、3つのチャネル56は同じのものである。当然ながら、3つのチャネル56は、異なるかまたは任意の他の適切な形態で形成することもできる。
【0043】
図6aおよび図6bに示す2つの熱交換副管58を合わせたときに構成される一体化熱交換管51の例が図6eおよび図6fに示されている。この時点で、一体化熱交換管51の外径はフィン穴53の内径よりも若干小さく、そのため、確実に、複数のフィン52によって形成されたフィンパッケージに2つの熱交換副管58を並べて挿入できるようになる。
【0044】
図6cおよび図6dに示す2つの多チャネル熱交換副管58を組み立てることによって形成された一体化熱交換管51の一例が図6gおよび図6hに示されている。
【0045】
上記に説明した図では、2つの同一の熱交換副管58を一体化熱交換管51に統合したものが示されているが、当然ながら、当業者は、完全に同じものではなく、共に組み立てられる熱交換副管58の形態を必要に応じて定めることができる。例えば、図6aに示す単チャネルの熱交換副管58は、図6cに示す多チャネルの熱交換副管58と共に統合される。
【0046】
本発明の実施形態で説明した熱交換管51は、単一の孔、多孔質、毛細孔などであり得、すなわち、熱交換管51のチャネル56の数は、必要に応じて選択され得ることが上記に説明した図から分かる。空間55は、円形、正方形、鳩尾形、または他の非円形形状などとすることができる。本明細書において、熱交換管51のチャネルの数および断面形状と空間の数および形状とは、図に示した例に限定されることなく、任意に組み合わせる得ることに留意する必要がある。熱交換管51が複数の熱交換チャネルを有する場合、様々な流体が様々な熱交換チャネルを通ることができる。
【0047】
本発明の別の実施形態に従って、共に組み立てられた熱交換管51およびフィン52を有する構造体50の図が図7a~7c示されており、この構造体50は、図5aおよび図5bに示す例と実質的に同じであり、単に各熱交換副管58が3つの熱交換チャネル56を有する点で異なっているに過ぎない。したがって、図5aおよび図5bに示すものと同じ内容は再度説明されない。
【0048】
挿入体が挿入された、図5aおよび図5bに示す構造体の構造図および正面図が図8aおよび図8bに示されている。2つの熱交換副管58が同じフィン穴53を貫通した後、挿入体57が、2つの熱交換副管58間に形成された空間55に挿入される。別々に押し込まれた後、2つの熱交換副管58は、機械式の拡張および結合と同じ目的を達成するように、フィン穴53の内壁と完全に接触するようになる(図7cを参照されたい)。挿入が完了すると、挿入体57は、熱交換副管58のための安全な支持体を形成するように、再度取り外されることなく、2つの熱交換副管58間に残る。
【0049】
挿入体57は、機械式の拡張および結合の目的を達成するために、2つの熱交換副管58が互いから離間され、それにより熱交換副管58の外側面とフィン穴53との間のギャップをなくすように、2つの熱交換副管58を密着して支持することが図8cから分かる。
【0050】
挿入体57の様々な実施形態の構造図は、図7d~7fに示す通りである。図示するように、一例では、挿入体57は、中空、中実、多孔質、円形、非円形、正方形、鳩尾形とすることができる内部拡張管である。挿入体57の特定の形状は、対応する熱交換管51の中心にある空間55の形状に対応する必要がある。挿入体は、貯蔵器または過熱/過冷管として機能し得ることに留意する必要がある。
【0051】
特に、外側に突出する突起571が内部拡張管57の外側面に設けられ、この突起571は、熱交換副管58をフィン穴53内で拡張および結合する場合に2つの隣接する熱交換副管58間のギャップ591に挿入される。突起571は、内部拡張管の伸長方向に沿って延びる。
【0052】
好ましくは、一例では、内部拡張管57は、各前記フィン穴53内の熱交換副管58の数と同じ数の突起571を有する。すなわち、図8cに示すように、一体化熱交換管51が2つの熱交換副管58を含む場合に2つの熱交換副管58間に2つのギャップ591が必ず形成され、したがって、フィン穴53内で2つの熱交換副管58を等しく拡張および結合できるように、2つの突起571を設けることが求められる。当然ながら、当業者は、必要に応じて突起の数を具体的に選択することができる。
【0053】
フィン穴53内において、3つのチャネル56を有する2つの熱交換副管58を拡張および結合する例が図8dに示され、この例は、図8cに示すものと実質的に同じであることから、本明細書でさらに詳説しない。
【0054】
フィン穴53内において、別の形態の一体化熱交換管51を拡張および結合する例が図9a~9cに示されている。特に、この例は、図8a~8cに示す例と実質的に同じであり、一体化熱交換管51が、2つの熱交換副管ではなく、3つ以上の熱交換副管を含む点のみで異なっている。特に、一体化熱交換管51の熱交換副管58は、同じ寸法を有さなくてよいことが説明されなければならない。図の説明を容易にするために、一体化熱交換管51は、同じ寸法の4つの熱交換副管58を含み、各熱交換副管58が熱交換チャネル56を有して示されている。当然ながら、各熱交換副管58は、多孔質または毛管タイプとすることができる。上記のように、一体化熱交換管51は、4つの熱交換副管58を含むため、相応して、挿入体57は、フィン穴53内で一体化熱交換管51をより良好に拡張および結合するように4つの突起571を有する。図9cに示すように、拡張および結合後、一体化熱交換管51とフィン穴53の内壁との間にギャップはない。
