(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】MYRSINE AFRICANAの抽出物を含む局所スキンケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220107BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220107BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220107BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220107BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20220107BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220107BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220107BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220107BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220107BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20220107BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
A61Q19/00
A61P17/00
A61K36/185
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61P43/00 111
A61K47/08
A61K47/14
(21)【出願番号】P 2018530090
(86)(22)【出願日】2016-12-08
(86)【国際出願番号】 IB2016057427
(87)【国際公開番号】W WO2017098426
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-07-10
(32)【優先日】2015-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】501494425
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ プレトリア
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロール,ネイムリタ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-201226(JP,A)
【文献】特開2013-155174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0115687(US,A1)
【文献】South African Journal of Botany,2008年,Vol.74,pp.577-582
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00-9/72
A61K47/00-47/69
A61K 36/00-36/05
A61K 36/07-36/9068
A61P1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚のエラスターゼ活性を阻害して皺の出現を低減する美容方法における、Myrsine africanaの
エタノール葉抽出物と皮膚科学的に許容されるビヒクルを含む局所スキンケア組成物
の使用であって、前記エタノール葉抽出物がミルシノシドBを含む、使用(ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項2】
皮膚科学的に許容されるビヒクルが、水溶液、バーム、クリーム、エマルジョン、精油、ゲル、ローション、オイル、軟膏、美容液、スプレー、日焼け止め、懸濁液及び化粧水からなる群から選択される
、請求項
1に記載の
使用。
【請求項3】
被験体の
皺の予防又は
処置の美容方法における、Myrsine africanaの
エタノール葉抽出物
の使用であって、前記エタノール葉抽出物がミルシノシドBを含む、使用(ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項4】
皺の予防又は
処置が、
前記ミルシノシドBによるエラスターゼ活性の阻害の結果である
、請求項
3に記載の
使用。
【請求項5】
Myrsine africanaのエタノール葉抽出物を含む局所スキンケア組成物であって、前記エタノール葉抽出物がミルシノシドBを含む局所スキンケア組成物を、それを必要とする被験体の皮膚に局所適用することを含む、皮膚のエラスターゼ活性を阻害
して皺の出現を低減する美容方法
(ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項6】
前記局所スキンケア組成物が皮膚科学的に許容されるビヒクルを含む、請求項5に記載の美容方法。
【請求項7】
皮膚科学的に許容されるビヒクルが、水溶液、バーム、クリーム、エマルジョン、精油、ゲル、ローション、オイル、軟膏、美容液、スプレー、日焼け止め、懸濁液及び化粧水からなる群から選択される、請求項6に記載の美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Myrsine africanaの植物抽出物を製造する方法、該抽出物を含む局所製剤及びそれらの使用に関する。本発明の方法に従って製造された抽出物は、in vitro及びin vivoの研究においてエラスターゼ酵素に対する阻害活性を示す。
【背景技術】
