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特許6997789向上された低温特性を有する燃料組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】向上された低温特性を有する燃料組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/08 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
C10L1/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019540078
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 FI2018050060
(87)【国際公開番号】W WO2018138412
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-09-24
(31)【優先権主張番号】20175074
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クローネン、マルック
(72)【発明者】
【氏名】キースキ、ウッラ
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-308573(JP,A)
【文献】特開2007-308576(JP,A)
【文献】国際公開第2008/113492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化された再生可能な中間留出物成分と鉱物性中間留出物燃料成分とのブレンドを含むディーゼル燃料ブレンドであって、前記水素化された再生可能な中間留出物成分と前記鉱物性中間留出物燃料成分とが10:90~90:10の体積量の比で存在しており、および、前記ディーゼル燃料ブレンドが、10~25wt%のC14~C20の範囲であるn-パラフィンと22wt%~55wt%のC14~C20の範囲であるイソパラフィンとを、前記イソパラフィンの量が、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比が2.2未満となるように含むディーゼル燃料ブレンド。
【請求項2】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分および前記鉱物性中間留出物燃料成分が、17℃を越えて、好ましくは13℃を越えて異ならない曇り点を有する請求項1記載のディーゼル燃料ブレンド。
【請求項3】
前記C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、前記C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する前記比が、1.1~2.2である請求項1または2記載のディーゼル燃料ブレンド。
【請求項4】
前記鉱物性中間留出物燃料成分が、原油、シェール油、およびこれらの組み合わせから選択される原料由来である請求項1~のいずれか1項に記載のディーゼル燃料ブレンド。
【請求項5】
前記鉱物性中間留出物燃料成分が、ディーゼル燃料である請求項1~のいずれか1項に記載のディーゼル燃料ブレンド。
【請求項6】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分のための新鮮なフィードが、植物性オイル/脂肪、動物性脂肪/オイル、魚の脂肪/オイル、遺伝子操作の手段によって育てられた植物中に含まれる脂肪、食品産業におけるリサイクルされた脂肪、およびそれらの組み合わせから選択される請求項1~のいずれか1項に記載のディーゼル燃料ブレンド。
【請求項7】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分と前記鉱物性中間留出物燃料成分とが、20:80~80:20の体積量の比で存在している請求項1~いずれか1項に記載のディーゼル燃料ブレンド。
【請求項8】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分の異性化率が、少なくとも50%、好ましくは50~69%、より好ましくは少なくとも60%、および最も好ましくは60~69%である請求項1~いずれか1項に記載のディーゼル燃料ブレンド。
【請求項9】
向上された低温特性を有するディーゼル燃料ブレンドを製造する方法であって、
(a)17℃を越えて、好ましくは13℃を越えて異ならない曇り点を有する、水素化された再生可能な中間留出物成分および鉱物性中間留出物燃料成分を選択すること、
(b)ディーゼル燃料ブレンドを形成するために、10:90~90:10の体積量の比で、前記水素化された再生可能な中間留出物成分と前記鉱物性中間留出物燃料成分とをブレンドすることを含み、
前記ディーゼル燃料ブレンドが、10~25wt%のC14~C20の範囲であるn-パラフィンと22wt%~55wt%のC14~C20の範囲であるイソパラフィンとを、前記イソパラフィンの量が、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比が2.2未満となるように含み、および、前記ディーゼル燃料ブレンドが、前記鉱物性中間留出物成分および前記水素化された再生可能な中間留出物成分の曇り点の加重平均値よりも低い曇り点を有する方法。
【請求項10】
前記ディーゼル燃料ブレンドが、1.1~2.2である、前記C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、前記C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比を有する請求項記載の方法。
【請求項11】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分の新鮮なフィードが、植物性オイル/脂肪、動物性脂肪/オイル、魚の脂肪/オイル、遺伝子操作の手段によって育てられた植物中に含まれる脂肪、食品産業におけるリサイクルされた脂肪、およびそれらの組み合わせから選択される請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分の異性化率が、少なくとも50%である請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分の異性化率が、50~69%である請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分の異性化率が、少なくとも60%である請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水素化された再生可能な中間留出物成分の異性化率が、60~69%である請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ディーゼル燃料ブレンドが、前記鉱物性中間留出物燃料成分の曇り点よりも低い曇り点を有する請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ディーゼル燃料ブレンドが、前記水素化された再生可能な中間留出物成分の曇り点よりも低い曇り点を有する請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
