(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】生産性向上のためのRNA関連酵素の修飾
(51)【国際特許分類】
C12P 19/34 20060101AFI20220128BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220128BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20220128BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20220128BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20220128BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12P19/34 A
C07K19/00 ZNA
C07K14/00
C12N9/10
C12N15/70 Z
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2018519481
(86)(22)【出願日】2016-10-14
(86)【国際出願番号】 US2016057044
(87)【国際公開番号】W WO2017066573
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-10-11
(32)【優先日】2015-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517316797
【氏名又は名称】トランスレイト バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュトラック-ローグ, ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】デローサ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ハートレイン, マイケル
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/028429(WO,A2)
【文献】特表2004-532033(JP,A)
【文献】特表2010-514451(JP,A)
【文献】Kyrieleis O. J. P. et al.,Crystal structure of vaccinia virus mRNA capping enzyme provides insights into the mechanism and evolution of the capping apparatus.,Structure,2014年,vol. 22, no. 3,pp452-465, Supplemental Information
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/00
C07K 19/00
C07K 14/00
C12N 9/10
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップされたmRNAまたはmRNA類似体オリゴヌクレオチドを生成する方法であって、融合タンパク質により、グアニリル分子を、前記mRNAまたはmRNA類似体オリゴヌクレオチドの5’末端に導入し、かつメチル化する工程が促進され、前記融合タンパク質が、グアニリルトランスフェラーゼと低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含み、前記融合タンパク質が、配列番号8と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と配列番号7と少なくとも90%同一のアミノ酸配列とを有
し、前記mRNA類似体オリゴヌクレオチドが、ヌクレオシド類似体;化学修飾された塩基;生体修飾された塩基;介在塩基;修飾された糖類;および/または修飾されたリン酸基を含み、前記ヌクレオシド類似体が、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、及び2-チオシチジンからなる群から選択され、前記生体修飾された塩基が、メチル化塩基であり、前記修飾された糖類が、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソースからなる群から選択され、前記修飾されたリン酸基が、ホスホロチオエート及び5’-N-ホスホルアミダイト連結からなる群から選択される、前記方法。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、配列番号8と配列番号7とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記融合タンパク質が、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
グアニリルトランスフェラーゼと低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含む、融合タンパク質を含む、キャップされたmRNAを生成するための組成物であって、前記融合タンパク質が、配列番号8と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と配列番号7と少なくとも90%同一のアミノ酸配列とを有する、組成物。
【請求項5】
前記グアニリルトランスフェラーゼが、配列番号6と配列番号7とを含み、前記SUMOタンパク質が、配列番号5を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記グアニリルトランスフェラーゼが、大サブユニットと小サブユニットとを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記SUMOタンパク質が、前記大サブユニットと共有結合し、かつ共発現する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記融合タンパク質が、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
請求項4に記載の融合タンパク質をコードするベクター。
【請求項10】
グアニリルトランスフェラーゼを発酵により生成する方法であって、a)発酵培地で、前記グアニリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を備えた、少なくとも1つの組換え核酸分子で形質転換された微生物を培養することと;b)前記培養する工程から生成された生成物を採取することと、を含み、前記グアニリルトランスフェラーゼが、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質を含むグアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含み、前記融合タンパク質が、配列番号8と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と配列番号7と少なくとも90%同一のアミノ酸配列とを有し、前記グアニリルトランスフェラーゼが、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において使用するためのものである、前記方法。
【請求項11】
前記グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質が、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質が、配列番号8を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記SUMOタンパク質が、グアニリルトランスフェラーゼに共有結合で結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記共有結合が、前記SUMOタンパク質と前記グアニリルトランスフェラーゼの大サブユニットとの間にある、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記発酵培地が、Terrific Broth、Cinnabar、2×YT、及びLBからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物が細菌である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記グアニリルトランスフェラーゼをコードする前記核酸配列が、配列番号2及び配列番号3と少なくとも90%同一である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記組換え核酸分子が、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をコードする前記核酸配列が、配列番号1と少なくとも90%同一である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記生成物がグアニリルトランスフェラーゼである、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記生成物が、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含むグアニリルトランスフェラーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質が、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年10月14日に出願された米国仮出願第62/241,350号に対する優先権を主張し、その開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本明細書は、配列表(「SL_SHR-1187WO」という名称のテキスト(.txt)ファイルとして2016年10月14日に電子的に提出されたもの)を参照する。該テキストファイルは、2016年10月14日に作成されたものであり、サイズは28,402バイトである。配列表の全内容が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
メッセンジャーRNA(「mRNA」)療法は、種々の疾患の治療に対する益々重要なアプローチとなっている。効果的なmRNA療法には、mRNAを患者に効果的に送達することや、mRNAによってコードされるタンパク質を患者の身体内で効率的に産生することが必要である。in vivoでのmRNAの送達とタンパク質の産生とを最適化するには、通常、構築物の5’末端に適正なキャップを必要とし、これがmRNAを分解から保護し、かつ良好なタンパク質翻訳を促進させる。したがって、mRNAをキャップすることができる酵素を大規模に生産することが、治療用途向けのmRNAの生産に特に重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、mRNAをキャップすることができる酵素を効果的に生産するための改良された方法を提供する。本発明は、一つには、グアニリルトランスフェラーゼ(GT)をSUMOタグで修飾することにより、治療用途向けのキャップされたmRNAを生成するのに必要なGTを大規模に生産することができるという驚くべき発見に基づいている。
【0005】
それゆえに、一態様では、本発明は、キャップされたRNAまたはRNA類似体オリゴヌクレオチドを生成する方法を提供し、その方法では、融合タンパク質により、グアニリル分子を、RNAまたはRNA類似体オリゴヌクレオチドの5’末端に導入し、かつメチル化する工程が促進される。
【0006】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、グアニリルトランスフェラーゼと低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含む。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼは、配列番号6と配列番号7とを含み、SUMOタンパク質は、配列番号5を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号8と配列番号7とを含む。
【0007】
一部の実施形態では、RNAまたはRNA類似体オリゴヌクレオチドの一方の端部は5’末端である。
【0008】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する。
【0009】
別の態様では、本発明は、グアニリルトランスフェラーゼと低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含む融合タンパク質を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼは、配列番号6と配列番号7とを含み、SUMOタンパク質は、配列番号5を含む。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼは、大サブユニットと小サブユニットとを含む。一部の実施形態では、SUMOタンパク質は、大サブユニットと共有結合し、かつ共発現する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する。
【0011】
別の態様では、本発明は、グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするベクターを提供する。
【0012】