【0002】
Myrsinaceae科に属するMyrsine africanaは、サルスベリ(Cape Myrtle)、アフリカツゲ(African boxwood)又はThakisaとしても知られる小灌木である。この植物はマカロネシア、アフリカ、南アジアの原産である。それは、南アフリカの至る所で見られ、通常、夏の降雨と冬の降雨が発生する地域で見られる。それは、岩の多い峡谷や森林で自然に生育する。Myrsine africanaは密生した暗緑色から赤色の葉を有し、小さな明るい紫色の果実をつける。それは2メートル以上の高さになることがあり、剪定して強い日差しで栽培した場合は群生することがある。クリーム色の花は春に咲き、雄花は赤い葯を誇示する。別々の灌木で雄花又は雌花が咲き、雌花は紫の果実をつける。
【0003】
Myrsine africanaには多くの伝統的な用途があることが確認されている。南ソト族の人々は、適切な時期の前にそれを雄羊に与えて雌羊との交尾を防ぐ。ツワナとクエナの人々は、その葉から作られた煎じ薬を「血液浄化剤」として使用した。伝統的な薬物療法では、他の植物と共に、樹皮、根、果実から作られた調合薬は、人間や家畜の駆虫剤として使用されている。植物は伝統的に抗菌剤としても使用されている。中国の民間伝承では、伝統的に下痢、リウマチ、歯痛、肺結核などの病気の治療や出血の軽減に使用されている。またそれは、紅茶、香辛料、駆風剤、食欲促進薬、香味剤の香りとしても使用されている。新鮮な葉の煎じ薬は、乏尿、皮膚アレルギー、腫物の治療や、血液浄化のために、経口的に、6~7日間、1日2回服用できることが報告されている。
【0004】
皮膚の老化は2つの主な要因に起因する:遺伝的プログラム及び特に40歳以上の人々の年齢に伴う環境ストレス(UV、界面活性剤、機械的衝撃など)に起因する恒常的な化学放射線障害の2つの主な要因に起因する。皮膚の弾力性はエラスターゼ活性によって著しく低下し、その結果としてたるみが生じる。老化した皮膚の組織学的検査は、あまり老化していない皮膚と比較すると、肥厚した表皮、肥満細胞数と肥大した嚢胞数の増加、炎症細胞の浸潤、エラスチン繊維の部分的欠如と凝集及びコラーゲン線維の減少を示す。生物学的には、エラスターゼ活性は加齢と共に有意に増加し、その結果として皮膚の弾力性が低下し、皺又は皮膚線条が現れる。皮膚の皺形成におけるエラスターゼの重要性のために、エラスターゼ阻害剤は皮膚の老化の制御において有益であり得ると示唆されている。
【0005】
本発明は、Myrsine Africanaの抽出物を用いたエラスターゼ酵素やブタ膵臓エラスターゼの阻害物質及び該抽出物の抗皺活性物質としての使用に関する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様では、エラスターゼ阻害活性を有する植物抽出物の製造方法が提供される。該製造方法は、下記工程を含む。(i)Myrsine africana植物の葉と小枝を乾燥させる工程;(ii)乾燥した葉と小枝を粉砕する工程;(iii)粉砕した葉と小枝を有機溶媒と混合して溶液を形成する工程;(iv)該溶液を濾過して濾液を生成する工程;及び(v)該濾液から有機溶媒を除去してエラスターゼ阻害活性を有する植物抽出物を製造する工程。
【0007】
有機溶媒は、エタノール、メタノール、ブタノール、水又はそれらの混合物からなる群の有機溶媒から選択することができる。好ましくは、有機溶媒はエタノールである。有機溶媒は、好ましくは、エバポレーションによって濾液から除去されるが、当業者に公知の他の任意の方法によって除去することができる。
【0008】
本発明の一実施形態では、植物抽出物に防腐剤を添加することができる。好ましくは、防腐剤はフェノキシエタノールとエチルヘキシルグリセリンの混合物であり、好ましくは約1%(w/w)の防腐剤が植物抽出物に添加される。
【0009】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法によって製造された植物抽出物は、局所剤形に調製することができる。局所剤形は、水溶液、バーム、クリーム、エマルジョン、精油、ゲル、ローション、オイル、軟膏、スプレー、日焼け止め、懸濁液又は化粧水からなる群から選択することができる。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明の方法によって製造された植物抽出物は、N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリドからのp-ニトロアニリンの放出を分光光度法により評価したときの50%阻害濃度(IC50)が、26μg/mL~30μg/mLである。
【0011】
本発明の第2の態様では、本明細書に記載の方法に従って製造されたMyrsine africanaの植物抽出物と皮膚科学的に許容されるビヒクルを含む局所スキンケア組成物が提供される。一実施形態では、本発明の局所スキンケア組成物は、好ましくはエラスターゼ活性を阻害する。さらなる実施形態では、皮膚科学的に許容されるビヒクルは、水溶液、バーム、クリーム、エマルジョン、精油、ゲル、ローション、オイル、軟膏、美容液、スプレー、日焼け止め、懸濁液又は化粧水からなる群から選択される。
【0012】
本発明の第3の態様では、該組成物をそれを必要とする被験体の皮膚に局所適用することを含む、皮膚のエラスターゼ活性を阻害する美容方法に使用する局所スキンケア組成物が提供される。
【0013】
本発明の第4の態様では、被験体の皮膚老化の予防又は治療に使用するための、本明細書に記載の方法によって製造された植物Myrsine africanaの植物抽出物が提供される。皮膚老化は、皮膚の弾力性の低下、コラーゲンの減少、エラスチン繊維の減少若しくは凝集及び/又は皺の出現として示され得る。
【0014】
一実施形態では、皮膚老化の予防又は治療は、植物抽出物及び/又はその中に含まれる1つ若しくは複数の化合物によるエラスターゼ活性の阻害の結果である。
【0015】
