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特許6997721脱アスファルト化油からのブライトストック製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】脱アスファルト化油からのブライトストック製造
(51)【国際特許分類】
   C10M 101/02 20060101AFI20220128BHJP
   C10M 171/02 20060101ALI20220128BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20220128BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20220128BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220128BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C10M101/02
C10M171/02
C10N20:00 A
C10N20:02
C10N40:25
C10N40:04
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2018553055
(86)(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 US2016068806
(87)【国際公開番号】W WO2017117178
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】62/271,543
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/390,943
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】リサ・アイ-チン・イェー
(72)【発明者】
【氏名】ラグベド・ピー・パタレ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ビー・センザー
(72)【発明者】
【氏名】キャムデン・エヌ・ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー・エル・オーウェンズ
(72)【発明者】
【氏名】ケンドール・エス・フラッチー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・エル・ヒルバート
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ビー・キャロル
(72)【発明者】
【氏名】デブラ・エイ・シシン
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン・イー・エドワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・イー・ハジー
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0051463(US,A1)
【文献】特表2008-545032(JP,A)
【文献】特開2014-196435(JP,A)
【文献】特表2010-535925(JP,A)
【文献】特表2009-533497(JP,A)
【文献】特表2013-527303(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105316036(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油ベースストック組成物であって、
少なくとも900°F(482℃)のT10蒸留点と;
少なくとも80の粘度指数と;
少なくとも90重量%の飽和含有量と;
300wppm未満の硫黄含有量と;
少なくとも14cStの100℃における動粘度と;
少なくとも320cStの40℃における動粘度と;
-2℃以下の曇り点と;
前記組成物の100個の炭素原子あたり、少なくとも1.7の末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の合計とを含み、
前記潤滑油ベースストック組成物が、25℃以下の流動点と曇り点との間の差異を含む、潤滑油ベースストック組成物。
【請求項2】
末端/ペンダントのプロピル基の全数が、前記組成物の100個の炭素原子あたり、0.86よりも大きいか、または末端/ペンダントのエチル基の全数が、前記組成物の100個の炭素原子あたり、0.88よりも大きいか、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項3】
前記潤滑油ベースストック組成物が、-6℃以下の流動点を有する、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物
【請求項4】
前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基の比率が、少なくとも0.060であるか、または前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのエチル基の比率が、少なくとも0.060であるか、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項5】
前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の合計の比率が、少なくとも0.10である、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項6】
前記潤滑油ベースストック組成物が、少なくとも1.5の濁度と、-2℃以下の曇り点とを有するか、または前記潤滑油ベースストック組成物が、少なくとも2.0の濁度を有するか、または前記潤滑油ベースストック組成物が、4.0以下の濁度を有するか、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項7】
前記潤滑油ベースストック組成物が、少なくとも1000°F(538℃)のT50蒸留点を含むか、または少なくとも1150°F(621℃)のT90蒸留点を含むか、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項8】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、2個の飽和環を含む分子を少なくとも17個と、100個の分子あたり、3個の飽和環を含む分子を少なくとも20個とを含む、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項9】
前記潤滑油ベースストック組成物が、0.1重量%以下のコンラドソン炭素残渣含有量を含む、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項10】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個の飽和環を含む分子を7個未満、または100個の分子あたり、6個以上の飽和環を含む分子を16個未満含むか、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項11】
前記粘度指数が少なくとも100であるか、または100℃における動粘度が少なくとも20cStであるか、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項12】
末端/ペンダントのプロピル基の全数が、前記組成物の100個の炭素原子あたり、0.86よりも大きいか、または末端/ペンダントのエチル基の全数が、前記組成物の100個の炭素原子あたり、0.88よりも大きいか、またはそれらの組合せであり、前記潤滑油ベースストック組成物が、少なくとも20cStの100℃における動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項13】
前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基の比率が少なくとも0.063であるか;または前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのエチル基の比率が少なくとも0.064であるか;または前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の合計の比率が少なくとも0.13であるか;またはそれらの組合せである、請求項12に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項14】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、2個の飽和環を含む分子を少なくとも20個と、100個の分子あたり、3個の飽和環を含む分子を少なくとも22個とを含み、前記潤滑油ベースストック組成物が、任意選択的に、0.02重量%以下のコンラドソン炭素残渣含有量を含む、
請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項15】
前記潤滑油ベースストック組成物が、少なくとも95重量%の飽和含有量を含む、請求項14に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項16】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個の飽和環を含む分子を7個未満含み、前記潤滑油ベースストック組成物が、任意選択的に、0.1重量%以下のコンラドソン炭素残渣含有量を含む、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項17】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個以上の飽和環を含む分子を16個未満含むか、または1~3個の飽和環を含む分子の4~6個の飽和環を含む分子に対する比率が、少なくとも1.1であるか、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項18】
さらに、少なくとも1種の添加剤を含み、配合された潤滑油を形成する、請求項1に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項19】
少なくとも1種の添加剤が、1種以上の清浄剤、分散剤、抗酸化剤、粘度改質剤および/または流動点抑制剤、消泡剤、および/または防錆剤を含む請求項18に記載の配合された潤滑油。
【請求項20】
前記配合された潤滑油が、1種以上の追加的なベースストックをさらに含み、前記1種以上の追加的なベースストックが、溶媒加工(又は溶媒処理)されたベースストック、水素化加工(又は水素化精製又は水素化処理)されたベースストック、合成ベースストック、フィッシャー-トロプシュ(Fisher-Tropsch)プロセスから誘導されたベースストック、PAOおよびナフテン(系)のベースストックを含む、請求項18に記載の配合された潤滑油。
【請求項21】
潤滑油ベースストック組成物であって、
少なくとも900°F(482℃)のT10蒸留点と;
少なくとも80の粘度指数と;
少なくとも90重量%の飽和含有量と;
300wppm未満の硫黄含有量と;
少なくとも14cStの100℃における動粘度と;
少なくとも350cStの40℃における動粘度と;
-2℃以下の曇り点と;
前記組成物の100個の炭素原子あたり、少なくとも1.7の末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の合計とを含み、
前記潤滑油ベースストック組成物が、25℃以下の流動点と曇り点との間の差異を含む、潤滑油ベースストック組成物。
【請求項22】
末端/ペンダントのプロピル基の全数が、前記組成物の100個の炭素原子あたり、0.85よりも大きいか、または末端/ペンダントのエチル基の全数が、前記組成物の100個の炭素原子あたり、0.85よりも大きいか、またはそれらの組合せである、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項23】
前記潤滑油ベースストック組成物が、-10℃以下の流動点を有する、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項24】
前記潤滑油ベースストック組成物が、前記組成物において、100個の炭素原子あたり14.5未満のエプシロン炭素原子を含む、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項25】
前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基の比率が、少なくとも0.060であるか、または前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのエチル基の比率が、少なくとも0.060であるか、またはそれらの組合せである、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項26】
前記潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の合計の比率が、少なくとも0.10である、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項27】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、2個の飽和環を含む分子を少なくとも17個(または100個の分子あたり、少なくとも20個)と、100個の分子あたり、3個の飽和環を含む分子を少なくとも20個(または100個の分子あたり、少なくとも22個)とを含む、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項28】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FTICR-MSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個の飽和環を含む分子を7個未満と、100個の分子あたり、7個の飽和環を含む分子を4個未満と、100個の分子あたり、8個の飽和環を含む分子を2個未満と、100個の分子あたり、9個の飽和環を含む分子を1個未満とを含む、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項29】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FTICR-MSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個以上の飽和環を含む分子を15個未満含むか、または6個以上の飽和環を含む分子の2個の飽和環を含む分子に対する比率が、0.8以下であるか、またはそれらの組合せである、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【請求項30】
前記潤滑油ベースストック組成物が、(FTICR-MSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、9個以上の飽和環を含む1個未満の分子と、100個の分子あたり、2個の飽和環を含む少なくとも19個の分子と、100個の分子あたり、3個の飽和環を含む少なくとも20個の分子とを含む、請求項21に記載の潤滑油ベースストック組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
残油フラクション(又は残油画分(resid fractions))の低苛酷性脱アスファルト化(又は低過酷度脱アスファルト化(low severity deasphalting))によって製造される脱アスファルト化油から誘導される潤滑油ベースストックのための組成物が提供される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
潤滑油ベースストックは、原油または原油フラクションから生成可能であるより高価値な生成物の1種である。望ましい品質の潤滑油ベースストックを生成する能力は、多くの場合、適切な供給原料の入手可能性によって制限される。例えば、潤滑油ベースストック製造のための従来のプロセスのほとんどは、中~低レベルの初期硫黄含有量を有する原料からの減圧軽油フラクションなど、過酷な条件下で以前に処理されなかった原料フラクションから出発することを伴う。
【0003】
いくつかの状況において、減圧残油のプロパン脱アスファルト化によって形成された脱アスファルト化油が追加的な潤滑油ベースストック製造のために使用可能である。脱アスファルト化油は、潜在的に、ブライトストックなどのより重質のベースストックの製造に適切となる可能性がある。しかしながら、潤滑油ベースストック製造のために適切な供給原料を製造するために必要とされるプロパン脱アスファルト化の苛酷性のため、減圧残渣供給原料に対して約30重量%のみの収率の脱アスファルト化油が典型的に生じる。
【0004】
特許文献1は、ペンタン-アルコール-脱アスファルト化短鎖残渣の水素化処理によって潤滑油を製造する方法を記載する。この方法は、ペンタンなどのアルカンと、メタノールおよびイソプロプルアルコールなどの1種以上の短鎖アルコールとの混合物を含む脱アスファルト化溶媒により、減圧残油フラクション上での脱アスファルト化を実行することを含む。次いで、脱アスファルト化油を水素化処理し、続いて溶媒抽出によって十分なVI向上を実行して潤滑油を形成する。
【0005】
特許文献2は、ブライトストックを形成するために残油および/または脱アスファルト化油を触媒加工する方法を記載する。脱アスファルト化油などの残油誘導流は水素化加工され、硫黄含有量が1重量%未満まで低下し、窒素含有量が0.5重量%未満まで低下する。次いで、水素化加工された流れは、1150°F~1300°F(620℃~705℃)の切点において、より重質なフラクションおよびより軽質なフラクションを形成するために分留される。次いで、より軽質なフラクションは、種々の様式で触媒加工されてブライトストックを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3,414,506号明細書
【文献】米国特許第7,776,206号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
種々の態様において、潤滑油ベースストック組成物(又は潤滑ベースストック組成物(lubricant base stock compositions))が提供される。この組成物は、少なくとも900°F(482℃)のT10蒸留点と、少なくとも80の粘度指数と、少なくとも90重量%の飽和含有量と、300wppm未満の硫黄含有量と、少なくとも14cStの100℃における動粘度と、少なくとも320cStの40℃における動粘度と、組成物の100個の炭素原子あたり少なくとも1.7の末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の合計との1つ以上を含むことができる。この組成物は、さらにまたは代替的に、組成物内の分子の分枝(又は分枝度(branching))および/または分子中の飽和環の数に関連する1つ以上の追加的な組成特性を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】脱アスファルト化油を加工して潤滑油ベースストックを形成するための構造の例を概略的に示す。
図2】脱アスファルト化油を加工して潤滑油ベースストックを形成するための別の構造の例を概略的に示す。
図3】脱アスファルト化油を加工して潤滑油ベースストックを形成するための別の構造の例を概略的に示す。
図4】種々のレベルの水素化加工苛酷性におけるペンタン脱アスファルト化油の処理からの結果を示す。
図5】サワー水素化分解およびスイート水素化分解の種々の組合せを有する構造における脱アスファルト化油の加工からの結果を示す。
図6】潤滑油ベースストックを形成するための脱アスファルト化油の触媒加工のための構造の例を概略的に示す。
図7】種々のプロパン脱アスファルト化供給原料および参照ベースストックから製造された潤滑油ベースストックの特性を示す。
図8】種々のブタン脱アスファルト化供給原料から製造された潤滑油ベースストックの特性を示す。
図9】グループIおよびグループIIブライトストックを使用して形成された配合潤滑油の特性を示す。
図10】グループIおよびグループIIブライトストックを使用して形成された配合潤滑油の特性を示す。
図11】グループIおよびグループIIブライトストックを使用して形成された配合潤滑油の特性を示す。
図12】種々のペンタン脱アスファルト化供給原料から製造された潤滑油ベースストックの特性を示す。
図13】種々のペンタン脱アスファルト化供給原料から製造された潤滑油ベースストックの特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳細な説明)
本明細書の詳細な説明および請求項における全ての数値は、「約」または「およそ」表示値によって修飾され、当業者によって予想される実験誤差および変動を考慮に入れる。
【0010】
概要
種々の態様において、低苛酷性C4+脱アスファルト化によって生成される脱アスファルト化油から、グループIおよびグループIIブライトストックを含むグループIおよびグループII潤滑油ベースストックを製造するための方法が提供される。低苛酷性脱アスファルト化とは、本明細書で使用される場合、脱アスファルト化される供給原料に対して少なくとも50重量%、または少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも75重量%の脱アスファルト化油収率など、高収率の脱アスファルト化油(および/または減少量の拒絶されるアスファルトまたはロック)をもたらす条件下での脱アスファルト化を指す。グループIベースストック(ブライトストックを含む)は、脱アスファルト化油での溶媒抽出を実行せずに形成可能である。グループIIベースストック(ブライトストックを含む)は、触媒および溶媒加工の組合せを使用して形成可能である。低苛酷性条件下で形成される脱アスファルト化油から製造される従来のブライトストックと対照的に、本明細書に記載されるグループIおよびグループIIブライトストックは、長期間の貯蔵後、曇り(又はヘーズ)を実質的に含まないことが可能である。この曇りのないグループIIブライトストックは、予想外な組成を有するブライトストックに対応する。
【0011】
種々の追加的態様において、グループIIブライトストックを形成するためのC脱アスファルト化油の触媒加工のための方法が提供される。触媒加工によるグループIIブライトストックの形成は、予想外な組成特性を有するブライトストックを提供することができる。
【0012】
従来、原油は、多くの場合、様々な沸点範囲から構成されると記載される。原油中の低沸点範囲化合物は、ナフサまたは灯油燃料に対応する。中間沸点範囲の蒸留物化合物は、ディーゼル燃料としてまたは潤滑油ベースストックとして使用可能である。いずれかのより高沸点範囲の化合物が原油中に存在する場合、そのような化合物は、原油上での大気および/または減圧蒸留の実行後に残留する原油の部分に対応する残余または「残油」化合物であると考えられる。
【0013】
いくつかの従来加工スキームにおいて、残油フラクションは、潤滑油ベースストックを形成するために供給原料の一部として使用される脱アスファルト化油で脱アスファルト化することが可能である。従来加工スキームにおいて、潤滑油ベースストックを形成するために供給原料として使用される脱アスファルト化油は、プロパン脱アスファルト化を使用して製造される。このプロパン脱アスファルト化は、初期残油フラクションに対して約40重量%未満、多くの場合に30重量%未満の脱アスファルト化油の典型的な収率によって示されるように、「高苛酷性」脱アスファルト化に対応する。典型的な潤滑油ベースストックの製造プロセスにおいて、次いで、脱アスファルト化油は、芳香族含有量を低下させるために溶媒抽出され、それに続いて溶媒脱蝋されてベースストックを形成することができる。脱アスファルト化油の低収率は、部分的には、従来方法が、長期間曇りを形成しない、より低い苛酷性脱アスファルト化からの潤滑油ベースストックを製造できないことに基づく。
【0014】
