(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】超解像撮像
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20220111BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220111BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G02B21/06
G01N21/64 E
G01N21/64 G
G01N21/03 Z
(21)【出願番号】P 2019505295
(86)(22)【出願日】2017-04-12
(86)【国際出願番号】 GB2017051034
(87)【国際公開番号】W WO2017178823
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-09
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517054888
【氏名又は名称】ウニベルシテテット イ トロムソ-ノルゲス アークティスク ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アルワリア、 バルプリート シン
(72)【発明者】
【氏名】シュットペルツ、 マルク
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/006006(WO,A1)
【文献】特表2013-524174(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155628(WO,A1)
【文献】特表2002-542479(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102928384(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0104680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0110839(US,A1)
【文献】特表2014-525592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/74
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の超解像
蛍光顕微鏡法撮像のための装置であって、
前方視野を有し、前記前方視野内の前記試料から発出する光を集光するように構成された対物レンズと、
前記集光した光によって前記試料の超解像
蛍光顕微鏡法撮像を実行するように構成された処理構成と、
前記対物レンズの前方に位置する導波路部品であって、(i)前記
前方視野の外側からの入力光を受光し、(ii)前記試料に励起光を向けるために前記導波路部品内の内部全反射を用いるように構成された導波路部品と
、
第1の波長を有する入力光に、前記試料を第1の励起パターンで照射するように、第1の時間に、前記導波路部品内の第1の光学モードに対応する第1の光経路を辿らせ、
前記第1の波長を有する入力光に、前記試料を前記第1の励起パターンとは異なる第2の励起パターンで照射するように、前記第1の時間とは異なる第2の時間に、前記導波路部品内の前記第1の光学モードとは異なる第2の光学モードに対応する第2の光経路を辿らせるように構成された電子光経路制御システムと
を備える装置。
【請求項2】
前記第1の時間および前記第2の時間は、前記超解像
撮像の第1のフレームに関する露光期間内であ
り、前記装置は、前記第1のフレーム間において、前記第1の励起パターン単独で照射した場合よりも、前記試料のより均一な平均励起を提供するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の時間は、前記超解像
撮像の第1のフレームに関する露光期間内であり、前記第2の時間は、前記第1の時間とは異なる前記超解像
撮像の第2のフレームに関する露光期間内である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記導波路部品に入力光を注入するように構成された光注入デバイスを更に備え、前記
電子光経路制御システムは、前記第1の時間と前記第2の時間との間で前記入力光が前記導波路部品に入る位置または角度を変更するために、前記導波路部品に対して前記光注入デバイスを動かすように構成されたアクチュエータを備える、請求項1~
3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記
電子光経路制御システムは、前記第1の時間に第1の値を有し、前記第2の時間に前記第1の値とは異なる第2の値を有するように、前記入力光の偏光
または位
相を変更するための構成を備える、請求項1~
4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記超解像撮像は、単一分子局在化法を備える、請求項1~
5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記超解像撮像は、変動光場ベースの超解像法を備える、請求項1~
5のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記導波路部品はリブ導波路構造又はストリップ導波路構造を備える、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記導波路部品は、第1のコア領域および前記第1のコア領域と接する第1のクラッド領域を備え、前記第1のコア領域は前記第1のクラッド領域よりも高い屈折率を有し、1または複数の光経路に沿って前記導波路部品を通るように光を導くように構成され、前記第1のクラッド領域は、前記試料を保持するための試料ウェルを画定するように形作られる、請求項1~
