(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】DPP-IV長時間作用型阻害剤の結晶及びその塩
(51)【国際特許分類】
C07D 405/04 20060101AFI20220111BHJP
A61K 31/4035 20060101ALI20220111BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220111BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220111BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
A61K31/4035
A61P3/04
A61P3/10
A61P25/00
A61P35/00
A61P37/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019506673
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 CN2017097046
(87)【国際公開番号】W WO2018028666
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】201610665625.9
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610666564.8
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(73)【特許権者】
【識別番号】515212149
【氏名又は名称】連雲港潤衆製薬有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】514120955
【氏名又は名称】ケンタウルス バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑光明
(72)【発明者】
【氏名】劉林
(72)【発明者】
【氏名】張愛明
(72)【発明者】
【氏名】喬家彬
(72)【発明者】
【氏名】郭暁鵬
(72)【発明者】
【氏名】張喜全
(72)【発明者】
【氏名】夏春光
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526848(JP,A)
【文献】国際公開第2015/031228(WO,A1)
【文献】特表2014-518266(JP,A)
【文献】特表2012-508746(JP,A)
【文献】Journal of Pharmaceutical Sciences,1977年,Vol.66, No.1,p.1-19
【文献】小嶌隆史,医薬品開発における結晶性選択の効率化を目指して,薬剤学,2008年09月01日,Vol.68, No.5,p.344-349
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される化合物の結晶であって、
【化1】
そのX線回折パターンにおいて、2θ=16.4°、21.8°、25.3°、及び26.0°±0.2°に回折ピークを有する、結晶。
【請求項2】
そのX線回折パターンにおいて、2θ=16.4°、19.4°、21.2°、21.8°、25.3°、及び26.0°±0.2°に回折ピークを有する、請求項1に記載の式Iで表される化合物の結晶。
【請求項3】
そのX線回折パターンにおいて、2θ=13.0°、16.4°、18.5°、19.4°、21.2°、21.8°、25.3°、及び26.0°±0.2°に回折ピークを有する、請求項1に記載の式Iで表される化合物の結晶。
【請求項4】
DSCにより特徴付けられる場合、開始温度193.3±5℃、及びピーク温度195.2±5℃を有する、請求項1に記載の式Iで表される化合物の結晶。
【請求項5】
X線回折ピークが下記の特徴を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物の結晶。
【表1】
【請求項6】
結晶組成物の50重量%以上を占める請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物の結晶を含む、結晶組成物。
【請求項7】
結晶組成物の80重量%以上を占める請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物の結晶を含む、請求項6に記載の結晶組成物。
【請求項8】
式Iで表される化合物のリン酸塩であって、
【化2】
式Iで表される化合物とリン酸とのモル比は、1:0.5~2である、式Iで表される化合物のリン酸塩。
【請求項9】
式Iで表される化合物とリン酸とのモル比は、1:1である、請求項8に記載の式Iで表される化合物のリン酸塩。
【請求項10】
請求項9に記載の式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶であって、
X線回折パターンにおいて、2θ=6.4°、11.9°、18.2°、21.7°、22.1°、22.9°、及び23.2°±0.2°に回折ピークを有する、式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶。
【請求項11】
X線回折パターンにおいて、2θ=6.4°、11.9°、16.5°、17.5°、18.2°、18.6°、21.7°、22.1°、22.9°、及び23.2°±0.2°に回折ピークを有する、請求項10に記載の式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶。
【請求項12】
X線回折パターンにおいて、2θ=6.4°、10.1°、11.9°、16.5°、17.5°、18.2°、18.6°、19.8°、21.7°、22.1°、22.9°、23.2°、及び23.8°±0.2°に回折ピークを有する、請求項10に記載の式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶。
【請求項13】
結晶組成物の50重量%以上を占める請求項10~12のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶を含む、結晶組成物。
【請求項14】
結晶組成物の80重量%以上を占める請求項10~12のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶を含む、請求項13に記載の結晶組成物。
【請求項15】
式Iで表される化合物のフマル酸塩であって、
【化3】
式Iで表される化合物とフマル酸とのモル比は、1:0.5~2である、式Iで表される化合物のフマル酸塩。
【請求項16】
式Iで表される化合物とフマル酸とのモル比は、1:0.5である、請求項15に記載の式Iで表される化合物のフマル酸塩。
【請求項17】
請求項16に記載の式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶であって、
X線回折パターンにおいて、2θ=20.67°±0.2°に回折ピークを有する、式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶。
【請求項18】
結晶組成物の50重量%以上を占める請求項17に記載の式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶を含む、結晶組成物。
【請求項19】
結晶組成物の80重量%以上を占める請求項17に記載の式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶を含む、請求項18に記載の結晶組成物。
【請求項20】
治療有効量の請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶、又は請求項6若しくは7に記載の結晶組成物、
或いは治療有効量の請求項8若しくは9に記載のリン酸塩、又は請求項10~12のいずれか1項に記載のリン酸塩の結晶、又は請求項13若しくは14に記載の結晶組成物、
或いは治療有効量の請求項15若しくは16に記載のフマル酸塩、又は請求項17に記載のフマル酸塩の結晶、又は請求項18若しくは19に記載の結晶組成物を含む、医薬組成物。
【請求項21】
DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患の治療又は予防に使用される、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶、又は請求項6若しくは7に記載の結晶組成物、又は請求項8若しくは9に記載のリン酸塩、又は請求項10~12のいずれか1項に記載のリン酸塩の結晶、又は請求項13若しくは14に記載の結晶組成物、又は請求項15若しくは16に記載のフマル酸塩、又は請求項17に記載のフマル酸塩の結晶、又は請求項18若しくは19に記載の結晶組成
物。
【請求項22】
DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患の治療又は予防に使用され、前記DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患は、インスリン抵抗性、高血糖症、II型糖尿病、糖尿病性脂質異常症、耐糖能異常、空腹時血糖異常、代謝性アシドーシス、ケトーシス、食欲調節、肥満、種々の癌、神経系障害、及び免疫系障害からなる群から選ばれる、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶、又は請求項6若しくは7に記載の結晶組成物、又は請求項8若しくは9に記載のリン酸塩、又は請求項10~12のいずれか1項に記載のリン酸塩の結晶、又は請求項13若しくは14に記載の結晶組成物、又は請求項15若しくは16に記載のフマル酸塩、又は請求項17に記載のフマル酸塩の結晶、又は請求項18若しくは19に記載の結晶組成
物。
【請求項23】
DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患の治療又は予防に使用され、前記DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患は、II型糖尿病、及び肥満からなる群から選ばれる、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶、又は請求項6若しくは7に記載の結晶組成物、又は請求項8若しくは9に記載のリン酸塩、又は請求項10~12のいずれか1項に記載のリン酸塩の結晶、又は請求項13若しくは14に記載の結晶組成物、又は請求項15若しくは16に記載のフマル酸塩、又は請求項17に記載のフマル酸塩の結晶、又は請求項18若しくは19に記載の結晶組成
物。
【請求項24】
DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患の治療又は予防に使用される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患は、インスリン抵抗性、高血糖症、II型糖尿病、糖尿病性脂質異常症、耐糖能異常、空腹時血糖異常、代謝性アシドーシス、ケトーシス、食欲調節、肥満、種々の癌、神経系障害、及び免疫系障害からなる群から選ばれる、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患は、II型糖尿病、及び肥満からなる群から選ばれる、請求項24に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2016年8月12日に中華人民共和国国家知的財産局に出願された出願番号が201610665625.9及び201610666564.8である中国特許出願に基づく優先権及び利益を主張し、当該出願の全文を引用により本願に組み込む。
【0002】
本発明は、長時間作用型DPP-IV阻害剤としての(2R,3S,5R)-5-(5-メタンスルホニルイソインドリン-2-イル)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミンの結晶、その塩、又はその塩の結晶、それらを含有する医薬組成物、及びその医薬的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)は、セリンプロテアーゼの1種であり、ペプチドのN-末端がプロリン又はアラニンであるタンパク質を急速に切断することができ、生体内でのいくつかの内因性ペプチド(例えば、GLP-1及びGIP)の代謝的切断の役割を果たし、かつ、生体外で様々な他のペプチド(例えば、GHRH、NPY、G LP-2及びVIP)に抗するタンパク質分解活性を持つことは、すでに裏付けられた。DPP-IV酵素の分解により生体内でのGLP-1及びGIPが急速に不活性化されるため、DPP-IVの活性を阻害することは生体内でのGLP-1及びGIPの生理活性の持続時間を大きく延長することができ、したがって、間接的にインスリン分泌を制御し、最終的に血糖制御の役割を果たすことになる。
【0004】
DPP-IV阻害剤は、糖尿病の新規な治療手段として、グルコース依存性のインスリン分泌の刺激作用を持ち、血糖制御の役割を果たす過程において低血糖の副作用を起こし難く、さらに膵β細胞の機能を維持するなどの特徴を有し、また、胃腸管反応が少なくて耐性に優れ、注射する必要がなく経口投与することができ、従来の経口血糖降下薬の治療効果に匹敵する。
【0005】
上記の特徴に基づいて、DPP-IV阻害剤は、例えば糖尿病(特にII型糖尿病)及び肥満などのようなDPP-IV媒介性の疾患及び障害を予防及び/又は治療することに有用である。
【0006】
WO2016127916では、式Iで表される化合物及びその製造方法を含む、長時間作用型DPP-IV阻害剤としての置換のアミノ6員飽和複素環式化合物を開示しており、ここでその全文全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【化1】
【発明の概要】
【0007】
一態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物の結晶、該結晶の製造方法、該結晶を含む結晶組成物、該結晶又はその結晶組成物を含む医薬組成物、及びそれらの医薬的使用を提供する。
【0008】
別の一態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物のリン酸塩、該リン酸塩の製造方法、該リン酸塩を含む医薬組成物、及びその医薬的使用を提供する。
【0009】
他の一態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶、該リン酸塩の結晶の製造方法、該リン酸塩の結晶を含む結晶組成物、該リン酸塩の結晶又はその結晶組成物を含む医薬組成物、及びそれらの医薬的使用を提供する。
【0010】
また、別の一態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物のフマル酸塩、該フマル酸塩の製造方法、該フマル酸塩を含む医薬組成物、及びその医薬的使用を提供する。
【0011】
また、他の一態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶、該フマル酸塩の結晶の製造方法、該フマル酸塩の結晶を含む結晶組成物、該フマル酸塩の結晶又はその結晶組成物を含む医薬組成物、及びそれらの医薬的使用を提供する。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
以下、それぞれ開示された実施形態を全体的に理解するために、具体的な詳細を含んで説明したが、当業者は、これらの詳細の一部又は複数の部分を用いずに他の方法、部品、材料などを用いても、これらの実施形態を実現することができると理解すべきである。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の全てにわたって、特に断らない限り、「含む/含有する(comprise)」のような用語、及びその英語の変形(例えば「comprises」や「comprising」など)は、いずれも開放(オープンエンド)式の、包含式の意味、すなわち「…を含むがこれらに限定されない」として解釈されるべきである。
【0014】
本明細書にわたって記載された「一実施形態」又は「実施形態」、あるいは「別の実施形態において」又は「いくつかの実施形態において」とは、少なくとも1つの実施形態に、当該実施形態に記載の関連する具体的な参照要素、構造、又は特徴を含むことを意味する。したがって、明細書の全体にわたって異なる位置に記載の「一実施形態において」、「実施形態において(実施形態では)」、「他の実施形態において」又は「いくつかの実施形態において」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すことではない。また、具体的な要素、構造又は特徴は、任意の適切な方式で1つ以上の実施形態の中に組み合せられる。