一部の実施形態では、ベクターは、配列番号1と配列番号2とを含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3を含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号4と配列番号3とを含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、グアニリルトランスフェラーゼを発酵により生成する方法であって、a)発酵培地で、配列番号6及び配列番号7と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するグアニリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を備えた、少なくとも1つの組換え核酸分子で形質転換された微生物を培養することと;b)培養する工程から生成された生成物を採取することと、を含む該方法を提供するものである。
【0014】
一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼは、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質は、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質は、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質を含む。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質は、配列番号8を含む。
【0015】
一部の実施形態では、SUMOタンパク質は、グアニリルトランスフェラーゼに共有結合で結合している。一部の実施形態では、該共有結合は、SUMOタンパク質とグアニリルトランスフェラーゼの大サブユニットとの間にある。
【0016】
一部の実施形態では、発酵培地は、Terrific Broth、Cinnabar、2×YT、及びLBからなる群から選択される。一部の実施形態では、微生物は細菌である。
【0017】
一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列は、配列番号2及び配列番号3と少なくとも90%同一である。
【0018】
一部の実施形態では、組換え核酸分子は、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をコードする核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号1と少なくとも90%同一である。
【0019】
一部の実施形態では、該生成物はグアニリルトランスフェラーゼである。一部の実施形態では、該生成物は、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含むグアニリルトランスフェラーゼである。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質は、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をさらに含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
キャップされたRNAまたはRNA類似体オリゴヌクレオチドを生成する方法であって、融合タンパク質により、グアニリル分子を、前記RNAまたはRNA類似体オリゴヌクレオチドの5’末端に導入し、かつメチル化する工程が促進される、前記方法。
(項目2)
前記融合タンパク質が、グアニリルトランスフェラーゼと低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記グアニリルトランスフェラーゼが、配列番号6と配列番号7とを含み、前記SUMOタンパク質が、配列番号5を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記融合タンパク質が、配列番号8と配列番号7とを含む、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記融合タンパク質が、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
グアニリルトランスフェラーゼと低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含む、融合タンパク質。
(項目7)
前記グアニリルトランスフェラーゼが、配列番号6と配列番号7とを含み、前記SUMOタンパク質が、配列番号5を含む、項目6に記載の融合タンパク質。
(項目8)
前記グアニリルトランスフェラーゼが、大サブユニットと小サブユニットとを含む、項目6に記載の融合タンパク質。
(項目9)
前記SUMOタンパク質が、前記大サブユニットと共有結合し、かつ共発現する、項目8に記載の融合タンパク質。
(項目10)
前記融合タンパク質が、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する、項目6に記載の融合タンパク質。
(項目11)
グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするベクター。
(項目12)
前記ベクターが、配列番号1と配列番号2とを含む、項目11に記載のベクター。
(項目13)
前記ベクターが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3を含む、項目11に記載のベクター。
(項目14)
前記ベクターが、配列番号4と配列番号3とを含む、項目11に記載のベクター。
(項目15)
グアニリルトランスフェラーゼを発酵により生成する方法であって、a)発酵培地で、配列番号6及び配列番号7と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するグアニリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を備えた、少なくとも1つの組換え核酸分子で形質転換された微生物を培養することと;b)前記培養する工程から生成された生成物を採取することと、を含む、前記方法。
(項目16)
前記グアニリルトランスフェラーゼが、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質が、野生型グアニリルトランスフェラーゼタンパク質と比較して同等のホスファターゼ活性、グアニリルトランスフェラーゼ活性、及びメチル化活性を有する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質が、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質を含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質が、配列番号8を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記SUMOタンパク質が、グアニリルトランスフェラーゼに共有結合で結合している、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記共有結合が、前記SUMOタンパク質と前記グアニリルトランスフェラーゼの大サブユニットとの間にある、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記発酵培地が、Terrific Broth、Cinnabar、2×YT、及びLBからなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目23)
前記微生物が細菌である、項目15に記載の方法。
(項目24)
前記グアニリルトランスフェラーゼをコードする前記核酸配列が、配列番号2及び配列番号3と少なくとも90%同一である、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記組換え核酸分子が、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目26)
低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をコードする前記核酸配列が、配列番号1と少なくとも90%同一である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記生成物がグアニリルトランスフェラーゼである、項目15に記載の方法。
(項目28)
前記生成物が、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質を含むグアニリルトランスフェラーゼである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質が、低分子ユビキチン様(SUMO)タンパク質をさらに含む、項目28に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面は、例示を目的とするものであり、何ら限定するものではない。
【0021】
【
図1】本発明の種々の実施形態に含まれる例示的なmRNAキャップ構造の図である。
【0022】
【
図2】発酵により生成された可溶性SUMO-GTタンパク質の例示的な収量を、振盪フラスコ法により生成されたGTタンパク質の収量と比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本発明をより容易に理解するために、特定の用語を最初に定義する。以下の用語及び他の用語のさらなる定義は、本明細書全体を通して記載される。
【0024】
およそ:本明細書で使用される用語「およそ」または「約」は、対象となる1つ以上の値に適用される場合、記述された参照値と同様の値を意味する。特定の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、特記されない限り、ないしは特に文脈から明らかでない限り、記述された参照値のいずれかの方向(超または未満)における25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以下に入る値の範囲を意味する(かかる数字が取り得る値の100%を超える場合を除く)。
【0025】
バッチ培養:本明細書で使用される場合、用語「バッチ培養」は、培地(以下「培地」の定義を参照のこと)及び細胞自体を含めた、細胞を培養するのに最終的に用いられる全ての成分が培養プロセスの開始時に供給される、細胞培養方法を意味する。したがって、バッチ培養は、培養される細胞を新鮮培地で再給餌することなく播種から完了まで進行させることができる培養を意味するのが典型的である。バッチ培養は、通常、ある時点で停止され、培地中の細胞及び/または成分が収穫され、かつ任意選択的に精製される。
【0026】
生物学的活性:本明細書で使用される場合、語句「生物学的活性」は、生体系(例えば、細胞培養物、生物体など)において活性を有する任意の物質の特徴を意味する。例えば、物質であって、生物体に投与された場合、その生物体に対して生物学的作用を有する該物質は、生物学的活性があると見なされる。また、生物学的活性は、in vitroアッセイ(例えば、硫酸塩放出アッセイなどのin vitro酵素アッセイ)によって測定することができる。タンパク質またはポリペプチドが生物学的活性を有する特定の実施形態では、該タンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有する該タンパク質またはポリペプチドのうちの一部分が、典型的には「生物学的活性」部分として称される。一部の実施形態では、タンパク質は、細胞培養系から生成及び/または精製され、対象に投与された場合に生物学的活性を呈する。一部の実施形態では、タンパク質は、生物学的活性を有するようになるために、さらなる処理を要する。一部の実施形態では、タンパク質は、生物学的活性を有するようになるために、以下に限定されないが、グリコシル化(例えば、シアリル化)、ファルネシル化、切断、フォールディング、ホルミルグリシン変換、及びこれらの組み合わせなどの翻訳後修飾を要する。一部の実施形態では、プロ型(例えば、未成熟型)として生成されたタンパク質は、生物学的活性を有するようになるために、さらなる修飾を要する場合がある。
【0027】
バイオリアクタ:本明細書で使用される場合、用語「バイオリアクタ」は、宿主細胞培養の増殖に使用される容器を意味する。バイオリアクタは、哺乳動物細胞の培養に有用である限り、任意のサイズを有し得る。バイオリアクタは、典型的には、少なくとも1リットルであり、また10リットル、100リットル、250リットル、500リットル、1000リットル、2500リットル、5000リットル、8000リットル、10,000リットル、もしくは12,0000リットル以上であってもよく、またはその間の任意の容積であってもよい。バイオリアクタ内部の条件(以下に限定されないが、pH、容量オスモル濃度、CO2飽和度、O2飽和度、温度、及びこれらの組み合わせを含む)は、通常、培養期間の間に制御される。バイオリアクタは、本発明の培養条件下で、細胞を培地で保持するのに適した任意の材料(ガラス、プラスチック、または金属など)から構成され得る。一部の実施形態では、バイオリアクタは、動物細胞培養を行うのに用いられてもよい。一部の実施形態では、バイオリアクタは、哺乳動物細胞培養を行うのに用いられてもよい。一部の実施形態では、バイオリアクタは、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、及びヒト細胞などであるが、これらに限定されない生物体由来の細胞及び/または細胞株と共に用いられてもよい。一部の実施形態では、バイオリアクタは、大規模な細胞培養生産用に用いられ、典型的には少なくとも100リットルであり、また200リットル、500リットル、1000リットル、2500リットル、5000リットル、8000リットル、10,000リットル、もしくは12,0000リットル以上であってもよく、またはその間の任意の容積であってもよい。当業者は、本発明を実施する際に使用するための適切なバイオリアクタを認識し、また選択できるはずである。
【0028】
細胞密度:本明細書で使用される場合、用語「細胞密度」は、所定の培地容量に含まれる細胞の数を意味する。
【0029】
細胞培養物または培養物:本明細書で使用される場合、これらの用語は、細胞集団であって、該細胞集団の生存及び/または増殖に適切な条件下にて培地で増殖した該細胞集団を意味する。当業者に明らかになるように、本明細書で使用されるこれらの用語は、細胞集団と、その集団が増殖する培地とを含めた組み合わせを意味してもよい。
