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特許69978332-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの工業的生産方法およびアミンの存在下でのそれらの使用
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  • 特許-2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの工業的生産方法およびアミンの存在下でのそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの工業的生産方法およびアミンの存在下でのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08H 1/00 20060101AFI20220128BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20220128BHJP
   C08G 69/48 20060101ALI20220128BHJP
   A61L 27/24 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C08H1/00
C08G63/91
C08G69/48
A61L27/24
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020109071
(22)【出願日】2020-06-24
(62)【分割の表示】P 2017533476の分割
【原出願日】2015-12-22
(65)【公開番号】P2020172495
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】VE2014A000070
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】VE2014A000071
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517212743
【氏名又は名称】クロッシング エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ベゲット ヴァレンティーナ
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】英国特許第01311736(GB,B)
【文献】米国特許出願公開第2013/0165533(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142483(US,A1)
【文献】特表2008-504912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンマトリックスの安定化、または天然ポリマーもしくは合成ポリマーの縮合のための方法において、一組の試薬による単一工程反応を行うことを含み、
第1の試薬が
a)下記式III(2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジン)(式中、R およびR は、-CH 、-CH CH 、-CH(CH 、-(CH CH 、-(CH CH から独立して選択され、XはClまたはBrである)の少なくとも1つの化合物と、
b)緩衝剤と、
c)無機塩と、
d)溶媒と
を含む組成物であり、
第2の試薬が、
a)第三級アミン、および/またはその第四級塩と、
b)緩衝剤と、
c)溶媒と
を含む組成物である、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの使用。
【化1】
【請求項2】
前記第1の試薬が、有効成分として、0.1から1.0Mの範囲の濃度で1つまたは複数の式IIIの2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の試薬が、MES、ACES、BES、BIS-Tris、MOPS、TEA、TAPSO、POPSO、TAPS、ギ酸塩、リン酸塩、およびコハク酸塩の群から選択される緩衝剤、ならびに式X(式中、Xは、Na、K、Agから選択され、Yは、ClO 、BF 、PF 、CO 、Cl、およびHCO から選択される)の塩基または塩を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬1の溶媒が、脂肪族エーテル、ハロゲン化物、アルコール、ケトン、エステル、芳香族または脂肪族炭化水素、アミド、炭酸塩、DMSO、および水の群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の試薬が、有効成分として、0.1から1.0Mの範囲の濃度で1つまたは複数の直鎖、分枝、環状、芳香族、複素環式第三級アミン、および/またはそれらの第四級塩を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の試薬が、HEPES、MOPS、TRIS、tri-Na-クエン酸塩、Tris-Cl、およびTAPSの群から選択される緩衝剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記試薬2の溶媒が、脂肪族エーテル、ハロゲン化物、アルコール、ケトン、エステル、芳香族または脂肪族炭化水素、アミド、炭酸塩、DMSOおよび水の群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の試薬が、前記緩衝剤のための添加剤をさらに含んでもよい、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の試薬の前記緩衝剤のための添加剤が、NaCl、NaHPO、NaOAc、KCl、SDS、グリシン、ホウ酸、EDTA、およびNaNの群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
コラーゲンマトリクスを安定化させ、ポリマーを縮合する方法は、縮合、架橋、グラフト化、および硬化の反応によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
食品工業の廃棄物に由来するコラーゲンを安定化させるプロセスにおいて使用される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリエチレン、セルロース、変性セルロース、多糖類、デンプン、およびリグニンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試薬1および2の溶媒が水であり、食品工業の廃棄物に加えられ、皮をなめすために使用される、請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程:
a)リアクタにおける生皮の水中での懸濁と、
b)反応させる生皮の重量に対して3から22wt%の範囲の濃度で水中への2つのなめし試薬の添加と、
c)リアクタからの使用済みの浴の除去およびリアクタの水による洗浄と
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
懸濁液中に生皮を含有する浴に、2つの試薬が同時に加えられるか、または最初に試薬1、次に試薬2が連続して加えられる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記2つの試薬が、10℃から45℃の温度にて撹拌済みの懸濁液中に生皮を含有する浴に同時に加えられる、請求項1315のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項16のいずれか一項に記載の方法におけるコラーゲンマトリクスを安定化させ、ポリマーを縮合するための一組の試薬であって、第1の試薬および第2の試薬によって構成され、第1の試薬が、
a)式III(2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジン)(式中、RおよびRは、-CH、-CHCH、-CH(CH、-(CHCH、および-(CHCHから独立して選択され、XはClまたはBrである)の少なくとも1つの化合物と、
b)緩衝剤と、
c)無機塩と、
d)溶媒と
を含み、
第2の試薬が、
a)第三級アミン、および/またはその第四級塩と、
b)緩衝剤と、
c)溶媒と
を含む組成物である、一組の試薬。
【請求項18】
前記第1の試薬が、有効成分として、0.1から1.0Mの範囲の濃度で1つまたは複数の式IIIの2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを含む、請求項17に記載の一組の試薬。
【請求項19】
前記第1の試薬が、MES、ACES、BES、BIS-Tris、MOPS、TEA、TAPSO、POPSO、TAPS、ギ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩の群から選択される緩衝剤と、式X(式中、Xは、Na、K、およびAgから選択され、Yは、ClO 、BF 、PF 、CO 、Cl、およびHCO から選択される)の塩基または塩とを含む、請求項17または18に記載の一組の試薬。
【請求項20】
前記試薬1の溶媒が、脂肪族エーテル、ハロゲン化物、アルコール、ケトン、エステル、芳香族または脂肪族炭化水素、アミド、炭酸塩、DMSO、および水の群から選択される、請求項1719のいずれか一項に記載の一組の試薬。
【請求項21】
前記第2の試薬が、有効成分として、0.1から1.0Mの範囲の濃度で1つ以上の直鎖、分枝、環状、芳香族、複素環式第三級アミン、および/またはその第四級塩を含む、請求項1720のいずれか一項に記載の一組の試薬。
