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特許6997920パターン形成用パイプ、露光システム、エッチングシステム及びエッチング方法
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  • 特許-パターン形成用パイプ、露光システム、エッチングシステム及びエッチング方法 図1
  • 特許-パターン形成用パイプ、露光システム、エッチングシステム及びエッチング方法 図2
  • 特許-パターン形成用パイプ、露光システム、エッチングシステム及びエッチング方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】パターン形成用パイプ、露光システム、エッチングシステム及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/00 20060101AFI20220111BHJP
   A61F 2/91 20130101ALI20220111BHJP
   C23F 1/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C23F1/00 102
A61F2/91
C23F1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018503612
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2018001644
(87)【国際公開番号】W WO2018139371
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017012031
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517384110
【氏名又は名称】ユナイテッド・プレシジョン・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】松浦 操
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-177185(JP,A)
【文献】特開平09-316666(JP,A)
【文献】特開昭61-130490(JP,A)
【文献】特開2011-184736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体に形成しようとしている開口パターンに対応するマスクパターンが壁部に形成されていて、前記筒状体が圧入されることによって露光処理を行っている際に当該円筒状体が位置ずれしない、透光性のあるパターン形成用円筒状パイプ。
【請求項2】
前記筒状体の少なくとも外表面には、前記圧入前に感光性物質が塗布されている、請求項1記載のパターン形成用円筒状パイプ。
【請求項3】
請求項1記載のパターン形成用円筒状パイプと、
前記パターン形成用円筒状パイプの周辺に位置するいくつかの光源と、
を備える筒状体の露光システム。
【請求項4】
請求項3記載の露光システムと、
前記筒状体の内壁を感光性物質でシールするシール装置と、
前記光源によって露光したパターン形成用円筒状パイプ内の筒状体を現像する現像装置と、
前記シール装置によって内壁がシールされた筒状体をエッチングするエッチング装置とを備える、エッチングシステム。
【請求項5】
筒状体に形成しようとしている開口パターンに対応するマスクパターンが壁部に形成されていて透光性のあるパターン形成用円筒状パイプに当該筒状体が露光処理を行っている際に位置ずれしないように圧入し、
前記筒状体を入したパターン形成用円筒状パイプを露光し、
前記露光したパターン形成用円筒状パイプ内の筒状体を現像し、
前記現像した筒状体をエッチングする筒状体のエッチング方法。
【請求項6】
前記筒状体は、ステント、コアワイヤー、内視鏡用ケーブル、産業用のスプリングのいずれかである、請求項1記載のパターン形成用円筒状パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成用パイプ、露光システム、エッチングシステム及びエッチング方法に関し、特に、ステントなどを製造するためのパターン形成用パイプ、露光システム、エッチングシステム及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、レーザーカットを採用することによるデメリットを解消するために、エッチングによってステントを製造する方法が開示されている。この方法は、(a)金属製管状部材の外面に感光性レジストを被覆して、被覆された管状部材を形成する段階と、(b)前記被覆された管状部材の前記外面の、選択された部分を光源に露出すると同時に、他の選択された部分を遮蔽する装置に前記被覆された管状部材を入れて、一部露出された管状部材を形成する段階と、(c)前記一部露出された管状部材をネガティブ・レジスト現像剤に浸漬して、処理された管状部材を形成する段階と、(d)前記処理された管状部材を電気化学的エッチング工程により処理し、前記光源から遮蔽された前記管状部材の選択された部分にある金属を除去する段階とを含む。
