(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】新規共結晶
(51)【国際特許分類】
C07D 471/14 20060101AFI20220107BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20220107BHJP
C07D 213/81 20060101ALI20220107BHJP
C07D 213/82 20060101ALI20220107BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20220107BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C07D471/14 102
C07D471/14 CSP
A61K31/4985
C07D213/81
C07D213/82
A61K9/52
A61P25/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2018550675
(86)(22)【出願日】2017-03-28
(86)【国際出願番号】 US2017024597
(87)【国際公開番号】W WO2017172811
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-19
(32)【優先日】2016-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ペン・リ
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン・アレット
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-523949(JP,A)
【文献】特表2011-513485(JP,A)
【文献】特表2003-502331(JP,A)
【文献】特表2010-521464(JP,A)
【文献】特表2013-525352(JP,A)
【文献】国際公開第2014/145192(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/085004(WO,A1)
【文献】GADADE, D. D. et al.,Pharmaceutical Cocrystals: Regulatory and Strategic Aspects, Design and Development,Advanced Pharmaceutical Bulletin,2016年,6(4),pp. 479-494
【文献】Crystal Growth & Design,2009年,Vol.9, No.6,p.2950-67
【文献】CHANDRAMOULI, Y. et al.,International Journal of Medicinal Chemistry & Analysis,2012年,Vol. 2, No. 2,pp. 91-100
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)および第二化合物の共結晶であって、ここで、第二化合物がイソニコチンアミドおよびニコチンアミドから選択される、共結晶。
【請求項2】
ITI-007遊離塩基とイソニコチンアミドの共結晶である、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
ITI-007遊離塩基とニコチンアミドの共結晶である、請求項1に記載の共結晶。
【請求項4】
共結晶が乾燥結晶形態である、請求項1~3の何れかに記載の共結晶。
【請求項5】
共結晶が均一結晶形態である、ITI-007の非晶質形態がない、請求項1~4の何れかに記載の共結晶。
【請求項6】
請求項1、2、3
、4
または5に記載の共結晶を製造する方法であって、
(a)1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基とイソニコチンアミドおよびニコチンアミドから選択される第二化合物を有機溶媒中で合わせ、そして
(b)溶媒を除去し、こうして形成された共結晶を回収する
ことを含む、方法。
【請求項7】
遊離または塩形態の1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)を精製する方法であって、粗製ITI-007とイソニコチンアミドおよびニコチンアミドから選択される第二化合物を有機溶媒中で合わせ、溶媒を除去し、こうして形成された共結晶を回収し、所望により共結晶をITI-007遊離塩基に戻すかまたは所望の塩形態に変換することを含む、方法。
【請求項8】
請求項1~
5の何れかに記載の共結晶を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含む、医薬組成物。
【請求項9】
5-HT
2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD
1/D
2受容体シグナル伝達経路が関与するまたは介在する疾患または異常状態の予防または処置に使用するための、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
持続放出用注射可能デポーの形態である、請求項
