(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ローリングサークル増幅産物を処理する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20220111BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220111BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6876 Z
G01N33/53 M
(21)【出願番号】P 2019518920
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(86)【国際出願番号】 IB2017056121
(87)【国際公開番号】W WO2018078469
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-29
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516154026
【氏名又は名称】バナディス ダイアグノスティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】オーマン,オーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】パーション,フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】オラソン,ライナス
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083002(WO,A2)
【文献】特開2001-269196(JP,A)
【文献】特表2005-520484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
G01N33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローリングサークル増幅(RCA)産物を含む膜を処理するための方法であって、
(a)前記膜中または前記膜上にある蛍光標識化RCA産物を含む多孔質キャピラリー膜を得ることと、
(b)硬化性ポリマーを前記膜上に堆積させることと、
(c)前記硬化性ポリマーを硬化させて前記RCA産物を固体中に封入することと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(c)で生成された前記固体が、透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)の前記硬化性ポリマーが、硬化剤を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)の前記硬化性ポリマーが、粘度を下げるために希釈剤を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記膜が、陽極酸化アルミニウム膜であり、(c)の固体が、前記膜を透明にする湿潤特性を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記硬化性ポリマーが、シリコーンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコーンが、硬化剤と、場合によってはシリコーンオイル希釈剤と混合される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化ステップ(c)が、外部刺激によって開始される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記外部刺激が、熱、湿気、または光である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光標識化RCA産物が、
前記膜を通して前記RCA産物を濾過して、前記膜中または前記膜上にあるRCA産物を生成することと、
前記濾過の前または後に前記RCA産物を蛍光標識化することと、によって作製される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、さらに、
(d)前記膜の領域内に存在する個々の標識化RCA産物の数を定量化し、それによって試料中の前記標識化RCA産物の数の推定値を提供する、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
(a)蛍光標識化RCA産物を生成するための試薬と、
(b)多孔質キャピラリー膜と、
(c)硬化性ポリマーと、を含む、キット。
【請求項13】
前記キットが、さらに硬化剤を含み、前記硬化剤が、前記硬化性ポリマーと同じ容器内にある、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記キットが、さらに硬化剤を含み、前記硬化剤および前記硬化性ポリマーが、異なる容器内にある、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
前記硬化性ポリマーが、シリコーンである、請求項12~14のいずれかに記載のキット。
【請求項16】
前記多孔質キャピラリー膜が、陽極酸化アルミニウムフィルターである、請求項12~15のいずれかに記載のキット。
【請求項17】
(a)多孔質キャピラリー膜と、
(b)前記膜上の複数の蛍光標識化RCA産物と、
(c)前記蛍光標識化RCA産物を封入する
固体の層と、を含む、組成物。
【請求項18】
前記
固体が、前記
膜の孔を通って浸透する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記
膜が、酸化アルミニウムフィルターである、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
前記
