(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】災害時の携帯端末
(51)【国際特許分類】
H04M 1/725 20210101AFI20220111BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H04M1/725
G08B21/10
(21)【出願番号】P 2021126401
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2021-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517396652
【氏名又は名称】立花 純江
(72)【発明者】
【氏名】利元 道隆
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068305(JP,A)
【文献】特開2013-142915(JP,A)
【文献】特開2000-018982(JP,A)
【文献】特開2019-087251(JP,A)
【文献】特開平06-032280(JP,A)
【文献】特開2003-274450(JP,A)
【文献】特開2014-119849(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00-11/00
G08B 21/00-25/00
A63B 29/02
G01V 3/02
G01B 15/00
H04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と通信する携帯端末であって、該携帯端末は、この携帯端末の埋没状態を検知する埋没検知手段と、該埋没検知手段が作動したときに作動する報知手段とを備え、前記埋没検知手段は、前記携帯端末が前記基地局から受信する電波の電界強度が所定値以上の状態から所定時間内に所定値以下に下がった時に埋没状態として検出することを特徴とする携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンのような携帯端末が、土石流や雪崩といった災害に、該携帯端末の利用者と共に埋没された場合、緊急遭難信号を送信して埋設場所を確定し、救助に貢献する。
【背景技術】
【0002】
近年の温暖化の影響で、毎年のように日本に限らず、世界中で短時間の大雨で土砂災害が発生し、多くの人が生き埋めになる事例が頻発している。危険な場所に職業として、あるいはやむ得ない事情で赴く場合は、最初から、ヘルメットや手首足首に救難用発信機を付けて、万が一埋没しても発信機からの信号を即座に検出して、救助する事が可能である。例えば、特許文献1では、埋没者に複数の発振器を事前に装着しておき、万が一生き埋めになっても発信機からの信号を元に、埋没者を助け出すことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、あらかじめ埋没者に波長の異なる複数の発振器を装着させることで、埋没した場所を正確に検出し、重機などを使って迅速に救助する事が記載されているが、広島や熱海の土砂災害のように、住宅街で普通に生活している環境で、突然発生する土石流に巻き込まれるケースでは、事前に複数の発振器を装着するくらいであれば、災害が発生する前に避難する事が可能であり、身近な携帯端末を発振器に利用する事は提案されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、特許文献1とは異なる、携帯端末を身近に利用する人が、突然埋没者となった場合、前記埋没者の衣服や非常に近い所に前記携帯端末がある事を前提に、前記携帯端末が発振器になる事に主眼を置いている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記課題を解決するために、前記携帯端末内部に、独立した発振器を小型のケースに入れておき、万一土石流など災害にあった場合、前記携帯端末が破壊される前に、前記発振器が自動で作動して、一定の周波数を送信することで、その後の救助活動に役立つことができる。
【0007】
さらには、防水タイプの携帯端末であれば、液晶画面やケースが壊れても、電池が動いていれば、前記電池が空になるまで、数日から数週間、前記発振器に電源供給されるため、埋没者が発見される可能性が高くなる。
【発明の効果】
【0008】
上述した本発明によると、住宅街など普通に生活する電波状態のよい環境で、最も利用されている携帯端末に、緊急時の遭難信号となる発振器を内蔵することで、突然の災害時、最も利用価値の高い発振器となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の前記携帯端末と前記発振器の構成を示す図である。
【
図2】本発明の前記発振器の機能ブロック図を示す。
【
図3】本発明の待ち受け時の制御部の判定を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係わる前記携帯端末と前記発振器の構成を示す。