8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記導波路部品は、基板上にモノリシックに一体化された導波路構造を備える、請求項1~
9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記導波路部品は、第1のコア領域を備え、前記第1の光経路及び前記第2の光経路は前記第1のコア領域内の異なる経路である、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
対物レンズの前方視野内に少なくとも部分的に位置する試料の超解像
蛍光顕微鏡法撮像を実行するための方法であって、
前記
前方視野の外側から前記対物レンズの前方に位置する導波路部品内への入力光を受光することと、
前記試料を第1の励起パターンで照射するように、第1の時間に、前記導波路部品内の第1の光学モードに対応する第1の光経路を辿るように
第1の波長を有する入力光を向けることと、
前記試料を前記第1の励起パターンとは異なる第2の励起パターンで照射するように、前記第1の時間とは異なる第2の時間に、前記導波路部品内の前記第1の光学モードとは異なる第2の光学モードに対応する第2の光経路を辿るように前記
第1の波長を有する入力光を向けることと、
前記試料に励起光を向けるために前記導波路部品内の内部全反射を用いることと、
前記対物レンズによって前記試料からの
蛍光光を集光することと、
前記集光した光によって超解像
蛍光顕微鏡法画像を生成することと
を備える方法。
【請求項13】
前記第1の時間および前記第2の時間は、前記超解像画像の第1のフレームに関する露光期間内であ
り、前記第1の励起パターンと第2の励起パターンは、前記第1のフレーム間において、前記第1の励起パターン単独で照射した場合よりも、前記試料のより均一な平均励起を提供する、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の時間は、前記超解像画像の第1のフレームに関する露光期間内であり、前記第2の時間は、前記第1のフレームとは異なる前記超解像画像の第2のフレームに関する露光期間内である、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
単一分子局在化法を用いて前記超解像画像を生成することを備える、請求項
12~
14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
変動光場ベースの超解像法を用いて前記超解像画像を生成することを備える、請求項
12~
14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第1の波長を有する入力光を、前記導波路部品のリブ導波路構造又はストリップ導波路構造に沿って向ける、請求項12~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記導波路部品からの励起光を前記試料に向けることは、エバネッセント場から成る励起光のみを前記試料に向けることを備える、請求項
12~
17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記導波路部品内に画定された試料ウェル内に試料を保持することを更に備える、請求項
12~
18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記導波路部品からの励起光を前記試料に向けることは、前記導波路部品の端面から前記試料に励起光を向けることを備える、請求項
12~
19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の超解像撮像を実行するための装置および方法に関する。限定ではないが具体的には、本発明は、試料の直接確率的光学再構築顕微鏡法(dSTORM)撮像を実行するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡は、組織学、細胞生物学、およびその関連分野において、たとえば細胞などの生体試料を観察するために用いられる。しかし、光学顕微鏡の解像力は、光の回析限界によって制限される。この制限により、可視光顕微鏡の解像度は約200~300nmに限られる。この制限を克服するために、当該技術において、「ナノスコピー」、「超解像撮像」、または「超解像顕微鏡法」と称されるいくつかの技術が開発されてきた。
【0003】
これらの超解像撮像技術は、約20~50nmに至る解像度による生体試料の撮像を可能にする。これらは、生体試料に添付され、または埋め込まれた、光切替え蛍光体または量子ドットマーカから放出された光を処理することに基づく。そのような超解像技術の既知の例は、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)、直接確率的光学再構築顕微鏡法(dSTORM)、光活性化局在顕微鏡法(PALM)、超解像光変動撮像(SOFI)、およびエントロピーベース超解像撮像(ESI)を含む。
【0004】
図1は、たとえばdSTORM撮像などの超解像撮像のための典型的な従来技術構成を示す。この構成は、第1のレーザ光源140、第2の光源145、第1のビームスプリッタ160、第2のビームスプリッタ150、関連波長において約250nmの解像度を有する対物レンズ110(たとえばhigh-NA 60x対物レンズ)、試料170、およびCCDまたはsCMOS検出器190を備える。この構成は、第1のレーザ光源140からの光を第1のビームスプリッタ160へ向け、第2のレーザ光源145からの光を第1のビームスプリッタ160へ向けるための手段も含む。第1のビームスプリッタ160は、第1および第2のレーザ光源140、145から受光したレーザ光を結合して励起光130を形成し、励起光130を第2のビームスプリッタ150へ向ける。第2のビームスプリッタ150は、励起光130を対物レンズ110に向ける。