【請求項22】
前記第2の試薬が、HEPES、MOPS、TRIS、tri-Na-クエン酸塩、Tris-Cl、およびTAPSの群から選択される緩衝剤を含む、請求項1721のいずれか一項に記載の一組の試薬。
【請求項23】
前記試薬2の溶媒が、脂肪族エーテル、ハロゲン化物、アルコール、ケトン、エステル、芳香族または脂肪族炭化水素、アミド、炭酸塩、DMSO、および水の群から選択される、請求項1722のいずれか一項に記載の一組の試薬。
【請求項24】
前記第2の試薬が、緩衝剤のための添加剤をさらに含んでもよい、請求項1723のいずれか一項に記載の一組の試薬。
【請求項25】
前記第2の試薬の前記緩衝剤のための添加剤が、NaCl、NaHPO、NaOAc、KCl、SDS、グリシン、ホウ酸、EDTA、およびNaNの群から選択される、請求項24に記載の一組の試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンマトリクスの安定化、ならびに天然および合成ポリマーの縮合のためのプロセスに関与する縮合、架橋、グラフト化、および硬化反応のための活性化剤の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、工業規模でも実行され得る、縮合、架橋、グラフト化、および硬化反応のための活性剤として作用し、コラーゲンマトリクスの安定化のため、およびポリマーの縮合のための2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの合成プロセスに関し、ならびに様々な工業部門、とりわけなめし工業およびなめし皮加工工業における前記試薬の複数の適用に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、アミド、エステル、およびチオエステルは、アミン、アルコール、チオアルコールと、「活性化」カルボン酸との間の反応から形成され、すなわち、塩化アシル、混合無水物、または活性化エステルの形成によって得られる。これらの反応は、薬剤、ポリマー、パッケージング、食品、組織などの多くの異なる分野における広範な製品の生産プロセスの根底をなす。
【0004】
特に、カルボジイミドは、それらがカルボン酸と反応して、アミン、アルコール、またはチオアルコールの存在下で、所望の結合を形成するように反応する、活性中間体種を形成できる限り、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合などの形成のために広範に使用される有機試薬である[非特許文献1]。最も頻繁に使用されるカルボジイミドの1つはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)であるが、反応の間、DCCは、反応の終わりに注意深く除去されなければならない毒性副生成物の形成を導く。カルボジイミドの存在下で反応は有機溶媒中で広範に実施される。なぜならそれらの分子は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドクロロハイドレート(EDC)を除いて、水溶液中で安定ではないからである。しかしながら、EDCは、等モル量(またはより多くの量)のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の併用使用を必要とし、それはかなり不安定であり、低温(約-20℃)で保存されなければならず、非常に高価である。現在、この試薬は、いずれの場合も、ポリアミノ酸および高付加価値を有する他の薬剤誘導体の生産のため、ならびにコラーゲンの架橋のため、腱および網膜の再構成のため、ヒドロゲルの生産のためなどに最も広範に使用されるものの1つである[特許文献1、特許文献2]。
【0005】
バイオテクノロジー分野において、カルボジイミド(例えば、EDC/NHS)は、それらの低い毒性のために、コラーゲンの架橋のためのグルタルアルデヒドの代替として広範に使用されている。しかしながら、カルボジイミドの排他的使用で架橋された材料の特性、ゲル化温度(Tg)、および物理的機械的特性は、明確に劣っている。
【0006】
グルタルアルデヒド、アシル、アジド、およびグリセロールで得られたものに匹敵する特徴を有するコラーゲンマトリクスを得るために[非特許文献2]、カルボジイミドは、通常、コラーゲン組織に恒久的に結合したままである架橋剤の存在下で使用される[非特許文献3]。
【0007】
2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの誘導体、および特にそれらの第四級アンモニウム塩は、カルボジイミドの有効な代替物となり、また、均質および/または不均質相における架橋、グラフト化、硬化などの反応によってアミド結合、エステル結合、およびチオエステル結合の形成のために水性環境中で使用され得ることが知られている[特許文献3、非特許文献4]。多くの場合、これらの試薬は、DCC、EDC/NHS、PyBOP、HATU、HBTUなどの今までに知られている他のカップリング剤より効果的である。現在のところまれに利用される代替物は、他の天然および/または合成マトリクスと組み合わせたコラーゲンから作製される、医学的用途のための複雑なマトリクスの安定化のための、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの第四級アンモニウム塩、特に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)(1つだけ市販されている)の使用に頼っている[特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8]。
【0008】
2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの第四級アンモニウム塩は最終産物における毒性の問題を示していない。なぜなら、それらは、これらの文献に公表されておらず、処理/反応の終わりに容易に除去され得るからである。これらの理由のために、DMTMMに関する科学的文献は、ここ数年、継続的に発展している。例えば、特許文献9は、軟骨のための人工潤滑剤を調製するためのDMTMMの使用を示す。しかしながら、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの誘導体は溶媒に対して非常に感受性があり、この構成要素はそれらの使用を制限する。現在まで、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの誘導体の合成に関する文献は、かなり限られており、全ての場合、以下の少なくとも2つの工程を含む:1)所与の溶媒、通常、有機溶媒中のアミンの存在下での、対応する2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンからのトリアジン誘導体の合成;2)使用前の生成物の回収および精製[特許文献3、特許文献10、特許文献11、特許文献12]。しかしながら、有機化合物の合成のために一般に使用される、このプロトコルはまた、「単離生成物プロトコル(Isolated-Product Protocol)」(IPP)とも称され、上記全ての工業的生産の観点から、複雑な反応、多量の溶媒、複雑な精製工程などを要求する限り、所望の産物の収率をかなり減少させ、操作コストの増加およびそれ故、販売価格の上昇を導く、特定の数の重要な特徴を示す。
【0009】
M.Kunishimaらは、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの第四級アンモニウム塩の存在下での脱水素縮合の反応機構を研究している[非特許文献6]。著者は、急速な分解を生じる、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの第四級アンモニウム塩が非常に不安定になる溶媒であるCHCl中で行われる反応のいくつかの例を与えている。この問題を克服するために、著者は、CDMTおよび第三級アミンの存在下でのカルボン酸と第一級アミンとの間の反応のいくつかの例を示すが、恐らく、使用される溶媒(CHCl)および緩衝剤、補助剤などの不在を考慮して、多くの場合、得られる主な生成物は、所望されるアミドの代わりにトリアジンと第一級アミンとの縮合生成物である。現在、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)および4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)のみが、それらを生産するための工業規模(キログラム/日またはトン/日を単位とする)での適切なプロセスの欠如のために非常に高価格で市販されている。
【0010】
最近の文献において、IPPによって得られたDMTMMを使用する多くの応用例が記載されているが、それらはまた、DMTMMの使用に関連した問題(高コスト、低い利用可能性、経時的不安定性など)のために工業レベルでの使用を見出すことにいくつかの困難がある[特許文献13、特許文献14]。DMTMMは、ポリマー、生体材料、および皮製品の合成のために現在使用されている等価の活性剤の平均コストの300倍を超えるコストがかかる。さらに、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの第四級アンモニウム塩は、一般に長期間にわたって室温で不安定であり[特許文献10]、それらが適切な条件で輸送および保存されない場合、部分的または全体の分解を受ける場合がある。その保存を保証するために、DMTMMは-20℃にて輸送および保存されなければならない。DMTMMのコストは、CDMT(それからDMTMMが合成される)のコストおよび利用可能性に直接関連する。