【0030】
培養:本明細書で使用される場合、用語「培養」または文法的等価物は、増殖または生存に有利な条件下で細胞を維持するプロセスを意味する。用語「培養」及び「細胞培養」または任意の同義語は、本出願において交換可能に用いられる。
【0031】
培養容器:本明細書で使用される場合、用語「培養容器」は、細胞を培養するための無菌環境を提供することができる任意の容器を意味する。例示的な培養容器として、以下に限定されないが、ガラス容器、プラスチック容器、または金属容器が挙げられる。
【0032】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象のうちの1つ以上を意味する:(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(例えば、転写による);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成、及び/もしくは3’末端形成による);(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳:ならびに/または(4)ポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾。
【0033】
流加培養:本明細書で使用される場合、用語「流加培養」は、培養プロセスの開始後のある時点で、追加の成分が培養物に供給される細胞培養方法を意味する。供給される成分は、典型的には、培養プロセス中に枯渇した、細胞に対する栄養補助剤を含む。流加培養は、通常、ある時点で停止され、培地中の細胞及び/または成分が収穫され、かつ任意選択的に精製される。
【0034】
相同性:本明細書で使用される場合、用語「相同性」は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間、及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。一部の実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合、相互に「相同性」があると見なされる。一部の実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%類似している場合、相互に「相同性」があると見なされる。
【0035】
同一性:本明細書で使用される場合、用語「同一性」は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間、及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。2つの核酸配列のパーセント同一性の計算は、例えば、2つの配列を至適比較目的でアライメントすることによって行われ得る(例えば、至適アライメントのためにギャップを第1の核酸配列と第2の核酸配列の一方または両方に導入することができ、また非同一配列を比較目的のために無視することができる)。特定の実施形態では、比較目的でアライメントされる配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。続いて、該当するヌクレオチド位置でのヌクレオチドを比較する。第1の配列のある位置が、第2の配列の該当する位置と同じヌクレオチドで占有されている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列により共有される同一位置の数の関数であり、2つの配列の至適アライメントのために導入されるべきギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れている。配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の算出は、数学的アルゴリズムを用いて遂行され得る。例えば、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたMeyers及びMillerのアルゴリズム(CABIOS, 1989, 4: 11-17)を用いて、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用して算出され得る。あるいは、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用して算出され得る。例えばClustalなどの様々な他の配列アライメントプログラムが使用可能であり、配列同一性を算出するために用いられ得る。
【0036】
積算生細胞密度(Integrated Viable Cell Density):本明細書で使用される場合、用語「積算生細胞密度」は、培養期間にわたる、培養を実行した時間量を乗じた生細胞の平均密度を意味する。生成されるポリペプチド及び/またはタンパク質の量が、培養期間にわたり存在する生細胞の数に比例すると仮定すると、積算生細胞密度は、培養期間にわたって生成されるポリペプチド及び/またはタンパク質の量を概算するのに有用な手段である。
【0037】
単離された:本明細書で使用される用語「単離された」は、(1)最初に生成された(自然界において及び/または実験的環境においてに関わらず)際に会合した成分の少なくとも一部から分離された、ならびに/または(2)人の手によって生成、調製、及び/もしくは製造された物質ならびに/または要素を意味する。単離された物質及び/または要素は、それらが最初に会合した他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離され得る。一部の実施形態では、単離された作用物質は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超の純粋性を持つ。本明細書で使用される場合、物質は、他の構成成分を実質的に含まない場合に「純粋」である。本明細書で使用される場合、単離された物質及び/または要素のパーセント純度の計算は、賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水など)を含むべきではない。
【0038】
培地:本明細書で使用される場合、用語「培地」は、増殖細胞に栄養を供給する栄養素を含有する溶液を意味する。これらの溶液は、典型的には、細胞が最小限増殖及び/または生存するのに必要な必須アミノ酸及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、ならびに微量元素を供給するものである。溶液はまた、最小割合を超えて増殖及び/または生存を増強する成分(ホルモン及び成長因子を含む)を含有してもよい。一部の実施形態では、培地は、細胞の生存と増殖とに至適なpH及び塩濃度に調製される。一部の実施形態では、培地は、タンパク質、加水分解物、または未知組成物の成分を含有しない無血清培地である「合成培地」であってもよい。一部の実施形態では、合成培地は動物由来成分を含まず、培地中の全ての成分は既知の化学構造を有する。一部の実施形態では、培地は、以下に限定されないが、ウシ胎児血清、ウマ血清、ヤギ血清、ロバ血清、及び/またはこれらの組み合わせなどの動物由来成分を添加した培地である「血清ベース培地」であってもよい。
【0039】
核酸:本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、最も広い意味において、オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれる、または組み込まれ得る化合物及び/または物質を意味する。一部の実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれるか、または組み込まれ得る化合物及び/または物質である。一部の実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)を意味する。一部の実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を意味する。本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用され得る。一部の実施形態では、「核酸」は、RNA、ならびに1本鎖及び/または2本鎖のDNA及び/またはcDNAを包含する。さらに、用語「核酸」「DNA」「RNA」及び/または類似の用語は、核酸類似体、すなわち、ホスホジエステル骨格以外を有する類似体を含む。例えば、いわゆる「ペプチド核酸」は、当該技術分野において公知であり、骨格にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有しており、本発明の範囲内にあると見なされる。用語「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、相互に縮重型である及び/または同一のアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質及び/またはRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。核酸は、例えば、天然源から精製され、組換え発現系を用いて生成かつ任意選択的に精製され、化学的に合成され得る。必要に応じて、例えば、化学的に合成された分子の場合、核酸は、化学修飾された塩基または糖類、骨格修飾などを有する類似体といった、ヌクレオシド類似体を含み得る。核酸配列は、別段に示されない限り、5’から3’の方向に提示される。用語「核酸セグメント」は、本明細書において、長い核酸配列の一部分である核酸配列を意味するのに用いられる。多くの実施形態では、核酸セグメントは、少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上の残基を含む。一部の実施形態では、核酸は、天然のヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン);ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、及び2-チオシチジン);化学修飾された塩基;生体修飾された塩基(例えば、メチル化塩基);介在塩基;修飾された糖類(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース);ならびに/もしくは修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエート及び5’-N-ホスホルアミダイト連結)であるか、またはそれらを含む。一部の実施形態では、本発明は、送達を促進または達成するために化学的に修飾されていない核酸(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシドを含む、ポリヌクレオチド及び残基)を意味する「未修飾核酸」を特に対象とする。
【0040】
灌流プロセス:本明細書で使用される場合、用語「灌流プロセス」は、培養プロセスの開始後に、追加の成分が培養物に連続的または半連続的に供給される、細胞培養方法を意味する。供給される成分は、典型的には、培養プロセス中に枯渇した、細胞に対する栄養補助剤を含む。培地中の細胞及び/または成分の一部は、通常、連続方式または半連続方式で収穫され、かつ任意選択的に精製される。灌流プロセスを含む細胞培養プロセスは、典型的には、「灌流培養」と称される。栄養補助剤は、典型的には、灌流プロセスの間に新鮮培地に供給される。一部の実施形態では、新鮮培地は、細胞培養プロセスで使用される基本培地と同一であってもよく、または類似していてもよい。一部の実施形態では、新鮮培地は、所望の栄養補助剤を含有していることを除いて、基本培地とは異なっていてもよい。一部の実施形態では、新鮮培地は合成培地である。
【0041】
播種:本明細書で使用される場合、用語「播種」は、大規模な細胞培養生産向けに、細胞培養物をバイオリアクタまたは別の容器に供給するプロセスを意味する。一部の実施形態では、「種培養」が使用され、そこで、播種前に、小型の細胞培養容器(すなわち、組織培養フラスコ、組織培養プレート、組織培養回転ボトルなど)で細胞が増殖されている。あるいは、一部の実施形態では、細胞をバイオリアクタまたは容器に供給する直前に、細胞が凍結融解されてもよい。該用語は、単一細胞を含めた細胞の任意の数を意味する。
【0042】
対象:本明細書で使用される場合、用語「対象」はヒトを含めた任意の哺乳動物を意味する。本発明の特定の実施形態では、対象は成人、青年、または未成年者である。また、子宮内での医薬組成物の投与及び/または治療方法の実施が、本発明で意図される。
【0043】
ベクター:本明細書で使用される場合、「ベクター」は、核酸分子であって、会合した別の核酸を輸送することができる、該核酸分子を意味する。一部の実施形態では、ベクターは、真核細胞及び/もしくは原核細胞などの宿主細胞において連結された核酸を染色体外複製ならびに/または発現させることができる。作用可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができるベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【0044】
生細胞密度:本明細書で使用される場合、用語「生細胞密度」は、単位体積あたりの生細胞の数を意味する。
【0045】
本発明は、特に、キャップされたmRNAをSUMO-グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質を用いて大規模生産するための方法及び組成物を提供する。
【0046】
本発明の種々の態様を、以下の小節でさらに詳細に説明する。小節の使用は、本発明を限定することを意図するものではない。各小節は、本発明の任意の態様に適用し得る。本出願では、「または」の使用は、別段の記載がない限り「及び/または」を意味する。
SUMO-グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質
低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)
