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特許6997705ペロブスカイト基盤の光電変換素子の再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ペロブスカイト基盤の光電変換素子の再生方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/48 20060101AFI20220107BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20220107BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20220107BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01L31/04 180
H01L31/04 112Z
B09B3/00 304Z
B29B17/02 ZAB
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018522529
(86)(22)【出願日】2016-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2016011983
(87)【国際公開番号】W WO2017073974
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2018-06-26
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】10-2015-0152460
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】317016475
【氏名又は名称】グローバル フロンティア センター フォー マルチスケール エネルギー システムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】514293260
【氏名又は名称】リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション ソンギュンクァン ユニバーシティ
【住所又は居所原語表記】2066, SEOBU-RO, JANGAN-GU, SUWON-SI, GYEONGGI-DO, 16419, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヒョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ビョン ジョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スン リ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドン ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ヨン グン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソ ヨン
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】野村 伸雄
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-280086(JP,A)
【文献】特開2014-229747(JP,A)
【文献】特開2015-46585(JP,A)
【文献】特開2015-69824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0129034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/06
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト基盤の光電変換素子の廃モジュールを、下記の数式1:
〔数式1〕
y=ax -b
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒の双極子モーメント、aは、700~850の定数、bは、4~6の定数である、
の条件を満足する時間の間洗浄溶媒に振盪しながら浸漬する段階を含み、ここで前記洗浄溶媒が、2-プロパノール、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、およびγ-ブチロラクトンからなる群から選択される1種であり、前記ペロブスカイト光電変換素子は、透明基板上に順次備えられた透明電極層、正孔遮断層、電子収集層、有機金属ハライドペロブスカイトを含有する光吸収層、正孔移動層、及び金属電極層を備え、ならびに、光吸収層、正孔移動層、及び金属電極層が洗浄溶液に浸漬することによって除去される、ペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法。
【請求項2】
下記の段階:
洗浄溶媒のpHを調整する;および
ペロブスカイト基盤の光電変換素子の廃モジュールを洗浄溶媒のpHと下記の数式2:
〔数式2〕
y=cedx2