【0005】
試料における特定の関心領域を撮像するために、励起光は、その領域内の蛍光体を励起するように試料170の関心領域に向けられる。dSTORMを実行する場合、当業者には既知であるように、2つの異なる波長が用いられ得る。試料領域内の蛍光体が発光すると、その光は、関心領域の画像を生成するために集光され処理される。これは、励起光130が関心領域に向けられ、関心領域から発出する光が集光され得るように、試料170における関心領域に対物レンズ110の焦点を合わせることによって実現される。第2のビームスプリッタ150は、励起光170から集光した光120を濾過し、集光した光120をCCD検出器190に向けるように機能する。当然、更なる濾過が実行されてもよい。コンピュータ(不図示)は、CCD検出器190からデータを受信し、ガウシアンフィット(または他の既知の方法)によって蛍光体の位置を決定するために、対物レンズの250nmの解像度を超える精度までデータを処理する。
【0006】
現在超解像撮像のために一般的に用いられる装置に関する問題は、装置が高価かつ大きく、設置および操作が不便であり得ることである。
【0007】
超解像撮像構成は一般に、エバネッセント場(全内部反射蛍光発光)または高傾斜光学積層シート(HILO)のいずれかによって試料を照明するために高開口率(NA)の対物レンズを用いる。
【0008】
しかし、高開口率(NA)のレンズは高価である。またこれらは、蛍光が試料から集光され得る場を制限する限られた視野(FOV)を有する。この限られた視野は、一般的な生体試料、たとえば大きな細胞培養物および群体または組織のサイズよりも小さい、約50~250nmのサイズである。これは、生体試料全体の全体副解像画像を取得するために、撮像中、試料に対して顕微鏡を再配置および再調整する必要があることを意味する。これは特に、生細胞培養物を撮像する際、細胞培養物の第2の部分が視野外にある場合、細胞培養物の第1の部分および細胞培養物の第2の部分に関する動きを同時に撮像することが不可能であるため、問題である。また、取得した副解像画像をつなぎ合わせ、生体試料全体の全体副解像画像を形成するためには、複雑な画像処理が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、これらの欠点に様々に対処する超解像撮像を実行するための装置および方法を提供することである。
【0010】
第1の態様によると、本発明は、試料の超解像撮像のための装置を提供し、装置は、
前方視野を有し、前方視野内の試料から発出する光を集光するように構成された対物レンズと、
集光した光によって試料の超解像撮像を実行するように構成された処理構成と、
対物レンズの前方に位置し、(i)視野の外側からの入力光を受光し、(ii)励起光を試料に向けるために導波路内の内部全反射を用いるように構成された導波路部品と
を備える。
【0011】
第2の態様によると、本発明は、対物レンズの前方視野内に少なくとも部分的に位置する試料の超解像撮像を実行するための方法を提供し、方法は、
視野の外側から対物レンズの前方に位置する導波路部品内への入力光を受光することと、
励起光を試料に向けるために導波路部品内の内部全反射を用いることと、
対物レンズによって試料からの光を集光することと、
集光した光によって超解像撮像を実行することと
を備える。
【0012】
このように、当業者には分かるように、本発明によると、光は対物レンズによって供給されるのではなく、(内部全反射によって光を導く)導波路部品によって試料へ供給される。したがって対物レンズは、励起光を試料に供給し、かつ試料から放出された光を集光するために同じ対物レンズを必要とするのではなく、試料からの光を集光するために最適化され得る。
【0013】
超解像撮像用の試料を励起するために導波路を用いることは、超解像撮像において一般的に用いられるものよりも低い開口率の撮像対物レンズの使用が可能であり、試料のより広い視野および低い設備費をもたらすことを含む、数々の驚くべき利点を提供する。また、導波路部品は、たとえばビームスプリッタなど追加の部品を必要とせず試料に励起光を直接供給することができるので、従来の超解像機構に伴うアライメントの複雑性の大部分が回避される。
【0014】
導波路部品は好適には、好適には対物レンズの視野の外側に位置する、たとえばレーザなどの光源から入力光を受光する。導波路部品は、空気、またはたとえば導波路部品に結合された光ファイバケーブルなど他の何らかの媒体を介して入力光を受光してよい。入力光の波長は、たとえば複数の様々な波長間での時間的多重化によって、経時的に変化してよい。入力光は好適には対物レンズを通過しない。また励起光も好適には対物レンズを通過しない。対物レンズは好適には、0.4よりも大きく、かつ好適には1.49未満の開口率を有する。
【0015】
対物レンズは好適には、導波路を介した光経路の方向と非平行な光軸を有する。いくつかの実施形態において、対物レンズの光軸は、導波路を介した光経路の方向または導波路の平面層に対してほぼ垂直である。
【0016】
任意の適切な超解像撮像技術が実行され得る。超解像撮像は好適には、集光された光における少なくとも1つの波長に関して、その波長における対物レンズの解像度よりも撮像解像度が細かくなるものである。対物レンズの解像度は当然、レンズの回析限界によって制限される。集光された光は好適には、試料によって放出された蛍光を備え、超解像撮像は好適には蛍光顕微鏡法である。超解像撮像は、単一分子局在化法、または変動光場ベース超解像技術を備えてよい。超解像撮像は、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)、直接確率的光学再構築顕微鏡法(dSTORM)、光活性化局在顕微鏡法(PALM)、超解像光変動撮像(SOFI)、およびエントロピーベース超解像撮像(ESI)から成るグループから選択され得る。好適な実施形態のセットは、dSTORMを用いる。