固体が、架橋シリコーンである、請求項17~19のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年10月27日に出願された仮出願第62/413,762号の利益を主張するものであり、その出願は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
いくつかの核酸ベースの診断試験は、プローブを核酸試料にハイブリダイズさせ、標的配列にハイブリダイズするプローブを環状化し、ローリングサークル増幅(RCA)を使用して環状化プローブを増幅し、RCA産物の数を定量することにより、実施できる。
【0003】
そのような方法では、RCA産物は様々な異なる方法で定量することができる。例えば、RCA産物は、理論的には、RCA産物を標識化し、試料をスライドガラスの表面に堆積させ、そのスライド上の標識化産物の数をカウントすることにより定量することができる。しかしながら、標識化RCA産物を含有する溶液をスライドガラスに単に載せ、その標識化RCA産物を表面に拡散させ、次いでスライドに付着した標識化RCA産物の数をカウントするが、それには数時間を要し、また標識化RCA産物のすべてがスライドに到達してカウントされるわけではない。これらの問題は、フィルターによって標識化RCA産物を濾過し、次いでフィルターによって捕捉された標識化RCA産物の数をカウントすることによって、大部分解決することができる。しかしながら、多くの蛍光標識は空気と接触すると急速に劣化することがあるため、そのような方法を確固たる仕方で実施することは困難な場合がある。さらに、RCA産物はフィルターが湿潤している場合あちこち移動することがある。これらの課題により、そのような方法をハイスループットな仕方で実施することは困難な場合があり、特に、試料を物理的に移動させる(例えば反転または回転させる)必要があるときには、分析は常に直ちに実行することができないか、または試料は再分析される必要がある。
【0004】
本開示はこれらの問題に対する解決策を提供すると考える。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、とりわけ、ローリングサークル増幅(RCA)産物を含む膜を処理するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、(a)膜中または膜上にある蛍光標識化RCA産物を含む多孔質キャピラリー膜を得ることと、(b)その膜上に硬化性ポリマーを堆積させることと、(c)その硬化性ポリマーを硬化させてRCA産物を固体に封入することと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーはシリコーンであることができ、その固体形態において透明であることができる。その方法を実施するためのキットおよびその方法によって作製される組成物も提供する。
【0006】
RCA産物を(液体を使用して、または液体を使用しない、とは対照的に)固体でカプセル化することは、RCA産物を「固定」する、すなわちRCA産物をフィルター上の適所に保持し、また蛍光標識化RCA産物が外気によって酸化される(すなわち分解される)ことも防止する、と考えられる。したがって、RCA産物を固体でカプセル化することによって、標識化RCA産物を含むフィルターを、迅速に多方向に移動(例えば反転、回転、または輸送)かつ/または長期間(例えば数週間、数ヶ月間、または数年でも)保管することができる。したがって、本方法は、(例えばロボットによる)分析前のフィルターの迅速な多方向の移動を含むワークフロー、またはRCA産物を常に直ちに定量化することができないワークフローにおいて、RCA産物の分析を容易にし得る。さらに、本方法は、長期間後にフィルターが再分析される必要がある場合においてワークフローで使用され得る。
【0007】
これらおよび他の潜在的な特徴および利点は、以下の説明に鑑みて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
当業者は、以下に記載される図面が例示目的のみであることを理解するだろう。図面は、本教示の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【0009】
【
図1】本方法のステップのいくつかを概略的に示している図である。
【
図2】実施例1に記載した実験の結果のいくつかを示しているヒストグラムである。
【
図3】細胞株混合物組成物に対する2つのチャネルのカウント比の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
種々の実施形態を記載する前に、本開示の教示が記載される特定の実施形態に限定されず、そのため、当然ながら変更可能であることを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
【0011】
本明細書で使用される節の見出しは、構成を目的とするに過ぎず、決して記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。本教示は、種々の実施形態と併せて記載されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。それどころか、本教示は、当業者には理解されるように、種々の代替手段、変更、および等価物を包含する。
【0012】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または等価な任意の方法および材料もまた、本教示の実施または試験において使用することもできるが、ここにいくつかの例示的な方法および材料を記載する。
【0013】
任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであり、本発明が先行発明のためにその刊行物に先行する権限を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提示される公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、別個に確認する必要がある。