8または9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月28日出願の米国仮出願62/314,339号に基づく優先権を主張し、その内容を引用により本明細書に包含させる。
【0002】
分野
本発明は、置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリンとニコチンアミドまたはイソニコチンアミドのある新規共結晶形態、そのような共結晶の製造、その医薬組成物および、例えば、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与するまたは介在する疾患または異常状態の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンまたはITI-007と称されることもある)は、次の構造を有する。
【化1】
【0004】
ITI-007は、強力な5-HT2A受容体リガンド(Ki=0.5nM)であり、ドーパミン(DA)D2受容体(Ki=32nM)およびセロトニントランスポーター(SERT)(Ki=62nM)に強い親和性を有するが、抗精神病剤の認知および代謝副作用と関連する受容体(例えば、H1ヒスタミン作動性、5-HT2Cおよびムスカリン)にほとんど結合しない。ITI-007は、現在、とりわけ統合失調症の処置について治験中である。ITI-007は有望な薬物であるが、その製造および製剤は難題がある。遊離塩基形態で、ITI-007は油性、粘性固体であり、水だけでなく、大多数の有機溶媒に溶解性が乏しい。本化合物の塩の製造は、極めて困難であることが証明されている。ITI-007の塩酸塩形態はUS7183282に開示されているが、この塩は吸湿性であり、安定性が悪いことが示されている。最後にITI-007のトルエンスルホン酸付加塩(トシル酸塩)がWO2009/114181で特定され、記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガレヌス製剤に容易に取り込み得る、ITI-007の代替となる安定な、薬学的に許容される固体形態に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約
ITI-007の塩類製造の困難性に鑑み、該化合物が共結晶を形成できるか否かを探索することを決定した。24個の可能性のある共結晶形成剤および多様な溶媒および結晶化条件を使用する、広範な共結晶スクリーニングを実施した。ニコチンアミドおよびイソニコチンアミドとの、2つの異なるITI-007遊離塩基共結晶が発見された。両共結晶ともメタノール中のスラリー実験により得た。
【0007】
本発明は、故にガレヌス製剤の製造における使用に特に有利である、ITI-007とニコチンアミドおよびITI-007とイソニコチンアミドの新規共結晶形態を、その製造法および使用法と共に提供する。
【0008】
本発明の適応性のさらなる領域は、次に提供する詳細な記載から明らかとなる。詳細な記載および特定の例は、本発明の好ましい実施態様を示すが、説明のみを目的とすることを意図し、本発明の範囲を限定する意図はないことは理解されるべきである。
【0009】
図面の簡単な説明
本発明は、詳細な記載および添付する図面からより完全に理解される。図面は次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ITI-007遊離塩基イソニコチンアミド共結晶のX線粉末回折パターンを示す。
【
図2】
図2は、ITI-007遊離塩基ニコチンアミド共結晶のX線粉末回折パターンを示す。
【
図3】
図3は、ITI-007遊離塩基ニコチンアミド共結晶およびニコチンアミド対照のX線粉末回折パターンを示す。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、ITI-007遊離塩基イソニコチンアミド共結晶のスケールアップバッチの重層X線粉末回折パターンを示す。
【
図5】
図5は、溶解度決定試験からの固体の重層X線粉末回折パターンを示す。パターン(1)は第三バッチ共結晶である;パターン(2)はイソニコチンアミド対照である;パターン(3)~(10)は、溶解度試験から得た固体である:(3)ジクロロメタン、(4)メチルt-ブチルエーテル;(5)アセトン;(6)酢酸エチル;(7)エタノール;(8)アセトニトリル;(9)トルエン;(10)酢酸(分解)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な記載
好ましい実施態様の次の記載は本質的に単なる例示であり、本発明、その適用または使用を限定する意図は決してない。
【0012】
本明細書を通して使用する、範囲は、該範囲内の各および全ての値を述べるための略号として使用される。該範囲内のあらゆる値が、範囲の終点として選択され得る。さらに、ここに引用する全ての参考文献は、その全体を引用により本明細書に包含させる。本開示と引用した参考文献における定義の矛盾がある場合、本開示が優先する。
【0013】
特に断らない限り、ここにおよび本明細書の他の箇所に示す全てのパーセンテージおよび量は重量パーセントをいうと理解されるべきである。示される量は、物質の活性重量に基づく。
【0014】
第一の実施態様において、本発明は、共結晶(共結晶1)形態の、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基を提供する。それ故に、本発明は次のものを提供する。