【0017】
導波路部品は、任意の適切な形式であってよい。いくつかの実施形態において、導波路部品は、1または複数の平面層を備える。導波路部品は、スラブ導波路構造、リブ導波路構造、ストリップ導波路構造、またはマルチコア励起導波路構造を備えてよい。好適な実施形態のセットにおいて、導波路は、平面基板であってよい基板上にモノリシックに一体化された導波路構造を備える。基板はシリコンであってよい。基板は好適には、たとえば160~170マイクロメートルなど、200マイクロメートル未満の最大厚さを有する。いくつかの実施形態において、基板は、基板を通して試料からの光を集光することが可能であるために透明であってよい。
【0018】
導波路部品は好適には、少なくとも部分的に対物レンズの視野内にある出力面から励起光を出力するように構成される。出力面は好適には平面である。出力面は、(たとえばエバネッセント場として励起光を試料に向ける場合)導波路部品内で光が辿る経路の方向に平行であってよく、あるいは、(たとえばビームまたはシートとして出力面から試料に励起光を向ける場合)導波路部品内で光が辿る経路の方向に対し傾斜して(好適には垂直であって)よい。
【0019】
導波路部品は、少なくとも1次元において試料に向かう方向に拡大する幅を有する光経路に沿って入力光を試料の方へ導くように構成され得る。これは、エバネッセント場によって間接的にまたは直接的に、試料のより大きな面積を励起光で照明するために役立ち得る。この幅は好適には、(特定の超解像撮像技術のために有用であり得る)導波路の単一モード条件が維持され得るように、断熱的に拡大する。
【0020】
実施形態の1セットにおいて、導波路部品は、エバネッセント場から成る励起光のみを試料に向けるように構成される。試料は好適には、導波路部品と接する。導波路部品は、第1のコア領域および第1のコア領域と接する第1のクラッド領域を備えてよく、第1のコア領域は、第1のクラッド領域よりも高い屈折率を有し、導波路を通る第1のコア光経路を画定するように構成され、第1のクラッド領域は、試料を保持するための試料ウェルを画定するように形作られる。
【0021】
試料ウェルは、1または複数の壁、具体的には4つの平面側壁を備えてよい。試料ウェルは、たとえばBSA(ウシ血清アルブミン)、PEG(ポリエチレングリコール)、またはPLL(ポリエルリジン)分子を備える生体適合層でコーティングされ得る。
【0022】
他の実施形態のセットにおいて、導波路部品は、導波路部品の端面から励起光を出力するように構成される。試料は端面と接してよく、または端面と試料との間に、たとえばエアギャップおよび/またはセルバッファ溶液(たとえばリン酸緩衝生理食塩水、PBS)などの媒体があってよい。ここでも導波路部品は、試料を保持するための試料ウェルを画定してよい。この試料ウェルは、1または複数の側壁を備えてよい。これらの側壁の少なくとも1つは、少なくとも1つの導波層を備えてよい。端面は、試料ウェルの1つの側壁の少なくとも一部を形成してよい。したがって、受容された試料は、好適には対物レンズの光軸に垂直である横方向に照明され得る。端面は、たとえばBSA(ウシ血清アルブミン)、PEG(ポリエチレングリコール)、またはPLL(ポリエルリジン)分子を備える生体適合層でコーティングされ得る。
【0023】
そのような構成は、たとえば試料内の1マイクロメートルよりも深くで、試料の表面領域を越えて蛍光体が励起されることを有利に可能にする。
【0024】
またそのような構成は、所与のレーザ光に関して、励起パワーが比較的低い、一般的には総入力光パワーの約10%未満である既知のエバネッセント場ベースの照明技術と比べて、蛍光体が比較的高パワーで効率的に励起されることも可能にする。
【0025】
端面からの励起光は、好適には光シートの形状である。光シートは好適には、対物レンズの前方視野の主方向に対し好適には垂直である横平面において試料と交差する。光シートを好適に生成することによって、試料の断面全体が照明され得る。また光は、対物レンズの光軸に対し平行を超えた横平面において発散するビームとして、あるいは均一な発散を有するビームとして形成されてもよい。
【0026】
端面から発出する光ビームまたは光シートの厚さは、好適には500、1000、または2000ナノメートル未満である。これを可能にするために、導波層は、透明材料の光透過薄膜として設けられ得る。この薄膜は、1マイクロメートル未満の厚さを有してよい。
【0027】
端面は、試料を載置可能な表面エリアの側方に位置してよい。
【0028】
端面からの励起光の発散は、少なくとも対物レンズの光軸に平行な平面において制御され得る。好適には、少なくともこの平面において、発散は、好適には平面である端面の形状および断面による自然発散よりも小さくなるように制御される。そのような制御は、端面自体によって、または端面に近接した導波層エリアによってもたらされ得る。
【0029】
またビームは、好適には光軸上にある試料内の焦点または線焦点に向かって収束してよい。光軸の方向に平行な平面における収束および光軸を横断する発散は、同時に確立され得る。
【0030】
導波路部品は、励起光を集中させるように構成されたレンチキュラレンズ、静的回析格子、または音響回析格子を備えてよい。これによって、試料のどの部分が励起されるかをより詳細に制御することができる。同じ理由により、導波路部品は、励起光を集中させるためのレンズを形成するように少なくとも1次元において先細りである光経路に沿って入力光を試料の方へ導くように構成され得る。レンズはアキシコンレンズであってよい。アキシコンレンズは、中央コアが薄く特定の距離に関して非回析性であるプセウドベッセルビームを生成するために用いられ得る。先細りは回転対称、たとえば円錐状であってよいが、好適にはウエッジ形またはピラミッド形であり、そのような形状はたとえばリソグラフィを用いて製造することが容易であり得るためである。レンズは好適には、出力面に位置する。