【0014】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載および説明される個々の実施形態の各々は、本発明の教示の範囲または主旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されるか、または組み合わせられる個別の構成要素および特徴を有する。任意の記載された方法は、引用された事象の順序で、または論理的に可能な他の順序で実施することができる。
【0015】
本明細書で言及されるそのような特許および刊行物中に開示される全ての配列を含む全ての特許および刊行物は、参照により明示的に組み込まれる。
【0016】
さらに詳細に例示的な実施形態を記載する前に、以下の意味を記載して、本説明で使用される用語の意味および範囲を示す。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の指示対象を含むことが留意されなければならない。例えば、「プライマー」という用語は、1つ以上のプライマー、すなわち単一のプライマーおよび複数のプライマーを指す。請求項は任意の要素を除外するように作成することができることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の要素の列挙に関連して「専ら」、「唯一の」などのような排他的な用語の使用または「否定的な」制限の使用のための先行基準としての役割を果たすことを意図している。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「濾過」という用語は、分析物の一部がフィルターによって保持されるように、分析物(例えばローリングサークル増幅産物)を含有する液体をフィルターを通して移動させる行為を指す。濾過においては、液体の少なくともいくらかがフィルターの一方の側から他方の側へ移送される。
【0019】
本明細書中で使用されるとき、「ローリングサークル増幅」または「RCA」という用語は、鎖置換ポリメラーゼを使用して環状核酸鋳型の直鎖状コンカテマー化(concatemerized)コピーを生成する等温増幅を指す。RCAは、分子生物学の分野ではよく知られており、様々な文献、例えば、限定するものではないが、Lizardiら(Nat.Genet.1998 19:225-232),Schweitzerら(Proc.Natl.Acad.Sci.2000 97:10113-10119),Wiltshireら(Clin.Chem.2000 46:1990-1993)およびSchweitzerら(Curr.Opin.Biotech 2001 12:21-27)が挙げられ、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
本明細書中で使用されるとき、「ローリングサークル増幅産物」という用語は、ローリングサークル増幅反応のコンカテマー化産物を指す。本明細書中で使用されるとき、「蛍光標識化ローリングサークル増幅産物」という用語は、例えば、蛍光標識化オリゴヌクレオチドをローリングサークル増幅産物にハイブリダイズさせることによって、または他の手段(例えば、増幅中に、その産物に蛍光ヌクレオチドを導入する)によって、蛍光標識化されたローリングサークル増幅産物を指す。
【0021】
本明細書中で使用されるとき、「多孔質キャピラリー膜」は、膜の厚さに及ぶ、すなわち、膜の一方の側から他方の側にわたって比較的密に充填された個々のキャピラリーを有し、これにより、膜の一方の側から他方の側に液体を通過させるが、粒子は通過させない膜を指す。多孔質キャピラリー膜の例には、例えば、陽極酸化アルミニウム膜(下記参照)、ナノチャネルガラス膜、トラックエッチ膜、およびポリテトラフルオロエチレンが含まれるが、これらに限定されない。ナノチャネルガラス膜はガラス製であり、直径15ミクロン~15ナノメートルの高密度の均一なチャネルを有する(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Tonucciら,Advances in Nanophotonics II,AIP Conference Proceedings,2007 959:59-71;Pearsonら,Science 1995 270:68-70、およびTonucciら,Science 1992 258:783-785、ならびに米国特許第5,306,661号、同第5,332,681号、同第5,976,444号、同第6,087,274号、同第6,376,096号、同第6,483,640号、および同第6,599,616号を参照されたい)トラックエッチングされた膜は、荷電粒子衝撃(または照射)および化学エッチングの組み合わせによって作製された0.01μm~30μmの範囲の直径を有する孔を含有する透明ポリマー(例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、またはポリイミドなど)から作製される。対象の他の多孔質膜としては、非晶質フルオロポリマー、例えばNAFION(商標)、TEFLON AF(商標)、FEFLON FEIP(商標)、およびCYTOP(商標)(DuPont Fluoroproducts,Fayetteville,NC)挙げられるが、これらに限定されない。認識されるように、多孔質キャピラリー膜は、膜が作製される材料とは異なる表面(例えばコーティング表面または化学的に修飾された表面)を有していてもよい。例えば、多孔質キャピラリー膜の表面は、変化した電荷特性、または変化した疎水性もしくは親水性特性を有していてもよい。いくつかの実施形態では、アミノシラン、ポリ-リジン、または別の化合物で表面をコーティングして、RCA産物を表面に保持するのに役立つ正電荷を提供することができる。あるいはまたはさらに、表面は、その中に堆積した金属(例えばチタニウム、金)の薄層を有していてもよく、フィルターの表面特性を修飾する他の薬剤に結合され得る。