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒のpH、cは、40~50の定数であり、dは、約0.3~0.9の定数である、
との関係を満足する時間の間洗浄溶媒に振盪しながら浸漬することを含前記洗浄溶媒が、蒸留水である、ペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法。
【請求項3】
前記洗浄溶媒は、前記有機金属ハライドペロブスカイトとS2反応が可能である請求項1に記載のペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法。
【請求項4】
透明電極層及び電子収集層を備えた基板を回収することをさらに含む請求項1に記載のペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法。
【請求項5】
回収された基板に光吸収層、正孔移動層、金属電極層またはこれらの組合わせを形成する段階をさらに含む請求項4に記載のペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法。
【請求項6】
前記ペロブスカイト光電変換素子が、ペロブスカイト太陽電池である請求項5に記載のペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年10月30日付の韓国特許出願第10-2015-0152460号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
本発明は、ペロブスカイト光吸収層を含む光電変換素子の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光電変換物質は、色エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換させる光吸収体である。光電変換物質を使用する代表的な素子である太陽電池は、無限なエネルギー源である太陽光を用いて電気を生産するツールであって、既に我が生活に広く用いられている。シリコン太陽電池に使われるシリコン素材が、代表的光電変換物質である。最近、ペロブスカイト構造を有した光吸収体を適用した有機-無機複合ペロブスカイト素子についての研究が活発に進められている。
特に、ペロブスカイト光吸収体を使用した太陽電池は、優れた光電変換効率だけではなく、シリコン太陽電池、有機太陽電池のような、その他の太陽電池と比較して、低い工程コストを有するので、次世代太陽電池として注目を浴びている。
【0003】
しかし、ペロブスカイト太陽電池は、性能低下によって寿命が尽きる場合、基板を廃棄処分しなければならないが、この過程でTiOのような電子収集体、FTOのような透明電極などの基板構成物質が捨てられながら、経済的損失をもたらすだけではなく、AMX3構造で金属原素(M)位置に主に使われるPbのような有害物質を含んでおり、それの処理に追加コストがかかる。
したがって、ペロブスカイト光吸収体を使用した光電変換素子の商業的利用のためには、素子に使用した素材リサイクルを通じたコスト節減及びPbのような有害物質の回収コストの節減が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これにより、本発明は、寿命が尽きたか、既に使用したペロブスカイト光電変換素子から基板を回収して、リサイクルすることができる方法を提供することである。
また、本発明は、寿命が尽きたペロブスカイト光電変換素子から回収された基板を再使用して製造されたにもかかわらず、効率に優れた光電変換素子を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、前述した課題で制限されず、言及されていないさらなる課題は、下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ペロブスカイト光電変換素子の廃モジュールを、下記の数式1の条件を満足する時間の間に洗浄溶媒に浸漬する段階を含むペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法を提供する。
〔数式1〕
y=a1x -b1
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒の双極子モーメント、a1は、700~850の定数、b1は、4~6の定数である。
一具現例によれば、前記洗浄溶媒の双極子モーメントが、1.5以上であるものであり得る。
【0006】
また、前記浸漬時間は、洗浄溶媒のpH(x)と下記の数式2との関係を満足するものであり得る。
〔数式2〕
y=cedx2
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒のpH、cは、40~50の定数であり、dは、約0.3~0.9の定数である。
また、前記光電変換素子は、有機金属ハライドを含有する光吸収層を備え、前記洗浄溶媒は、前記有機金属ハライドとS2反応が可能なものであり得る。
【0007】
一具現例によれば、前記ペロブスカイト光電変換素子は、透明基板上に透明電極層、正孔遮断層、電子収集層、光吸収層、正孔移動層及び金属電極層が順次に形成されているものであり得る。
一具現例によれば、前記洗浄溶液に、前記廃モジュールを浸漬することによって、光吸収層、正孔移動層、金属電極層またはこれらの組合わせを除去し、透明電極層及び電子収集層を備えた基板を回収することができる。