【実施例】
【0011】
以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は一般に利用されているスマートフォンのような携帯端末100の内部に、発振器101を内蔵させる場合の、機能ブロック図である。電池105はリチウムイオン電池と言われる充電可能な高容量の二次電池で、通常は前記携帯端末のために使われる。従い、前記発振器101は、災害と判断される場合以外は電源供給されず動作していない。すなわち、災害検出用のセンサー部102が災害発生を検出すると、制御部104は駆動部103を作動させ、前記電池105から前記発振器101に電源が供給され、前記発振器101は規定の周波数を発振し外部に送信を開始する。
【0012】
図2は、前記発振器200の機能ブロック図であり、発振回路203に電源が供給されると、自動で規定の周波数が送信され、アンテナ202から電波が送信される。前記発振回路203と電源供給のための電池は、前記発振器200に内蔵された内蔵電池205と、前記携帯端末用の電池210の両方となり、万一、前記携帯端末100が破壊され、前記電池210が使えなくなった場合、前記内蔵電池205から前記発振回路203に電源が供給され、前記発振器101が作動する。リレー回路204は機械式のリレーとし、一旦リレーが閉じられると再び開くことが出来ないタイプのリレーが望ましいが、スペースやコスト面から半導体タイプのリレーも可能である。前記リレー回路204は、トランジスター制御のリレー作動回路207で動作し、前記トランジスターがオンし、前記リレー回路204の内部コイルに電流が流れ、リレーが閉じる構造とである。前記リレー作動回路207は、前記携帯端末100の駆動部211が前記制御部212により、前記リレー作動回路207に電源供給され、前記リレー回路204が閉じ、前記内蔵電池205及び前記電池210は前記発振回路203に電源供給する。ダイオード215は前記内蔵電池205及び前記電池210をアイソレーションするためである。
【0013】
前記発振回路203は、土砂や雪崩に埋もれた状態でも地上まで届く、低周波の長波が望ましい。また、送信される電波は連続出力ではなく、パルス状の出力とし、瞬時の送信電力を大きくすることが望ましい。前記アンテナ202は、前記発振回路203が長波となれば、波長も長くなるため、前記発振器200を小型にするために、薄いフレキシブル基板に渦上のパターンで設計された渦巻き型アンテナなど薄くて小型のアンテナが望ましい。最近では、土砂に埋もれても電波を地上まで届かせる電波技術が開発されているので、そういった技術を導入してもよい。ケース201は、強化プラスチックなど非金属で電波を通す材質とし、土石流などで大きな圧力が掛かっても壊れない強度を持たせる必要があるが、例えば、前記ケース201の大きさが、数ミリ角程度であれば、加わる圧力も小さくなり、破壊される可能性は低い。端子A208,端子B209は、前記ケース201に埋め込まれた金属端子とし、通常はスプリングピンなどの圧力で接触させる構造とし、土石流や雪崩の圧力で、前記携帯端末100が破壊されても、前記金属端子のスプリングピンが外れる仕組みなので、前記発振器200内部に土砂や雪が侵入する事はない。更には、前記発振器200を前記携帯端末100内部のプリント基板に半田でマウントするチップ部品とし、前記発振器200の前記ケースを前記プリント基板に半田付けする事で強度が上がるだけでなく、前記ケース201に付いている前記端子A208,前記端子B209、前記端子C213も前記プリント基板に半田付けする事で、大きな外圧が掛かっても、前記発振器200が破壊される可能性が低くなる。
【0014】
前記センサー部102は、土砂や雪による圧力を検出する圧力センサー、小さなひずみを検出するひずみセンサー、前記携帯端末100のキャビネットのひび割れ、剥離、亀裂を検出するAEセンサー、金属の亀裂、破断を検出する磁気センサーなど、土石流や雪崩を瞬時に検出する複数のセンサーとし、前記携帯端末100が土石流や雪崩で破壊されるまでに、前記センサー部102が異常を検出し、前記制御部104が前記発振器101に電源供給を開始することで、前記発振器200は救難信号を送信開始する。
【0015】
土石流や雪崩による前記携帯端末100の破壊状態により、前記携帯端末100の前記電池210から前記発振部200の前記端子A208を介して、前記発振回路203に電源供給が続けられた場合、前記電池210は高容量なので、数日から数週間に渡り、前記発振器200は電波を出し続ける事が可能となる。もし、前記電池210が大きなダメージを受けて、破壊した場合は、前記発振器200の電源は、前記内蔵電池205だけとなるので、自然放電が少なく、高電圧で高容量のボタン型の小型リチウムイオン電池などが望ましい。
【0016】
更に、前記発振器200に追加の端子C213を設けて、通常状態では、前記電池210から充電回路214を通じて、前記内蔵電池205に充電を行えば、常に前記内蔵電池205は満充電状態となる。