別の実施形態では、植物抽出物は、葉又は小枝の抽出物である。好ましくは、植物抽出物は、葉及び小枝の抽出物である。一実施形態では、植物抽出物は、有機溶媒由来の植物抽出物である。好ましくは、有機溶媒は、エタノール、メタノール及びブタノールからなる群から選択されるか、又はそれらの混合物である。さらにより好ましくは、有機溶媒はエタノールである。
【0016】
本発明のさらなる態様では、本明細書に記載の局所スキンケア組成物を、それを必要とする被験体の皮膚に局所適用することを含む、皮膚のエラスターゼ活性を阻害する美容方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、本明細書に記載の方法によって製造された植物抽出物を被験体の皮膚に局所適用することを含む、被験体の皮膚老化の予防又は治療方法が提供される。
【0018】
本発明の別の態様では、薬学的有効量の粗製又は精製抽出物と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。特に、医薬組成物は、被験体、好ましくはヒト被験者に局所投与することができる。
【0019】
本発明の非限定的な実施形態を、以下の図面を参照しながら、単なる例示として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、Myrsine africanaの葉のエタノール抽出物について、エラスターゼ活性に対するウルソール酸の効果を示す。
【
図2】
図2は、Myrsine africanaのエラスターゼ活性に対する効果を示す。
【
図3】
図3は、Myrsine africanaの化合物MA-NR-01(ミルシノシド B)について、エラスターゼ活性に対するウルソール酸の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、Myrsine africana植物由来のエラスターゼ阻害活性を有する植物抽出物の製造方法及び該方法により製造されたMyrsine africanaの植物抽出物を含有する局所スキンケア組成物、特に皮膚のエラスターゼ活性を阻害する美容方法に使用する植物抽出物および組成物を対象とする。本発明はさらに、被験体の皮膚老化の予防又は治療のための植物Myrsine africanaの植物抽出物の使用及び使用方法に関する。
【0022】
ここで、本発明のいくつかの、しかし全てではない実施形態が示される添付の図面を参照しながら本発明をより完全に説明する。
【0023】
記載された本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、改変されたもの及び他の実施形態は本発明の範囲内に含まれることが意図される。本明細書では特定の用語を使用しているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定を目的とするものではない。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、明細書中に特に明示しない限り複数形を含む。
【0025】
本明細書で使用される用語や表現は、説明のためのものであり、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書で使用される用語「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」及び「包含する(including)」なる用語やそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びその等価物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0026】
その最も広い形態では、本発明は、Myrsine Africanaの葉に由来する粗抽出物又は精製抽出物に関する。該抽出物はエラスターゼ阻害活性を示す。該抽出物は、皮膚の皺及びしみの出現を予防又は軽減するために使用される。
【0027】
本発明では、阻害アッセイを設定するための酵素源としてブタ膵臓エラスターゼを使用した。膵臓エラスターゼ阻害活性は、合成基質N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリドからのp-ニトロアニリンの放出を分光光度法で測定することによりin vitroで評価した。
【0028】
また芽から単離された化合物MA-NR-01(ミルシノシド B)も、そのエラスターゼ阻害活性についてin vitroで試験した。エラスターゼ阻害活性は、合成基質N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリドからのp-ニトロアニリンの放出に基づいている。本発明の葉抽出物は、50%阻害濃度(IC50)が28.04μg/mlという良好なエラスターゼ阻害を示した。化合物ミルシノシドBは125μg/mLの濃度で、13.00±1.04の阻害率を有することが判明した。
【0029】
S.typhimuriumの2つの菌株(TA 98及びTA 100)を用いて、コロニーの非増殖を観察して変異原性を試験し、本発明のMyrsine africanaエタノール抽出物は非変異原であると結論した。本発明の抽出物は、ヒト被験者のパッチ試験中に非刺激性であることがさらに判明した。Myrsine africanaには無視できるほどの微生物と重金属が含まれていた。本発明のMyrsine africana粗抽出物を含有するゲルクリームは、30℃未満の温度に保たれた場合、2年間安定であることが判明した。被験体に対するin vivo試験において、本発明のM.africanaのエタノール抽出物を5%含有する試験用製品は、プラセボ水性クリームと比較して、14日間と28日間について1日2回適用後、皺を減少させるのに有効であることが判明した。
【0030】