【0022】
本明細書中で使用されるとき、「陽極酸化アルミニウム膜」という用語は、ある特定の酸性媒体中でAlが陽極酸化されるときに生成される標準的な自己組織化ナノ多孔質膜構造を指す。堆積物の電圧、酸のタイプ、および他のパラメーターによって、膜中の孔の内部直径、膜中の隣接した孔の中心間の距離、および膜中の隣接した孔の縁間の距離を、制御することができる。陽極酸化アルミニウム膜は湿潤時には実質的に透明である。陽極酸化アルミニウム膜、その特性、および係る膜を作製する方法は、様々な出版物、例えば、これらに限定されないが、Liら(Chem.Mater 1998 10:2470-2480),Santosら(Trends on Analytical Chemistry 2013 44:25-38),Inghamら(Biotechnology Advances 30 2012 1089-1099)およびPoinernら(Materials 2011 4:487-526)において詳細に検討されており、それらは、これらの教示のために参照によって本明細書に組み込まれる。陽極酸化アルミニウム膜は、例えばSPI Supplies(West Chester,PA)から、また他の販売業者、例えばSykera Technologies Inc.(Longmont,CO)およびSigma-Aldrich(St. Louis,MO)から、ANOPORE(商標)という商品名で市販されており、支持リングとともに購入することができる。
【0023】
本明細書中で使用されるとき、「領域」という用語は、膜の領域または画像の領域の文脈では、隣接または非隣接の領域を指す。例えば、方法が、領域内の標識化RCA産物の量を判定すること、例えば領域中の標識化RCA産物の数をカウントすることを含む場合、RCA産物が定量化される領域は単一の隣接空間または複数の非隣接空間であることができる。
【0024】
本明細書中で使用されるとき、「画像化」という用語は、目的物の表面からの光信号が、位置(すなわち「ピクセル」)に関連するデータとして検出され保存されるプロセスを指す。このデータから目的物のデジタル画像を再構成することができる。膜の領域は、単一の画像または1つ以上の画像を使用して画像化することができる。
【0025】
本明細書中で使用されるとき、「個々の標識化RCA産物」という用語は、標識化されている個々のRCA分子を指す。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、「量を判定する」という用語は、個々に解像されたRCA産物がカウントされる方法、ならびに複数のRCA産物からの総シグナルを測定することを含む方法を指す。総シグナルの強度を測定することを含む方法では、個々のRCA産物を解像する必要はない。RCA産物の量は任意の適切な単位を使用して表すことができる。場合によっては、RCA産物の量は、カウントされた個別に解像されたRCA産物の数として表してもよい。
【0027】
本明細書中で使用されるとき、「カウントする」という用語は、より大きな集合内において個々の目的物の数を判定することを指す。いくつかの実施形態では、「カウントする」は、複数の個々の目的物から個別のシグナル(複数の目的物からの集合シグナルではない)を検出し、次いで、個々のシグナルをカウントすることによって複数で存在する目的物の数を判定することを必要とする。本方法の文脈では、「カウントする」は、シグナルの配列における個々のシグナルの数を判定することによって実行してもよい。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、「透明」という用語は、使用されている波長において目的物が光学的に透明である状態を指す。蛍光顕微鏡法では、「透明」とは、目的物が蛍光団の励起スペクトルおよび発光スペクトルの一方または両方に対して透明であることを意味する。以下でより詳細に説明されるように、ある特定の膜はそれらが湿潤したときにのみ透明である。そのような膜は、それらの膜の乾燥形態が透明ではない場合でも、透明な膜とみなされる。
【0029】
本明細書中で使用されるとき、「硬化性」という用語は、硬化性ポリマーの文脈において、架橋反応を介して固体にする(すなわち「硬化させる」)ことができる液体ポリマーを指す。場合によっては、硬化剤(例えば、ポリマーの架橋を引き起こすかまたは触媒する第2の化合物)を添加することによって、硬化性ポリマーを固体にすることができる。場合によっては、硬化は、外部刺激(例えば熱、湿気、または紫外光)によって開始させることができる。
【0030】
本明細書中で使用されるとき、「固体」という用語は、硬化性ポリマーの固体形態を指す。固体は、ゲルまたはゴムなどの半固体の形態であり得る。
【0031】
本明細書を通して、これらおよび他の用語の他の意味が現れることがある。
【0032】
本方法をより詳細に説明する前に、本方法は、RCA産物のためのフィルターとして作用することができる任意のタイプの捕捉支持体を使用して実施できることが認識される。そのような捕捉支持体は、分析に使用される波長において低いバックグラウンドシグナルを有し、液体および捕捉RCA産物の迅速な流体の通過を可能にするのに十分な孔径を有するべきである。適切な捕捉支持体は、多孔質金属、セラミック、均質フィルム(例えばポリマー)および不均質固体(ポリマー混合物、混合ガラス)などの固体を含む多孔質有機材料または無機材料から作製することができる。多孔質セラミック膜は、無機材料(例えばアルミナ、チタニア、酸化ジルコニア、再結晶炭化ケイ素)から作製することができる。例えば、Pamgene(The Netherlands)によって販売されているPamChip、Wuら,Nucleic Acids Res.2004 32:e123およびAnthonyら,Biotechniques.(2003)34:1082-6,1088-9を参照されたい。例示的な多孔質ポリマー膜は、酢酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースエステル(CA、CN、およびCE)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、およびポリプロピレン(PEおよびPP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリ塩化ビニル(PVC)から作製することができる。以下に続く説明では、多孔質キャピラリー膜が使用される実施を例示する。多孔質キャピラリー膜は、使用され得る捕捉支持体の一例である。以下の説明により、例として本方法を例示する。
