(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】音波ガイド装置によるストライク又はミュージカル携行型時計
(51)【国際特許分類】
G04B 21/08 20060101AFI20220111BHJP
G04B 21/06 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G04B21/08 Z
G04B21/06 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020008130
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2020-01-22
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134058(JP,A)
【文献】特表2014-513309(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02777095(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にフレキシブルな導波路(2)を有するストライク又はミュージカル携行型時計(1)であって、
前記導波路(2)は、当該携行型時計(1)内にて固定された固定部(8)に固定され、
前記導波路(2)は、発生した音波を前記導波路(2)の第1の部分(2’)を介して少なくとも1つの放射要素の方へとガイドし、
前記導波路(2)は、前記第1の部分(2’)又は前記導波路(2)の第1の端から、前記導波路(2)の第2の部分(2”)に配置された前記放射要素へと、音波振動の方向を変えるように構成され、
前記導波路(2)の中間部分(a、b、c)に共振メンバーが接続されている
ことを特徴とするストライク又はミュージカル携行型時計(1)。
【請求項2】
前記導波路(2)は、
材料片(22)を介して前記固定部(8)に保持され、かつこの材料片(22)と一体化されている
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計(1)。
【請求項3】
当該携行型時計は、所定の時点において励起要素(E)によって振動させられることができる共振メンバーを有し、これによって、前記導波路(2)の前記第1の部分(2’)又は前記導波路(2)の中間部分(a、b、c)に供給される音波を発生させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の携行型時計(1)。
【請求項4】
前記導波路(2)は、前記導波路(2)内にガイドされる音波を発生させるように励起要素(E)によって前記第1の部分にて励起されることができる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項5】
前記導波路(2)は、前記導波路(2)内にてガイドされる音波の共振周波数に適応している質量(m)を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項6】
前記放射要素の少なくとも1つは、携行型時計の風防(3)である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項7】
前記放射要素の少なくとも1つは、ベゼル(5)に接続される携行型時計の風防(3)である
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項8】
前記放射要素の少なくとも1つは、携行型時計ケースの裏蓋(7)又はミドル部である
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項9】
前記放射要素は、さらに、携行型時計ケースのミドル部(6)に、前記風防(3)を保持する又
はベゼル(5)を用いて前記風防(3)を保持する膜(4)を備える
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の携行型時計(1)。
【請求項10】
前記導波路(2)の第2の部分(2”)は、前記放射要素(3、4、5)に直接接続される
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項11】
前記導波路(2)の第2の部分(2”)は、音波の伝達のために前記放射要素(3、4、5)と接触する
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項12】
前記導波路(2)の前記第2の部分(2”)は、前記放射要素
としてのベゼル(5)に接続される
ことを特徴とする請求項10に記載の携行型時計(1)。
【請求項13】
前記導波路(2)の前記第2の部分(2”)は、携行型時計の表盤(9)の中心を通り抜けることによって、前記放射要素
としての風防(3)の中心に接続され又は接触する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の携行型時計(1)。
【請求項14】
前記導波路(2)は、前記固定部に接続されており、
前記固定部は、携行型時計用ムーブメント(8)のプレート、携行型時計ケースのミドル部(6)、ケーシングリング(18)のような内側支持体、又は携行型時計の表盤(9)である
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項15】
前記導波路(2)の前記第1の部分(2’)と前記第2の部分(2”)は、10°よりも大きい角
度を形成するように曲がっており、これによって、携行型時計の平面内の振動モードからピストン型の面外振動モードに変わる
ことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項16】
前記導波路(2)の前記第1の部分(2’)と前記第2の部分(2”)は、80°~100°の角度を形成するように曲がっている