【0015】
本発明の明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられた単数形の冠詞「一」、「1つ(の)」、「1個(の)」(英語の「a」、「an」、及び「the」などに相当する) は、特に断らない限り、複数の対象(オブジェクト)が含まれていると理解すべきである。したがって、例えば、前記「触媒」が含まれる反応には、1種の触媒、又は2種以上の触媒が含まれている。また、用語「又は(若しくは/或いは)」などは、特に断らない限り、通常「及び/又は」の意味を含んで用いられる。
【0016】
一態様では、本発明は下記式Iで表される化合物の結晶を提供する。
【化2】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物の結晶は、そのX線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=16.4°、21.8°、25.3°、及び26.0°±0.2°に回折ピークを有し、典型的には、2θ=16.4°、19.4°、21.2°、21.8°、25.3°、及び26.0°±0.2°に回折ピークを有し、より典型的には、2θ=13.0°、16.4°、18.5°、19.4°、21.2°、21.8°、25.3°、及び26.0°±0.2°に回折ピークを有する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物の結晶のX線回折ピークは、以下のような特徴を有する。
【表A】
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物の結晶は、
図1、
図3、
図5又は
図6に示すようなX線回折パターンを有する。
図1、
図3、
図5及び
図6から、異なる結晶化溶媒中で得られた式Iで表される化合物の結晶は実質的に同じX線回折パターンを有するため、それらは同じ結晶形であることが分かる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式Iで表される化合物の結晶はDSC(開始温度193.3±5℃、及びピーク温度195.2±5℃)により特徴付けられることもできる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物の結晶は、
図2又は
図4に示すようなDSCパターンを有する。
【0021】
また、本発明は、
(1)式Iで表される化合物を結晶化溶媒に溶解させるステップと、
(2)冷却して結晶化させ、そして濾過するステップとを含む、式Iで表される化合物の結晶の製造方法を提供する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、前記結晶化溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、アセトン、ブタノン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、酢酸イソプロピル、及びそれらの混合溶媒からなる群から選ばれる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、前記結晶化溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、及びそれらの混合溶媒からなる群から選ばれ、好ましくはメタノールである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iで表される化合物1gに対して、結晶化溶媒の添加量は、2mL~100mL、好ましくは20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、又は100mLであり、より好ましくは、20mL~60mL、20mL~40mL、又は30mL~50mLである。
【0025】
また、本発明は、式Iで表される化合物の結晶をメタノール含有溶媒から析出させるステップを含む、式Iで表される化合物の結晶の他の製造方法を提供する。
【0026】
本発明は、式Iで表される化合物の結晶を含む結晶組成物をさらに提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物の結晶は、前記結晶組成物の50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上を占める。
【0027】
本発明は、前記式Iで表される化合物の結晶を含み、又は、式Iで表される化合物の結晶を含有する結晶組成物を含む、医薬組成物さらに提供する。また、当該医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体をさらに含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0028】
本発明は、前記式Iで表される化合物の結晶又はその結晶組成物又はその医薬組成物の、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。また、本発明は、前記式Iで表される化合物の結晶又はその結晶組成物又はその医薬組成物を、それを必要とする個体(対象)に投与するステップを含む、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防する方法を提供する。また、本発明は、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための、前記式Iで表される化合物の結晶又はその結晶組成物又はその医薬組成物を提供する。本発明は、前記式Iで表される化合物の結晶又はその結晶組成物又はその医薬組成物の、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための使用を提供する。
【0029】
他の一態様では、本発明は下記式Iで表される化合物のリン酸塩を提供する。
【化3】
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表されるリン酸塩の中に式Iで表される化合物とリン酸とのモル比は、1:0.5~2、好ましくは1:0.5~1、より好ましくは1:1である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のリン酸塩は、結晶形を呈する。
【0032】
また、本発明は、式Iで表される化合物をリン酸と接触させた後、溶媒からリン酸塩を析出させるステップを含む、式Iで表される化合物のリン酸塩の製造方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、1,4-ジオキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、トルエン及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれ、好ましくはエタノールである。
【0033】
他の一態様では、本発明は下記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶を提供する。
【化4】
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶は、そのX線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=6.4°、11.9°、18.2°、21.7°、22.1°、22.9°、及び23.2°±0.2°に回折ピークを有し、典型的には、2θ=6.4°、11.9°、16.5°、17.5°、18.2°、18.6°、21.7°、22.1°、22.9°、及び23.2°±0.2°に回折ピークを有し、より典型的には、2θ=6.4°、10.1°、11.9°、16.5°、17.5°、18.2°、18.6°、19.8°、21.7°、22.1°、22.9°、23.2°、及び23.8°±0.2°に回折ピークを有する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶の回折ピークは、以下のような特徴を有する。