いくつかの態様において、水素化処理などの触媒加工と、溶媒脱蝋などの溶媒加工との組合せを使用することは、長期間曇りを形成する傾向が少ないか、またはその傾向のないベースストックを製造しながらも、脱アスファルト化油から潤滑油ベースストックを製造するために使用し得ることが見出された。脱アスファルト化油は、C溶媒、C溶媒、C6+用内、2種のC溶媒の混合物または2種のC溶媒の混合物を使用する脱アスファルト化プロセスによって製造することが可能である。脱アスファルト化プロセスは、少なくとも400℃または少なくとも510℃のT10蒸留点(または任意選択的にT5蒸留点)を有する減圧残油供給原料に対して少なくとも50重量%の脱アスファルト化油の収率、または少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも75重量%の脱アスファルト化油収率を有するプロセスにさらに対応し得る。曇り形成の減少は、部分的にはベースストックの流動点と曇り点との間の差異の減少もしくは最少化、および/または部分的には-2℃以下または-5℃以下の曇り点を有するブライトストックの形成による。
【0015】
グループIベースストックの製造のため、得られるベースストック生成物の所望の粘度指数増加を達成するために十分な条件下で脱アスファルト化油を水素化加工(水素化処理および/または水素化分解)することが可能である。水素化加工された溶出物は、潤滑油ベースストック沸点範囲部分からより低い沸点部分を分離するために分留することができる。次いで、潤滑油ベースストック沸点範囲部分を溶媒脱蝋し、脱蝋溶出物を製造することができる。脱蝋溶出物は、長期間曇りを形成する傾向が減少した(例えば、そのような傾向がない)複数のベースストックを形成するために分離することができる。
【0016】
グループIIベースストックの製造のため、いくつかの態様において、脱アスファルト化油は、約700°F+(370℃+)変換が10重量%~40重量%であるように水素化加工(水素化処理および/または水素化分解)され得る。水素化加工された溶出物は、潤滑油ベースストック沸点範囲部分からより低い沸点部分を分離するために分留することができる。次いで、潤滑油沸点範囲部分を水素化分解、脱蝋および水素化仕上して、触媒脱蝋された溶出物を製造することができる。任意選択的に、しかしながら好ましくは、潤滑油沸点範囲部分は、溶出物の触媒脱蝋重質部分または潜在的ブライトストック部分の蝋含有量が少なくとも6重量%、または少なくとも8重量%、または少なくとも10重量%であるように過小脱蝋であり得る。この過少脱蝋は、曇りのないベースストックを形成するためのさらなる溶媒向上を必要としない軽質または中間または重質ニュートラル潤滑油ベースストックを形成するためにも適切であり得る。この議論において、重質部分/潜在的ブライトストック部分は、脱蝋溶出物の538℃+部分に概ね対応し得る。溶出物の触媒脱蝋重質部分は、次いで、溶媒脱蝋によって加工されて溶媒脱蝋溶出物を形成し得る。溶媒脱蝋溶出物は、グループIIブライトストック生成物の少なくとも一部を含む、長期間曇りを形成する傾向が減少した(例えば、そのような傾向がない)複数のベースストックを形成するために分離することができる。
【0017】
グループIIベースストックの製造のため、他の態様において、脱アスファルト化油は、370℃+変換が少なくとも40重量%または少なくとも50重量%であるように水素化加工(水素化処理および/または水素化分解)することが可能である。水素化加工された溶出物は、潤滑油ベースストック沸点範囲部分からより低い沸点部分を分離するために分留することができる。次いで、潤滑油ベースストック沸点範囲部分を水素化分解、脱蝋および水素化仕上して、触媒脱蝋された溶出物を製造することができる。触媒脱蝋された溶出物は、次いで、溶媒抽出されて抽残物を形成し得る。抽残物は、グループIIブライトストック生成物の少なくとも一部を含む、長期間曇りを形成する傾向が減少した(例えば、そのような傾向がない)複数のベースストックを形成するために分離することができる。なお他の態様において、グループIIブライトストック生成物は、触媒脱蝋後にさらなる溶媒加工を実行することなく形成可能である。
【0018】
他の態様において、触媒加工が、C、C、Cおよび/またはC5+脱アスファルト化油から予想外な組成特性を有するグループIIブライトストックを製造するために使用され得ることが見出された。脱アスファルト化油は、(硫黄および窒素などの)ヘテロ原子の含有量を減少させるために水素化処理し、続いてスイート条件下の触媒脱蝋を実行することができる。任意選択的に、水素化分解は、サワー水素化処理段階の一部としておよび/またはスイート脱蝋段階の一部として含まれ得る。
【0019】
種々の態様において、脱アスファルト化油から、グループIIブライトストックを含む潤滑油ベースストックを形成するために、触媒および/または溶媒加工の種々の組合せを使用することができる。これらの組合せとしては、限定されないが、以下が含まれる。
【0020】
a)サワー条件(すなわち、少なくとも500wppmの硫黄含有量)下の脱アスファルト化油の水素化加工;少なくとも潤滑油沸点範囲フラクションを形成するための水素化加工された溶出物の分離;および潤滑油沸点範囲フラクションの溶媒脱蝋。いくつかの態様において、脱アスファルト化油の水素化加工は、水素化処理、水素化分解またはそれらの組合せに対応する。
【0021】
b)サワー条件(すなわち、少なくとも500wppmの硫黄含有量)下の脱アスファルト化油の水素化加工;少なくとも潤滑油沸点範囲フラクションを形成するための水素化加工された溶出物の分離;およびスイート条件(すなわち、500wppm未満の硫黄)下の潤滑油沸点範囲フラクションの触媒脱蝋。触媒的脱蝋は、任意選択的に、8.4Åより大きい細孔径を有する脱蝋触媒を使用する触媒脱蝋に対応し得る。任意選択的に、スイート加工条件は、水素化分解、貴金属水素化処理および/または水素化仕上をさらに含むことができる。任意の水素化分解、貴金属水素化処理および/または水素化仕上は、触媒脱蝋前および/または後もしくは後に行うことが可能である。例えば、スイート加工条件下での触媒加工の順番は、貴金属水素化処理、それに続いて水素化分解、それに続いて触媒脱蝋であり得る。
【0022】
c)上記b)のプロセスと、それに続いて触媒脱蝋された溶出物の少なくとも一部における追加的分離の実行。追加的分離は、溶媒脱蝋、(フルフラールまたはn-メチルピロリドンによる溶媒抽出などの)溶媒抽出、超遠心法などの物理的分離、またはそれらの組合せに対応し得る。
【0023】
d)上記プロセスa)と、それに続いて溶媒脱蝋生成物の少なくとも一部の触媒脱蝋(スイート条件)。任意選択的に、スイート加工条件は、(貴金属水素化処理などの)水素化処理、水素化分解および/または水素化仕上をさらに含むことができる。追加的なスイート水素化加工は、触媒脱蝋前および/または後に実行可能である。
【0024】
グループIベースストックまたはベース油は、90重量%未満の飽和分子および/または少なくとも0.03重量%の硫黄含有量を有するベースストックとして定義される。グループIベースストックは、少なくとも80であるが、120未満の粘度指数(VI)も有する。グループIIベースストックまたはベース油は、少なくとも90重量%の飽和分子および0.03重量%未満の硫黄を含有する。グループIIベースストックは、少なくとも80であるが、120未満の粘度指数も有する。グループIIIベースストックまたはベース油は、少なくとも120の粘度指数で、少なくとも90重量%の飽和分子および0.03重量%未満の硫黄を含有する。
【0025】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるグループIIIベースストックは、グループIII+ベースストックに対応し得る。一般に受け入れられる定義は利用可能ではないが、グループIII+ベースストックは、一般に、グループIIIの規格と比較して強化された少なくとも1つの特性を有しながら、グループIIIベースストックのための必要条件を満たすベースストックに対応し得る。強化された特性は、例えば、少なくとも130、または少なくとも135、または少なくとも140のVIを有するグループIIIベースストックなど、120の必要とされる規格より実質的により高い粘度指数を有することに対応し得る。同様に、いくつかの態様において、本明細書において記載されるグループIIベースストックは、グループII+ベースストックに対応し得る。一般に受け入れられる定義は利用可能ではないが、グループII+ベースストックは、一般に、グループIIの規格と比較して強化された少なくとも1つの特性を有しながら、グループIIベースストックのための必要条件を満たすベースストックに対応し得る。強化された特性は、例えば、少なくとも103、または少なくとも108、または少なくとも113のVIを有するグループIIベースストックなど、80の必要とされる規格より実質的により高い粘度指数を有することに対応し得る。
【0026】
以下の議論において、段階は、単一の反応器または複数の反応器に対応し得る。任意選択的に、複数の平行反応器がプロセスの1つ以上を実行するために使用可能であるか、または複数の平行反応器が一段階での全プロセスのために使用可能である。それぞれの段階および/または反応器は、水素化加工触媒を含有する1つ以上の触媒床ベッドを含むことができる。以下の議論において、触媒の「床」は、部分的物理触媒床を意味し得ることに留意すべきである。例えば、反応器中の触媒床は、部分的に水素化分解触媒で、部分的に脱蝋触媒で充てんすることが可能である。記載における便宜上、2つの触媒が単一の触媒床で一緒に積層され得るが、水素化分解触媒および脱蝋触媒は、それぞれ概念的に別個の触媒床と呼ぶことができる。
【0027】
この議論において、供給原料または溶出物の種々の種類の水素化加工のための条件が提供され得る。水素化加工の例としては、限定されないが、水素化処理、水素化分解、触媒脱蝋および水素化仕上/芳香族飽和の1つ以上を含むことができる。このような水素化加工条件は、水素化加工条件の1つ以上を制御するための複数の制御装置などの少なくとも1つの制御装置を使用することにより、条件(例えば、温度、圧力、LHSV、処理気体速度)のための所望の値を有するように制御することが可能である。いくつかの態様において、所与の種類の水素化加工のために、少なくとも1つの制御装置は、それぞれの種類の水素化加工条件と関連付けることが可能である。いくつかの態様において、水素化加工条件の1つ以上は、関連制御装置によって制御可能である。制御装置によって制御可能である構造の例としては、限定されないが、フロー速度、圧力またはそれらの組合せを制御するバルブ;温度を制御する熱交換器および/または加熱器;ならびに少なくとも2つのフローの相対的なフロー速度を制御するフローメーターおよび1つ以上の関連バルブが含まれる。このような制御装置は、任意選択的に、少なくとも1つのプロセッサ、制御変数(例えば、温度、圧力、フロー速度)の値を検出するための検出器、ならびに操作された変数の値(例えば、バルブの位置の変化、負荷サイクルの増加または減少、および/または加熱器の温度)を制御するためのプロセッサ出力を含む制御装置フィードバックループを含むことができる。任意選択的に、所与の種類の水素化加工に関する少なくとも1つの水素化加工条件は、関連制御装置を有し得ない。
【0028】
この議論において、別途指定されない限り、潤滑油沸点範囲フラクションは、初期沸点、または代替的に少なくとも約370℃(約700°F)のT5沸点を有するフラクションに対応する。ディーゼル生成物フラクションなどの蒸留物燃料沸点範囲フラクションは、約193℃(375°F)~約370℃(約700°F)の沸点範囲を有するフラクションに対応する。従って、(蒸留物燃料生成物フラクションなどの)蒸留物燃料沸点範囲フラクションは、少なくとも約193℃の初期沸点(または代替的にT5沸点)および約370℃以下の最終沸点(または代替的にT95沸点)を有することが可能である。ナフサ沸点範囲フラクションは、約36℃(122°F)~約193℃(375°F)~約370℃(約700°F)の沸点範囲を有するフラクションに対応する。従って、ナフサ燃料生成物フラクションは、少なくとも約36℃の初期沸点(または代替的にT5沸点)および約193℃以下の最終沸点(または代替的にT95沸点)を有することが可能である。36℃がC5アルカンの種々の異性体の沸点に概ね対応することは留意される。燃料沸点範囲フラクションは、蒸留物燃料沸点範囲フラクション、ナフサ沸点範囲フラクション、または蒸留物燃料沸点範囲およびナフサ沸点範囲成分の両方を含むフラクションに対応し得る。軽質末端は、種々のC1~C4化合物を含む、約36℃未満の沸点を有する生成物として定義される。供給原料または生成物フラクションの沸点または沸点範囲を決定する場合、ASTM D2887、D2892および/またはD86に記載さえる手順などの適切なASTM試験方法を使用することができる。好ましくは、試料がASTM D2887に基づく特徴決定のために適切でない場合、ASTM D2887が使用されるべきである。例えば、クロマトカラムから完全に溶出されないであろう試料に関して、ASTM D7169を使用することができる。
【0029】
供給原料(又は原料又はフィードストック(feedstock))
種々の態様において、本明細書に記載の加工のための供給原料の少なくとも一部は、減圧残油フラクションまたは別の種類の950°F+(510℃+)もしくは1000°F+(538℃+)フラクションに対応し得る。950°F+(510℃+)または1000°F+(538℃+)フラクションを形成するための方法の別の例は、高温フラッシュ分離を実行することである。高温フラッシュから形成された950°F+(510℃+)または1000°F+(538℃+)フラクションは、減圧残油に類似の様式で加工され得る。
【0030】
減圧残油フラクションまたは(フラッシュ分留ボトムもしくはビチューメンフラクションなどの)別の方法によって形成された950°F+(510℃+)フラクションは、脱アスファルト化油を形成するために低苛酷性で脱アスファルト化することが可能である。任意選択的に、供給原料は、減圧軽油などの潤滑油ベースストック製造のための従来の供給原料の一部も含むことができる。
【0031】
減圧残油(または他の510℃+)フラクションは、少なくとも約900°F(482℃)または少なくとも950°F(510℃)または少なくとも1000°FのT5蒸留点(ASTM D2892、またはフラクションがクロマトグラフィー系から完全に溶出されない場合、ASTM D7169)を有するフラクションに対応する(538℃)。代替的に、減圧残油フラクションは、少なくとも約900°F(482℃)または少なくとも950°F(510℃)または少なくとも1000°F(538℃)のT10蒸留点(ASTM D2892/D7169)に基づいて特徴付けることができる。
【0032】
残油(または他の510℃+)フラクションは、金属が高濃度であり得る。例えば、残油フラクションは、全ニッケル、バナジウムおよび鉄含有量が高くなる可能性がある。一態様において、残油フラクションは、ニッケル、バナジウムおよび鉄の全元素基準で残油1グラムあたり少なくとも0.00005グラムのNi/V/Fe(50wppm)または少なくとも0.0002グラムのNi/V/Fe(200wppm)を含有することが可能である。他の態様において、重質油は、1000wppmまでまたはそれを超えてなど、少なくとも500wppmのニッケル、バナジウムおよび鉄を含有することができる。
【0033】
窒素および硫黄などの汚染物質は、典型的に、残油(または他の510℃+)フラクションにおいて、多くの場合に有機結合形態で見出される。窒素含有量は、残油フラクションの全重量に基づいて約50wppm~約10,000wppmの元素窒素またはそれを超えて変動可能である。硫黄含有量は、残油フラクションの全重量に基づいて500wppm~100,000wppm、または1000wppm~50,000wppm、または1000wppm~30,000wppmの元素硫黄またはそれを超えて変動可能である。
【0034】
残油(または他の510℃+)フラクションを特徴決定するためのなお別の方法は、供給原料のコンラドソン炭素残渣(Conradson Carbon Residue (CCR))に基づく。残油フラクションのConradson炭素残渣は、少なくとも約10重量%または少なくとも約20重量%などの少なくとも約5重量%であり得る。さらにまたは代替的に、残油フラクションのConradson炭素残渣は、約40重量%以下または約30重量%以下などの約50重量%以下であり得る。
【0035】
いくつかの態様において、減圧軽油フラクションは、脱アスファルト化油と同時加工され得る。減圧軽油は、20(重量)部の脱アスファルト化油対1部の減圧軽油(すなわち、20:1)から、1部の脱アスファルト化油対1部の減圧軽油までの範囲の種々の量で脱アスファルト化油と組み合わせることができる。いくつかの態様において、脱アスファルト化油対減圧軽油の比率は、重量で少なくとも1:1、または少なくとも1.5:1、または少なくとも2:1であり得る。典型的な(減圧)軽油フラクションは、例えば、650°F(343℃)~1050°F(566℃)、または650°F(343℃)~1000°F(538℃)、または650°F(343℃)~950°F(510℃)、または650°F(343℃)~900°F(482℃)、または約700°F(370℃)~1050°F(566℃)、または約700°F(370℃)~1000°F(538℃)、または約700°F(370℃)~950°F(510℃)、または約700°F(370℃)~900°F(482℃)、または750°F(399℃)~1050°F(566℃)、または750°F(399℃)~1000°F(538℃)、または750°F(399℃)~950°F(510℃)、または750°F(399℃)~900°F(482℃)のT5蒸留点~T95蒸留点を有するフラクションを含むことができる。例えば、適切な減圧軽油フラクションは、少なくとも343℃のT5蒸留点および566℃以下のT95蒸留点;または少なくとも343℃のT10蒸留点および566℃以下のT90蒸留点;または少なくとも370℃のT5蒸留点および566℃以下のT95蒸留点;または少なくとも343℃のT5蒸留点および538℃以下のT95蒸留点を有することができる。
【0036】
溶媒脱アスファルト化
溶媒脱アスファルト化は、溶媒抽出プロセスである。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法のために適切な溶媒としては、1分子あたり4~7個の炭素を含有するアルカンまたは(アルケンなどの)他の炭化水素含有が含まれる。適切な溶媒の例としては、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、C4+アルカン、C5+アルカン、C4+炭化水素およびC5+炭化水素が含まれる。他の態様において、適切な溶媒としては、プロパンなどのC炭化水素を含むことができる。このような他の態様において、適切な溶媒の例としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、C3+アルカン、C4+アルカン、C5+アルカン、C3+炭化水素、C4+炭化水素およびC5+炭化水素が含まれる。
【0037】
この議論において、C(炭化水素)を含む溶媒は、少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%の、n個の炭素原子を有するアルカン(炭化水素)から構成される溶媒として定義される。同様に、Cn+(炭化水素)を含む溶媒は、少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%の、n個以上の炭素原子を有するアルカン(炭化水素)から構成される溶媒として定義される。
【0038】
この議論において、Cアルカン(炭化水素)を含む溶媒は、溶媒がn個の炭素原子(例えば、n=3、4、5、6、7)を含有する単一アルカン(炭化水素)に対応する状態、および溶媒がn個の炭素原子を含有するアルカン(炭化水素)の混合物から構成される状態を含むように定義される。同様に、Cn+アルカン(炭化水素)を含む溶媒は、溶媒がn個以上の炭素原子(例えば、n=3、4、5、6、7)を含有する単一アルカン(炭化水素)に対応する状態、および溶媒がn個以上の炭素原子を含有するアルカン(炭化水素)の混合物から構成される状態を含むように定義される。従って、C4+アルカンを含む溶媒は、n-ブタンを含む溶媒に対応し得、溶媒は、n-ブタンおよびイソブタンを含み、溶媒は、1種以上のブタン異性体および1種以上のペンタン異性体の混合物に対応するか、または4個以上の炭素原子を含有するアルカンのいずれかの他の都合のよい組合せに対応する。同様に、C5+アルカン(炭化水素)を含む溶媒は、単一アルカン(炭化水素)に対応する溶媒、または5個以上の炭素原子を含有するアルカン(炭化水素)の混合物に対応する溶媒を含むように定義される。代替的に、臨界超過液などの他の種類の溶媒も適切であり得る。種々の態様において、溶媒脱アスファルト化のための溶媒は、溶媒の少なくとも98重量または少なくとも99重量%が、炭素および水素のみを含有する化合物に対応するように、本質的に炭化水素からなることが可能である。脱アスファルト化溶媒がC4+脱アスファルト化溶媒に対応する態様において、C4+脱アスファルト化溶媒は、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満のプロパンおよび/または他のC炭化水素を含むことが可能であるか、またはC4+脱アスファルト化溶媒は、本質的にプロパンおよび/または他のC炭化水素を含まない(1重量%未満)ことが可能である。脱アスファルト化溶媒がC5+脱アスファルト化溶媒に対応する態様において、C5+脱アスファルト化溶媒は、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満のプロパン、ブタンおよび/または他のC~C炭化水素を含むことが可能であるか、またはC5+脱アスファルト化溶媒は、本質的にプロパン、ブタンおよび/または他のC~C炭化水素を含まない(1重量%未満)ことが可能である。脱アスファルト化溶媒がC3+脱アスファルト化溶媒に対応する態様において、C3+脱アスファルト化溶媒は、10重量%未満または5重量%未満のエタンおよび/または他のC炭化水素を含むことが可能であるか、またはC3+脱アスファルト化溶媒は、本質的にエタンおよび/または他のC炭化水素を含まない(1重量%未満)ことが可能である。
【0039】
減圧残油などの重質炭化水素の脱アスファルト化は当技術分野において既知であり、かつ商業的に実施される。脱アスファルト化プロセスは、典型的に、重質炭化水素を、純粋な形態または混合物として、アルカン溶媒(プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどおよびそれらの異性体)と接触させて、2種の生成物流を生じさせることに対応する。生成物流の1種は、アルカンによって抽出された脱アスファルト化油であり得、これは、脱アスファルト化油流を製造するためにさらに分離される。第2の種類の生成物流は、多くの場合、ロックまたはアスファルテンフラクションと呼ばれる、溶媒中で不溶性である供給物の残留部分であり得る。脱アスファルト化油フラクションは、燃料または潤滑油を製造するためにさらに加工可能である。ロックフラクションは、アスファルト、燃料油および/または他の生成物を製造するためのブレンド成分としてさらに使用することができる。ロックフラクションは、部分酸化、流動床燃焼またはコーキングプロセスなどの気化プロセスへの供給原料として使用することもできる。ロックは、液体として(追加的成分の有無にかかわらず)または固体として(ペレットもしくは塊状物のいずれかとして)、これらのプロセスに送達可能である。
【0040】
溶媒脱アスファルト化中、残油沸点範囲供給原料(任意選択的に減圧軽油供給原料の一部を含む)を溶媒と混合することが可能である。溶媒中に可溶性である供給原料の部分は、次いで抽出され、溶媒中での溶解性がわずかであるか、または溶解性のない残渣が残る。溶媒で抽出される脱アスファルト化供給原料の部分は、多くの場合、脱アスファルト化油と呼ばれる。典型的な溶媒脱アスファルト化条件は、約1:8以下などの約1:2~約1:10の重量比で供給原料フラクションを溶媒と混合することを含む。典型的な溶媒脱アスファルト化温度は、供給原料および溶媒の性質次第で40℃~200℃または40℃~150℃の範囲である。溶媒脱アスファルト化中の圧力は、約50psig(345kPag)~約500psig(3447kPag)であり得る。
【0041】