【0047】
本明細書で使用される場合、SUMOタグは、少なくとも部分的にSUMOタンパク質の活性を代用することができる任意のタンパク質またはタンパク質の一部分である。
【0048】
SUMOタンパク質は、他のタンパク質の機能を修飾するために、他のタンパク質に共有結合し、また他のタンパク質から切り離される低分子タンパク質である。SUMOタンパク質を用いたタンパク質の修飾は、核-サイトゾル輸送、転写調節、アポトーシス、タンパク質安定化、ストレス反応、及び細胞周期の進行などの種々の細胞過程に関与する翻訳後修飾である。脊椎動物には、少なくとも4つのSUMOパラログがあり、SUMO-1、SUMO-2、SUMO-3、及びSUMO-4と称される。SUMO-2及びSUMO-3は、構造的にも機能的にも非常に類似しており、SUMO-1とは異なっている。アミノ酸配列(配列番号1)は、野生型または天然に存在するSUMO-3タンパク質のアミノ酸3番目~92番目に及ぶものであり、表1に示されている。さらにまた、SUMO-3タンパク質をコードするコドン最適化DNA配列を、配列番号5として表1に提供する。
表1.低分子ユビキチン様修飾因子
【表1】
【0049】
このように、一部の実施形態では、SUMOタンパク質はヒトSUMO-3タンパク質(配列番号1)である。一部の実施形態では、SUMOタンパク質は、SUMO-1、SUMO-2、またはSUMO-4などの別のSUMOパラログであってもよい。一部の実施形態では、適正な代替タンパク質が、ヒトSUMO-3タンパク質の相同体または類似体であってもよい。例えば、SUMO-3タンパク質の相同体または類似体は、実質的なSUMO-3タンパク質活性を維持するが、野生型または天然に存在するSUMO-3タンパク質(配列番号1)と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/または挿入を含む修飾されたSUMO-3タンパク質であってもよい。したがって、一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、野生型または天然に存在するSUMO-3タンパク質(配列番号1)と実質的に相同である。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、配列番号1に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、野生型または天然に存在するSUMO-3タンパク質(配列番号1)と実質的に同一である。一部の実施形態では、本発明に適したタンパク質は、SUMOタンパク質の断片または一部分を含有する。一部の実施形態では、SUMOタンパク質は、ヒトSUMO-1、ヒトSUMO-2、ヒトSUMO-3、アラビドプシス・ザラニア(Arabidopsis Zhalania)SUMO-1~SUMO-8のうちのいずれか1つ、トマトSUMO、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)SUMO-1~SUMO-3のうちのいずれか1つ、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogasler)Smt3、カエノラブディリス・エレガンス(Caenorhabdilis elegans)SMO-1、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Pmt3、マラリア原虫の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)SUMO、カビのアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)SUMO、その等価物、その相同体、またはその組み合わせを含む。
【0050】
一部の実施形態では、SUMOタンパク質は、ヒト、マウス、昆虫、植物、酵母、及び他の真核生物体からなる群から選択される生物体由来の核酸によってコードされる。一部の実施形態では、SUMOタンパク質は、ホモサピエンス(Homo sapiens)、アラビドプシス・ザラニア(Arabidopsis Zhalania)、トマト、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogasler)、カエノラブディリス・エレガンス(Caenorhabdilis elegans)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、またはアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)からなる群から選択される生物体由来の核酸によってコードされる。一部の実施形態では、本発明に適した核酸は、配列番号5に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一である配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適した核酸は、野生型または天然に存在するSUMO-3タンパク質(配列番号5)をコードする核酸と実質的に同一である。
グアニリルトランスフェラーゼ(GT)
【0051】
本明細書で使用される場合、GTタンパク質は、天然に存在するグアニリルトランスフェラーゼ(GT)タンパク質の少なくとも一部の活性を代用することができる任意のタンパク質またはタンパク質の一部分である。本明細書で使用される場合、用語「GTタンパク質」及び「GT酵素」ならびに文法的等価物は、交換可能に用いられる。
【0052】
GTは、メッセンジャーRNA分子の5’末端に対してのグアニリル分子の導入とメチル化とを促進する、ワクチニアウイルス系由来の酵素である。このプロセスは、mRNAキャッピングとして知られ、高度に制御され、タンパク質合成の間に、翻訳可能な安定かつ成熟mRNAを生成するために重要なものである。GT酵素は、「大サブユニット」(D1、約97kDa)と「小サブユニット」(D12、約33kDa)とを備えたヘテロ二量体を含む。GTは、3つの酵素機能である、ホスファターゼ活性(mRNAの新生5’三リン酸の二リン酸への切断)、グアニリルトランスフェラーゼ活性(mRNA部分の5’末端へのGTP分子の組み込み)、及びメチル化活性(グアニリル基のN
7位におけるメチル基の組み込み)を提供する。典型的な野生型または天然に存在するGTタンパク質の大サブユニット(配列番号6)及び小サブユニット(配列番号7)のアミノ酸配列を表2に示す。さらにまた、GTの大サブユニット及び小サブユニットをコードするコドン最適化DNA配列を、それぞれ配列番号2及び配列番号3として表2に提供する。
表2.グアニリルトランスフェラーゼ
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0053】
このように、一部の実施形態では、GT酵素は、大サブユニット及び小サブユニット(それぞれ配列番号6及び配列番号7)を含むヘテロ二量体である。一部の実施形態では、本発明のGT酵素は、GTの大サブユニット及び小サブユニットの一方または他方の相同体または類似体であってもよい。例えば、GTタンパク質の相同体または類似体は、実質的なGTタンパク質活性を維持するが、配列番号6及び/または配列番号7と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/または挿入を含む修飾されたGTタンパク質であってもよい。したがって、一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、GTタンパク質の大サブユニット及び小サブユニット(配列番号6及び配列番号7)と実質的に相同である。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、配列番号6に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、配列番号7に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、GTの大サブユニット及び小サブユニット(配列番号6及び配列番号7)と実質的に同一である。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、GTタンパク質の断片または一部分を含有する。
【0054】
一部の実施形態では、GTタンパク質は、ワクシニアウイルス、ウサギ痘ウイルス、牛痘ウイルス、タテラポックス(Taterapox)ウイルス、サル痘ウイルス、大痘瘡ウイルス、ラクダ痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、小痘瘡ウイルス、オルソポックスウイルス、アライグマポックスウイルス、スカンクポックスウイルス、ハタネズミポックスウイルス、ヨカ(Yoka)ポックスウイルス、ブタポックスウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、シカポックスウイルス、粘液腫ウイルス、タナ痘ウイルス、ヤギ痘ウイルス、ウサギ線維腫ウイルス、ランピースキン病ウイルス、ヒツジ痘ウイルス、コウモリ痘(Eptesipox)ウイルス、リス痘ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、コチア(Cotia)ウイルス、オルフウイルス、ウシ丘疹性口内炎ウイルス、偽牛痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ペンギン痘ウイルス、及び鶏痘ウイルスからなる群から選択されるウイルス由来の核酸によってコードされる。一部の実施形態では、本発明に適した核酸は、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一である配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適した核酸は、配列番号3に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一である配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適した核酸は、GTタンパク質(配列番号2及び配列番号3)をコードする核酸と実質的に同一である。
SUMO-GT融合
【0055】
本明細書で使用される場合、SUMO-GT融合タンパク質は、グアニリルトランスフェラーゼ(GT)タンパク質に共有結合しているSUMOタンパク質を含む、任意のタンパク質またはタンパク質の一部分であり、該融合タンパク質は、天然に存在するグアニリルトランスフェラーゼ(GT)タンパク質の少なくとも一部の活性を代用することができる。本明細書で使用される場合、用語「SUMO-GT融合タンパク質」及び「SUMO-GT融合酵素」ならびに文法的等価物は、交換可能に用いられる。SUMOとGT大サブユニット(配列番号8)との融合物の例示的なアミノ酸配列を表3に示す。さらにまた、SUMOとGT大サブユニットとの融合物をコードする例示的なDNA配列を、配列番号4として表3に提供する。
表3.SUMO-GT融合
【表3-1】
【表3-2】
【0056】
一部の実施形態では、SUMO-GT融合タンパク質は、配列番号8を含む。一部の実施形態では、SUMO-GT融合タンパク質は、配列番号8と配列番号7とを含むヘテロ二量体である。一部の実施形態では、本発明のGT酵素は、GTの大サブユニット及び小サブユニットの一方または他方の相同体または類似体であってもよい。例えば、SUMO-GT融合タンパク質の相同体または類似体は、実質的なGTタンパク質活性を維持するが、配列番号8及び/または配列番号7と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/または挿入を含む修飾されたSUMO-GT融合タンパク質であってもよい。したがって、一部の実施形態では、本発明に適したSUMO-GT融合タンパク質は、GT小サブユニット(配列番号7)と、SUMO及びGT大サブユニットの融合物(配列番号8)とを含む、ヘテロ二量体に実質的に相同である。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、配列番号8及び配列番号7に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、GT小サブユニット(配列番号7)と、SUMO及びGT大サブユニットの融合物(配列番号8)とを含む、ヘテロ二量体に実質的に同一である。一部の実施形態では、本発明に適した酵素は、SUMOタンパク質に共有結合しているGTタンパク質の断片または一部分を含有する。
SUMO-GT融合タンパク質の産生
宿主細胞
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、SUMO-GT融合タンパク質を産生するのに用いられ得る細胞を意味する。特に、宿主細胞は、大規模にSUMO-GT融合タンパク質を産生するのに適したものである。一部の実施形態では、宿主細胞は、5ピコグラム/細胞/日の量で、または5ピコグラム/細胞/日を超える(例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100ピコグラム/細胞/日を超える)量で、SUMO-GT融合タンパク質を産生することができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、約5~100ピコグラム/細胞/日の範囲(例えば、約5~90ピコグラム/細胞/日、約5~80ピコグラム/細胞/日、約5~70ピコグラム/細胞/日、約5~60ピコグラム/細胞/日、約5~50ピコグラム/細胞/日、約5~40ピコグラム/細胞/日、約5~30ピコグラム/細胞/日、約10~90ピコグラム/細胞/日、約10~80ピコグラム/細胞/日、約10~70ピコグラム/細胞/日、約10~60ピコグラム/細胞/日、約10~50ピコグラム/細胞/日、約10~40ピコグラム/細胞/日、約10~30ピコグラム/細胞/日、約20~90ピコグラム/細胞/日、約20~80ピコグラム/細胞/日、約20~70ピコグラム/細胞/日、約20~60ピコグラム/細胞/日、約20~50ピコグラム/細胞/日、約20~40ピコグラム/細胞/日、約20~30ピコグラム/細胞/日)の量でSUMO-GT融合タンパク質を産生することができる。