1.1. 共結晶がITI-007とニコチンアミドおよびイソニコチンアミドから選択される第二化合物の間である、共結晶1。
1.2. 乾燥結晶形態の共結晶1または1.1。
1.3. 均一結晶形態である、他の形態がないまたは実質的にない、例えば、非晶質形態がないまたは実質的にない、例えば、10wt.%未満、好ましくは約5wt.%未満、より好ましくは約2wt.%未満、なお好ましくは約1wt.%未満、なお好ましくは約0.1%未満、最も好ましくは約0.01wt.%未満である、共結晶1.2。
1.4. 遊離塩基形態のITI-007とニコチンアミドおよびイソニコチンアミドから選択される第二化合物の混合物から、例えば、メタノールまたはエタノールを含む、例えば有機溶媒中で、結晶化させたときであって、該溶媒は共結晶を提供するために除去され;例えば、ここで、ITI-007および第二化合物が約1:1のモル比であり、溶媒がメタノールまたはエタノールである、前記共結晶の何れか。
1.5. 第二化合物がニコチンアミドであり、共結晶がメタノールから結晶化される、共結晶1.4。
1.6. 第二化合物がニコチンアミドであり、共結晶がエタノールから結晶化される、共結晶1.4。
1.7. 第二化合物がイソニコチンアミドであり、共結晶がメタノールから結晶化される、共結晶1.4。
1.8. ITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶である、前記共結晶の何れか。
1.9. ITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶であり、DSC分析が約150℃で吸熱事象を示し;例えばDSC/TGA分析がT
開始=136.7℃、T
ピーク=149.5℃およびΔE=-38.1J/gの吸熱事象を示す、前記共結晶の何れか。
1.10. 例えば、サンプル純度および装置多様性による変動、例えばX線波長変動による2θシフトの可能性を考慮に入れて、次の表のd-スペーシングおよび/または角度(2シータ)値に対応するX線粉末回折パターンを有する、例えば、該値を少なくとも5または少なくとも6または少なくとも7または少なくとも8有する、例えば、ここで、X線粉末回折パターンが銅アノードおよびニッケルフィルターを備えたX線回折計を使用して作成される、例えば、少なくとも0.1の相対強度を有する少なくともこれらピークを含む、例えば、少なくともピーク5および6を含む、ITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶である、前記共結晶の何れか:
【表1】
【0015】
1.11. 例えば、サンプル純度および装置多様性による変動、例えばX線波長変動による2θシフトの可能性を考慮に入れて、
図1または
図4に対応するX線粉末回折パターンを有する、例えば、銅アノードおよびニッケルフィルターを備えたX線回折計を使用して作成した、表1、表3または表4に示すピークリストを有するX線粉末回折パターンを有するITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶である、前記共結晶の何れか。
1.12. サンプル純度および装置多様性による変動の可能性を考慮に入れて、約7.89、11.51、15.68、20.83、23.09、23.55、25.62、31.56、34.92および36.73からなる群から選択される角度(2シータ)値を有する少なくとも5または少なくとも6または少なくとも7または少なくとも8ピークを有するX線粉末回折パターンを有するITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶であり、ここで、X線粉末回折パターンが銅アノードおよびニッケルフィルターを備えたX線回折計を使用して作成される、前記共結晶の何れか。
1.13. サンプル純度および装置多様性による変動の可能性を考慮に入れて、約11.19、7.68、5.65、4.26、3.85、3.78、3.48、2.83、2.57および2.45からなる群から選択されるd-スペーシング値を有する少なくとも5または少なくとも6または少なくとも7または少なくとも8ピークを有するX線粉末回折パターンを有するITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶であり、ここで、X線粉末回折パターンが銅アノードおよびニッケルフィルターを備えたX線回折計を使用して作成される、前記共結晶の何れか。
1.14. 1.12および1.13に提供する角度(2シータ)値および/またはd-スペーシング値を有する少なくとも5または少なくとも6または少なくとも7または少なくとも8ピークを有するITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶である、前記共結晶の何れか。
1.15. 実施態様1.10の表に提供する相対的角度(2シータ)値を有するX線粉末回折粉末を有するITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶であって、ここで、値は±0.2°までシフトしている、例えば、値は±0.2°までで実質的に均一にシフトしている、前記共結晶の何れか。
1.16. ITI-007遊離塩基-ニコチンアミド共結晶である、前記共結晶の何れか。
1.17. DSC分析が約150℃で吸熱事象を示すITI-007遊離塩基-ニコチンアミド共結晶である、前記共結晶の何れか。
1.18.