【0033】
上で要約したように、本開示は、ローリングサークル増幅(RCA)産物を含む膜を処理するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、(a)膜中または膜上にある蛍光標識化RCA産物を含む多孔質キャピラリー膜を得ることと、(b)その膜上に硬化性ポリマーを堆積させることと、(c)その硬化性ポリマーを硬化させてRCA産物を固体に封入することと、を含むことができる。
【0034】
場合によっては、(c)で製造された固体は透明である。これらの実施形態では、湿潤剤の固体形態は、膜と適合性のある屈折率を有することができる。例えば、陽極酸化アルミニウム膜(約1.72の屈折率を有する)を使用する場合、湿潤剤の固体形態は1.2~1.8の範囲、例えば1.30~1.6の範囲の屈折率を有することができる。シリコーンは、典型的には約1.4の屈折率を有し、陽極酸化アルミニウム膜と適合性である。いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーは、それが硬化したときに収縮してはならない。
【0035】
硬化性ポリマーとしては、シリコーン、エポキシ、ならびに様々な他のプラスチックが挙げられ、それらの多くは透明である。硬化性ポリマーは様々な異なる方法で配合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーは、硬化剤、例えば、ポリマーを架橋するための触媒、またはポリマーを架橋させる別の化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーは希釈剤も含むことができる。これらの実施形態では、希釈剤は硬化性ポリマーの粘度を低下させることができ、それにより膜を横断して流れることが可能になり、例えば厚さ1mm~1cm、例えば厚さ1mm~5mmの層を生成する。理想的には、硬化性ポリマーは、500~1200mPa・秒の範囲の粘度を有することができるが、状況によってこの範囲外の粘度を有するポリマーを使用してもよい。場合によっては、粘性硬化性ポリマーは、液体形態の硬化性ポリマーがフィルターの孔の上に位置する、かつ/またはフィルターの孔に入るが、フィルターの孔を通って排出されるように、調整することができる。場合によっては、硬化ステップは、ポリマーを架橋かつ固化させる外部刺激、例えば熱、湿気、または光(例えば紫外光)によって、開始させることができる。硬化性ポリマーを硬化させると、膜の片側でRCAが固体に封入される。
【0036】
いくつかの実施形態では、膜は陽極酸化アルミニウム膜である。これらの実施形態では、(c)の固体は、膜を透明にする湿潤剤として作用し得る。これらの実施形態では、固体の湿潤特性は、架橋ポリマー自体によって、または固体中に捕捉されているかまたは架橋している希釈剤、例えばオイルまたは溶媒によって、もたらされ得る。希釈剤(例えばオイル)を使用する場合、希釈剤は、潜在的に、膜を通って経時的に漏れる可能性があり、それは潜在的に、試料が保存された後の画像化および/またはオートフォーカスを妨げる可能性がある。そのため、希釈剤はいくつかの用途にはあまり適していない。これらの実施形態では、硬化性ポリマーはシリコーンであることができる。シリコーンは収縮せずに、かつRCA産物または蛍光に影響を及ぼし得る物質を放出することなく、迅速に硬化され得る。
【0037】
シリコーンは様々な異なる方法で硬化され得る。いくつかの実施形態では、架橋剤のSi-H基がポリマーのビニル基と反応して三次元ネットワークを形成する白金触媒反応においてシリコーンを硬化させることができる。別の実施形態では、シリコーンは過酸化物硬化によって硬化され得る。高温では、過酸化物は分解してポリマー鎖を化学的に架橋する反応性の高いラジカルを形成する。他の実施形態では、シリコーンは、ポリマーの末端ヒドロキシル基がシロキサン硬化剤と反応し、アルコール、酢酸、およびアミンなどの少量の揮発性の化合物を放出する縮合硬化によって硬化させることもできる。シリコーンはスズ触媒を使用して硬化させることもできる。シリコーンを硬化させるための他の方法が知られている。これらの実施形態では、膜上に堆積された硬化性ポリマーは、シリコーンおよび硬化剤(例えば白金またはスズ触媒、過酸化物、またはシロキサン)および場合によっては希釈剤(例えばシリコーンオイル)を含有していてもよい。いくつかの実施形態では、その方法は、硬化性ポリマーを膜上に堆積させる前に、硬化性ポリマー(例えばシリコーン)を硬化剤(例えば白金もしくはスズ触媒、過酸化物、またはシロキサン)および場合によっては希釈剤と混合することを含むことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、固体は、強化無機充填剤と組み合わされた反応性オイル系ポリマーから作製される一成分または二成分の「RTV」シリコーン(すなわち室温加硫シリコーン)から作製することができる。室温加硫用シリコーンには2タイプがあり、RTV-1(一成分系)は、大気中の湿気、触媒、およびアセトキシシランの作用により硬化する。アセトキシシランは、湿潤状態にさらされると酢酸を形成する。硬化プロセスは外面から始まり、その中心部まで進行する。生成物は、気密カートリッジで包装され、流体またはペーストのどちらかの形態である。RTV-1シリコーンは、良好な接着性、弾力性、および耐久性を有する。ショア硬度は18~60で変化し得る。破断点伸びは150%から最大700%までの範囲であり得る。それらは、優れた耐紫外線性および耐候性に起因して優れた耐老化性を有する。RTV-2は、混合すると室温で硬化して固体エラストマー、ゲル、または軟質フォームになる2成分生成物である。RTV-2は-80℃から+250℃まで柔軟性がある。分解は350℃を超える温度で起こり、非引火性および不燃性の不活性シリカ堆積物を残す。RTVシリコーンは、白金またはスズ化合物、例えばジブチルスズジラウレートのいずれかからなる触媒で硬化させることができる。