【0011】
2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの合成に関する文献は主にCDMTの調製に関する。一般に2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンと同様に、CDMTの合成の基本的な態様の1つは、副産物の形成を最小化または完全に除去するための反応過程の制御である。
【0012】
現在、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを合成するための唯一のプロトコルは、特許文献15に記載されており、通常の実験機器で実施される数グラム規模での合成に関する。反応は一般に、アルコール、普及しているのはメタノール、および塩基、好ましくはNaHCOの存在下で、塩化シアヌルから開始して行われる。反応の間、水およびCOが形成される。特許文献15において、著者は、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの良好な選択性および収率を得るための基本的要件として、反応の開始時および終了時に存在する水の量が、常に、シアヌル酸ハロゲン化物(式Iの化合物、本明細書以下に示される反応スキームにおいて、単に「I」とも称される)1mol当たり2.5mol未満でなければならないことを提示している。したがって、上記のプロトコルに従って高収率のCDMTを得るために、水が反応の副産物であるため、使用前に全ての溶媒が蒸留され、無水物化され、場合により、不活性雰囲気中で反応が行われることを必要とする。さらに、系の粘度を低下させるために試薬および溶媒の両方として使用される多量のアルコールが必要とされる(アルコール/I比=5~50mol/mol)。反応の終了時に、生成物は、水/有機溶媒での抽出によって回収され、次いで無水物化され、有機溶媒が蒸発されなければならない。反応の間に形成し得る副産物と共に、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの合成が以下に現れるスキームに示される。
【化1】
式中、
は、RまたはRであり、RおよびRは、-CH、-CHCH、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCHから独立して選択され、Xは、BrまたはClである。
【0013】
非特許文献7によれば、CDMTを合成するための可変量の水の添加は系(I/塩基/HO/MeOH=1/2/2/8の比)の均質性を改良する。しかしながら、著者は、試薬の添加の割合を変えたときの式IVの化合物の形成の動態の発生を分析していない。我々の研究に基づいて、式Iの化合物の添加が非常に急速な場合(発熱)、可変の割合の式IVの化合物(5~25%)が形成され、その結果として、より多くのメタノールが消費されることが見出された。したがって、この手順は多量のメタノールを必要とし、74%未満の収率となる。非特許文献8は、その研究において、CDMTの合成のために排他的に利用される方法を示しており、その著者によれば、CDMTを最大20kgまで使用できる。しかしながら、スケールアップに関する詳細は示されておらず、実際に我々は、50gを超えるCDMTの量で非特許文献8のプロトコルを再現することができず、式II、IIIおよびIVの化合物を含有する複雑な混合物が様々な割合で生成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第8,691,279号
【文献】米国特許出願公開第2012/0009223 A1号
【文献】米国特許第6,458,948 B1号
【文献】欧州特許第1748985 B1号
【文献】米国特許出願公開第2008/0234254 A1号
【文献】米国特許出願公開第2011/118265 A1号
【文献】米国特許第8,119,592号
【文献】国際公開第2010/056778A号
【文献】国際公開第2014/063102号
【文献】米国特許出願公開第2003/0153785 A1号
【文献】欧州特許第174962 B1号/2006
【文献】国際公開第2007/051496A1号
【文献】米国特許出願公開第2013/0123508A1号
【文献】欧州特許出願公開第1992364A1号
【文献】米国特許出願公開第2002/0123628号
【非特許文献】
【0015】
【文献】A.El-Faham、Chem.Rev.、2011、111、6557-6602
【文献】E.Khor、Biomaterials、1997、18、95-105
【文献】X.Duan、Biomaterials、2006、27、4608-4615
【文献】Z.J.Kaminski、J.Am.Chem.Soc.、2005、127、16912-16920
【文献】S.S.A.Raw、Tetrah.Lett.、2009、50、946-948
【文献】M.Kunishimaら、Chem.Eur.J.2012、18、15856-15867
【文献】Dudley[J.Am.Chem.Soc.、1951、73、2986-2990]
【文献】J.Cronin[Synth.Commun.、1996、26、3491-3494]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の第1の目的は、縮合、架橋、グラフト化、および硬化の反応によって、コラーゲンマトリクスを安定化させ、ポリアクリル酸、ポリエチレン、セルロースおよび/または変性セルロース、多糖類、デンプン、およびリグニンなどの天然および合成ポリマーを縮合するプロセスにおいて使用される試薬を生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
特に、本発明は、コラーゲンマトリクスを安定化させ、ポリマーを縮合するプロセスに関与する試薬の1つの有効成分を生成する方法を提供し、それもまた、本発明の主題を形成する。本発明によるこの有効成分は、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンであり、これは、脂肪族、直鎖、分枝、芳香族、環状、または複素環式第三級アミンの存在下で、縮合、架橋、グラフト化、および硬化の反応を活性化させる。
【0018】
本発明の主題を形成するものはまた、工業規模で実行され得る2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを合成する方法である。
【0019】
さらに本発明の主題を形成するものは、前記2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンならびに縮合、架橋、グラフト化、および硬化の反応を活性化するための作用物質としてそれを含む組成物の使用である。
【0020】
皮をなめすためのプロセスにおける2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの使用もまた、本発明の範囲内に含まれ、それらの適用は特に有益である。反応のこの特定の形態において、本発明は、皮の安定化が、連続したまたは事前に混合された2つの試薬での反応によって得られると想定し、そのうちの一方は、1つまたは複数の2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを含み、他方は、1つまたは複数の直鎖、分枝、芳香族、環状、複素環式アルキル第三級アミンを含む。
【0021】
また、本発明の主題を形成するものは、この方法を使用して得られたなめし皮であり、それは、マトリクスに包含されて使用されるなめし剤の分解によって生じる毒性残留物を含有しないことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本明細書に記載されるプロトコルに基づいて、反応の非特異的生成物、それぞれ従来技術によるDudleyの方法の式II、IIIおよびIVの化合物のGLC形成によって経時的にモニターされ、合成される種々の2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンに関して、CDMTの合成についてのデータが図1のグラフにプロットされる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
式IIIの化合物
【化2】
(式中、
およびRは、-CH、-CHCH、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCHから独立して選択され、
Xは、ClまたはBrである)
すなわち、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンが、縮合、架橋、グラフト化、および硬化の反応を活性化するための、ならびにコラーゲンマトリクスを安定化させ、セルロースおよび/または変性セルロース、多糖類、デンプン、リグニンなどの天然および合成ポリマーを縮合するプロセスにおける作用物質として作用でき、それらの適用は、それらの化合物の使用、経済的便益、および経時的安定性の各々に関して非常に有益であることが見出された。
【0024】
したがって、本明細書に記載される本発明の主題を形成する、それらを使用する特定の方法により、従来技術の同じ目的のために使用される方法と比較して全体のコストをかなり減少させ、プロセスの環境的影響を減少させ、溶媒、エネルギーの量ならびにそれらを調製および実行するのに必要な時間を制限することが可能になる。
【0025】
本発明の主題を形成するコラーゲンマトリクスを安定化させ、天然および合成ポリマーを縮合する方法をここで、IPPを使用する調製に対する代替の方法として提示する。
【0026】
