(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】筒体、容器、及び、容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 3/14 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B65D3/14 A
(21)【出願番号】P 2019534007
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2018025987
(87)【国際公開番号】W WO2019026565
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2017151060
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】田村 和久
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-301737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0043374(US,A1)
【文献】実公昭54-016957(JP,Y2)
【文献】米国特許第03923233(US,A)
【文献】特開2003-072734(JP,A)
【文献】実開昭63-011310(JP,U)
【文献】実開平06-042639(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が内側に折り返される筒体であって、
曲線の4つの角を有し、2つの短辺と2つの長辺を備える四角形状の断面を有し、
前記四角形状の前記2つの短辺と前記2つの長辺を形成している四つの平面部を備え、
前記2つの短辺を形成している平面部の一端に
各前記短辺の両端部から中央にかけて徐々に深くなる切り欠きが設けられ、
前記一端部は、前記切り欠
きが設けられている部分を含む、
筒体。
【請求項2】
前記切り欠きは、三角形状である、
請求項
1に記載の筒体。
【請求項3】
前記一端部が内側に折り返された請求項1
又は2に記載の筒体を有する胴部と、
折り返された前記一端部により保持された底部と、
を備える容器。
【請求項4】
ブランクを形成する第1ステップと、
前記ブランクから請求項1
又は2に記載の筒体を形成する第2ステップと、
前記筒体の前記一端部を内側に折り返す第3ステップと、を備え、
前記第1ステップで形成される前記ブランクは、前記切り欠きを備える、
容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器等に使用される筒体、紙容器等の容器、及び、容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紙容器等の容器が生産されている。例えば、特許文献1には、一端部を内側に折り返した筒体(下端部が内側に折り返されて形成された環状脚部(18)を備える胴部材)を胴部に使用した容器(紙カップ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の容器は、断面及び底が円形であるが、容器として、断面及び底が略四角形の容器(例えば、
図1)等、少なくとも1つの平面状の平面部を有する容器も考えられる。このような容器の製造においても、特許文献1の容器と同様に、胴部を構成する筒体の一端部を内側に折り返す必要があるが、当該折り返しにより前記の平面部の折り返し部分において座屈が発生する。
【0005】
本発明は、折り返しによる座屈が発生しにくい、筒体、容器、及び、容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願の第1の観点に係る筒体は、
一端部(例えば、胴部120Aの下端部ないし胴部120の第1部分126A)が内側に折り返される筒体(例えば、胴部120A)であって、
少なくとも1つの平面状の平面部(例えば、第2平面部122又は第4平面部124)を有し、
前記平面部の一端(例えば、下端)に切り欠き(例えば、切り欠きK1又は切り欠きK2)が設けられ、
前記一端部は、前記切り欠きが設けられている部分(例えば、胴部120Aの下端ないし胴部120の第1部分126Aの先端に切り欠きK1又はK2が設けられている)を含む。
【0007】
前記切り欠きにより切り欠かれた深さは、当該切り欠きの両端部から中央にかけて徐々に深くなっている(例えば、
図3の切り欠きK1又は切り欠きK2の形状参照)、
ようにしてもよい。
【0008】