【0031】
既知の超解像技術に伴う欠点は、試料の1つの小領域しか励起され、撮像されることができない点である。本発明の実施形態における導波路部品は、
第1のコア領域および第1のコア領域と接する第1のクラッド領域であって、第1のコア領域が第1のクラッド領域よりも高い屈折率を有し、導波路部品を通る第1のコア光経路を画定するように構成された、第1のコア領域および第1のクラッド領域と、
第2のコア領域および第2のコア領域と接する第2のクラッド領域であって、第1のコア領域が第2のクラッド領域よりも高い屈折率を有し、導波路部品を通る第2のコア光経路を画定するように構成された、第2のコア領域および第2のクラッド領域と
を備えてよく、第1のコア領域は、試料の第1の領域に励起光を向けるように構成され、第2のコア領域は、試料の第1の領域とは異なる第2の領域に励起光を向けるように構成される。
【0032】
このように、それぞれの領域における蛍光体を選択的に励起することによって、試料は、複数の領域(たとえば試料を通る平行スライス)において撮像され得る。導波路部品は当然、3つ、4つ、またはそれより多くの異なる試料領域に光を向けることができるように更に多くのコアおよびクラッド領域を備えてよい。したがって、処理構成が、試料の3次元(3D)モデルを生成することが可能になり得る。
【0033】
導波路部品は、試料を保持するためのウェルまたは他の保持構成を備えてよい。
【0034】
装置は、第1の時間に、入力光に導波路部品内の第1の光経路を辿らせ、第1の時間とは異なる第2の時間に、第1の光経路とは異なる導波路部品内の第2の光経路を辿らせるように構成された電子光経路制御システムを備えてよい。好適には、入力光は、第2の時間に第1の光経路を辿ることはない。好適には、入力光は、第1の時間に第2の光経路を辿ることはない。マルチコア実施形態において、これらの第1および第2の光経路は、それぞれ第1のコア光経路および第2のコア光経路に対応してよく、あるいは、これらは単一コア内の異なる経路であってもよい。第1の時間および第2の時間は、(たとえばSTORMまたはdSTORMなどの単一分子局在化技術を用いる場合)いずれも単一フレーム露光期間内、すなわち、単一フレームに関する露光時間内であってよい。あるいは、(たとえばESIまたはSOFIなどの変動光場ベースの技術を用いる場合)第1の時間は第1のフレームに関する露光期間内であってよく、第2の時間は、第1のフレームとは異なる第2のフレームに関する露光期間内であってよい。これは、第1および第2の光経路が導波路部品内の異なるそれぞれの光学モードに対応し得るため、エバネッセント場によって試料を励起するように構成された実施形態において特に有利であることが分かっている。したがってエバネッセント場のパターンは、光学モード間で異なる。1つの単一フレーム露光期間内で複数のそのようなパターンを生成することによって、全体を通して1つのモードのみを用いることに比べ、単一分子局在化技術を用いる場合に露光期間にわたって試料のより均一な平均励起が実現され得る。単一フレーム露光期間にわたって試料が均一に励起されなかった場合、その結果生じる超解像画像は、重要な細部が欠損し、またはストライプパターンなどのアーチファクトを含むことがある。あるいは、異なるそれぞれのフレームの露光期間において様々なパターンを生成することによって、変動光場ベース超解像技術に用いるために適した照明の変動が実現され得る。この場合、各パターン(モード)は好適には、所与の単一フレーム露光期間中、一定である。
【0035】
処理構成は好適には、約1、5、10、100、1000、または10,000ミリ秒の持続期間を有する露光期間にわたって集光された光を用いて1フレームを生成するように構成される。フレームは、当業者には周知であるように、処理構成のメモリに(たとえばアレイとして)格納され得る。
【0036】
処理構成は好適には、たとえば100、1000、10,000、またはそれ以上など複数のフレームを生成し、これらを用いて、1または複数の超解像出力画像またはアニメーションを(たとえば上述したような従来の超解像技術を用いて)生成するように構成される。そのような出力画像またはアニメーションは、メモリに格納され、および/またはたとえばコンピュータモニタなどのディスプレイに表示され得る。好適には、フレームは全て同じ持続期間の露光期間を有する。
【0037】
処理構成は、たとえばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ASIC、FPGA、DSP、メモリ、およびソフトウェア命令を含むメモリのいずれか1つまたは複数など、任意の適切な処理手段を備えてよい。処理構成は、たとえばデスクトップPCなどのローカルデバイス、またはたとえばサーバなどの遠隔デバイスを備えてよく、あるいはたとえばサーバのクラウドを備えるなど分散されてもよい。更なる態様によると、本発明は、たとえば光源を制御すること、および/または光注入デバイスを制御すること、および/または試料から集光された光を用いて超解像画像を生成することを含む、本明明細書で説明されたステップのいずれかを実行するように処理構成に命令するための命令を備えるソフトウェアおよびソフトウェア担持有形媒体を備える。
【0038】
光経路制御システムは、入力光に、単一フレームに関する露光期間内で複数回、たとえば2回、10回、100回、またはそれ以上、第1および第2の光経路(および任意選択的に追加の光経路)間を循環させるように構成され得る。これは特定の超解像技術を用いる際に有益であり、たとえばdSTORMオンチップ実験において、単一画像フレーム内で複数のモードが励起されることを可能にする。変動光場ベース超解像技術の場合は、画像フレームごとに1つのモードを有することが好適であり得る。
【0039】
