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6997839リウマチ性関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】リウマチ性関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/39 20060101AFI20220203BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K38/39
A61K47/36
A61K47/32
A61K9/51
A61K47/12
A61P29/00 101
A61P29/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020137288
(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2021066724
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】201911014996.0
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520358438
【氏名又は名称】朱飛龍
(74)【代理人】
【識別番号】100115303
【氏名又は名称】岩永 和久
(72)【発明者】
【氏名】韓美▲き▼
【審査官】吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0022052(US,A1)
【文献】特表2015-520197(JP,A)
【文献】特表2013-526620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0182472(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103690620(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用医薬組成物であって、
リウマチ様関節炎の予防および治療に用いるための外用医薬組成物であり、
前記医薬組成物は、II型コラーゲンと脂肪源を中核とし、酸に敏感なナノ材料を主担体とし、その表面に標的分子が修飾され、
前記標的分子は、グリコサミノグリカンであり、
前記ナノ材料は、PDMAEMAを含み、
前記脂肪源は、少なくとも一種のω-3長鎖多価不飽和脂肪酸と、少なくとも一種のω-6長鎖多価不飽和脂肪酸とを含み、
前記II型コラーゲンは、鶏胸軟骨から抽出され、
前記II型コラーゲンの組成物中の濃度は、5~25wt%であり、
前記グリコサミノグリカンはヒアルロン酸であり、
前記ヒアルロン酸の組成物中の濃度は、1~5wt%である、
ことを特徴とする外用医薬組成物。
【請求項2】
前記ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α-リノレン酸、オクタデカテトラエン酸のうちの一種または複数種を含み、
前記ω-6長鎖多価不飽和脂肪酸は、γ-リノレン酸を含み、
前記脂肪源の組成物中の濃度は、1~15wt%であり、
前記ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸と前記ω-6長鎖多価不飽和脂肪酸との重量比は、3~5:1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物の投与方法は、局所投与であり、
前記組成物の投与量は、1~15g/dである、
ことを特徴とする請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
前記II型コラーゲンと前記脂肪源とを含む有機相と、PDMAEMAを含む油相と、を提供し、乳化剤が存在する条件下で、前記有機相と前記油相とを超音波処理して混合させ、酸濃度が2wt%未満の環境下で前記ヒアルロン酸の表面修飾を完了し、前記酸濃度の算出に前記ヒアルロン酸を含まない、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の外用医薬組成物の製造方法。
【請求項5】
前記乳化剤はポリビニルアルコールであり、
超音波処理条件は、パワーが300~500W、時間が3~10min、温度が0~5℃である、
ことを特徴とする請求項4に記載の外用医薬組成物の製造方法。
【請求項6】
前記表面修飾の操作条件は、回転数が300~500rpm、温度が25~45℃、時間が2~8hである、
ことを特徴とする請求項4に記載の外用医薬組成物の製造方法。
【請求項7】
前記酸濃度が2wt%未満の環境は、5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸により提供され、
前記5-アミノサリチル酸および前記2-アミノベンゼンスルホン酸の重量比は、3-4:2.5である、
ことを特徴とする請求項4に記載の外用医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康促進の技術分野に属し、具体的には、リウマチ性関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リウマチ性関節炎(Rheum atoid Arthritis,RA)は病因不明の慢性全身性炎症性疾患である。現在のリウマチ性関節症は自己免疫疾患であると言われており、この疾患は小関節、例えば手、腕、足等にふさわしく、対称性に分布しており、繰り返し発作する特徴がある。早期の患者は、関節の腫脹、痛みおよび機能の障害などの臨床特徴が現れ、後期の患者は、異なる程度の関節の凝りや奇形を示し、骨関節炎の関節軟骨表面と同様の変性をもたらし、関節の骨や軟骨の重篤な破壊を招き、骨の裂け目や骨の萎縮または壊死を伴う可能性があり、残留性が極めて高い。リウマチ性関節症の症状又は病因の非限定的な実例は滑膜炎症、骨質のびらん、関節奇形、痛み、骨粗鬆症、手首管症候群、動脈硬化閉塞、心臓を取り囲むバルーンの炎症、肺組織の炎症及び瘢痕形成、疲労、発熱、体重軽減、腕皮膚下組織の腫物、関節の凝り、及び関節の痛み、発熱及び腫脹を含む。