【0058】
適正な宿主細胞は、以下に限定されないが、細菌類、酵母、昆虫類、植物、鳥類(例えば、鳥類系)、両生類、及び哺乳動物を含む種々の生物体由来であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞は、非哺乳動物細胞である。本発明に適した非哺乳動物宿主細胞の非限定的な例として、細菌については、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、リケニホルミス菌(Bacillus lichenifonnis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ウェルシュ菌(Clostridia perfringens)、ディフィシル菌(Clostridia difficile);酵母については、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、メチロトローフ酵母(Pichia methanolica)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、分裂酵母(Schizosacccharomyces pombe)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、及び子嚢菌類酵母(Yarrowia lipolytica);昆虫類については、ヨトウガ(Sodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusis ni)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melangoster)、及びタバコスズメガ(Manduca sexta);ならびに両生類からはアフリカツメガエル(Xenopus Laevis)に由来する細胞及び細胞株が挙げられる。
【0059】
一部の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。細胞培養及びポリペプチド発現に感受性の強い任意の哺乳動物細胞を、本発明に従って宿主細胞として利用することができる。本発明に従って使用され得る哺乳動物細胞の非限定的な例として、ヒト胎児由来腎臓293細胞(HEK293)、ヒーラー細胞;BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC番号85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell、オランダ、ライデン));SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)により形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト線維肉腫細胞株(例えば、HT-1080);ヒト胚腎臓株(懸濁培養での増殖用にサブクローンされた293または293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO、Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980))、サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;ヒト肝癌株(Hep G2)、ヒト細胞株CAP及びAGE1.HN、ならびにGlycotopeのパネルが挙げられる。
【0060】
さらに、使用可能なハイブリドーマ細胞株の任意の数を、本発明に従って利用することができる。当業者は、ハイブリドーマ細胞株が、至適な増殖と、ポリペプチドまたはタンパク質の発現とに、異なる栄養要件を有する場合があり、及び/または異なる培養条件を要する場合があることを認識し、必要に応じて条件を変更することができるであろう。
発現ベクター
【0061】
本明細書に記載のSUMO-GT融合タンパク質を宿主細胞で発現するために、種々の核酸構築物を使用することができる。適切なベクター構築物として、一般に、SUMO-GT融合タンパク質コード配列(SUMO-GT融合導入遺伝子とも称される)に加えて、調節配列、遺伝子制御配列、プロモーター、非コード配列、ならびに/またはタンパク質の発現及び任意選択的に構築物の複製に適正な他の配列が挙げられる。典型的には、コード領域は、これらの核酸成分のうちの1つ以上と作用可能に連結されている。
【0062】
「調節配列」は、一般的に、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部、または下流(3’非コード配列)に位置し、かつ関連コード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。調節配列として、プロモーター、エンハンサー、5’非翻訳配列、翻訳リーダー配列、イントロン、及びポリアデニル化認識配列などの3’非翻訳配列が挙げられ得る。「調節配列」は、「遺伝子制御配列」と称されることもある。
【0063】
「プロモーター」は、典型的には、コード配列または機能性RNAの発現を制御することができるヌクレオチド配列を意味する。一般的に、コード配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーター配列は、近位の上流要素とより遠位の上流要素とからなり、後者の要素は「エンハンサー」と称されることが多い。したがって、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することができ、かつプロモーターの生得要素か、またはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を増強するために挿入された異種要素であり得るヌクレオチド配列である。プロモーターは、全体が天然遺伝子由来でもよく、または天然に見出される様々なプロモーター由来の異なる要素から構成されてもよく、または合成ヌクレオチドセグメントを含んでいてもよい。様々なプロモーターが、異なる組織もしくは細胞型において、または異なる発生段階で、または異なる環境条件に応じて、遺伝子の発現を誘導し得ることは、当業者であれば理解していることである。
【0064】
「3’非コード配列」は、典型的には、コード配列の下流に位置するヌクレオチド配列を意味し、ポリアデニル化認識配列と、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼし得る調節シグナルをコードする他の配列とを含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端にポリアデニル酸域を付加することへの作用によって特徴付けられる。
【0065】
「翻訳リーダー配列」または「5’非コード配列」は、典型的には、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するヌクレオチド配列を意味する。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の上流で、完全にプロセシングされたmRNAに存在するものである。翻訳リーダー配列は、一次転写産物のmRNAへのプロセシング、mRNA安定性、または翻訳効率に影響を及ぼし得る。
【0066】
用語「作用可能に連結」は、典型的には、一方の機能が他方によって作用されるように、単一の核酸断片上で2つ以上の核酸断片が関連していることを意味する。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に作用することができる場合(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、そのコード配列と作用可能に連結している。コード配列は、調節配列と、センス方向またはアンチセンス方向に作用可能に連結することができる。
【0067】
導入遺伝子のコード領域は、特定の細胞型に対するコドン使用頻度を最適化するように1つ以上のサイレント変異を含んでいてもよい。例えば、SUMO-GT融合導入遺伝子のコドンは、細菌細胞での発現用に最適化され得る。一部の実施形態では、SUMO-GT融合導入遺伝子のコドンは、大腸菌(E. coli)細胞での発現用に最適化され得る。一部の実施形態では、SUMO-GT融合導入遺伝子のコドンは、哺乳動物細胞での発現用に最適化され得る。一部の実施形態では、SUMO-GT融合導入遺伝子のコドンは、ヒト細胞での発現用に最適化され得る。
【0068】
任意選択的に、構築物は、スプライス部位、エンハンサー配列、適正なプロモーターの制御下で選択可能なマーカー遺伝子、適正なプロモーターの制御下で増幅可能なマーカー遺伝子、及びマトリックス結合領域(MAR)のうちの1つ以上などといった追加の成分か、または挿入された領域の発現を増大させる当該技術分野で既知の他の要素を含有し得る。
【0069】
適切なベクターは、宿主細胞で形質移入または形質導入されると、染色体外(エピソーム)で発現し得るか、または宿主細胞のゲノムに融合し得る。
【0070】
一部の実施形態では、細胞ゲノムに融合するDNA構築物は、導入遺伝子の核酸配列のみを含む必要がある。その場合、導入遺伝子の発現は、一般に、融合部位で調節配列によって制御される。任意選択的に、それは本明細書に記載した追加の種々の調節配列を含み得る。
培養培地及び条件
【0071】
用語「培地」及び「培養培地」は、本明細書で使用される場合、in vitroで細胞を維持及び/または増殖させるのに適した栄養素を含む溶液の一般形を意味する。典型的には、培地溶液は、以下に限定されないが、細胞が少なくとも最小限増殖及び/または生存するのに必要な必須アミノ酸及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、ならびに微量元素を供給するものである。他の実施形態では、培地は、任意の供給源由来または当該技術分野で既知の方法由来のアミノ酸(複数可)を含有することができ、以下に限定されないが、単一アミノ酸付加物(複数可)、またはペプトンもしくはタンパク質加水分解付加物(複数可)(動物性供給源(複数可)または植物性供給源(複数可)を含む)のいずれかに由来するアミノ酸(複数可)を含む。ビタミンは、以下に限定されないが、ビオチン、パントテナート、コリンクロリド、葉酸、ミオイノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、ビタミンB12、チアミン、プトレッシン、及び/またはこれらの組み合わせなどである。塩は、以下に限定されないが、CaCl2、KCl、MgCl2、NaCl、リン酸ナトリウム一塩基酸、リン酸ナトリウム二塩基酸、亜セレン酸ナトリウム、CuSO4、ZnCl2、及び/またはこれらの組み合わせなどである。脂肪酸は、以下に限定されないが、アラキドン酸、リノール酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、及びメチル-ベータ-シクロデキストリン、ならびに/またはこれらの組み合わせなどである。一部の実施形態では、培地は、グルコース、グルタミン、Na-ピルベート、インスリンまたはエタノールアミン、プルロニックF68などの保護剤といった追加の成分を含む。一部の実施形態では、培地はまた、最小割合を超えて増殖及び/または生存を増強する成分(ホルモン及び成長因子を含む)を含有していてもよい。培地はまた、1つ以上の緩衝剤を含んでいてもよい。緩衝剤は、培養物を特定のpH(例えば、生理学的pH(例えば、pH6.8~pH7.4など))で維持するように設計及び/または選択され得る。細胞を培養するのに適した様々な緩衝液が、当該技術分野で公知であり、本方法で用いられ得る。適切な緩衝液(例えば、重炭酸塩緩衝液、HEPES緩衝液、Good緩衝液など)は、細胞の呼吸に伴って二酸化炭素濃度が変化するのにもかかわらず、生理学的なpHを維持するための能力及び性能を有するものである。溶液は、細胞の生存と増殖とに至適なpH及び塩濃度に調製されることが好ましい。
【0072】
一部の実施形態では、培地は、合成培地であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「合成栄養培地」は、その化学成分の実質的に全てが既知である培地を意味する。一部の実施形態では、合成栄養培地は、動物由来の成分を含まない。ある場合には、合成培地は、1つ以上のタンパク質(例えば、タンパク質成長因子またはサイトカイン)を含む。ある場合には、合成栄養培地は、1つ以上のタンパク質加水分解物を含む。他の場合では、合成栄養培地は、無タンパク質培地であり、すなわちタンパク質、加水分解物、または未知組成物の成分を含有しない無血清培地である。
【0073】
合成培地は、典型的には、例えば必須及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、塩、緩衝剤、ならびに微量元素などの様々な個々の成分を、所定の重量またはモル百分率もしくはモル比で混合することによって調製され得る。無血清であり、特に合成培地である例は、米国特許出願公開第2006/0148074号に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0074】
一部の実施形態では、本発明に適した合成培地は、以下に限定されないが、Terrific Broth、Cinnabar、2×YT、またはLBなどの市販の培地である。一部の実施形態では、本発明に適した合成培地は、1つ以上の市販の合成培地の混合物である。種々の実施形態では、適切な培地は、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種以上の市販の合成培地の混合物である。一部の実施形態では、それぞれの個々の市販の合成培地(例えば、本明細書に記載のものなど)は、重量基準で、該混合物のうちの1%、2.5%、5%、7.5%、10%、12.5%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上を構成する。それぞれの個々の成分媒体間の比は、混合物に含まれる相対重量百分率によって算出され得る。一部の実施形態では、タンパク質の発現は、IPTGの添加により増加して、プロモーターを抑制する。