【0003】
【文献】特表2002-511779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているステントの製造方法は、ステントとなる管状部材(筒状体)の外面を感光性レジスト材料で被覆しようとしても、正確に被覆することは困難である。確かに、電子部品の回路パターン等のように二次元の対象物を感光性レジスト材料で被覆するのであればそれほど困難ではないが、管状部材は三次元であることから、これを正確に感光性レジスト材料で被覆することは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、エッチングのためのマスクパターンを管状部材に対して正確に転写することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明のパターン形成用パイプは、
筒状体に形成しようとしている開口パターンに対応するマスクパターンが壁部に形成されていて前記筒状体が位置ずれせずに挿入される透光性のあるパターン形成用パイプである。
【0007】
本発明によれば、パターン形成用パイプに筒状体を挿入した状態で露光すれば、その筒状体にマスクパターンを正確に転写することができる。このため、その後に、筒状体をエッチングすると、正確に開口された筒状体を製造することができる。なお、このパターン形成用には、前記筒状体が挿入されていてもよい。また、前記筒状体は、ステント、コアワイヤー、内視鏡用ケーブル、産業用のスプリングのいずれかとすることができる。
【0008】
また、本発明の筒状体の露光システムは、
上記パターン形成用パイプと、
前記パイプの周辺に位置するいくつかの光源と、
を備える。
【0009】
また、本発明の筒状体のエッチング方法は、
筒状体に形成しようとしている開口パターンに対応するマスクパターンが壁部に形成されていて透光性のあるパターン形成用パイプに当該筒状体を位置ずれせずに挿入し、
前記筒状体を挿入したパターン形成用パイプを露光し、
前記露光したパターン形成用パイプ内の筒状体を現像し、
前記現像した筒状体をエッチングする。
【0010】
本発明によれば、前記筒状体を挿入した状態の前記パイプを光源によって露光すれば、その筒状体にマスクパターンを正確に転写することができる。このため、その後に、筒状体をエッチングすると、正確な開口デザインの筒状体を製造することができる。
【0011】
なお、前記筒状体の内壁をシールするシール装置を備えるとよい。
【0012】
また、前記パターン形成用パイプを用いて前記マスクパターンが転写され、前記シール装置によってシールされた筒状体が含浸されるエッチング液が入れられた液槽を備えるとよい。
【0013】
さらに、光源の数が少ない場合には、前記パイプを回転させる回転装置を備えるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のステント製造装置を用いて行うステント製造方法の説明図である。
図2】本発明の実施形態のステント製造装置の模式的な構成図である。
図3図2のステント製造装置の変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0015】
10 パイプ
15 マスクパターン
20 露光装置
30 回転装置
40 シール装置
50,60 液槽
100 ステント材
【発明の実施の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態のステント材製造装置を用いて行うステント製造方法の説明図である。図1には、ステントとなるステント材100と、ステントに形成される開口パターンに対応するマスクパターン15が壁部に形成された透光性を有するパイプ10とを示している。
【0018】
ステントは、血管、気管、食道、十二指腸、大腸、胆道などの管状部分に用いることができ、これらのサイズは様々であるが、直径は数mm~数cm、長さは数cm~数10cmのものが一般的である。
【0019】
ステント材100は、金属又は樹脂を用いることができる。金属の例としては、マグネシウム、チタン、ニッケル、金、白金、316Lステンレス、クロム、コバルト、アルミニウム、タンタル、タングステン、ニオブ、バラジウム、モリブデン、これらを含む合金などが挙げられる。樹脂の例としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネイト、ポリエーテル、ポリメチルメタクリレート等の合成樹脂、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、ポリεカプロラクトン等の生分解性樹脂が挙げられる。
【0020】