装置は、たとえば光ファイバケーブル、レンズ、またはミラーなど、導波路部品へ光を注入するように構成された光注入デバイスを備えてよい。光注入デバイスは、処理構成によって制御され得る。光経路制御システムは、単一フレーム露光期間中に、または1つの単一フレーム露光期間と次の単一フレーム露光期間とで、注入光が(たとえば導波路部品の端面において)導波路部品へ入る位置または角度を変更するために、光注入デバイスを導波路部品に対して動かすように構成されたアクチュエータを備えてよい。レンズ部分または対物レンズ全体を動かすことにより、時間によって様々な平行オフセット、様々な入射角、または様々な焦点位置がもたらされ得る。アクチュエータは、光注入デバイスに結合され得る、たとえば振動圧電ステージなどの圧電アクチュエータまたは振動モータを備えてよい。アクチュエータは、導波路部品内への光を結合するために機能する、たとえば導波路の上面、底面、または側面において入力光の伝搬方向に平行な平面に伸長し得る音響光学回析格子を備えてよく、変調信号の周波数を変更することによって、様々な回析格子および様々な偏向が生成され、導波路部品の入口面に対して入力光ビームが動かされ得る。
【0040】
光経路制御システムは、単一フレーム露光期間中に、または1つの単一フレーム露光期間と次の単一フレーム露光期間とで、入力光の偏光、位相、または波長の1または複数を変更するための構成を備えてよい。これはたとえば、様々な光経路の長さを提供するために異なる位置で異なる厚さを有する、たとえば回転ディスクまたは可動スラブなどの回転偏光子または位相変更デバイスを備えてよい。光経路制御システムは、単一フレーム露光期間中に、または1つの単一フレーム露光期間と次の単一フレーム露光期間とで、導波路部品内の温度を変更することによって導波路部品内の屈折率を変更するように構成された温度変更素子を備えてよい。
【0041】
出願人は、単一フレーム露光期間内でまたは単一フレーム露光期間ごとに入力光に変化を加える必要がない、エバネッセント場から様々な励起場を実現する他の方法も考案した。これは、導波路部品の第1の光学モードに対応する導波路部品を通る第1の光経路および導波路部品の第2の光学モードに対応する導波路部品を通る第2の光経路を同時に辿るように光を向け、第1および第2の光学モードを干渉させることによって実現される。この干渉は、撮像が行われる間にエバネッセント励起光の強度を変調させる。そのような照明は、たとえばSOFIおよびESIなどの変動照明ベース超解像分析に適することが分かっている。
【0042】
本明細書で説明された任意の態様または実施形態の特徴は、適当な場合、本明細書で説明された他の任意の態様または実施形態に適用されてよい。様々な実施形態または実施形態のセットが参照されたが、これらは必ずしも個別的ではなく重複し得ることを理解すべきである。
【0043】
以下、本発明の特定の好適な実施形態が、単に一例として添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】蛍光顕微鏡法を実行するための従来技術機構の略図である。
【
図2】本発明に係る蛍光顕微鏡法を実行するための機構の略図である。
【
図6a】全て本発明に係る3つの代替導波路構造の断面プロファイルである。
【
図6b】全て本発明に係る3つの代替導波路構造の断面プロファイルである。
【
図6c】全て本発明に係る3つの代替導波路構造の断面プロファイルである。
【
図7】本発明に係るマルチコア導波路部品の導波路端部における側面プロファイルである。
【
図8a】本発明に係る2つの導波路部品における異なる端面構成の平面図である。
【
図8b】本発明に係る2つの導波路部品における異なる端面構成の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図2は、蛍光顕微鏡法を実行するための装置を示し、装置は、導波路部品1を向いた前方視野30を有する、たとえばPlan N 20x/0.4オリンパス(登録商標)製対物レンズなどの対物レンズ4を含む。装置は、導波路部品1の入力面に光結合された光注入デバイス40、および導波路部品1に載置され対物レンズ4の前方視野30内にある試料2も含む。装置は、前方視野30内で対物レンズ4によって集光された光を受光し処理するように構成された処理構成20も含む。
【0046】
この例における試料は、蛍光体が埋め込まれた動物細胞であるが、当然、他の試料が用いられてもよい。
【0047】
光注入デバイス40は、導波路部品1に光を注入するための対物レンズ10、アクチュエータ12、および3つの光源8を備える。3つの光源からの3つの光ビームは、それぞれ405ナノメートル、488ナノメートル、および647ナノメートルの波長を有する。対物レンズ10は、3つの光ビームを受光し、導波路部品1に注入するために光ビームを集中させる。注入された光は、導波路のための入力光を形成する。1または複数の異なる波長を有する入力光は、たとえばdSTORMを用いて、試料2の単一分子局在化超解像撮像を可能にする。
【0048】
アクチュエータ12は、様々な位置および/または様々な角度で導波路部品1へ光を注入するために、対物レンズ10を導波路部品1に対して動かすことができる。導波路部品1へ光が注入される位置および/または角度を変更することによって、光注入デバイス40と導波路部品1との間の光結合を細かく調整することが可能である。またそれによって、画像処理中、光が様々な位置および/または角度で導波路部品へ注入され、注入光が導波路部品に沿って伝搬する光経路を変化させることができる。導波路部品内で注入光が伝搬する光経路は、導波路部品1の光学モードによって画定された光経路に対応する。
【0049】
図3および
図4に示すように、導波路部品1は、基板201に形成された導波路構造を備える。導波路構造の層は、上側クラッド層204と下側クラッド層202との間に挟まれた導光層203(本明細書において場合によってはコア層203と称される)を含む。下側クラッド層202は、コア層203の第1面208と基板201との間に構成される。上側クラッド層204は、コア層203の第1面208と反対側にあるコア層203の第2面209に構成される。コア層203は、クラッド層よりも高い屈折率を有し、導波路部品1へ注入される光を誘導する。