【0003】
このような疾患の具体的な発症メカニズムは不明であり、社会的な差異、地理的な環境、内分泌の変化、職業の状況、栄養、代謝異常、細菌やウイルス感染等の多岐に亘る可能性がある。早期RA患者に関連研究を行って過剰活性化、活発に移行するT細胞を発見し、T細胞はいくつかのサイトカインを協同してRA疾患の持続的な発展を促進する。RA全体の発症過程では、多くの炎症性サイトカイン、例えばIL-1、IL-6、TNF-αは、単核細胞、マクロファージ及び滑膜線維芽細胞分泌により産生され、これらのサイトカインは更に骨芽細胞を活性化し、軟骨を破壊して生体が炎症反応を継続し、関節軟骨が徐々に破壊される。
【0004】
リウマチ性関節症は、今まで特殊効果療法がなく、治療計画は炎症や後遺症に対するレベルにとどまっており、近年登場している総合治療法は一定の進展があり、このような方法では多くの患者の病状を緩和させることができる。現行の治療の目的は、症状を緩和し、関節及びその他の組織の炎症反応を制御し、関節痛及び関節復帰機能を軽減するために損傷関節を修復し、最終的に関節機能を維持して奇形を防止することである。非ステロイド系抗炎症薬は治療に最も一般的な薬剤であり、一般的に初送や軽症症例の患者に使用されており、その作用機序は主にシクロオキシダーゼを抑制し、プロスタグランジン生成を抑制させて作用させて消炎鎮痛の効果を達成しているが、リウマチ性関節炎病変の自然な進行過程を阻止することはできない。第二類の一般的な薬物は病状を改善する抗リウマチ薬剤である。また、グルココルチノイドと生物製剤とは、いずれも異なる適応症がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第103690620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、標的性を有し、構造安定性に優れ、耐性に優れ、関節軟骨変性および腫脹を抑制して好中球のアポトーシスを促進し、炎症促進因子IL-1βおよびTNF-αの放出を抑制し、炎症性因子mRNA発現量を低減し、炎症反応および組織損傷を軽減し、体内免疫グロブリン活性および生体免疫機能を増強し、リウマチ様関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、生成物の封入率及び薬物負荷量を向上させ、そのスリップ性及び流動性能を向上させることができ、前炎症性サイトカインIL-20の活性を抑制し、IL-6、IL-8及びマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の分泌及び放出を低減又は緩和し、病変関節組織の炎症性症状及び軟骨破壊症状を軽減又は緩和するリウマチ性関節症の予防及び治療に用いられる外用医薬組成物の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の目的はさらに関節炎疾患の予防及び治療に用いられる薬物を製造する時に外用医薬組成物が果たす用途を提供することであり、前記関節炎疾患はリウマチ性関節炎、リウマチ様関節炎の少なくとも一つである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を実現するために、本発明の外用医薬組成物は、リウマチ様関節炎等の炎症性疾患の予防および治療に用いることができ、前記医薬組成物は、II型コラーゲンと脂肪源を中核とし、酸に敏感なナノ材料を主担体とし、その表面に標的分子が修飾され、前記標的分子がグリコサミノグリカンであり、前記ナノ材料が、PDMAEMAを含み、前記脂肪源が、少なくとも一種のω-3長鎖多価不飽和脂肪酸と、少なくとも一種のω-6長鎖多価不飽和脂肪酸とを含む。前記外用医薬組成物は、安定的に長寿効であり、指向性のある標的能力を有し、高い薬物担持量及び封入率、薬物放出持続時間が長く、耐性がよく、受容性が高いなどの利点を有し、関節軟骨変性や腫脹を抑制して好中球のアポトーシスを促進し、炎症促進因子の放出を抑制し、さらに炎症反応や組織損傷を軽減することができ、また、薬物の正常組織での分布を減少させて炎症関節への薬物の蓄積を増強することができ、患者により少ない負荷と苦痛を与えることにより、リウマチ様関節炎等の炎症性疾患の予防、治療又は改善に用いることができる。
【0010】
いくつかの実施形態においては、前記II型コラーゲンは、鶏胸軟骨から抽出される。鶏胸軟骨は養殖業の副製品として廃棄されるか又は飼料生産に使用されて資源の浪費を引き起こしやすく、本発明は副製品を処理することによる汚染と浪費に実現可能な解決手段を提供し、コラーゲンの応用及び健康促進製品の開発に根拠を提供する。重要的には、前記II型コラーゲンは、生体免疫系を放出して刺激して自己免疫発動攻撃を発生させ、炎症性因子mRNAの発現量を低減し、軟骨損傷や破壊を緩和してリウマチ様関節症患者の関節症状と炎症反応を改善し、かつ毒性や副作用がない。好ましくは、前記II型コラーゲンの組成物中の濃度は、5~25wt%、好ましくは8~20wt%、さらに好ましくは10~17.5wt%である。
【0011】