【0075】
一部の実施形態では、合成培地には、1つ以上の動物由来の成分が追加され得る。こうした動物由来の成分として、以下に限定されないが、ウシ胎仔血清、ウマ血清、ヤギ血清、ロバ血清、ヒト血清、及びアルブミンなどの血清由来タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、またはヒト血清アルブミン)が挙げられる。
【0076】
本発明は、SUMO-GT融合タンパク質を大規模に生産する方法を提供する。対象となる融合ポリペプチドを生産するための典型的な大規模手法には、バッチ培養及び流加培養が含まれる。バッチ培養プロセスは、従来、大規模生産培養物に特定の細胞密度の種培養物を播種することと、細胞増殖、生存率、及び/または生産性に寄与する条件(例えば、適切な培養培地、pH、及び温度)下で細胞を増殖することと、細胞が特定の細胞密度に到達してから該培養物を収穫することと、発現ポリペプチドを精製することとを含む。流加培養手法は、バッチ培養に、細胞の増殖の間に消費される栄養素及び他の成分を添加する追加の工程(複数可)を備える。一部の実施形態では、本発明の大規模生産方法は、流加培養系を用いる。
発現SUMO-GT融合タンパク質の精製
【0077】
様々な方法が、本明細書に記載の種々の方法によって生成されたSUMO-GT融合タンパク質を精製または単離するのに用いられ得る。一部の実施形態では、発現されたSUMO-GT融合タンパク質は培地中に分泌され、したがって、精製プロセスの第1の工程として、細胞または他の固形物を、例えば遠心分離または濾過することによって除去することができる。代替的にまたは加えて、発現されたSUMO-GT融合タンパク質は、宿主細胞の表面に結合している。この実施形態では、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する宿主細胞(例えば、細菌細胞)を、精製のために溶解する。宿主細胞(例えば、細菌細胞)の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊及び高pH条件への曝露を含めた当業者に周知の任意の数の手段によって成し遂げることができる。
【0078】
SUMO-GT融合タンパク質は、以下に限定されないが、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、アフィニティ、サイズ排除、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ)、ゲル濾過、遠心分離、もしくは溶解度差法、エタノール沈殿を含めた標準方法により、またはタンパク質の精製に使用可能な任意の他の技術(例えば、Scopes, Protein Purification Principles and Practice 2nd Edition, Springer-Verlag, New York, 1987;Higgins, S. J. and Hames, B. D. (eds.), Protein Expression: A Practical Approach, Oxford Univ Press, 1999;及びDeutscher, M. P., Simon, M. I., Abelson, J. N. (eds.), Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology (Methods in Enzymology Series, Vol 182), Academic Press, 1997を参照されたく、これら全ては参照により本明細書に援用される)により、単離かつ精製され得る。特に、免疫アフィニティクロマトグラフィに関しては、タンパク質を、該タンパク質に対して生じ、かつ固定担体に固定された抗体を含むアフィニティカラムに結合させることにより単離することができる。精製プロセス中のポリペプチドまたはタンパク質の分解を低減させるか、または排除するために、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチン、またはアプロチニンなどのプロテアーゼ阻害剤を、任意の段階または全ての段階で添加することができる。プロテアーゼ阻害剤は、発現ポリペプチドまたはタンパク質を単離かつ精製するために、細胞を溶解しなければならない場合に特に所望される。
溶解度
【0079】
様々な方法が、発現系でのタンパク質の溶解度を算出するために用いられ得る。例示的な方法では、細菌を遠心沈殿し、1%IGEPALとプロテアーゼ阻害剤とを含有する弱溶解緩衝液中で再懸濁する。細菌を繰り返し凍結融解することにより、溶解を持続させる。可溶画分と不溶画分とを遠心分離によって分離する。組換えタンパク質の総量を算出するために、細菌培養物の同一容量を、遠心沈殿し、1%IGEPALと0.1%SDSとを含有する同量の溶解緩衝液中で溶解させる。可溶な全タンパク質をSDS-PAGEで分析し、必要に応じてウェスタンブロット法を用いる。一部の実施形態では、発現系は、大腸菌(E. coli)である。一部の実施形態では、GTの溶解度は、それが融合タンパク質として産生された場合に向上する。一部の実施形態では、融合タンパク質はSUMO-GT融合タンパク質である。一部の実施形態では、SUMO-GT融合タンパク質は、非融合GTタンパク質と比較して溶解度が増加している。一部の実施形態では、非融合GTタンパク質と比較した場合のSUMO-GT融合タンパク質の溶解度の増加は、SUMO-GT融合タンパク質を振盪フラスコにて産生する間に観察されている。一部の実施形態では、非融合GTタンパク質と比較した場合のSUMO-GT融合タンパク質の溶解度の増加は、SUMO-GT融合タンパク質を発酵生成する間に観察されている。
mRNAキャッピングにおけるSUMO-GT融合の使用
キャップされたmRNAの生成
【0080】
本発明によると、本明細書に記載のSUMO-GT融合タンパク質は、in vitro転写によってキャップされたmRNAを生成するのに用いられ得る。種々のin vitro転写アッセイが当該技術分野で使用可能であり、本発明を実施するのに用いられ得る。例えば、in vitro転写は、元来、Krieg及びMelton(Methods Enzymol., 1987, 155: 397-415)により、RNAファージポリメラーゼを用いたRNAの合成向けに開発された。これらの反応には、典型的には、少なくとも、ファージRNAポリメラーゼ(T7、T3、またはSP6)、ファージポリメラーゼプロモーターを含むDNA鋳型、ヌクレオチド(ATP、CTP、GTP、及びUTP)、及びマグネシウム塩を含む緩衝液が含まれる。RNA合成の収量は、ヌクレオチド濃度を増加させ、マグネシウム濃度を調整することによって、かつ無機ピロホスファターゼを含めることによって最適化することができる(米国特許第5,256,555号;Gurevich, et al., Anal. Biochem. 195: 207-213 (1991);Sampson, J.R. and Uhlenbeck, O.C., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85, 1033-1037 (1988);Wyatt, J.R., et al., Biotechniques, 11: 764-769 (1991))。この反応で合成されたRNAは、通常、リボースの5’位に三リン酸を備えた5’末端ヌクレオチドにより特徴付けられる。使用するRNAポリメラーゼとプロモーターとの組み合わせに応じて、このヌクレオチドは、典型的にはグアノシンであるが、アデノシンとなる可能性もある(例えば、Coleman, T. M., et al., Nucleic Acids Res., 32: e14 (2004)を参照のこと)。この反応では、4種のヌクレオチド全てが等モル濃度で含まれるのが典型的であり、そのうちのいずれもが律速ではない。
【0081】
本発明の一部の実施形態は、バッチ反応であり、すなわち、全ての成分を混合した後、約37℃でインキュベートして、RNAの重合を反応が終了するまで促進させる。バッチ反応は、通例、便宜上用いられ、またこの実験のかかる反応から必要とされるのと同量のRNAを得るために用いられる。一部の実施形態では、「流加」系(例えば、Jeffrey A. Kern, Batch and Fed-batch Strategies for Large-scale Production of RNA by in Vitro Transaction (University of Colorado) (1997)を参照のこと)が、in vitro転写反応の効率を向上させるために用いられる。全ての成分を混合するが、一定の反応条件の維持を図るために、ヌクレオチド及びマグネシウムなどの試薬のうちのいくつかにおいて、追加量を経時的に加える。さらに、一部の実施形態では、反応のpHは、pHを経時的にモニタリングし、必要に応じてKOHを加えることにより、7.4に固定され得る。
【0082】
in vitro転写によってキャップRNAを合成するために、キャップ類似体(例えば、N-7メチルGpppG;すなわち、m7GpppG)を転写反応に含めている。一部の実施形態では、キャップ類似体は、酵素グアニリルトランスフェラーゼにより5’末端に組み込まれる。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼは融合タンパク質である。一部の実施形態では、グアニリルトランスフェラーゼ融合タンパク質は、グアニリルトランスフェラーゼがSUMOタンパク質に共有結合された際に生じた。一部の実施形態では、キャップ類似体は、5’三リン酸を有していないことから、5’末端にのみ組み込まれるはずである。T7、T3、及びSP6RNAポリメラーゼを用いる一部の実施形態では、それぞれのプロモーターの+1ヌクレオチドは通常G残基であり、GTPとm7GpppGの両方が、転写反応において等しい濃度で存在する場合には、それらが+1位で組み込まれる確率が等しくなる。一部の実施形態では、m7GpppGがGTPよりも数倍高い濃度でこれらの反応中に存在して、転写物が5’キャップを有する確率を上げている。一部の実施形態では、mMESSAGEのmMACHINE(登録商標)キット(カタログ番号1344、Ambion,Inc.)を、製造業者の指示書に従って使用し、そこではキャップとGTPの比が4:1(6mM:1.5mM)であることが推奨されている。一部の実施形態では、GTPに対するキャップ類似体の比が反応において増加するにつれて、非キャップRNAに対するキャップRNAの比が比例的に増加する。キャッピング効率の検討は、収量の検討と釣り合いをとらなければならない。転写反応においてGTPに対するキャップ類似体の比が増加すると、総RNAの収量が低くなるが、これは、キャップとGTPの全濃度を一定にする場合に、GTPの濃度が律速になるからである。したがって、最終的なRNA収量は、転写の伸長に必要なGTP濃度に依存する。他のヌクレオチド(ATP、CTP、UTP)は、過剰に存在している。
【0083】
特定の実施形態では、mRNAはin vitro転写によって、選択した遺伝子をコードするプラスミドDNA鋳型から合成される。一部の実施形態では、in vitro転写には、グアニリルトランスフェラーゼを介したGTPの酵素コンジュゲートによる、塩基1のリボース環の2’OH基で2’-O-メチル残基を有する5’キャップ構造、キャップ1(
図1B)の付加が含まれる。一部の実施形態では、in vitro転写には、グアニリルトランスフェラーゼを介したGTPの酵素コンジュゲートによる、2’-O-メチル残基を欠く5’キャップ構造、キャップ0(
図1A)の付加が含まれる。一部の実施形態では、in vitro転写には、グアニリルトランスフェラーゼを介したGTPの酵素コンジュゲートによる、本明細書に記載されたキャップ構造のいずれかのうちの5’キャップの付加が含まれる。
キャッピング効率
【0084】
本発明は、キャッピング効率を有意に向上させる。一部の実施形態では、SUMO-GT融合タンパク質をin vitroキャッピングアッセイで用いることにより、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のキャップされたmRNAが生じる。一部の実施形態では、SUMO-GT融合タンパク質をin vitroキャッピングアッセイで用いることにより、実質的に100%のキャップされたmRNAが生じる。一部の実施形態では、SUMO-GT融合タンパク質をin vitroキャッピングアッセイで用いることにより、非融合GTタンパク質を用いているが、それ以外は同一の条件下での対照アッセイに比べて、mRNAキャッピング効率が少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍増加する。
【0085】
加えて、本発明により、キャップされたmRNAの高効率での大規模生産が可能になる。一部の実施形態では、キャップされたmRNAは、1バッチあたり1グラム、5グラム、10グラム、15グラム、20グラム、25グラム、30グラム、35グラム、40グラム、45グラム、50グラム、75グラム、100グラム、150グラム、200グラム、250グラム、300グラム、350グラム、400グラム、450グラム、500グラム、550グラム、600グラム、650グラム、700グラム、750グラム、800グラム、850グラム、900グラム、950グラム、1kg、2.5kg、5kg、7.5kg、10kg、25kg、50kg、75kg、または100kgよりも大きい規模で生産される。
【0086】
キャッピング効率を推定する方法は既知である。例えば、T7RNAポリメラーゼを、キャップジヌクレオチドと、全4種のリボヌクレオチド三リン酸と、[α-32P]GTPと、Gがプロモーターの後ろに特定される最初のリボヌクレオチドである短鎖DNA鋳型と共にインキュベートすることができる(Grudzien, E. et al. “Novel cap analogs for in vitro synthesis of mRNA with high translation efficiency”, RNA, 10: 1479-1487 (2004)を参照のこと)。G残基の5’側にある任意のヌクレオチドは、RNaseT2消化の後に、最近接移動により32P標識された3’-リン酸基を捕捉する。続いて、陰イオン交換クロマトグラフィを用いて、RNAの内部位に由来する標識化されたヌクレオシド3’-一リン酸を、5’末端産物から分離する。5’末端産物には、2つの種類がある。非キャップRNAは、標識化されたグアノシン5’-三リン酸3’-一リン酸をもたらす(p3Gp*;*は標識化されたリン酸基を示す)。キャップRNAは、使用されるキャップ類似体の性質に応じて種々の5’末端構造をもたらす(キャップ類似体がm7Gp3Gである場合、m7Gp3Gp*及びGp3m7Gp*)。