本発明の抽出物は、粗抽出物、精製抽出物又は医薬組成物の形態であり得ることが理解される。抽出物、医薬組成物は、皮膚癌に関連する症状に先立って患者に投与することができ、又は、被験者の皮膚癌発症の徴候後に投与することができる。
【0031】
当業者は、天然の植物材料の抽出物を総合的に扱う多くの方法が存在することを認識する。これらの方法には、特に植物抽出物を得るために、少なくとも1つの溶媒に加える天然の植物材料を切断、細断、浸漬及び/又は粉砕することが含まれる。また天然の植物材料は、新鮮な材料でもよいし、乾燥植物材料でもよいことが理解される。
【0032】
溶媒は有機溶媒であってもよい。植物抽出物の製造において典型的に使用される有機溶媒には、エタノール、メタノール、ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン及び/又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書中で使用される用語「粗抽出物」は、適切な溶媒を用いて天然の植物材料から二次代謝産物を除去することによって得られる植物抽出物の濃縮調製物をいう。これは、例えば、天然の植物材料を適切な溶媒に浸漬し、溶媒を除去し、その結果、溶媒の全て又はほぼ全てをエバポレートすることによって行うことができる。本明細書中で使用される用語「精製抽出物」は、粗抽出物の構成成分を互いに分離して得られる抽出物をいう。非限定的な例として、粗抽出物の構成成分は、非極性成分から極性成分を分離することによって互いに分離することができる。その際、活性極性成分及び/又は非極性成分を濃縮することができる。
【0034】
本明細書に記載される本発明の抽出物は、被験体への局所使用に適した抽出物、好ましくはエタノール抽出物である。被験体としては、生きている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを挙げることができる。
【0035】
抽出物は、例えば、スプレー、クリーム、ローション、バーム、オイル、又は、例えば個人用のロールオン若しくは固形ストリップ等の固形物などの任意の所望の送達形態で製造することができる。例えば、スプレーは、プロパン、ブタン、イソブタン等の従来の噴射剤を、単独で又は当業者に公知の様々な混合物として使用することにより製造できる。既知の担体や添加剤を含む他の従来型の製剤は、当業者には明白であろう。
【0036】
抽出物を含有する本発明の医薬組成物は、局所使用に適した形態とすることができる。医薬組成物の適切な形態は、例えば、ゲル、ローション、クリーム、精油、化粧水、エマルジョン、石鹸、シャンプー、リンス、クレンザー、溶液、軟膏、ゼリー又は懸濁液を含む。
【0037】
医薬組成物の「適切な形態」は、一般的なスキンケア用のクリームやローションを製造するために、「薬学的に許容される担体」や当該分野で公知の他の成分と併用することができる。医薬組成物は、さらに皮膚の吸収を促進する他の成分と併用することができる。
【0038】
抽出物は、当業者に公知の方法によって医薬組成物として製剤化することができる。薬学的に許容される成分を使用することができる。用語「薬学的に許容される」とは、薬理学的又は毒物学的観点から、被験体への投与が許容される特性及び/又は物質を意味する。さらに、「薬学的に許容される」とは、物理的/化学的観点から、製剤学の化学者に公知の製剤、安定性、患者の受容及び生物学的利用能などの因子を意味する。
【0039】
「薬学的に許容される担体」とは、抽出物、医薬組成物及び/又は医薬品を被験体に投与するために安全に使用することができる固体又は液体の充填剤、希釈剤又はカプセル化物質を意味する。
【0040】
抽出物又は抽出物を含有する医薬品の使用は、疾患を予防又は治療するために、有効量の抽出物又は抽出物を含有する医薬組成物の被験体への投与を必然的に伴う。疾患の予防又は治療の文脈における「有効量」という用語は、治療を必要とする個体に、抽出物又は抽出物を含有する医薬組成物を単回用量又は複数回用量のいずれかにより、活性量の植物抽出物を投与することをいう。
【0041】
抽出物及び/又は抽出物を含有する医薬組成物の適切な投与量に関していくつかの指標が与えられているが、有効量の正確な投与量及び投与頻度はいくつかの因子に依存する。これらの因子には、使用される個々の成分、抽出物又は抽出物を含む医薬組成物の剤形、処置される疾患、疾患の重症度、処置される被験者の年齢、体重、健康状態及び一般的な身体状態、被験者が服用している可能性がある他の薬物、並びに、当業者に公知のその他の因子が含まれる。有効量は、日常的な試験によって決められる比較的広い範囲が含まれることが期待される。
【0042】
以下の実施例は、例示のために提供されるものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0043】
材料
ブタ膵臓のエラスターゼIV型[E.C.3.4.21.36](E0258,Sigma,USA),N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド(S4760,Sigma,USA)及び陽性対照ウルソール酸(U001,Natural Remedies Pvt.Ltd.,インド)。Trizma(商標)塩基:T1503(Sigma、USA)及び塩酸(H0090、Rankem、インド)。エタノール、Tris-HCl緩衝液、基本培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、マウスメラノサイト細胞株B16-F10、3-[1-(フェニルアミノカルボニル)-3,4-テトラゾリウム]-ビス(4-メトキシ-6-ニトロ)ベンゼンスルホン酸ヒドラート ナトリウム塩(XTT)、コウジ酸、アルブチン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルジベンゾピラジンメチルスルファート(PMS)、デキストロース、硫酸マグネシウム(MgSO4・H2O)、クエン酸一水和物、無水(第二)リン酸カリウム(K2HPO4)、リン酸アンモニウムナトリウム(Na2NH2PO4.4H2O)、寒天(Difco agar)、XVB塩溶液、40%グルコース、D-ビオチン、L-ヒスチジン、塩化ナトリウム(NaCl)、ニュートリエントブロスナンバー2(oxoid nutrient broth number 2)、ナトリウム一塩基酸(NaH2PO4.H2O)、ナトリウム二塩基酸(Na2HPO4.H2O)、ニュートリエントブロス(Oxoid Nutrient broth)、4-ニトロキノリン-1-酸化物(4-NQO)及びEuxyl PE 9010