いくつかの実施形態においては、前記グリコサミノグリカンはヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は標的特性を有し、組成物の標的性を向上させることができる。また、外来ヒアルロン酸を補充することは、生体を刺激して新たなヒアルロン酸を合成させることに有利であり、抗炎症作用を示すおよび増強することにより、炎症性サイトカインIL-1βおよびTNF-αに対する阻害作用を示す。好ましくは、ヒアルロン酸の組成物中の濃度は、1~5wt%であり、2.5~5wt%を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、前記ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α-リノレン酸、オクタデカテトラエン酸のうちの一種または複数種を含み、前記ω-6長鎖多価不飽和脂肪酸は、γ-リノレン酸を含む。本発明における長鎖多価不飽和脂肪酸は、好ましくは、脂肪酸化合物のインビトロでの伝達又は存在に適した形態であり、前記好適な形態の非限定的な例には、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせが含まれる。より好ましくは、前記脂肪源の組成物中の濃度は、1~15wt%であり、2.5~10wt%であり、さらに5~8wt%であり、前記ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸と前記ω-6長鎖多価不飽和脂肪酸との重量比は、3~5:1である。また、個体関節組織において不飽和脂肪酸を凝集させて、個体関節組織部位のω-3/ω-6の比を調整することにより、個体関節組織における炎症性因子の濃度を効果的に低減させることができる。
【0013】
本発明のいくつかの態様において、前記組成物の投与方法は、局所投与である。前記局所投与とは炎症関節中又は近傍領域に投与することを指す。局所投与は局所的な薬物濃度レベルを高くすることができ、ダメージ領域に薬物を選択的に閉じ込めることができ、全身性の放出による副作用を回避し、長時間作用を与える。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態においては、前記組成物は、ペースト、膏薬、ゲル剤、軟膏剤、塗膜剤等の外用剤型として存在し、貼付、塗布等の外用投与方式により局所的に投与される。前記組成物の投与量は、1~15g/dであることが好ましい。より好ましくは、前記ペーストは、ゴムペースト、パップ剤又は貼付剤である。前記ペーストの使用方法は12-24h/ボンディング、1-5gの組成物を貼り付ける。前記組成物製剤を3~30日間連続使用した後、薬物組成物を関節組織中に浸透させ、炎症を解消し、炎症性浮腫の消散を促進し、鎮痛や抗炎症効果が顕著となり、関節組織機能を回復させることができる。
【0015】
本発明に係る外用医薬組成物の製造方法は、II型コラーゲンと脂肪源とを含む有機相と、PDMAEMAを含む油相と、を提供し、乳化剤が存在する条件下で、前記有機相と前記油相とを超音波処理して混合させ、酸濃度が2wt%未満の環境下でヒアルロン酸の表面修飾を完了し、前記酸濃度の算出にヒアルロン酸を含まない。表面修飾用酸濃度が1wt%未満であることが好ましい。前記方法は、II型コラーゲンと脂肪源とを中核とし、標的分子を修飾したナノ材料を担体として外用医薬組成物を製造し、担体は、標的指向性を持って炎症組織に到達した後、関節の炎症が存在する酸性雰囲気中で分子鎖を伸展させ、封入された有効な薬物を放出して薬効を発現させる。前記製造方法で得られた組成物は、封入率と薬物担持量が高いという利点を有し、生成物構造が安定し、なめらかさと流動性が強く、前炎症性サイトカイン活性を抑制し、炎症促進因子やマトリックスメタロプロテアーゼ等の物質の分泌と放出を低減し、病変関節組織の炎症性症状と軟骨破壊症状を軽減または緩和する目的を達成する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態においては、有機相の溶媒は有機溶媒であり、溶媒はアセトンであることが好ましい。より好ましくは、溶媒の使用量は、溶質の重量の3~5倍である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態においては、油相の溶媒はジクロロメタンであり、その使用量はアセトン使用量の2~3倍である。好ましくは、油相はさらに組成物の重量百分率に占めるそれぞれ3-5%の卵黄レシチン及び10-15%のポリエチレンイミンを含む。より好ましくは、PDMAEMAの組成物中の重量百分率は、25~55%であり、30~45%であり、さらに35~40%である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、乳化剤はポリビニルアルコールであり、超音波処理条件は、パワーが300~500W、時間が3~10min、温度が0~5℃である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、表面修飾の操作条件は、回転数が300~500rpm、温度が25~45℃、時間が2~8hである。
【0020】
本発明のいくつかの態様において、表面修飾の酸濃度が2wt%未満の環境は、5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸により提供され、前記5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸の重量比は、3-4:2.5(例えば、4:2.5、3.8:2.5、3.5:2.5、3.3:2.5、3:2.5など)である。前記5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸は、ヒアルロン酸と水和作用を形成し、さらに親水基を利用してPDMAEMAの親水基と均質化することができ、ヒアルロン酸およびPDMAEMAを有機相表面に配向配列させることができ、生成物の有機相への封入率をさらに向上させることができるとともに、乾燥時に生成物内部の水分損失により分子中水和作用が弱まり、両者が水分子の蒸発による窪みを埋めることができ、生成物のスリップ性および流動性能を増加させることができ、また具体的な生物メカニズムについて検討されているが、両者は関節組織内において、前炎症性サイトカインIL-20活性を抑制することができ、IL-6、IL-8などの炎症促進因子のような滑膜線維芽細胞の分泌を抑制し、関節組織の炎症性症状を軽減または緩和することができる。
【0021】