ことを特徴とする請求項15に記載の携行型時計(1)。
【請求項17】
前記共振メンバーは、前記導波路(2)の前記第1の部分(2’)に接触するストライク機構の少なくとも1つのゴングであり、
前記ゴングは、所定の時点において前記ストライク機構のハンマー(E)である前記励起要素によってストライクされて音波を発生させる
ことを特徴とする請求項3または請求項3を引用する請求項4ないし16のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項18】
前記共振メンバーは、前記導波路(2)の前記第1の部分に接触するストライク機構の材料片を備える振動プレートであり、
前記振動プレートは、ピンを備えるディスク又はシリンダーである前記励起要素によってアクチュエートして前記ストライク機構の前記材料片を所定の時点において励起させて、メロディの形態の音波を発生させることができる
ことを特徴とする請求項3または請求項3を引用する請求項4ないし17のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【請求項19】
前記導波路(2)は、ワイヤカットによって、又はケイ素から作る方法によって、所定の耐疲労性を有するように構成する材料から作られる
ことを特徴とする請求項1ないし18のいずれか一項に記載の携行型時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響的導波路構成を備えるストライク又はミュージカル携行型時計に関する。
【背景技術】
【0002】
計時器の分野では、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)は、ミニッツリピーターを鳴らしたり所定の時点に音楽を奏でたりするストライク機構を備えることができる。ゴングを用いるストライク機構の場合、用いられる金属製のゴングは、一般的には、環状であり、携行型時計の表盤に平行な平面内に配置される。各ゴングの一端又はいくつかの端は、携行型時計のムーブメントのメインプレート又は携行型時計ケースのミドル部と一体化された少なくとも1つのゴングキャリアに固定される。ゴングの他方の端は、一般的には、自由に動くことができる。各ゴングの振動は、ハンマーがゴングキャリア近くのゴングに衝突することによって発生する。各ハンマーは、一般的には、ゴングの平面内で回動して対応するゴングをストライクし、そのゴングを携行型時計の裏蓋又は表盤に平行な平面内で振動させる。また、ゴング振動の一部は、ゴングキャリアによってプレートに伝達されたり、携行型時計の他の部分、例えば、外装部品に伝達されたりする。
【0003】
ストライク機構を備える携行型時計において音が発生する場合、携行型時計の平面内において機械的振動を発生させる、ゴングや振動プレートのような振動源と、その振動源が発生させた機械的振動を気圧の変動に変換する、音響膜のような放射要素とがある。ゴングは、一般的には、音響膜のような放射要素に直接接続されてはいない。比較するために、機械的振動を発生させる振動源としての可動コイルを備えるスピーカーと、機械的振動を気圧の変動に変換する放射要素としての音響膜とを考えてみる。可動コイルは放射要素に、接続され、すなわち、直接固定される。
【0004】
携行型時計の場合、振動伝達要素は、例えば、プレート、ケーシングリング、ケースミドル部、ベゼルガスケットからなることができるが、これらの構成要素は、振動の伝達に最適化されていない。上述したように、携行型時計の外装部品は、例えば、ケースのケースミドル部、ベゼル、風防、裏蓋である。ハンマーによってストライクされたゴングによって又は振動プレートの一又は複数の材料片によって音が発生する場合、その振動は、ゴングや振動プレートによってその振動が発生した領域から、膜や携行型時計の風防のような音を放射することを必要とされる領域へと伝播しなければならない。
【0005】
伝統的なストライク携行型時計では、外装部品が関与する複雑な振動/音響変換に基づく音響効率は低い。振動発生要素であるゴングから音響放射要素である外装部品までの振動の伝播は最適ではない。ストライク携行型時計のユーザが知覚する音響レベルを改善し大きくするためには、振動の伝達を改善して、振動を放射要素へとうまく伝達することが必要である。このような外装部品の材料、形状及び境界条件を考慮しなければならない。また、これらの外装部品の構成は、携行型時計の美しさや動作上の制約にも依存し、このことによって適応できなくなることがある。
【0006】
また、ゴングや振動プレートの材料片によって発生する音響放射を改善させるために、欧州特許EP3009895B1に記載されているような携行型時計ケース内に構成される一又は複数の膜を用いることができる。これらの膜は、発生する音又は音楽の音響放射を改善するように構成している。また、良好な音響放射、特に、低周波の音響放射、を発生させるように、他の携行型時計の外装部品も適応させることができる。しかし、これらすべての構成の音響効率は不十分であることが多く、このことは課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況を鑑み、本発明の目的は、携行型時計内で発生する音波のための良好な導波路構成を備えたストライク又はミュージカル携行型時計を提供して、携行型時計内で発生する音又はメロディが携行型時計の外部へと良好に放射することを確実にすることによって、現状の技術の課題を解決することである。このような導波路構成によって、機械的振動の伝達を改善させることができる。
【0008】
このようにして、本発明は、独立請求項1において定められる特徴を有する上述のようなストライク又はミュージカル携行型時計に関する。
【0009】
従属請求項2~19に、本携行型時計の具体的な実施形態が定められている。
【0010】