図2の上部パターンに対応するX線粉末回折パターン、例えば、サンプル純度および装置多様性による変動、例えばX線波長変動による2θシフトの可能性を考慮に入れて、例えば、銅アノードおよびニッケルフィルターを備えたX線回折計を使用して作成した、
図2の上部パターンに対応するX線粉末回折パターンを有するITI-007遊離塩基-ニコチンアミド共結晶である、前記共結晶の何れか。
1.19. ITI-007が重水素化されている、例えば、分子の一カ所以上の特定の位置での重水素:プロチウム比が天然同位体比または該分子の他の位置の同位体比より顕著に高い、例えば、少なくとも2x、例えば少なくとも10x高い;例えば、WO2015/154025(内容を引用により本明細書に包含させる)に記載のとおり、ITI-007のメチル化窒素部分に隣接するおよび/またはカルボニル部分に隣接する-CH
2-が重水素化されている、例えば、天然重水素:プロチウム同位体比または該分子の他の位置での重水素:プロチウム同位体比より顕著に高いレベルで-CHD-または-CD
2-の形態であるおよび/またはメチル基が重水素化されている、例えば、天然重水素:プロチウム同位体比または該分子の他の位置での重水素:プロチウム同位体比より、例えば、顕著に高いレベルでCD
3-である、例えば、前記共結晶1の形態の何れかである、前記共結晶の何れか。
1.20. 1.1~1.19に記載した特徴の組み合わせを示す、前記共結晶1の形態の何れか。
【0016】
他の実施態様において、本発明は、共結晶1を製造する方法(方法1)を提供し、方法は、
(a)1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基とニコチンアミドおよびイソニコチンアミドから選択される第二化合物を、例えば、メタノールを含む、例えば、有機溶媒と共に合わせ;例えば、ここで、ITI-007および第二化合物が約1:1のモル比であり、溶媒がメタノールであり;そして
(b)溶媒を除去し、こうして形成された共結晶を回収する、例えば、上記共結晶1~1.20の何れかの共結晶を回収する
ことを含む。
【0017】
他の実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)を精製する方法を提供し、該方法は、粗製ITI-007とニコチンアミドおよびイソニコチンアミドから選択される第二化合物を、例えば、メタノールを含む、溶媒中で合わせ、溶媒を除去し、共結晶を方法1により回収し、所望により共結晶をITI-007遊離塩基に戻すかまたは所望の塩形態に変換することを含む。
【0018】
他の実施態様において、本発明は、ITI-007の単離および/または精製法における、ニコチンアミドおよびイソニコチンアミドから選択される化合物の使用を提供する。
【0019】
他の実施態様において、本発明は、共結晶1、例えば、共結晶1.1~1.20の何れかを、活性成分として、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含む、医薬組成物を提供する。
【0020】
他の実施態様において、本発明は、共結晶1、例えば、共結晶1.1~1.20の何れかを、活性成分として、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含む、医薬組成物を提供し、ここで、共結晶1は、主にまたは完全にもしくは実質的に完全に乾燥結晶形態である。
【0021】
共結晶1、例えば、共結晶1.1~1.20の何れかは、相対的に不溶性であることが判明している。遊離塩基は難溶性であるが、結晶を形成せず、製剤が困難である。塩形態はいくぶん可溶性であるが、持続放出製剤において、望ましくない速い溶解を提供し得る。特定の実施態様において、それ故に、本発明は、ITI-007の持続放出用医薬組成物であって、共結晶1、例えば、共結晶1.1~1.20の何れかを、活性成分として、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含み、例えば、ここで、医薬組成物は、持続放出を提供するための注射可能デポー形態である、医薬組成物を提供する。
【0022】
他の実施態様において、本発明は、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与するまたは介在する疾患または異常状態、例えば、肥満、摂食障害、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠損障害、注意欠陥多動障害、強迫性障害、睡眠障害、頭痛と関連する状態、社会恐怖または認知症から選択される障害の処置に使用するための、共結晶1、例えば、共結晶1.1~1.20の何れかまたは共結晶1、例えば、共結晶1.1~1.20の何れかを含む医薬組成物を提供する。
【0023】