前記切り欠きは、三角形状である、ようにしてもよい。
【0009】
前記筒体は、曲線の4つの角を有する四角形状(略四角形)の断面を有する(例えば、前記四角形状の4つの辺(例えば、2つの短辺及び2つの長辺など)を形成する四つの平面部のうちの少なくとも1つに前記切り欠きを設ける)、ようにしてもよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本願の第2の観点に係る容器は、
前記一端部が内側に折り返された前記筒体を有する胴部(例えば、胴部120)と、
折り返された前記一端部により保持された底部(例えば、張り出し部112が第1部分126Aを有する屈曲部126により挟まれることで第1部分126Aにより保持された底部120)と、
を備える。
【0011】
上記目的を達成するため、本願の第3の観点に係る容器の製造方法は、
ブランクを形成する第1ステップ(例えば、原料紙を打ち抜いて
図3の形状のブランクを形成する工程)と、
前記ブランクから上記筒体を形成する第2ステップ(例えば、マンドレル200にブランクを巻き付けて胴部120Aを形成する工程)と、
前記筒体の前記一端部を内側に折り返す第3ステップ(例えば、カールツール300により胴部120Aの下端部を内側に折り返す工程、
図5参照)と、を備え、
前記第1ステップで形成される前記ブランクは、前記切り欠き(例えば、切り欠きK1又は切り欠きK2)を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、折り返しによる座屈が発生しにくい、筒体、容器、及び、容器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る容器の分解斜視図(胴部及び底部の斜視図)と容器の斜視図であり、(A)は、屈曲部が形成される前の胴部(筒体)の斜視図、(B)は、底部の斜視図、(C)は、容器の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る容器の
図1におけるA-A断面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る容器の胴部の展開図(胴部の材料であるブランクの平面図)。
【
図4】本発明の実施形態に係る容器の製造方法を説明するための図(容器の底部及び胴部、カールツール等の断面図)であり、(A)は、ブランクをマンドレルに巻き回して胴部を形成した様子を示す図、(B)は、底部が胴部の内面に嵌まった様子を示す図。
【
図5】本発明の実施形態に係る容器の製造方法を説明するための図(容器の底部及び胴部、カールツール等の断面図)であり、カールツールにより胴部の下端部を一度に内側に折り返す様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る、筒体、容器、及び、容器の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(容器100の構造)
まず、本発明の一実施形態に係る容器100の構造を
図1~
図3を参照して説明する。容器100は、略四角形状の底部110と、略四角形の断面を有する筒状の胴部120と、を有する。ここでの略四角形とは、4つの角が曲線状に形成された四角形をいう。底部110及び胴部120は、容器100の内面側に樹脂層を備える紙により形成されている。
【0016】
底部110は、容器100の底となる略四角形状の底板111と、底板111の縁から下方に張り出した張り出し部112と、を有する。張り出し部112は、断面が略四角形の筒形状を有する。
【0017】
胴部120は、下部に屈曲部126を備え、上方(底と反対側の方向)に向けて徐々に幅広となる形状を有する。胴部120は、ブランクと呼ばれる略扇状のシート(
図3参照)により形成されている。当該ブランクを筒状に巻き、筒状に巻いた筒体(
図1(A))に屈曲部126を形成することにより、胴部120が形成される。ブランクは、例えば、原料紙(容器100の内面側に樹脂層を備えた紙)を
図3に示す形状に打ち抜くことにより得られる。胴部120は、接着部Hを有する。当該接着部Hは、筒状に巻いたブランクの両端部を重ね合わせて樹脂層により熱融着した部分である。なお、屈曲部126が形成される前の筒体(
図1(A))を胴部120Aともいう。
【0018】
胴部120ないし胴部120Aは、断面における略四角形の長辺を形成している平面状(平らなシート状)の第1平面部121及び第3平面部123と、断面における略四角形の短辺を形成している平面状の第2平面部122及び第4平面部124と、断面における略四角形の4つの角それぞれを形成している湾曲した角部R1~R4と、を有する。