ステント材100は、金属等が露出したままでもよいが、選択的に、ePTFE膜、シリコン膜、ポリウレタン膜、ダクロン膜、細胞増殖を抑制する薬剤、ポリ乳酸などで覆ってもよい。ステント材100の少なくとも外表面には、その後、パイプ10に挿入される前に、既知のように、ヨウ化銀、臭化銀、アクリルなどの感光性物質が吹付、含浸等によって塗布される。
【0021】
この際、必要に応じて、感光性物質の塗布に先立って、ステント材100にカップリング剤を塗布して、感光性物質の密着性を高めてもよい。また、感光性物質が塗布されたステント材100を100℃~400℃程度の温度で所定時間加熱するというプリベーク処理を施すことによって、感光性物質を固化させるとよい。
【0022】
パイプ10は、石英ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス、珪酸系ガラス、アクリル樹脂などからなる。パイプ10の内径は、マスクパターン15が内壁に形成される場合には、感光性物質が表面で固化しているステント材100の外径とほぼ同じとするとよい。これは、後述する露光処理を行っている際に、パイプ10とステント材100との位置ずれすることを防止して、正確なパターン転写を行うためである。したがって、パイプ10に対してステント材100を圧入等によって挿入できる程度とすればよい。
【0023】
マスクパターン15は、露光装置20(図2)によって照射される紫外光を選択的にステント材100に到達させるものであり、最終製品であるステントの開口パターンに対応するパターンとされる。マスクパターン15の形成方法は、特に限定されるものではなく、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ、真空蒸着など既知のメッキ法のいずれを採用してもよい。メッキによって形成する金属膜は、0.5μm~5.0μm程度の厚みとすればよく、その材料としてはニッケル、クロム、銅、アルミニウムなどを用いることができる。なお、マスクパターン15は、ポジ型、ネガ型のいずれであってもよい。
【0024】
また、マスクパターン15の形成は、パイプ100の内壁に対して行ってもよいし、外壁に対して行ってもよい。パイプ100が小径で、かつ、2cm~3cmのように短い場合には、パイプ100の内壁にマスクパターン15を形成することが可能である。この場合には、パイプ100とステント材100との距離がほぼゼロであるので、露光時の解像度を高くできる。一方、パイプ100が小径で、かつ、3cmを越えるような長さの場合には、パイプ100の内壁にマスクパターン15を形成することは困難であるので、パイプの外壁にマスクパターン15を形成することになろう。この場合には、露光装置20からの照射光を平行光に変更するレンズを設けることによって上記解像度を高くするとよい。
【0025】
図2は、本発明の実施形態のステント製造装置の模式的な構成図である。図2には、ステント材100が挿入されたパイプ10をその軸心を中心に回転させる回転装置30と、パイプ10の円筒面に向けて紫外光などを照射する露光装置20と、エッチング前にステント材100の内壁をシールするシール装置40と、露光装置20によって露光されたステント材100を現像する現像液が入れられた液槽50と、シール装置40によって内壁がシールされたステント材100が含浸されるエッチング液が入れられた液槽60とを示している。
【0026】
なお、図2に示す各部は、説明の理解容易を目的として描かれており、実際には、図示している寸法比とならない場合がある点に留意されたい。
【0027】
回転装置30は、図示しない内蔵モータに接続されている回転軸部32と、回転軸部32の先端に位置するパイプ受け部34とを備える。パイプ受け部34は、回転軸部32に対して着脱可能な構成としており、パイプ10のサイズに応じて選択可能としている。回転軸部32は、例えば、下記条件の露光装置20の場合には、1分間に1~2回転の速度で回転するように設定されている。したがって、回転軸部32の回転速度は、露光条件に応じて決定すればよい。なお、大型のステント材100を用いる場合には、これに伴ってパイプ10も大型化するので、回転装置30は、図2に示すようにパイプ10の一端のみに接続するのではなく、その両端に接続するようにしてもよい。
【0028】
露光装置20は、360nm~440nm(例えば、390nm)程度の波長で、出力が150W程度の紫外光を照射するものである。具体的には、これに限定されるものではないが、露光装置20は、キセノンランプ、高圧水銀灯などを用いることができる。露光装置20は、ここでは1台のみ設けている例を示しているが、複数台設けることによって露光時間の短縮化を図ることも可能である。なお、露光装置20とパイプ10との距離は、上記の紫外光の照射条件のものであれば、20cm~50cm程度の間隔とすればよい。
【0029】