本発明に係るストライク又はミュージカル携行型時計の利点の1つは、携行型時計の固定部に接続される少なくとも部分的にフレキシブルな導波路を備えて、ガイドの第1の部分と放射要素との間で音波をガイドすることに基づいている。前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路は、音波を発生したり受けたりする箇所である第1の部分から放射要素へと音響振動の方向を変えるように構成している。これによって、携行型時計の平面内の振動モードから「ピストン」型の面外振動モードに変えることができる。
【0011】
好ましくは、放射要素は、携行型時計の風防であり、あるいは携行型時計ケースのミドル部に固定されるベゼルに接続された携行型時計の風防である。好ましくは、ベローズ型の膜をベゼルとミドル部との間に配置する。このようにして、放射要素は、スピーカーのように機能するように(面外で)自由に動く。これによって、携行型時計の外で感じる音やメロディの質や強さが向上する。
【0012】
図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、音響的導波路構成を備えるストライク又はミュージカル携行型時計の目的、利点及び特徴を明確に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る音響的導波路構成を有するストライク又はミュージカル携行型時計の簡略断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る音響的導波路構成を有するストライク又はミュージカル携行型時計の簡略化された部分断面図である。
【
図3】
図1の第1の実施形態に関連するストライク又はミュージカル携行型時計の簡略化された部分断面図であり、本発明に係る少なくとも部分的にフレキシブルな導波路への共振メンバーのいくつかの異なる接続位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下においては、この技術分野でよく知られている音響的導波路構成を有するストライク又はミュージカル携行型時計の要素についてはすべて、簡易的にのみ説明している。
【0015】
図1は、ストライク又はミュージカル携行型時計1の断面図を概略的に示しており、これは、特に、携行型時計が用いられるときの所定の時点において、携行型時計の外で知覚される音又はメロディの質と強さを改善するように携行型時計内にて音波をガイドする構成を有する。
【0016】
ストライク又はミュージカル携行型時計1は、主として、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2を備えており、これは、
図2に示しているように、携行型時計1内の固定部8に固定されており、例えば、携行型時計用ムーブメントのプレートに、携行型時計ケース1のミドル部6に、ケーシングリングのような内側支持体に、又は携行型時計の表盤9に固定されている。前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、発生した音波を、フレキシブルな導波路2の第1の部分2’を通って放射要素3、4、5の方へとガイドする。少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、前記固定部に固定されると、音響振動が第1の部分2’から放射要素へと移るように構成している。
【0017】
図1に示している第1の実施形態において、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、携行型時計用ムーブメント8のプレートの下などにて、フレキシブルな材料片22によって、第1のガイド端であることができる第1の部分2’の側のまっすぐな部分に保持される。第1の部分2’上のこのまっすぐな部分は剛体であることができる。前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2には、さらに、音響振動の方向を変えるための曲がり部分12と、この曲がり部分12を放射要素3、4、5に接続する別のまっすぐな部分2”がある。少なくとも曲がり部分12がフレキシブルガイドメンバーに接している。また、この別のまっすぐな部分2”は、固定部8にも固定されており、例えば、他のフレキシブルな材料片によってプレートの上にて固定壁18に固定される。固定壁18はケーシングリング18であることができるが、他の接続手段を設けることもできる。
【0018】
前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、フレキシブルな材料片22と一体化されている。なぜなら、振動の伝達における接触はいずれも音の伝達品質を低下させてしまうからである。
【0019】
前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の別のまっすぐな部分の第2の部分2”は、
図1に示しているように、放射要素と接触する又は放射要素に接続している。放射要素は、直接携行型時計の風防3であることができ、また、携行型時計の風防3に接続されるベゼル5であることができる。また、第2の部分2”にあるこの別のまっすぐな部分も剛体であることができる。また、放射要素は、携行型時計ケース1のミドル部6上にて、風防3を保持する、好ましくは、ベゼル5を用いて風防3を保持するようにベローズ膜4によって接続されることができ、携行型時計ケース1は、風防3とは反対側の裏蓋7によっても閉じられる。このベローズ膜4は、円筒状であることができ、これによって、風防3に接続されるベゼル5を用いて密閉される形態で携行型時計ケースを閉じる。このように、放射要素は、ベゼル5とケースミドル部6の間に設けられた膜4によって、スピーカーのように自由に動き機能する。
【0020】
また、第2の部分2”を備えず、曲がり部分12が放射要素に直接接続されることを考えることができる。
【0021】