本発明はまた、リウマチ性関節炎、リウマチ様関節炎の少なくとも一つである関節炎疾患の予防及び治療ための薬品を製造する時に前記外用医薬組成物が果たす用途を開示する。本発明の外用組成物は、疾患又は症状の予防及び治療のための薬品を製造する時に果たす用途を含み、好ましくは、前記疾患又は症状は限定的ではないが、炎症性関節炎、リウマチ様関節炎、リウマチ性関節炎、痛風、リウマチ、及びそれらの組み合わせを含み、リウマチ及び関節炎の症状に炎症、腫脹、凝り、痛み及び潰瘍のうちの一種又は複数種を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、従来技術と比べ、下記のメリットを有する。
【0023】
本発明の組成物は、標的性を有し、構造安定性が良く、薬物放出持続時間が長く、耐性が良く、受容性が高いなどの利点を示し、関節軟骨変性や腫脹を抑制し、好中球のアポトーシスを促進し、炎症促進因子の放出を抑制し、炎症性因子mRNAの発現量を低減し、さらに炎症反応や組織損傷を軽減し、軟骨損傷や破壊を緩和し、体内免疫グロブリン活性および生体免疫機能を増強することができる。
【0024】
本発明の組成物の製造方法は、生成物の封入率及び薬物負荷量を高め、なめらかさ及び流動性能を向上させることができ、前炎症性サイトカインIL-20の活性を抑制し、IL-6、IL-8及びマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9等の炎症因子の分泌及び放出を低減し、病変関節組織の炎症性症状及び軟骨破壊症状を軽減又は緩和する目的を達成することができる。
【0025】
本発明の外用組成物は、簡便な使用で、薬物を病変部位のダメージ領域に直接作用させ、経口薬物による胃腸刺激等の副作用を回避し、薬物の正常組織での分布を減少させ、炎症関節への薬物の蓄積を増強することができ、患者により少ない負荷と苦痛を与え、外用治療に毒性や副作用がなく、より高い薬効利益度を得ることができる。
【0026】
本発明は、前記態様によれば、リウマチ様関節炎を予防及び治療するための外用医薬組成物を提供し、従来技術の不足を補い、設計が合理的であり、取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】組成物のマウス関節直径に対する影響結果を示す図である。
図2】組成物のマウス関節腫脹度合に対する影響結果を示す図である。
図3】RAマウスの血清中の前炎症性サイトカインIL-20活性の変化を示す図である。
図4】RAマウスの血清中の炎症促進因子IL-6活性の変化を示す図である。
図5】RAマウスの血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9濃度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に具体的な実施形態及び図面を参照しながら本発明の技術的解決手段をさらに詳細に説明する:
【0029】
本発明で用いられる「治療」とは、本発明の関節症に罹患している患者の症状を解消、抑制、改善又は緩和すること、又は、炎症状態の有益な変化のいずれかの作用をいい、本発明の医薬組成物を投与することに起因するものである。「予防」とは、炎症性疾患の発症を抑制または遅延させる作用を意味し、本発明の医薬組成物を投与することに起因する。
【0030】
II型コラーゲンと脂肪源を中核とし、酸に敏感なナノ材料を主担体とし、その表面に標的分子が修飾された医薬組成物であって、前記標的分子がグリコサミノグリカンであり、ナノ材料が、PDMAEMAを含み、前記脂肪源が、少なくとも一種のω-3長鎖多価不飽和脂肪酸と、少なくとも一種のω-6長鎖多価不飽和脂肪酸とを含む、外用医薬組成物。この外用医薬組成物は、安定的に長寿効であり、指向性のある標的能力を有し、高い薬物担持量及び封入率、薬物放出持続時間が長く、耐性がよく、受容性が高いなどの利点を有し、関節軟骨変性や腫脹を抑制して好中球のアポトーシスを促進し、炎症促進因子の放出を抑制し、さらに炎症反応や組織損傷を軽減することができ、また、薬物の正常組織での分布を減少させて炎症関節への薬物の蓄積を増強することができ、患者により少ない負荷と苦痛を与えることにより、リウマチ様関節炎等の炎症性疾患の予防、治療又は改善に用いることができる。
【0031】
いくつかの実施形態においては、II型コラーゲンは、鶏胸軟骨から抽出される。鶏胸軟骨は養殖業の副製品として廃棄されるか又は飼料生産に使用されて資源の浪費を引き起こしやすく、本発明は副製品を処理することによる汚染と浪費に実現可能な解決手段を提供し、コラーゲンの応用及び健康促進製品の開発に根拠を提供する。重要的には、II型コラーゲンは、生体免疫系を放出して刺激して自己免疫発動攻撃を発生させ、炎症性因子mRNAの発現量を低減し、軟骨損傷や破壊を緩和してリウマチ様関節症患者の関節症状と炎症反応を改善し、かつ毒性や副作用がない。好ましくは、II型コラーゲンの組成物中の濃度は、5~25wt%、好ましくは8~20wt%、さらに好ましくは10~17.5wt%である(例えば11wt%、12.5wt%、13wt%、14wt%、15wt%、15.5wt%、16.5wt%等)。
【0032】
いくつかの実施形態においては、グリコサミノグリカンはヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は標的特性を有し、組成物の標的性を向上させることができる。また、外来ヒアルロン酸を補充することは、生体を刺激して新たなヒアルロン酸を合成させることに有利であり、抗炎症作用を示すおよび増強することにより、炎症性サイトカインIL-1βおよびTNF-αに対する阻害作用を示す。好ましくは、ヒアルロン酸の組成物中の濃度は、1~5wt%であり、2.5~5wt%(例えば2.5wt%、3.5wt%、4wt%、4.5wt%等)を含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α-リノレン酸、オクタデカテトラエン酸のうちの一種または複数種を含み、ω-6長鎖多価不飽和脂肪酸は、γ-リノレン酸を含む。本発明における長鎖多価不飽和脂肪酸は、好ましくは、脂肪酸化合物のインビトロでの伝達又は存在に適した形態であり、前記好適な形態の非限定的な例には、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせが含まれる。より好ましくは、前記脂肪源の組成物中の濃度は、1~15wt%であり、2.5~10wt%であり、さらに5~8wt%であり、ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸とω-6長鎖多価不飽和脂肪酸との重量比は、3~5:1である。また、個体関節組織において不飽和脂肪酸を凝集させて、個体関節組織部位のω-3/ω-6の比を調整することにより、個体関節組織における炎症性因子の濃度を効果的に低減させることができる。