鉱物性中間留出物燃料の曇り点を低下させるための水素化された再生可能な中間留出物成分の使用であって、
(a)鉱物性中間留出物燃料の曇り点を測定することと、
(b)以下の特性:
(i)前記鉱物性中間留出物燃料の曇り点から17℃を超えて異ならない曇り点、
(ii)前記水素化された再生可能な中間留出物成分が前記鉱物性中間留出物燃料とブレンドされる場合に、10~25wt%のC14~C20の範囲であるn-パラフィンを含むディーゼル燃料ブレンドを提供するために十分なn-パラフィンの量、および
(iii)前記水素化された再生可能な中間留出物成分が前記鉱物性中間留出物燃料とブレンドされる場合に、1.1~2.2である、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、前記C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比を有するディーゼル燃料ブレンドを提供するために十分なC14~C20の範囲であるイソパラフィンの量であって、22wt%~55wt%であるイソパラフィンの量
を有する水素化された再生可能な中間留出物成分を選択することと、ならびに
(c)前記鉱物性中間留出物燃料の曇り点よりも低い曇り点を有するディーゼル燃料ブレンドを形成するために、10:90~90:10の体積量の比で、前記水素化された再生可能な中間留出物成分を前記鉱物性中間留出物燃料とブレンドすること
を組む使用。
【請求項19】
水素化された再生可能な中間留出物成分の曇り点を低下させるための鉱物性中間留出物燃料の使用であって、
(a)水素化された再生可能な中間留出物成分の曇り点を測定することと、
(b)以下の特性:
(i)前記水素化された再生可能な中間留出物成分の曇り点から17℃を超えて異ならない曇り点、
(ii)前記水素化された再生可能な中間留出物成分が前記鉱物性中間留出物燃料とブレンドされる場合に、10~25wt%のC14~C20の範囲であるn-パラフィンを含むディーゼル燃料ブレンドを提供するために十分なn-パラフィンの量、および
(iii)前記水素化された再生可能な中間留出物成分が前記鉱物性中間留出物燃料とブレンドされる場合に、1.1~2.2である、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、前記C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比を有するディーゼル燃料ブレンドを提供するために十分なC14~C20の範囲であるイソパラフィンの量であって、22wt%~55wt%であるイソパラフィンの量
を有する鉱物性中間留出物を選択することと、ならびに
(c)前記水素化された再生可能な中間留出物成分の曇り点よりも低い曇り点を有するディーゼル燃料ブレンドを形成するために、10:90~90:10の体積量の比で、前記水素化された再生可能な中間留出物成分を前記鉱物性中間留出物燃料とブレンドすること
を組む使用。
【請求項20】
請求項9~17のいずれか1項に記載の方法によって、または、請求項18または19記載の使用によって得られ得る向上された低温特性を有するディーゼル燃料ブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物性中間留出物燃料および再生可能な燃料のブレンドである、改良された低温特性を有する燃料組成物、ならびに、そのような組成物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一年を通しての十分な低温性能は、ディーゼル燃料にとっての不可欠な要件である。季節的および地理的な温度の大きな変動性に起因して、中間留出物燃料は、燃料の粘度、揮発性および燃料フィルターを透過する能力に影響を及ぼす燃料の結晶化および固化などの寒い気候のあいだの問題を最小限とするようにブレンドされ、および調整される。
【0003】
低温での作動性に関連する燃料の最も重要な特性は、曇り点、流動点、および目詰まり点である。中間留出物燃料が冷却されると、その曇り点に到達する。これは、パラフィンワックスが液体の状態から離れ、燃料中でワックス結晶を形成し始める温度である。燃料がさらに冷却されると、やがて流動点に到達するであろう。これは、燃料がもはや流動しない温度、または、燃料がゲル化するまたは固体へと変化する点である。中間留出物燃料の第3の重要な特性は、目詰まり点であり、これは、燃料がろ過可能であり、および問題なく乗用車に使用され得る最も低い温度である。
【0004】
低温特性に劣る成分がブレンド中で支配的となるため、燃料は、より良好な低温特性を有する成分を添加することによって改良されるであろう。用語「劣る(poor)」または「より劣る(poorer)」との用語は、曇り点または目詰まり点のより高い温度値を意味し、そして、用語「より良好な(better)」は、曇り点または目詰まり点のより低い温度値を意味する。
【0005】
良好な低温作動性を有する輸送燃料を得るためのいくつかのアプローチが開示されている。特許文献1は、再生可能な燃料ブレンドを製造するための方法を開示しており、ここで、生物由来のフィードストックは水素化処理され、そして、C14、C16、およびC18直鎖パラフィン(n-パラフィン)が水素化された処理水から回収され、そして再生可能な中間留出物とブレンドされる。このプロセスのあいだ、n-パラフィンは、ブレンドが低い流動点を達成するために流動点低下処理を必要しないような量で、ブレンドに対して提供される。このプロセスは、C14、C16、およびC18n-パラフィンを回収するという工程を必要とすることで複雑なものとなっている。
【0006】
特許文献2は、燃料の低温作動性を向上させる相乗的な燃料オイル組成物を開示している。組成物は、石油ベースの成分および再生可能な燃料成分を含む。バイオディーゼル、エタノール、およびバイオマスが再生可能な燃料源の例として挙げられている。しかしながら、ASTM D7467の下では、たった6%~20%のバイオディーゼルのみが、改質なしに、または少しの改質のみでディーゼル機器へと使用可能である。
【0007】
また、例えば脂肪酸メチルエステル(FAME)などのエステル交換プロセスによって製造されるバイオディーゼルは、典型的な石油由来の燃料と比較して、本質的により低温作動性に弱いことが一般的に知られている。いくつかの場合において、脂肪酸メチルエステルは、低温で操作されるエンジンにおいて、より高い粒子排出および発煙を引き起こし得る。ディーゼル燃料において許される脂肪酸メチルエステルの量もまた制限され得る。欧州統一規格 EN 16734およびEN 16709は、脂肪酸メチルエステルを含むディーゼル燃料のための要件および試験方法を規定している。EN 16734によれば、B10ディーゼル燃料は、10vol%までの脂肪酸メチルエステルしか含まないディーゼル燃料である。EN 16709によれば、高い脂肪酸メチルエステルのディーゼル燃料(B20およびB30)は、20vol%または30vol%までの脂肪酸メチルエステルしか含まない。