特に、本発明の主題を形成するコラーゲンマトリクスを安定化させ、ポリマーを縮合する方法は、本発明の目的のために、「第1の試薬」または「試薬1」および「第2の試薬」または「試薬2」として示される2つの試薬の反応から得られる。
【0027】
本発明によれば、試薬1は、
a)式III(2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジン)の少なくとも1つの化合物、
b)緩衝剤、
c)塩、
d)溶媒
を含む組成物である。
【0028】
本発明によれば、試薬2は、
a)第三級アミン、
b)緩衝剤、
c)溶媒
を含む組成物である。
【0029】
試薬2は、緩衝剤のための添加剤をさらに含んでもよい。
【0030】
したがって、本発明の主題を形成するものはまた、上述の2つの試薬、試薬1および試薬2の組成物であり、それは本発明による方法の実行に必須である。
【0031】
試薬1は、有効成分として、0.1Mから1.0Mの範囲の濃度の1つまたは複数の2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを含む組成物である。試薬1を構成する組成物はまた、緩衝剤、好ましくは、MES、ACES、BES、BIS-Tris、MOPS、TEA、TAPSO、POPSO、TAPS、ギ酸塩(formiate)、リン酸塩、コハク酸塩からなる群から選択されるグッド緩衝剤(Good buffer)を含む。試薬1を構成する組成物は、式X(式中、Xは、Na、K、またはAgであり、Yは、ClO 、BF 、PF 、CO 2-、Cl、HCO である)の塩基または塩を含む。
【0032】
試薬1を構成する組成物は、脂肪族エーテル、ハロゲン化物、アルコール、ケトン、エステル、芳香族または脂肪族炭化水素、アミド、炭酸塩、DMSO、および水からなる群から選択される溶媒を含む。
【0033】
試薬2は、有効成分として、0.1Mから1.0Mの範囲の濃度の1つまたは複数の直鎖、分枝、環状、芳香族、複素環式第三級アミン、および/またはそれらの第四級塩を含む組成物である。試薬2を構成する組成物はまた、緩衝剤、好ましくは、HEPES、MOPS、TRIS、tri-Na-クエン酸塩、Tris-Cl、TAPSからなる群から選択されるグッド緩衝剤を含む。
【0034】
試薬2を構成する組成物は、脂肪族エーテル、ハロゲン化物、アルコール、ケトン、エステル、芳香族または脂肪族炭化水素、アミド、炭酸塩、DMSO、および水からなる群から選択される溶媒を含む。
【0035】
いくつかの特に好ましい実施形態において、試薬2は、緩衝剤のための添加剤をさらに含んでもよく、それは、NaCl、NaHPO、NaOAc、KCl、SDS、グリシン、ホウ酸、EDTA、およびNaNからなる群から選択される。
【0036】
本発明によるコラーゲンマトリクスを安定化させるプロセスは、かなり多くの技術的および工業的目的についての複数の状況において用途が見出される。
【0037】
現在まで、コラーゲンを安定化させるためにアミンの存在下で2-ハロ-4,6-ジアルコキシトリアジンを使用するプロトコルは存在していない。本出願は、本発明の主題を形成する方法が、本明細書以下に提供される実施例に記載されるように、2つの試薬である試薬1および試薬2を、一方を添加した後に他方を添加することによって水中に分散された粉末コラーゲンの架橋を可能にすることを実証する試験を行った。実験の結果から、試薬1および2の存在下で行われた本発明によるコラーゲンを架橋するために利用される手順が、IPPを用いて得られたものより顕著に優れていることが、明確に明らかになる。特に、試薬1および2は、通常、80℃を超えないゲル化温度(Tg)である、従来技術によってコラーゲンを安定化させるために現在使用されている、アルデヒド、グリセロール、合成/天然架橋剤、カルボジイミド、EDC/NHS、および2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの第四級アンモニウム塩より良い性能を示すことが証明された。
【0038】
上記の結果は、コラーゲン組織および高い熱安定性を有する材料を生成するためならびに医学的使用およびバイオテクノロジーでの使用(コラーゲン、なめし皮、組織、角膜など)のための時間内でのそれらの保存のために特に重要である。フェネチルアミンと安息香酸との間でコラーゲンを架橋する反応について得られた結果に基づいて、以下のことが指摘され得る:
i)IPP手順は、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの第四級アンモニウム塩全てが、活性化物質として、合成され、単離され、使用され得ない限り、用途の制限を示す;
ii)試薬1および2は、開示される手順の使用に関する状況の大部分において上記の困難性を克服することができる;
iii)全ての比較可能な場合、1,3,5-トリアジンは、対応するIPPを用いて得られたものと等しいか、またはそれより優れた変換、性能および特性を提供する;
iv)試薬1および2の使用プロトコルは、様々なアミンの存在下で、それ故、用途に応じて策定でき、最も有益な市場価格で利用可能なものを選択できる;
v)溶媒の性質に関連した活性の問題を示さない試薬1および2はさらにまた、水性溶媒中でも使用できる;
vi)本明細書に示されるプロトコルは、グラムからキログラムまでおよびそれを超えて実質的な変更をせずにスケールアップできる;
本発明による方法の有効性はさらに、安息香酸とフェネチルアミンとの間の縮合の反応に関して検証され、一般的な酸と一般的なアミンとの間の縮合の可能な非限定的な例として以下に表されるスキームにおいて示されている。
【化3】
【0039】
本発明による手順の有効性はさらに、架橋、グラフト化、縮合、および硬化の反応の試薬の活性を検証するための標準的な物質として使用される、粉末ウシコラーゲンで行われた縮合反応において検証され、他の形態(液体コラーゲン、加水分解されたコラーゲン、コラーゲン繊維、固体マトリクスなど)においてコラーゲンで再現可能なデータを提供している。ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセロールなどのさらなる架橋剤の使用は必要ではないことが実証されている。得られるTgの値は、アミンおよび様々な添加剤の存在下で2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの作用によるコラーゲンのそれ自体での排他的な架橋によって得られるコラーゲンマトリクスの安定化を指す。
【0040】
方法は、キラル試薬の存在下で行われる場合、生成物におけるエナンチオ選択性を維持することがさらに見出される(実施例3)。この特性は、薬物、香料、高付加価値を有する有効成分などの合成のために基本的に重要である。
【0041】
一実施形態において、本発明は、セルロースおよび/または変性セルロースなどの天然マトリクスを安定化させる方法を提供する。例えば、実験の段落の実施例5に特定される試薬1および2、水中に溶解しない材料に変換され得る生分解性ヒドロゲルを生成するために一般に使用されるカルボキシメチルセルロース(CMC)[C.Demitri、International J.Polymer Science、2013、1-6]を使用することにより、生分解性があり、全体的に革新的な特性が示される。著しく親水性のマトリクスから、非常に疎水性の材料が、エステル基の形成と共に、CMCに存在する酸およびアルコール基の反応に起因する高い架橋度のために得られる。
【0042】
実施例6に記載される本発明の別の実施形態において、試薬1および2の使用は、ポリアミド、ポリエステル、およびポリチオエステルを形成するために天然ポリマーおよび合成ポリマーをグラフト化することによって実施される(実施例6)。この実施形態において、手順は、ポリアミド、ポリエステルなどの生成についての有効な代替を表す。このように、各ポリマーについて具体的に行われる代わりに、ポリマーの調製は、後の誘導体化またはグラフト化のために、特定の塩基ポリマーの合成を可能にし、特定の特性を想定する。その結果として、このように、1つおよび同じマトリクスから開始し、単一の工程において、広範な公知および未知のポリマー生成物を得ることができる。
【0043】
さらに特に好ましい実施形態において、本発明によるコラーゲンを安定化させる方法は、なめし工業ならびに動物の皮膚の変換およびその後のさらなる加工を可能にする動物の皮膚の加工の分野において用途が見出される。この方法は、標準的な予備手順によって得た生皮を、2つのなめし試薬、すなわち、以前に記載されている第1の試薬または試薬1、および第2の試薬または試薬2を用いて単一の工程において処理でき、両方の試薬について、以下の実施例10に示されるように高い熱安定性(Tg≧80℃)を有するコラーゲン誘導体を得るために溶媒は水である。
【0044】
水溶液中の2つの試薬は、本発明によるなめし法を実行するのに必須である。
【0045】
本発明に従って皮をなめす方法は、ウシ、ヒツジ、ヤギおよびウマなどの一般的な屠殺された動物の皮膚からなめし皮を得るのに適している。この方法は全体的に革新的であり、使用するのが非常に簡単であり、さらに、以前の従来技術による代替のシステムでは得ることができなかった、100℃よりさらに高いゲル化温度(Tg)を提供する。
【0046】
本発明による方法は、生皮、すなわち、毛を剥がされ肉を削ぎ落とされた皮膚の処理およびクロム(III)塩を用いてなめされるべき皮膚の調製のためにも使用される標準的な手順によって想定されるものによる、なめすための準備を想定する。
【0047】
次いで生皮は水中に懸濁される。
【0048】
以前に定義される試薬1および2は、反応させる生皮の重量に対して3から22wt%の範囲の濃度で生皮を含有する水浴に加えられる。
【0049】