他の実施態様において、本発明は、治療有効量の共結晶1~1.20の何れかを、処置を必要とする患者に投与することを含む、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与するまたは介在する疾患または異常状態、例えば、肥満、摂食障害、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠損障害、注意欠陥多動障害、強迫性障害、睡眠障害、頭痛と関連する状態、社会恐怖または認知症から選択される障害を有するヒトを予防または処置する方法を提供する。
【実施例】
【0024】
次の装置および方法を、例示共結晶形態の単離および特徴付けに使用する。
X線粉末回折(XRPD):X線粉末回折試験は、Bragg-Brentano型Bruker AXS D2 PHASER、装置#1549/#2353を使用して実施する。装置は、30kV、10mAのCuアノード;サンプルステージ標準回転;Κβ-フィルター(0.5%Ni)による単色化を使用する。スリット:固定発散スリット1.0mm(=0.61°)、一次軸ソーラースリット2.5°、二次軸ソーラースリット2.5°。検出器:受容スリット5°検出器開口を備えた直線的検出器LYNXEYE。標準サンプルホルダー((510)シリコンウェーハに0.1mm腔)は、背景シグナルに最小寄与を有する。測定条件:走査範囲5~45°2θ、サンプル回転5rpm、0.5秒/ステップ、0.010°/ステップ、3.0mm検出器スリット;および全測定条件を装置制御ファイルに記録する。システム適性として、コランダムサンプルA26-B26-S(NIST標準)を毎日測定する。データ回収に使用するソフトウェアはDiffrac.Commander v2.0.26である。データ分析はDiffrac.Eva v1.4を使用して行う。背景補正または平滑化はパターンに適用しない。
【0025】
同時熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)またはTGA/DSC分析:TGA/DSC試験を、オートサンプラーを備えたMettler Toledo TGA/DSC1 Stare System、装置#1547を使用して、40μlのピンホールを開けたAlるつぼを使用して行う。測定条件:5分、30.0℃、10℃/分で30.0~350.0℃、40ml/分のN2流。装置制御およびデータ分析のためのソフトウェアはSTARe v12.10である。
【0026】
示差走査熱量測定(DSC):DSC試験は、Mettler Toledo DSC1 STARe System, 装置#1564を使用して行う。サンプルをAlるつぼ(40μl;穿刺)を使用して調製する。一般に1~8mgサンプルを予め秤量したAlるつぼに載せ、30℃に5分維持し、その後10℃/分で30℃から350℃まで加熱し、350℃で1分に維持する。40ml/分の窒素パージをサンプル上に維持する。システム適性確認として、インジウムおよび亜鉛を対照として使用する。データ採取および評価に使用するソフトウェアは、STARe Software v12.10 build 5937である。サーモグラムに補正は適用しない。
【0027】
偏光顕微鏡検査(PLM):顕微鏡試験を、AxioCamERc 5s、装置#1612を備えたAxioVert 35Mを使用して行う。顕微鏡は4つのレンズを備える:Zeiss A-Plan 5x/0.12、Zeiss A-Plan 10x/0.25、LD A-Plan 20x/0.30およびAchros TIGMAT 32x/0.40。データ回収および評価を、Carl Zeiss Zen AxioVision Blue Edition Lite 2011 v1.0.0.0ソフトウェアを使用して行う。少量のサンプルを対物レンズに載せ、薄層が得られるまで注意深く広げる。
【0028】
動的水蒸気吸脱着(DVS):動的水蒸気吸脱着試験を、Surface Measurement Systems Ltd. DVS-1 No Video、装置#2126を使用して実施する。サンプルを上皿秤に、一般に20~30mg載せ、0%RHで秤量する。物質を乾燥させたら、RHを1ステップあたり10%で増分あたり1時間で増加させ、95%RHで終わる。吸着サイクル完了後、サンプルを同じ方法を使用して乾燥させた。データ採取に使用するソフトウェアはDVSWin v3.01 No Videoである。データ分析をDVS Standard Analysis Suite v6.3.0(Standard)を使用して実施する。
【0029】
粒子径分布(PSD):粒子径分布試験をMalvern Instruments Mastersizer、装置#1712を使用して実施する。Mastersizerは、0.05μm~900mm範囲の300RFレンズを使用する。多分散系を分析モデルとして使用する。測定条件:各サンプル測定前、背景測定を実施し、背景捜査時間は12秒(12000スナップ)である。各サンプルを、1.42の屈折率でMultipar Gに分散する。サンプル分散上の遮蔽範囲は10%~30%である。各サンプルをt=0およびt=30分に6回測定し、測定走査時間は10秒(10000スナップ)である。サンプル分散単位の目標撹拌速度は2000±10rpmである。データ回収および評価をMastersizer S Version 2.19ソフトウェアを使用して行う。