【0044】
実施例1
植物採集及びエタノール抽出物の調製
Myrsine africanaの葉は、南アフリカのプレトリアにあるManie van der Schijff Botanical Gardenで、2011年に採集された。植物材料(葉及び小枝)を2週間陰干しし、次いで粉砕して微粉にした。乾燥粉末を蒸留エタノールに浸漬し、48時間抽出した。ブフナー漏斗で濾過した後、植物の濾液を回収した。濾液をロータリーエバポレーターを用いて減圧下に置いた後、抽出物を回収した。抽出物は、その後の使用まで涼しい場所で保存した。この抽出物を用いて、エラスターゼ阻害、細胞毒性及び変異原性について試験した。乾燥した葉のエタノール抽出物(300mg)を70%エタノールに溶解し、刺激性、微生物性、金属性及び生理化学的ならびにin vivo有効性試験に使用した。
【0045】
ミルシノシドBの単離
風乾し、粉末化した芽(2.3kg)をエタノールに浸漬し、ロータリーシェーカー上で3日間連続的に攪拌して抽出物を得た。芽の乾燥エタノール抽出物(88g)をエタノールに再溶解し、800mlの蒸留水に懸濁した。水懸濁液を、石油エーテル、クロロホルム、酢酸エチル及びn-ブタノールを用いて連続的に分配した。有機層をロータリーエバポレーターを用いてエバポレートし、40℃で乾燥させ、別々の画分を得た。EtOAc画分(18.7g)をn-ヘキサン-酢酸エチル-メタノール-水の溶離液を用いるシリカゲルカラムに付した。同様の画分をTLCプロファイルに基づいてプールし、合計7つの主な画分(MF-1~MF-7)を得た。MF-2(1.25g)を、極性増加勾配のジクロロメタン:メタノール(0%~100%)の溶離液を用いるシリカゲルカラムに付した。副画分2-4(0.5g)を、DCM:MeOH(7:1)を用いるシリカゲル上で再度クロマトグラフィーにかけた。化合物ミルシノシドB(MA-NR-01;257mg、乾燥植物材料の0.0111%)を得た。
【0046】
実施例2
エラスターゼ阻害アッセイ
サンプル調製
M. africanaの葉抽出物と化合物から、500μg/mL及び1120μg/mLのサンプル保存液をそれぞれ調製した。簡潔には、2.5mgの抽出物及び2.24mgの化合物を秤量し、100μLのメタノールに溶解した。次に、100mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を用いて、抽出物については5mLの量、化合物については2mLの量とした。アッセイ用に必要に応じて次の希釈を行った。化合物MA-NR-01(ミルシノシド B)を、実施例1に記載の標準手順を用いて単離した。
【0047】
葉のエタノール抽出物及び化合物MA-NR-01のエラスターゼ阻害アッセイ(in vitro)
エラスターゼ阻害アッセイは、変更を加えたBieth et al.(1974)の方法により大規模に行った。要約すると、プレインキュベーション混合物は、100mMのTris-HCl緩衝液(pH8.0)又はビヒクル緩衝液、陽性対照又は様々な濃度の試験サンプルと共に4.942mUのエラスターゼ酵素を含有していた。試薬を混合し、混合物を37℃で15分間プレインキュベートした。プレインキュベーション後、基質(N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド)を添加して0.338mMの最終濃度とし、溶液を混合し、37℃で30分間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(Versamax、Molecular devices、USA)において、405nmで吸光度を測定した。試験サンプルなしで対照の反応を行った。
【0048】
酵素の阻害率(%)は以下のように算出した:
【0049】
【0050】
IC50は、ログ・プロビット法(log-probit analysis)を用いて算出した。
【0051】
そのエラスターゼ阻害活性について、エラスターゼ阻害アッセイを用いてM.africanaの葉抽出物を評価した。該アッセイは、分光光度法により測定されるN-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリドからのp-ニトロアニリンの放出に基づく。Myrsine africanaのエタノール抽出物は、IC50が28.04μg/mLという、期待できるエラスターゼ阻害活性を示した(表1)。
【0052】
そのエラスターゼ阻害活性について、単離した化合物MA-NR-01(ミルシノシド B)をさらに評価した。125μg/mLの濃度において、酵素の阻害パーセントは13.00±1.04%であることが判明した(表1)。
【0053】
【0054】
実施例3
変異原性
グルコース溶液の調製(40%)
1Lのフラスコ中で、1Lの蒸留水を400gのデキストロースに添加した。溶液を透明になるまでマグネチックスターラー上に置いた。次いで、フラスコを121℃で20分間オートクレーブ処理した。次いで、溶液を4℃で保存(冷蔵)した。
【0055】
XVB塩溶液(Vogel-Bonner培地E(50×))の調製