【0055】
図10を参照すると、一体化熱交換管51が(図示するように4つなどの)複数の熱交換副管58を含む場合にフィン穴53内での熱交換副管58の組み立てを容易にするために、隣接する熱交換副管58の外側面は、実際の必要に応じて、連結シート60を用いて互いに連結することができる。実際には、連結シート60は、きわめて薄いように構成することができ、空間59に内部拡張管57を挿入した後、熱交換副管58間の連結シート60は、割れるかまたは伸張され得る。要するに、内部拡張管57が挿入された後、熱交換副管58がフィン穴53の内壁に取り付けられる限り、連結シート60の形態は限定されない。
【0056】
図10に示す一体化熱交換管51を熱交換器に取り付けた例が図11a~11cに示されている。図示するように、具体的に図11cを参照すると、一体化熱交換管51の熱交換副管58間に挿入体57を挿入した後、連結シート60が伸長され、熱交換副管58がフィン穴53の内壁に取り付けられたことが示されている。特に、一体化熱交換管51は、4つの熱交換副管58を含むため、内部拡張管57に4つの突起571が設けられている。
【0057】
上記のように、一例では、熱交換管51の直径は、5mm未満、好ましくは4mmまたは3mm未満、またはより好ましくは2mmもしくは1mm未満でなければならず、本発明の挿入体57を使用して熱交換管51とフィン52との間の堅固な連結を達成することができ、これは、機械式管拡張技術またはろう付け技術と同じまたは実質的に同じ技術的効果を有する。一例では、本発明の熱交換管はまた、挿入体の直径が5mm未満、好ましくは4mmもしくは3mm未満、またはより好ましくは2mmもしくは1mm未満の事例に適用することができる。
【0058】
本発明の別の実施形態では、熱交換器が提供され、その熱交換器は、
それぞれフィン穴を設けられた複数のフィンと、
複数のフィンを互いに積み重ねるようにそれぞれ対応するフィン穴を貫通する複数の熱交換管と
を含み、熱交換管の少なくとも1つは、上記の熱交換管であることを特徴とする。
【0059】
熱交換器で使用される熱交換管が上記の熱交換管と同じであることから、熱交換管に関する詳細について再度説明しない。
【0060】
本発明のさらに別の実施形態では、上記の熱交換器の組立方法が提供され、その組立方法は、
複数のフィンを互いに積み重ねるように複数の熱交換管のそれぞれを複数のフィンの対応するフィン穴に通すことと、
各熱交換管が拡張されかつフィン穴の内壁と結合されるように、各熱交換管の中心にある空間に挿入体を挿入することと
を含む。
【0061】
熱交換器の組立方法で使用される熱交換管が上記の熱交換管と同じであることから、熱交換管に関する詳細について再度説明しない。
【0062】
本発明の様々な例において、熱交換管、熱交換器、および対応する組立方法は、以下の利点を有することができる。
1)本発明の実施形態は、熱交換管を毛細管にすることを可能にし、これは管の加熱および強度の改善に寄与する。
2)本発明の中間挿入体は、貯蔵器または過熱/過冷管として機能することができ、これは熱交換管の熱交換を改善する。
3)本発明の実施形態は、従来の機械式拡張および結合を用いて小型の熱交換管を拡張および結合することができないという問題に対処する。
4)本発明の実施形態は、液圧拡張および結合によって引き起こされる局所破裂の問題と、拡張および結合時の封止の問題とに対処する。
5)本発明の実施形態は、実際の必要に応じた必要な調整を考慮して、熱交換管が多様化されることを可能にする。
6)本発明の実施形態は、直径が小さい熱交換管とフィンとの間の拡管に関する主要な障害に対処する。
7)本発明では、従来の円形単一開孔の熱交換管と比較して、分割型の多孔質管の採用により、作動媒体の充填量を効果的に削減することができ、かつ熱交換管の表面積を増やすことができ、それにより熱交換効率が向上する。
8)従来の微小チャネル多孔質平熱交換管との関連で、フィン組立方法は、ろう付けプロセスを必要とせず、これはコストの削減に寄与する。
9)従来の微小チャネル平管と比較して、熱交換管およびフィンからなるアセンブリは、凝縮水の凍結解除および放出に寄与し、冷却のための空調装置のヒートポンプ作動条件下での微小チャネル熱交換器管の適用を拡大するのにかなりの効力を有する。
【0063】
上記は、単に本発明の実施形態の一部に過ぎず、当業者には、包括的発明概念の原理および趣旨から逸脱することなく、これらの実施形態を変更することができ、本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等物によって規定されることが分かるであろう。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図6g
図6h
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図9c
図10
図11a
図11b
図11c