シール装置40は、ステント材100の内表面を、ヨウ化銀、臭化銀、アクリルなどの感光性物質でシールするものである。なお、シールを行うタイミングは、ステント材100をエッチングする前であればよく、例えば、パイプ10に挿入する前のステント材100に対して行ってもよいし、露光装置20による露光処理後のステント材100に対して行ってもよいし、現像後のステント材100に対して行ってもよい。もっとも、プリベーク処理が一度で済むように、パイプ10に挿入する前のステント材100の外表面に感光性物質の塗布等を行うタイミングで、ステント材100の内表面にもシールをするとよい。シール装置40は、ステント材100の内表面をシールできるものであれば、どのようなものでよく、例えば、ステント材100の内表面にシール剤を注入可能なスポイトであってもよいし、側部に複数の穴が形成された針でもよいし、ステント材100の内表面にシール剤を圧入する(又は引く)ことで注入できればよい。
【0030】
液槽50は、露光装置20を用いて露光処理がなされたステント材100から余計な感光性材料を除去するための現像液が入れられている。現像液は、感光性材料に応じて選択すればよいが、有機アルカリであるTMAH(tetra-methyl-ammonium-hydroxyde)の2.38wt%水溶液を用いることができる。
【0031】
液槽60は、露光装置20によって露光されたステント材100に対して、現像処理を施してから所望のリンス処理をした後にエッチングするためのエッチング液が入れられている。エッチング液は、ステント材100の素材に応じて選択すればよいが、一般的には、既知のように、リン酸、硫酸、塩化鉄、シアン化カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩酸、硝酸などのいずれかを少なくとも含む液体が選択される。
【0032】
つぎに、ステント製造方法について説明する。まず、ステントに形成しようとしている開口パターンに対応するマスクパターン15が、たとえば内壁に形成されているパイプ10を用意する。パイプ10は、既述のように、石英ガラスなどからなる。
【0033】
また、ステント材100の内表面に、シール装置40を用いて感光性材料を注入し、また、ステント材100の外表面にも感光性材料を塗布等する。その後、ステント材100を100℃~400℃程度の温度でプリベーク処理する。こうして感光性材料が固化されたステント材100を、パイプ10内に挿入する。
【0034】
つづいて、パイプ10を回転装置30のパイプ受け部34に取り付け、回転装置30の内蔵モータを駆動する。これにより、パイプ10をその軸心を中心として回転させる。つぎに、露光装置20をオンすることで、ステント材100が挿入されているパイプ10を回転させながら露光する。
【0035】
その後、パイプ10からステント材100を取り出して、現像液が入れられている液槽50に、数十秒(例えば20秒)ほど含浸させる。こうして、ステント材100から余計な感光性材料を除去する。それから、既知のように、ステント材100に対してリンス処理を行ってから、ステント材100をエッチング液が入れられている液槽60に含浸させる。含浸時間は、ステント材100の材料、厚さなどに応じて決定すればよい。
【0036】
以上の工程により、所望の開口が形成されたステントを製造することができる。なお、必要に応じて、ステントの開口端を丸めるなどの処理を行えばよい。
【0037】
図3は、図2のステント製造装置の変形例の説明図である。図3には、パイプ10と露光装置20a~20hとを示している。なお、図3は、図2のパイプ10の軸心方向から見た図となる。図2では1台の露光装置20のみによって露光をする例を示しているが、ここではパイプ10の円筒面を例えば8台の露光装置20a~20hによって囲む状態を示している。
【0038】
このように、パイプ10を複数の露光装置20a~20hによって露光すると、回転装置30を設けてパイプ10を回転させなくても、パイプ10の円筒面を漏れなく露光することが可能となる。このため、図3に示す例の場合には、回転装置30の設置が必要なくなるという利点がある。
【0039】
以上のように、本実施形態は、ステント製造装置及びステント製造方法について例示したが、ステント以外の筒状体にも本発明を適用することができる。筒状体の例としては、例えば、医療分野では、コアワイヤー、内視鏡用ケーブルなどにも適用することができ、それ以外の分野では、産業用のスプリングなど、エッチング処理を行う筒状体であれば適用することができる。
【0040】
本発明は、当業者であれば理解できるように、筒状体に対してパターン形成するために用いられるパイプ10と、パイプ10の周辺に位置するいくつかの光源であるところの露光装置20とによる、露光システムとすることができ、さらに、この露光システムと、露光装置20によって露光したパイプ10内の筒状体を現像する現像装置(液槽50)と、シール装置40によって内壁がシールされた筒状体をエッチングするエッチング装置(液槽60)とを備えるエッチングシステムとすることができる。そして、これらを用いることによって、筒状体の露光方法及びエッチング方法を実現することができる。
図1
図2
図3