【0034】
本発明の他の実施形態においては、組成物には、抗炎症またはリウマチ系薬剤が少なくとも一種含まれる。前記抗炎症又は抗リウマチ類薬物の非限定的な例はインドメタシン、メトトレキサート及びその塩、ランドレン、クルクミン、アフラビン、又はそれらの任意の組み合わせを含む。好ましくは、抗炎症又はリウマチ系薬物の組成物中の濃度は3wt%以下であり、より好ましくは0.1~1.5wt%である。抗炎症又はリウマチ系医薬物を添加した組成物は、症状、炎症の指標等を緩和する上で大きいベネフィットを得て、関節組織の炎症を低減し、TNF-αとIL-6等の少なくともいずれか一つの炎症性サイトカインの少なくとも一種を抑制することができ、体内免疫グロブリン活性及び生体免疫機能を向上させ、リウマチ性関節症の治療又は予防に用いられる。
【0035】
本発明の他の実施形態においては、組成物には、微生物の増殖を抑制するための有効量の補助材料が0.1~0.5wt%含まれる。前記補助材料は、薬学的に許容され組成物と反応しない防腐剤であり、前記防腐剤は限定的ではないが、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、p-ヒドロキシカルボン酸エステル、及びこれらの組み合わせを含むことが好ましい。より好ましくは、防腐剤は、メチルホルメートとフェノキシエタノールの少なくともいずれか一つである。
【0036】
本発明のいくつかの態様において、前記組成物の投与方法は、局所投与である。前記局所投与とは炎症関節中又は近傍領域に投与することを指す。局所投与は局所的な薬物濃度レベルを高くすることができ、ダメージ領域に薬物を選択的に閉じ込めることができ、全身性の放出による副作用を回避し、長時間作用を与える。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態においては、前記組成物は、ペースト、膏薬、ゲル剤、軟膏剤、塗膜剤等の外用剤型として存在し、貼付、塗布等の外用投与方式により局所的に投与される。組成物の投与量は、1~15g/dであることが好ましい。より好ましくは、ペーストは、ゴムペースト、パップ剤又は貼付剤である。ペーストの使用方法は12-24h/ボンディング、1-5gの組成物を貼り付ける。前記組成物製剤を3~30日間連続使用した後、薬物組成物を関節組織中に浸透させ、炎症を解消し、炎症性浮腫の消散を促進し、鎮痛や抗炎症効果が顕著となり、関節組織機能を回復させることができる。
【0038】
本発明に係る外用医薬組成物の製造方法は、II型コラーゲンと脂肪源とを含む有機相と、PDMAEMAを含む油相と、を提供し、乳化剤が存在する条件下で、前記有機相と前記油相とを超音波処理して混合させ、酸濃度が2wt%未満の環境下でヒアルロン酸の表面修飾を完了し、前記酸濃度の算出にヒアルロン酸を含まない。表面修飾用酸濃度が1wt%未満であることが好ましい(例えば0.1wt%、0.25wt%、0.3wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.65wt%、0.8wt%等)。
【0039】
本発明において、有機相の溶媒は有機溶媒であり、溶媒はアセトンであることが好ましい。より好ましくは、溶媒の使用量は、溶質の重量の3~5倍である。
【0040】
本発明において、油相の溶媒はジクロロメタンであり、その使用量はアセトン使用量の2~3倍である。好ましくは、油相はさらに組成物の重量百分率に占めるそれぞれ3-5%の卵黄レシチン及び10-15%のポリエチレンイミンを含む。より好ましくは、PDMAEMAの組成物中の重量百分率は、25~55%であり、30~45%であり、さらに35~40%である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、乳化剤はポリビニルアルコールであり、超音波処理条件は、パワー300~500W、時間3~10min、温度0~5℃である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、表面修飾の操作条件は、回転数が300~500rpm、温度が25~45℃、時間が2~8hである。
【0043】
本発明のいくつかの態様において、表面修飾中の酸濃度が2wt%未満の環境は、5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸により提供され、前記5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸の重量比は、3-4:2.5(例えば、4:2.5、3.8:2.5、3.5:2.5、3.3:2.5、3:2.5など)である。