【0039】
SILGEL(登録商標)612 A/BおよびELASTOSIL(登録商標)RT 601 A/B(Wacker,Munich,GE)は、本方法で使用することができる硬化性ポリマーの例である。SILGEL(登録商標)612 A/Bは、室温で加硫して非常に柔らかいシリコーンゲルとなる注入可能な付加硬化型RTV-2シリコーンゴムである。ELASTOSIL(登録商標)RT 601 A/Bは、注入可能な付加硬化型RTV-2シリコーンゴムである。ELASTOSIL(登録商標)製品を使用する場合、シリコーンオイル中で、例えば約35mm2/秒の粘度を有する直鎖状非反応性ポリジメチルシロキサンであるAK35シリコン流体中で、希釈することができる(例えば50:50、v:v)。この希釈剤は硬化性ポリマーの粘度を低下させ得る。これらの化合物は両方とも、他の多くの化合物と同様に、硬化時に透明であり、陽極アルミニウム膜を湿潤させることができ、それによってそれらを透明にする。
【0040】
その方法は様々な異なる仕方で実行することができ、その一つの実行を
図1に概略的に示す。
図1を参照すると、方法のいくつかの実施形態は、蛍光標識化ローリングサークル増幅(RCA)産物4を含有する液体試料2を多孔質キャピラリー膜6(例えば陽極酸化アルミニウム膜)を通して濾過することを含むことができる。濾過ステップは、RCAを濃縮し、膜中または膜上にRCA産物8をもたらす。何らかの任意選択的な洗浄ステップの後、硬化性ポリマー10を含む溶液を多孔質キャピラリー膜上に堆積させ、硬化性ポリマーを固体形態に硬化させてRCA産物を固体12の中に封入する。
図示した実施形態では、次のステップは、RCA産物が膜上にある間にそれらを検出することを含む。いくつかの実施形態では、このステップではRCA産物の画像14を生成することができる。明らかなように、検出は、任意の適切な蛍光検出器、例えば蛍光顕微鏡、スキャナーを使用して、高解像度CMOSまたはCCD検出器を使用して、またはPMTなどを使用して行うことができる。最後に、膜の領域内の標識化RCA産物の量を、例えば、個々に解像されたRCA産物をカウントすることによって、または総シグナルを測定することによってなどにより判定する。この判定により、サンプル2における標識化RCA産物4の数の推定値が得られる。RCA産物は濾過ステップの前または後に標識化することができる。
【0041】
明らかなように、任意の実施形態において、キャピラリー膜の孔は、RCA産物が孔を通過するのを防止する大きさであるべきである。例えば、実施形態において、キャピラリー膜の孔径は、RCA産物のメジアン径の50%以下であることができ、いくつかの実施形態では、それはRCA製品のメジアン径の20%以下であることができ、いくつかの実施形態では、RCA産物のメジアン径の10%以下であることができる。したがって、多孔質キャピラリー膜を使用して試料を濾過する際には、RCA産物は、膜の上に残っているべきであり、孔の中に入ったり、または完全に孔を通過したりしてはならない。
【0042】
いくつかの実施形態では、試料は、少なくともRCA産物の第1の集団およびRCA産物の第2の集団を含有することができ、ここで、標識化RCA産物の第1および第2の集団は区別可能に標識化される。これらの実施形態では、方法は、膜の領域内のRCA産物の第1の標識化集団の量およびRCA産物の第2の標識化集団の量を判定することを含むことができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、蛍光標識化RCA産物を含有する試料は、容器、例えば、底面として膜を含有するウェルの中に配置される。試料は、上記のように、膜を通して試料の液相を引き込む圧力を加えることによって濃縮される。これは、能動的な力(例えば遠心力、陰圧、もしくは陽圧)または受動的な力(例えばキャピラリー作用(例えば吸い取り紙を使用すること)もしくは蒸発による)であり得る。RCA産物は、例えば少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも5,000、または少なくとも10,000/mm2の密度で、アレイの形態で膜の表面上に保持され、次いで硬化性ポリマーを膜に添加して固化させる。上記のように、硬化性ポリマーは膜を湿潤させて膜を透明にし、それによりRCA産物を、検出する、例えば画像化する、輸送する、かつ/または貯蔵することを可能にし、ポジティブな結果が得られた場合にはそれらを読み直すことができる。いくつかの実施形態では、アレイは、膜の両側から、例えば膜を通して分析することができる。明らかなように、膜が「上」から、すなわちRCA産物と同じ側から読み取られる場合、膜は透明であるべきである。分析領域は、少なくとも10、例えば少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも20,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、または少なくとも200,000以上のRCA産物を含有することができる。
【0044】