試薬1および2は、同時に、または試薬1、次いで試薬2の順序で連続して浴に加えられ得る。高いTg値を得るために、2つの試薬の添加が、2つの連続段階で実施されることが好適である。あるいは、2つの試薬は、撹拌下および温度(10℃<T<45℃)を制御したホモジナイザー/リアクタにおいて予混合され、次いでなめしのために使用されてもよい。
【0050】
試薬1および2の存在下で、なめし環境のpHは事前の酸性化または中和を必要としない。なぜなら、処理は、5.5から8.5のpHの値の範囲でその最大の有効性に到達するからである。その結果として、本発明に従ってなめし手順に供される生皮の試料は、従来の酸洗い工程、すなわち、塩および酸、より高い頻度ではギ酸および硫酸の溶液中で生皮を処理することによって実施される、クロムなめしの前に想定される予備工程を受ける必要も、後の塩基性化を受ける必要もない。
【0051】
2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンおよびアミンの存在下で行われるなめしの工程の終わりに、使用済みの浴が、ドラムまたは使用されるリアクタから除去され、リアクタは150~200wt%の水で洗浄され、このように得られた皮膚は後の加工工程に送られる。
【0052】
したがって、本発明の試薬1および2で実施される皮をなめすプロセスは、
a)リアクタにおける生皮の水中での懸濁と、
b)反応させる生皮の重量に対して3から22wt%の範囲の濃度で水中への2つのなめし試薬の添加と、
c)リアクタからの使用済みの浴の除去およびリアクタの水による洗浄と
を含む。
【0053】
さらに、本発明による方法で得られたなめし皮は、中和、再なめし、グリース塗り、染色などの後の加工を受けるのに適している。
【0054】
本明細書に記載される手順は全体的に無金属である。すなわち、それは、例えば、クロム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、チタン塩などのいかなる金属も使用せずに得られ、ホルムアルデヒドまたはフェノールからの汚染を全く受けない。なぜなら、これらの試薬またはそれらの誘導体を全く使用しないからである。さらに、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを使用することによって、なめしプロセス前に皮膚の酸処理は必要とされず、したがってまた、後の塩基性化工程も省略できる。このように、なめしプロセスは単一の工程において得られる。
【0055】
試薬1および2の配合のように、アミンおよび緩衝剤の存在下で、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンから誘導される、本発明による方法において使用されるなめし剤は合成タンニンと等価ではない。なぜなら、それらは、マトリクス内に保たれないが、このように皮をなめす、架橋活性化因子として排他的に作用するからである。本発明によるトリアジン誘導体の使用により、1~4時間において高いTg値を得ることができる。しかしながら、処理は、任意の種類の特定の必要性のために、最終製品の質を決して変化させずに長時間に延長もできる。この技術的特徴は、全時間が、処理される皮の種類に応じて最大20~24時間で変化するクロムなめしの古典的プロセスより利点がある。
【0056】
試薬2として2つ以上のアミンの混合物を含有する配合物を使用する本発明による方法により、異なる特性を有するなめし皮を得るために調節され得る、制御された作用を有する架橋剤を得ることが可能になる。
【0057】
本発明の主題を形成する試薬1および2を使用する方法の有効性は、粉末ウシコラーゲンの試料に対して試薬を用いて行われる、特定の架橋またはなめし試験によって実証される。この基質を用いた実験は、2つの試薬および固体コラーゲン、すなわち皮膚での対応する方法の有効性についての再現可能なデータを提供する。全ての場合、生皮試料を用いて得たTg値は、粉末コラーゲンを用いて得られたものと同様であり、いずれの場合も、71℃から105℃の間に含まれる。
【0058】
上記のものに従って配合される試薬1および2の有効性は、クロム(III)塩でなめされた皮を調製するために使用される標準的な手順に従って、事前に軟化され、毛を剥がされ、脱石灰化され、浸軟され、肉を削ぎ落とされたウシの皮膚(生皮)の試料においても実証される。
【0059】
本発明に従って開示される方法は、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンが、使用されるマトリクスおよび/または試薬中に存在したままにならず、反応の終わりの洗浄サイクルの間に除去されるので、最終製品における健康に有害な物質の存在に起因する問題がない。その結果として、本発明の主題を形成するものはまた、本発明の方法によって得られ得るなめし皮であり、なめしプロセスの間、マトリクスにおいて生成され、蓄積される汚染物質および有害な物質を含まないことを特徴とする。
【0060】
本発明による方法の有効性は、本明細書に記述の実験の段落に示される実施例(実施例13~23)において広範に実証される。実験データは、本発明による試薬1および試薬2の異なる実施形態を使用して、最大105℃のTg値が得られることを示し、これらの2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジン誘導体で処理された皮膚の全ての試料を特徴付ける完全な白色に起因して優れた可染性を有する。
【0061】
それ故、本明細書の記述から、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンならびに架橋、グラフト化、硬化および縮合の反応のため、特にコラーゲン安定化ならびに例えば、ポリアクリル酸、ポリエチレン、セルロースおよび/または変性セルロース、多糖類、デンプンおよびリグニンなどの天然および合成ポリマーの縮合のプロセスにおける活性剤としてそれらを含む組成物の使用もまた、本発明の範囲内であることが明らかとなる。
【0062】
本発明の本質的な部分を形成するものはまた、以前に記載されている本発明による、セルロース、および/または変性セルロース、およびコラーゲンマトリクスなどの天然マトリクスの安定化のプロセスの架橋、グラフト化、硬化および縮合の反応における活性剤として作用する2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを生成する方法である。
【0063】
本発明のさらなる主題を形成するものは、キログラムまたはトンのオーダーの量において工業規模で実行される、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを生成する方法、およびその2つの生成物の回収またはワークアップを最適化する方法である。現在まで、これらの化合物を生成するためのバッチまたは半バッチプロセスは記載されていない。
【0064】
生成プロセスのスケールアップは、数グラム(実験室規模)からキログラムまたはトン(工業規模)までの生成の移行に関連する問題を評価し、解決するための基本的な実施である。
【0065】
2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの生成のプロセスにおいて、試薬の添加の割合および反応温度を制御することによって、方法をかなり最適化することが可能になる。これにより、無水溶媒の使用、不活性雰囲気中で操作する必要性などを回避することが可能になる。さらに、これらのパラメーターを制御することによって、高純度を有する生成物が、有機溶媒および/または再結晶などの精製の他の技術を使用せずに単に水による洗浄によって得られる。したがって、工業規模で、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを合成するこのプロセスは、現在の公知のプロセスと比較してかなり低いコストで得られ、キログラム/日またはトン/日での生成物の合成および回収のプロセスの操作パラメーターを最適化する。
【0066】
【化4】
本発明による式IIIの2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを合成する方法は、以下の工程:
- 塩基の存在下で単相での、式Iのシアン化水素ハロゲン化物と直鎖または分枝脂肪族アルコールとの間の置換反応、
- 水の添加により反応をクエンチし、撹拌すること、
- 濾過、
- 乾燥
を含む。
【0067】
したがって、この方法は、使用するアルコールに応じて5~48時間、45℃から130℃の範囲の温度にて塩基の存在下で式Iのシアヌル酸ハロゲン化物(Cl、F、Br)と直鎖または分枝脂肪族アルコールとの間の置換反応を想定する。
【0068】
加える水の量は、i)反応混合物の均質性、ii)熱の制御に影響を与えるので重要である。本発明者らの結果によれば、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの合成は、好ましくは、式Iの化合物1モル当たり0~7molの水の存在下で実施され、水は、式IIIの化合物において高い選択性および純度を与える反応混合物の均質性に有益な効果をもたらす。水の存在は使用するアルコールの量を減少させることができるので、式Iの化合物1モル当たり、1~5Eqの適度な量のアルコールで十分である。
【0069】
反応は、さらに精製を必要としない商業的に利用可能な任意の純度であり(0.03~0.5%の範囲の可変の水の量)、所望のトリアジンの選択性または収率に決して影響を与えない、直鎖または分枝脂肪族アルコール;例えば、R、R:CH、CHCH、CH(CH、(CHCH、(CHCH(ここで、Rは、Rと同じであってもよいか、または異なっていてもよい)のいずれかの存在下で行われ得る。塩基は任意の炭酸塩であってもよく、NaHCOが好ましくは使用される。通常、2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの合成に関して、試薬(式Iの化合物、塩基、水および溶媒)間の比は非常に正確な手段で固定される。本発明によれば、1/1/0/4から1/5/7/12の試薬I/塩基/水/溶媒の比を使用することが可能であり、全ての場合、90%より高い収率および純度を有する式IIIの化合物を得、工業レベルでのその用途についてさらなる汎用性および許容誤差の減少を保証する。