また、一具現例によれば、前記回収された基板に光吸収層、正孔移動層、金属電極層またはこれらの組合わせを形成する段階をさらに含みうる。
本発明は、また、前記方法によって再生されたペロブスカイト光電変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、寿命が尽きたペロブスカイト光電変換素子をモジュール形態に廃棄した既存の方式を改善して、光電変換素子の廃モジュールからペロブスカイト光吸収体、正孔移動層、金属電極などを除去し、基板を回収して、初期の高い光電変換効率レベルに再製作させることによって、ペロブスカイト光電変換素子の生産コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ペロブスカイトの太陽電池の一般的な構造を例示した断面図である。
図2】有機金属ハライドペロブスカイト構造を概略的に図示する。
図3】それぞれ一実施例によるペロブスカイト太陽電池の構造を図示した断面図である。
図4】それぞれ一実施例によるペロブスカイト太陽電池の構造を図示した平面図である。
図5】それぞれ本発明によって洗浄した後、太陽電池の構造を図示した断面図である。
図6】それぞれ本発明によって洗浄した後、太陽電池の構造を図示した平面図である。
図7】試験例1による実験過程を示す写真である。
図8】試験例1による実験過程を示す結果グラフである。
図9】試験例2による実験過程を示す写真である。
図10】試験例2による実験過程を示す結果グラフである。
図11】本発明の実施例1ないし実施例3によって、洗浄前のペロブスカイト太陽電池及び洗浄後の太陽電池基板の写真である。
図12】本発明の実施例1ないし実施例3によって洗浄した後、太陽電池基板に残った不純物の有無確認及び成分確認のためのX線回折の結果である。
図13】本発明の実施例3によって洗浄された太陽電池基板に残った不純物の有無確認及び成分確認のためのEDS(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)分析結果である。
図14】本発明の実施例4で製作した太陽電池の電流密度-電圧曲線及び光電変換効率の測定結果である。
図15】本発明の実施例4で製作した太陽電池の電流密度-電圧曲線及び光電変換効率の測定結果である。
図16】本発明の実施例4で製作した太陽電池の電流密度-電圧曲線及び光電変換効率の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記、添付した図面を参照して、当業者が容易に実施できるように、本願の実施例を詳しく説明する。しかし、本願は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面で、本願を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書の全体にわたって類似した部分については、類似した図面符号を付ける。
本願の明細書の全体にわたり、ある部分が他の部分と「連結」されているとする時、これは、「直接連結」されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。
本願の明細書の全体にわたり、ある部材が他の部材「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけではなく、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0011】
本願の明細書の全体にわたり、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含みうることを意味する。本願の明細書において全体として使われる程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有な製造及び物質許容誤差が提示される時、その数値またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために、正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。本願の明細書において全体として使われる程度の用語「~(する)段階」または「~の段階」は、「~のための段階」を意味しない。
本願の明細書の全体にわたり、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組合わせ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載の構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合または組合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0012】
本願の明細書の全体にわたり、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、またはA及びB」を意味する。
本願の明細書の全体にわたり、‘モジュール’とは、少なくとも第1及び第2電極の間にペロブスカイト光吸収層を有する構造を称し、‘廃モジュール’とは、使用後、寿命がほとんど尽くして、これ以上使用することが困難な状態であるモジュールを称する。