【0017】
図3は、前記携帯端末100が待ち受け状態にあり、災害が発生後の前記制御部212が、災害発生と判断するまでの時間経緯を示すフローチャートである。前記携帯端末100が、待ち受け状態の場合、前記電池210の消耗を抑えるために、通常の間欠受信の間隔は数秒の非常に長いインターバルとなっている。複数の前記センサー部102が災害を検出すると、間欠受信の間隔を例えば50mSという非常に短い間隔で、基地局からの電波をサンプリングする。これは、土石流や雪崩のように高速で土砂や雪が押し寄せる事を想定し、どんなに土石流や雪崩が高速で押し寄せて、前記携帯端末100が土砂に埋もれ、破壊される事で、基地局からの電波状態が良い環境から、突然圏外などの電波状態の悪い環境になったとしても、50mSという短いサンプリングであれば、前記センサー部102が災害を検出し、前記制御部212が、基地局からの電波状態を確定し、前記発振器200を作動させることができる。前記携帯端末100が、利用者によって、使用されていれば、間欠受信ではないので、いつでも前記リレー作動回路207をオンさせることは言うまでもない。
【0018】
では実施例を挙げて、本発明を説明する。説明にあたり、前記携帯端末100の利用者をAさんとし、Aさんは、通常住宅街にある一般的な木造建築の一軒家に住んでいるケースとする。基地局からの電波状態は非常によく、前記携帯端末100の表示部に表示されている、電界強度アンテナバーは3本とか4本立っている環境とする。多くの利用者同様に、Aさんは前記一軒家の自室で前記携帯端末100を操作して、ラインや通話、あるいはオンラインでのショッピングや、ゲームを楽しんでいるか、または、前記携帯端末100を自室で充電中、すなわち待ち受け状態の可能性もある。または、前記携帯端末100をポケットやバッグに入れて、外出の用意をしている可能性もある。すなわち、前記携帯端末100は前記Aさんの近傍に位置している可能性が非常に高い。
【0019】
この状態で、突然、裏山の斜面が土石流となって、前記Aさんの家を襲った場合、前記Aさんは家と一緒に押し流される可能性が非常に高い。結果的に、前記Aさんの近傍にある前記携帯端末100も前記Aさんと一緒に押し流されるものと推察される。すなわち、前記Aさんが埋没された位置の近傍に前記携帯端末100が存在する確率も非常に高くなる。
【0020】
前記携帯端末100内部の前記発振器101はすでに、遭難信号となる規定の周波数をパルス送信している。この前記周波数の詳細情報が、ドコモ、AU、ソフトバンクといった通信事業者から、全国の警察、消防署、総務省、全国の自治体、自衛隊などに事前に通知されていれば、災害発生と同時に、前記周波数を検知するハンディタイプの受信機を現場に持ち込み、土石流や雪崩の内部から発生している、微細な周波数を検知し、埋没者である前記Aさんを発見できる可能性がある。
【0021】
勿論、生存者として救出することが目的であるが、広島や熱海のような土石流に一か月以上も埋れ、家族が早く見つけ出して欲しいとの願いに応えられない場合の方が多い現状では、例え、生存してなくとも、一刻も早く見つけ出すことは非常に重要な事であり、本発明はそのような期待に応えられるものである。さらには、土石流が発生した時、土砂はまだ流体の状態であり、長波による回析や、干渉といった特性を利用できるが、時間が経てば、土砂が固まって個体となり、長波の特性を利用できなくなる可能性もあり、一刻も早い救出が望まれる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
上述の発明は、近年の温暖化の影響でゲリラ豪雨が土石流を発生させ、その度に埋没者の捜索が難航する現場に、ほぼ一人一台普及している利用者に必須の携帯端末に発振器を内蔵することで、安価で効率の良い捜索ツールを提供する。なお、実施例は、長波の電波を報知手段としているが、微細な振動や、ベルや音叉のような音を報知手段としても良い。
【符号の説明】
【0023】
100携帯端末 101発振器 102センサー部 103駆動部 104制御部 105電池
200発振器 201ケース 202アンテナ 203発振回路 204リレー回路 205内蔵電池
207リレー作動回路 208端子A 209端子B 210電池 211駆動部
212制御部 213端子C 214充電回路 215ダイオード
【要約】
【課題】土石流や雪崩に埋没した携帯端末が規定の周波数を発振する。
【解決手段】
スマートフォンなどの携帯端末が災害を検出するセンサーを備え、携帯端末を利用する人が、突然起こった土石流や雪崩と言った災害に遭遇した場合、同時に災害に巻き込まれた携帯端末が災害を検出し、埋れたことで基地局からの電波状態が突然圏外になるなど、電波状態の急変を検出することで、例え、携帯端末が破壊されても、携帯端末に内蔵された発振器が規定の周波数を送信することで、埋設場所を短時間で見つけ出すことを可能とする。
【選択図】
図1