別の放射要素、例えば、携行型時計ケース内の裏蓋7側に固定される膜、また、直接、携行型時計ケースの裏蓋7を考えることができる。
【0022】
膜4は、金属又はアモルファス金属材料によって作られていることに留意すべきである。この膜4は、電鋳によって作ることができ、比較的複雑な形状を有することができる。
【0023】
この
図1の第1の実施形態において、音波は、第1の端をストライクする、ハンマーのような励起要素Eによって発生させることができる。この第1の端は、この場合、前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’である。ハンマーは、振動源を一回ストライクする。振動源は、直接前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2であったり、ハンマーがストライクした後に特定の時間振動するゴングであったりすることができる。この音波の発生は、まず、携行型時計の平面内の振動、すなわち、携行型時計用ムーブメント8のプレートに平行な振動や携行型時計の表盤に平行な振動を伴う。次に、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の曲がり部分12は、音響振動の方向を変えて、放射要素3、4、5を、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第2の部分2”にて振動させる。この第2の部分2”は、第2の端であることができる。この場合における音響振動は、スピーカーのように「ピストン」モードとなっており、これは、音やメロディを伝達するために特に効率的である。しかし、波の発生及び波の伝達の方向は限定されない。
【0024】
したがって、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、その長さに沿って、その曲がり部分12にて、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’と第2の部分2”の間で、10°よりも大きい角度、好ましくは、80°~100°の角度、例えば、90°の角度で、曲げられる。これによって、携行型時計の平面内の振動モードから、「ピストン」タイプの面外振動モードに切り替わることができる。このことは、好ましい目標である。
【0025】
また、本発明は、三次元空間において10°よりも大きい方向の変化をいずれもカバーし、回転を線形変位に変換することも可能であることに留意すべきである。
【0026】
音波を発生させるためにゴングを用いずに前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2自身をゴングとして用いて導波路2を直接用いる場合、導波路2は、前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路の第1の部分2’と第2の部分2”の間の明確に定められる質量mを有する特定の材料で作られなければならない。共振周波数は、式、
fr=(1/2π)・(k/m)1/2
にしたがってガイドのスチフネスと質量に直接依存する。ここで、kはスチフネス、mは質量である。前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路の質量mを適合させることによって、ハンマーEのストライク後に発生する正確なノート(音符)を決め伝達することができる。少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の質量は、例えば、前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路の一部を削り取ったり、錘ねじを追加したり取り除いたりすることによって、容易に調整することができる。
【0027】
また、ハンマーEはどこでもフレキシブルな導波路2をストライクすることができる。なぜなら、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、発生した音響振動を伝達することができるからである。
【0028】
また、ストライク機構のゴングのような共振メンバーを、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’又は第1の端に接続することも考えられる。このような場合、ハンマーはゴングをストライクし、振動するゴングによって発生する音波は、前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路の第1の部分2’によってガイドされる。また、ゴングは、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の中間部分に配置されることもできる。
【0029】
ストライク機構の材料片(図示せず)を備えた振動プレートを設け、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’に接触するように配置することもできる。振動プレートは、所定の時点においてストライク機構の材料片を励起してメロディの形の音波を発生させるためのピンを備えるディスク又はシリンダーである励起要素によってアクチュエートさせることができる。メロディとして発生する音波は、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’によってガイドされる。
【0030】
なお、3つ又は4つの異なるノートを発生させるための少なくとも3つ又は4つの材料片のような材料片を備えた振動プレートを用いる場合、いくつかの少なくとも部分的にフレキシブルな導波路を設けて、そのそれぞれが、発生する各ノートに適応する音波をガイドするために各材料片の1つに接続されることができることに留意すべきである。
【0031】
セキュリティー上の理由のために、携行型時計が用いられていない場合、放射要素3、4、5を機械的ロックデバイスによってロックして、フレキシブルな膜4を保護することができる。