前記5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸は、ヒアルロン酸と水和作用を形成し、さらに親水基を利用してPDMAEMAの親水基と均質化することができ、ヒアルロン酸およびPDMAEMAを有機相表面に配向配列させることができ、生成物の有機相への封入率をさらに向上させることができるとともに、乾燥時に生成物内部の水分損失により分子中水和作用が弱まり、両者が水分子の蒸発による窪みを埋めることができ、生成物のスリップ性および流動性能を増加させることができ、また具体的な生物メカニズムについて検討されているが、両者は関節組織内において、前炎症性サイトカインIL-20活性を抑制することができ、IL-6、IL-8などの炎症促進因子のような滑膜線維芽細胞の分泌を抑制し、関節組織の炎症性症状を軽減または緩和することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、外用医薬組成物の具体的な調製工程は、PDMAEMA、卵黄レシチンおよびポリエチレンイミンをジクロロメタンに溶解して油相を形成し、さらにII型コラーゲンおよび脂肪源をアセトン中に溶解して有機相を形成した後、油相と有機相とを混合し、さらに2-3倍量、濃度0.5~2%のポリビニルアルコール溶液を加えて超音波処理した後、500~1000rpmの回転数で2~4h回転揮発させて部分溶媒を除去し、さらに、濃度0.1~0.5%に調製したヒアルロン酸溶液を系に添加して表面修飾し、完成後、1000~5000rpm、0-5℃で遠心分離し、沈殿洗浄し、凍結乾燥すれば、得られる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、II型コラーゲンの抽出方法は、鶏胸軟骨を取って洗浄し、粉砕した後、2-3倍重量のn-ヘキサンに2-4h浸漬して脂質を除去し、さらに濃度が5~20%、5~10倍量の塩化ナトリウム溶液を添加し、2~4h浸漬した後、濾過し、上澄み液を塩酸でpHを2-3に調整した後、酵素:基質=1:100~150の割合でペプシンを添加し、2~4h酵素分解した後、上澄み液を濾過し、濃度が5~20%の塩化ナトリウム溶液で2~3回塩析し、遠心し、沈殿を取って凍結乾燥させて得ることができる。
【0046】
本発明はまた、リウマチ性関節炎、リウマチ様関節炎の少なくとも一つである関節炎疾患の予防及び治療ための薬物を製造する時に前記外用医薬組成物が果たす用途を開示する。本発明の外用組成物は、疾患又は症状の予防及び治療のための薬物を製造する時に果たす用途を含み、好ましくは、前記疾患又は症状は限定的ではないが、炎症性関節炎、リウマチ様関節炎、リウマチ性関節炎、痛風、リウマチ、及びそれらの組み合わせを含み、リウマチ及び関節炎の症状に炎症、腫脹、凝り、痛み及び潰瘍のうちの一種又は複数種を含む。
【0047】
なお、前記説明は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではなく、特許請求の範囲および精神内で当業者が変更および修正することが可能であることが当業者に理解されるところである。特に、本発明は、以上と以下に説明した実施形態と異なる特徴を有する任意の組み合わせの他の実施形態を包含するものであり、本発明の範囲は以下の具体例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1:
リウマチ様関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物であって、具体的な調製工程は以下のとおりである:
(1)鶏胸軟骨を取って洗浄し、粉砕した後、2.5倍重量のn-ヘキサンに3h浸漬して脂質を除去し、さらに濃度8.5%、8倍量の塩化ナトリウム溶液を添加し、2.5h浸漬した後、ろ過し、上澄み液を塩酸でpH3に調整した後、酵素:基質=1:120の割合でペプシンを添加し、3.5h酵素分解した後、濾過して上澄み液を取り、濃度15%の塩化ナトリウム溶液で2回塩析し、遠心し、沈殿を取って凍結乾燥してII型コラーゲンを得て、
(2)II型コラーゲンを組成物中濃度16.5wt%の割合で採取し、さらに脂肪源8wt%を加えて均一に混合した後、アセトンを3.5倍重量加えて均一に混合して有機相を形成し、前記脂肪源がα-リノレン酸とγ-リノレン酸を含み、その重量比は3.5:1であり、
(3)PDMAEMA、卵黄レシチンおよびポリエチレンイミンを、組成物中の重量百分率が37.5%、3.5%および13%の割合で順次量りとり、混合した後、これにアセトン使用量2倍の重量で塩化メチレンを加えて均一に混合し、油相を形成し、
(4)油相と有機相を混合し、さらに2.5倍量、濃度1.5%のポリビニルアルコール溶液を加え、電力400W、温度5℃の条件で5min超音波処理した後、800rpmの回転数で2.5h回転揮発させて部分溶媒を除去し、さらに系に濃度0.35%に調製したヒアルロン酸溶液を添加し、回転数400rpm、温度40℃の条件で4.5h表面修飾し、完成後2000rpm、5℃で遠心し、沈殿を取って洗浄、凍結乾燥することにより組成物を得て、前記ヒアルロン酸の添加量は、組成物中の該当濃度3.5wt%で計算し、前記ヒアルロン酸溶液には、酸濃度の和が0.3wt%である5-アミノサリチル酸と2-アミノベンゼンスルホン酸をさらに含み、前記5-アミノサリチル酸と2-アミノベンゼンスルホン酸の重量比は3.5:2.5である。
【0049】
実施例2:
リウマチ様関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物であって、具体的な調製工程は以下のとおりである:
工程(4)で用いるポリビニルアルコール溶液には、実施例1と比較して、3-ヒドロキシブタン酸を0.03wt%、フマル酸ナトリウムを0.07wt%含有し、両者は混合系において超音波作用によりコラーゲン中のアミノ酸残基と結合し、コラーゲン分子間の重合収縮を回避して分子構造安定性を維持しつつ、PDMAEMAが伸展した分子鎖と相互に架橋することができ、コラーゲンを効果的に油相分子空間空隙に補填し、担体の薬物担持量を効果的に向上させることができ、また両者は関節組織において分解過程で放出され、具体的な生物学的メカニズムは検討されているが、滑膜線維芽細胞の基質金属プロテアーゼ分泌を影響及び抑制し、関節組織細胞外マトリックスの分解及び破壊を緩和し、病変関節領域の軟骨破壊症状を軽減または緩和することができる。
【0050】
実施例3:
リウマチ様関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物であって、具体的な調製工程は以下のとおりである:
工程(4)におけるヒアルロン酸溶液には、実施例1と比較して、5-アミノサリチル酸および2-アミノベンゼンスルホン酸は添加されない。
【0051】
実施例4:
リウマチ様関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物であって、具体的な調製工程は以下のとおりである:
工程(2)における有機相には、実施例1と比較して、組成物中のそれぞれの濃度が1.5wt%である大フラビンとクルクミンとの混合物も含まれており、前記大フラビンとクルクミンとの重量比は、1:0.5である。
【0052】
実施例5:
リウマチ様関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物であって、具体的な調製工程は以下のとおりである:
工程(3)における油相には、実施例1と比較して、組成物中の該当濃度が0.5wt%のフェノキシエタノールも含まれている。
【0053】
実施例6:
リウマチ様関節炎を予防および治療するための外用医薬組成物であって、具体的な調製工程は以下のとおりである:
工程(2)における脂肪源には、実施例1と比較して、ドコサヘキサエン酸、α-リノレン酸およびγ-リノレン酸が含まれており、その重量比は1.5:2.5:1である。
【0054】
実施例7
外用医薬組成物の薬物担持量及び封入率測定
実施例1-6で得られた組成物5mgをそれぞれ正確に秤量し、ジクロロメタン200μLを加えて超音波溶解した後、2mLの移動相を加え、超音波で均一に混合した後、0.22μmのナイロン濾過膜でサンプル瓶に濾過して使用に供する。組成物の薬物担持量をHPLCで測定し、検出条件は、アセトニトリル:水=40:60、検出波長:241nm、試料注入体積:20μL、カラム温度:35℃、流速:1mL/min、カラム仕様:Extended18(5μm,4.6×250mm,Agilent)。得られた組成物の封入率を計算し、DL%=(組成物中に封入された薬物含有量/組成物の質量)×100%、EE%=(実際の薬物担持量/理論担持量)×100%、DLは薬物担持量、EEは封入率を表す。統計及び分析は以下の表1に示すとおりである。
【0055】
【表1】
外用医薬組成物の薬物担持量及び封入率の測定結果
【0056】
前記表1から明らかなように、実施例1と実施例4-6で得られた組成物の間の粒径、薬物担持量及び封入率の違いは明らかではなく、他の有効成分や防腐剤を添加して生成物の粒径、薬物担持量及び封入率への影響が顕著でないことを説明したが、実施例1は実施例2と比較して、実施例2は、封入率が低下するものの、薬物担持量が著しく向上し、同量組成物の薬注量がより多く、薬効がより良好であると推定でき、実施例2の調製方法は、より高い薬物担持量、性質がより安定した組成物を得ることができ、実施例1は、実施例3と比較して、実施例3は、薬物担持量の差異が大きくないものの、封入率が著しく低下し、実施例1が実施例3の方法よりも容易に高い封入率を有する組成物を得ることができ、組成物の保存、薬効安定及び薬物投与後の生体における簡便な伝達に有利であることが判った。
【0057】
実施例8:
リウマチ様関節炎を治療及び予防するための組成物の使用効果
1、マウスRAモデルの確立:フロイント完全アジュバントによって誘導されるRAモデルであって、それぞれ1mLのインスリン注射器で20μLと80μLフロイント完全アジュバントを採取してマウスの左側の後足の踏み関節腔内及び関節周囲に注射し、3日後にマウスの関節が腫脹し、7-10d後に関節腫脹がほぼピークに達することができ、関節の活動に障害が出現しさらに破行し、14d後のマウスの趾爪の腫脹が安定し、RAモデルが完成する。正常対照群のマウスの左側の後足の踏み関節腔内及び関節周囲に同じ体積の生理食塩水を注射する。
【0058】
2、グループ分け及び投与:8週齢の雌性マウスは、1週間適応的に給餌した後、ランダムに3群に分け、それぞれブランク群、RAモデル群、試験群とする。具体的な投与状況は以下のとおりである:
ブランク群:正常マウスの左側の後足の関節に生理食塩水を塗布し、1日1回、1回で2g、周期を16dとし、
モデル群:RAマウスの左側の後足の関節腔内及び関節周囲に生理食塩水を塗布し、1日1回、1回で2g、周期を16dとし、
試験群1:RAマウスの左側後足の関節腔内及び関節周囲に、実施例1で調製した組成物を塗布し、1日1回、1回で2g、周期を16dとし、
試験群2:RAマウスの左側後足の関節腔内及び関節周囲に、実施例2で製造した組成物を塗布し、1日1回、1回で2g、周期を16dとし、
試験群3:RAマウスの左側後足の関節腔内及び関節周囲に、実施例3で得た組成物を塗布し、1日1回、1回で2g、周期を16dとし、
試験群4:RAマウスの左側後足の関節腔内及び関節周囲に実施例4で調製した組成物を塗布し、1日1回、1回で2g塗布し、周期が16dである。
【0059】
3、マウス関節直径及び腫脹度合測定:マウス左後足の踏み関節にフロイント完全アジュバントを注射して炎症発生を誘発し、投与前に携帯型厚計で各群のマウスの関節直径をそれぞれ測定し、その腫脹度合に応じて関節スコアを行い、2d毎に1回検出し、毎回同じ位置を測定し、実験終了までとする。マウスの関節の病変の程度は5段階の評点であり、評価基準は表2の通りである。
【0060】
【表2】
マウスの踏み関節の病変程度の評価基準
【0061】
マウスの関節直径の測定結果は、図1に示すように、マウスの関節の腫脹度合の採点結果は、図2に示すように、図から明らかなように、ブランク群のマウスの関節が正常範囲内で僅かに変動しており、モデル群の関節は常に腫脹状態にあり、関節直径が太く且つ安定しており、試験群1は、10d以降では関節の腫脹度合と直径が著しく低下し始め、実験終了時には、直径が5.1cmから3.5cmまで降下し、試験群2は、8d以降では関節の腫脹度合と直径が著しく低下し始め、実験終了時には、直径が5.2cmから2.9cmまで降下し、試験群3は、12d以降では、関節の腫脹度合と直径が著しく低下し始め、実験終了時には、直径が5.3cmから4cmまで低下し、試験群4は、8d以降では関節の腫脹度合と直径が著しく低下し始め、実験終了時には、直径が5.2cmから3.1cmまで低下し、試験群組成物の効果は、実施例2>実施例4>実施例1>実施例3であることを示す。