【0087】
試料(例えば、in vitro合成反応からの代表的な一定量の試料)におけるmRNAキャッピング効率を直接定量する改良方法が、参照により本明細書に援用される国際公開第2014/152673号に提供されている。一部の実施形態は、キャップ特異的結合物質を、該キャップ特異的結合物質とキャップされたmRNAとの間に複合体が形成される条件下で使用することを含む。キャップ特異的結合物質とキャップされたmRNAとの間の複合体の形成により、キャップ産物の陽性対照または非キャップ産物の陰性対照に対する、複合体(すなわちキャップされたmRNA)の量の定量的な算出が可能になる。言い換えると、結合は、試料中のキャップされたmRNA標的の量と、試料が得られる反応におけるキャッピング効率とを示す。したがって、一部の実施形態では、複合体の量を定量的に算出する工程は、ELISA型アッセイを実施することを含み、そこで、キャップ特異的結合物質は抗体であるか、またはmRNAキャップと特異的に結合する他のタンパク質である。複合体の形成は、キャップ特異的結合物質(例えば、マウス抗m7G抗体と結合するヤギ抗マウス抗体)に対して特異的であり、かつキャップされたmRNAの量に正比例してシグナルを生じる検出剤の添加によって定量することができる。本発明の実施形態を使用して、in vitro転写されたmRNA、単離された真核生物mRNA、及びウイルスRNAを含めた広範なRNA種のキャッピング効率を定量することができる。
【0088】
試料(例えば、in vitro合成反応からの代表的な一定量の試料)におけるmRNAキャッピング効率を直接定量する、さらなる改良方法が、参照により本明細書に援用される国際公開第2014/152659号に提供されている。本発明の一部の実施形態は、mRNAキャッピング効率を定量化するクロマトグラフ法を含む。これらの方法は、酵素的操作の多用途性を用いて、ポリヌクレオチドのクロマトグラフ分離の分解能を増加させることができるという知見に一部基づくものである。したがって、酵素的操作によりクロマトグラフ分離能を向上させることによって、本発明の実施形態では、定量化の効率、質、及びスループットが向上する。例えば、本明細書に記載されるクロマトグラフ法は、キャッピング効率を定量できるだけでなく、キャップの修飾に関する情報(例えば、特定のキャップ位置でのメチル化状態)をも提供することができる。したがって、本発明の実施形態は、キャッピング効率及びキャップ修飾効率(例えば、メチル化効率)を同時に定量することができる。この定量化により、タンパク質生成に有意な影響を有するmRNA薬剤の重要な特徴が提供される。
【0089】
以下の実施例を参照することにより、本発明はより一層理解されるであろう。しかしながら、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。全ての引用文献は、参照により援用される。
【実施例】
【0090】
実施例1:SUMO-GT構築物設計
グアニリルトランスフェラーゼ(GT)ヘテロ二量体の大サブユニット部分と共有結合し、かつ共発現する、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)タグを組み込む新規な構築物を合成した。
低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)DNA:
GAAGAGAAACCGAAAGAGGGCGTTAAGACCGAGAATGACCACATTAACCTGAAGGTCGCTGGTCAAGATGGCAGCGTGGTGCAGTTTAAGATCAAGCGTCACACGCCGTTGAGCAAGCTGATGAAGGCTTACTGCGAGCGTCAGGGTCTGAGCATGCGTCAGATCCGCTTTCGTTTCGATGGCCAGCCGATCAATGAGACTGACACCCCAGCGCAACTGG(配列番号1)
グアニリルトランスフェラーゼ(GT)大サブユニットDNA:
AGATGGAAGATGAAGATACCATCGACGTCTTTCAGCAACAGACCGGTGGTATGGATGCTAACGTCGTTAGCAGCAGCACCATTGCGACTTACATTGATGCACTGGCCAAAAACGCATCTGAGCTTGAGCAGCGCAGCACCGCCTACGAGATCAATAACGAATTGGAGCTGGTTTTCATTAAACCGCCGCTGATCACGCTGACGAACGTCGTGAACATTAGCACGATTCAAGAGAGCTTTATTCGTTTCACCGTTACCAATAAAGAAGGCGTGAAGATCCGTACCAAGATTCCGCTGAGCAAAGTGCATGGTCTGGACGTGAAAAATGTGCAGCTGGTTGATGCGATCGATAACATCGTGTGGGAGAAGAAATCTTTGGTCACGGAAAATCGTCTGCACAAGGAATGTCTGCTGCGTCTGTCAACCGAAGAACGCCACATCTTCCTGGACTACAAGAAGTATGGTTCCAGCATCCGTCTGGAACTGGTGAACCTGATTCAGGCAAAGACCAAGAACTTCACCATTGACTTCAAACTGAAGTATTTCCTGGGCTCTGGTGCACAGAGCAAATCCAGCTTGTTGCACGCGATTAACCATCCGAAGAGCCGTCCGAATACGAGCCTGGAGATCGAATTCACGCCGCGTGATAACGAAACCGTTCCGTACGATGAGCTGATTAAAGAACTGACGACGTTGAGCCGCCACATCTTTATGGCCAGCCCGGAAAACGTGATCCTTAGCCCGCCTATCAATGCGCCGATTAAAACCTTTATGTTACCGAAACAAGACATTGTGGGTCTGGACCTGGAAAACCTGTACGCGGTCACCAAAACGGACGGCATTCCGATCACGATTCGTGTTACCAGCAATGGTCTGTACTGCTATTTCACTCATTTGGGCTATATCATTCGTTATCCGGTGAAACGCATCATTGATTCTGAGGTTGTCGTTTTCGGCGAAGCAGTCAAGGACAAGAATTGGACTGTGTACCTGATCAAATTGATTGAACCGGTTAACGCCATCAATGACCGCCTGGAAGAGTCGAAATATGTTGAAAGCAAACTGGTGGATATTTGTGATCGTATCGTGTTCAAGAGCAAGAAATATGAAGGCCCGTTCACCACGACCAGCGAAGTTGTTGACATGCTGAGCACCTATCTGCCGAAACAACCTGAGGGTGTGATTCTGTTTTACTCCAAGGGTCCGAAGAGCAACATTGATTTCAAAATCAAGAAAGAGAATACCATTGATCAGACCGCCAACGTTGTGTTCCGCTATATGTCCAGCGAGCCTATCATTTTCGGTGAGTCGAGCATCTTTGTTGAATACAAAAAGTTTAGCAACGATAAGGGTTTTCCGAAAGAATACGGTTCCGGTAAGATTGTGTTGTACAACGGCGTCAATTATCTGAACAACATCTACTGTCTGGAGTACATCAATACCCATAACGAAGTTGGCATTAAGTCTGTTGTCGTCCCGATCAAATTCATCGCGGAGTTCCTGGTTAACGGTGAGATTCTGAAGCCGCGTATTGATAAAACTATGAAATACATTAACTCCGAAGATTACTACGGTAATCAGCATAACATCATCGTCGAGCACTTGCGTGATCAAAGCATTAAGATCGGTGACATCTTTAACGAAGATAAGCTGAGCGATGTAGGCCACCAGTATGCGAACAATGACAAATTTCGCCTGAATCCGGAAGTCAGCTACTTTACGAATAAGCGCACCCGTGGTCCACTGGGTATCCTGAGCAATTATGTTAAAACCCTGTTGATTTCCATGTACTGCTCCAAAACGTTCCTGGACGACAGCAACAAGCGCAAAGTTCTGGCGATCGACTTCGGTAATGGTGCCGATCTGGAGAAGTACTTTTATGGTGAGATCGCATTGCTGGTTGCTACCGACCCGGATGCAGATGCGATCGCCCGTGGCAACGAGCGTTACAATAAGCTGAATAGCGGTATCAAGACCAAATACTACAAATTCGACTATATTCAAGAGACGATCCGCTCGGACACCTTTGTATCCAGCGTGCGTGAGGTGTTTTACTTCGGTAAATTCAACATCATTGACTGGCAATTCGCCATTCACTATAGCTTTCACCCACGCCACTATGCGACGGTCATGAACAACCTGTCTGAGCTGACCGCGAGCGGCGGTAAAGTTCTGATCACCACGATGGACGGTGACAAGCTGTCTAAACTGACCGACAAAAAGACCTTCATTATTCACAAAAATCTCCCGTCGAGCGAGAATTACATGTCCGTCGAAAAGATTGCGGACGACCGTATTGTTGTCTACAACCCGAGCACTATGTCGACCCCAATGACCGAGTATATCATCAAAAAGAATGACATTGTGCGTGTCTTTAATGAATACGGTTTTGTGCTGGTCGACAACGTCGATTTTGCGACCATCATCGAGAGAAGCAAGAAATTCATTAATGGCGCTTCTACGATGGAAGATCGCCCGAGCACGCGTAACTTCTTTGAGCTGAATCGTGGCGCGATTAAGTGCGAGGGCCTGGACGTCGAGGATCTGCTGTCGTATTACGTGGTTTATGTGTTTAGCAAACGTTAATGA(配列番号2)
グアニリルトランスフェラーゼ(GT)小サブユニットDNA:
ATGGACGAAATTGTCAAGAATATCCGTGAAGGTACCCACGTTTTACTGCCATTCTACGAGACGCTGCCGGAACTGAACCTGAGCCTGGGTAAAAGCCCTCTGCCGAGCCTGGAGTATGGTGCGAACTATTTTCTGCAGATTTCCCGTGTAAACGATTTGAACCGCATGCCGACGGACATGCTGAAACTGTTCACCCACGACATCATGCTGCCGGAATCTGATCTGGATAAAGTTTACGAGATCTTGAAAATCAATTCAGTGAAGTACTATGGCCGTAGCACCAAGGCCGATGCGGTGGTCGCAGACCTGAGCGCGCGTAACAAACTGTTTAAACGTGAACGTGACGCAATTAAGAGCAATAACCATCTGACCGAGAACAATTTGTACATCAGCGACTACAAGATGTTGACTTTTGACGTGTTTCGTCCGCTGTTCGACTTTGTTAATGAGAAATACTGCATTATCAAGCTGCCGACGTTGTTTGGTCGCGGCGTCATTGATACGATGCGCATTTACTGCTCTCTCTTCAAGAATGTGCGCCTGCTGAAGTGTGTCTCCGACAGCTGGCTGAAAGATAGCGCTATTATGGTTGCGAGCGACGTGTGTAAAAAGAACCTGGATCTGTTCATGAGCCACGTGAAGAGCGTTACCAAAAGCAGCAGCTGGAAAGACGTTAACAGCGTCCAGTTCTCCATTCTGAATAACCCGGTCGATACCGAGTTTATCAACAAGTTCCTTGAATTCAGCAATCGCGTTTATGAGGCCCTGTATTACGTTCATAGCCTGCTGTATAGCTCCATGACCTCTGATAGCAAATCGATCGAGAATAAACACCAACGTCGTCTGGTGAAACTGCTGCTGTAATGA(配列番号3)
Hisタグ及びリンカーを備えたSUMO-GT大サブユニットDNA構築物:
ATGGGCCATCATCATCACCATCACGGCAGCCTGCAAGAAGAGAAACCGAAAGAGGGCGTTAAGACCGAGAATGACCACATTAACCTGAAGGTCGCTGGTCAAGATGGCAGCGTGGTGCAGTTTAAGATCAAGCGTCACACGCCGTTGAGCAAGCTGATGAAGGCTTACTGCGAGCGTCAGGGTCTGAGCATGCGTCAGATCCGCTTTCGTTTCGATGGCCAGCCGATCAATGAGACTGACACCCCAGCGCAACTGGAGATGGAAGATGAAGATACCATCGACGTCTTTCAGCAACAGACCGGTGGTATGGATGCTAACGTCGTTAGCAGCAGCACCATTGCGACTTACATTGATGCACTGGCCAAAAACGCATCTGAGCTTGAGCAGCGCAGCACCGCCTACGAGATCAATAACGAATTGGAGCTGGTTTTCATTAAACCGCCGCTGATCACGCTGACGAACGTCGTGAACATTAGCACGATTCAAGAGAGCTTTATTCGTTTCACCGTTACCAATAAAGAAGGCGTGAAGATCCGTACCAAGATTCCGCTGAGCAAAGTGCATGGTCTGGACGTGAAAAATGTGCAGCTGGTTGATGCGATCGATAACATCGTGTGGGAGAAGAAATCTTTGGTCACGGAAAATCGTCTGCACAAGGAATGTCTGCTGCGTCTGTCAACCGAAGAACGCCACATCTTCCTGGACTACAAGAAGTATGGTTCCAGCATCCGTCTGGAACTGGTGAACCTGATTCAGGCAAAGACCAAGAACTTCACCATTGACTTCAAACTGAAGTATTTCCTGGGCTCTGGTGCACAGAGCAAATCCAGCTTGTTGCACGCGATTAACCATCCGAAGAGCCGTCCGAATACGAGCCTGGAGATCGAATTCACGCCGCGTGATAACGAAACCGTTCCGTACGATGAGCTGATTAAAGAACTGACGACGTTGAGCCGCCACATCTTTATGGCCAGCCCGGAAAACGTGATCCTTAGCCCGCCTATCAATGCGCCGATTAAAACCTTTATGTTACCGAAACAAGACATTGTGGGTCTGGACCTGGAAAACCTGTACGCGGTCACCAAAACGGACGGCATTCCGATCACGATTCGTGTTACCAGCAATGGTCTGTACTGCTATTTCACTCATTTGGGCTATATCATTCGTTATCCGGTGAAACGCATCATTGATTCTGAGGTTGTCGTTTTCGGCGAAGCAGTCAAGGACAAGAATTGGACTGTGTACCTGATCAAATTGATTGAACCGGTTAACGCCATCAATGACCGCCTGGAAGAGTCGAAATATGTTGAAAGCAAACTGGTGGATATTTGTGATCGTATCGTGTTCAAGAGCAAGAAATATGAAGGCCCGTTCACCACGACCAGCGAAGTTGTTGACATGCTGAGCACCTATCTGCCGAAACAACCTGAGGGTGTGATTCTGTTTTACTCCAAGGGTCCGAAGAGCAACATTGATTTCAAAATCAAGAAAGAGAATACCATTGATCAGACCGCCAACGTTGTGTTCCGCTATATGTCCAGCGAGCCTATCATTTTCGGTGAGTCGAGCATCTTTGTTGAATACAAAAAGTTTAGCAACGATAAGGGTTTTCCGAAAGAATACGGTTCCGGTAAGATTGTGTTGTACAACGGCGTCAATTATCTGAACAACATCTACTGTCTGGAGTACATCAATACCCATAACGAAGTTGGCATTAAGTCTGTTGTCGTCCCGATCAAATTCATCGCGGAGTTCCTGGTTAACGGTGAGATTCTGAAGCCGCGTATTGATAAAACTATGAAATACATTAACTCCGAAGATTACTACGGTAATCAGCATAACATCATCGTCGAGCACTTGCGTGATCAAAGCATTAAGATCGGTGACATCTTTAACGAAGATAAGCTGAGCGATGTAGGCCACCAGTATGCGAACAATGACAAATTTCGCCTGAATCCGGAAGTCAGCTACTTTACGAATAAGCGCACCCGTGGTCCACTGGGTATCCTGAGCAATTATGTTAAAACCCTGTTGATTTCCATGTACTGCTCCAAAACGTTCCTGGACGACAGCAACAAGCGCAAAGTTCTGGCGATCGACTTCGGTAATGGTGCCGATCTGGAGAAGTACTTTTATGGTGAGATCGCATTGCTGGTTGCTACCGACCCGGATGCAGATGCGATCGCCCGTGGCAACGAGCGTTACAATAAGCTGAATAGCGGTATCAAGACCAAATACTACAAATTCGACTATATTCAAGAGACGATCCGCTCGGACACCTTTGTATCCAGCGTGCGTGAGGTGTTTTACTTCGGTAAATTCAACATCATTGACTGGCAATTCGCCATTCACTATAGCTTTCACCCACGCCACTATGCGACGGTCATGAACAACCTGTCTGAGCTGACCGCGAGCGGCGGTAAAGTTCTGATCACCACGATGGACGGTGACAAGCTGTCTAAACTGACCGACAAAAAGACCTTCATTATTCACAAAAATCTCCCGTCGAGCGAGAATTACATGTCCGTCGAAAAGATTGCGGACGACCGTATTGTTGTCTACAACCCGAGCACTATGTCGACCCCAATGACCGAGTATATCATCAAAAAGAATGACATTGTGCGTGTCTTTAATGAATACGGTTTTGTGCTGGTCGACAACGTCGATTTTGCGACCATCATCGAGAGAAGCAAGAAATTCATTAATGGCGCTTCTACGATGGAAGATCGCCCGAGCACGCGTAACTTCTTTGAGCTGAATCGTGGCGCGATTAAGTGCGAGGGCCTGGACGTCGAGGATCTGCTGTCGTATTACGTGGTTTATGTGTTTAGCAAACGTTAATGA(配列番号4)
低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質:
EEKPKEGVKTENDHINLKVAGQDGSVVQFKIKRHTPLSKLMKAYCERQGLSMRQIRFRFDGQPINETDTPAQLEMEDEDTIDVFQQQTGG(配列番号5)
グアニリルトランスフェラーゼ(GT)大サブユニットタンパク質:
MDANVVSSSTIATYIDALAKNASELEQRSTAYEINNELELVFIKPPLITLTNVVNISTIQESFIRFTVTNKEGVKIRTKIPLSKVHGLDVKNVQLVDAIDNIVWEKKSLVTENRLHKECLLRLSTEERHIFLDYKKYGSSIRLELVNLIQAKTKNFTIDFKLKYFLGSGAQSKSSLLHAINHPKSRPNTSLEIEFTPRDNETVPYDELIKELTTLSRHIFMASPENVILSPPINAPIKTFMLPKQDIVGLDLENLYAVTKTDGIPITIRVTSNGLYCYFTHLGYIIRYPVKRIIDSEVVVFGEAVKDKNWTVYLIKLIEPVNAINDRLEESKYVESKLVDICDRIVFKSKKYEGPFTTTSEVVDMLSTYLPKQPEGVILFYSKGPKSNIDFKIKKENTIDQTANVVFRYMSSEPIIFGESSIFVEYKKFSNDKGFPKEYGSGKIVLYNGVNYLNNIYCLEYINTHNEVGIKSVVVPIKFIAEFLVNGEILKPRIDKTMKYINSEDYYGNQHNIIVEHLRDQSIKIGDIFNEDKLSDVGHQYANNDKFRLNPEVSYFTNKRTRGPLGILSNYVKTLLISMYCSKTFLDDSNKRKVLAIDFGNGADLEKYFYGEIALLVATDPDADAIARGNERYNKLNSGIKTKYYKFDYIQETIRSDTFVSSVREVFYFGKFNIIDWQFAIHYSFHPRHYATVMNNLSELTASGGKVLITTMDGDKLSKLTDKKTFIIHKNLPSSENYMSVEKIADDRIVVYNPSTMSTPMTEYIIKKNDIVRVFNEYGFVLVDNVDFATIIERSKKFINGASTMEDRPSTRNFFELNRGAIKCEGLDVEDLLSYYVVYVFSKR(配列番号6)
グアニリルトランスフェラーゼ(GT)小サブユニットタンパク質:
MDEIVKNIREGTHVLLPFYETLPELNLSLGKSPLPSLEYGANYFLQISRVNDLNRMPTDMLKLFTHDIMLPESDLDKVYEILKINSVKYYGRSTKADAVVADLSARNKLFKRERDAIKSNNHLTENNLYISDYKMLTFDVFRPLFDFVNEKYCIIKLPTLFGRGVIDTMRIYCSLFKNVRLLKCVSDSWLKDSAIMVASDVCKKNLDLFMSHVKSVTKSSSWKDVNSVQFSILNNPVDTEFINKFLEFSNRVYEALYYVHSLLYSSMTSDSKSIENKHQRRLVKLLL(配列番号7)
Hisタグ及びリンカーを備えたSUMO-GT大サブユニットタンパク質:
MGHHHHHHGSLQEEKPKEGVKTENDHINLKVAGQDGSVVQFKIKRHTPLSKLMKAYCERQGLSMRQIRFRFDGQPINETDTPAQLEMEDEDTIDVFQQQTGGMDANVVSSSTIATYIDALAKNASELEQRSTAYEINNELELVFIKPPLITLTNVVNISTIQESFIRFTVTNKEGVKIRTKIPLSKVHGLDVKNVQLVDAIDNIVWEKKSLVTENRLHKECLLRLSTEERHIFLDYKKYGSSIRLELVNLIQAKTKNFTIDFKLKYFLGSGAQSKSSLLHAINHPKSRPNTSLEIEFTPRDNETVPYDELIKELTTLSRHIFMASPENVILSPPINAPIKTFMLPKQDIVGLDLENLYAVTKTDGIPITIRVTSNGLYCYFTHLGYIIRYPVKRIIDSEVVVFGEAVKDKNWTVYLIKLIEPVNAINDRLEESKYVESKLVDICDRIVFKSKKYEGPFTTTSEVVDMLSTYLPKQPEGVILFYSKGPKSNIDFKIKKENTIDQTANVVFRYMSSEPIIFGESSIFVEYKKFSNDKGFPKEYGSGKIVLYNGVNYLNNIYCLEYINTHNEVGIKSVVVPIKFIAEFLVNGEILKPRIDKTMKYINSEDYYGNQHNIIVEHLRDQSIKIGDIFNEDKLSDVGHQYANNDKFRLNPEVSYFTNKRTRGPLGILSNYVKTLLISMYCSKTFLDDSNKRKVLAIDFGNGADLEKYFYGEIALLVATDPDADAIARGNERYNKLNSGIKTKYYKFDYIQETIRSDTFVSSVREVFYFGKFNIIDWQFAIHYSFHPRHYATVMNNLSELTASGGKVLITTMDGDKLSKLTDKKTFIIHKNLPSSENYMSVEKIADDRIVVYNPSTMSTPMTEYIIKKNDIVRVFNEYGFVLVDNVDFATIIERSKKFINGASTMEDRPSTRNFFELNRGAIKCEGLDVEDLLSYYVVYVFSKR(配列番号8)
実施例2:SUMO-GTタンパク質の生成
振盪フラスコ
【0091】
SUMO-GT融合タンパク質の産生は、標準方法及び手順に従って行われ得る。例えば、GT及びSUMO-GT融合タンパク質の発現を評価かつ比較するために、SUMO-eGFPプラスミドの各々を含有する大腸菌ロゼッタ株(Novagen)の単一コロニーを、100μg/mlのカナマイシンと30μg/mlのクロラムフェニコールとを含む5mLのLuria-Bertani(LB)培地中でインキュベートした。この株は、ラムダDE3溶原株由来であり、pACYC系プラスミド上で、tRNAに加えてIPTG-誘導T7RNAポリメラーゼの染色体コピーを担持している。細胞を250rpmで振盪しながら、37℃で一晩増殖させた。翌朝、一晩培養した培養物を100mlの新鮮培地中に移して、指数的な増殖を可能にした。OD600値が0.6~0.7に到達してから、タンパク質発現を1mMのIPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を添加することによって誘導し、続いて37℃で3時間、または20℃で一晩(約15時間)のいずれかで長時間の培養を行った。
【0092】
大腸菌(E. coli)細胞を遠心分離(8,000×g、4℃にて10分間)によりLB培地(100ml)から収穫した後に、細胞ペレットを6mlの溶解緩衝液(300mMのNaClと、10mMのイミダゾールと、0.1%のTriton×100と、1mMのPMSFとを含有するPBS、pH8.0)に懸濁した。細胞を超音波処理(5×30秒パルスの間、50%出力)により溶解した。超音波処理を、湿氷に入れられたチューブで、パルスサイクル間に1分の休止期間を有して行って加熱を防止した。溶解物をDNaseとRNase(各40μg/ml)とで15分間インキュベートして核酸を消化した後に、20,000gで4℃にて30分間遠心分離し、上清(可溶タンパク質画分)を採取した。ペレットを6mlの溶解緩衝液で一回洗浄して、可溶画分をさらに抽出した。洗浄液(6ml)を先の抽出物(6ml)と混合して、可溶タンパク質試料として12mlの最終容量にした。
【0093】
不溶タンパク質試料を大腸菌(E. coli)封入体から調製した。簡単に説明すると、可溶タンパク質を含有する抽出物を除去した後に、封入体を含有するペレットを、50mMのCAPS(pH11.0)と、0.3%のN-ラウリルサルコシンと、1mMのDTTとを含む変性溶解緩衝液(Novagen)に懸濁し、室温で振盪しながら20分間インキュベートした。抽出物(不溶タンパク質画分)を高速遠心分離(80,000×g、4℃にて20分間)によって得た。
【0094】
SDS-PAGEを用いて発現タンパク質を検出するために、上述の調製された試料5μlをSDSとβ-メルカプトエタノールとを含有するSDSPAGE試料緩衝液3μlと混合し、95℃で5分間加熱して、タンパク質の変性と還元とを促進させた。タンパク質を、トリス-グリシン泳動緩衝液とクーマシーブルー染色とを備えた15%のSDS-ポリアクリルアミドゲルを用いて可視化した。
発酵
【0095】
最終のSUMO-GT複合酵素の溶解度を実質的に増加させることは、発酵によっても再現された。発酵を標準方法及び手順に従って行った。例えば、SUMO-GT融合タンパク質を生成するための発酵方法には、細胞溶解、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、及び接線流濾過(TFF)法が包含された。発酵から得られたSUMO-GT融合タンパク質の品質評価には、純度及び同一性を算出する還元SDS-PAGE、純度を算出する逆相HPLC、濃度のA280測定、ならびにエンドトキシンを評価するリムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)アッセイが包含された。
【0096】
図2に示すように、発酵により生成された可溶性SUMO-GTタンパク質の収量は、振盪フラスコ法により生成されたGTタンパク質の収量と同等である。
等価物
【0097】
当業者は、単なる日常的な実験方法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができるだろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図せず、むしろ以下の特許請求の範囲に記述される通りである。
【配列表】