【表B】
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶は、
図1に示すようなX線回折パターンを有する。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶は、
図8に示すようなDSCパターンを有する。
【0038】
また、本発明は、式Iで表される化合物をリン酸と接触させた後、溶媒から結晶を析出させるステップを含む、式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶の製造方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、1,4-ジオキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、トルエン及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれ、好ましくはエタノールである。
【0039】
本発明は、式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶を含む結晶組成物をさらに提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶は、前記結晶組成物の50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上を占める。
【0040】
本発明は、前記式Iで表される化合物のリン酸塩又は前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶、又は前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶を含有する結晶組成物を含む、医薬組成物さらに提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、治療有効量の前記式Iで表される化合物のリン酸塩、又は前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶を含む。また、当該医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体をさらに含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0041】
本発明は、前記式Iで表される化合物のリン酸塩、又は前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物の、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。また、本発明は、前記式Iで表される化合物のリン酸塩、又は前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物を、それを必要とする個体(対象)に投与するステップを含む、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防する方法を提供する。また、本発明は、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための、前記式Iで表される化合物のリン酸塩、又は前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物を提供する。本発明は、前記式Iで表される化合物のリン酸塩、又は前記式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物の、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための使用を提供する。
【0042】
他の一態様では、本発明は下記式Iで表される化合物のフマル酸塩を提供する。
【化5】
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表されるフマル酸塩の中に式Iで表される化合物とフマル酸とのモル比は、1:0.5~2、好ましくは1:0.5~1、より好ましくは1:0.5である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩は、結晶形を呈することができる。
【0045】
また、本発明は、式Iで表される化合物をフマル酸と接触させた後、溶媒からフマル酸塩を析出させるステップを含む、式Iで表される化合物のフマル酸塩の製造方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、1,4-ジオキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、トルエン及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれ、好ましくはエタノールである。
【0046】
他の一態様では、本発明は下記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶を提供する。
【化6】
【0047】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=20.67°±0.2°に回折ピークを有する。本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶は、
図9に示すようなXRDパターンを有する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶は、
図10に示すようなDSCパターンを有する。
【0049】
また、本発明は、式Iで表される化合物をフマル酸と接触させた後、溶媒から結晶を析出させるステップを含む、式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶の製造方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、1,4-ジオキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、トルエン及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれ、好ましくはエタノールである。
【0050】
本発明は、式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶を含む結晶組成物をさらに提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶は、前記結晶組成物の50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上を占める。
【0051】
本発明は、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩又は前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶、又は前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶を含有する結晶組成物を含む、医薬組成物さらに提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物には、治療有効量の前記式Iで表される化合物のフマル酸塩、又は前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶を含む。また、本発明のいくつかの実施形態において、当該医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体をさらに含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0052】