【0032】
図2は、第2の実施形態に係る携行型時計内にて音波をガイドする構成を有するストライク又は機械的携行型時計1の断面を概略的に示している。簡明性のために、
図1を参照しながら説明した要素の説明は繰り返さない。
【0033】
第1の実施形態と比較したこの第2の実施形態の本質的な違いは、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第2の部分2”が、放射要素の風防3と接触し又は風防3をストライクし、又は風防3に直接固定されることである。好ましくは、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、固定部に接続され、この固定部は、この場合、携行型時計の表盤9又はプレートである。少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’は、金属材料片のようなフレキシブルな材料片22によって表盤9の内面に接続される。曲がり部分ないし曲げられた部分12は、表盤9の中心にあり、例えば、円形の表盤9の中心にある。フレキシブルな導波路の第2の部分2”を備える別のまっすぐな部分は、表盤の中心にある開口を通り抜け、好ましくは、時間指示針10のアーバーを通り抜ける。また、表盤にある開口内のフレキシブルな材料片を介した接続も設けられて、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の別のまっすぐな部分を保持する。
【0034】
また、周部などにて見える機構を備える音響的導波路構成を配置して針10を通すことを可能にすることを考えることも可能である。
【0035】
上述のように、フレキシブルな導波路2の曲がり部分12は、放射要素を少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第2の端であることができる第2の部分2”で振動させるように音響振動の方向を変える。好ましくは、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’のまっすぐな部分と第2の部分2”のまっすぐな部分との間の角度は、80°~100°であり、例えば、直角である。
【0036】
第2の実施形態の構成においては、第1の端をストライクするハンマーのような励起要素Eによっても音波を発生させることができ、この場合、この第1の端は、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’である。もちろん、少なくとも1つのストライク機構のゴングが、例えば、第1の部分2’に接続され、ハンマーEによってストライクされて、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’から、携行型時計の風防3に接続される少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第2の部分2”にガイドされる音波を発生させることも可能である。
【0037】
第1の実施形態と同様に、放射要素は、携行型時計の風防3を有し、好ましくは、ベローズ膜4を介して携行型時計ケースのミドル部6に取り付けられたベゼル5に縁部にて固定される携行型時計の風防3を備える。
【0038】
図3は、
図1の第1の実施形態に関連するストライク又はミュージカル携行型時計1の変種を示している。簡明性のために、
図1を参照しながら説明した要素についての説明は繰り返さない。
【0039】
ハンマーのような励起要素Eは、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’をストライクすることができ、発生した音波は、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2内へとガイドされる。ストライク機構のゴングのような共振メンバーは、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の中間部分a、b、cにも接続して、ハンマーが第1の部分2’をストライクした後に、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2内へとガイドされる音波を発生させることができる。このようなゴング(記号で示している)は、機械的励起要素E上の「a」、曲がり部分12上の「b」、又は放射要素3上の「c」に位置することができる。ゴングが振動し始めた後に、少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2の第1の部分2’にてハンマーによって音響振動が発生する。
【0040】
前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路2は、ワイヤ切断技術によって、電着によって、又はケイ素から作る方法によって作ることができる。また、材料は、良好な耐疲労性を有するように構成でなければならない。
【0041】
以上の説明から、当業者であれば、請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱せずに、音響的導波路構成を備えるストライク又はミュージカル携行型時計のいくつかの変種を作ることができるであろう。前記少なくとも部分的にフレキシブルな導波路は、異なる形態であることができるが、その第1の端から第2の端まで音響振動の方向を変えることができなければならない。
【符号の説明】
【0042】
1 ストライク又はミュージカル携行型時計
2 少なくとも部分的にフレキシブルな導波路
2’ 第1の部分
2” 第2の部分
3 風防
4 膜
5 ベゼル
6 ミドル部
7 裏蓋
8 固定部
9 表盤
10 針
12 曲がり部分
18 ケーシングリング
22 フレキシブルな材料片
a、b、c 中間部分
E 励起要素
m 質量