【0008】
特許文献3は、石油由来のケロシンベースの燃料とフィッシャー・トロプシュ由来のケロシンベースの燃料とをブレンドすることによって調製された燃料組成物を開示している。このようなブレンドの凍結点がブレンドの両方の成分の凍結点よりも低いという発見が記載されている。しかしながら、これらの燃料組成物において使用されている成分は、バイオベースではない。
【0009】
低温で作動可能なバイオベース燃料の製造のため、経済的でありかつバイオベース燃料の量において体積制限のない、代替的な燃料組成物およびブレンドのための方法が必要とされている。
【0010】
燃料ブレンドの曇り点は、元の燃料の曇り点の高次非線形の組み合わせである。技術常識にしたがえば、ブレンドは、通常、その成分の曇り点の加重平均値よりもより劣る曇り点をもつであろう。したがって、燃料の曇り点は顕著に良好な低温特性を有する成分を添加することによって改良されるかもしれないが、この成分の使用は、製造コストの上昇を引き起こすであろう。
【0011】
したがって、経済的な方法で成分をブレンディングすることによって燃料を製造する方法の必要性がある。また、良好な低温特性を有し、かつ製造するのにより安価である燃料ブレンドの必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第9,006,501号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0163542号明細書
【文献】欧州特許第1664249号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、上述した不利益点を緩和するための方法および手段を提供することである。本発明は、向上された低温特性を有するディーゼル燃料ブレンドを製造する方法、鉱物性中間留出物燃料の曇り点を低下させる方法、および、再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とのブレンドを含むディーゼル燃料ブレンドに関する。加えて、本発明は、再生可能な燃料の、典型的には水素化された再生可能な中間留出物の、鉱物性中間留出物を含む燃料組成物の低温特性を向上させるための使用に関する。
【0014】
本発明は、鉱物性中間留出物、再生可能な燃料、およびそれらのブレンドの低温特性を評価した研究に基づく。鉱物性中間留出物燃料の再生可能な燃料との組み合わせは、最終的なブレンドされた燃料の曇り点および目詰まり点の向上を結果としてもたらすことが発見された。また、特定のブレンドの曇り点および目詰まり点が燃料の曇り点を基準に見積もられた線形的なブレンディングの予測値よりも低かったこと、および、両方のブレンド成分の曇り点または目詰まり点よりも低かったことが見出された。
【0015】
より特には、本願発明のディーゼル燃料ブレンドは、例えば水素化された再生可能な中間留出物などの再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とのブレンドを含むとして記載され得、ここで、再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とは、10:90~90:10の体積量の比で存在しており、そして、ディーゼル燃料ブレンドは、10~25wt%のC14~C20の範囲であるn-パラフィンとC14~C20の範囲であるイソパラフィンとを、イソパラフィンの量が、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比が2.2未満となるように含む。実験的に、ディーゼル燃料ブレンドは、鉱物性中間留出物および再生可能な燃料の曇り点の加重平均値よりも低い曇り点を有していることが本明細書において示された。
【0016】
本明細書において記載される相乗効果は驚くべきものであった。通常、ブレンディングは、それぞれの個々の成分の値よりも高い(すなわち、より劣る)曇り点または目詰まり点を結果としてもたらす。より良好な低温特性を有する燃料を製造することはより高価であるため、これは、製造コストを上昇させる。しかしながら、本発明においては、中間留出物の製造は、目標とする曇り点を達成するためにより劣った曇り点を有するより安価な成分を使用することによる開示のブレンディング挙動を利用し得る。
【0017】
さらに、本発明においては、燃料組成物中の再生可能なまたはバイオの成分の量は、エステル型バイオディーゼル燃料、例えば脂肪酸メチルエステルなどに対して要求されるEN590:2013基準による最大7vol%に限定される必要がない。より多くの量の脂肪酸メチルエステルが考慮され得るが、それらは燃料安定性、低温特性、エンジンオイル希釈、および燃料注入システム中でのデポジットの形成に影響を与え得るため、さらなる事前の注意を必要とする。
【0018】
本発明は、バイオ成分の鉱物性中間留出物燃料へのブレンディングが、ブレンドされた燃料の低温操作性を向上させるために、例えば水素化された再生可能な中間留出物などの再生可能な燃料を用いて可能であることを示している。これは、実験の部に示されており、そこでは、混合された燃料の測定された低温特性が、その成分の低温特性の加重平均値よりも良好であったことが示されている。
【0019】
本発明は、好ましい実施形態によって、添付の図面を参照して、より詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、鉱物性ディーゼルブレンドにおける曇り点挙動を示す図であり、ブレンドの算出された曇り点が直線で、測定値がひし形で示されている。Y軸は、曇り点(T;℃)であり、そして、X軸は、より劣った曇り点を有する鉱物性ディーゼルの増加する比率(ブレンドの総体積のvol%)である。
図2図2は、ディーゼル7の再生可能Fおよび再生可能Gとのブレンドの曇り点を示す図であり、ブレンドの算出された曇り点が直線で、再生可能F(曇り点-2℃)の測定値がひし形で、および、再生可能G(曇り点-28℃)の測定値が四角で示されている。Y軸は、曇り点(T;℃)であり、そして、X軸は、再生可能の増加する比率(ブレンドの総体積のvol%)である。
図3図3は、-28℃の曇り点を有する再生可能な燃料と-5.5℃の曇り点を有する鉱物性ディーゼルとのブレンドの曇り点挙動を示す図である。Y軸は、曇り点(T;℃)であり、そして、X軸は、イソパラフィンのn-パラフィンに対する比(パラフィン含有量の総計のwt%)である。