【0019】
屈曲部126は、胴部120Aの下端部(胴部120Aにおける第1~第4平面部121~124及び角部R1~R4それぞれの下端部)を内側に折り返すことで形成されている。屈曲部126は、内側に折り返された前記下端部である第1部分126Aと、当該第1部分126Aに対向する第2部分126Bと、を有する。第1部分126Aと第2部分126Bとの間には、底部110の張り出し部112が挟まれる。これにより、底部110が胴部120内部に固定され、容器100が形成される。なお、
図2では、図面の理解のため、第1部分126Aと、第2部分126Bと、張り出し部112とを離間して描いているが、これらは実際には接触している(他の図でも、実際に接触している部分を離間して描いている部分がある)。
【0020】
胴部120Aのうちの第2平面部122の下端には三角形状の切り欠きK1が設けられ、第4平面部124の下端には三角形状の切り欠きK2が設けられている。なお、第2平面部122の下端及び第4平面部124の下端それぞれは、第1部分126A(折り返された部分)の先端(上端)を構成する。つまり、第1部分126Aは、切り欠きK1及びK2が設けられ、折り返されている。切り欠きK1及びK2は、屈曲部126を形成する際における座屈の発生割合を低減するものである。当該切り欠きK1及びK2については後述する。
【0021】
(容器100の製造方法)
次に、容器100の製造方法を
図4~
図6を参照して説明する。まず、マンドレル200に、任意の方法で、ブランク(
図3)を巻き回し、当該ブランクの端部同士を重ねて熱融着させることにより、接着部H(
図1)を形成する。マンドレル200の外周面は、断面が略四角形の四角柱形状を有する。ブランクがマンドレル200に巻き回され、接着部Hが形成されることで胴部120A(
図1(A))が形成される。
図4(A)は、このときの様子である。
図4(A)では、マンドレル200と、底部110及び胴部120Aと、が離間しているが、実際には接触している(
図4(B)及び
図5において同じ)。マンドレル200の先端部は、図示しない空気孔を有する。当該先端部には、別工程で製造された底部110が前記空気孔を介した吸気により吸着されている。当該底部110は、胴部120Aの内部に位置している(
図4(A))。
【0022】
図4(A)の状態において、マンドレル200の先端部の前記空気孔から空気を吐出して底部110を吹き飛ばす。吹き飛ばされた底部110は、胴部120Aの内面に嵌まる。このときの様子を、
図4(B)に示す。なお、
図4(B)では、底部110と胴部120Aとが離間して描かれているが、実際には接触している(
図5においても同じ)。
【0023】
図4(B)の状態から、屈曲部126を形成するためのカールツール300を胴部120Aに押し当て、当該胴部120Aの下端部(
図4及び5における右側端部)を一度に内側に折り返す。このときの様子を
図5に示す。カールツール300は、平面視したときに略4角形の環状の凹部301を備える(
図6参照)。当該凹部301は、湾曲した内面になっており、カールツール300を胴部120Aに押し当てると、当該胴部120Aの下部が、凹部301の内面に沿って内側に湾曲する。折り返しにより湾曲した当該部分を、湾曲部分Wとする。
図5では、胴部120Aの湾曲部分Wと、カールツールの凹部310の内面と、が離間して描かれているが、実際には接触している。湾曲部分Wの内部には、底部110の張り出し部112が入り込んでいる。この状態で、当該湾曲部分Wを所定の器具によりつぶすことで(熱圧着等)、屈曲部126を形成する。屈曲部126の形成により、張り出し部112が屈曲部126(第1部分126A及び第2部分126B)により挟まれて支持され、容器100が完成する。
【0024】
容器100には、所定の内容物(菓子等)が入れられ、例えば、
図7に示すように、容器100の開口を直線状に閉じ、閉じ部Tを形成する、なお、容器100の開口にカールを設け、容器100を底が略四角形状の紙コップとして形成してもよい。
【0025】
(切り欠きK1及びK2等)
上記で説明したように、胴部120Aに屈曲部126を形成する際、カールツール300を用いて、胴部120Aの下端部(第1部分126Aに相当する部分)を内側に折り返す。この折り返しの過程で、折り返される胴部120の下端部は、その周長が短くなるように圧縮される。本願発明者は、当初、切り欠きK1及びK2を設けないで(