‘基板’とは、少なくとも堅い(rigid)か、柔軟な(flexible)基板上に導電層が形成された構造を称し、さらに正孔遮断層や電子収集層、または、これらいずれもが形成されている。金属電極層や光吸収層を含まない状態である。
以下、添付図面を参照して、本願の具現例及び実施例を詳しく説明する。しかし、本願が、このような具現例及び実施例と図面とに制限されるものではない。
【0013】
図1は、代表的な光電変換素子のうちの1つである太陽電池の構造を示したものである。図1を参照すれば、染料感応太陽電池100は、2つの電極、すなわち、第1電極20と第2電極50とが面接合されたサンドイッチ構造を有しうるが、これに制限されるものではない。例えば、前記第1電極20は、作業電極(working electrode)または半導体電極として表現されるが、これに制限されるものではない。前記第1電極20は、透明基板10上に形成されうる。また、前記第1電極20上には、光吸収層30が形成され、前記光吸収層30には、可視光線の吸収によって電子が励起される有機金属ハライドペロブスカイトが含まれている。前記光吸収層30上には、正孔移動層(hole transport material)40が形成されており、前記正孔移動層40上には、第2電極50が形成されている。前記正孔移動層40は、酸化された前記光吸収層30を還元させるために形成されるものであるが、これに制限されるものではない。また、前記正孔移動層40は、前記光吸収層30上に1つの平面で形成されることに制限されるものではない。
【0014】
前記ペロブスカイト太陽電池の作動原理を例示的に説明すれば、太陽光が入射されれば、光陽子が先に光吸収層30内のペロブスカイトに吸収され、これにより、前記ペロブスカイトは、基底状態から励起状態に電子転移して電子-正孔対を作り、前記励起状態の電子は、半導体微粒子界面の伝導帯(conduction band)に注入される。前記注入された電子は、界面を通じて前記第1電極20に伝達され、以後、外部回路を通じて前記第1電極20と対向している相手電極である第2電極50に移動する。一方、電子転移の結果、酸化されたペロブスカイトは、正孔移動層40内の酸化-還元カップルイオンによって還元され、酸化された前記イオンは、電荷中性(charge neutrality)を成すために、前記第2電極50の界面に到達した電子と還元反応を起こすことによって、前記太陽電池が作動する。
【0015】
一具現例によれば、前記第1電極20は、透明電極とも言い、インジウムチンオキシド(indium tin oxide:ITO)、フッ素チンオキシド(fluorine tin oxide:FTO)、ZnO-Ga、ZnO-Al、スズ系酸化物、酸化亜鉛、及びこれらの組合わせからなる群から選択される物質を含むものであり得るが、これに制限されるものではない。前記透明電極は、導電性及び透明性を有する物質であれば、特に制限なしに使用することができる。例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、フッ素チンオキシド(FTO)、ZnO-Ga、ZnO-Al、スズ系酸化物、酸化亜鉛、及びこれらの組合わせからなる群から選択される物質を含有しうる。
透明基板10は、ガラス基材またはプラスチック基材を使用することができる。プラスチック基材は、ポリエチレンテレフタレート[Poly(ethylene terephthalate):PET]、ポリエチレンナフタレート[poly(ethylene naphthalate):PEN]、ポリカーボネート(Poly Carbonate:PC)、ポリプロピレン(Polypropylene:PP)、ポリイミド(Polyimide:PI)、トリアセチルセルロース(Tri-acetyl cellulose:TAC)、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものを含むものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0016】
前記透明電極20を透明基板10の一面に形成するための方法としては、電解メッキ、スパッタリング、電子ビーム蒸着法のような物理気相蒸着(PVD)方法を利用することができるが、これに制限されるものではない。
光吸収層30は、下記化学式1として表示される有機金属ハライドペロブスカイトを光吸収体として含んでいる。
〔化学式1〕
AMX
前記式のうち、Aは、C1-20のアルキル基、アミン基によって置換されたC1-20のアルキル基、またはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、Mは、Pb、Sn、Ti、Nb、Zr、Ceのような遷移金属、遷移後の金属、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものを含み、Xは、ハロゲン原子である。
【0017】
例えば、前記化学式1として表示されるペロブスカイトは、図2に示されたような構造を有し、MXとAXとから製造されるものであり得るが、これに制限されるものではない。