図4図4は、-2℃の曇り点を有する再生可能な燃料と-5.5℃の曇り点を有する鉱物性ディーゼルとのブレンドの曇り点挙動を示す図である。Y軸は、曇り点(T;℃)であり、そして、X軸は、該ディーゼル燃料ブレンドにおけるC14~C20のイソパラフィンのn-パラフィンに対する比(パラフィン含有量の総計のwt%)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、燃料組成物に関し、ここで、最終的なブレンドされた燃料組成物の低温特性の向上が、鉱物性中間留出物成分を再生可能な燃料成分にブレンドすることによって達成される。本発明はさらに、向上された低温特性を有するディーゼル燃料ブレンドを製造するための方法、鉱物性中間留出物燃料の曇り点を低下させるための方法、および、再生可能な燃料成分と鉱物性中間留出物燃料成分とのブレンドを含むディーゼル燃料ブレンドに関する。
【0022】
用語「低温特性(cold properties)」は、本明細書中において、燃料の曇り点および目詰まり点を意味するように使用される。鉱物性中間留出物燃料の曇り点は、最も重いn-パラフィンがもはや溶解性ではなく燃料から沈殿してきて、曇った外観を与える温度である。曇り点は、燃料のために使用可能な最も低い保管温度を与え、製品の特長において最も重要なパラメータの一つである。曇り点は、例えばASTM D2500.D5771、D5772、D5773、D7689またはEN23015に規定される方法などを使用して評価され得る。燃料の目詰まり点は、燃料中のワックスがフィルターを通過して流れる際に深刻な制限を引き起こすであろう温度およびその温度以下の温度である。目詰まり点は、低い温度における乗用車の操作性とよく相関すると考えられている。石油燃料の目詰まり点は、典型的には、ASTM D6371またはEN 116を使用して評価される。曇り点および目詰まり点はともに温度(T、本明細書においては℃)として測定され設定される。
【0023】
用語「鉱物性(mineral)」は、本明細書中において、天然かつ再生可能ではない原料由来の成分または組成物を意味するように使用される。このような再生可能ではない原料の例としては例えば、石油またはシェール油、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。用語「鉱物性(mineral)」はまた、再生可能ではない原料の廃棄物も意味する。
【0024】
中間留出物は、典型的には、ディーゼル燃料またはケロシンである。本願発明において、鉱物性中間留出物は、好ましくは、鉱物性ディーゼルである。一般的なディーゼル燃料は、ディーゼルエンジンにおいて使用される任意の液体燃料であり、その燃料点火は、スパーク無しに、インレットの空気混合物の圧縮およびその後の燃料注入の結果として起こる。ディーゼル燃料の最も一般的な種類は、石油燃料オイルの特定の分画留分である。留分の特性は、燃料がディーゼルエンジンの燃焼室内に噴霧される時に燃料がどのように蒸発されるかを規定する。基準(例えば、EN590など)は、典型的な蒸留曲線についての情報を含んでいる。
【0025】
石油由来ではない再生可能なディーゼル燃料から区別するために、石油由来のディーゼルは、本明細書中において、「鉱物性ディーゼル(mineral diesel)」または「鉱物性中間留出物(mineral middle distillate)」と称される。それはまた、例えば、石油ディーゼル、化石ディーゼル、または石油留分などと呼ばれるかもしれない。鉱物性ディーゼルは、大気圧蒸留物または真空蒸留物を含み得る。蒸留物は、分解ガスオイル、または、直留のまたは熱的もしくは触媒的に分解された蒸留物の任意の割合のブレンドを含み得る。蒸留物燃料は、燃料特性を向上させるために、例えば水素処理または他のプロセスなどのさらなる処理へと付されてもよい。典型的には、鉱物性ディーゼルは、10~70重量%のn-およびイソ-パラフィン、10~50重量%のナフテン酸、5~30重量%の単環芳香族化合物、0~10重量%の二環芳香族化合物、および0~5重量%の他の芳香族化合物を含む。
【0026】
本発明において、水素化された再生可能な中間留出物成分は、好ましくは、水素化された植物油、水素化された動物性脂肪、水素化された魚の脂肪、水素化された魚のオイル、水素化された藻類のオイル、水素化された微生物のオイル、水素化された木材および/または他の植物ベースのオイル、水素化されたリサイクル可能な廃棄物および/または残渣、またはそれらの組み合わせからなるかまたはそれらを含んでいる。好ましくは、再生可能な燃料の新鮮なフィードは、植物性オイル/脂肪、動物性脂肪/オイル、魚の脂肪/オイル、遺伝子操作の手段によって育てられた植物中に含まれる脂肪、食品産業におけるリサイクルされた脂肪、およびそれらの組み合わせから選択される。植物油または動物性脂肪を水素化することは、バイオベースの中間留出物燃料を製造するためのエステル化の代替的なプロセスである。水素化された再生可能な中間留出物燃料はまた、「バイオディーゼル(biodiesel)」(これは、脂肪酸メチルエステル(FAME)のために取っておかれる)の代わりに、「水素化された植物油燃料(hydrotreated vegetable oil fuels)」、「水素化された再生可能なディーゼル(hydrotreated renewable diesels)」、「再生可能な燃料(renewable fuels)」、「再生可能なディーゼル(renewable diesels)」、または「再生可能なディーゼル成分(renewable diesel components)」と称される。化学的に水素化された再生可能な中間留出物は、パラフィン系炭化水素の混合物であり、および、非常に少ない量の硫黄および芳香族化合物を含有する。水素化された再生可能な中間留出物の低温特性は、プロセスの条件の厳しさによって、または、追加の触媒的処理によってイソパラフィンの量を調整することによってその場に応じた要件に合致するように調整され得る。
【0027】
本発明において、例えば水素化された再生可能な中間留出物などの再生可能な燃料の異性化率は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%である。80%より大きな異性化率も達成可能であるかもしれないが、しかしながら、例えば、製造のあいだに必要とされる資源の増加などの欠点がある。好ましくは、再生可能な燃料、例えば水素化された再生可能な中間留出物の異性化率は、69%未満であり、すなわち優位な範囲としてはそれぞれ50~69%、および60~69%である。より高い異性化率は典型的には、低温特性を向上させるが、しかしながら、このような水素化された再生可能な中間留出物はその製造のあいだにより多くの資源を消費する。異性化率は、総計のイソパラフィン(重量%)を総計のパラフィン(重量%)で割ったものを意味する。水素化された再生可能な中間留出物は炭化水素であるため、それらは、従来の中間留出物燃料として使用されてもよい。脂肪酸メチルエステルの規格(EN 14214、ASTM D6751)は、水素化された再生可能な中間留出物には適用されず、したがって、どれくらいの水素化された再生可能な中間留出物がディーゼル燃料と混合されてもよいのかという体積比制限は存在しない。