本発明は、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩、又は前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物の、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。また、本発明は、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩、又は前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物を、それを必要とする個体(対象)に投与するステップを含む、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防する方法を提供する。また、本発明は、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩、又は前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物を提供する。本発明は、前記式Iで表される化合物のフマル酸塩、又は前記式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶、又はその結晶組成物、又はそれらの医薬組成物の、DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患を治療又は予防するための使用を提供する。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態において、前記DPP-IV阻害から恩恵を受ける疾患は、インスリン抵抗性、高血糖症、II型糖尿病、糖尿病性脂質異常症、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、代謝性アシドーシス、ケトーシス、食欲調節、肥満、種々の癌、神経系障害、及び免疫系障害等からなる群から選ばれ、好ましくはII型糖尿病又は肥満である。
【0054】
本発明において、X線回折パターンは、下記方法により測定され、すなわち、機器はBruker D8 ADVANCE X線回折計であり、方法はターゲット: Cu: K-Alphaであり、波長λ=1.54179Å、管電圧(Voltage)は40kVであり、管電流(Current)は40mAであり、走査範囲は4~40°であり、試料回転速度は15rpmであり、走査速度は10°/分間である。或いは、下記方法により測定され、すなわち、機器はBruker D8 ADVANCE X線回折計であり、方法はターゲット:Cuであり、波長λ=1.5418Å、管電圧(Voltage)は40kVであり、管電流(Current)は40mAであり、走査範囲は3~40°であり、走査速度はステップ毎に0.1秒、ステップ毎に0.02°である。
【0055】
本発明において、示差走査熱量分析(DSC)は、下記方法により測定され、すなわち、機器はTA Q2000示差走査熱量計であり、方法は試料(~1mg)を採ってDSCアルミ鍋に入れて測定し、その中で、温度が25℃~300℃であり、昇温速度が10℃/minである。
【0056】
本発明に係る式Iで表される化合物のリン酸塩又はフマル酸塩は、前記塩における式Iで表される化合物と対応の酸との比を、滴定法により測定することができる。滴定装置はMETTLER T50であり、滴定液は0.1mol/L水酸化ナトリウム滴定液であり、滴定溶媒は水である。
【0057】
なお、X線回折パターン(スペクトル)において、結晶化合物から得られる回折パターンは、特定の結晶形に関して特徴的なものである場合が多いが、スペクトル帯(特に低角度において)の相対強度は、結晶条件、粒径及びその他の測定条件の相違により生じる優位配向効果(preferential orientation effects)によって変化する可能性がある。したがって、回折ピークの相対強度は、相応の結晶形に対して特徴的ではなく、既知の結晶形と同じか否かを判断する際に、ピークの相対強度ではなくピークの相対位置をさらに注意すべきである。また、いかなる所定の結晶形に対して、ピークの位置に少しの誤差が存在する可能性があることは、結晶学分野に周知である。例えば、試料を分析する際の温度の変化、試料の移動、又は計器の較正等により、ピークの位置が移動することができ、2θ値の測定誤差は、約±0.2°となる場合がある。そのため、それぞれの結晶形の構造を同定する場合、このような誤差を考慮すべきである。XRDパターンにおいて、通常、2θ角又は格子面間隔dでピーク位置を示し、両方の間に簡単な換算関係:d=λ/2sinθを持っており、その中で、dは格子面間隔を表し、λは入射X線の波長を表し、θは回折角を表す。同一種類の化合物の同一種類の結晶形について、そのXRDパターンのピーク位置は、全体的に類似性を有するが、相対強度の誤差がより大きい場合がある。なお、混合物の同定において、含有量の低下等の要因により、一部の回折線が欠失することがあるが、この場合、高純度試料において観察された全てのスペクトル帯に頼る必要がなく、1本のスペクトル帯だけでもが所定の結晶に対して特徴的なものである場合もある。
【0058】
なお、DSCでは、結晶がその結晶構造に変化を生じたり、結晶が熔融により熱を吸収又は放出したりする際の転移温度を測定する。同一種類の化合物の同一種類の結晶形について、連続的な分析において、熱転移温度及び融点の誤差は、典型的に約5℃以内にある。ある化合物がある所定のDSCピーク又は融点を有するという場合、当該DSCピーク又は融点±5℃を意味する。DSCは異なる結晶形を判別するための補助方法を提供する。異なる結晶形は、それらの異なる転移温度の特徴によって識別することができる。
【0059】
本発明において、用語「医薬組成物」とは、本発明の活性化合物と、本分野において通常に許容される、生物活性化合物を有機体(例えば、ヒト)に送達するための担体、賦形剤及び/又は媒体とからなる製剤を意味する。医薬組成物は、本発明の化合物を有機体に投与することに有利となる目的とする。
【0060】
本明細書に記載の用語「薬学的に許容される担体」とは、有機体(例えば、ヒト)に対して顕著な刺激作用がなく、且つ活性化合物の生物学的活性や性能を損なうことのない担体や希釈剤を意味する。「薬学的に許容される賦形剤及び/又は媒体」とは、活性成分とともに投与され且つ活性成分の投与に役立つ不活性物質である。「薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体」は、ヒトや動物(例えば、家畜)に利用可能な任意の担体、賦形剤、媒体、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、矯味補強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、崩壊剤、懸濁促進剤、安定剤、等張剤、溶剤又は乳化剤等が挙げられるが、これらに制限されない。前記賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種の糖及び各種の澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0061】
本発明に係る化合物若しくはその塩、又はそれらの結晶組成物の投与は、純粋な形で又は適切な医薬組成物の形で、類似の使用を提供する医薬の任意に許容され得る投与方式で行われてもよい。本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る化合物若しくはその塩又はそれらの結晶又は結晶組成物と、適切な医薬的に許容され得る担体、希釈剤、媒体又は賦形剤とを組み合わせて製造されてもよい。本発明に係る医薬組成物は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、ペースト、乳剤、懸濁剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル化剤、マイクロ球、及びエアゾール等の固体状態、半固体状態、液体状態又は気体状態の製剤を調製することができる。
【0062】
本発明に係る化合物若しくはその塩又はそれらの結晶又は結晶組成物、或いはそれらの医薬組成物の典型的な投与経路は、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、経腸投与、又は局所投与、経皮投与、吸入投与、腸管外投与、舌下投与、膣内投与、鼻内投与、眼内投与、腹膜内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与を含むが、これらに限らない。好ましい投与経路は、経口投与である。