温蒸留水(650mL)を、マグネチックスターラー上の2Lフラスコ中の硫酸マグネシウム(MgSO4.H2O)10g、クエン酸一水和物100g、無水(第二)リン酸カリウム(K2HPO4)500g及びリン酸アンモニウムナトリウム(Na2NH2PO4.4H2O)175g(各々の新しい塩の添加前に完全に前のものが溶解していることを確認した)に加えた。次に蒸留水を最終的に容量1Lになるまで添加した。次いで、溶液を121℃で30分間オートクレーブ処理し、その後放冷し、室温で暗所に保存した。
【0056】
グルコース最小寒天プレートの調製
寒天(Difco agar)(15g)を900mLの蒸留水に添加した。その後、該溶液を121℃で30分間オートクレーブし、約65℃に冷却した。その後、滅菌したXVB塩溶液20mLをフラスコに加え、確実に混合した。最後に、50mLの40%グルコース溶液を同じフラスコに加え、確実に混合した。次いで、混合物を100×15mmペトリ皿に分注した(各プレート中に±25~30mLの寒天)。プレートを密封したプラスチックバッグに入れる前に固化し、4℃で一晩保存した。翌日、プレートを室温に戻した後、試験に使用した。
【0057】
ヒスチジン/ビオチン溶液(0.5mM)の調製
蒸留水(1L)を沸騰させ、D-ビオチン124mgとL-ヒスチジン96mgを水に溶解した。
【0058】
追加の上層寒天の調製
寒天6gと6gのNaClを900mLの蒸留水に加えた。混合物をオートクレーブ中で10分間加熱して寒天を融解した。これに続き、予め調製したヒスチジン/ビオチン溶液100mLを瓶に加えた。上層寒天を標識し、さらに30分間オートクレーブ処理し、暗所で室温で保存した。
【0059】
試験株の増殖用のニュートリエントブロスの調製
oxoid nutrient broth number 2(25g)を1Lの蒸留水に加え、ブロスが溶解するまで攪拌した。50mLのブロスをエルレンマイヤーフラスコに分注し、20分間オートクレーブ処理した。溶液を冷却し、室温で暗所に保存した。
【0060】
リン酸ナトリウム緩衝液0.1mM、pH7.4の調製
NaH2PO4.H2O(13.8g)を1Lの水に加えた(ナトリウム一塩基酸、0.1M)。その後、14.2gのNa2HPO4.H2Oを1Lの水に加えた(ナトリウム二塩基酸、0.1M)。次に、ナトリウム二塩基酸溶液120mLを880mLの一塩基酸溶液に添加し、混合した。0.1Mのナトリウム二塩基酸溶液を添加してpHを7.4に調整した。緩衝液を121℃で30分間オートクレーブ処理した。ボトルを冷却し、その後、室温で暗所に保存した。
【0061】
試験プレートの方法
サンプルを培養し、3つの異なる濃度で試験した、各試験は三連で行った。細菌ストック100μLを20mLのoxoid nutrient broth中で、37℃で16時間、回転式シェーカーでインキュベートした。該一晩培養物0.1mLを、0.1mLの試験溶液(試験サンプル、溶媒対照又は陽性対照)と0.5mLのリン酸緩衝液と共に、2.0mLの上層寒天(ビオチンとヒスチジンを僅かに含む)に添加した。上層寒天混合物を最小寒天プレートの表面上に注ぎ、37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、復帰突然変異体コロニー(突然変異体)の個数を計数した。全ての培養は三連で行った(レプリカを5回行った溶媒対照を除く)。毒性は、細菌のバックグラウンド層(background layer)を調べることで確認できる。毒性がないことは、通常は存在するはずのバックグラウンド細菌の増殖を観察することで試験した。当該研究で用いた陽性対照は、2μg/mLの濃度の4-ニトロキノリン-1-酸化物(4-NQO)であった。
【0062】
M.africanaのエタノール抽出物を、2つの異なる細菌株に、コロニーの数に従って適用した。得られた結果によると、M.africanaは、S.typhimuriumのTA98株又はTA100株のいずれにおいても突然変異原作用を示さなかった(表2)。M.africanaは、復帰突然変異体に関して2以上の比を示さず、用量反応曲線は認められなかった。観察されたコロニーの数は、M.africanaが抗細菌特性を有する可能性によって影響された可能性がある。
【0063】
【0064】
実施例4
微生物数、金属分析及び刺激試験(パッチ試験)
微生物計数、金属分析及び刺激試験を行うためのM.africanaエタノール抽出物は、前述のように調製した。
【0065】
TMA(全微生物活性)の測定のために、細菌、酵母菌及びカビの計数測定用のM.africana抽出物50mLをSwift Micro Laboratoriesに送付した。結果は、コロニー形成単位/ミリリットル(CFU/mL)で報告された。
【0066】
金属汚染物質の測定用に、50mLのM.africana抽出物をMicrochem Laboratoriesに送付した。ヒ素、水銀及び鉛について金属汚染物質の検出を行った(mg/100g)。
【0067】
エタノール抽出物のサンプルを、19~65歳の20人のボランティアの前腕内側に、パッチディスクを用いて24時間適用し、刺激性を判定した。その場所の視覚的評価を、24時間後、48時間後、72時間後及び96時間後に行った。いずれの反応も0,0.5,1,2,3及び4のスコアとして採点した。0は反応なし、4は発赤、丘疹、浮腫又は水疱を表す。各ボランティアの前腕には、ラウリル硫酸ナトリウム溶液(1g/100mL)の陽性対照及び脱塩水の陰性対照が含まれていた。
【0068】
薬用植物は、細菌、真菌及びウイルス等の広い範囲の微生物汚染物質で汚染されている可能性がある。このため、品質管理の目的で薬用植物の微生物負荷を評価することが重要になっている(Kneifel et al.,2002)。微生物の増殖が見られなかったので、TMA(全微生物活性)は活性を有さないことが認められた(表3)。M.africanaエタノール抽出物についても、酵母菌又はカビの増殖は観察されなかった。
【0069】
有毒金属は、体内で知られている機能を有さず、存在した時点で有害となるものと定義される。これらの有毒金属は、病気、老化、さらに遺伝的欠陥の原因となるため、大きな懸念となっている(Wilson、2011)。低濃度の重金属である、ヒ素、カドミウム、水銀及び鉛が、M.africanaエタノール抽出物で認められた(表4)。