上記の溶媒脱アスファルト化条件は、一般的な範囲を表し、条件は供給原料次第で変動するであろうことが留意される。例えば、典型的な脱アスファルト化条件下で、温度を増加させることは、結果として生じる脱アスファルト化油の品質を増加させるが、収率を減少させる傾向がある可能性がある。典型的な脱アスファルト化条件下で溶媒の分子量を増加させることは、残油フラクション内の追加的な化合物が、より高分子量の炭化水素からなる溶媒中に可溶性となり得るため、結果として生じる脱アスファルト化油の品質を減少させるが、収率を増加させる傾向がある可能性がある。典型的な脱アスファルト化条件下で溶媒の量を増加させることは、結果として生じる脱アスファルト化油の収率を増加させる傾向がある可能性がある。当業者によって理解されるように、特定の供給原料の条件は、溶媒脱アスファルト化からの脱アスファルト化油の結果として生じる収率に基づいて選択することができる。C脱アスファルト化溶媒が使用される態様において、溶媒脱アスファルト化からの収率は40重量%以下であり得る。いくつかの態様において、C脱アスファルト化は、50重量%以下または40重量%以下の脱アスファルト化油の収率で実行可能である。種々の態様において、C4+溶媒による溶媒脱アスファルト化からの脱アスファルト化油の収率は、脱アスファルト化される供給原料の重量に対して少なくとも50重量%、または少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも70重量%であり得る。脱アスファルト化される供給原料が減圧軽油部分を含む態様において、溶媒脱アスファルト化からの収率は、供給原料の510℃+部分の重量に対する脱アスファルト化油の950°F+(510℃)部分の重量による収率に基づいて特徴決定することができる。C4+溶媒が使用されるこのような態様において、溶媒脱アスファルト化からの510℃+脱アスファルト化油の収率は、脱アスファルト化される供給原料の510℃+部分の重量に対して少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも70重量%であり得る。C4-溶媒が使用されるこのような態様において、溶媒脱アスファルト化からの510℃+脱アスファルト化油の収率は、脱アスファルト化される供給原料の510℃+部分の重量に対して50重量%未満、または40重量%未満、または35重量%未満であり得る。
【0042】
水素化処理および水素化分解
脱アスファルト化後、脱アスファルト化油(および脱アスファルト化油と組み合わせられる、いずれかの追加的フラクション)は、潤滑油ベースストックを形成するためにさらになる加工を行うことができる。これは、望ましいレベルまでヘテロ原子を除去するため、Conradson炭素含有量を減少するため、および/または粘度指数(VI)の向上を提供するための水素化処理および/または水素化分解を含むことができる。態様次第で、脱アスファルト化油は、水素化処理、水素化分解、または水素化処理および水素化分解によって水素化加工され得る。
【0043】
脱アスファルト化油は、脱アスファルト化前および/または後に、少量の溶媒抽出を実行するかまたは実行せずに、水素化処理および/または水素化分解することが可能である。結果として、水素化処理および/または水素化分解のための脱アスファルト化油供給原料は、実質的な芳香族含有量を有することができる。種々の態様において、脱アスファルト化油供給原料の芳香族含有量は、少なくとも50重量%、または少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも75重量%、例えば、90重量%までまたはそれを上回ることが可能である。さらにまたは代替的に、脱アスファルト化油の飽和物含有量は、50重量%未満、または45重量%未満、または40重量%未満、または35重量%未満、または30重量%未満、または25重量%未満、例えば、10重量%までまたはそれを下回ることが可能である。この議論および以下の請求項において、フラクションの芳香族含有量および/または飽和物含有量は、ASTM D7419に基づいて決定することが可能である。
【0044】
脱アスファルト化油(および任意の減圧軽油共供給原料)の脱金属化、および/または水素化処理、および/または水素化分解中の反応条件は、望ましいレベルの供給原料の変換を生じるように選択することができる。固定床(例えば、細流床)反応器など、都合のよいいずれの種類の反応器も使用することができる。供給原料の変換は、温度閾値より高沸点の分子の、その閾値未満の分子までの変換に関して定義することができる。変換温度は、約700°F(370℃)または1050°F(566℃)など、いずれかの都合のよい温度でもあり得る。変換の量は、脱アスファルト化油のための組み合わせられた水素化処理および水素化分解段階中の分子の全変換に対応し得る。1050°F(566℃)より高沸点の分子から566℃未満の沸点の分子への変換の適切な量は、566℃に対して30重量%~90重量%、または30重量%~80重量%、または30重量%~70重量%、または40重量%~90重量%、または40重量%~80重量%、または40重量%~70重量%、または50重量%~90重量%、または50重量%~80重量%、または50重量%~70重量%を含む。特に、566℃に対する変換の量は、30重量%~90重量%、または30重量%~70重量%、または50重量%~90重量%であり得る。さらにまたは代替的に、約700°F(370℃)より高沸点の分子から370℃未満の沸点の分子への変換の適切な量は、370℃に対して10重量%~70重量%、または10重量%~60重量%、または10重量%~50重量%、または20重量%~70重量%、または20重量%~60重量%、または20重量%~50重量%、または30重量%~70重量%、または30重量%~60重量%、または30重量%~50重量%を含む。特に、370℃に対する変換の量は、10重量%~70重量%、または20重量%~50重量%、または30重量%~60重量%であり得る。
【0045】
水素化加工された脱アスファルト化油は、生成物品質に基づいて特徴付けることができる。水素化加工(水素化処理および/または水素化分解)後、水素化加工された脱アスファルト化油は、200wppm以下、または100wppm以下、または50wppm以下(例えば、約0wppmまで)の硫黄含有量を有することができる。さらにまたは代替的に、水素化加工された脱アスファルト化油は、200wppm以下、または100wppm以下、または50wppm以下(例えば、約0wppmまで)の窒素含有量を有することができる。さらにまたは代替的に、水素化加工された脱アスファルト化油は、1.5重量%以下、または1.0重量%以下、または0.7重量%以下、または0.1重量%以下、または0.02重量%以下(例えば、約0重量%まで)のConradson炭素残渣含有量を有することができる。Conradson炭素残渣含有量は、ASTM D4530に従って決定することができる。
【0046】
種々の態様において、供給原料は、最初に、供給原料を水素化処理触媒に曝露させる前に脱金属化触媒に曝露させることができる。脱アスファルト化油は、10~100wppmの範囲の金属濃度(Ni+V+Fe)を有することができる。10wppm以上の金属含有量を有する供給原料への従来の水素化処理触媒の曝露は、商業的設定で望ましいものよりも速い速度での触媒非活性化を導く可能性がある。水素化処理触媒前に金属含有供給原料を脱金属化触媒に曝露することにより、金属の少なくとも一部が脱金属化触媒によって除去されることが可能となり、これにより、プロセスフローにおける水素化処理触媒および/またはその後の触媒の非活性化を減少または最小化することができる。いくらかの水素化活性を提供するために、VI族および/またはVIII族非貴金属金属を任意選択的に含み得る大細孔非晶質酸化物触媒などの商業的に入手可能な脱金属化触媒が適切であり得る。
【0047】
種々の態様において、脱アスファルト化油は、有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒に曝露され得る。使用される触媒としては、少なくとも1種のVIII族非貴金属(IUPAC周期表の8~10列)、好ましくはFe、Coおよび/またはNi、例えばCoおよび/またはNi、ならびに少なくとも1種のVI族金属(IUPAC周期表の6列)、好ましくはMoおよび/またはWを含むものなどの従来の水素化加工触媒を含むことができる。このような水素化加工触媒は、任意選択的に、アルミナおよび/またはシリカなどの硬質担体またはキャリア上に含浸されたか、または分散された遷移金属硫化物を含む。それ自体典型的な担体またはキャリアは、有意な/測定可能な触媒活性を有さない。一般にバルク触媒と呼ばれる、実質的にキャリアまたは担体を含まない触媒は、それらの担持された対応物よりも高い体積活性を有する。
【0048】
触媒は、バルク形態または担持形態のいずれかであり得る。アルミナおよび/またはシリカに加えて、他の適切な担体/キャリア材料としては、限定されないが、ゼオライト、チタニア、シリカ-チタニアおよびチタニア-アルミナを含むことができる。適切なアルミナは、50~200Åまたは75~150Åの平均細孔径、100~300m/gまたは150~250m/gの表面積、および0.25~1.0cm/gまたは0.35~0.8cm/gの細孔体積を有するガンマまたはエータなどの多孔性アルミナである。より一般に、従来の様式における蒸留物(潤滑油ベースストックを含む)沸点範囲供給原料の水素化処理のために適切な触媒のためのいずれの都合のよい径、形状および/または細孔径分布が使用されてもよい。好ましくは、担体またはキャリア材料は、耐火性酸化物などの非晶質担体である。好ましくは、担体またはキャリア材料は、モレキュラーシーブを含まないかまたは実質的に含まないことが可能であり、ここで、モレキュラーシーブを実質的に含まないとは、約0.01重量%未満のモレキュラーシーブの含有量を有するものとして定義される。
【0049】
少なくとも1種のVIII族非貴金属は、酸化物型で、典型的に約2重量%~約40重量%、好ましくは約4重量%~約15重量%の範囲の量で存在し得る。少なくとも1種のVI族金属は、酸化物型で、典型的に約2重量%~約70重量%の範囲の量で、好ましくは担持された触媒に関して約6重量%~約40重量%または約10重量%~約30重量%の範囲の量で存在し得る。これらの重量パーセントは、触媒の全重量に基づく。適切な金属触媒としては、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナまたはチタニア上のコバルト/モリブデン(酸化物としての1~10%のCo、酸化物としての10~40%のMo)、ニッケル/モリブデン(酸化物としての1~10%のNi、酸化物としての10~40%のCo)、またはニッケル/タングステン(酸化物としての1~10%のNi、酸化物としての10~40%のW)が含まれる。
【0050】
水素化処理は、水素の存在下で実行される。従って、水素化加工触媒が位置する容器または反応領域または水素化加工領域中に水素流が供給または注入される。水素「処理気体」に含まれる水素は、反応領域に供給される。本発明で記載される場合、処理気体は、純粋な水素、または任意選択的に1種以上の他の気体(例えば、窒素およびメタンなどの軽質炭化水素)を含む、意図された反応のために十分な量で気体流が水素を含有する、水素含有気体のいずれかであり得る。反応段階に導入された処理気体流は、好ましくは、少なくとも約50体積%、より好ましくは少なくとも約75体積%の水素を含有するであろう。任意選択的に、水素化処理気体は、HSおよびNHなどの不純物を実質的に含まないことが可能であり(1体積%未満)、かつ/またはこのような不純物が使用前に処理気体から実質的に除去され得る。
【0051】
水素は、約100SCF/B(供給物の1バレルあたりの水素の標準状態の気体の体積)(17Nm/m)~約10000SCF/B(1700Nm/m)の速度で供給可能である。好ましくは、水素は、約200SCF/B(34Nm/m)~約2500SCF/B(420Nm/m)の範囲で供給される。水素は、水素化処理反応器に/または反応領域にインプット供給原料と同時に、または別個の気体コンジットを介して水素化処理領域に別々に供給され得る。
【0052】
水素化処理条件は、200℃~450℃または315℃~425℃の温度、250psig(1.8MPag)~5000psig(34.6MPag)または300psig(2.1MPag)~3000psig(20.8MPag)の圧力、0.1時間-1~10時間-1の液空間速度(LHSV)、および200scf/B(35.6m/m)~10,000scf/B(1781m/m)または500(89m/m)~10,000scf/B(1781m/m)の水素化処理速度を含むことができる。
【0053】
種々の態様において、脱アスファルト化油は、有効な水素化分解条件下で水素化分解触媒に曝露され得る。水素化分解触媒は、典型的に、非晶質シリカアルミナなどの酸性担体上のスルフィドベース金属、USYのような分解ゼオライトまたは酸化アルミナを含む。多くの場合、これらの酸性担体は、アルミナ、チタニアまたはシリカなどの他の金属酸化物と混合されるかまたは組み合わせられる。適切な酸性担体の例としては、ゼオライトまたはシリコアルミのホスフェートなどの酸性モレキュラーシーブが含まれる。適切なゼオライトの一例は、24.30オングストローム以下のセル径を有するUSYゼオライトなどのUSYである。さらにまたは代替的に、触媒は、少なくとも約20、好ましくは、少なくとも約40または50のSi対Al比を有するUSYゼオライトなどの低酸性モレキュラーシーブであることができる。ZSM-48、例えば、約110以下、例えば、約90以下のSiO対Al比を有するZSM-48は、潜在的に適切な水素化分解触媒の別の例である。なお別の選択肢は、USYおよびZSM-48の組合せを使用することである。なお別の選択肢としては、単独でまたはUSY触媒と組み合わせて、ゼオライトベータ、ZSM-5、ZSM-35またはZSM-23の1種以上を使用することを含む。水素化分解触媒のための金属の非限定的な例としては、ニッケル、ニッケル-コバルト-モリブデン、コバルト-モリブデン、ニッケル-タングステン、ニッケル-モリブデンおよび/またはニッケル-モリブデン-タングステンなど、少なくとも1種のVIII族金属を含む金属または金属の組み合わせが含まれる。さらにまたは代替的に、貴金属を有する水素化分解触媒も使用することができる。貴金属触媒の非限定的な例としては、白金および/またはパラジウムをベースとするものが含まれる。貴金属または非貴金属触媒の両方のために使用されてよい担体材料は、耐火性酸化物材料、例えば、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、多孔質珪藻土、珪藻土、マグネシア、ジルコニアまたはそれらの組合せを含むことができるが、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカが最も一般的である(かつ一実施形態において好ましい)。
【0054】
1種のみの水素化金属が水素化分解触媒に存在する場合、その水素化金属の量は、触媒の全重量に基づいて少なくとも約0.1重量%、例えば、少なくとも約0.5重量%または少なくとも約0.6重量%であり得る。さらにまたは代替的に、1種のみの水素化金属が存在する場合、その水素化金属の量は、触媒の全重量に基づいて約5.0重量%以下、例えば、約3.5重量%以下、約2.5重量%以下、約1.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.9重量%以下、約0.75重量%以下または約0.6重量%以下であり得る。さらにまたは代替的に、2種以上の水素化金属が存在する場合、水素化金属の集合量は、触媒の全重量に基づいて少なくとも約0.1重量%、例えば、少なくとも約0.25重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約0.6重量%、少なくとも約0.75重量%または少なくとも約1重量%であり得る。なおさらにまたは代替的に、2種以上の水素化金属が存在する場合、水素化金属の集合量は、触媒の全重量に基づいて約35重量%以下、例えば、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下または約5重量%以下であり得る。担持された金属が貴金属を含む実施形態において、貴金属の量は、典型的に、約2重量%以下、例えば、約1重量%以下、約0.9重量%以下、約0.75重量%以下または約0.6重量%以下である。サワー条件下の水素化分解は、典型的に、水素化金属としてベース金属(または金属)を使用して実行されることが留意される。
【0055】
種々の態様において、潤滑油ベースストック製造のための水素化分解のために選択される条件は、変換の望ましいレベル、水素化分解段階へのインプット供給原料中の汚染物質のレベルおよび潜在的な他の要因次第であり得る。例えば、単一段階または多段階系の第1段階および/もしくは第2段階における水素化分解条件は、反応系における変換の望ましいレベルを達成するように選択することができる。水素化分解条件は、供給原料中に存在する硫黄および/または窒素のレベル次第でサワー条件またはスイート条件として記載することができる。例えば、100wppm以下の硫黄および50wppm以下の窒素、好ましくは、25wppm未満の硫黄および/または10wppm未満の窒素を有する供給原料は、スイート条件下での水素化分解のための供給原料を表す。種々の態様において、水素化分解は、熱分解された残油から誘導される脱アスファルト化油など、熱分解された残油において実行することができる。水素化分解前に任意の水素化処理ステップが使用される態様などのいくつかの態様において、熱分解された残油は、スイート供給原料に対応し得る。他の態様において、熱分解された残油は、サワー条件下での水素化分解のための供給原料を表し得る。
【0056】
サワー条件下での水素化分解プロセスは、約550°F(288℃)~約840(449℃)の温度、約1500psig~約5000psig(10.3MPag~34.6MPag)の水素分圧、0.05時間-1~10時間-1の液空間速度、および35.6m/m~1781m/m(200SCF/B~10,000SCF/B)の水素化処理気体速度において実行可能である。他の実施形態において、この条件は、約600°F(343℃)~約815°F(435℃)の範囲の温度、約1500psig~約3000psig(10.3MPag~20.9MPag)の水素分圧、および約213m/m~約1068m/m(1200SCF/B~6000SCF/B)の水素化処理気体速度を含むことができる。LHSVは、約0.25時間-1~約50時間-1、または約0.5時間-1~約20時間-1、好ましくは、約1.0時間-1~約4.0時間-1であり得る。
【0057】
いくつかの態様において、水素化分解触媒の一部は、第2の反応器段階に含有され得る。このような態様において、水素化加工反応系の第1の反応段階は、1種以上の水素化処理および/または水素化分解触媒を含むことができる。第1の反応段階の条件は、供給原料の硫黄および/または窒素含有量を減少するために適切であり得る。次いで、気相硫黄および窒素汚染物質を除去するために、反応系の第1および第2段階間でセパレータを使用することができる。セパレータのための1つの選択肢は、汚染物質を除去するために単純に気体-液体分離を実行することである。別の選択肢は、より高い温度での分離を実行することができる、フラッシュセパレータなどのセパレータを使用することである。このような高温セパレータは、例えば、供給原料を、約350°F(177℃)または約400°F(204℃)などの温度切点未満の沸点部分と、温度切点以上の沸点部分とに分離するために使用することができる。この種類の分離において、第1の反応段階からの溶出物のナフサ沸点範囲部分を除去することも可能であり、従って第2または他のその後の段階で加工される溶出物の量が減少される。当然のことながら、第1の段階からの溶出物におけるいずれの低沸点汚染物質も温度切点未満の沸点部分に分離されるであろう。第1段階において十分な汚染物質除去が実行される場合、第2段階は、「スイート」または低汚染物質段階として操作可能である。
【0058】
なお別の選択肢は、第1段階からの溶出物の少なくとも部分的な分留を実行することもできる水素化加工反応系の第1および第2段階間でセパレータを使用することであり得る。この種類の態様において、第1の水素化加工段階からの溶出物は、少なくとも(ディーゼルなどの)蒸留物燃料範囲未満の沸点部分、蒸留物燃料範囲の沸点部分および蒸留物燃料範囲以上の沸点部分へと分離することができる。蒸留物燃料範囲は、少なくとも約350°F(177℃)または少なくとも約400°F(204℃)の下端切点温度を有することから、約700°F(371℃)以下または650°F(343℃)以下の上端切点温度を有することなど、従来のディーゼル沸点範囲に基づいて定義することができる。任意選択的に、蒸留物燃料の範囲は、少なくとも約300°F(149℃)の下端切点温度を選択することなどにより、追加的な灯油を含むように拡張することができる。
【0059】
段階間のセパレータが蒸留物燃料フラクションを製造するためにも使用される態様において、蒸留物燃料フラクション未満の沸点部分は、ナフサ沸点範囲分子、軽留分およびH2Sなどの汚染物質を含む。これらの異なる生成物は、いずれかの都合のよい様式で互いから分離することができる。同様に、必要に応じて、凝縮物沸点範囲フラクションから1種以上の蒸留物燃料フラクションを形成することができる。蒸留物燃料範囲以上の沸点部分は、潤滑油ベースストックを表す可能性がある。このような態様において、蒸留物燃料範囲以上の沸点部分は、第2の水素化加工段階でさらなる水素化加工を受ける。
【0060】
スイート条件下での水素化分解プロセスは、サワー水素化分解プロセスのために使用される条件と類似の条件下で実行することができるか、または条件が異なることも可能である。一実施形態において、スイート水素化分解段階における条件は、サワー段階における水素化分解プロセスより過酷製の低い条件を有することができる。非サワー段階のための適切な水素化分解条件は、限定されないが、第1またはサワー段階に類似の条件を含むことができる。適切な水素化分解プロセスは、約500°F(260℃)~約840(449℃)の温度、約1500psig~約5000psig(10.3MPag~34.6MPag)の水素分圧、0.05時間-1~10時間-1の液空間速度、および35.6m/m~1781m/m(200SCF/B~10,000SCF/B)の水素化処理気体速度を含むことができる。他の実施形態において、この条件は、約600°F(343℃)~約815°F(435℃)の範囲の温度、約1500psig~約3000psig(10.3MPag~20.9MPag)の水素分圧、および約213m/m~約1068m/m(1200SCF/B~6000SCF/B)の水素化処理気体速度を含むことができる。LHSVは、約0.25時間-1~約50時間-1、または約0.5時間-1~約20時間-1、好ましくは、約1.0時間-1~約4.0時間-1であり得る。
【0061】
なお別の態様において、両方に水素化処理条件を使用するか、または両方に水素化分解条件を使用するなど、水素化処理および水素化分解床または段階に同一条件を使用することが可能である。さらに別の実施形態において、水素化処理および水素化分解床または段階のための圧力を同一にすることができる。
【0062】
さらに別の態様において、水素化加工反応系は、2つ以上の水素化分解段階を含み得る。複数の水素化分解段階が存在する場合、少なくとも1つの水素化分解段階は、少なくとも約1500psig(10.3MPag)の水素分圧を含む、上記の有効な水素化分解条件を有することができる。このような態様において、他の水素化分解プロセスを、より低い水素分圧を含み得る条件下で実行することができる。追加的な水素化分解段階のための適切な水素化分解条件は、限定されないが、約500°F(260℃)~約840(449℃)の温度、約250psig~約5000psig(1.8MPag~34.6MPag)の水素分圧、0.05時間-1~10時間-1の液空間速度、および35.6m/m~1781m/m(200SCF/B~10,000SCF/B)の水素化処理気体速度を含むことができる。他の実施形態において、追加的な水素化分解段階のための条件は、約600°F(343℃)~約815°F(435℃)の範囲の温度、約500psig~約3000psig(3.5MPag~20.9MPag)の水素分圧、および約213m/m~約1068m/m(1200SCF/B~6000SCF/B)の水素化処理気体速度を含むことができる。LHSVは、約0.25時間-1~約50時間-1、または約0.5時間-1~約20時間-1、好ましくは、約1.0時間-1~約4.0時間-1であり得る。
【0063】
水素化加工された溶出物 - グループIブライトストックを形成するための溶媒脱蝋
水素化加工された脱アスファルト化油(任意選択的に水素化加工された減圧軽油を含む)は、(ナフサまたは蒸留物燃料沸点範囲フラクションなどの)1つ以上の燃料沸点範囲フラクションと、少なくとも1つの潤滑油ベースストック沸点範囲フラクションとを形成するために分離することができる。次いで、潤滑油ベースストック沸点範囲フラクションは、曇りを形成する傾向が減少している(または排除された)潤滑油ベースストック生成物を製造するために溶媒脱蝋され得る。脱アスファルト化油の水素化加工と、次いで水素化加工された溶出物の溶媒脱蝋とによって形成された潤滑油ベースストック(ブライトストックを含む)は、少なくとも10重量%の芳香族含有量および/または90重量%未満の飽和含有量を有するため、グループIベースストックとなる傾向を有することが可能である。
【0064】
溶媒脱蝋は、典型的に、供給原料を冷却脱蝋溶媒と混合して、油-溶媒溶液を形成することを必要とする。沈殿した蝋は、その後、例えば濾過によって分離される。温度および溶媒は、蝋が沈殿している間に油が冷却溶媒によって溶解するように選択される。