所望であれば、RCA産物は、それらが膜に結合されている間に標識化することができ、ある特定の実施形態では、標識化RCA産物のアレイが生成された後、かつ分析の前に、膜は、例えば、水、または塩を含有する水性緩衝液で洗浄することができる。この洗浄ステップは、潜在的なバックグラウンド源(例えばRCA産物にハイブリダイズされない標識化ヌクレオチドまたは標識化オリゴヌクレオチド)は、フィルターを通して洗浄することができ、フィルターが分析される時点でフィルターと結合されていないため、バックグラウンドを減少させることができる。必要ならば、他の試薬、例えば退色防止剤、または蛍光などを増強する試薬などを、硬化性ポリマーを堆積させる前に膜に添加して、バックグラウンドを減少させるかまたはシグナルなどを増加させることができる。同様に、必要であれば、標識化RCA産物は、必要であれば、硬化性ポリマーを堆積させる前に、膜表面に(共有結合または非共有結合で)結合させることができる。生体分子を表面に結合するための化学はよく知られており、ある特定場合には、RCA産物は、修飾ヌクレオチドまたは膜の表面と特異的に反応する基を有するプライマーを使用して作製することができ、それにより、RCA産物のみが表面に付着するようになる。
【0045】
所望に応じて、また上記したように、使用される膜は、任意の適切な厚さ、例えば20μm~500μmまたは50μm~200μmの範囲内であることができ、使用中に膜の完全性を維持するために、1つ以上の支持構造(例えば支持リング)を含有することができる。
【0046】
上記したように、本方法は、試料中において、特に、RCA産物の可変濃度(例えば、比較的低濃度であり得る10~10M、例えば50μl~200μl以上の体積中5,000~1MのRCA産物)を有する試料中において、RCA産物の数の正確な定量化を必要とするプロトコルにおいて使用することができ、差を識別するのに必要な統計的分解能は、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、または少なくとも200,000以上のRCA産物をカウントすることによってのみ達成され得る。以下でより詳細に記載されるように、この方法は、コピー数分析および非侵襲的出生前試験用途において特に使用される。
【0047】
組成物
組成物も提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)多孔質キャピラリー膜(例えば多孔質陽極酸化アルミニウム膜)、(b)膜上の複数の蛍光標識化RCA産物(例えば少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも20,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、少なくとも500,000、または少なくとも1Mの標識化RCA産物、(c)蛍光標識化RCA産物を封入する固体(例えば硬化シリコーン)の層、を含むことができる。この固体層は、いくつかの実施形態では、透明であることができ、上記したように、膜を湿潤させて透明にすることができる。標識化RCA産物は、例えば少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも5,000、または少なくとも10,000/mm2の密度で、無作為に、膜の表面全体に分布させることができる。いくつかの実施形態では、固体は、少なくとも膜の孔の入口を通って浸透することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、膜の表面上に蛍光標識化RCA産物の少なくとも2つの集団を含むことができ、ここで、蛍光標識化RCA産物の異なる集団は区別可能に標識化される。この組成物に関するさらなる詳細およびバリエーションは本開示の方法のセクションに記載してある。
【0048】
キット
本開示により、上記したように本方法を実施するためのキットも提供する。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも、(a)蛍光標識化RCA産物を生成するための試薬(すなわち、選択されたフラグメントを配列特異的な仕方で環状化し、次いで環状化産物のローリングサークル増幅を行うための試薬、例えば、1つ以上の制限酵素、リガーゼ、および産物を環状化するためのスプリントとして機能し得る1つ以上のオリゴヌクレオチド、環状化産物をRCAによって増幅するための鎖置換ポリメラーゼ、RCA産物を標識化するための1つ以上の標識化オリゴヌクレオチドなど)、(b)多孔質キャピラリー膜、例えば多孔質陽極酸化アルミニウム膜、(c)硬化性ポリマー、例えばシリコーン、を含有することができる。キットは、さらに、硬化性湿潤剤とは別の容器に硬化剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーおよび硬化剤は、混合先端を有する二重バレルシリンジの異なるバレル中に存在することができる。いくつかの実施形態では、キットは、希釈剤、例えばシリコーンオイルも含むことができる。
【0049】
キットの様々な構成要素は別々の容器中に存在してもよく、または、必要に応じて、ある特定の適合する構成要素を単一の容器中で事前に組み合わせてもよい。このキットの構成要素のさらなる詳細およびバリエーションは、本開示の方法セクションに記載している。
【0050】
上記の構成要素に加えて、本キットは、さらに、本方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための説明書、すなわち、試料分析のための説明書を含むことができる。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は、当業者に、完全な開示および本発明の製造方法ならびに使用方法を提供するように記載され、発明者らがそれらの発明とみなす範囲を限定することは意図されず、以下の実験が全てであるか、または実験のみが行われることを表示するのを意図しない。
【0052】
実施例1
多重検出方法
材料および方法
装置:20nmの孔を有する酸化アルミニウム膜を、特注製造された96ウェルプレート超構造に結合させた。
【0053】