【0070】
M.africanaの葉抽出物は、潜在的刺激性が100%の潜在的刺激性陽性対照であるラウリル硫酸ナトリウムと比較して、潜在的刺激性が-9.00%であることが認められたため、非刺激性であると認められた(表5)。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
実施例5
防腐剤負荷試験
防腐剤負荷試験において、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及びクロコウジカビ(Aspergillus niger)を用いて、USP 31法(USPC 2008)に従ってサンプルを試験した。防腐剤Euxyl PE 9010を陽性対照として使用した。
【0075】
これらの生物にM.africanaエタノール抽出物を標準的な防腐剤と共に暴露したとき、生物(緑膿菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、カンジダ・アルビカンス及びクロコウジカビ)の増殖はごく僅かであった。これは、M.africanaエタノール抽出物が防腐剤負荷試験に合格したことを表す(表6)。
【0076】
【0077】
実施例6
生理化学的分析
抽出物の臭気及び色の測定
M.africana抽出物の臭気及び色(外観)を視覚的に記録した。
【0078】
pHの測定
pHメーターを用いてM.africana抽出物のpHを測定した。pHメーターは、pH4及びpH7標準溶液を用いて較正した。次に、電極を抽出物に浸し、記録した。
【0079】
抽出物の比重の測定
比重計を用いて抽出物の比重を測定した。比重計を空にして秤量した。その後、蒸留水で満たし、再度秤量した。満たす前の重量を満たした後の重量から減算し、比重計の容量(mL)で割って比重をg/mLで得た。
【0080】
ゲルクリーム製剤の粘度の測定
M.africanaの粘度の測定は、粘度計(Brookfield)を用いて行った。5rpmのスピードで、サイズ5のスピンドルを用いて粘度計の表示数値を得た。粘度計の表示数値に係数を積算し、ゲルクリームの粘度をcPs(センチポアズ)で記録した。
【0081】
抽出物の屈折率の測定
屈折率は、屈折計を用いて測定した。ガラス製のパスツールピペットを用いて、植物抽出物2~3mLを吸い上げた。植物抽出物を屈折計のレンズ上に置き、屈折率を25℃で測定した。
【0082】
物理化学的分析の結果を表7に示す。
【0083】
【0084】
実施例7
安定性試験
M.africanaのエタノール粗抽出物
200mLの抽出物を含む4個の250mLガラス瓶をラベルし、それらの特定温度で保存した。防腐剤Euxyl PE 9010を各々の瓶に1%加えた。安定性試験は、5℃、25℃、40℃及び50℃で行った。1,2,4,8及び12週間後に、各温度で保存した抽出物の様々なパラメータを測定した。パラメータには、感覚的に記録した外観及び臭気が含まれた。pHはpHメーターを用いて測定した。比重は比重計を用いて測定し、最初と最後(12週間の間隔)のみで測定した。全てのサンプルについて、各パラメータの最初の結果を記録し、その後の全ての間隔についても記録した。
【0085】
ゲルクリーム及びM.africanaエタノール抽出物
200mLのクリームゲルを含む4個の250mLガラス瓶をラベルし、それらの特定温度で保存した。安定性試験は、5℃、25℃、40℃及び50℃で行った。1,2,4,8及び12週間後に、各温度で保存したクリームゲルの様々なパラメータを測定した。パラメータには、感覚的方法で記録した外観及び臭気が含まれた。pHはpHメーターを用いて測定した。比重は比重計を用いて測定し、粘度は粘度計を用いて測定した。全てのサンプルについて、各パラメータの最初の結果を記録し、その後の全ての間隔についても記録した。
【0086】
0週目に得られた結果と12週間目の終了時の観察に基づく結果とを比較した。抽出物は、より低い温度ではより小さく変化し、最高の温度で保存されたサンプルではより多くの有害な影響があると予想される。M.africanaエタノール抽出物の最初のpH値は5.28であり、5℃、25℃、40℃及び50℃のサンプルは、それぞれ4.99、4.97、5.03及び5.12と、僅かに低下した(表8)。当該結果では、加速された温度条件で保存されたサンプルは、周囲温度や5℃で保存されたサンプルよりも緩やかな低下を示すので、pHの低下は時間と温度に関連しているようである。12週間隔の終了時にのみ実施した抽出物の比重は、最初の値は0.9848g/mLであり、5℃、25℃、40℃及び50℃のサンプルは、それぞれ0.853、0.782、0.816及び0.850g/mLに低下した。これはサンプルの沈降による可能性が高い(表8)。
【0087】
製品の暗色化は、高温保存では第1週目から記録され、周囲条件下では12週間後に記録された。製品の暗色化は抽出物に起因し、製品の全体的な有効性が影響される可能性がある(表8)。暗色化は、温度に起因する単なる物理的な変化又は化学変化かもしれない。しかし、抽出物を用いた製品の暗色化は通常のことである。pH及び粘度は、加速された温度条件下では値の低下を示すが、これらは製品全体の性能に影響を与えないであろう。
【0088】
上記の結果に基づいて、この製品については2年間の保存可能期間を予測できる。直射日光を避け、30℃未満の温度で保存すべきである。
【0089】
【0090】
実施例8
M.Africanaの葉のエタノール抽出物の被験者へのin vivo有効性試験
乾燥した葉のエタノール抽出物(300mg)を70%エタノール(40mL)に溶解し、その後、5%希釈し、製品の濃度とした。
【0091】