【0050】
この例において、導波路構造は、(
図3および
図6aに示すような)スラブ導波路であるが、後述するように、導波路部品は代わりに、(たとえば
図6bに示すような)リブ導波路構造、(たとえば
図6cに示すような)ストリップ導波路構造、または(たとえば
図7に示すような)マルチコア励起導波路構造を備えてもよい。
【0051】
図3、
図4、および
図6aのスラブ導波路構造は、好適にはシリコンまたは透明基板上に形成され、五酸化タンタルTa2O5または窒化シリコンSi3N4の薄いコア層(好適には500nm未満)203、二酸化シリコンSiO2の下側クラッド層202、および二酸化シリコンSiO2の上側クラッド層204を備える。上側および下側クラッド層は、バイオイメージングに用いられる試料媒体の屈折率と厳密に一致する屈折率(すなわちn=1.38)を有する材料で作られてもよい。
【0052】
導波路部品1に注入された光は導波路構造1に沿って伝搬し、注入光の一部は導波路コア領域の外側を伝搬する。この光の一部は、エバネッセント場として知られている。エバネッセント場における強度は、薄い導波路を作ることによって、およびコアとクラッドとの高い屈折率コントラストを用いることによって高められ得る。したがって、コアには高屈折率材料を用い、クラッドには(理想的には試料媒体と一致する)低屈折率材料を用いることが好適である。また、コアおよびクラッド材料は、低い吸収損失および低い自家蛍光を有するべきである。
【0053】
導波路部品1は、導波路構造において伝搬するエバネッセント場に重なるように試料206を保持するために作られたドックも含む。エバネッセント場との重なりは、注入光の少なくとも一部が、ドック内に収容された試料206に向けられることを確実にする。試料206に向けられた光は、本明細書において励起光と称される。励起光が試料206へ向けられる導波路構造の面は、本明細書において出力面と称される。
【0054】
スラブ導波路構造において、ドックは、エバネッセント場と重なる試料ウェル207を画定する間隙を上側クラッド層204に備える。試料ウェル207は、少なくとも部分的に導波路部品1の長さおよび幅に沿って伸長する。
【0055】
処理構成20は、たとえばCCDまたはsCMOSカメラなど試料から光を検出するための蛍光検出デバイス5、および蛍光検出デバイス5を制御し、既知の超解像撮像技術を用いて試料206の超解像画像を生成するために検出された光を処理するための電子制御ユニット6を含む。
【0056】
たとえば10ミリ秒続く超解像単一フレーム露光期間の開始時、アクチュエータ12は、光注入デバイス40を第1の光注入位置に配置する。第1の光注入位置において、光注入デバイスは、スラブ導波路構造内の第1の光経路(または光経路の第1のセット)を辿るように第1の入力光を導波路部品1へ注入する。第1の光経路(複数も可)を辿る注入光の少なくとも一部は、コア領域203の外側で第1のエバネッセント場として伝搬し、試料ウェル207内へ向けられる。試料ウェル207内へ向けられた第1のエバネッセント光は、第1の励起パターンを形成する。第1の励起パターンは、約1ミリ秒の期間、試料ウェル207内の試料206を照明する。
【0057】
超解像単一フレーム露光期間の開始から1ミリ秒後、アクチュエータ12は、光注入デバイス40を第2の光注入位置に配置する。第2の光注入位置において、光注入デバイスは、スラブ導波路構造内の第2の光経路(または光経路の第2のセット)を辿るように第2の入力光を導波路部品1へ注入する。第2の光経路(複数も可)を辿る注入光の少なくとも一部は、コア領域203の外側で第2のエバネッセント場として伝搬し、試料ウェル207内へ向けられる。試料ウェル207内へ向けられた第2のエバネッセント場は、第2の励起パターンを形成する。第2の励起パターンは、約1ミリ秒の期間、試料ウェル207内の試料206を照明する。
【0058】
超解像単一フレーム露光期間の開始から2ミリ秒後、アクチュエータ12は、光注入デバイス40を第3の光注入位置に配置する。第3の光注入位置において、光注入デバイスは、スラブ導波路構造内の第3の光経路(または光経路の第3のセット)を辿るように第3の入力光を導波路部品1へ注入する。第3の光経路(複数も可)を辿る注入光の少なくとも一部は、コア領域203の外側で第3のエバネッセント場として伝搬し、試料ウェル207内へ向けられる。試料ウェル207内へ向けられた第3のエバネッセント場は、第3の励起パターンを形成する。第3の励起パターンは、約1ミリ秒の期間、試料ウェル207内の試料206を照明する。
【0059】
アクチュエータ12はその後、光注入デバイス40を再び第1の光注入位置に配置し、このプロセスは、10ミリ秒間の露光期間が終了するまで循環する。
【0060】
試料206を照明する第1、第2、および第3の励起パターンは、試料内の蛍光体を刺激し、蛍光発光および発光させる。対物レンズ4は、単一フレーム露光期間全体を通して、蛍光体から放出された光を集光する。単一フレーム露光期間中に対物レンズ4によって集光された光は、蛍光検出デバイス5へ向けられる。蛍光検出デバイス5は、受光した光を電気信号として検出し、電気信号を電子制御ユニット6へ送信する。電子制御ユニット6は、試料の第1の画像を生成するために、dSTORM単一分子局在化法を用いて電気信号を処理する。
【0061】
電子制御ユニット6は、たとえばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ASIC、FPGA、DSP、メモリおよびソフトウェア命令を含むメモリの1または複数など、任意の適切な処理手段を備えてよく、たとえばデスクトップPCなどの単一デバイスを備えてよく、あるいはたとえば遠隔サーバまたはサーバのクラウドなどに分散されてもよい。