【0063】
本発明に係る医薬組成物は、当業者によく知られている方法、例えば従来の混合法、溶解法、造粒法、糖衣錠製法、研磨法、乳化法、凍結乾燥法等により製造されてもよい。
【0064】
好ましい実施形態において、医薬組成物は経口投与の形である。経口投与には、活性化合物と当該分野でよく知られている薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体とを混合して該医薬組成物を製造することができる。これらの担体、賦形剤及び/又は媒体を利用して、本発明に係る化合物若しくはその塩又はそれらの結晶又は結晶組成物を錠剤、丸剤、トローチ剤、コート剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ、懸濁剤等に製造して、患者へ経口投与することができる。
【0065】
固体経口投与医薬組成物は、従来の混合、充填又は打錠の方法により製造されてもよい。例えば、下記の方法により得ることができ、すなわち、前記活性化合物と固体賦形剤とを混合し、必要に応じて、得られた混合物をパンミリングし、必要とすれば他の適当な賦形剤を加え、そして当該混合物を顆粒に加工して錠剤や糖衣剤のコアを得る。適切な賦形剤としては、下記の充填剤、崩壊剤が挙げられるが、これらに限定されない。該充填剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖類、微結晶セルロース、コーンスターチ、小麦スターチ、ライススターチ、ポテトスターチなどのセルロース類、及び、ペクチン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドンなどの他の物質などが挙げられ、また、該崩壊剤は、カルボキシメチルデンプンナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸などに加えて、アルギン酸ナトリウムなどの塩も挙げられる。薬務において周知の方法により、必要に応じて糖衣錠のコアに対して、特に腸溶コーティングを用いてコーティングしてもよい。
【0066】
本発明に使用された全ての溶媒は、市販品でありさらなる精製の必要がないままで使用することができる。反応は、通常、不活性雰囲気例えば窒素雰囲気下で無水溶媒の中で行われる。
【0067】
本発明に係る式1で表される化合物の結晶は、純度が高く、結晶度が高く、安定性が良い等の利点を有する。さらに、本発明に係る式Iで表される化合物の結晶の製造方法は、操作が簡単で、溶媒が安価で容易に入手可能で、結晶化条件が温和であるなどの利点を持ち、工業化生産に適している。本発明に係る式Iで表される化合物の塩の製造方法は、操作が簡単であり、得られた式Iで表される化合物の塩が高純度で良好な薬物動態学的特性を有し、所望の医薬組成物として製造されることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】式Iで表される化合物の結晶のXRDパターンを示す図である。
【
図2】式Iで表される化合物の結晶のDSCパターンを示す図である。
【
図3】式Iで表される化合物の結晶のXRDパターンを示す図である。
【
図4】式Iで表される化合物の結晶のDSCパターンを示す図である。
【
図5】式Iで表される化合物の結晶のXRDパターンを示す図である。
【
図6】式Iで表される化合物の結晶のXRDパターンを示す図である。
【
図7】式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶のXRDパターンを示す図である。
【
図8】式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶のDSCパターンを示す図である。
【
図9】式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶のXRDパターンを示す図である。
【
図10】式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶のDSCパターンを示す図である。
【
図11】式Iで表される化合物(式I化合物)のob/obマウス血清のDPP-IV活性に対する阻害作用を示す図である。
【実施例】
【0069】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明を例示的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0070】
実施例1: 5-メタンスルホニルイソインドリン塩酸塩(2)
【化7】
【0071】
ステップ1: 5-ブロモイソインドリン(4)
式3で表される化合物(22.6g、100mmol)を、乾燥テトラヒドロフラン(250mL)に加え、ボラン-ジメチルスルフィド錯体(51mL、500mmol)を滴下し、そして室温で2時間撹拌し、さらに一晩還流した。冷却した後、メタノールを注意深く滴下して過剰のボランをクエンチした。得られた混合物を蒸発により濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して5-ブロモイソインドリン(10.36g、収率52%)を得た。MS m/z[ESI]:198.0[M+1]。
【0072】
ステップ2: 5-ブロモ-2-tert-ブトキシカルボニルイソインドリン(5)
式4で表される化合物(10.36g、52.3mmol)をジクロロメタン80mLに溶解させ、氷浴中で冷却した。Boc無水物(22.8g、104.6mmol)を滴下し、さらに炭酸ナトリウム(16.6g、156.9mmol)及び水(150mL)を加え、氷浴中で4時間撹拌した。有機相を分離し、食塩水で洗浄した。有機相を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して生成物5-ブロモ-2-tert-ブトキシカルボニルイソインドリン(13.3g、収率85%)を得た。MS m/z[ESI]:298.0[M+1]。1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ= 7.37 (2H, m),7.11 (1H, m),4.62 (4H, m),1.51 (9H, s)。
【0073】
ステップ3: 5-メタンスルホニル-2-tert-ブトキシカルボニルイソインドリン(6)
式5で表される化合物(5.96g、20mmol)、メチルスルフィン酸ナトリウム(90%、2.94g、26mmol)、ヨウ化第一銅(762mg、4mmol)、及びL-プロリン(920mg、8mmol)を、ジメチルスルホキシド(80mL)に加え、窒素ガスを通気して空気を除去し、120℃で2日間撹拌した。冷却した後、水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機相を乾燥蒸発により濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して5-メタンスルホニル-2-tert-ブトキシカルボニルイソインドリン(5.46g、収率92%)を得た。MS m/z[ESI]:298.1[M+1]。
【0074】
ステップ4: 5-メタンスルホニルイソインドリン塩酸塩(2)
式6で表される化合物(5.46g、18.4mmol)を、メタノール/ジクロロメタン(1:1、80mL)に溶解させ、飽和まで塩化水素ガスを通気し、室温で1時間撹拌した。反応混合物をエチルエーテル800mLに注ぎ、ろ過して沈殿物を収集し、エチルエーテルで沈殿物を洗浄し、乾燥して生成物5-メタンスルホニルイソインドリン塩酸塩(3.44g、収率80%)を得た。MS m/z[ESI]:198.0[M+1]。1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ= 7.82 (1H, s),7.81 (1H, d,J = 8.0 Hz),7.43 (1H, d,J = 8.0 Hz),4.31 (4H, s),3.05 (3H, s),2.30 (2H, brs)。
【0075】
実施例2: (2R,3S,5R)-5-(5-メタンスルホニルイソインドリン-2-イル)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン粗生成物