【0062】
4、RAマウス血清中の前炎症性サイトカインIL-20及び炎症促進因子代表IL-6活性に対する組成物の影響および測定:酵素結合免疫吸着法ELISA分析キット(Thermo,EM2IL6)を用いてブランク群、モデル群、試験群1、試験群3及び試験群4のRAマウスの試験期間中において血清中の前炎症性サイトカインIL-20及び炎症促進因子代表IL-6の活性レベルを測定する。説明書に沿って実験操作を行い、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェル吸光度OD値を450nm波長で測定し、標準品OD値および標準品濃度から検量線を作成し、さらにサンプルOD値からサンプル中の濃度を算出して分析する。
RAマウス血清中の前炎症性サイトカインIL-20活性の測定結果は、図3に示すように、RAマウス血清中における炎症促進因子IL-6活性の測定結果は、図4に示すように、図から明らかなように、ブランク群のマウス血清中のIL-20及びIL-6の活性は、平均値35.3μg/mL及び25.2μg/mLの正常範囲であり、モデル群のマウス血清中のIL-20及びIL-6の活性は、平均値136.2μg/mL及び215.6μg/mLで安定的に変動し、試験群1は、4d以降は、血清中IL-20及びIL-6活性が著しく低下し始め、実験終了時には、血清中のIL-20及びIL-6活性は、77.3μg/mL及び141.6μg/mLに低下し、試験群3は、10d以降では、血清中IL-20及びIL-6の活性が著しく低下し始め、実験終了時には、血清中のIL-20及びIL-6の活性が92.7μg/mL及び182.4μg/mLに低下し、試験群4は、4d以降では、血清中IL-20及びIL-6の活性が著しく低下し、実験終了時には、血清中のIL-20及びIL-6の活性が79.3μg/mL及び137.1μg/mLに低下し、試験群1及び試験群4が、試験群3よりも、前炎症性サイトカインIL-20活性の抑制表現が優れ、IL-20活性が抑制され、更に、IL-6、IL-8等の炎症促進因子の活性(図4)が抑制され、関節組織の炎症性症状が軽減又は緩和されることが明らかとなる。
【0063】
5、組成物がRAマウス血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9濃度への影響及び測定:酵素結合免疫吸着法ELISA分析キット(Thermo,EM2IL6)を用いてブランク群、モデル群、試験群1、試験群2及び試験群4のRAマウスの試験期間において、血清中基質メタロプロテアーゼMMP-9の濃度レベルを測定する。説明書に沿って実験操作を行い、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェル吸光度OD値を450nm波長で測定し、標準品OD値および標準品濃度から検量線を作成し、さらにサンプルOD値からサンプル中の濃度を算出して分析する。
【0064】
RAマウス血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9濃度の測定結果は、図5に示すように、図から明らかなように、ブランク群のマウス血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度は、平均値68.3μg/L正常範囲であり、モデル群のマウス血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度は、平均値1593.6μg/Lより安定的に変動し、試験群1は、8d以降では、マトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度が著しく低下し始め、実験終了時には、血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度は、658.7μg/Lに低下し、試験群2は、6d以降では、基質メタロプロテアーゼMMP-9の濃度が著しく低下し始め、実験終了時には、血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度が476.5μg/Lに低下し、試験群4は、8d以降では、血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度が著しく低下し始め、実験終了時に、血清中のマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度は603.6μg/Lに低下し、試験群2は、試験群1および4よりもマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の濃度に対する抑制力が強く、マトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の分泌が抑制され、関節組織の細胞外マトリックスへの分解・破壊を緩和し、病変関節域の軟骨破壊症状を軽減または緩和することができる。
【0065】
前記実施例における従来技術は当業者に知られている従来技術であるため,ここでは詳細な説明を省略する。
【0066】
以上の実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形や変形が可能であることは当業者に明らかである。したがって、すべての同等の技術的解決手段も本発明の範疇に含まれるものであり、本発明の特許請求の範囲は、特許請求の範囲によって制限されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5