【0028】
特には、本発明は、現在のディーゼル燃料ブレンドの主要な成分である鉱物性中間留出物成分とブレンドされる再生可能な燃料成分を含む燃料組成物に関する。C15~C18の範囲である一定の量のイソパラフィンおよびn-パラフィンは、製造のあいだに使用される資源を考慮して良好な低温特性をもつブレンドを生み出す。本発明は、再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とのブレンドを含むディーゼル燃料成分であって、再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とが10:90~90:10の体積量の比で存在しており、および、ディーゼル燃料ブレンドが、10~25wt%の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンと、C14~C20の範囲であるイソパラフィンとを、イソパラフィンの量が、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比が2.2未満となるように含むディーゼル燃料ブレンドに関する。
【0029】
一実施形態において、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比は、1.1~2.2である。この組成は、製造のあいだの低い資源消費とともに良好な低温特性を生み出す。パラフィンについて本明細書中で記載される重量パーセントとは、総計のブレンド燃料重量のwt%ということを意味している。
【0030】
一実施形態において、組成物において、それぞれC15~C18であるイソパラフィンの量は、燃料組成物の総量の2.2wt%以上であり、および、それぞれC15~C18であるn-パラフィンの量は、燃料組成物の総量の1.9wt%以上である。この組成は、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出す。
【0031】
好ましくは、それぞれC15~C18であるn-パラフィンの量は、燃料組成物の総量の10重量%より少なく、より好ましくは、9.6重量%より少なく、および、最も好ましくは、7.9重量%以下である。本明細書において、C15~C18パラフィンは、15、16、17または18である炭素数を有するパラフィン(直鎖または分岐のアルカン)である。炭素数とは、それぞれのパラフィン分子中の炭素元素数を意味している。この組成物は、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出す。
【0032】
一実施形態において、少なくとも一つのC15~C18イソパラフィンの量は、燃料組成物の総量の3.0重量%以上であり、および、少なくとも一つのC15~C18n-パラフィンの量は、燃料組成物の総量の2.2重量%以上である。
【0033】
組成物は製造のあいだの低い資源消費をともないつつ、良好な低温特性を生み出す。
【0034】
一実施形態において、好ましい燃料組成物は、n-パラフィンに対して以下の式が成り立つ場合に得られる:最も大きな重量パーセントであるC16~C18の範囲であるn-パラフィンの重量パーセントから引かれた最も小さな重量パーセントであるC16~C18の範囲であるn-パラフィンの重量パーセントを、最も大きな重量パーセントであるC16~C18の範囲であるn-パラフィンの重量パーセントで割ったものが、0.26以上、および好ましくは0.45以下である。別の一実施形態において、C16およびC17のn-パラフィンの量は、式 0.26<(C16-C17)/C16<0.45を満たす。この組成物は、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出す。
【0035】
一実施形態において、好ましい燃料組成物は、イソパラフィンに対して以下の式が成り立つ場合に得られる:最も大きな重量パーセントであるC15~C18の範囲であるイソパラフィンの量の重量パーセントから引かれた最も小さな重量パーセントであるC15~C18の範囲であるイソパラフィンの重量パーセントを、最も大きな重量パーセントであるC15~C18の範囲であるイソパラフィンの重量パーセントで割ったものが、0.49以上、および好ましくは0.63以下である。別の一実施形態において、炭素数C15およびC18のイソパラフィンの量は、式 0.49<(C18-C15)/C16<0.63を満たす。この組成物は、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出す。
【0036】
一実施形態において、再生可能な燃料成分の曇り点および/または目詰まり点と鉱物性中間留出物成分の曇り点および/または目詰まり点との違いは、17℃以下であり、およびより好ましくは、違いは0~13.1℃の間である。この違いは、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出す。一般的に、ブレンドの曇り点および目詰まり点は、算出される(加重平均の)曇り点よりも低い。再生可能な燃料成分の低温特性は、鉱物性中間留出物成分の低温特性よりも良好であり得る。同様に、鉱物性中間留出物成分は、ブレンド中の再生可能な燃料成分のよりも良好な低温特性をもち得る。
【0037】
燃料組成物は、一般的に使用される添加物を含んでいてもよい炭化水素燃料組成物であってもよい。再生可能な燃料成分および鉱物性中間留出物成分の総計の体積は、典型的には、ブレンド燃料の総計の体積の少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、および最も好ましくは少なくとも99.9%であり、その残りは一般的に使用される添加物である。鉱物性中間留出物成分は、2以上の鉱物性成分を含んでいてもよく、および、再生可能な燃料成分は2以上の再生可能な成分を含んでいてもよい。好ましくは、再生可能な燃料成分は、水素化された再生可能な中間留出物であり、および、鉱物性中間留出物成分は、鉱物性ディーゼルである。
【0038】
特定の実施形態において、再生可能な燃料および鉱物性中間留出物成分の総計の体積は、少なくとも90vol%、好ましくは、少なくとも93vol%である。この種のブレンドは、ディーゼルエンジンと互換性のある他の成分、例えば脂肪酸メチルエステル(FAME)などを10vol%まで、好ましくは7vol%まで含んでいてもよい。この組成物は、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出し、そして、ブレンド中でのより広範な様々な成分の使用を可能にする。
【0039】