図3の点線参照)、前記の折り返しを行っていたが、湾曲部分Wないし屈曲部126の第1部分126Aのうち、第2平面部122及び第4平面部124の部分で座屈(例えば皺を生じさせる座屈)が発生してしまうことを見いだした。本願発明者がこの原因を調べたところ、容器100の製造に使用するカールツール300の凹部301の形状と、当該胴部120Aの形状と、の関係で、前記折り返し時における圧縮度合いが、胴部120Aにおける断面略四角形の短辺を形成する第2平面部122及び第4平面部124それぞれの下端部において高かった。つまり、前記の座屈は、圧縮度合いが高いことによって発生していることが予測される。そこで、この実施の形態では、三角形状の切り欠きK1及びK2を設け、内側への折り返し時において発生する圧縮力を逃がすようにした。その結果、前記座屈の発生頻度が軽減した。つまり、折り返し時の座屈が発生し難くなった。
【0026】
なお、角部R1~R4などの湾曲している部分(曲面を構成する部分)は、座屈が発生しにくいことが分かった。これは、当該湾曲している部分が、湾曲により、前記圧縮力に対して強いためと考えられる。一方で、断面略四角形の各辺を形成する第1~第4平面部121~124は、平面状のため、前記圧縮力に対して弱く、折り返しによる圧縮度合いに応じて座屈が発生しやすいことも分かった。このため、上記切り欠きK1、K2のような切り欠きは、折り返しによる圧縮度合いに応じて、胴部120Aにおける第1~第4平面部121~124の一部又は全部の下端(第1部分126Aにおける先端)に設けるとよい。なお、胴部120Aにおける角部R1~R4の下端(第1部分126Aにおける先端)の少なくとも1つに前記のような切り欠きを設けてもよい。
【0027】
折り返し時の座屈を発生し難くする切り欠きの形状を、当該切り欠きにより切り欠かれた深さが、当該切り欠きの幅方向における両端部から中央にかけて徐々に深い形状にすることにより、座屈の発生を効果的に低減できる。このような形状として、切り欠きK1及びK2のような三角形状がある(
図3等)。このような形状の他の例として、例えば、半円、半楕円等の形状もある。なお、切り欠きの形状は、前記形状以外の形状であってもよい。切り欠きの形状を三角形状等にすることで、屈曲部126の見た目もよい。なお、幅方向とは、切り欠きを設ける平面部(第1~第4平面部121~124のいずれか)の下端が延びる方向(ブランクを巻いて胴部120Aを形成する場合の周方向)とする。切り欠きは、四角形状、スリット形状等にしてもよい。切り欠きは、平面部の下端のうち、少なくとも幅方向中央を含む一部分又は全部に設けられるとよい。切り欠きは、1つの平面部の下端に対して複数設けてもよい。
【0028】
(他の形態について)
この発明は、上記実施の形態に限定されず、上記実施の形態について様々な変形及び応用が可能である。以下に、変形例を例示する。
【0029】
本発明は、一端部が内側に折り返される筒体一般に適用できる。特に、カールツール300等により、前記一端部が一度に内側に折り返される筒体に適用できる。筒体は、上記のように、容器の胴部以外に使用されてもよい。内側に折り返される一端部は、上記実施の形態のように、底部110を保持・固定するものでなく、単に折り返された部分であってもよい。例えば、一端部が折り返された後の筒体は、熱伝導がし難くなるように胴部を二重にした紙コップ等の外側の胴部に用いられても良い。前記の一端部は、上端部であってもよい。筒体は、上記のような紙製の他、樹脂シート(樹脂製のブランク)によって形成されてもよい。筒体が使用される容器は、紙製の他、樹脂製でもよい。
【0030】
胴部120A等の筒体は、少なくとも1つの平面状の平面部を有するものであればよい。例えば、断面を略三角形状(各角は、湾曲している)、略五角形状(各角は、湾曲している)、半円状等としてもよい。切り欠きは、1以上の平面部の任意の部分(座屈が生じやすい部分)の一端に設けるとよい。
【0031】
(その他)
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0032】
本出願は、2017年8月3日に出願された、日本国特許出願特願2017-151060号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2017-151060号の明細書、請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0033】
100 容器
110 底部
111 底板
112 張り出し部
120、120A 胴部
121 第1平面部
122 第2平面部
123 第3平面部
124 第4平面部
126 屈曲部
126A 第1部分
126B 第2部分
R1~R4 角部
K1、K2 切り欠き