ステップ1: tert-ブチル[(2R,3S,5R)-5-(5-メタンスルホニルイソインドリン-2-イル)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]カルバメート(8)
【化8】
式7で表される化合物(150g、458.27mmol)及び式2で表される化合物(117.82g、504.09mmol)を、N、N-ジイソプロピルアセトアミド溶媒2.25Lに加え、均一に撹拌し、-10℃に冷却した。次いで反応系に酢酸(26.26mL、458.27mmol)を徐々に滴下し、滴下終了後、NaBH(AcO)
3(194.25g、916.54mmol)を加え、そして保温・撹拌しながら1時間反応させた。温度を20℃以下に制御し、反応系をアンモニア水溶液でpH=10に調整し、15分間撹拌した後、吸引濾過し、濾過ケーキを精製水でスラリー化(叩解)して洗浄した後、吸引濾過し、濾過ケーキを60℃で送風乾燥して、式8で表される化合物223.5g(収率:95%)を得た。
【0076】
ステップ2: (2R,3S,5R)-5-(5-メタンスルホニルイソインドリン-2-イル)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(I)粗生成物
【化9】
式8で表される化合物(202g、396.44mmol)を、N、N-ジイソプロピルアセトアミドと精製水(v/v=1/1)の混合溶媒1.2Lに加えて均一に撹拌した。硫酸溶液(1.1L、5.95mol)を徐々に滴下し、滴下終了後、反応系を40℃に加熱し、撹拌しながら2時間反応させ、その後、アンモニア水溶液を滴下して、得られた溶液を約pH=10に調整し、滴下終了後、得られた混合物を1時間撹拌し、そして吸引濾過し、濾過ケーキを精製水で洗浄した後、60℃で送風乾燥して、式Iで表される化合物の粗生成物133.1g(収率:83%)を得た。
【0077】
実施例3: (2R,3S,5R)-5-(5-メタンスルホニルイソインドリン-2-イル)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(I)の結晶
方法1
粗生成物130gを無水メタノール650mLに加え、加熱溶解させて澄み溶液を得、次に溶液を活性炭で脱色し、且つ熱いうちに吸引濾過し、濾液を室温に冷却し、2時間結晶化させ、次いで吸引濾過し、濾過ケーキを60℃で送風乾燥して結晶94.2g(収率:72.4%)を得た。
【0078】
方法2
無水メタノール(26.8L)を加熱還流した後、粗生成物(670g)を加えて溶解させた後、濾過し、ろ液を-5℃~5℃に冷却し、1時間結晶化させ、そして吸引濾過し、濾過ケーキを無水メタノールで濯ぎ、そして50℃~60℃で10~12時間送風乾燥して結晶528g(収率:78%)を得た。
【0079】
結晶化溶媒としてメタノールを使用して方法1によって製造された結晶の典型的なXRDパターンを
図1に示し、DSCパターンを
図2に示した。
【0080】
結晶化溶媒としてメタノールを使用して方法2によって製造された結晶の別の典型的なXRDパターンを
図3に示し、DSCパターンを
図4に示した。
【0081】
実施例3の方法1又は方法2と同様のステップを参照し、結晶化溶媒を変更し、得られた結晶を下記表に示した。
【表C】
実施例3では、異なる結晶化溶媒を用いて得られた式Iで表される化合物の結晶は全て同じ結晶形に属している。
【0082】
実施例4: (2R,3S,5R)-5-(5-メタンスルホニルイソインドリン-2-イル)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミンのリン酸塩の結晶
【化10】
式Iで表される化合物(7g、17.1mmol)を350mLのエタノール溶媒に加え、加熱還流し、溶液が清澄になった後、活性炭1.0gを加えて10分間脱色し、そして熱いうちに吸引濾過し、濾液にリン酸溶液(1.8mL、34.2mmol)を滴下したところ、大量の白色固体が析出した。滴下終了後、反応系を室温まで冷却し、2時間撹拌した後、固体を連続的に析出させ、得られた混合物を吸引濾過し、固体を一晩送風乾燥して式Iで表される化合物のリン酸塩(1:1、滴定法により測定される)の結晶8.3g(収率:95.8%、純度:99.12%)を得た。得られた生成物の典型的なXRDパターンを
図7に示し、DSCパターンを
図8に示した。
【0083】
実施例5: (2R,3S,5R)-5-(5-メタンスルホニルイソインドリン-2-イル)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミンのフマル酸塩
【化11】
式Iで表される化合物(7g、17.1mmol)をエタノール溶媒350mLに加え、加熱還流し、溶液が清澄になった後、活性炭1.0gを加えて10分間脱色し、そして熱いうちに吸引濾過し、濾液にフマル酸(3.97g、34.2mmol)を加え、添加終了後、反応系を室温に冷却し、そして氷水浴中で2時間撹拌し、固体を析出させ、得られた混合物を吸引濾過し、固体を50℃で6時間送風乾燥して、式Iで表される化合物のフマル酸塩7.2g(1:0.5、滴定法により測定)(収率:80.3%、純度:97.7%)を得た。得られた生成物の典型的なXRDパターンを
図9に示し、DSCパターンを
図10に示した。
【0084】
実験例1; 式Iで表される化合物の結晶の安定性試験
『原料薬と薬物製剤安定性試験の指導原則』(中国薬局方、2010年版、付録XIXC)に従って、本発明に係る式Iで表される化合物の結晶の温度40℃、60℃で高湿度(RH92.5%)及び光照射条件下での安定性はを評価し、それぞれ5日目又は10日目にサンプリングして測定した結果を最初の結果と比べて、試験結果を下記表1に示した。
【表1】
【0085】
実験例2: 結晶形の式Iで表される化合物及びその塩の薬物動態学
雄ビーグル犬(体重10±1kg)を、7日間順応した後、無作為に3つの群(1群あたり3匹の犬)に分け、それぞれ2mg/kg体重の用量(遊離形で計算)の式Iで表される化合物の結晶、式Iで表される化合物のフマル酸塩の結晶、及び式Iで表される化合物のリン酸塩の結晶を投与した。
【0086】
雄ビーグル犬は投与前に約12時間絶食させ、水を自由に摂取させた。投与後4時間絶食に維持させた。投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10、24、30、48、及び72時間点に、被験ビーグル犬の前肢静脈から血液試料(0.8mL)を採取した。次に試料をEDTA-K2遠心分離管に入れ、4℃で保存し、採血後0.5時間以内に4℃で4000 rpmの速度で10分間遠心分離して血漿を分離した。全ての血漿を収集した後、1時間以内に-20℃で保存して用意した。
【0087】
被験血漿試料及び標準曲線試料のそれぞれ50μLを取って、いずれに内部標準物質含有メタノール溶液300μLを加え、得られた混合物を5分間振盪して均一に混合し、そして13000rpmの速度で10分間遠心分離した後、上清80μLを採取し、上清5μLをピペッティングしてLC/MS/MS測定に用いてクロマトグラムを記録した。
【0088】
本発明に係る式Iで表される化合物及びその塩の経口生物学的利用率は、ビーグル犬におけるインビボ薬物動態学的実験を通して評価された。式Iで表される化合物及びその塩の薬物動態学的パラメーターを下記の表に示した。
【表2】
【0089】
生物学的実験例3: DPP-IV酵素に対する阻害活性の測定
本発明は下記方法で式I化合物の血漿におけるDPP-IV酵素に対する阻害活性を測定し、当該阻害活性はIC50で示され、IC50はDPP-IV酵素の活性が50%阻害された際の化合物の濃度である。
【0090】
材料及び方法:
材料:
a. 白色384ウェルプレート (Perkin Elmer、Catalog No.607290/99)
b. HEPES緩衝液: 1MのHEPES緩衝液(Invitrogen,Catalog No.15630-080)を用いて0.5MのHEPES緩衝液50mLを調製し、すなわち、1MのHEPES緩衝液25mLを取ってddH2O(再蒸留水)の適量を加え、NaOHでpHを7.8に調節し、最後に50mLになるまでddH2Oを加える。
c. ラット血漿: ラットの目縁から採血し、抗凝固のためにヘパリンを加え、4,000rpmで10分間遠心し、上澄みの血漿を取ってDPP-IVの酵素源とする。
d. DPP-IV酵素反応基質H-Gly-Pro-AMC(グリシン-プロリン-7-アミノ-4-メチルクマリン): 本発明の発明人らにより合成され、DMSOに溶解されて母液100mMを形成する。