【0070】
試薬の添加は、望ましくない生成物および中間体、すなわち、通常、従来技術[Dudley、1951]による方法で形成される式IIおよびIVの化合物の形成を防ぐように温度および撹拌を十分に制御して特定の比で実施されることが基本的に重要である。これは、オージェディスペンサー(auger dispenser)および温度を制御するためのインジケーターを使用して得られる。式Iの化合物の添加が完了すると、反応温度は徐々に室温に戻る。これは、添加後の不十分な加熱が多くの割合の非特異的(aspecific)生成物の形成を伴い反応を停止する限り、回避されなければならない。
【0071】
通常、反応は、使用するアルコールに応じて45℃から130℃の温度で行われる。本明細書に記載されるプロトコルに基づいて、反応の非特異的生成物、それぞれ従来技術によるDudleyの方法の式II、IIIおよびIVの化合物のGLC形成によって経時的にモニターされ、合成される種々の2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンに関して、例としてCDMTの合成についてのデータは図1のグラフにプロットされる。試薬は、反応が特定の順序で起こるリアクタに加えられる:最初に1~5Eqの塩基が、1~5EqのROH(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)および0~7Eqの水と一緒にリアクタ内に導入される。激しい撹拌下で、1Eqの式Iの化合物が0.5~3時間で加えられ、式Iの化合物の添加が完了すると、混合物は、5~48時間、撹拌下で45~130℃で加熱される。水の量は反応混合物の粘度を減少させるが、その系は不均質であるので、低~中の範囲の粘度を有する懸濁液を混合できる適切な撹拌系を利用することが必要である。5~48時間後、1~5体積の水を加えることによって反応混合物を停止させ、続いて0~480分間撹拌する。懸濁液を濾過装置またはNutscheフィルタに移し、溶液から分離し、乾燥させる。本発明による方法は、90%より高い収率および92~97%の純度(3~8%の水)で2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンの回収を可能にする。反応後、リアクタを洗浄し、さらなる試薬のロットを準備する。
【0072】
キログラムを超えるオーダーの量の生成物を得ることを目的とする本発明の特に好ましい実施形態において、反応は、適切な容積の楕円形の底を有し、試薬を添加するためのシステムを備えるバッチリアクタで行われる。塩基の存在下での式Iの化合物とアルコールとの反応は、最初はCOの発生を伴う発熱反応である。発生した熱により、添加の間、反応を進行することが可能になる。温度は、リアクタ内で10℃<T<45℃の関係が満たされるように効果的に制御されなければならない。これは、外部/内部冷却システムを備えるリアクタを使用して温度の制御により実施される。リアクタの寸法を決定するために、反応を停止し、生成物を精製するために使用される水の量もまた、考慮に入れなければならない。この理由のために、全内部体積は、試薬の全体積の少なくとも1.5~2.0倍でなければならない。例えば、10kgの生成のために、リアクタの体積は0.2から1mの間に含まれなければならない。
【0073】
選択されるリアクタは、鋼で補強され、裏打ちされた標準圧力容器である。特に腐食に対して高い耐性での裏打ちが、必要な場合、使用されてもよい。使用されるリアクタは、反応を加熱または冷却し、溶媒蒸気を凝縮し、凝縮した蒸気を再利用することができるための適切な熱交換特性を有する外部および/または内部コイルシステムを有する。リアクタはさらに、撹拌ブレード、他の機器と接続する入口および出口、温度、圧力、pHおよび粘度を検出するためのセンサ、経時的な反応物(GLC)をモニターするためのバイパスループを有さなければならない。
【0074】
生成物は、濾過、洗浄および乾燥によって回収される。典型的に、生成物は、懸濁固体として反応混合物中に存在する。冷却および精製またはワークアップ後、反応混合物は、生成物を乾燥し、回収するための濾過装置またはNutscheフィルタに移される。フィルタの体積はリアクタからの全ての充填物を受容するように構成され得る。溶媒を含有する反応の主な流れは、精製溶媒(水)から別々に回収され得、バッチリアクタにおいて再利用され得る(さらなる新たなアルコールが必要な化学量論を得るために加えられる)。
【0075】
コラーゲンを架橋でき、非常に安定なマトリクス、すなわち温度(Tg)に対して非常に安定であり、それ故、経時的な分解に対して非常に耐性があるマトリクスを提供できる、低いまたはゼロの毒性を有する試薬の利用可能性は、薬剤、生物医学分野などにおける広範な用途についての重要な成果となる。
【実施例
【0076】
実験部
本発明は、特にいくつかの実施例を参照して非限定的な例示として以下に示される。
【0077】
非限定的な例示目的のために本明細書以下に示される実施例において、本発明による試薬1および2は、符号AaBbCcDdEeおよびFfGgHhEe(ここで、a、b、c、d、...=0、1、2、3、4、...nである)を用いて特定され、表される。
【0078】
特に、試薬1に関して:
Aは、2,4-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジン、例えば、A:2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン;A:2-クロロ-4,6-ジエトキシ-1,3,5-トリアジン;A:2-クロロ-4メチル-6-エチル-1,3,5-トリアジンなどを特定する。
【0079】
Bは、緩衝剤、好ましくはグッド緩衝剤;例えば、B:MES;B:ACES;B:BES、B:POPSO;B:TRIS;B:HEPPSO;B:TAPS;B:Tris-NaCitrate(Tris-クエン酸ナトリウム)を特定する。
【0080】
Cは、無機塩のカチオンX;例えば、C:Na;C:K;C:Agを特定する。
【0081】
Dは、無機塩のアニオンY;例えば、D:ClO ;D:BF ;D:Clなどを特定する。
【0082】
Eは、溶媒;例えば、E:脂肪族エーテル;E:アルコール;E:水;E:アセトン;E:THFなどを特定する。
【0083】
試薬2に関して:
Fは、脂肪族、直鎖、分枝、環状、芳香族、複素環式、アミンおよび/またはその第四級塩、例えば、F:TMA(トリメチルアミン);F:TEA(トリエチルアミン)、F:DEMA(ジエチルメチルアミン);F:NMM(N-メチルモルホリン);F:NEM(N-エチルモルホリン);F:MPD(メチルピロリジン);F:MP(メチルピペリジン)などを特定する。
【0084】
Gは、緩衝剤、好ましくはグッド緩衝剤、例えば、G:BES;G:MOPS;G:TRIS;G:POPSO、G:TAPS;G:Tris-NaCitrateなどを特定する。
【0085】
Hは、緩衝剤のための添加剤;例えば、H:NaCl;H:NaHPO;H:NaOAc;H:KCl;H:SDSなどを特定する。
【0086】
Eは、溶媒;例えば、E:脂肪族エーテル;E:アルコール;E:水;E:アセトン;E:THFなどを特定する。
【0087】
本明細書に示される全ての分析は、HP5キャピラリーカラム(5%メチルフェニルシリコーン;分析条件:4分間50℃、次いで20℃/分で最大250℃)を備えた、水素炎イオン化型検出器を使用してガスクロマトグラフAgilent Technologies 6850を用いて実施した。Hおよび13C NMRスペクトルは、陽子スペクトルについて300.11MHzおよび炭素スペクトルについて75.03MHzで作動する分光計Bruker Avance 300を用いて記録した。FT-IRスペクトル(KBrタブレット)は、分光光度計Perkin Elmer「Spectrum One」を用いて得た。DSC分析は、DSC Netzsch STA409 PC、melting point Buchi 535を用いて決定した。エナンチオマー過剰率は、254nm UV検出器を備えたAgilent 1100 HPLCと共にCHIRALCEL OD-H(250mm×4.6mm)を使用してキラルHPLCによって測定した。
【0088】
実施例1.試薬1(A)および試薬2(F)を使用する手順による安息香酸とフェネチルアミンとの縮合(表1の試験2)
磁性撹拌器を備えたフラスコ内で、15mLのメタノールに293.1mg(2.4mmol)の安息香酸を溶解した。その溶液に、300μL(2.4mmol)2のフェネチルアミンおよび2.4mLの試薬1を加えた。最後に、2.4mLの試薬2を加えた。2時間後、変換をモニターするために試料を採取し、それが60%であることを見出し、次いでロータリーエバポレーターを使用して溶媒を蒸発させた。固体残渣をジエチルエーテル(30mL)に溶解し、続いて飽和NaCO溶液、水、1NのHCl溶液、および飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSOで無水物化し、濾過した。溶液を乾燥させて、白色固体(450.6mg、2mmol、収率83%)の形態で生成物を得た。