【0065】
適切な溶媒脱蝋プロセスの一例は、溶媒が事前に冷却され、冷却塔の高さに沿って様々な点で徐々に添加される冷却塔の使用を必要とする。油-溶媒混合物は、事前冷却された溶媒と油との実質的に瞬間的な混合を可能にするように冷却段階中に撹拌される。事前冷却された溶媒は、1分あたり10°F以下、通常、1分あたり約1~約5°Fの平均冷却速度を維持するために冷却塔の長さに沿って徐々に添加される。冷却塔中の油-溶媒/沈殿蝋混合物の最終温度は、通常、0~50°F(-17.8~10℃)であろう。次いで、混合物から沈殿蝋を分離するために、混合物を、こすり落とされた表面へと送達してもよい。
【0066】
代表的な脱蝋溶媒は、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどの3~6個の炭素原子を有する脂肪族ケトン、プロパンおよびブタンなどの低分子量炭化水素、ならびにその混合物である。溶媒は、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの他の溶媒と混合されてもよい。
【0067】
一般に、添加される溶媒の量は、脱蝋温度において5/1~20/1の範囲の液体/固体重量比および1.5/1~5/1の溶媒/油体積比を提供するために十分であろう。溶媒脱蝋された油は、標的の潤滑油ベースストック生成物の性質次第で-6℃以下、または-10℃以下、または-15℃以下の流動点まで脱蝋され得る。さらにまたは代替的に、溶媒脱蝋された油は、標的潤滑油ベースストック生成物の性質次第で-2℃以下、または-5℃以下、または-10℃以下の曇り点まで脱蝋され得る。結果として生じる溶媒脱蝋された油は、グループIベースストックの1種以上を形成するための使用に適切となる可能性がある。好ましくは、溶媒脱蝋された油から形成されたブライトストックは、-5℃未満の曇り点を有することができる。結果として生じる溶媒脱蝋された油は、少なくとも90、または少なくとも95、または少なくとも100の粘度指数を有することができる。好ましくは、結果として生じる溶媒脱蝋された油の少なくとも10重量%(または少なくとも20重量%、または少なくとも30重量%)は、50cStまでまたはそれを超えてなど、少なくとも15cSt、または少なくとも20cSt、または少なくとも25cStの100℃における動粘度を有するグループIブライトストックに対応し得る。
【0068】
いくつかの態様において、溶媒脱蝋された油から形成された潤滑油ベースストックの曇りを形成する傾向の減少または排除は、潤滑油ベースストックの曇り点温度と流動点温度との間の減少したまたは最小化された差異によって示すことができる。種々の態様において、結果として生じる溶媒脱蝋油の、および/または溶媒脱蝋油から形成される1種以上のブライトストックを含む1種以上の潤滑油ベースストックの曇り点と流動点との間の差異は、22℃以下、または20℃以下、または15℃以下、または10℃以下、または8℃以下、または5℃以下であり得る。さらにまたは代替的に、ブライトストックの経時的な曇りを形成する傾向の減少または排除は、-10℃以下、または-8℃以下、または-5℃以下、または-2℃以下の曇り点を有するブライトストックに対応し得る。
【0069】
追加的な水素化加工 - 触媒脱蝋、水素化仕上および任意の水素化分解
いくつかの別の態様において、水素化加工された脱アスファルト化油の少なくとも潤滑油沸点範囲の部分は、グループIおよび/またはグループIIブライトストックを含むグループIおよび/またはグループIIベースストックのいずれかを形成するために、さらなる水素化加工(触媒脱蝋を含む)に曝露され得る。いくつかの態様において、第2の潤滑油沸点範囲部分をさらなる水素化加工に曝露することができるが、水素化加工された脱アスファルト化油の第1の潤滑油沸点範囲部分を上記のように溶媒脱蝋することができる。他の態様において、溶媒脱蝋のみまたはさらなる水素化加工のみを使用して、水素化加工された脱アスファルト化油の潤滑油沸点範囲部分を処理することができる。
【0070】
任意選択的に、水素化加工された脱アスファルト化油の潤滑油沸点範囲部分のさらなる水素化加工は、触媒脱蝋条件への暴露前および/または後に水素化分解条件に暴露することも含むことができる。プロセスのこの時点で、水素化加工された脱アスファルト化油が200wppm以下の硫黄含有量を有することができるため、水素化分解は、「スイート」水素化分解であると考えることができる。
【0071】
適切な水素化分解条件は、上記の水素化分解触媒への供給原料の曝露を含むことができる。任意選択的に、水素化分解からのVI向上を改善するため、/または燃料沸点範囲生成物中のナフサ燃料収率に対する蒸留物燃料収率の比率を向上させるために、少なくとも30のシリカ対アルミナ比および24.32オングストローム未満の単位格子径を有するUSYゼオライトを水素化分解触媒のためのゼオライトとして使用することが好ましいことがあり得る。
【0072】
また、適切な水素化分解プロセスは、約500°F(260℃)~約840(449℃)の温度、約1500psig~約5000psig(10.3MPag~34.6MPag)の水素分圧、0.05時間-1~10時間-1の液空間速度、および35.6m/m~1781m/m(200SCF/B~10,000SCF/B)の水素化処理気体速度を含むことができる。他の実施形態において、この条件は、約600°F(343℃)~約815°F(435℃)の範囲の温度、約1500psig~約3000psig(10.3MPag~20.9MPag)の水素分圧、および約213m/m~約1068m/m(1200SCF/B~6000SCF/B)の水素化処理気体速度を含むことができる。LHSVは、約0.25時間-1~約50時間-1、または約0.5時間-1~約20時間-1、好ましくは、約1.0時間-1~約4.0時間-1であり得る。
【0073】
触媒脱蝋のために適切な脱蝋触媒は、結晶質アルミノシリケート(ゼオライト)などのモレキュラーシーブを含むことができる。一実施形態において、モレキュラーシーブは、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48を含むか、またはそれから本質的になるか、またはそれからなることが可能である。任意選択的に、しかしながら好ましくは、ZSM-48、ZSM-23またはそれらの組合せなど、分解とは反対の異性化による脱蝋に対して選択的であるモレキュラーシーブを使用することができる。さらにまたは代替的に、モレキュラーシーブはEU-2、EU-11、ZBM-30、ZSM-48またはZSM-23などの10員環1-Dモレキュラーシーブを含むか、またはそれから本質的になるか、またはそれからなることが可能である。ZSM-48が最も好ましい。約20:1~約40:1のシリカ対アルミナ比を有するZSM-23構造を有するゼオライトは、SSZ-32と呼ばれることがあることに留意されたい。任意選択的に、しかしながら好ましくは、脱蝋触媒は、アルミナ、チタニア、シリカ、シリカ-アルミナ、ジルコニアまたはそれらの組合せ、例えば、アルミナおよび/またはチタニア、ならびにシリカおよび/またはジルコニアおよび/またはチタニアなどのモレキュラーシーブのための結合剤を含むことができる。
【0074】
好ましくは、本発明によるプロセスで使用される脱蝋触媒は、低いシリカ対アルミナ比を有する触媒である。例えば、ZSM-48に関して、ゼオライト中のシリカ対アルミナ比は、約100:1以下、例えば、約90:1以下、または約75:1以下、または約70:1以下であり得る。さらにまたは代替的に、ZSM-48中のシリカ対アルミナ比は、少なくとも約50:1、例えば、少なくとも約60:1、少なくとも約65:1であり得る。
【0075】
種々の実施形態において、本発明による触媒は、金属水素化成分をさらに含む。金属水素化成分は、典型的に、VI族および/またはVIII族金属である。好ましくは、金属水素化成分は、非貴族VIII族金属とVI族金属との組合せであり得る。適切な組合せは、Ni、CoまたはFeとMまたはWとを含み、好ましくは、NiとMoまたはWとを含む。
【0076】
金属水素化成分は、いずれかの都合のよい様式で触媒に添加されてよい。金属水素化成分を添加するための1つの技術は、初期湿分による。例えば、ゼオライトと結合剤とを組み合わせた後、組み合わせたゼオライトおよび結合剤は、触媒粒子中に押出可能である。これらの触媒粒子は、次いで、適切な金属前駆体を含有する溶液に曝露され得る。代替的に、金属はイオン交換によって触媒に添加され得、そこで、金属前駆体は、押出成形前にゼオライト(またはゼオライトおよび結合剤)の混合物に添加される。
【0077】
触媒中の金属の量は、触媒に基づいて少なくとも0.1重量%、または触媒に基づいて少なくとも0.5重量%、または少なくとも1.0重量%、または少なくとも2.5重量%、または少なくとも5.0重量%であり得る。触媒中の金属の量は、触媒に基づいて20重量%以下、または10重量%以下、または5重量%以下、または2.5重量%以下、または1重量%以下であり得る。金属が非貴族VIII族金属とVI族金属との組合せである実施形態に関して、金属の合計量は、0.5重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または2.5重量%~10重量%であり得る。
【0078】
本発明によるプロセスにおいて有用な脱蝋触媒は、結合剤も含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明によるプロセスにおいて使用される脱蝋触媒は、低表面積結合剤を使用して配合される。低表面積結合剤は、100m/g以下、または80m/g以下、または70m/g以下の表面積を有する結合剤を表す。さらにまたは代替的に、結合剤は、少なくとも約25m/gの表面積を有することが可能である。結合剤を使用して配合された触媒中のゼオライトの量は、結合剤およびゼオライトの合計重量に対して約30重量%のゼオライト~90重量%のゼオライトであり得る。好ましくは、ゼオライトの量は、ゼオライトおよび結合剤の合計重量の少なくとも約50重量%、例えば、少なくとも約60重量%、または約65重量%~約80重量%である。
【0079】
特定の理論によって拘束されないが、低表面積結合剤の使用が、触媒上に担持された水素化金属のために利用可能な結合剤表面積の量を減少させると考えられる。これにより、触媒中のモレキュラーシーブの細孔内で担持される水素化金属の量の増加が導かれる。
【0080】
ゼオライトは、いずれかの都合のよい様式で結合剤と組み合わせることができる。例えば、結合された触媒は、ゼオライトおよび結合剤の両粉末から出発し、混合物を形成するために水を添加して、粉末を組み合わせ、ミル加工し、次いで混合物を押出して、望ましい径の結合触媒を製造することによって製造可能である。押出成形助剤もゼオライトおよび結合剤混合物の押出成形フロー特性を変化させるために使用され得る。触媒中のフレームワークアルミナの量は、0.1~3.33重量%、または0.1~2.7重量%、または0.2~2重量%、または0.3~1重量%で変動し得る。
【0081】
脱蝋触媒の存在下における供給原料の触媒脱蝋のための有効な条件は、280℃~450℃、好ましくは、343℃~435℃の温度、3.5MPag~34.6MPag(500psig~5000psig)、好ましくは、4.8MPag~20.8MPagの水素分圧、および178m/m(1000SCF/B)~1781m/m(10,000scf/B)、好ましくは、213m/m(1200SCF/B)~1068m/m(6000SCF/B)の水素循環速度を含むことが可能である。LHSVは、約0.2時間-1~約10時間-1、例えば、約0.5時間-1~約5時間-1および/または約1時間-1~約4時間-1であり得る。
【0082】
触媒脱蝋前および/または後に、水素化加工された脱アスファルト化油(すなわち、少なくともその潤滑油沸点範囲部分)は、任意選択的に、水素化仕上触媒とも呼ぶことができる芳香族飽和触媒に曝露することができる。芳香族飽和触媒への曝露は、分留前または後に実行することができる。芳香薬飽和が分留後に生じる場合、芳香薬飽和は、分留生成物の1つ以上の部分で実行可能である。代替的に、最後の水素化分解または脱蝋プロセスからの溶出物全体を水素化仕上すること、および/または芳香族飽和を受けさせることが可能である。
【0083】
水素化仕上および/または芳香族飽和触媒は、VI族金属、VIII族金属およびその混合物を含有する触媒を含むことができる。一実施形態において、好ましい金属は、強い水素化作用を有する少なくとも1種の金属硫化物を含む。別の実施形態において、水素化仕上触媒は、Pt、Pdまたはそれらの組合せなどのVIII族貴金属を含むことができる。金属の混合物は、金属の量が触媒に基づいて約30重量%以上である、バルク金属触媒として存在してもよい。担持された水素化処理触媒に関して、適切な金属酸化物担体は、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナまたはチタニア、好ましくは、アルミナなどの低い酸性酸化物を含む。芳香族飽和のための好ましい水素化仕上触媒は、多孔質担体上に比較的強い水素化作用を有する少なくとも1種の金属を含むであろう。典型的な担体材料は、アルミナ、シリカおよびシリカ-アルミナなどの非晶質または結晶質酸化物材料を含む。担体材料は、ハロゲン化によってまたは特にフッ素化によってなどで変性されてもよい。触媒の金属含有量は、多くの場合、非貴金属の約20体重%と同程度に高い。一実施形態において、好ましい水素化仕上触媒は、M41S類または系統群の触媒に属する結晶質材料を含むことができる。M41S系統群の触媒は、高いシリカ含有量を有するメソ細孔材料である。例としては、MCM-41、MCM-48およびMCM-50が含まれる。この分類の好ましい構成員は、MCM-41である。
【0084】
水素化仕上条件は、約125℃~約425℃、好ましくは、約180℃~約280℃の温度、約500psig(3.4MPa)~約3000psig(20.7MPa)、好ましくは、約1500psig(10.3MPa)~約2500psig(17.2MPa)の水素分圧、0.1時間-1~5時間-1、好ましくは、約0.5時間-1~約1.5時間-1の液空間速度を含むことができる。さらに、35.6m/m~1781m/m(200SCF/B~10,000SCF/B)の水素化処理気体速度を使用することができる。
【0085】
触媒脱蝋された溶出物の溶媒加工または触媒脱蝋へのインプットフロー
プロパン脱アスファルト化から誘導される脱アスファルト化油に関して、さらなる水素化加工(触媒脱蝋を含む)は、低い曇り形成および予想外の組成特性を有する潤滑油ベースストックを形成するために十分であり得る。C4+脱アスファルト化から誘導される脱アスファルト化油に関して、さらなる水素化加工(触媒脱蝋を含む)後、結果として生じる触媒脱蝋された溶出物を溶媒加工して、曇りの形成する傾向が減少したかまたは排除された1種以上の潤滑油ベースストックを形成することができる。溶媒加工の種類は、初期の水素化加工(水素化処理および/または水素化分解)の性質およびさらなる水素化加工(脱蝋を含む)の性質次第であり得る。
【0086】
初期の水素化加工が、約700°F(370℃)に対して10重量%~40重量%の変換に対応して苛酷性が低い態様において、次の溶媒加工は、溶媒脱蝋に対応し得る。溶媒脱蝋は、上記の溶媒脱蝋に類似の様式で実行することができる。しかしながら、この溶媒脱蝋は、グループII潤滑油ベースストックを製造するために使用することができる。いくつかの態様において、初期水素化加工が、370℃に対して10重量%~40重量%の変換に対応する場合、さらなる水素化加工中の触媒脱蝋は、少なくとも6重量%、または少なくとも8重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも12重量%、または少なくとも15重量%、例えば、20重量%までの蝋が触媒脱蝋された溶出物中に残るように、より低い苛酷性において実行可能である。次いで、溶媒脱蝋を使用して、触媒脱蝋された溶出物中の蝋含有量を2重量%~10重量%だけ減少させることができる。これにより、0.1重量%~12重量%、または0.1重量%~10重量%、または0.1重量%~8重量%、または0.1重量%~6重量%、または1重量%~12重量%、または1重量%~10重量%、または1重量%~8重量%、または4重量%~12重量%、または4重量%~10重量%、または4重量%~8重量%、または6重量%~12重量%、または6重量%~10重量%の蝋含有量を有する溶媒脱蝋油生成物を製造することができる。特に、溶媒脱蝋油は、0.1重量%~12重量%、または0.1重量%~6重量%、または1重量%~10重量%、または4重量%~12重量%の蝋含有量を有することができる。
【0087】
種々の態様において、次の溶媒加工は、溶媒抽出に対応し得る。溶媒抽出は、芳香族含有量および/または極性分子の量を減少させるために使用することができる。溶媒抽出は、芳香族の乏しい抽残物相中により多くのパラフィン成分を残しながら、芳香族の豊富な抽出物相を形成するために芳香族成分を選択的に溶解する。ナフテンは、抽出物と抽残物相との間に分配される。溶媒抽出のための典型的な溶媒は、フェノール、フルフラールおよびN-メチルピロリドンを含む。溶媒対油比、抽出温度、および抽出される蒸留物を溶媒と接触させる方法を制御することにより、抽出物と抽残物相との間の分離度を制御することができる。反流液体-液体抽出器などのいずれの都合のよい種類の液体-液体抽出器も使用することができる。脱アスファルト化油中の芳香族の初濃度次第で、抽残物相は、5重量%~25重量%の芳香族含有量および/または75重量%~95重量%(もしくはそれを超える)の飽和含有量を有し得る。典型的な供給原料に関して、芳香族含有量は、少なくとも10重量%であり得、かつ/または飽和含有量は90重量%以下であり得る。種々の態様において、溶剤抽出からの抽残物収率は、少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%であり得る。
【0088】
任意選択的に、溶媒抽出からの抽残物を過小抽出することができる。このような態様において、なお最も低品質の分子の大部分を供給原料から除去しながら、抽残物収率が最大化されるような条件下で抽出が実行される。抽残物収率は、例えば、溶媒対油処理比の低下および/または抽出温度の低下によって抽出条件を制御することによって最大化され得る。
【0089】
溶媒加工された油(溶媒脱蝋または溶媒抽出)は、標的潤滑油ベースストック生成物の性質次第で-6℃以下、または-10℃以下、または-15℃以下、または-20℃以下の流動点を有することができる。さらにまたは代替的に、溶媒加工された油(溶媒脱蝋または溶媒抽出)は、標的潤滑油ベースストック生成物の性質次第で-2℃以下、または-5℃以下、または-10℃以下の曇り点を有することができる。流動点および曇り点は、それぞれASTM D97およびASTM D2500に従って決定することができる。結果として生じる溶媒加工された油は、1種以上のグループIIベースストックの形成において使用するために適切となる可能性がある。結果として生じる溶媒脱蝋油は、少なくとも80、または少なくとも90、または少なくとも95、または少なくとも100、または少なくとも110、または少なくとも120の粘度指数を有することができる。粘度指数は、ASTM D2270に従って決定することができる。好ましくは、結果として生じる溶媒加工された油の少なくとも10重量%(または少なくとも20重量%、または少なくとも30重量%)は、少なくとも14cSt、または少なくとも15cSt、または少なくとも20cSt、または少なくとも25cSt、または少なくとも30cSt、または少なくとも32cSt、例えば、50cStまでまたはそれを上回る100℃における動粘度を有するグループIIブライトストックに対応し得る。さらにまたは代替的に、グループIIブライトストックは、少なくとも300cSt、または少なくとも320cSt、または少なくとも340cSt、または少なくとも350cSt、例えば、500cStまでまたはそれを上回る40℃における動粘度を有することが可能である。動粘度は、ASTM D445に従って決定することができる。さらにまたは代替的に、Conradson炭素残渣含有量は、約0.1重量%以下または約0.02重量%以下であり得る。Conradson炭素残渣含有量は、ASTM D4530に従って決定することができる。さらにまたは代替的に、結果として生じるベースストックは、(0℃未満の曇り点と組み合わせて)少なくとも1.5の濁り度を有することができるか、または少なくとも2.0の濁り度を有することができ、かつ/または4.0以下、または3.5以下、または3.0以下の濁り度を有することができる。特に、濁り度は、1.5~4.0、または1.5~3.0、または2.0~4.0、または2.0~3.5であり得る。
【0090】
溶媒加工された油から形成された潤滑油ベースストックの曇りを形成する傾向の減少または排除は、潤滑油ベースストックの曇り点温度と流動点温度との間の減少したまたは最小化された差異によって示すことができる。種々の態様において、結果として生じる溶媒脱蝋油の、および/または溶媒加工された油から形成される1種以上のブライトストックを含む1種以上のグループII潤滑油ベースストックの曇り点と流動点との間の差異は、22℃以下、または20℃以下、または15℃以下、または10℃以下、例えば、約1℃までの差異であり得る。
【0091】
いくつかの別の態様において、上記の溶媒加工は、触媒脱蝋前に実行することができる。
【0092】
グループIIベースストック生成物
プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびより高級なもの、またはその混合物から誘導される脱アスファルト化油に関して、さらなる水素化加工(触媒脱蝋を含む)および潜在的な溶媒加工は、低い曇り形成(または曇り形成がない)および新規組成特性を有する潤滑油ベースストックを形成するために十分となる可能性がある。約32cStの100℃における動粘度を有する現在製造される従来の生成物は、ベース油の>10%の芳香族および/または>0.03%を含有する。
【0093】
種々の態様において、本明細書に記載される方法に従って製造されるベースストックは、少なくとも14cSt、または少なくとも20cSt、または少なくとも25cSt、または少なくとも30cSt、または少なくとも32cStの100℃における動粘度を有することが可能であり、かつ10重量%未満の芳香族/90重量%より高い飽和および0.03%未満の硫黄を含有することが可能である。任意選択的に、飽和含有量は、なお高くなることが可能であり、例えば、95重量%より高く、または97重量%より高いことが可能である。加えて、以下の実施例においてさらに詳細に説明されるように、C-NMRによる分子の分枝度(分岐)の詳細な特徴決定によって高度の分枝点を明らかにされる。これは、個々にまたはそれらの組合せとして、メチル分枝またはエチル分枝またはプロピル分枝の絶対数を調査することによって定量化することができる。これは、また、C-NMRによるエプシロン炭素として標識化された内部炭素の数と比較した分枝点(メチル、エチルまたはプロピル)の比を調査することによっても定量化することができる。分枝のこのような定量化は、ベースストックが長期間、曇り形成に対して安定であるかどうかを決定するために使用することができる。ここに報告された13C-NMR結果に関して、試料は、7%クロム(III)-アセチルアセトネートが弛緩剤として添加されたCDCl中25~30重量%となるように調製された。13C NMR実験は、プロトン共鳴周波数が400MHzであるJEOL ECS NMR分光計において実行された。定量的13C NMR実験は、27℃において、45°フリップ角度、パルス間6.6秒、64Kデータポイントおよび2400スキャンで、インバースゲートデカップリング実験を使用して行なわれた。全てのスペクトルは、0ppmにおいてTMSを参照された。スペクトルは、0.2-1Hzの線幅拡大で加工され、ベースライン修正は、マニュアル積分前に適用された。スペクトル全体は、次のように異なる積分面積のモル%を決定するために積分された:170~190ppm(芳香族C);30~29.5ppm(エプシロン炭素);15~14.5ppm(末端およびペンダントのプロピル基)14.5~14ppm-長鎖の末端におけるメチル(アルファ);12~10ppm(ペンダントおよび末端のエチル基)。全メチル含有量は、プロトンNMRから得られた。0~1.1ppmにおけるメチルシグナルは積分された。スペクトル全体は、メチルのモル%を決定するために積分された。ガスクロマトグラフィーから得られた平均炭素数は、モル%メチルを全メチルに変換するために使用された。
【0094】
6個未満、または7個未満、または8個未満のナフテン環のより小さいナフテン環構造の出現率は同様であるが、7個以上の環、または8+個の環、または9+個の環、または10+個の環を有するより大きいナフテン環構造の残留数が、曇り形成に対して安定であるベースストック中で減少するという、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴-質量分析(FTICR-MS)および/または電界脱離質量分析(FDMS)を使用する発見も組成物において予想外である。