【0030】
毛管融点:毛管融点を、USPガイドラインに合うBuechi Melting Point B-545、装置#000011を使用して決定する。
【0031】
X線蛍光(XRF):X線蛍光試験を、Bruker AXS S2 RANGER、装置#2006を使用して行う。優れた光要素分析のためにパラジウムアノードおよび極薄ベリリウム窓(75μm)を備えた端窓X線測定管を使用。ディテクターとして、Cr、Ti、Al、Taコリメーター(100000cpm Mnkαでエネルギー分解能<129eV FWHM)を備えたXflash V5ディテクターを使用する。S2 Rangerは、交換可能トレイを有する集積28位置X-Y自動サンプルチェンジャーを備えたオートサンプラーを備え、これにより最大サンプル直径40mmを可能とする。サンプルを、自動操作のために51.5mm直径の鋼リングにマウントする。測定条件:ポリプロピレンホイル5μmを備えた使い捨て液体カップ(35mm内径、40mm外径)。システム適性確認として、銅ディスクを毎日測定し、数要素を含むガラスディスクを毎週測定する。データ回収に使用するソフトウェアはS2 Ranger Control Software V4.1.0である。データ分析をSPECTRA EDX V2.4.3評価ソフトウェアを使用して行う。背景補正または平滑化はパターンに適用しない。
【0032】
フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR):FT-IR試験を、Thermo Scientific Nicolet iS50、装置# 357を使用して行う。全反射測定法(ATR)技術をKBrビームスピリッターと共に使用した。回収サンプルの実験設定は、400cm-1~4000cm-1の4解像度を用いて、16走査数で使用する。データ回収および評価のためにソフトウェアOMNIC version 9.2を使用する
【0033】
熱重量分析(TGA)と赤外分光法(TGA-IR):TGA-IRにおいて、オフガス処理した物質をトランスファーラインを介してガスセルに指向させ、そこで、赤外光がガスと相互作用する。TGAからの温度勾配および第一誘導体重量減少情報がGram-Schmidt(GS)プロファイルとして示される;GSプロファイルは、本質的に初期状態に対するIRシグナルの総変化を示す。ほとんどの場合、GSおよび誘導体重量減少は形が類似するが、2つの強度は異なり得る。このため、実験は互いに連結した2デバイスである。TGA試験は、34位置オートサンプラーを備えたMettler Toledo TGA/DSC1 STARe System、装置#1547を使用して行う。サンプルをAlるつぼ(100μl;穿刺)を使用して調製する。一般に20~50mgサンプルを予め秤量したAlるつぼに載せ、30℃で5分維持し、その後10℃/分で30℃から350℃まで加熱する。40ml/分の窒素パージをサンプル上に維持する。Nicolet iS50のTGA-IRモジュールをTGA/DSC1と連結する。IR試験を、Thermo Scientific Nicolet iS50、装置#2357を使用して行う。回収シリーズの実験設定、プロファイルGram-Schmidtを、4の解像度で10の走査数で使用する。データ回収および評価のためにソフトウェアOMNIC version 9.2を使用する
【0034】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):高速液体クロマトグラフィー分析を、Agilent 1100シリーズG1322A脱気装置#1894Agilent 1100シリーズG1311Aクォータナリポンプ装置#1895、Agilent 1100シリーズG1313A ALS装置#1896、Agilent 1100シリーズG1318Aカラム装置#1897およびAgilent 1100シリーズG1314A VWD装置#1898を備えたLC-31/Agilent 1200シリーズG1379B脱気装置#2254、Agilent 1100シリーズG1311Aクォータナリポンプ装置#2255、Agilent 1100シリーズG1367A WPALS装置#1656、Agilent 1100シリーズG1316Aカラム装置#2257およびAgilent 1100シリーズG1315B DAD装置#2258を備えたLC-34で行う。データをLC systems Rev. B.04.02用Agilent ChemStation[96]を使用して回収および評価する。溶液を次のとおり調製する:移動相A:800mlのMilliQ水を1Lメスフラスコに入れる。1mlのTFAを入れ均質化する。MilliQで印まで満たす;移動相B:800mlのアセトニトリルを1Lメスフラスコに入れる。1mlのTFAを入れ均質化する。アセトニトリルで印まで満たす;希釈剤:50/50 MeOH/ACN。
【0035】
実施例1:共結晶スクリーニング