燃料は、約100%の再生可能な燃料を含んでいてもよい、しかしながら、本発明において、再生可能な燃料および鉱物性中間留出物の成分は、100%未満の体積パーセント比(再生可能:鉱物性中間留出物;100:0)でブレンドされる。好ましくは、再生可能な燃料および鉱物性中間留出物の成分は、90:10未満の体積パーセント比(再生可能な燃料:鉱物性中間留出物)でブレンドされる。一実施形態において、再生可能な燃料および鉱物性中間留出物の成分は、20:80~80:20の体積パーセント比(再生可能な燃料:鉱物性中間留出物)でブレンドされる。この組成物は、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出す。別の一実施形態において、再生可能な燃料および鉱物性中間留出物の成分は、20:80~60:40の体積パーセント比でブレンドされる。この組成物は、製造のあいだの低い資源消費をともないながらさらにより良好な低温特性を生み出す。
【0040】
別の一実施形態において、ディーゼル燃料ブレンドは、ブレンド燃料の総重量の22wt%~55wt%の、C14~C20の範囲であるイソパラフィンを有する。この組成は、製造のあいだの低い資源消費をともないながら良好な低温特性を生み出す。
【0041】
本発明はさらに、鉱物性中間留出物を含む燃料組成物の低温特性を向上させるための水素化された再生可能な燃料の使用に関する。鉱物性中間留出物ブレンド中の水素化された再生可能な燃料の含有量は、14C同位体法によって決定され得、これは当業者が化石炭素と再生可能な炭素との識別することを可能にする。本方法の原則は、ASTM D6866基準において見出すことができる。
【0042】
上記の任意のブレンド燃料は、次に記載される方法によって製造され得る。本明細書中において、したがって、向上された低温特性を有するディーゼル燃料ブレンドを製造する方法が提供され、これは、互いに17℃を越えて、好ましくは13℃を越えて異ならない曇り点を有する再生可能な燃料および鉱物性中間留出物燃料を選択すること、および、ディーゼル燃料ブレンドを形成するために、10:90~90:10の体積量の比で、再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とをブレンドすることを含み、ここで、ディーゼル燃料ブレンドは、10~25wt%のC14~C20の範囲であるn-パラフィンとC14~C20の範囲であるイソパラフィンとを、イソパラフィンの量が、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比が2.2未満、好ましくは1.1~2.2となるように含み、および、ディーゼル燃料ブレンドは、鉱物性中間留出物および再生可能な燃料の曇り点の加重平均値よりも低い曇り点を有する。
【0043】
一実施形態において、鉱物性中間留出物燃料の曇り点を低下させるための使用方法が提供され、これは、鉱物性中間留出物燃料の曇り点を測定すること、鉱物性中間留出物燃料の曇り点から17℃を超えて、好ましくは13℃を超えて異ならない曇り点を有する再生可能な燃料を選択すること、および、鉱物性中間留出物燃料の曇り点よりも低い曇り点を有するディーゼル燃料ブレンドを形成するために、再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とを10:90~90:10の体積量の比でブレンドすること、を含み、ここで、ディーゼル燃料ブレンドは、鉱物性中間留出物の曇り点よりも低い曇り点を有するディーゼル燃料ブレンドを形成するために、10~25wt%の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンと、C14~C20の範囲であるイソパラフィンとをC14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比が2.2未満であるような量で含む。
【0044】
一実施形態において、本発明は、鉱物性中間留出物燃料の曇り点を低下させるための使用方法に関し、これは、鉱物性中間留出物燃料の曇り点を測定すること、以下の特性;(i)鉱物性中間留出物燃料の曇り点から17℃を超えて、好ましくは13℃を超えて異ならない曇り点、(ii)再生可能な燃料が鉱物性中間留出物燃料とブレンドされる場合に10~25wt%の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンを含むディーゼル燃料ブレンドを提供するために十分なn-パラフィンの量、および、(iii)再生可能な燃料が鉱物性中間留出物燃料とブレンドされる場合に、1.1~2.2である、C14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比を有するディーゼル燃料ブレンドを提供するために十分であるC14~C20の範囲であるイソパラフィンの量、を有する再生可能な燃料を選択すること、ならびに、鉱物性中間留出物の曇り点よりも低い曇り点を有するディーゼル燃料ブレンドを形成するために、20:80~80:20の体積量の比で、再生可能な燃料を鉱物性中間留出物燃料とブレンドすること、を含む。
【0045】
一実施形態において、本発明は、再生可能な燃料の曇り点を低下させるための使用方法に関し、これは、再生可能な燃料の曇り点を測定すること、再生可能な燃料の曇り点から17℃を超えて、好ましくは13℃を超えて異ならない曇り点を有する鉱物性中間留出物燃料を選択すること、および、再生可能な燃料の曇り点よりも低い曇り点を有するディーゼル燃料ブレンドを形成するために、10:90~90:10の体積量の比で、再生可能な燃料と鉱物性中間留出物燃料とをブレンドすること、を含み、ここで、ディーゼル燃料ブレンドは、再生可能な燃料の曇り点よりも低い曇り点を有するディーゼル燃料ブレンドを形成するために、10~25wt%の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンと、C14~C20の範囲であるイソパラフィンとをC14~C20の範囲であるイソパラフィンのwt%量の総計の、C14~C20の範囲であるn-パラフィンのwt%量の総計に対する比が2.2未満、好ましくは1.1~2.2であるような量で含む。
【0046】
上記の方法または使用によって得られ得るディーゼル燃料ブレンドが、その成分に応じて向上された低温特性を有することが実験的に示された。
【実施例
【0047】
以下の例は、請求項に記載の発明をより良く説明するために提供されるものであり、発明の範囲を限定していると解釈されるべきではない。具体的な材料が挙げられている程度において、それは説明を目的とするのみであり、発明を限定する意図はない。当該技術分野における当業者であれば、発明の能力を発揮することなく、および、本発明の範囲から逸脱することなく、等価な手段または反応物質を開発することができるであろう。本明細書に記載される手法において、本発明の範囲内にとどまりながらも多くの変形が行われ得ることが理解されるであろう。そのような変形が本発明の範囲内に含まれるべきであるということが発明者らの意図である。パラフィンに関連して示されている重量パーセントは、ブレンド燃料の総重量のwt%を意味している。燃料成分に関連して示されている体積パーセントは、ブレンド燃料の総体積のvol%を意味している。
【0048】
比較例1