【0095】
本明細書に報告されたFTICR-MS結果に関して、結果は、米国特許第9,418,828号明細書に記載される方法に従って作成された。米国特許第9,418,828号明細書に記載される方法は、分子イオン構造の分裂を生じずに石油飽和分子(538℃+分子を含む)をイオン化させるために、Agイオン錯体化によるレーザ脱離(LDI-Ag)を使用することを伴う。超高分解能フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析は、飽和-Agカチオンおよび対応する存在比の正確な元素式を決定するために適用される。飽和フラクション組成は、同族列および分子重量によって整列することができる。試料中の飽和環構造の含有量を決定することに関連する米国特許第9,418,828号明細書の部分は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0096】
本明細書に報告されたFDMS結果に関して、電界脱離(FD)は、分析物の気体状分子のイオン化をもたらす、希釈試料によってコーティングされたエミッタ(小さい「ウイスカ」が形成されるフィラメント)に高電位電界が適用されるソフトイオン化法である。FDによって生じた質量スペクトルは、分子ラジカルカチオンM、またはいくつかの場合、プロトン化分子イオン[M+H]によって支配される。FDMSが「n」ナフテン環を有する分子および「n+7」環を有する分子を識別することができないため、FDMSデータは、最も類似の試料からのFTICR-MSデータを使用することによって「修正」された。FDMS修正は、分子の特定の分類の未解像FDMSデータに、FTICR-MSからの「n」対「n+7」環の解像比を適用することによって行なわれた。従って、FDMSデータは、図中、「修正された」と示される。
【0097】
上記の組成物のベース油は、初期製造時曇りがなくかつ長期間経っても曇りがないままであるという利点をさらに提供することが見出された。これは、予想外であった高飽和重質ベースストックの従来技術以上に利点である。
【0098】
さらに、これらのベースストックは、限定されないが、魚油、エンジン油、グリース、ペーパーマシン油およびギヤオイルなどの配合された潤滑油を形成するために、添加剤とブレンドし得ることが見出された。これらの添加剤は、限定されないが、清浄剤、分散剤、抗酸化剤、粘度改質剤および流動点抑制剤を含む。そのようにブレンドされる場合、Mini-Rotary Viscometer(MRV)およびBrookfield試験などの標準低温試験によって測定される性能は、従来のベース油とブレンドされた配合物よりも優れていることが示された。
【0099】
酸化性能は、限定されないが、消泡剤、流動点抑制剤、抗酸化剤、防錆剤などの一般的な添加剤を使用して工業用オイルにブレンドされる場合、従来のベースストックと比較して、US Steel酸化試験などの標準酸化試験において優れた酸化性能を実証したことも見出された。
【0100】
界面特性、析出制御、保存性および毒性などの他の性能パラメータも調査され、従来のベース油と類似であるかまたはそれより良好である。
【0101】
添加剤とブレンドされることに加えて、本明細書に記載されるベースストックは、他のベースストックとブレンドされてベース油を製造することも可能である。これらの他のベースストックは、溶媒加工されたベースストック、水素化加工されたベースストック、合成ベースストック、Fisher-Tropschプロセスから誘導されたベースストック、PAOおよびナフテンベースストックを含む。さらにまたは代替的に、他のベースストックは、グループIベースストック、グループIIベースストック、グループIIIベースストック、グループIVベースストックおよび/またはグループVベースストックを含むことができる。さらにまたは代替的に、ブレンド用のさらに他の種類のベースストックは、ヒドロカルビル芳香族、アルキル化芳香族化合物、エステル(合成および/または再生可能エステルを含む)、ならびにまたは他の非従来型または非慣例型ベースストックを含むことができる。本発明のベースストックおよび他のベースストックのこれらのベース油ブレンドは、上記されたものなどの添加剤と組み合わせて、配合された潤滑油を製造することも可能である。
【0102】
他の添加剤
本開示において有用である配合潤滑油は、限定されないが、抗摩耗剤、分散剤、他の清浄剤、腐食抑制剤、防錆剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、抗焼付き剤、蝋改質剤、粘度指数向上剤、粘度改質剤、脱水添加剤、シール互換性剤、摩擦改質剤、潤滑剤、抗汚染剤、発色剤、消泡剤、抗乳化剤、乳化剤、濃厚化剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤などを含む、1種以上の他の一般的に使用される潤滑油性能添加剤を追加的に含有していてもよい。多く一般的に使用される添加剤の概説に関しては、Klamann,Lubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0 89573 177 0を参照されたい。M.W.Ranney著、Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ発行の「Lubricant Additives」(1973)も参照され、また米国特許第7,704,930号明細書も参照されたい。上記文献の開示は、全体として本明細書に組み込まれる。これらの添加剤は、5重量%~50重量%の範囲であってよい種々の量の希釈油と一緒に一般に送達される。
【0103】
潤滑油組成物において本開示と組み合わせて使用される性能添加剤の種類および量は、例示として本明細書に示された例によって限定されない。
【0104】
他の添加剤 - 清浄剤
本開示において有用である例示的な清浄剤は、例えば、アルカリ金属清浄剤、アルカリ土類金属清浄剤、または1種以上のアルカリ金属清浄剤および1種以上のアルカリ土類金属清浄剤の混合物を含む。典型的な清浄剤は、分子の長鎖疎水性部分と、分子のより小さいアニオン性または疎油性親水性部分とを含有するアニオン性材料である。清浄剤のアニオン性部分は、典型的に、有機酸、例えば、硫酸、カルボン酸、亜リン酸、フェノールまたはその混合物から誘導される。対イオンは、典型的に、アルカリ土類またはアルカリ金属である。
【0105】
実質的に化学両論的量の金属を含有する塩は、中性塩として記載され、かつ0~80の全塩基価(TBN、ASTM D2896によって測定される)を有する。多くの組成物は、過塩基性であり、過剰量の金属化合物(例えば、金属水酸化物または酸化物)と酸性気体(例えば、二酸化炭素)との反応によって達成される多量の金属塩基を含有する。有用な清浄剤は、中性、わずかに過塩基性、または高度に過塩基性であり得る。これらの清浄剤は、中性、過塩基性、高度に過塩基性のサリチル酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、カルシウムフェネートおよび/またはサリチル酸マグネシウム、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムフェネートの混合物で使用可能である。TBNの範囲は、0程度の低値~600程度の高値を含む低、中~高TBN生成物で変動することができる。低、中、高TBNの混合は、カルシウムおよびマグネシウム金属ベースの清浄剤の混合物とともに使用可能であり、かつスルホン酸塩、フェネート、サリチル酸塩およびカルボン酸塩を含む。2の洗浄剤対金属比および5程度の高い洗浄剤対金属比と組み合わせて、1の洗浄剤混合物対金属比を使用することができる。ホウ酸塩清浄剤も使用可能である。
【0106】
アルカリ土類フェネートは、清浄剤の別の有用な分類である。これらの清浄剤は、アルカリ土類金属の水酸化物または酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)、BaO、Ba(OH)、MgO、Mg(OH))とアルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールとを反応させることによって製造することができる。有用なアルキル基は、直鎖または分枝鎖C~C30アルキル基、好ましくはC~C20またはその混合物を含む。適切なフェノールの例は、イソブチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどを含む。出発アルキルフェノールが、それぞれ独立して、直鎖または分枝鎖である2種以上のアルキル置換基を含有し得、かつ0.5~6重量パーセントが使用可能であることは留意すべきである。非硫化アルキルフェノールが使用される場合、硫化生成物は、当技術分野において周知の方法によって入手され得る。これらの方法は、アルキルフェノールおよび硫化剤(元素硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄などを含む)の混合物を加熱し、次いで硫化フェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることを含む。
【0107】
カルボン酸の金属塩も清浄剤として有用である。カルボン酸清浄剤は、塩基性金属化合物と少なくとも1種のカルボン酸とを反応させて、反応生成物から遊離水を除去することによって調製され得る。これらの化合物は、望ましいTBN値を生じるために過塩基性であってもよい。サリチル酸から製造された清浄剤は、カルボン酸から誘導される清浄剤の1つの好ましい分類である。有用なサリチル酸塩は、長鎖アルキルサリチル酸を含む。組成物の1つの有用な系統群は、次式
【化1】
(式中、Rは、1~30個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、1~4の整数であり、かつMは、アルカリ土類金属である)である。好ましいR基は、少なくともC11、好ましくはC13以上のアルキル鎖である。Rは、清浄剤の機能に干渉しない置換基で任意選択的に置換されていてもよい。Mは、好ましくは、カルシウム、マグネシウムまたはバリウムである。より好ましくは、Mはカルシウムである。
【0108】
ヒドロカルビル置換サリチル酸は、コルベ反応によってフェノールから調製され得る(米国特許第3,595,791号明細書参照)。ヒドロカルビル置換サリチル酸の金属塩は、水またはアルコールなどの極性溶媒中で金属塩の二重分解によって調製され得る。
【0109】
アルカリ土類金属リン酸塩も清浄剤として使用され、かつ当技術分野において既知である。
【0110】
清浄剤は、単一清浄剤であっても、またはハイブリッドもしくは複合清浄剤として知られているものであってもよい。後者の清浄剤は、個々の材料をブレンドすることを必要とせずに2種の清浄剤の特性を提供することができる。米国特許第6,034,039号明細書を参照されたい。
【0111】
好ましい清浄剤は、カルシウムフェネート、スルホン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、マグネシウムフェナート、スルホン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウムおよび他の関連成分(ホウ酸塩清浄剤を含む)ならびにその混合物を含む。清浄剤の好ましい混合物は、スルホン酸マグネシウムおよびサリチル酸カルシウム、スルホン酸マグネシウムおよびスルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウムおよびカルシウムフェナート、カルシウムフェナートおよびサリチル酸カルシウム、カルシウムフェナートおよびスルホン酸カルシウム、カルシウムフェナートおよびサリチル酸マグネシウム、カルシウムフェナートおよびマグネシウムフェナートを含む。
【0112】
別の清浄剤の系統群は、油溶性無灰非イオン性清浄剤である。典型的な非イオン性清浄剤は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンアルキルエーテルまたはノニルフェノールエトキシレートである。参考のために、「Nonionic Surfactants:Physical Chemistry」Martin J.Schick,CRC Press;2 edition(1987年3月27日)を参照されたい。これらの清浄剤は、エンジン潤滑油配合物において、あまり一般的ではないが、エステルベースストックにおける改善された溶解度などの多くの利点を提供する。炭化水素中に可溶性の非イオン性清浄剤は、一般に、10以下の親水-親油性バランス(HLB)値を有する。
【0113】
エンジンノッキングおよび低速早期点火を含む早期点火に対する灰堆積の影響を最小化するために、本開示において最も好ましい清浄剤は、10以下の親水-親油性バランス(HLB)値を有する無灰非イオン性清浄剤である。これらの清浄剤は、例えば、Croda Inc.から商標名「Alarmol PS11E」および「Alarmol PS15E」で、例えば、Dow Chemical Co.から商標名「Ecosurf EH-3」、「Tergitol 15-S-3」、「Tergitol L-61」、「Tergitol L-62」、「Tergitol NP-4」、「Tergitol NP-6」、「Tergitol NP-7」、「Tergitol NP-8」、「Tergitol NP-9」、「Triton X-15」および「Triton X-35」で商業的に入手可能である。
【0114】
本開示の潤滑油中の清浄剤濃度は、潤滑油の全重量に基づいて0.5~6.0重量%、好ましくは0.6~5.0重量%、より好ましくは0.8重量%~4.0重量%の範囲であり得る。
【0115】
他の添加剤 - 分散剤
エンジン稼働中に不油溶性の酸化副産物が生じる。分散剤は、溶液中にこれらの副産物を保持するために役立ち、したがって金属表面上でのそれらの堆積を減少させる。潤滑油の配合物中で使用される分散剤は、性質が無灰または灰形成性であってよい。好ましくは、分散剤は無灰性である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に実質的に灰を形成しない有機材料である。例えば、非金属含有またはホウ酸塩金属を含まない分散剤が無灰であると考えられる。対照的に、上記の金属含有清浄剤は、燃焼時に灰を形成する。
【0116】
適切な分散剤は、典型的に、比較的高分子量炭化水素鎖に付加された極性基を含有する。極性基は、典型的に、窒素、酸素またはリンの少なくとも1つの元素を含有する。典型的な炭化水素鎖は、50~400個の炭素原子を含む。
【0117】
分散剤の特に有用な分類は、典型的に、長鎖ヒドロカルビル置換コハク酸化合物、通常、ヒドロカルビル置換コハク酸無水物と、ポリヒドロキシまたはポリアミノ化合物との反応によって製造される。油中での溶解度を与える分子の親油性部分を構成する長鎖ヒドロカルビル基は、通常、ポリイソブチレン基である。この種類の分散剤の多くの例は、商業的にかつ文献において周知である。そのような分散剤を記載する米国特許の例は、米国特許第3,172,892号明細書、同第3,215,707号明細書、同第3,219,666号明細書、同第3,316,177号明細書、同第3,341,542号明細書、同第3,444,170号明細書、同第3,454,607号明細書、同第3,541,012号明細書、同第3,630,904号明細書、同第3,632,511号明細書、同第3,787,374号明細書および同第4,234,435号明細書である。他の種類の分散剤は、米国特許第3,036,003号明細書、同第3,200,107号明細書、同第3,254,025号明細書、同第3,275,554号明細書、同第3,438,757号明細書、同第3,454,555号明細書、同第3,565,804号明細書、同第3,413,347号明細書、同第3,697,574号明細書、同第3,725,277号明細書、同第3,725,480号明細書、同第3,726,882号明細書、同第4,454,059号明細書、同第3,329,658号明細書、同第3,449,250号明細書、同第3,519,565号明細書、同第3,666,730号明細書、同第3,687,849号明細書、同第3,702,300号明細書、同第4,100,082号明細書および同第5,705,458号明細書に記載される。分散剤のさらなる記載は、例えば、この目的で参照される欧州特許第471071号明細書に見出され得る。
【0118】
ヒドロカルビル置換コハク酸およびヒドロカルビル置換無水コハク酸誘導体は、有用な分散剤である。特に、好ましくは、20~50個の炭素原子の炭化水素置換基を有することが有用となる可能性もあるが、炭化水素置換基中に少なくとも50個の炭素原子を有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1等量のアルキレンアミンとの反応によって調製されたスクシンイミド、コハク酸エステルまたはコハク酸エステルアミドが特に有用である。
【0119】
スクシンイミドは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸およびアミン間の縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミン次第で変動可能である。例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸対TEPAのモル比は、1:1~5:1で変動可能である。代表的な例は、米国特許第3,087,936号明細書、同第3,172,892号明細書、同第3,219,666号明細書、同第3,272,746号明細書、同第3,322,670号明細書および同第3,652,616号明細書、同第3,948,800号明細書、ならびにカナダ国特許第1,094,044号明細書に示される。
【0120】
コハク酸エステルは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアルコールまたはポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコールまたはポリオールによって変動可能である。例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸およびペンタエリトリトールの縮合物は、有用な分散剤である。
【0121】
コハク酸エステルアミドは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。例えば、適切なアルカノールアミンは、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミンおよびポリアルケニルポリアミン、例えば、ポリエチレンポリアミンを含む。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。代表的な例は、米国特許第4,426,305号明細書に示される。
【0122】
前段落で使用されるヒドロカルビル置換無水コハク酸の分子量は、典型的に、800~2,500の範囲であろう。上記生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒト、オレイン酸などのカルボン酸などの種々の試薬と後反応させることができる。上記生成物は、一般に、ホウ酸、ホウ酸エステルまたは高度にホウ酸塩化された分散剤などのホウ素化合物と後反応させて、分散剤反応生成物の1モルあたり0.1~5モルのホウ素を一般に有するホウ酸塩分散剤を形成することが可能である。
【0123】
マンニッヒ塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒトおよびアミンの反応から製造される。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,767,551号明細書を参照されたい。プロセス助剤および触媒、例えば、オレイン酸およびスルホン酸も反応混合物の一部であり得る。アルキルフェノールの分子量は、800~2,500の範囲である。代表的な例は、米国特許第3,697,574号明細書、同第3,703,536号明細書、同第3,704,308号明細書、同第3,751,365号明細書、同第3,756,953号明細書、同第3,798,165号明細書および同第3,803,039号明細書に示される。
【0124】
本開示において有用な典型的な高分子量脂肪酸変性マンニッヒ縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族またはHNR基含有反応物から調製可能である。
【0125】
ヒドロカルビル置換アミン無灰分散剤添加剤は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,275,554号明細書、同第3,438,757号明細書、同第3,565,804号明細書、同第3,755,433号明細書、同第3,822,209号明細書および同第5,084,197号明細書を参照されたい。
【0126】
好ましい分散剤は、モノスクシンイミド、ビススクシンイミド、ならびに/またはモノスクシンイミドおよびビススクシンイミドの混合物からのそれらの誘導体を含むホウ酸塩および非ホウ酸塩スクシンイミドを含み、ここで、ヒドロカルビルスクシンイミドは、500~5000、もしくは1000~3000、もしくは1000~2000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基、またはそのようなヒドロカルビレン基と、多くの場合に高末端ビニル基との混合物から誘導される。他の好ましい分散剤は、コハク酸エステルおよびアミド、アルキルフェノール-ポリアミン対マンニッヒ付加物、それらのキャップド誘導体および他の関連成分を含む。
【0127】
ポリメタクリレートまたはポリアクリレート誘導体は、分散剤の別の分類である。これらの分散剤は、典型的に、窒素含有モノマーと、エステル基中に5~25個の炭素原子を含有するメタクリル酸またはアクリル酸エステルとを反応させることによって調製される。代表的な例は、米国特許第2,100,993号明細書および同第6,323,164号明細書に示される。ポリメタクリレートおよびポリアクリレート分散剤は、通常、多官能性粘度指数向上剤として使用される。潤滑油分散剤または燃料清浄剤として、より低分子量の変形を使用することができる。
【0128】
多くの他の従来の分散剤は、あまり溶解性ではないため、ポリメタクリレートまたはポリアクリレート分散剤の使用が非芳香族ジカルボン酸の極性エステル、好ましくはアジピン酸エステルにおいて好ましい。本開示におけるポリオールエステルのための好ましい分散剤は、ポリメタクリレートおよびポリアクリレート分散剤を含む。
【0129】
そのような分散剤は、0.1~20重量パーセント、好ましくは0.5~8重量パーセント、またはより好ましくは0.5~4重量パーセントの量で使用されてもよい。分散剤原子の炭化水素数は、C60~C1000、またはC70~C300、またはC70~C200の範囲であり得る。これらの分散剤は、中性および塩基性窒素の両方、および両方の混合物を含んでいてよい。分散剤は、ボレートおよび/または環式カルボネートによってエンドキャップされ得る。
【0130】
なお他の潜在的な分散剤は、少なくとも900の分子量を有し、かつ1ポリアルケニル部分あたり平均で1.3~1.7個の官能基を有する、ポリアルケニルなどのポリアルケニルを含むことができる。さらに他の適切なポリマーは、イソブテンおよび/またはスチレンなどのモノマーのカチオン性重合によって形成されたポリマーを含むことができる。
【0131】
他の添加剤 - 抗摩耗剤
金属アルキルチオリン酸塩、特に金属成分が亜鉛である金属ジアルキルジチオリン酸塩、または亜鉛ジアルキルジチオリン酸塩(ZDDP)は、本開示の潤滑油の有用な成分である。ZDDPは、第1級アルコール、第2級アルコールまたはその混合物から誘導することができる。ZDDP化合物は、一般に、次式
Zn[SP(S)(OR)(OR)]
(式中、RおよびRは、C~C18アルキル基、好ましくはC~C12アルキル基である)である。これらのアルキル基は、直鎖であっても、または分枝鎖であってもよい。ZDDPにおいて使用されるアルコールは、2-プロパノール、ブタノール、第2級ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、例えば、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、アルキル化フェノールなどであり得る。第2級アルコールの混合物または第1級および第2級アルコールの混合物が好ましいことができる。アルキルアリール基も使用されてよい。
【0132】