種々の溶媒への遊離塩基の溶解度を評価し、溶解度範囲の結果に基づき、適当な溶媒を共結晶スクリーニングに選択する。共結晶形成は、分子の水素結合およびスタッキングに基づき、共形成剤選択は活性基に基づくことを意味する。粉砕は共結晶を形成する方法であるが、遊離塩基自体が油/粘性固体であり、それ故に、この方法に適さない。遊離塩基およびカウンターイオンを、塩形成と同様、共結晶を形成させる機会を与えるために一定濃度で溶液に添加する。我々は、共結晶形成の最適比を見つけるための、最良の方法が、共形成剤の飽和溶液の遊離塩基の飽和溶液への添加であることを発見した。
【0036】
3つの異なる実験を実施し、各々糖アルコール、アミノ酸および共結晶の可能性を有することが同定された他の化合物を含む26候補共形成剤、溶液の段階的添加、スラリー実験および冷却結晶化実験を含む。遊離塩基および共形成剤は、互いに添加前に溶解させる。共形成剤を、遊離塩基に対して1:1、2:1および1:2比で添加する。全実験を、異なる溶媒、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチルおよびトルエンを使用して行う。全固体をXRPDにより特徴付ける。2つの異なるITI-007遊離塩基共結晶が、ニコチンアミドおよびイソニコチンアミドと形成される。両共結晶は、メタノールにおけるスラリー実験で得られた。
【0037】
実施例2:イソニコチンアミド共結晶
イソニコチンアミドは、メタノールおよび酢酸エチルの混合物中のスラリー化により、ITI-007遊離塩基と共結晶を形成する可能性があり、それぞれ赤色/褐色および黄色固体として出現する。メタノール中のイソニコチンアミドを使用する実験のTGA-DSC分析は2つの吸熱事象、Tピーク=145℃およびTピーク=185℃を示す。両吸熱事象は遊離塩基または共形成剤に対応せず、ITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶が形成されることを意味する。HPLCおよび1H-NMR分析は、遊離塩基および共形成剤の両方が存在することを示す。酢酸エチル中のイソニコチンアミドを使用して、しかしながら、共結晶は生じず、TGA/DSC分析で吸熱事象は存在しない。
【0038】
メタノール中のスラリー実験をグラムスケールで繰り返す。まず、ITI-007遊離塩基およびイソニコチンアミドを各々メタノールに溶解する。続いて、得られた溶液を1:1比で混合し、得られた混合物を室温で2時間撹拌する。混合物は透明溶液のままであり、これを減圧下蒸発させて、褐色粘性固体を得る。XRPD分析は、
図1に示すとおり、褐色粘性固体が結晶であることを示し、ITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶が形成されている。対応するピークリストを表1に示す。XRPDは、おそらく好ましい配向により、クラスターピークを示す。
【表2】
【0039】
遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶をDVS、DSC/TGAおよびHPLCでも分析した。結果を表2に要約する。DSC/TGA分析は、T
開始=136.7℃、T
ピーク=149.5℃およびΔE=-38.1J/gに1つの吸熱事象を示す。TGAは、40℃~140℃温度範囲で2.4%、150℃~240℃温度範囲で12.4%および250℃~330℃温度範囲で49.33%、分解の3つの異なる質量損失を示す。HPLCデータの分析は、遊離塩基(70面積%)およびイソニコチンアミド(24%)の両方が存在することを示す。
1H-NMRデータの分析は、遊離塩基およびイソニコチンアミドが存在し、シフトが観察されないことを示し、共結晶が形成されていることを意味する。FT-IRは化学構造を確認する。DVSデータの分析は、共結晶についての長い乾燥曲線を示す。わずか0.2%質量取り込みが95RH%で観察でき、共結晶は吸湿性ではないことを示す。
【表3】
*遊離塩基および共形成剤
【0040】
各々1gスケールで、共結晶形成のための実質的に同様な条件を使用する第二および第三実験において、表3および4に示すXPRDピークリストおよび
図4Aおよび4B(拡大図)に重層したXPRDパターンを有する、ITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶の第二バッチおよび第三バッチが得られる。2つのXRPD画像は類似性質を示すが、シグナルがわずかにシフトしている。第三バッチのカウント総数は第二バッチより低く、第三バッチが低結晶性であることを示す。これら共結晶の分析結果を表5に示す。DSC、TGAおよびIRも類似するが、第三バッチはわずかに高い吸湿性を示す。
1H-NMR測定値は、2サンプル間で実質的に同一である。
【表4】
【0041】
【0042】
【0043】