前記化学式1として表示されるペロブスカイトは、AMX構造の有無機複合物質であって、前記Rは、C1-20のアルキル基、アミン基によって置換されたC1-20のアルキル基、またはLi、Na、K、Rb、Cs、Fsなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属、前記MにPb、Sn、Ti、Nb、Zr、Ceのような遷移金属、遷移後の金属及びこれらの組合わせ、前記Xにハロゲンを代入したことが、前記化学式1に該当する。前記アルキル基は、1~20の炭素数を有しうるが、これに制限されるものではない。例えば、前記炭素数は、約1~約20、約1~約10、約1~約6、約6~約20、約6~約10、または約10~約20であり得るが、これに制限されるものではない。前記ハロゲンは、F、Br、Cl、またはIであり得るが、これに制限されるものではない。前記化学式1として表示される染料は、CHNHPbIであり得るが、これに制限されるものではない。前記化学式1として表示される染料は、一般的な有機染料に比べて、吸光係数が指数単位で高くて、薄いフィルムでも非常に優れた集光効果(light harvesting)を示し、これにより、前記化学式1として表示される染料を使用する場合、染料感応太陽電池が薄い光吸収層を有しても、高いエネルギー転換効率が達成されうるが、これに制限されるものではない。
【0018】
一具現例によれば、前記正孔移動層40は、正孔伝達単分子物質または正孔伝達高分子物質を含むものであり得るが、これに制限されるものではない。例えば、前記正孔伝達単分子物質としてNiOやCuSCNのような無機物またはspiro-MeOTAD[2,2’,7,7’-tetrakis-(N、N-di-p-methoxyphenyl-amine)-9,9’-spirobifluore ne]を使用し、前記正孔伝達高分子物質としてP3HT[poly(3-hexylthiophene)]を使用することができるが、これに制限されるものではない。また、例えば、前記正孔移動層には、ドーピング物質としてLi系のドーパント、Co系のドーパント、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものいずれもが追加含まれうるが、これに制限されるものではない。また、例えば、前記正孔移動層には、tBPなどの添加剤が追加含まれうるが、これに制限されるものではない。例えば、前記正孔移動層を構成する物質としてspiro-MeOTAD、tBP、及びLi-TFSIの混合物を利用することができるが、これに制限されるものではない。例えば、p-typeの正孔伝達物質を使用する場合、spiro-MeOTADに比べて、正孔移動性(hole mobility)が約10程度大きいために、厚いフィルムでも効率的な正孔伝達が行われうるが、これに制限されるものではない。
【0019】
一方、前記正孔移動層40に含まれる前記正孔伝達物質は、短い正孔移動特性を有するので、前記太陽電池に含まれる光吸収層の厚さが厚い場合には、適用されにくいが、既存のルテニウム金属錯体を含む光吸収層は、その厚さを薄くする場合、電流密度が低下して、エネルギー転換効率を高めることができないという問題点があって、正孔移動層との結合に難点があった。しかし、前記ルテニウム金属錯体の代わりに、高い吸光係数を有するペロブスカイト光吸収層を用いて、その厚さを薄くしても、高い電流密度及び高いエネルギー転換効率を確保することができるので、前記正孔移動層との結合に適するという利点がある。
一具現例によれば、前記第2電極50は、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、In、Ru、Pd、Rh、Ir、Os、C、導電性高分子、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものを含んでもよいが、これに制限されるものではない。前記第2電極、すなわち、相手電極としては、導電性金属物質であれば、特に制限なしに使用し、絶縁性の物質でも、前記第1電極と対向している部分のみに導電層が形成されているならば、それを利用することができ、これに制限されるものではない。
本発明は、ペロブスカイト基盤の光電変換素子の廃モジュールから効率的に基板を回収することができる方法に関するものである。本発明者の研究によれば、洗浄溶媒の双極子モーメント及びpHによってペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの洗浄能力に差があることを見つけ、その結果、最適の工程時間を導出可能になった。
【0020】
具体的に、本発明は、ペロブスカイト光電変換素子の廃モジュールを、下記の数式1の条件を満足する時間の間に洗浄溶媒に浸漬する段階を含むペロブスカイト光電変換素子廃モジュールの再生方法を提供する。
〔数式1〕
y=ax -b
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒の双極子モーメント、aは、700~850の定数、bは、4~6の定数である。
望ましくは、aが、750~800の定数であり、bが、4.5~5.5の定数であり得る。
また、前記浸漬時間は、洗浄溶媒のpH(x)と下記の数式2との関係を満足するものであり得る。
〔数式2〕
y=cedx2
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒のpH、cは、40~50の定数であり、dは、約0.3~0.9の定数である。
望ましくは、cが、40~45の定数であり、dが、0.4~0.8の定数であり得る。