この多重実験では、2つの細胞株由来のDNAの混合物を遺伝子出発材料として使用した。細胞株DNAは、染色体21の2コピー(正常遺伝子構造)または染色体21の3コピー(トリソミー21)のいずれかを含有していた。細胞株から抽出したDNAを100:0、95:5、90:10、0:100の割合で混合した。各DNA混合物をまず制限酵素を使用して消化し、ハイブリダイズさせ、プローブセットに連結し、続いて、以前に述べられているようにRCAにより酵素的に増幅させた(WO2015/083001およびWO2015/083002を参照されたい)。2つの染色体特異的検出オリゴヌクレオチド(第18染色体にはAtto 550、第21染色体にはAtto 647)を各試料に添加し、ハイブリダイズさせて、各試料中の染色体特異的RCA産物を蛍光標識化した。
【0054】
標識化後、100μlの試料を膜底プレートに添加し、次いで、そのプレートを真空マニホールド(Supleco part#66879-U)上に置いた。試料は約90秒で酸化アルミニウム膜を通過した。膜底プレートを400μlの0.5X SSCで2回洗浄し、次いで乾燥させた。次いで、300マイクロリットルのWacker Silgel 612/固定剤を各ウェルに適用してそれらを透明にし、RCA産物を膜に固定した。
【0055】
画像化は、20倍の対物レンズおよびHamamatsu Orca 4.0ltカメラを備えたオリンパスX81顕微鏡で行った。各ウェルの底全体を覆うように10×10の画像を並べて表示することによって画像化を行った。画像を分析し、RCA産物を社内専用ソフトウェアを使用してカウントした。
【0056】
結果
結果を
図2にまとめた。実験に含まれる全91試料の1画像当たりの平均カウントは、1画像当たり3000から5000をわずかに超える範囲であった。ヒストグラムは、0:100比率の混合物(最終22複製)中の550チャネルと647チャネル間のカウントの割合の差を明確に示しているが、図のみから0、5、および10%試料の割合差を見分けるのは、さらに難しい。
図3は、細胞株混合物組成物に対する2つのチャネルに関するカウント間の比のプロットである。このグラフでは、傾向が明確に示されており、入力細胞株DNA試料の割合に従うカウントにおける相対比シフトを例示している。
【0057】
このデータは、酸化アルミニウム膜上での堆積は、同じ90秒の間隔でガラスプレート上に堆積させたときよりもおよそ4倍多いカウントをもたらすことを示している。ガラスプレートでのインキュベーション時間を16時間に増やすと、ガラスプレート上で検出されるRCA産物は増加するが、それでも酸化アルミニウム上において90秒で観察されるものよりも2.5倍少ない。
【0058】
実施形態
実施形態1.ローリングサークル増幅(RCA)産物を含む膜を処理する方法は、
(a)膜中または膜上にある蛍光標識化RCA産物を含む多孔質キャピラリー膜を得ることと、
(b)硬化性ポリマーを膜上に堆積させることと、
(c)硬化性ポリマーを硬化させてRCA産物を固体中に封入することと、を含む。
【0059】
実施形態2.ステップ(c)で生成された固体が透明である、実施形態1の方法。
【0060】
実施形態3.ステップ(b)の硬化性ポリマーが硬化剤を含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0061】
実施形態4.ステップ(b)の硬化性ポリマーが粘度を下げるために希釈剤を含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0062】
実施形態5.膜が陽極酸化アルミニウム膜であり、(c)の固体が膜を透明にする湿潤特性を有する、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0063】
実施形態6.硬化性ポリマーがシリコーンである、実施形態5の方法。
【0064】
実施形態7.シリコーンが硬化剤と、場合によってはシリコーンオイル希釈剤と混合される、実施形態6の方法。
【0065】
実施形態8.硬化ステップ(c)が外部刺激によって開始される、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0066】
実施形態9.外部刺激が熱、湿気、または光である、実施形態8の方法。
【0067】
実施形態10.蛍光標識化RCA産物を、
膜を通してRCA産物を濾過して、膜中または膜上にあるRCA産物を生成することと、
濾過の前または後にRCA産物を蛍光標識化することと、によって作製する、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0068】
実施形態11.その方法が、さらに、
(d)膜の領域内にある個々の標識化RCA産物の数を定量化し、それによって試料中の標識化RCA産物の数の推定値を提供する、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0069】
実施形態12.
(a)蛍光標識化RCA産物を生成するための試薬と、
(b)多孔質キャピラリー膜と、
(c)硬化性ポリマーと、を含むキット。
【0070】
実施形態13.キットがさらに硬化剤を含み、硬化剤が硬化性ポリマーと同じ容器中にある、実施形態12のキット。
【0071】
実施形態14.キットがさらに硬化剤を含み、硬化剤および硬化性ポリマーが異なる容器中にある、実施形態12のキット。
【0072】
実施形態15.硬化性ポリマーがシリコーンである、実施形態12~14のいずれかのキット。
【0073】
実施形態16.多孔質キャピラリー膜が陽極酸化アルミニウムフィルターである、実施形態12~15のいずれかのキット。
【0074】
実施形態17.
(a)多孔質キャピラリー膜と、
(b)膜上の複数の蛍光標識化RCA産物と、
(c)蛍光標識化RCA産物を封入する固体層と、を含む組成物。
【0075】
実施形態18.固体湿潤剤がフィルターの孔を通って浸透する、実施形態17の組成物。
【0076】
実施形態19.フィルターが酸化アルミニウムフィルターである、実施形態17または18の組成物。
【0077】
実施形態20.固体湿潤剤が架橋シリコーンである、実施形態17~19のいずれかの組成物。