-5.5℃である曇り点を有する鉱物性中間留出物(化石燃料成分)の曇り点を-0.5~-6℃下げるためには、化石燃料成分に対して、より低い曇り点を有する第2の燃料成分を添加する必要がある。典型的には、異なる曇り点を有する2以上の燃料成分が一緒にブレンドされる場合、最終的なブレンドは、成分の曇り点の加重平均値を基に予期されるものよりも高い曇り点を有する。20vol%の、-28℃である曇り点を有する再生可能な燃料成分(再生可能G)が、-5.5℃である曇り点を有する化石成分とブレンドされた場合、6.6℃の曇り点が達成された。この再生可能な燃料成分と化石燃料成分とのあいだの曇り点における相違は、17℃よりも大きかったため、これを比較例とした。ブレンドされた燃料のn-パラフィンの重量パーセントは、ガスクロマトグラフィーによって測定され、そして、以下の表1に示されている。
【0049】
ブレンド中、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの総計のwt%は、9.18%であり、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの総計のwt%は、26.09%であり、そして、ブレンド中のn-パラフィン/イソパラフィンの比は2.84であった。ブレンドの曇り点は、-28℃の曇り点を有する再生可能な燃料の量がブレンド中40vol%まで、60vol%まで、および80vol%まで増加された場合、さらに低下され得た。様々な体積パーセントで得られたブレンドの曇り点が図2に示されている。図3は、ブレンドにおける曇り点とパラフィン比との間の相関関係を示している。しかしながら、再生可能な燃料の化石燃料に対する全ての比において、ブレンドの曇り点は、成分の曇り点の加重平均値によって算出されたものよりもより高かった(図2)。これは、本発明によって予期されるものであった。
【0050】
ブレンドする前の燃料成分中のn-パラフィンの重量パーセントがガスクロマトグラフィーによって測定され、そして、表1に示されている。ブレンドされた燃料成分中のn-パラフィンの重量パーセントが、ガスクロマトグラフィーによって測定された(表2)。ブレンドされる燃料中のイソパラフィンの重量パーセントがガスクロマトグラフィーによって測定された(表3)。ブレンドされた燃料成分中のイソパラフィンの重量パーセントが測定された(表4)。上述のブレンド中、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は、9.18~7.78wt%であり、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は、26.09~72.46wt%であり、そして、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比は、2.84~9.31wt%であった。
【0051】
実施例1
20vol%の、-2℃である曇り点を有する再生可能な燃料(再生可能F)が、80vol%の、-5.5℃である曇り点を有する化石成分とブレンドされた場合、どちらの成分の曇り点よりも低い曇り点が達成された。この相乗効果は、ブレンド中の、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比が1.6であった場合に達成される。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は13.6wt%であった。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は21.87wt%であった。
【0052】
実施例2
40vol%の、-2℃である曇り点を有する再生可能な燃料(再生可能F)が、60vol%の、-5.5℃である曇り点を有する化石成分とブレンドされた場合、どちらの成分の曇り点よりも低い曇り点が達成された。この相乗効果は、ブレンド中の、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比が1.9であった場合に達成される。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は17.6wt%であった。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は33.11wt%であった。
【0053】
実施例3
60vol%の、-2℃である曇り点を有する再生可能な燃料(再生可能F)が、40vol%の、-5.5℃である曇り点を有する化石成分とブレンドされた場合、どちらの成分の曇り点よりも低い曇り点が達成された。この相乗効果は、ブレンド中の、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比が2.05であった場合に達成される。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は21.55wt%であった。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は44.4wt%であった。
【0054】
実施例4
80vol%の、-2℃である曇り点を有する再生可能な燃料(再生可能F)が、20vol%の、-5.5℃である曇り点を有する化石成分とブレンドされた場合、どちらの成分の曇り点よりも低い曇り点が達成された。この相乗効果は、ブレンド中の、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比が2.18であった場合に達成される。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は25.5wt%であった。ブレンド中のC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は55.6wt%であった。
【0055】
以下の表は、比較例1および実施例1~4からのデータを示している。ブレンドされる燃料中のn-パラフィンの重量パーセントは、ガスクロマトグラフィーによって測定され、そして、表1に示されている。ブレンドされた燃料組成物中のn-パラフィンの重量パーセントはガスクロマトグラフィーによって測定された(表2)。ブレンドされる燃料中のイソパラフィンの重量パーセントは、ガスクロマトグラフィーによって測定された(表3)。ブレンドされた燃料組成物中のイソパラフィンの重量パーセントが測定された(表4)。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
これらの例において、化石成分の組成は、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計が10.63wt%、C8、C9、C10、C11、C12およびC13のイソパラフィンの累計が6.45wt%、C21、C22、C23、C24、C25およびC26のイソパラフィンの累計が3.13wt%、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計が9.63wt%、C8、C9、C10、C11、C12およびC13の4-パラフィンの累計が3.84wt%、C21、C22、C23、C24、C25およびC26のn-パラフィンの累計が2.58wt%であるものであった。