22名の被験者のグループを募集した。試験の手順を口頭で説明し、各被験者は同意と病歴の様式に署名した。個人の詳細と各被験者の肌の種類の評価が記録された。各時間間隔でカラー写真を撮り、実施した研究の記録として役立てた。試験を行う前に、全ての被験者に20分間休息するよう指示した。指定された試験部位の左側と右側を標準のアイメイクアップリムーバーで洗浄し、3分間空気乾燥した。試験期間には、温度と相対湿度を記録した。CSIソフトウェアは分析用に完全な皺の長さを必要とするため、顔面では試験部位の境界を定めなかった。試験物質の順序に従って、製品の適用を無作為化した。Visioスキャン解析の対象領域の写真についても撮影した。オペレーターは、被験物質の順序に従って試験物質を試験部位に均一に適用するように被験者を教育した。試験期間中、被験者は局所用製品又は試験の提供者によって承認されていない薬物の使用を制限された。基準の写真(BL)を試験製品の適用前に撮影し、再度14日目(D14)と28日目(D28)に撮影して試験の記録として役立てた。被験者は試験製品を与えられ、1日2回適用した。被験者は、基準の手順の後は、14日目(D14)と28日目(D28)に試験施設に戻った。水性クリームのプラセボも使用した。
【0092】
各読み取りの間、70%エタノールとティッシュペーパーを用いて、Visioscan及びVisiofaceを穏やかに滅菌した。
【0093】
Visiofaceは皺の全長で働き、Visioscanは皺の部分にのみ働く。
【0094】
Visioscan-皺
基準時(すなわち試験製品適用前)の試験製品部位と未処理の対照部位を比較するためにt検定を実施した。5%の信頼性レベルで2つの試験部位の間に統計的有意差は見られなかった。基準時から14日目(D14-BL)の試験製品とプラセボ対照部位の間の平均差値を比較することで治療効果を判定するためにt検定を実施した。5%の信頼性レベルで統計的有意差はなかった。基準時から28日目(D28-BL)の試験製品とプラセボ対照部位の間の平均差値を比較することで治療効果を判定するためにt検定を実施した。5%の信頼性レベルで統計的有意差があった。試験製品FCAH106/4325の値は、FCAH106/AqCの値よりも有意に低かった(表9)。
【0095】
Visioface(CSI)-皺
基準時(すなわち試験製品適用前)の試験製品部位と未処理の対照部位を比較するためにt検定を実施した。5%の信頼性レベルで2つの試験部位の間に統計的有意差は見られなかった。基準時から14日目(D14-BL)の試験製品とプラセボ対照部位の間の平均差値を比較することで治療効果を判定するためにt検定を実施した。5%の信頼性レベルで統計的有意差があった。試験製品FCAH106/4325の値は、FCAH106/AqCの値よりも有意に低かった。基準時から28日目(D28-BL)の試験製品とプラセボ対照部位の間の平均差値を比較することで治療効果を判定するためにt検定を実施した。5%の信頼性レベルで統計的有意差があった。試験製品FCAH106/4325の値はFCAH106/AqCの値よりも有意に低かった(表9)。
【0096】
【0097】
結論
上記の実施例は、Myrsine africanaの葉のエタノール抽出物が有望なエラスターゼ阻害活性を示すことを明らかにする。単離した化合物MA-NR-01(ミルシノシド B)は、125μg/mLの濃度で13.00±1.04%の阻害率を有することが判明した。
【0098】
M.africanaの葉のエタノール抽出物はS.typhimuriumの増殖を阻害し、したがって変異原性はないと考えられることを示す。
【0099】
M.africanaについては微生物の増殖は観察されず、サンプルには限界未満の量が含まれると結論付けられる。M.africanaのエタノール抽出物は、許容される重金属の限界未満の量を含有することが判明した。臨床研究によれば、M.africanaのエタノール抽出物はヒトの皮膚に非刺激性であることが判明した。
【0100】
防腐剤負荷試験の間、試験生物(緑膿菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、カンジダ・アルビカンス及びクロコウジカビ)の有意な増殖は観察されなかった。
【0101】
試験された生理化学的パラメータは、皺の治療のための薬用化粧品におけるM.africanaの使用可能性を実証した。
【0102】
M.africanaのエタノール粗抽出物を含有するクリームゲルは、30℃未満の温度で直射日光を避けて保存した場合、保存可能期間が2年間であることが加速安定性試験によって結論付けられた。
【0103】
ヒト被験者試験では、Visioscan(皺)について、試験製品FCAH106/4325が、プラセボ対照(FCAH106/AqC)と比較して、連続適用(1日2回)の28日後(D28)、皺の低減に効果的であることが判明した。Visioface-CSI(皺)試験では、試験製品FCAH106/4325は、プラセボ対照(FCAH106/AqC)と比較して、連続適用(1日2回)の14日後(D14)と28日後(D28)、皺の低減に効果的であることが判明した。Visiofaceは各被験者の「カラスの足跡」の範囲を全体的に観察したので、皺の深さと長さを考慮すると、M.africanaは14日目に皺試験に合格したと結論できる。
【0104】
参考文献
1) Beith J,Spiess B,Wermuth CG(1974).The synthesis and analytical use of a highly sensitive and convenient substrate of elastase.Biochem.Med.,11(4):350-357.
2) Kneifel W,Czech E,Kopp B(2002)Microbial contamination of medicinal plants-a review.Planta Medica,68(1):5-15.
3) Wilson L(2011)Toxic Metals and Human Health.The Centre for Development.[Online].