e. 1MのMgCl2
f. 1.5MのNaCl
g. 10% BAS
h. DMSO(ジメチルスルホキシド)
i. ddH2O
j. 被検化合物: 陽性対照化合物Omarigliptin及び本発明の式I化合物
【0091】
下記のような操作ステップによって行う。
1. DPP-IV酵素反応緩衝液の調製: 50mM HEPES(pH=7.8)、80mM MgCl
2、150mM NaCl、1%BSAを、氷の上に置いて用意し、
2. DMSOで被検化合物を10mMから1mM(最終使用濃度の100倍)に希釈し、その後、96ウェルプレートに3倍段階希釈し、共に11個の濃度にし、第12ウェルにDMSOを加えて空白対照とし、そして酵素反応緩衝液で25倍希釈して最終使用濃度の4倍で用意し、
3. DPP-IV酵素反応基質H-Gly-Pro-AMCを解凍し、酵素反応緩衝液で160μM(4倍の最終使用濃度)に希釈し、そして氷の上に置いて用意し、
4. ラット血漿を解凍し、酵素反応緩衝液で100倍(2倍の最終使用濃度)希釈し、そして氷の上に置いて用意し、
5. 384ウェルプレート中に4倍の最終濃度の被検化合物5μLを加え、その後、ラット血漿(2倍の最終使用濃度)10μLを加え、遠心分離して均一に混合し、
6. 酵素反応基質H-Gly-Pro-AMC(4倍の最終使用濃度)5μLを加え、遠心分離して均一に混合し、シーリングフィルムで384ウェルプレートを封止し、
7. インキュベータ(22~23℃)において1時間インキュベートし、
8. FlexStationI3 (Molecular devices)マイクロプレートリーダーによる反応の蛍光信号の読み取り: 380nmで励起し、460nm波長の発光スペクトルを読み取り、
9. 化合物のDPP-IV酵素に対する阻害IC50の生成: GraFit6ソフトウェアで化合物のIC
50値を計算する。
【表3】
【0092】
実験例4: CYP酵素系の阻害IC
50の測定
本発明は、式I化合物のCYP酵素系に対する阻害IC
50値を下記方法で測定した。
-80℃で凍結されたヒト肝ミクロソームを氷上に置いて解凍し、解凍直後に、直ちに100μLを取って60℃の恒温発振器に置いて100rpmで(1時間)インキュベートし、残りの肝ミクロソームを直ちに-80℃で凍結させた。1時間後、不活性化された肝ミクロソーム100μLを取ってリン酸塩緩衝液400μLを加えて4mg/mLの不活性化された肝ミクロソーム溶液になるように均一に混合し、また、-80℃で凍結されたヒト肝ミクロソームを氷上に置いて解凍させ、解凍直後に100μLを取ってリン酸塩緩衝液400μLを加えて4mg/mLの肝ミクロソーム溶液になるように均一に混合し、下記表4に基づいて陽性対照及び被検物(被検化合物)、並びに陰性対照群のインキュベーション混合液を並列に調製した。
【表4】
【0093】
混合液を37℃の恒温発振器に置いて100rpmで5分間インキュベートした。
2.5μLの被検物又は陽性対照ワーキング溶液(陰性対照に被検物ワーキング溶液を加えた)を取って、インキュベーション混合液91.5μL、NADPH溶液6μLを加え、ボルテックス(Vortex)して反応を開始し、溶液を37℃の恒温発振器に置いて100rpmでインキュベートし、インキュベーション時間は、下記表5に示した。
【表5】
【0094】
相応の時間でインキュベートした後、内部標準液(CYP2C19の内部標準液は100ng/mLクロラムフェニコールのアセトニトリル溶液であり、残りの内部標準液は250ng/mLワルファリン、500ng/mLプロプラノロールのアセトニトリル溶液である)200μLを加えて反応を終止させ、反応終止の試料を12,000rpmで10分間遠心し、上澄み液を取って検出した。
【0095】
データの処理は、Analyst1.4.2又はそれと同等のソフトウェアを用いる。積分を検出して全てのピークが適当に積分することを確保し、必要に応じて積分パラメータを調整する。
【0096】
分析物の定量は、分析物のピーク面積と内部標準のピーク面積との比として定義される。液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析法(LC-MS/MS)により分析する。Graphpad Prism(バージョン5.03)ソフトウェアでIC
50等のパラメータを計算し、結果は下記表6に示した。
【表6】
【0097】
実験例5: 肝ミクロソーム代謝安定性
本発明は、下記方法で式I化合物の肝ミクロソーム代謝安定性を測定した。
ヒト肝ミクロソーム8μL(20mg/mL)、NADPH 20μL、及び0.1Mのリン酸塩緩衝液368μLを取って混合し、37℃において5分間プレインキュベートした。それぞれ、分析ワーキング溶液(被検物又は陽性対照)4μLを加え、37℃で0、10、20、30、45及び60分間プレインキュベートし、各時間点において、インキュベーション溶液50μLを取って、内部標準液(0.25Mワルファリン)含有アセトニトリル150μLを加え、ラット肝ミクロソーム(20mg/mL)、NADPH 10μL、及び0.1Mのリン酸塩緩衝液184μLを取って混合し、37℃で5分間プレインキュベートした。それぞれ、分析ワーキング溶液(被検物又は陽性対照)2μLを加え、37℃で0、10、20、30、45及び60分間プレインキュベートし、各時間点において、インキュベーション溶液20μLを取って、内部標準液(0.25Mのワルファリン)含有アセトニトリル180μLを加えた。全ての試料をボルテックスした後、4,000rpmで15分間遠心し、そして上澄み液150μLを取って96ウェルプレートに加えた。5μLを取ってLC/MS/MSシステムに入れて検出した。分析クロマトグラフィーカラムはC18 1.7μm 2.1×50mm(Waters)である。三連四重極型質量分析計(API4000、AB社)を用いて検出した。陽イオンモードでCT-1225のピーク面積と内部標準のピーク面積との比値を検出した。半減期値は被検物/内部標準のピーク面積と時間との比値である。結果のデータは下記表7に示した。
【表7】
【0098】
実験例6: ob/obマウス血清のDPP-IV活性に対する単回投与の阻害作用
雌ob/obマウス36匹は、ランダムに6匹づつ、それぞれモデル対照群、式I化合物1mg/kg群、式I化合物3mg/kg群、式I化合物10mg/kg群、式I化合物30mg/kg群、及び陽性対照Omarigliptin30mg/kg群という6群に分けられた。各群のマウスに、異なる用量の式I化合物又はOmarigliptinを経口投与し、モデル対照群に0.25% CMC-Naを経口投与し、投与前にも、投与後の2、4、10、24、34、48、58、72及び96h時間点にも採血し、血清を分離して血清DPP-IVの活性を測定した。
【0099】
血清DPP-IVの活性測定方法:血清試料5μL取って、80mM MgCl2緩衝液45μLを加え、均一に混合し、室温で5分間プレインキュベートし、0.1mM反応基質Gly-Pro-7-AMC 10μL及び緩衝液40μLを加え、遮光下で均一混合した後、3分間おきに蛍光測定(励起波380nm/発光波460nm)を1回行い、18分間まで合計6回測定し、測定結果により空白の背景をマイナスした後、時間-蛍光値曲線を作り、その傾きを活性値とし、投与前0hの時の血清DPP-IVの活性値を100%とし、下記式によって投与後の各時間点での血清DPP-IVの比活性値(specific activity)を計算し、比活性値(%)=投与後の活性値/投与前の活性値×100%である。
【0100】
試験結果:異なる用量の式I化合物をob/obマウスに単回経口投与した後、血清DPP-IVの活性が有意に阻害され、用量-時間依存性を示した。式Iで表される化合物1mg/kgを投与した後、10時間以内でマウス血清DPP-IVの活性阻害率が70%より高く、式Iで表される化合物3mg/kgを投与した後、24時間以内で血清DPP-IVの活性阻害率が70%より高く、式Iで表される化合物10mg/kgを投与した後、34時間以内で血清DPP-IVの活性阻害率が70%より高く、かつ、式Iで表される化合物30mg/kgを投与した後、72時間以内で血清DPP-IVの活性阻害率がいずれも70%以上に維持された。陽性対照Omarigliptin30mg/kg群のマウスは、投与後の34h以内で血清DPP-IVの活性の阻害率が70%より高くなった。
【表8】