【0021】
また、前記光電変換素子は、前述したように、有機金属ハライドを含有する光吸収層を備え、前記洗浄溶媒は、前記有機金属ハライドとS2反応が可能なものであり得る。一具現例によれば、前記洗浄溶媒の双極子モーメントが、1.5以上であるものであり得る。
本発明による工程で洗浄溶媒のS2反応原理は、次の通りである。
双極子モーメントが大きな溶媒は、次のように部分正電荷(δ)及び部分負電荷(δ)電荷を有しうる。
【化1】
【0022】
したがって、洗浄溶媒がペロブスカイトと合えば、ペロブスカイト陽イオン成分は、洗浄溶媒の部分負電荷(δ)に取り囲まれて自由ではなく、
【化2】
【0023】
ペロブスカイトのハロゲン成分は、洗浄溶媒の立体障害(Steric hindrance)によって洗浄溶媒の部分正電荷(δ)と結合せずに自由である。
【化3】
【0024】
その結果、下記のようにペロブスカイト洗浄溶媒のS2反応が円滑であり、ハロゲン原子(X)が容易に除去される。
【化4】
図3は、代表的なペロブスカイト光電変換素子であるペロブスカイト太陽電池の構造の断面を概略的に図示する。図4は、図3に示されたペロブスカイト太陽電池の平面図である。透明基板10、透明電極20、光吸収層30、正孔移動層40及び金属電極50を含み、透明電極20と光吸収層30との間に電子収集層60、及び正孔遮断層70が形成されている。
【0025】
電子収集層60は、ペロブスカイト光吸収層から励起された電子を効果的に受けて透明電極に移動させるためのものであって、一般的な光電変換素子で光吸収層が有する電子移動距離が短くて、生成された電子が透明電極まで行くことができず、再結合が起こる現象を減らすために、相対的に電子移動距離が長い物質を用いて再結合を減らしながら、電子を透明電極に伝達するための目的として使われる。電子収集層6の材質としては、伝導帯がペロブスカイト光電変換素子の伝導帯よりも低くて、電子が移動することができる物質ではなければならず、TiO、ZnOのような金属酸化物(セラミックス物質)あるいはPCBMのような導電性高分子が使われる。電子が収集に容易に電子収集層/ペロブスカイト接触面積を高めうる多孔性(high porosity)形態が有利であり、光吸収層に十分な光を送るために、透明な電子収集層が有利である。
【0026】
正孔遮断層70は、基本的に光吸収層の価電子帯、正孔移動層あるいは第2電極が透明電極と直接に当接して、短絡(short-circuit)が発生しないようにするために使われ、また透明電極に移った電子が正孔と再結合することを防ぐ。生成された電子が透明電極に移動することを阻害しないように、薄い形態で稠密に透明電極を覆っている形態が効果的である。一般的に、TiOやZnOが使われる。
本発明の一具現例によれば、所定の条件で洗浄溶液に廃モジュールを浸漬することによって、光吸収層、正孔移動層、金属電極層またはこれらの組合わせを除去し、透明電極層及び電子収集層を備えた基板を回収することができる。
【0027】
図5及び図6は、洗浄後、モジュールの概略的な断面図及び平面図である。図3及び4と比べると、洗浄後には、光吸収層30、正孔移動層40及び金属電極層50が除去され、基板10上に透明電極層20、正孔遮断層70及び電子収集層60のみ残っている。
洗浄工程進行時には、振るか、ソニケーションなど物理的刺激を加えることがより効率的であり、これに限定されるものではない。
洗浄された基板は、蒸留水やエタノールでリンスした後、乾燥工程を経る。
リンス工程や乾燥工程は、関連業界で一般的に使われるものであれば、制限なしに適用することができるので、具体的な説明は省略する。
【0028】
前記のように、回収された基板は、後続工程で光吸収層、正孔移動層、金属電極層またはこれらの組合わせを形成する工程を経て光電変換素子に再生される。
本発明者の研究結果によれば、前記のような方法で再生された太陽電池の効率(PCE)が、約12%まで出ることを確認することができた。
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲が、これにより制限されるものではない。
【0029】
製造例-ペロブスカイト太陽電池の製造
(1)正孔遮断層が形成された透明導電性基板の製造
FTOガラス(Pilkington、TEC-8、8Ω/sq)を超音波を用いてアセトン、エタノール、蒸留水で各20分間洗浄した。以後、前記FTO基板を0.3M Ti(IV)ビス(エチルアセトアセテート)-ジイソプロポキシド(Aldirch社の製品)/1-ブタノール(Aldrich社の製品)溶液を使用して、スピンコーティング方法を用いてコーティングし、500℃で30分熱処理工程を通じて正孔遮断層を含む透明導電性基板を製造した。
【0030】
(2)電子収集層の形成
20nmサイズの多孔性二酸化チタン(TiO)ペースト(Dyesol社の18 NRT製品)を無水エタノールに希釈して(5.5:1=エタノール:TiOペースト、重量比)スピンコーティング方法を用いて正孔遮断層上にコーティングし、500℃で1時間熱処理して電子収集層を形成した。
【0031】
(3)光吸収層の形成
電子収集層の形成後、前記基板(2)にCHNHIとPbIとが1:1mol比でジメチルホルムアミド(dimethyformamide、DMF)に42wt%に溶解した溶液をスピンコーティング後、100~120℃で熱処理して光吸収層を形成した。
【0032】