商業的に入手可能な好ましい亜鉛ジチオリン酸塩は、例えば、The Lubrizol Corporationから商標名「LZ 677A」、「LZ 1095」および「LZ 1371」で入手可能であるもの、例えば、Chevron Oroniteから商標名「OLOA 262」で入手可能であるもの、ならびに例えばAfton Chemicalから商標名「HITEC 7169」で入手可能であるものなどの第2級亜鉛ジチオリン酸塩を含む。
【0133】
ZDDPは、典型的に、潤滑油の全重量に基づいて0.4重量%~1.2重量%、好ましくは0.5重量%~1.0重量%、より好ましくは0.6重量%~0.8重量%の量で使用されるが、多くの場合、より多くの量またはより少ない量が有利に使用可能である。好ましくは、ZDDPは、第2級ZDDPであり、かつ潤滑油の全重量に基づいて0.6重量%~1.0重量%の量で存在する。
【0134】
より一般的に、他の種類の適切な抗摩耗性添加剤は、例えば、カルボン酸の金属塩を含むことができる。金属は、IUPAC周期表の10族、11族または12族からの1種以上の金属などの遷移金属または遷移金属の混合物であり得る。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、芳香族カルボン酸またはその混合物であり得る。
【0135】
低リンエンジン油配合物は、本開示に含まれる。このような配合物のために、リン含有量は、典型的に、0.12重量%未満、好ましくは0.10重量%未満、最も好ましくは0.085重量%未満である。低リンは、摩擦改質剤との組合せで好ましい可能性がある。
【0136】
他の添加剤 - 粘度指数向上剤
粘度指数向上剤(VI向上剤、粘度改質剤および粘度向上剤としても知られている)は、本開示の潤滑油組成物中に含まれ得る。粘度指数向上剤は、潤滑油に高温および低温実施可能性を提供する。これらの添加剤は、高温における剪断安定性および低温における容認可能な粘度を与える。
【0137】
適切な粘度指数向上剤は、高分子量炭化水素、ポリエステル、ならびに粘度指数向上剤および分散剤の両方として作用する粘度指数向上剤分散剤を含む。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000~1,500,000、より典型的に約20,000~1,200,000、さらにより典型的に約50,000~1,000,000である。ポリメタクリレートまたはポリアクリレート粘度指数向上剤の典型的な分子量は、約50,000未満である。
【0138】
適切な粘度指数向上剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィンまたはアルキル化スチレンの直鎖または星状ポリマーおよびコポリマーである。ポリイソブチレンは、一般的に使用される粘度指数向上剤である。別の適切な粘度指数向上剤は、そのいくつかの配合物が流動点抑制剤としても作用するポリメタクリレート(例えば、種々の鎖長のアルキルメタクリレートのコポリマー)である。他の適切な粘度指数向上剤は、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、スチレンおよびイソプレンの水素化ブロックコポリマー、ならびにポリアクリレート(例えば、種々の鎖長のアクリレートのコポリマー)を含む。具体例は、50,000~200,000の分子量のスチレン-イソプレンまたはスチレン-ブタジエンベースのポリマーを含む。
【0139】
オレフィンコポリマーは、Chevron Oronite Company LLCから(「PARATONE(登録商標)8921」および「PARATONE(登録商標)8941」などの)商標名「PARATONE(登録商標)」で、Afton Chemical Corporationから(「HiTEC(登録商標)5850B」などの)商標名「HiTEC(登録商標)」で、ならびにThe Lubrizol Corporationから商標名「Lubrizol(登録商標)7067C」で商業的に入手可能である。水素化ポリイソプレン星状ポリマーは、例えば、Infineum International Limitedから商標名「SV200」および「SV600」で商業的に入手可能である。水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーは、例えば、Infineum International Limitedから商標名「SV50」で商業的に入手可能である。
【0140】
本開示における好ましい粘度指数向上剤は、非芳香族ジカルボン酸のエステル、好ましくはアルキルアジピン酸エステルがベースストックとして使用される場合、分散剤ポリメタクリレートおよび分散剤ポリアクリレートポリマーを含むポリメタクリレートまたはポリアクリレートポリマーである。これらのポリマーは、非芳香族ジカルボン酸のエステル、好ましくはアルキルアジピン酸エステルにおける溶解度における有意な利点を提供する。ポリメタクリレートまたはポリアクリレートポリマーは、Evnoik Industriesから商標名「Viscoplex(登録商標)」(例えば、Viscoplex 6-954)で入手可能である直鎖ポリマー、またはLubrizol Corporationから商標名Asteric(商標)(例えば、Lubrizol 87708およびLubrizol 87725)で入手可能である星状ポリマーであり得る。
【0141】
本開示の実施形態において、粘度指数向上剤は、配合油または潤滑エンジン油の全重量に基づいて1.0~約20重量%、好ましくは5~約15重量%、より好ましくは8.0~約12重量%の量で使用されてよい。
【0142】
本明細書で使用される場合、粘度指数向上剤濃度は、「送達」基準に基づいて与えられる。典型的に、活性ポリマーは、希釈油と一緒に送達される。「送達」粘度指数向上剤は、典型的に、「送達」ポリマー濃度において、ポリメタクリレートもしくはポリアクリレートポリマーに関して20重量%~75重量%の活性ポリマー、またはオレフィンコポリマー水素化ポリイソプレン星状ポリマーもしくは水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーに関して8重量%~20重量%の活性ポリマーを含有する。
【0143】
他の添加剤 - 酸化防止剤
酸化防止剤は、使用中のベースストックの酸化分解を遅らせる。このような分解は、金属表面上での堆積、スラッジの存在、または潤滑油中の粘度の増加をもたらし得る。当業者は、潤滑油組成物において有用な多種多様な酸化防止剤を知っている。例えば、KlamannのLubricants and Related Products(前掲)、ならびに米国特許第4,798,684号明細書および同第5,084,197号明細書を参照されたい。
【0144】
有用な酸化防止剤は、ヒンダードフェノールを含む。これらのフェノール系酸化防止剤は、無灰(無金属)フェノール系化合物、または特定のフェノール化合物の中性もしくは塩基性金属塩であってもよい。典型的なフェノール系酸化防止剤化合物は、立体障害型ヒドロキシル基を含有するものであるヒンダードフェノールであり、かつこれらは、ヒドロキシル基が互いにoまたはp位にあるジヒドロキシアリール化合物のそれらの誘導体を含む。典型的なフェノール系酸化防止は、C6+アルキル基によって置換されたヒンダードフェノール、およびこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体を含む。この種類のフェノール系材料の例は、2-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール、2-t-ブチル-4-オクチルフェノール、2-t-ブチル-4-ドデシルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-ドデシルフェノール、2-メチル-6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール、および2-メチル-6t-ブチル-4-ドデシルフェノールである。他の有用なヒンダードモノフェノール系酸化防止剤は、例えば、ヒンダード2,6-ジアルキル-フェノールプロピオン酸エステル誘導体を含み得る。ビス-フェノール酸化防止剤も本開示との組合せで有利に使用され得る。オルト型フェノールの例は、2,2’-ビス(4-ヘプチル-6-t-ブチル-フェノール)、2,2’-ビス(4-オクチル-6-t-ブチル-フェノール)、および2,2’-ビス(4-ドデシル-6-t-ブチル-フェノール)を含む。パラ型ビスフェノールは、例えば、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)および4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)を含む。
【0145】
有効量の1種以上の触媒酸化防止剤も使用されてよい。触媒酸化防止剤は、有効量のa)1種以上の油溶性多金属有機化合物、および有効量のb)1種以上の置換N,N’-ジアリール-o-フェニレンジアミン化合物、もしくはc)1種以上のヒンダードフェノール化合物;またはb)およびc)の両方の組合わせを含む。触媒酸化防止剤は、参照によって全体的に組み込まれる米国特許第8,048,833号明細書に記載される。
【0146】
使用され得る非フェノール系酸化防止剤は、芳香族アミン酸化防止剤を含み、これらは、そのまま、またはフェノールと組み合わせて使用されてよい。非フェノール系酸化防止剤の典型的な例は、次のもの:Rが脂肪族、芳香族または置換芳香族基であり、Rが芳香族または置換芳香族基であり、かつR10がH、アルキル、アリールまたはR11S(O)XR12であり、R11がアルキレン、アルケニレンまたはアルアルキレン基であり、R12が高級アルキル基またはアルケニル、アリールもしくはアルカリール基であり、かつxが0、1または2である、式R10Nの芳香族モノアミンなどのアルキル化および非アルキル化芳香族アミンを含む。脂肪族基Rは、1~20個の炭素原子を含有してもよく、好ましくは6~12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は脂肪族基である。好ましくは、RおよびRの両方が芳香族または置換芳香族基であり、かつ芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基RおよびRは、Sなどの他の基と一緒に結合していてもよい。
【0147】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例は、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルを含む。一般に、脂肪族基は、15個以上の炭素原子を含有しないであろう。本組成物において有用なアミン酸化防止剤の一般的な種類は、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミダジベンジルおよびビフェニルフェニレンジアミンを含む。2種以上の芳香族アミンの混合物も有用である。ポリマーアミン酸化防止剤も使用可能である。本開示において有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例は、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン、t-オクチルフェニルーアルファ-ナフチルアミン、フェニル-アルファナフチルアミン、およびp-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミンを含む。
【0148】
本開示における好ましいアミン酸化防止剤は、1種以上の置換もしくはヒドロカルビル置換ジフェニルアミン、1種以上の未置換もしくはヒドロカルビル置換フェニルナフチルアミン、または1種以上の未置換もしくはヒドロカルビル置換ジフェニルアミンおよびフェニルナフチルアミンの両方の重合反応生成物であるポリマーまたはオリゴマーアミンを含む。
【0149】
他のより広範囲のオリゴマーは、本開示の範囲内にあるが、配合物A、B、CおよびDの材料が好ましい。例は、米国特許第8,492,321号明細書にも見ることができる。
【0150】
ポリマーまたはオリゴマーアミンは、Nyco S.A.からNycoperf AO337の商標名で商業的に入手可能である。ポリマーまたはオリゴマーアミン酸化防止剤は、存在し得るいずれかの未重合アリールアミンまたはいずれかの付加酸化防止剤も除いて、重合アミン酸化防止剤の0.5~10重量%(活性成分)、好ましくは2~5重量%(活性成分)の範囲の量で存在する。硫化アルキルフェノールおよびそのアルカリまたはアルカリ土類金属塩も有用な酸化防止剤である。
【0151】
好ましい酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、アリールアミンも含む。これらの酸化防止剤は、種類によってまたは互いと組み合わせて使用され得る。このような添加剤は、0.01~5重量%、好ましくは0.01~1.5重量%、より好ましくは0~1.5重量%未満、より好ましくは0~1重量%未満である。
【0152】
他の添加剤 - 流動点抑制剤(PPD)
必要に応じて、(潤滑油流動性向上剤としても知られている)従来の流動点抑制剤を本開示の組成物に添加してもよい。流動点抑制剤は、流体が流れるであろうまたは流動することが可能な最低温度を低下させるために、本開示の潤滑組成物に添加されてよい。適切な流動点抑制剤の例は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィン蝋および芳香族化合物の縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、ならびにジアルキルフマレート、脂肪酸のビニルエステルおよびアリルビニルエーテルのターポリマーを含む。米国特許第1,815,022号明細書、同第2,015,748号明細書、同第2,191,498号明細書、同第2,387,501号明細書、同第2,655,479号明細書、同第2,666,746号明細書、同第2,721,877号明細書、同第2,721,878号明細書および同第3,250,715号明細書は、有用な流動点抑制剤および/またはその調製を記載する。このような添加剤は、約0.01~5重量%、好ましくは約0.01~1.5重量%の量で使用されてよい。
【0153】
他の添加剤 - シール互換性剤
シール互換性剤は、流体中の化学反応またはエラストマー中の物理変化を引き起こすことにより、エラストマーシールの膨張を補助する。潤滑油のための適切なシール互換性剤は、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、ブチルベンジルフタレート)およびポリブテニル無水コハク酸を含む。このような添加剤は、約0.01~3重量%、好ましくは約0.01~2重量%の量で使用されてよい。
【0154】
他の添加剤 - 消泡剤
消泡剤は、潤滑油組成物に有利に添加されてよい。これらの試薬は、安定した発泡体の形成を遅らせる。シリコーンおよび有機ポリマーが典型的な消泡剤である。例えば、ケイ素油またはポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサンが消泡剤特性を提供する。消泡剤は商業的に入手可能であり、かつ抗乳化剤などの他の添加剤と一緒に通常わずかな量で使用されてよく、通常、これらの添加剤の組み合わせた量は、1重量%未満、多くの場合に0.1重量%未満である。
【0155】
他の添加剤 - 抑制剤および防錆剤添加剤
防錆剤添加剤(または腐食抑制剤)は、水または他の汚染物質による化学的攻撃に対して潤滑化金属表面を保護する添加剤である。これらの様々なものが商業的に入手可能である。
【0156】
防錆剤添加剤の1種は、油膜によってそれを保護しながら、金属表面を優先的に湿潤させる極性化合物である。防錆剤添加剤の別の種類は、油のみが金属表面に接触するように、油中水型乳濁液中にそれを組み込むことによって水を吸収する。防錆剤添加剤のさらに別の種類は、非反応性表面を生じるように金属に化学的に接着する。適切な添加剤の例は、亜鉛ジチオホスフェート、金属フェノラート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸およびアミンを含む。このような添加剤は、約0.01~5重量%、好ましくは約0.01~1.5重量%の量で使用されてよい。
【0157】
他の添加剤 - 摩擦改質剤
摩擦改質剤は、いずれかの潤滑油によって潤滑化された表面の摩擦係数を変更することができる、いずれかの材料またはそのような材料を含有する流体である。潤滑化された表面の摩擦係数を変化させるためにベースストック、配合潤滑油組成物または機能性流体の能力を変更させる、摩擦減少剤としても知られている摩擦改質剤、または潤滑性試薬もしくは油性試薬および他のそのような試薬は、必要に応じて本開示のベースストックまたは潤滑油組成物と一緒に有効に使用され得る。摩擦係数を低下させる摩擦改質剤は、本開示のベースストックおよび潤滑油組成物と組み合わせて特に有利である。
【0158】
例示的な摩擦改質剤は、例えば、有機金属化合物もしくは材料、またはその混合物を含み得る。本開示の潤滑エンジン油配合物において有用な例示的な有機金属摩擦改質剤は、例えば、モリブデンアミン、モリブデンジアミン、有機タングステン、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンアミン錯体、カルボン酸モリブデンなどおよびその混合物を含む。類似のタングステンベースの化合物が好ましいこともあり得る。
【0159】
本開示の潤滑エンジン油配合物中で有用な他の例示的な摩擦改質剤は、例えば、アルコキシル化脂肪酸エステル、アルカノールアミド、ポリオール脂肪酸エステル、ホウ酸塩グリセロール脂肪酸エステル、脂肪アルコールエーテルおよびその混合物を含む。
【0160】
例示的なアルコキシル化脂肪酸エステルは、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、脂肪酸ポリグリコールエステルなどを含む。これらは、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシブチレンステアレート、ポリオキシエチレンイソステアレート、ポリオキシプロピレンイソステアレート、ポリオキシエチレンパルミテートなどを含むことができる。
【0161】
例示的なアルカノールアミドは、例えば、ラウリン酸ジエチルアルカノールアミド、パルミン酸(palmic acid)ジエチルアルカノールアミドなどを含む。これらは、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ステアリン酸ジエチルアルカノールアミド、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ポリエトキシル化ヒドロカルビルアミド、ポリプロポキシル化ヒドロカルビルアミドなどを含むことができる。
【0162】
例示的なポリオール脂肪酸エステルは、例えば、グリセロールモノオレエート、飽和モノ-、ジ-およびトリグリセリドエステル、グリセロールモノステアレートなどを含む。これらは、ポリオールエステル、ヒドロキシル含有ポリオールエステルなどを含むことができる。
【0163】
例示的なホウ酸塩グリセロール脂肪酸エステルは、例えば、ホウ酸塩グリセロールモノオレエート、ホウ酸塩飽和モノ-、ジ-およびトリグリセリドエステル、ホウ酸塩グリセロールモノステアレートなどを含む。グリセロールポリオールに加えて、これらは、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビタンなどを含むことができる。これらのエステルは、ポリオールモノカルボキシレートエステル、ポリオールジカルボキシレートエステルおよび場合によりポリオールトリカルボキシレートエステルであり得る。好ましくは、グリセロールモノオレエート、グリセロールジオレエート、グリセロールトリオレエート、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレートおよびグリセロールトリステアレート、ならびに対応するグリセロールモノパルミテート、グリセロールジパルミテートおよびグリセロールトリパルミテート、ならびにそれぞれのイソステアレート、リノレエートなどであり得る。場合により、グリセロールエステルは、これらのいずれかを含有する混合物と同様に好ましいことがあり得る。ポリオールのエトキシル化、プロポキシル化ブトキシル化脂肪酸エステルは、特に基本的ポリオールとしてグリセロールを使用する場合に好ましいことがあり得る。例示的な脂肪アルコールエーテルは、例えば、ステアリルエーテル、ミリスチルエーテルなどを含む。アルコールは、C3~C5の炭素数を有するものを含めて、対応する脂肪アルキルエーテルを形成するために、エトキシル化、プロポキシル化またはブトキシル化され得る。基本的アルコール部分は、好ましくは、ステアリル、ミリスチル、C11~C13炭化水素、オレイル、イソステアリルなどであり得る。
【0164】
摩擦改質剤の有用な濃度は、0.01重量%~5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%、または約0.1重量%~約1.5重量%、または約0.1重量%~約1重量%の範囲であってよい。モリブデン含有材料の濃度は、多くの場合、Mo金属濃度に関して記載される。Moの有利な濃度は、25ppm~2000ppm以上の範囲であってよく、かつ多くの場合、好ましい範囲は、50~1500ppmである。全種類の摩擦改質剤は、単独でまたは本開示の材料との混合物中で使用されてよい。多くの場合、2種以上の摩擦改質剤の混合物または別の表面活性材料との摩擦改質剤の混合物も好ましい。
【0165】
潤滑油組成物が上記添加剤の1種以上を含有する場合、添加剤は、その意図された機能を実行するために十分な量で組成物中にブレンドされる。本開示において有用であるこのような添加剤の典型的な量は、以下の表1に示される。添加剤の多くが、特定の量のベースストック希釈剤と一緒に、1種以上の添加剤を含有する濃縮液として添加剤製造者から発送されることは留意される。したがって、以下の表中の重量および本明細書に記載された他の量は、(成分の非希釈剤部分である)有効成分の量に関する。以下に示される重量パーセント(重量%)は、潤滑油組成物の全重量に基づくものである。
【0166】
【表1】
【0167】
上記添加剤は、全て商業的に入手可能な材料である。これらの添加剤は、独立して添加されてよいが、通常、潤滑油添加剤の供給元から入手可能であるパッケージ中で事前に組み合わせられる。種々の成分、大きさおよび特徴を有する添加剤パッケージが入手可能であり、適切なパッケージの選択は、最大の組成物の必要な使用を考慮に入れるであろう。
【0168】
構造例
図1は、脱アスファルト化油供給原料110の加工のための第1の構造を概略的に示す。任意選択的に、脱アスファルト化油供給原料110は、減圧軽油沸点範囲部分を含むことができる。図1中、脱アスファルト化油供給原料110は、第1の水素化加工段階120において水素化処理および/または水素化分解触媒に曝露される。第1の水素化加工段階120からの水素化加工された溶出物は、1種以上の燃料フラクション127および370℃+フラクション125へと分離することが可能である。370℃+フラクション125は、1種以上の軽質ニュートラルまたは重質ニュートラルベースストック生成物132およびブライトストック生成物134などの1種以上の潤滑油ベースストック生成物を形成するために溶媒脱蝋130され得る。
【0169】
図2は、脱アスファルト化油供給原料110を加工するための第2の構造を概略的に示す。図2中、溶媒脱蝋段階130は任意選択的である。第1の水素化加工段階120からの溶出物は、任意の溶媒脱蝋段階130のためのインプットとして使用することが可能である、少なくとも1種以上の燃料フラクション127、第1の370℃+部分245および第2の370℃+部分225を形成するために分離することができる。第1の370℃+部分245は、第2の水素化加工段階250のためのインプットとして使用することができる。第2の水素化加工段階は、触媒脱蝋、芳香族飽和を実行するため、任意のさらなる水素化加工を実行するためのスイート水素化加工段階に対応し得る。図2中、第2の水素化加工段階250からの触媒脱蝋アウトプット255の少なくとも一部253は、溶媒脱蝋260されて、少なくとも510℃のT10沸点を有しかつグループIIブライトストックに対応する、少なくとも溶媒加工された潤滑油沸点範囲生成物265を形成することができる。
【0170】
図3は、グループIIブライトストックを製造するための別の構造を概略的に示す。図3中、第2の水素化加工段階250からの触媒脱蝋アウトプット355の少なくとも一部353は、溶媒脱蝋370されて、少なくとも510℃のT10沸点を有しかつグループIIブライトストックに対応する、少なくとも加工された潤滑油沸点範囲生成物375を形成することができる。
【0171】