ITI-007遊離塩基-イソニコチンアミド共結晶の第三バッチを使用して、溶解度試験を、浸透フラスコ法を使用して行う。約10mgの共結晶をバイアルに量り入れ、溶媒を段階的に添加する。いくつかの溶媒の添加で、結晶化が観察される。メタノール、アセトンまたはエタノールの使用は、共結晶を溶解させ、溶液となる。その後の蒸発は、固体を生じ、これをXPRDで分析する。対照的に、ジクロロメタン、メチルt-ブチルエーテル、酢酸エチル、アセトニトリルまたはトルエンの使用は、溶媒を添加すると即時に結晶が形成される。得られた結晶を単離し、またXRPDで分析する。メタノール、ジクロロメタン、メチルt-ブチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、エタノール、アセトニトリルおよびトルエンの全てから得られた物質のXRPDパターンは、元の共結晶主要ピークから優勢ピーク相殺を有する共通の新規XPRDパターンを示す。これらのXPRDパターンを
図5に重層して示し、さらなる共結晶形態または共結晶多形の形成を示唆する。溶解度試験における水またはn-ヘプタンは、元の共結晶との相互作用をもたらさず、酢酸の使用は、即時の分解をもたらす。
【0044】
実施例2:ニコチンアミド共結晶
メタノール中のニコチンアミドとのスラリー実験について、固体が形成され、それについて、TGA-DSCはT
ピーク=120℃の吸熱事象を示す。この事象は、遊離塩基(T
ピーク=120.9℃)の吸熱事象に類似し、それ故に、HPLCおよび
1H-NMR分析を実施する。HPLCは、遊離塩基および共形成剤の両方が存在することを示し、また
1H-NMRも両方の存在を示し、遊離塩基-ニコチンアミド共結晶が形成されたことを意味する。物質のXRPD分析を
図2に示し、そこでの、上部スペクトルは共結晶のものであり、下部スペクトルは対照として提供するニコチンアミド結晶のものである。
【0045】
ニコチンアミドを使用する他のスラリー実験のTGA-DSC分析は融解事象を何れも示さず、アセトニトリルまたは酢酸エチル中で実施した実験が共結晶を形成しないことを示す。この実験をグラムスケールで繰り返す。まず、ITI-007遊離塩基およびニコチンアミドを各々メタノールに溶解する。続いて、得られた溶液を、1:1比でバイアルに添加した。混合物を室温で2時間撹拌するが、沈殿は観察されない。溶液を減圧下蒸発させて、褐色粘性固体を得る。この褐色粘性固体のXRPD分析は、これがニコチンアミド自体であることを示す。
【0046】
さらなる実験を実施して、ニコチンアミド共結晶の製造およびスケールアップのための他の溶媒系を評価する。スラリー実験を、100μLの溶媒中の25mgのITI-007遊離塩基および8.6mgのニコチンアミド共形成剤で、24時間撹拌で実施する。結果は、メタノールまたはエタノールを使用したとき、ITI-007遊離塩基およびニコチンアミドの両方が溶解して、溶液となることを示す。イソプロパノール、2-ブタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、2-ブタノン、テトラヒドロフランまたはジ-イソプロピルエーテルを使用する試みにおいて、溶解は生じず、白色/褐色粘性固体が溶媒に懸濁しているように見える。水を使用したとき、溶解は同様に生じず、粘性褐色固体が水に懸濁しているように見える。固体を濾過し、XRPDで分析する。有機溶媒のXRPD分析はニコチンアミドの存在を示し、水溶液について、固体は非晶質である。これは、この10溶媒中、メタノールまたはエタノールのみが共結晶形成の可能性を示したと考えられる。メタノールおよびエタノール溶液の蒸発は粘性固体をもたらす。エタノール蒸発から得られた固体をXRPDにより分析し、ニコチンアミドに対応するピークを示す。対照的に、メタノール蒸発から得られた固体をXPRDにより分析し、共結晶の形成に一致する。XRPDスペクトルを、メタノールから得られたCC1(スラリー)として
図3に示す。ニコチンアミド対照結晶を比較のために示す。
【0047】
共結晶はまた冷却結晶化法の使用を試みる。25mgのITI-007遊離塩基および8.6mgのニコチンアミド共形成剤を200μLの溶媒と合わせ、50℃に加熱する。混合物を50℃で1時間維持し、次いで、5℃/時間の速度で5℃に冷却する。結果は、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたは2-ブタノールを使用したとき、ITI-007遊離塩基およびニコチンアミドの両方が溶解して、溶液となり、これは冷却しても溶液のままであることを示す。対照的に、アセトニトリル、酢酸エチル、2-ブタノン、テトラヒドロフランまたはジ-イソプロピルエーテルの使用は溶解をもたらさず、むしろ、冷却後、白色/褐色粘性固体が回収される。水を使用したとき、溶解は同様に生じず、粘性褐色固体が回収される。固体を濾過し、XRPDにより分析する。非アルコール性有機溶媒のXRPD分析はニコチンアミドの存在を示し、水溶液について、固体は非晶質である。これは、これらの10溶媒中、アルコールのみが、共結晶形成の可能性を示したと考えられる。アルコール性溶液の蒸発は、各々粘性固体をもたらす。イソプロパノールおよび2-ブタノール蒸発から得られた固体をXRPDで分析し、ニコチンアミドに対応するピークを示す。対照的に、メタノールおよびエタノール蒸発から得られた固体をXPRDで分析し、共結晶の形成に一致する。XRPDスペクトルを、メタノールから得られたCC1(冷却)およびエタノールから得られたCC2(冷却)として
図3に示す。ニコチンアミド対照結晶を比較のために示す。