(4)正孔移動層の形成正孔伝達物質は、約0.17Mのspiro-MeOTAD、約0.198MのtBP(4-tert-Butylpyridine)、及び約64mMのLi-TFSI(Bis(trifluoromethane)sulfonimide lithium salt)を含む正孔伝達溶液を準備した。ここで、前記Li-TFSIは、0.1977g/mLの濃度でアセトニトリルに先に溶かした後、溶液状態で添加した。準備された正孔伝達溶液を光吸収層上にスピンコーティングして、正孔移動層を形成した。
【0033】
(6)電極層の形成
前記正孔伝達層上に熱蒸着機を使用して、金を約30nm以上蒸着(10-6torr以下の圧力)して電極層を形成した。
(7)廃モジュールの準備
製作されたペロブスカイト太陽電池を寿命が尽くすまで使用した。
【0034】
試験例1-洗浄溶媒の双極子モーメントによる洗浄特性の確認
製造例で準備した太陽電池を、下記表1の溶媒に常温(25℃)で浸漬した後、振りながら(150rpm)、ペロブスカイト光吸収層、正孔移動層及び金属電極層が完全に溶解される時間を測定した。ペロブスカイトが完全に溶解された時点は、基板の透過度が使用していない基板の透過度を95%以上保持する時を基準にした。図7は、洗浄前及び洗浄開始後、20秒経過した時点での状態を示す。
【表1】
前記結果から溶媒の双極子モーメントと洗浄時間は、下記の関係を満足することが分かる(図8参照)。
〔数式1-1〕
y=a1x -b1
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒の双極子モーメント、a1は、約787、b1は、約4.9である。
【0035】
試験例2-洗浄溶液のpHによる洗浄特性の確認
蒸留水(pH7)のpHを調節した後、試験例1と同じ条件で洗浄実験を進行して、ペロブスカイトが完全に溶解されるまでの所要時間を測定した。図9は、洗浄開始後、1時間経過した時点での写真である。
【表2】
前記結果から溶媒のpHと洗浄時間は、下記の数式2の関係を満足することが分かる(図10参照)。
〔数式2-1〕
y=c1ed1x2
前記式において、yは、浸漬時間(min)、xは、洗浄溶媒のpH、c1は、約43であり、d1は、約0.6である。
【0036】
実施例1ないし実施例3
製造例で準備した寿命が尽きたペロブスカイト太陽電池をγ-ブチロラクトン(GBL)、γ-ブチロラクトン/ジメチルスルホキシド混合溶液(GBL/DMSO体積比7/3)及びジメチルホルムアミド(DMF)に浸漬して、洗浄した結果を洗浄前と比較して、図11に示した。
洗浄過程は、ペロブスカイト光吸収層、正孔移動層及び金属電極層が完全に溶解されるまで振動条件(150rpm)で浸漬した後、蒸留水で濯ぎ、100℃以上で30分間加熱して溶液を除去した。
洗浄後、基板の不純物有無及び成分確認のためのX線回折分析を進行し、その結果を図12に示した。不純物ピークがほとんどないことを確認することができる。
図13は、DMF溶液で洗浄された基板に残った不純物有無及び成分確認のために、EDS分析した結果である。酸素原子、チタン原子、スズ原子の合計が95.95重量%、93.39原子%であって、不純物がほとんどないことを確認することができる。
【0037】
実施例4-再生太陽電池の製造及び性能テスト
実施例1ないし実施例3から回収された基板に光吸収層、正孔移動層及び金属電極層を製造例とは同様に形成して、ペロブスカイト太陽電池を製作した。エネルギー転換効率を確認するために、光電流-電圧特性を測定した。この際、前記測定は、太陽照射装置(solar simulator)を用いてAM約1.5G及び1太陽条件(100mW/cm)の標準条件で行われた。測定の結果、光電流密度(Jsc)、光電圧(Voc)、層密計数(FF)、光電変換効率(PCE)は、図14ないし図16に示すようであった。前記結果から洗浄前と洗浄後、光電変換効率を含めた諸特性が向上したことが分かる。
【0038】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、当業者は、本願の技術的思想や必須的な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解できるであろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないということを理解しなければならない。
本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導出される、あらゆる変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれると解釈されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、寿命が尽きたペロブスカイト光電変換素子をモジュール形態に廃棄した既存の方式を改善して、光電変換素子の廃モジュールからペロブスカイト光吸収体、正孔移動層、金属電極などを除去し、基板を回収して、初期の高い光電変換効率レベルに再製作させることによって、ペロブスカイト光電変換素子の生産コストを下げることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図12
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図16