H NMR(CDCl,300MHz,ppm)δ:7,72-7.31(m,2H),7.52-7.23(m,8H),6.26(brs,1H),3.73(m,2H),2.95(t,2H);13C NMR(75MHz,CDCl,ppm)δ:.167.43,138.86,134.60,131.33,128.75,128.65,128.43,126.76,126.52,41.10,35.67。
【0089】
試薬1(A)の配合:1.0Mの2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン、および10wt%のMESの溶液、0.5wt%のKCl、および水。
試薬2(F)の配合:1.0MのMPDの溶液、0.5~0.8wt%のMOPS、0.5~1.5wt%のNaHPO、および水。
【0090】
実施例1 - 比較試験。IPP法でDMT-MPDを用いた安息香酸とフェネチルアミンとの縮合反応(表1の試験1)
DMT-MPDの合成
機械的撹拌器を備えたフラスコ内に、10mLのTHFに溶解した500mg(2.85mmol)のCDMTを導入し、それに300μL(2.85mmol)のMPDを滴下することによって加えた。10分後、白色沈殿物を得、それを濾過によって回収した。種々の溶媒中でのNMR分析により、生成物が溶液中で安定せず、それ故、この試薬でカップリングを実施できなかったことが明らかになった。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例2 - 比較試験。IPPによる安息香酸とフェネチルアミンとの縮合(表1の試験7)
磁性撹拌器を備えたフラスコ内に、293.1mg(2.4mmol)の安息香酸を15mLのメタノールに溶解した。その溶液に、300μL(2.4mmol)のフェネチルアミンおよびIPPを用いて得た692mg(2.4mmol)のDMT-MPを加えた。2時間後、変換をモニターするために試料を採取し、それが81%であることを見出し、次いでロータリーエバポレーターを使用して溶媒を蒸発させた。固体残渣をジエチルエーテル(30mL)に溶解し、続いて飽和NaCO溶液、水、1NのHCl溶液、および飽和NaCl溶液で洗浄し、次いでMgSOで無水物化し、濾過した。溶液を乾燥させて白色固体として生成物(405.5mg、1.8mmol、収率75%)を得た。
H NMR(CDCl,300MHz,ppm)δ:7.72-7.31(m,2H),7.52-7.23(m,8H),6.26(brs,1H),3.73(m,2H),2.95(t,2H);13C NMR(75MHz,CDCl,ppm)δ:167.43,138.86,134.60,131.33,128.75,128.65,128.43,126.76,126.52,41.10,35.67。
【0093】
実施例3.試薬1(A)および試薬2(F)を使用する方法によるキラルアミドの生成
磁性撹拌器を備えたフラスコ内に、200mg(0.51mmol)の2-メチル-3-p-アニシルプロパン酸を15mLのメタノールに溶解した。その溶液に、55μL(0.6mmol)のアニリン、0.5mLの試薬1、および最後に0.5mLの試薬2を加えた。24時間後、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を蒸発させた。固体残渣をエチルエーテル(30mL)に溶解し、続いて飽和NaCO溶液、水、1NのHCl溶液、および飽和NaCl溶液で洗浄し、次いでMgSOで無水物化し、濾過した。次いで溶液を乾燥させて、75%の収率で黄色の液体の形態の生成物(101mg、0.375mmol)を得た。
H NMR(CDCl,300MHz,ppm)δ:7.33-7.26(m,2H),7.24-7.14(m,2H),7.07-7.01(m,2H),7.01-6.95(m,1H),6.75(d,2H),3.69(s,3H),2.95-2.80(m,1H),2.70-2.56(m,1H),2.55-2.35(m,1H),1.19(d,3H);13C NMR(CDCl,75MHz,ppm)δ:172.95,157.17,136.68,130.66,128.89,127.85,123.18,118.96,112.91,54.23,44.02,38.71,16.67;HPLC:および96%、CHIRACEL OD-Hカラム、n-ヘキサン/イソプロパノール92/8、0.8mL/min、t=17.15min(下側)およびt=21.2min(上側)。
【0094】
試薬1(A)の配合:1.0Mの2-クロロ-4,6-ジエトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のBESの溶液、0.5wt%のNaClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.5MのNMMの溶液、0.1~0.8wt%のTris、0.5~2.5wt%のNaCl、および水。
【0095】
実施例4.試薬1(A)および試薬2(F)を使用する方法を用いたポリアクリル酸のアニリンによる官能化
磁性撹拌器を備えたフラスコ内に、60mg(1.3×10-4mmol)のPAA(MW=450000)および190μL(2.1mmol)のアニリンを35mLのメタノールに溶解した。次いでその溶液に2.1mLの試薬1および2.1mLの試薬2を加えた。その溶液を24時間撹拌下に置き、次いで固体を濾過し、洗浄し、乾燥させ、H NMRによって分析した。
【0096】
試薬1(A)の配合:0.7Mの2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のPOPSOの溶液、0.5~1.0wt%のKClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.7MのNMMの溶液、0.1~5wt%のTris NaCitrate、0.7~2.3wt%のNaHPO、および水。
【0097】
実施例5.試薬1(A)および試薬2(F)を使用する方法によるCMCの架橋
磁性撹拌器を備えたフラスコ内に、279mgのCMC(0.7のカルボキシル化度を有するカルボキシメチルセルロース)を25mLの水に溶解した。次いでその溶液に3mLの試薬1および3mLの試薬2を加えた。その溶液を撹拌下に24時間置き、次いで高真空ポンプによって水相を蒸発させた。得られた固体を水で洗浄し、FT-IRによって特徴付けた。FT-IR:3200、1750-1735、1602、1020cm-1
【0098】
試薬1(A)の配合:0.5Mの2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のPOPSOの溶液、0.5~1.0wt%のKClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.5MのNMM、および0.1~5wt%のTris NaCitrateの溶液、0.7~2.3wt%のNaHPO、および水。
【0099】
実施例6.試薬1(A)および試薬2(F)を使用する方法を用いたポリアクリル酸のメタノールによる官能化
磁性撹拌器を備えたフラスコ内に、35%にて1.65g(3.8×10-2mmol)のポリアクリル酸のナトリウム塩の水溶液(PAANa、MW=15000)および2mLのメタノールを60mLの水に溶解した。次いでその溶液に5mLの試薬1および5mLの試薬2を加えた。溶液を24時間撹拌下に置き、エチルエーテルで洗浄した。高真空ポンプを使用して水相を濃縮し、得られた固体をH NMRによって分析した。
H NMR(DO,300MHz,ppm)δ:2.94(s,0.48H),2.47(brs,1H),1.66(m,2H)。
【0100】
試薬1(A)の配合:0.2Mの2-クロロ-4,6-ジエトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のPOPSOの溶液、0.5~1.0wt%のKClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.2MのHMMの溶液、0.1~5wt%のTris NaCitrate、0.7~2.3wt%のNaHPO、および水。
【0101】
実施例7.2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを合成するための一般手順
以前に記載したようにリアクタ内に、1~5Eqの塩基、4~12EqのROH(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、および0~7Eqの水をオージェディスペンサーおよび/または液体用のディスペンサーによって導入した。撹拌下で1Eqのシアヌル酸ハロゲン化物をオージェディスペンサー(添加時間、0.5~3時間)によって加え、次いで混合物を45~130℃にて5~48時間加熱した。反応の終わりに、1~5体積の水を加え、続いて0~480分間撹拌することによってワークアップを実施した。懸濁液を濾過し、生成物を回収し、真空中で乾燥させた。2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを85~90%の収率および92~97%の純度(3~8%の水)で回収した。この方法は最大150kgまでの2-ハロ-4,6-ジアルコキシ-1,3,5-トリアジンを使用した。より大きな生成体積については、複数のリアクタを並行して並べて配置することを推奨する。
【0102】
実施例8.2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)の合成