図6は、グループIIブライトストックを製造するための別の構造を概略的に示す。図6中、減圧残油供給原料675および脱アスファルト化溶媒676は、脱アスファルト化ユニット680中に通過する。いくつかの態様において、脱アスファルト化ユニット680は、プロパン脱アスファルト化を実行することができるが、他の態様において、C4+溶媒を使用することができる。脱アスファルト化ユニット680は、ロックまたはアスファルトフラクション682および脱アスファルト化油610を製造することができる。任意選択的に、脱アスファルト化油610は、第1の(サワー)水素化加工段階620に導入される前に別の減圧軽油沸点範囲供給原料671と組み合わせることができる。水素化加工段階620からの溶出物の低沸点部分627は、1種以上のナフサフラクションおよび/または蒸留物フラクションとして、さらなる使用および/または加工のために分離することができる。水素化加工溶出物の高沸点部分625は、a)第2の(スイート)水素化加工段階650に通過させ、かつ/またはb)燃料油または燃料油ブレンドストックなどの燃料としての使用のために加工系から引き出す626ことができる。第2の水素化加工段階650は、1種以上の燃料フラクション657、および1種以上のブライトストックフラクションなどの1種以上の潤滑油ベースストックフラクション655を形成するために分離することができる溶出物を製造することができる。
【実施例
【0172】
実施例1
図2に類似の構造を使用して、ブタン脱アスファルト化から形成された脱アスファルト化油を加工した(55重量%の脱アスファルト化油収率)。脱アスファルト化油の特性を表2に示す。
【0173】
【表2】
【0174】
表2中の脱アスファルト化油は、次に、0.2時間-1LHSV、8000scf/bの処理気体速度、371℃の温度、および2250psigの圧力で、50体積%の脱金属化触媒、42.5体積%の水素化処理触媒および7.5体積%の水素化分解触媒の触媒充てんにおいて加工された。脱金属化触媒は、商業的に入手可能な大細孔担持脱金属化触媒であった。水素化処理触媒は、商業的に入手可能な担持NiMo水素化処理触媒および商業的に入手可能なバルクNiMo触媒の積層床であった。水素化分解触媒は、産業において使用される標準的な蒸留物選択的触媒であった。このような触媒は、典型的に、ゼオライト/アルミナ担体上のNiMoまたはNiWを含む。このような触媒は、典型的に40重量%未満の34.38オングストローム未満の単位格子径を有するゼオライトを有する。好ましいゼオライト含有量は、25重量%未満であり得、かつ/または好ましい単位格子径は、24.32オングストローム未満であり得る。このような触媒の活性は、ゼオライトの単位格子径と関係がある可能性があり、従って、触媒の活性は、ゼオライトの量を選択することによって調整することができる。水素化加工された脱アスファルト化油の少なくとも一部に、次いで溶媒脱蝋することなくさらなる水素化加工を受けさせた。
【0175】
非脱蝋水素化処理生成物は、低単位格子径USYおよびZSM-48の組合せにおいて加工された。結果として生じる生成物は、高い流動曇り差を有し、曇り生成物が生じた。しかしながら、処理後の溶媒脱蝋は、わずか3%の収率損失でその曇りを除去することが可能であった。第2の水素化加工段階のための加工条件は、1950psigの水素圧力および4000scf/bの処理気体速度を含んだ。第2の水素化加工段階への供給原料は、a)3.1時間-1のLHSVおよび665°Fの温度において、USY水素化分解触媒(単位格子径24.32未満、35のシリカ対アルミナ比、65重量%ゼオライト/35重量%結合剤)上0.6重量%Pt;b)2.1時間-1のLHSVおよび635°Fの温度において、ZSM-48脱蝋触媒(90:1シリカ対アルミナ、65重量%ゼオライト/35重量%結合剤)上の0.6重量%Pt;ならびにc)0.9時間-1のLHSVおよび480°Fの温度において、MCM-41芳香族飽和触媒(65重量%ゼオライト/35重量%結合剤)上の0.3重量%Pt/0.9重量%Pdに暴露された。水素化分解/触媒脱蝋/芳香族飽和プロセスにおける510℃変換とともに、触媒脱蝋された溶出物の510℃+部分の結果として生じる特性を表3に示した。
【0176】
【表3】
【0177】
表3に示される生成物は曇っていた。しかしながら、2.5重量%のみの収率損失を伴う溶媒脱蝋の追加的なステップにより、表4に示される特性を有するブライトおよび透明生成物が得られた。流動点おいてよび曇り点は、20℃よりわずかに少なく異なることが留意される。溶媒脱蝋条件は、-30℃のスラリー温度、35重量%のメチルエチルケトンおよび65重量%のトルエンを含む溶媒、ならびに3:1の溶媒希釈比を含んだ。
【0178】
【表4】
【0179】
実施例2
表4に示される脱アスファルト化油および減圧軽油混合物は、図3に類似の構造において加工された。
【0180】
【表5】
【0181】
第1の水素化加工段階の条件および触媒は、触媒老化を考慮した温度の調整を例外として実施例1に類似していた。脱金属化触媒は744°F(396℃)において操作され、HDT/HDCの組合せは761°F(405℃)で操作された。これにより、73.9重量%の510℃に対する変換および50重量%の370℃に対する変換がもたらされた。水素化加工された溶出物は、燃料沸点範囲部分を370℃+の部分から除去するために分離された。次いで、結果として生じる370℃+部分は、さらに水素化加工された。さらなる水素化加工は、ZSM-48脱蝋触媒(70:1シリカ対アルミナ比、65重量%ゼオライト対35重量%結合剤)上の0.6重量%Pt、それに続くMCM-41芳香族飽和触媒(65%ゼオライト対35重量%結合剤)上の0.3重量%Pt/0.9重量%Pdへの370℃+部分の曝露を含んだ。操作条件は、2400psigの水素圧力、5000scf/bの処理気体速度、658°F(348℃)の脱蝋温度、1.0時間-1の脱蝋触媒空間速度、460°F(238℃)の芳香薬飽和温度および1.0時間-1の芳香族飽和触媒空間速度を含んだ。触媒脱蝋された溶出物の560℃+部分の特性を表6に示す。触媒脱蝋された溶出物から誘導された抽残物フラクションおよび抽出物フラクションの特性も示される。
【0182】
【表6】
【0183】
触媒脱蝋された溶出物生成物は、最初に透明であったが、2日以内に曇りが生じた。表6の触媒脱蝋された溶出物生成物の溶媒脱蝋は、曇り点を有意に減少させず(6.5℃の溶媒脱蝋後の曇り)、一部は事前の触媒脱蝋の苛酷性に起因する、約1重量%のみの蝋を除去した。しかしながら、1の溶媒/水比および100℃の温度におけるn-メチルピロリドン(NMP)による表6に示される触媒脱蝋生成物の抽出により、曇り形成に対して安定しているように見える-24℃の曇り点を有する透明なブライト生成物が得られた。また、この抽出により、約2重量%の芳香族から約1重量%の芳香族まで触媒脱蝋生成物の芳香族含有量が減少した。これは、触媒脱蝋された溶出物の3員環芳香族含有量(初めに約0.2重量%)を約80%減少させることを含んだ。この結果は、蝋の曇り形成およびブライトストックにおける多核芳香族の存在間の潜在的な関係を示す。
【0184】
実施例3
実施例2に類似の供給原料を、種々の加工条件を変更して、図2に類似の構造において加工した。初期の水素化加工変換が510℃に対して59重量%および370℃に対して34.5重量%であるように、初期の水素化加工の苛酷性は、実施例2の条件と比較して減少した。これらのより低い変換は、739°F(393℃)における脱金属化および756°F(402℃)における水素化処理/水素化分解触媒の組合せを操作することによって達成された。
【0185】
水素化加工された溶出物は、燃料沸点範囲フラクションを、水素化加工された溶出物の370℃+部分から分離するために分離された。次いで、370℃+部分は、実施例1に記載された水素化分解触媒および脱蝋触媒上での第2の水素化加工段階で処理された。さらに、少量の水素化処理触媒(10時間-1の水素化処理触媒LHSV)を水素化分解触媒前に含み、供給原料は、水素化分解触媒と実質的に同一である条件下で水素化処理触媒に暴露された。反応条件は、2400psigの水素圧力および5000scf/bの処理気体速度を含んだ。1回目の実施において、第2の水素化加工条件は、水素化加工された溶出物の過小脱蝋のために選択された。過小脱蝋条件は、675°F(357℃)の水素化分解温度、1.2時間-1の水素化分解触媒LHSV、615°F(324℃)の脱蝋温度、1.2時間-1の脱蝋触媒LHSV、460°F(238℃)の芳香族飽和温度および1.2時間-1の芳香族飽和触媒LHSVに対応した。2回目の実施において、第2の水素化加工条件は、水素化加工された溶出物をより過酷に脱蝋するために選択された。より高い苛酷性の脱蝋条件は、675°F(357℃)の水素化分解温度、1.2時間-1の水素化分解触媒LHSV、645°F(340℃)の脱蝋温度、1.2時間-1の脱蝋触媒LHSV、460°F(238℃)の芳香族飽和温度および1.2時間-1の芳香族飽和触媒LHSVに対応した。触媒脱蝋された溶出物の510℃+部分を表7に示す。
【0186】
【表7】
【0187】
表7の両試料は、最初にブライトで透明であったが、1週間以内に両試料で曇りが生じた。両試料は、実施例1に記載された条件下で溶媒脱蝋された。これにより、過小脱蝋試料の蝋含有量は6.8重量%まで減少し、より高い苛酷性の脱蝋試料の蝋含有量は1.1重量%まで減少した。より高苛酷性の脱蝋試料は、なおわずかに曇りを示した。しかしながら、過小脱蝋試料は、溶媒脱蝋後、-21℃の曇り点を有し、曇り形成に対して安定しているように見えた。
【0188】
実施例4 - 粘度および粘度指数の関係
図4は、脱アスファルト化油から形成された潤滑油ベースストックの処理苛酷性、動粘度および粘度指数間の関係の例を示す。図4のデータは、残油供給原料基準で75重量%収率のペンタン脱アスファルト化油から形成された潤滑油ベースストックに対応する。脱アスファルト化油は、75.8の溶媒脱蝋VIおよび100℃において333.65の溶媒脱蝋動粘度を有した。
【0189】
図4中、動粘度(右軸)および粘度指数(左軸)は、実施例1に記載の触媒を用いて、図1に類似の構造で加工された脱アスファルト化油に関する水素化加工苛酷性の作用(510℃+変換)として示される。図4に示されるように、水素化加工苛酷性を増加させると、VI向上がもたらされ、脱アスファルト化油が(溶媒脱蝋後に)潤滑油ベースストックに変換可能となる。しかしながら、苛酷性の増加によってもベースストックの510℃+部分の動粘度が減少し、これは、ブライトストックの収率を限定する可能性がある。溶媒脱蝋生成物の370℃~510℃部分は、軽質ニュートラルおよび/または重質ニュートラルベースストックの形成のために適切となる可能性があるが、510℃+部分は、ブライトストックおよび/または重質ニュートラルベースストックの形成のために適切となる可能性がある。
【0190】
実施例5 - スイートおよびサワー水素化分解における変動
課題の供給原料からグループIIベースストックを形成するための方法を提供することに加え、本明細書に記載される方法は、サワー条件対スイート条件で実行された変換の量を変動させることにより、供給原料から形成されたベースストックの分布を制御するために使用することができる。これは、図5に示される結果によって説明される。
【0191】
図5中、上部の2つの曲線は、望ましい粘度の潤滑油ベースストックを形成するために使用される切点(一番下の軸)と、結果として生じるベースストックの粘度指数(左軸)との間の関係を示す。円形データ点に対応する曲線は、全ての水素化分解がサワー段階で生じる、図2に類似の構造を使用するC脱アスファルト化油の加工を表す。正方形データ点に対応する曲線は、(触媒脱蝋とともに)サワー段階での水素化分解変換の約半分を実行し、かつスイート段階での水素化分解変換を残すことに対応する。上部曲線のそれぞれの個々のデータ点は、サワー加工段階に導入された供給原料の量に対する種々のベースストックのそれぞれの収率を表す。それぞれの曲線内のデータ点を合計することにより、水素化分解変換の同全体量が、両種類の加工実施において操作されるという事実を反映する、ベースストックの同全収率を示すことは留意される。水素化分解変換(全てサワー、またはサワーおよびスイート間で分割)の位置のみが様々であった。
【0192】
下部曲線対は、同一プロセス対実施に関する追加情報を提供する。上部曲線対に関してのように、下部曲線対における円形データ点は、サワー段階における全ての水素化分解を表し、正方形データ点は、サワーおよびスイート段階間の水素化分解の分割に対応する。下部曲線対は、切点(一番下の軸)および結果として生じる100℃における動粘度(右軸)間の関係を示す。下部曲線対によって示されるように、3つの切点は、軽質ニュートラルベースストック(5または6cSt)、重質ニュートラルベースストック(10~12cSt)およびブライトストック(約30cSt)の形成を表す。下部曲線の個別のデータ点は、結果として生じるベースストックの流動点も示す。
【0193】
図5に示されるように、水素化分解が実行される条件を変更することにより、結果として生じる潤滑油ベースストックの特性を変化させることができる。第1の(サワー)水素化加工段階中に全ての水素化分解変換の全てを実行することは、重質ニュートラルベースストックの収率増加を生じながらも、重質ニュートラルベースストックおよびブライトストック生成物のより高い粘度指数値をもたらすことができる。スイート条件下で水素化分解の一部を実行することにより、重質ニュートラルベースストックの収率が減少し、軽質ニュートラルベースストックおよびブライトストックの収率が増加した。スイート条件下で水素化分解の一部を実行することは、重質ニュートラルベースストックおよびブライトストック生成物の粘度指数の値を減少させた。これは、ベースストックの収率および/またはベースストックの結果として生じる品質が、サワー条件対スイート条件下で実行された変換の量を変化させることによって変動可能であることを実証する。
【0194】
実施例6 - 供給原料およびDAO
表8は、本実施例において残油Aおよび残油Bと記載される、脱アスファルト化に潜在的に適切である減圧残油供給原料の2種の特性を示す。両供給原料は、6未満のAPI比重、少なくとも1.0の比重、硫黄、窒素および金属の高い含有量ならびに炭素残渣およびn-ヘプタン不溶物の高い含有量を有する。
【0195】
【表8】
【0196】
表8で示された残油を使用して、脱アスファルト化油を形成した。残油Aは、プロパン脱アスファルト化(脱アスファルト化油収率<40%)およびペンタン脱アスファルト化条件(脱アスファルト化油収率約65%)に暴露された。残油Bは、またはブタン脱アスファルト化条件(脱アスファルト化油収率約75%)に曝露された。表8は、結果として生じる脱アスファルト化油の特性を示す。
【0197】
【表9】
【0198】
表9に示されるように、プロパン脱アスファルト化によって提供されたより高苛酷性の脱アスファルト化は、より低苛酷性CおよびC脱アスファルト化と異なる脱アスファルト化油の品質をもたらす。C DAOは、35未満の100℃における動粘度を有するが、C DAOおよびC DAOは、100より高い動粘度を有することが留意される。一般に、C DAOは、より高いAPI比重、より低い金属含有量/硫黄含有量/窒素含有量、より低いCCRレベル、および/またはより高い粘度指数などの潤滑油ベースストック生成物と類似の特性を有する。
【0199】
実施例7 - CおよびC脱アスファルト化油の触媒加工からの潤滑油ベースストック
図6に類似の構造を使用して、プロパン脱アスファルト化によって形成された脱アスファルト化油から潤滑油ベースストックを形成した。図7は、C脱アスファルト化油の触媒加工から製造されたブライトストックの実施例の組成の詳述を示す(図7中の試料IおよびII)。図7は、溶媒脱蝋または触媒脱蝋(参照1および参照2)によって形成された2つの参考ブライトストック、およびC脱アスファルト化油から形成されたが、6℃の高い曇り点を有する追加的なブライトストック(試料III)も示す。
【0200】
図7中に試料IおよびIIとして示されたブライトストックに関して、ブライトストックは、C脱アスファルト化油の水素化処理(サワー条件)と、それに続く触媒脱蝋(スイート条件)とによって形成された。図7中の試料IおよびIIは、0.03重量%未満の硫黄および10重量%未満の芳香族/90重量%より高い飽和を有するブライトストックに対応する。従って、試料IおよびIIは、グループIIブライトストックに対応する。図7の最初の2列の参照ブライトストックおよび試料IIIも10重量%未満の芳香族/90重量%より高い飽和を有し、従って同様にグループIIブライトストックに対応する。
【0201】
組成特徴決定は、13C-NMR、FDMS(電界脱離質量分析)、FTICR-MS(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析)およびDSC(示差走査熱量測定)を使用して実行された。組成物の差異は、従来のブライトストックよりも高い分枝度を有する本発明のベースストックを含む。例えば、プロピルおよびエチル基の合計(線9)は、試料IおよびIIにおいて、100個の炭素原子あたり1.7または1.8または1.9より高い。さらに、試料IおよびIIにおいて、個々の分枝型は、それらの参照より高い。試料IおよびIIは、100個の炭素原子あたり0.85より高い、または0.86より高い、または0.90より高い末端/ペンダントのプロピル基の全数を有し、それらは、100個の炭素原子あたり0.85より高い、または0.88より高い、または0.90より高い、または0.93より高い、または0.95より高いエチル基の全数を有する。さらに、図7中には示されないが、試料IおよびIIは、100個の炭素原子あたり2.1より高い、または2.2より高い、または2.22より高い、または2.3より高いアルファ炭素原子の全数を有する。
【0202】
さらに、本発明のベースストックは、パラフィン鎖内でより高い外部分枝を示した。試料IおよびIIに関して、エプシロン炭素原子に対するプロピルおよびエチル基の全数は、0.127より高く、または0.130より高く、または0.133より高く、または0.140より高く、または0.150より高く、または0.160より高かった。同様に、それぞれエプシロン炭素原子に対するプロピル基の比は、0.063より高く、または0.065より高く、かつエプシロン炭素原子に対するエチル基の比は、0.064より高く、または0.065より高く、または0.068より高く、または0.070より高かった。さらに、図7に示されないが、プロピルおよびエチル基の合計に対するアルファ炭素の比は、試料IおよびIIにおいてより小さく、1.36未満または1.3未満または1.25未満または1.24未満である。
【0203】
参照に対する試料IおよびIIの組成におけるさらに他の差異は、FDMSによって決定されるとシクロパラフィン種の分布において見ることができる。例えば、本発明のブライトストックは、少なくとも20%(すなわち、組成物の100分子あたり少なくとも20分子)の2環シクロパラフィン、少なくとも22%(すなわち、組成物の100分子あたり少なくとも22分子)の3環シクロパラフィン、13.5%未満(すなわち、組成物の100分子あたり13.5未満の分子)の5環シクロパラフィン、および8.5%未満(すなわち、組成物の100分子あたり8.5未満の分子)、または100分子あたり8.0未満の分子または100分子あたり7.0未満の分子の6環のシクロパラフィンを有する。1、2および3環シクロパラフィンと、4、5および6環シクロパラフィンとの比率を比較すると、試料IおよびIIにおける比率は少なくとも1.1であるという差異が観察される。さらに、2および3環シクロパラフィンに対する5および6環シクロパラフィンの比は、0.58未満または0.57未満である。
【0204】
また、本発明の油は、温度の作用としての残留蝋の全量および残留蝋の分布を決定するために、示差走査熱量測定(DSC)を使用して特徴決定された。DSC冷却および加熱曲線は、本明細書に記載のベースストックに関して得られた。留意すべきことに、加熱曲線は、試料が完全に固体であるほぼ-80℃の低温から開始して、次に約10℃/分の速度で試料を加熱する。温度が増加すると、典型的に、熱フローは急速に減少し、約-20℃~-10℃において最小値に達する。-20℃~約+10℃において、加熱フロー速度は、微結晶質蝋が融解すると増加する。参照において見られる典型的な増加速度は、0.00068~0.013W/g-℃の範囲であったが、4列は、0.00042W/g-℃における速度において加熱フローのあまり迅速でない変化を有し、蝋状の種の本発明の組成物および分布を示す。
【0205】
図7で示された新規生成物の組成空間は、約96のVI、約1.6重量%のCCRおよび約504ppmwの窒素を有するC脱アスファルト化油の触媒加工を使用して達成できたことが決定された。類似の新規生成物の組成空間は、C脱アスファルト化油から、またはC脱アスファルト化油から、またはC6+脱アスファルト化油から、またはその混合物から製造されたベースストックなど、より困難な供給原料によって達成し得ることがさらに見出された。これは、C脱アスファルト化油(55~65%脱アスファルト化油収率)から誘導されたベースストック組成物が示される図8において例示される。示されたベースストックは、溶媒後加工ステップの有無にかかわらず、触媒加工を使用して製造された。ストックが下記の組成空間を占有しない場合、最終生成物における曇りの発現のリスクの増加がある。図8の試料IVおよびVは、透明かつブライトなままのベースストックに対応するが、試料VI、VIIおよびVIIIは、C4+DAOからベースストックを形成しようと試みるときに慣習的に予想されるように、曇りを起こしたベースストックに対応する。図8の参照1および参照2は、図7の参照と同一である。
【0206】
組成特徴決定は、13C-NMR、FDMS、FTICR-MSおよびDSCを使用して実行された。組成物の差異は、従来のブライトストックよりも高い分枝度を有する本発明のベースストックを含む。例えば、末端/ペンダントのプロピルおよびエチル基の合計は、試料IVおよびVにおいて100個の炭素原子あたり1.7、または1.75、または1.8、または1.85、または1.9より高い。さらに、試料IVおよびVにおいて、個々の分枝型は参照より高い。特に、試料IVおよびVは、100個の炭素原子あたり0.86より高い、または0.88より高い末端/ペンダントのプロピル基の全数を有し、それらは、100個の炭素原子あたり0.88より高い、または0.90より高い、または0.93より高い、または0.95より高い末端/ペンダントのエチル基の全数を有する。図8中には示されないが、試料IVおよびVは、100個の炭素原子あたり2.3より高いアルファ炭素原子の全数を有する。
【0207】
さらに、本発明のベースストックは、パラフィン鎖内でより高い外部分枝を示した。試料IVおよびVに関して、エプシロン炭素原子に対するプロピルおよびエチル基の全数は、0.124より高く、または0.127より高く、または0.130より高かった。同様に、それぞれエプシロン炭素原子に対するプロピル基の比およびエプシロン炭素原子に対するエチル基の比は、0.060より高く、または0.063より高く、または0.064より高く、または0.065より高く、および0.064または0.065より高く、または0.068より高かった。
【0208】
FDMSにより、本発明のブライトストックにおける環構造に関するより多くの情報が提供される。試料IVおよびVは、を1、2および3環シクロパラフィンの出現率の増加および4、5および6環シクロパラフィンの出現率の低下を示す。例えば、試料IVおよびVは、少なくとも10.7%(すなわち、組成物の100分子あたり少なくとも10.7分子)、または少なくとも11%、または少なくとも11.5%m、または少なくとも11.9%の1環シクロパラフィン、および少なくとも19.8%、または少なくとも20%(すなわち、組成物の100分子あたり少なくとも20.0分子)、または少なくとも20.5%、または少なくとも20.8%の2環シクロパラフィン、少なくとも21.8%、または少なくとも21.9%、または少なくとも22%(すなわち、組成物の100分子あたり少なくとも22.0分子)の3環シクロパラフィン、17.6%未満(すなわち、組成物の100分子あたり17.6未満の分子)、または17.5%未満、または17.1%未満、または17%未満の4環シクロパラフィン、11.9%未満(すなわち、組成物の100分子あたり11.9未満の分子)、または11.5%未満、または11%未満、または10.9%未満の5環シクロパラフィン、および7.2%未満、または7%未満(すなわち、組成物の100分子あたり7.0未満の分子)、または6.5%未満、または6.3%未満の6環シクロパラフィンを有する。1、2、および3環シクロパラフィンと4、5および6環シクロパラフィンとの比率を比較して、試料IVおよびVにおける比率は、少なくとも1.41、または少なくとも1.45、または少なくとも1.5、または少なくとも1.55、または少なくとも1.59であるという差異が観察される(線68)。試料IVおよびVは、0.40未満の2および3環シクロパラフィンに対する5および6環シクロパラフィンの比率も示す。
【0209】
実施例8 - 配合された潤滑油特性