【0061】
比較例2
20vol%、40vol%、60vol%および80vol%の、-35℃の曇り点を有する再生可能な燃料成分が、5.5℃の曇り点を有する化石燃料成分とブレンドされた場合、全てのブレンドの曇り点は、成分の曇り点の加重平均値によって算出されるものよりも高かった。これは本発明によって予期されるものであった。上述のブレンドにおいて、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は、8.41~4.50wt%であった。C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は、26.25~76.25wt%であった。C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比は、3.1~17.0であった。ブレンドされた燃料組成物中のイソおよびn-パラフィンの重量パーセントは、ガスクロマトグラフィーによって測定された。
【0062】
比較例3
20vol%、40vol%、60vol%および80vol%の、-27℃の曇り点を有する再生可能なディーゼル燃料成分が、-5.5℃の曇り点を有する化石燃料成分とブレンドされた場合、全てのブレンドの曇り点は、成分の曇り点の加重平均値によって算出されるものよりも高かった。これは本発明によって予期されるものであった。上述のブレンドにおいて、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は、9.16~7.70wt%であり、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は、26.00~75.22wt%であり、そして、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比は、2.6~6.8であった。ブレンドされた燃料組成物中のイソおよびn-パラフィンの重量パーセントは、ガスクロマトグラフィーによって測定された。
【0063】
比較例4
20vol%、40vol%、60vol%および80vol%の、-23℃の曇り点を有する再生可能なディーゼル燃料成分が、-5.5℃の曇り点を有する化石燃料成分とブレンドされた場合、全てのブレンドの曇り点は、成分の曇り点の加重平均値によって算出されるものよりも高かった。これは本発明によって予期されるものであった。上述のブレンドにおいて、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計は、9.61~9.53wt%であり、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計は、25.66~73.76wt%であり、そして、C14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のイソパラフィンの累計とC14、C15、C16、C17、C18、C19およびC20のn-パラフィンの累計との比は、2.7~7.7であった。ブレンドされた燃料組成物中のイソおよびn-パラフィンの重量パーセントは、ガスクロマトグラフィーによって測定された。
【0064】
比較例5
異なる曇り点を有する2つの鉱物性ディーゼルブレンドがブレンドされた。ブレンドの曇り点は、EN 23015およびEN 116に規定されている方法によって測定された。鉱物性ディーゼルブレンドの測定された曇り点が表5および図1にそれぞれ示されている。表5における算出された線形予測は、線形挙動に基づいており、これは成分の曇り点の加重平均を意味している。線形挙動は、曇り点の平均であり、換言すると、ブレンド中の成分の体積パーセントによって成分の曇り点を重み付けすることによって得られる。分析は、より劣った曇り点の成分が支配的であることを示している。
【0065】
【表5】
【0066】
図1は、より劣った曇り点の値を有する成分が鉱物性ディーゼルブレンドにおいて支配的であったことを示している。用語「より劣った(poorer)」とは、曇り点または目詰まり点のより高い温度値を意味しており、用語「より良好な(better)」とは、曇り点または目詰まり点のより低い温度値を意味している。
【0067】
実施例5
種々の低温特性を有する再生可能な水素化された植物油組成物が、種々の体積で鉱物性ディーゼルにブレンドされた。ブレンドの曇り点および/または目詰まり点は、EN 23015およびEN 116に規定される方法によって測定され、そして表6に示されている。ブレンディングが、成分の曇り点の加重平均を算出することにより予期されるものよりもより低い、すなわちより良好な曇り点および目詰まり点の測定値を生じさせたことがわかる。いくつかの場合において、ブレンドは、個々の成分の低温特性よりもより良好な低温特性を有してさえいた。測定された曇り点は、低温特性の算出された加重平均値と比較して3℃を超えるほどにより良好であった。また、目詰まり点もそのままの鉱物性燃料におけるものよりもブレンド中でより良好であった。
【0068】
【表6】
【0069】
曇り点の値とは対照的に、目詰まり点の値は、典型的にはポリエチレンビニルアセテート、すなわちpoly-EVA類である低温流動性向上剤添加物によって向上され得る。他の典型的な添加物は、潤滑性向上剤および導電性向上剤である。ディーゼル6およびディーゼル8は、低温流動性向上剤を含んでいる。
【0070】
実施例6
7%の脂肪酸メチルエステルが、100%再生可能な水素化された植物油ディーゼル(再生可能E)またはそれの鉱物性ディーゼル(ディーゼル6)とのブレンドに添加された。脂肪酸メチルエステルが添加されたディーゼル6および再生可能Eのブレンドの曇り点および算出された、曇り点の加重平均が測定された。
【0071】
【表7】
【0072】
実施例7では、ディーゼル6と再生可能Eとのあいだの曇り点の相違は、5℃である。結果は、ブレンドする成分としての脂肪酸メチルエステルがより劣った曇り点を与えるが、本発明にしたがったブレンディングがこの効果を緩和することができることを示している。これゆえ、本発明の一実施形態によれば、7vol%までの脂肪酸メチルエステルの、請求項1に記載の再生可能な燃料および鉱物性中間留出物のブレンド燃料とのブレンディングにより、その成分の加重平均値よりも低い曇り点が達成され得る。このような曇り点は、いかなる個々の成分のものよりも低いものにさえなり得る。
【0073】
当該技術分野における当業者にとっては、技術が進歩した際に、発明の概念は様々な方法で実行され得ることが明らかであろう。上記の実施形態における主題は、任意の順番または様式で組み合わされ得る。同様のことが全ての従属請求項の主題に適用され、それらは、独立請求項を限定するために任意の組み合わせで用いられ得る。本発明およびその実施形態は、上記の実施例に限定されるものではなく、請求項の範囲内で変更され得る。
図1
図2
図3
図4