上記(実施例7)の一般手順を使用してCDMTを合成した:以前に記載したようにリアクタ内に、36kgのNaHCO、9.0Lのメタノール、および7.5Lの水をオージェディスペンサーおよび/または液体用のディスペンサーによって導入した。次いで、約2~3時間で10kgの塩化シアヌルをオージェディスペンサーによって撹拌下で導入し、次いで混合物を100℃にて36時間加熱した。反応の終わりに、1~5体積の水(9~45L)を加え、続いて480分間撹拌することによってワークアップを実施した。懸濁液を濾過し、生成物を回収し、真空中で乾燥させた。8.5kg(48.3mol)の量を89.5%の収率および96.7%の純度(3.3%の水)で回収した。この方法は最大150kgまでのCDMTを使用した。より大きな生成体積については、複数のリアクタを並行して並べて配置することを推奨する。
H NMR(CDCl,300MHz,ppm)δ:4.07;13C NMR(75MHz,CDCl,ppm)δ:172.72,172.54,56.04.FT-IR:1540,928,806cm-1
m.p.:75.2℃。
【0103】
実施例9.2-クロロ-4,6-ジエトキシ-1,3,5-トリアジン(CDET)の合成
上記(実施例7)の一般手順を使用してCDETを合成した:以前に記載したようにリアクタ内に、32.4kgのKHCO、12.6Lのエタノール、および9.7Lの水をオージェディスペンサーおよび/または液体用のディスペンサーによって導入した。次いで約2~3時間で10kgの塩化シアヌルをオージェディスペンサーによって撹拌下で導入し、次いで混合物を120℃にて48時間加熱した。反応の終わりに、1~5体積の水(9~45L)を加え、続いて480分間撹拌することによってワークアップを実施した。懸濁液を濾過し、生成物を回収し、真空中で乾燥させた。10.0kg(49.4mol)の量を91.5%の収率および96.8%の純度(3.2%の水)で回収した。この方法は最大150kgまでのCDETを使用した。より大きな生成体積については、複数のリアクタを並行して並べて設定することを推奨する。
H NMR(CDCl,300MHz,ppm)δ:4.47(q,4H),1.40(t,6H);13C NMR(75MHz,CDCl,ppm)δ:.172.7,172.1,65.5,14.2。
IR:1554,1325,809cm-1
m.p.:145℃。
【0104】
【表2】
【0105】
実施例10.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた粉末コラーゲンのなめし、表2の試験2
50mlのビーカー内に、500mgのコラーゲン、25mLの蒸留水、および0.6~12mLの試薬1、続いて0.6~12mLの試薬2を加えた。この系を室温にて撹拌下に置き、pHを60分毎にモニターした。4時間後、懸濁液をブフナー漏斗で濾過し、50mlの蒸留水で洗浄した。次いで処理したコラーゲンをDSCによって分析し、使用した試薬の濃度の変化に応じて85~101℃のTg値を得た。
【0106】
試薬1(A)の配合:0.5Mの2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン、および10wt%のMESの溶液、0.5wt%のKCl、および水。
試薬2(F)の配合:0.5MのMPDの溶液、0.5~0.8%のMOPS、0.5~1.5%のNaHPO、および水。
【0107】
実施例11.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた皮のなめし
通常の工業的手順に従って、軟化し、石灰化/脱石灰化し、浸軟し、肉を削ぎ落とした約100gの皮(生皮)の一片を以下に記載したように処理した。約100gの生皮の一片を室温にて100mLの水の存在下でドラム内に置いた。その系を回転させ、続いて試薬1および試薬2(3.0%~22%の範囲の濃度)を加えた。4時間後、バッチから除去し、その系を十分な水で2回洗浄した。使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=83℃~103℃。
【0108】
実施例12.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた粉末コラーゲンのなめし、表2の試験4
実施例10に記載したものと同様に試験を行った。
試薬1(A)の配合:1.0Mの2-クロロ-4,6-ジエトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のBESの溶液、0.5wt%のNaClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.5MのNMMの溶液、0.1~0.8wt%のTris、0.5~1.5wt%のNaCl、および水。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=73℃~85℃。
【0109】
実施例13.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた皮のなめし
試験を実施例11に記載したものと同様に行い、試薬1および試薬2は実施例12に記載したものと同様に配合した。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=71℃~87℃。
【0110】
実施例14.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた粉末コラーゲンのなめし、表2の試験6
試験を実施例10に記載されるものと同様に行った。
試薬1(A)の配合:0.7Mの2-クロロ-4,6-ジエトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のACESの溶液、0.5~1.0wt%のKClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.7MのNEMの溶液、0.1~0.8wt%のPOPSO、0.5~2.5wt%のNaOAc、および水。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=93℃~103℃。
【0111】
実施例15.試薬1(A)および試薬2(F)の皮のなめし
試験を実施例11に記載されるものと同様に行い、試薬1および試薬2を実施例14に記載されるものと同様に配合した。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=90℃~105℃。
【0112】
実施例16.試薬1(A)および試薬2(F)を用いる粉末コラーゲンのなめし、表2の試験8
試験を実施例10に記載されるものと同様に行った。
試薬1(A)の配合:0.8Mの2-クロロ-4,6-ジエトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のACESの溶液、0.5~1.0wt%のKClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.7MのMPDの溶液、0.3MのTMA、0.1~0.8wt%のPOPSO、0.5~2.5wt%のNaCl、および水。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=83℃~89℃。
【0113】
実施例17.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた皮のなめし
試験を実施例11に記載されるものと同様に行い、試薬1および試薬2は実施例16に記載されるものと同様に配合した。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=81℃~90℃。
【0114】
実施例18.IPPでDMT-MPを用いた粉末コラーゲンの架橋(表2の試験9)
I)DMT-MPの合成
磁性撹拌器を備えたフラスコ内に、10mLのTHFに溶解した500mg(2.85mmol)のCDMTを導入し、それに350μL(2.85mmol)のMPを滴下により加えた。2時間後、白色の沈殿物を得、それを濾過によって回収した(60%の収率)。
H NMR(DO,300MHz,ppm)δ:4.42(d,2H),4.06(s,6H),3.54(m,2H),3.32(s,3H),2.0-1.4(m,6H);13C NMR(D2O,75MHz,ppm)δ:174.38,171.24,62.44,57.44,21.54,20.30;m.p.71.0℃。
【0115】
ii)磁性撹拌器を備えたビーカー内に、500mgの粉末コラーゲンを50mLの水に懸濁した。次いで混合物に82.5mg(0.3mmol)のDMT-MPを加えた。混合物を室温にて4時間撹拌下に置き、続いて固体を濾過し、水で洗浄し、DSCによって分析した。(Tg=87℃)
【0116】
実施例19.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた粉末コラーゲンのなめし、表2の試験10
試験を実施例10に示したものと同様に行った。
試薬1(A)の配合:0.6Mの2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン、および0~6wt%のBESの溶液、0.5~1.0wt%のKClO、および水。
試薬2(F)の配合:0.3MのMPの溶液、0.1~0.8%のTris NaCitrate、H:SDS、および水。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=83℃~89℃。
【0117】
実施例20.試薬1(A)および試薬2(F)を用いた皮のなめし
試験を実施例11に示したものと同様に行い、試薬1および試薬2は実施例19に示したものと同様に配合した。
使用した試薬1および2の濃度の変化に応じてTg=82℃~90℃。
【0118】
最後に、たとえ本発明が、その好ましい実施形態による非限定的な例示として単に記載されているとしても、添付の特許請求の範囲により規定される対応する保護範囲から逸脱せずに変更および/または修飾が当業者によりなされてもよいことは強調されるべきである。
図1