実施例11において記載される(CおよびC脱アスファルト化油から形成される)透明およびブライトグループIIブライトストックのいくつかを使用して、配合されたエンジン油およびギヤ油を製造した。実施例11に示された2種の参照グループIブライトストックも、特性を比較するために類似の様式で配合された。
【0210】
図9は、a)本明細書に記載の方法に従って製造された種々のグループIIブライトストックおよびb)参照グループIブライトストックから形成された25W-50エンジン油のMRV試験からの結果を示す。円形は、グループIIブライトストックに対応するが、ひし形は、参照グループIブライトストックに対応する。図9は、実施例11からのグループIIブライトストックが、結果として生じる25W-50エンジン油に関して実質的に低い流動点を提供したことを示す。グループIIブライトストックは、また、より低い見掛けのMRV粘度も提供した。
【0211】
図10は、グループIIブライトストックおよび参照グループIブライトストックから製造された場合の85W-140ギヤ油のBrookfield粘度試験からの結果を示す。図10は、グループIIブライトストックが、再び、より低い流動点とより低いBrookfield粘度との改善された組合わせを提供したことを示す。
【0212】
図11は、参照グループIブライトストック(左側バー)および種々のグループIIブライトストック(右側4本のバー)から形成されたギヤ油のUSスチール酸化試験からの結果を示す。図11は、グループIIブライトストックで配合されたギヤ油が、酸化試験における動粘度の実質的により小さい百分率増加を有したことを示す。
【0213】
実施例9 - C脱アスファルト化油の触媒加工からの潤滑油ベースストック
図12および13は、C脱アスファルト化油から形成された種々のベースストック組成物の特徴決定からの詳細を提供する。図12は、13C-NMRを含む種々の技術を使用して決定された特性を示すが、図13は、FTICR-MSおよびFDMSを使用して決定された特性を示す。参照1は、図7および8からの参照1と同一である。試料A、BおよびCは、新規組成物に対応するが、試料D、E、FおよびGは、C脱アスファルト化油から製造された追加的な比較ベースストックに対応する。
【0214】
組成特徴決定は、13C-NMR、FDMS、FTICR-MSおよびDSCを使用して実行された。成物の差異は、NMRを使用して観察されるように、従来のブライトストックよりも高い分枝度を有する本発明のベースストックを含む。例えば、図12に示されるように、比較および参照ブライトストックは、組成物中100個の炭素原子あたり1.67(以下)の末端/ペンダントのプロピルおよび末端/ペンダントのエチル基の合計を有する。それとは対照的に、図16の線11において、本発明のブライトストックは、100個の炭素原子あたり少なくとも1.7、または少なくとも1.8、または少なくとも1.9、または少なくとも2、または少なくとも2.2の値を有する。同様に、参照/比較ブライトストックの末端/ペンダントのプロピルおよびエチル基の個々の値は、(それぞれ)100個の炭素原子あたり0.84以下および1.04以下である。本発明のブライトストック(試料A、BおよびC)は、プロピル基に関して100個の炭素原子あたり少なくとも0.85、または少なくとも0.9、または少なくとも1.0、およびエチル基に関して100個の炭素原子あたり少なくとも0.85、または少なくとも1.0、または少なくとも1.1、または少なくとも1.15、または少なくとも1.2の値を有する。さらに、図12に示されないが、試料A、BおよびCの分枝点は、100個の炭素原子あたり少なくとも4.1の全分枝点を有することによって特徴付けられ、かつそれらの分枝点において、100個の炭素原子あたり2.8未満がアルファ炭素である。
【0215】
試料A、BおよびCは、エプシロン炭素に対する種々の分枝点の比率を比較したときに見られるように、パラフィン鎖内でより高い外部分枝を示した。エプシロン炭素に対するプロピルおよびエチル基の合計の比率を比較することにより、本発明のブライトストックにおけるより高い分枝度が示される。参照/比較ブライトストックは、エプシロン炭素の数に対するエチルおよびプロピル基の合計に関して0.13未満の比率を有するが、本発明のブライトストックは、エプシロン炭素の数に対するエチルおよびプロピル基の合計に関して少なくとも0.1、または少なくとも0.13、または少なくとも0.14、または少なくとも0.15、または少なくとも0.16、または少なくとも0.19の比率を有する。エプシロン炭素の数に対するプロピルまたはエチル基を個々に比較すると、それぞれ0.058および0.059以下を有する参考ブライトストックとの類似の関係が示される。試料A、BおよびCは、プロピル/エプシロンに関して少なくとも0.06、または少なくとも0.07、または少なくとも0.08、または少なくとも0.09、およびエチル/エプシロンに関して少なくとも0.06、または少なくとも0.07、または少なくとも0.08、または少なくとも0.1の値を有する。さらに、エプシロン炭素の合計数は、本発明のブライトストックにおいてより低く、参照/比較ブライトストックに関して14.5より高く、かつ本発明のブライトストックに関して14.5未満または13未満または12.5未満または12.35未満または11未満である。
【0216】
図12に示されないが、分枝点の種類の割合は、本発明のブライトストックでも独特である。参考ベースストックは、少なくとも2.8のエチル基に対するアルファ炭素の比率、ならびに少なくとも1.8のエチルおよびプロピル基の合計に対するアルファ炭素の比率を有する。本発明のブライトストックは、2.6未満、または2.54未満、または2.5未満、または2.2未満のエチル基に対するアルファ炭素の比率、および2未満、または1.4未満、または1.38未満、または1.3未満、または1.1未満、または1未満、または0.9未満のエチルおよびプロピル基の合計に対するアルファ炭素の比率を有する。同様に、全分枝点に対するプロピルおよびエチル基の割合は、参照/比較ブライトストックに関して0.41未満であり、かつ本発明のブライトストックに関して少なくとも0.39、または少なくとも0.4、または少なくとも0.42、または少なくとも0.43、または少なくとも0.45、または少なくとも0.46、または少なくとも0.48であり、アルファ炭素が、参照/比較ブライトストックに関して少なくとも0.59、本発明のブライトストックに関して0.58未満、または0.57未満、または0.56未満、または0.55未満、または0.52未満の割合で残りの分枝点を構成する。
【0217】
別の本発明のブライトストックの組成物の差異は、図13に示されるように、FTICR-MSおよび/またはFDMSによって測定されるシクロパラフィン分布である。これらの測定は、本発明のブライトストックが、2環を有するより高い分子数を有することを示し、参照/比較ブライトストックに関して100分子あたり18.01未満であり、試料A、BおよびCに関して100分子あたり少なくとも17.0、または少なくとも18.01、または少なくとも18.5、または少なくとも19、または少なくとも20(すなわち、組成物の100分子あたり少なくとも20.0分子)、または少なくとも20.07である。3環を有する分子は、参照/比較ブライトストックに関して100分子あたり19.7未満であり、本発明のブライトストックに関して100分子あたり少なくとも19.7、または少なくとも20(すなわち、組成物の100分子あたり少なくとも20.0分子)、または少なくとも20.5、または少なくとも20.62という類似の傾向に従う。6、7また8環を有する分子は、本発明のブライトストックに関して数個のこれらの分子であり、参照/比較ブライトストックでは100分子あたり6環で少なくとも7.2分子、7環で少なくとも4.8分子、8環で少なくとも2.1分子という反対の傾向に従う。本発明のブライトストックは、100分子あたり6環で7.1未満、または7未満(すなわち、組成物の100分子あたり7.0未満の分子)、または6.9未満の分子、100分子あたり7環で4.2未満または4未満(すなわち、組成物の100分子あたり4.0未満の分子)、または3.8未満、または3.6未満、または3.3未満の分子、および100分子あたり8環で2未満(すなわち、組成物の100分子あたり2.0未満の分子)、または1.9未満、または1.8未満、または1.5未満の分子を有する。さらに本発明のブライトストックは、100分子あたり9環で1未満(すなわち、組成物の100分子あたり1.0未満の分子)、または0.9未満、または0.8未満、または0.未満の分子を有する。
【0218】
より少ない環を有する分子は、5個以上、6個以上、7個以上および11個以上の環の分子数を比較した場合、本発明のブライトストックにおいて好ましい。例えば、参照/比較ブライトストックは、100分子あたり5個以上、6個以上、7個以上および11個以上の環で少なくとも25.6、14.9、7.3および0.02の分子を有する。本発明のブライトストックは、100分子あたり5個以上の環で25.5未満、または25未満、または24.5未満、または24未満、または23未満の分子、100分子あたり6個以上の環で15未満、または14.5未満、または14未満、または13未満、または12の分子、100分子あたり7個以上の環で7.2未満、または7未満、または6.5未満、または6未満、または5の分子、および100分子あたり11個以上の環で0.02未満または0.01未満または0の分子を有する。さらに、少なくとも5環を有する分子と2環を有する分子との比率を比較した場合、参照/比較ブライトストックは少なくとも1.5の比率を有するのに対して、本発明のブライトストックは、1.4未満、または1.3未満、または1.2未満の比率を有する。本発明のブライトストックは、少なくとも6環を有する分子および少なくとも7環を有する分子と2環を有する分子とのより小さい比率を有し、2環を有する分子に対して少なくとも6環を有する分子は、0.9未満、または0.8未満、または0.7未満、または0.6未満であり、2環を有する分子に対して少なくとも7環を有する分子は、0.4未満または0.3未満である。
【0219】
環の全体的な分布は、本発明のブライトストックが、より少ない環の数を有する分子に関して好ましいことを明示する。参照ブライトストックは、少なくとも11、少なくとも10、少なくとも8、少なくとも7、少なくとも6および少なくとも5環でそれぞれ少なくとも0.05%、少なくとも0.08%、少なくとも2.22%、少なくとも6.14%、少なくとも16.6%および少なくとも32.2%の分子を有する。本発明のブライトストックは、少なくとも11環で100あたり0.05未満、または0.03未満、または0の分子、少なくとも10環で100あたり0.08未満、または0.07未満、または0の分子、少なくとも8環で100あたり2.2未満、または2.1未満、または2未満、または1.9未満、または1.5未満、または1未満の分子、少なくとも7環で100あたり6.5未満、または4.5未満、または4未満、または3未満、または2未満、少なくとも6環で100あたり16未満、または15未満、または14未満、または13未満、または12未満、または11未満、または10未満、少なくとも5環で100あたり少なくとも30未満、または29未満、または28未満、または27未満、または26未満、または25未満を有する。参照/比較ブライトストックは、4個以下の環で100分子あたり少なくとも70、または少なくとも71、または少なくとも72、または少なくとも74を有する本発明のブライトストックと比較して、4個以下の環で100分子あたり70未満を有する。組成において見られる大きい環種の数が小さいことは、図12の試料A、BおよびCに関して、より低いConradson炭素残渣(CCR)値にも反映する。
【0220】
本発明のブライトストックにおける環の数の分布は、より少ない環の数に有利である。例えば、2および3環分子に対する5および6環分子の比率は、参照/比較ブライトストックに関して0.7より高く、かつ本発明のブライトストックに関して0.7未満、または0.65未満、または0.6未満である。1環を有する分子に対する2および3環分子の比率も本発明のブライトストックにおいてより大きく、参照/比較ブライトストックに関して100あたり3.5未満であり、本発明に関して100あたり少なくとも3.5または少なくとも4である。さらに、3個以下の環を有する分子または4個以下の環を有する分子に対する少なくとも5環を有する分子の比率を比較する場合、さらなる差異が観察される。参照/比較ブライトストックは、少なくとも0.57の3個以下の環を有する分子に対する少なくとも5環を有する分子の比率、および0.43未満の4個以下の環を有する分子に対する少なくとも5環を有する分子の比率を有する。本発明のブライトストックは、少なくとも0.57または0.55未満または0.53未満の3個以下の環を有する分子に対する少なくとも5環を有する分子の比率、および少なくとも0.43または少なくとも0.4または少なくとも0.38の4個以下の環を有する分子に対する少なくとも5環を有する分子の比率を有する。
【0221】
追加的な実施形態
実施形態1
潤滑油ベースストック組成物(lubricant base stock composition)であって、少なくとも900°F(482℃)のT10蒸留点(distillation point)と、少なくとも80の粘度指数(viscosity index)と、少なくとも90重量%(または少なくとも95重量%)の飽和含有量(saturates content)と、300wppm未満の硫黄含有量(sulfur content)と、少なくとも14cStの100℃における動粘度(kinematic viscosity)と、少なくとも320cSt(または少なくとも340cSt、または少なくとも350cSt)の40℃における動粘度と、組成物の100個の炭素原子あたり、少なくとも1.7(または少なくとも1.8または少なくとも1.9)の末端(又はターミナル(terminal))/ペンダント(pendant)のプロピル基および末端(又はターミナル(terminal))/ペンダント(pendant)のエチル基の合計とを含む、潤滑油ベースストック組成物。
【0222】
実施形態2
末端/ペンダントのプロピル基の全数が、組成物の100個の炭素原子あたり、0.85よりも大きい(もしくは0.86よりも大きい、もしくは0.87よりも大きい、もしくは0.88よりも大きい、もしくは0.90よりも大きい、もしくは1.0よりも大きい)か、または末端/ペンダントのエチル基の全数が、組成物の100個の炭素原子あたり、0.85よりも大きい(もしくは0.88よりも大きい、もしくは0.90よりも大きい、もしくは0.93よりも大きい、もしくは1.0よりも大きい)か、またはそれらの組合せである、実施形態1の潤滑油ベースストック組成物。
【0223】
実施形態3
a) 潤滑油ベースストック組成物が、-6℃以下、もしくは-10℃以下、もしくは-15℃以下、もしくは-20℃以下の流動点を有するか、
b) 潤滑油ベースストック組成物が、0℃以下、もしくは-2℃以下、もしくは-5℃以下、もしくは-10℃以下の曇り点を有するか、
c) 潤滑油ベースストック組成物が、25℃以下、もしくは20℃以下、もしくは15℃以下の流動点と曇り点との間の差異を含むか、または
d) a)とb)、a)とc)、b)とc)、またはa)とb)とc)との組合せである、
上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0224】
実施形態4
潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン(ε)炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基の比率が、少なくとも0.060(もしくは少なくとも0.063、もしくは少なくとも0.065)であるか、または潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのエチル基の比率が、少なくとも0.060(もしくは少なくとも0.064、もしくは少なくとも0.065)であるか、またはそれらの組合せである、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0225】
実施形態5
潤滑油ベースストック組成物において、エプシロン炭素原子に対する末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の合計の比率が、少なくとも0.10(または少なくとも0.13)である、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0226】
実施形態6
潤滑油ベースストックが、少なくとも1.5の濁度(turbidity)と、0℃以下の曇り点(cloud point)とを有するか、または潤滑油ベースストックが、少なくとも2.0の濁度を有するか、または潤滑油ベースストックが、4.0以下(もしくは3.5以下、もしくは3.0以下)の濁度を有するか、またはそれらの組合せである、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0227】
実施形態7
潤滑油ベースストック組成物が、少なくとも1000°F(538℃)または少なくとも1050°F(566℃)のT50蒸留点を含むか、または少なくとも1150°F(621℃)または少なくとも1200°F(649℃)のT90蒸留点を含むか、またはそれらの組合せである、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0228】
実施形態8
潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、2個の飽和環を含む分子を少なくとも17個(または100個の分子あたり少なくとも20個の分子)と、100個の分子あたり、3個の飽和環を含む分子を少なくとも20個(または100個の分子あたり少なくとも22個の分子)とを含む、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0229】
実施形態9
潤滑油ベースストック組成物が、0.1重量%以下または0.02重量%以下のコンラドソン炭素残渣含有量(Conradson Carbon Residue content)を含む、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0230】
実施形態10
潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合またはFTICR-MSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個の飽和環を含む分子を7個未満、または100個の分子あたり、6個以上の飽和環を含む分子を16個未満(もしくは14個未満の分子を)含むか、または6個以上の飽和環を含む分子の2個の飽和環を含む分子に対する比率が、0.8以下であるか、またはそれらの組合せである、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0231】
実施形態11
粘度指数が、少なくとも90(もしくは少なくとも95、もしくは少なくとも100、もしくは少なくとも105、もしくは少なくとも110、もしくは少なくとも120)であるか、または100℃における動粘度が、少なくとも20cSt、もしくは少なくとも25cSt、もしくは少なくとも28cSt、もしくは少なくとも30cSt、もしくは少なくとも32cStであるか、または40℃における動粘度が、少なくとも340cSt、もしくは少なくとも350cStであるか、またはそれらの組合せである、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0232】
実施形態12
潤滑油ベースストック組成物が、組成物中の100個の炭素原子あたり、14.5個未満のエプシロン炭素原子を含む、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0233】
実施形態13
潤滑油ベースストック組成物が、(FTICR-MSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個の飽和環を含む分子を7個未満と、100個の分子あたり、7個の飽和環を含む分子を4個未満と、100個の分子あたり、8個の飽和環を含む分子を2個未満と、100個の分子あたり、9個の飽和環を含む分子を1個未満とを含む、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0234】
実施形態14
i) 潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、2個の飽和環を含む分子を少なくとも20個と、100個の分子あたり、3個の飽和環を含む分子を少なくとも22個とを含み、潤滑油ベースストック組成物が、任意選択的に、0.02重量%以下のコンラドソン炭素残渣含有量(Conradson Carbon Residue content)を含むか、
ii) 潤滑油ベースストック組成物が、(FDMSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個の飽和環を含む分子を7個未満含み、潤滑油ベースストック組成物が、任意選択的に、0.1重量%以下のコンラドソン炭素残渣含有量を含むか、または
iii) i)とii)との組合せである、
上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0235】
実施形態15
潤滑油ベースストック組成物が、(FTICR-MSによって決定される場合において、)100個の分子あたり、6個以上の飽和環を含む分子を16個未満含むか、または1~3個の飽和環を含む分子の4~6個の飽和環を含む分子に対する比率が、少なくとも1.1であるか、またはそれらの組合せである、上記実施形態のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0236】
実施形態16
実施形態1~15または18~19のいずれかに記載の潤滑油ベースストック組成物と、少なくとも1種の添加剤とを含む、配合された潤滑油(又は配合潤滑油(formulated lubricant))。
【0237】
実施形態17
少なくとも1種の添加剤が、1種以上の清浄剤、分散剤、酸化防止剤、粘度改質剤および/または流動点抑制剤を含むか、または少なくとも1種の添加剤が、1種以上の消泡剤、流動点抑制剤、酸化防止剤および/または防錆剤を含むか、または配合された潤滑油が、1種以上の追加的なベースストックをさらに含み、1種以上の追加的なベースストックが、溶媒加工(又は溶媒処理)されたベースストック、水素化加工(又は水素化精製又は水素化処理)されたベースストック、合成ベースストック、フィッシャー-トロプシュ(Fisher-Tropsch)プロセスから誘導されたベースストック、PAOおよびナフテン(系)のベースストックを含むか、あるいはそれらの組合せである、実施形態16の配合された潤滑油。
【0238】
実施形態18
潤滑油ベースストック組成物において、アルファ炭素、末端/ペンダントのプロピル基および末端/ペンダントのエチル基の全数が、組成物の100個の炭素原子あたり、少なくとも3.9であるか、または組成物の100個の炭素原子あたり、少なくとも4.1である、実施形態1~15のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0239】
実施形態19
潤滑油ベースストック組成物において、アルファ炭素の数が、組成物の100個の炭素原子あたり2.8未満であるか、または組成物の100個の炭素原子あたり少なくとも2.1であるか、またはそれらの組合せである、実施形態1~15または18のいずれかの潤滑油ベースストック組成物。
【0240】
数値の下限および数値の上限が本明細書に列挙される場合、いずれの下限からいずれの上限までの範囲も考慮される。本発明の説明のための実施形態が詳細に記載されているが、種々の他の変更形態が明白であり、かつ本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって容易に実施可能であることが理解されるであろう。従って、本明細書に添付された請求の範囲が例に限定され、かつ特許請求の範囲ではなく本明細書に明らかにされた記載が、本発明が関係する技術分野の当業者によってその均等物として見なされるであろう全ての特徴を含む、本発明において存在する特許取得可能な新規物の全ての特徴を包含すると解釈されるようには意図されない。
【0241】
本発明は、多数の実施形態および具体的な実施例を参照して上記で説明された。上記の詳細な説明を考慮に入れて、当技術分野における当業者に多くの変形形態が暗示されるであろう。全てのそのような明白な変形形態は、添付された全ての意図された特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13