【0062】
dSTORM超解像撮像技術において、試料の第1の画像は、第1のフレームに対応する。第1のフレームが生成された後、装置は、試料の10,000ほどのフレームを更に生成する。後続フレームの各々において、次の単一フレーム露光期間ごとに試料は再び3つの励起パターンのサイクルによって照明され、以下同様である。
【0063】
電子制御ユニット6は、第1のフレームおよび後続フレームの各々をメモリに記録する。フレームの全てが捕捉された後、電子制御ユニット6は、既知のdSTORM超解像撮像技術を用いて、フレームの全てに基づいて試料の最終超解像画像を生成する。
【0064】
発明者は、単一フレーム露光期間中、試料206に対する励起光の重なりおよび方向を変更することにより、単一フレーム露光期間における励起光の優れた均一性がもたらされることを発見した。特に、発明者は、静的光経路と比べて、変化する光経路は、試料と重なる励起光の強度を平均化することを発見した。励起光の良好な均一性は、優れた解像度、少ないアーチファクト、鋭いコントラスト、および優れた強度色域を有する高品質の超解像画像をもたらす。場合によっては、導波路ベースの超解像撮像は、照明パターンが極めて不均一である(たとえば、視覚化される構造と同規模のストライプを有する)ことにより、この特徴なしでは完全に不可能なこともある。
【0065】
この例において、試料ウェル207と重なるコア層203の第2面209は出力面を形成し、そこから光が試料に向けられることが理解される。
【0066】
第1、第2、および第3の光経路(または経路のセット)は、導波路構造の様々な光学モードによって画定された様々な経路に対応してよい。たとえば、第1の光経路は、スラブ導波路構造の基本モードに対応してよく、第2の光経路は、スラブ導波路構造の1次モードに対応してよい。他の例として、光経路の第1のセットは、スラブ導波路構造のモードの第1のセット(たとえば基本モードおよび1次モード)に対応してよく、光経路の第2のセットは、スラブ導波路構造のモードの第2のセット(たとえば1次モードおよび2次モード)に対応してよい。
【0067】
図2は、たとえばdSTORMなどの蛍光顕微鏡法を実行するための機構を示す。導波路部品1は、対物レンズ4の視野内に位置する試料2を支持する。導波路部品1は導波路構造を形成し、そこへ光が注入される。注入光は、導波路構造に沿って全反射によって導かれ、注入光の少なくとも一部は、エバネッセント光場として伝搬する。導波路は、注入光の少なくとも一部を試料2に向ける。
【0068】
任意選択的に、導波路部品1に対する対物レンズ10の動きを制御するアクチュエータ12は、電子コントローラによって制御される。たとえばアクチュエータは、ソーラボ(登録商標)製のピエゾコントローラBPC303によって制御されるピエゾステージであってよい。
【0069】
あるいは、導波路部品1へ光を注入するために対物レンズ10を用いるのではなく、光注入デバイス40が、光ファイバ11によって導波路部品1へ光を注入してよい。たとえば光注入デバイス40は、各光源から光ビームを受光するように構成された光ファイバカプラ10、および光ファイバカプラ10と導波路部品1との間で光結合された光ファイバ11を備えてよい。光ファイバカプラは、光ファイバ11に沿って様々な光ビームを多重化し、導波路部品1内に光を集中させる。任意選択的に、この例において、光注入デバイス40は、光ファイバ11と接続されたアクチュエータ12を備えてよく、対物レンズ10と接続されたアクチュエータの構成と同様に、アクチュエータ12は、導波路部品1に対する光ファイバ11の位置および/または角度を動かしてよい。
【0070】
追加または代替として、導波路部品1は、導波路部品1に対する光注入デバイス40の位置を調整するためにアクチュエータ13に接続され得る。したがってこのアクチュエータは、本開示の例に従って単一フレーム露光期間中に導波路構造内の第1および/または第2の光経路を辿るように導波路部品1へ入力光を注入するために用いられ得る。アクチュエータ13はたとえば、振動圧電ステージであってよい。
【0071】
任意選択的に、光注入デバイス40は、たとえば単波長または調整可能波長光源など、任意の数の光源8または単一の光源8を備えてよい。各光源は、蛍光体の励起に適した光、たとえば可視スペクトル(400~800ナノメートル)または近赤外線(800~1500ナノメートル)を放出してよい。また、各光源は、たとえばソリッドステートレーザ、ファイバレーザ、またはダイオードレーザなどのレーザ光源であってよい。追加または代替として、各光源8は、LED光源または超解像顕微鏡法に適した他の任意の光源であってよい。
【0072】
追加または代替として、入力光は、単波長または多波長を有してよい。たとえば入力光は、647ナノメートルの光または488ナノメートルの光(蛍光撮像に関して最も一般的に用いられる2つの波長)を備えてよい。
【0073】
あるいは、光注入デバイスは、第1、第2、および第3の光経路(または光経路のセット)をそれぞれ辿るように第1、第2、および第3の入力光を導波路部品1へ同時に注入してよい。この例において、第1、第2、および第3の光経路は、導波路部品1における導波路構造の第1、第2、および第3の光学モードによって画定された光経路に対応する。第1、第2、および第3の光学モードの各々は互いに異なる。第1、第2、および第3の光学モードを導波路部品1に同時に伝搬することにより、第1、第2、および第3の光学モードは互いに干渉する。当該技術において、異なる伝搬モードの干渉は、モードビーティングとして知られている。第1、第2、および第3のモードのビーティングは、導波路部品1から試料に向けられる励起光を変調する。発明者は、このように励起光を変調することにより、時間変化する励起光に適合された超解像撮像技術に基づいて試料を撮像することが可能であることを発見した。
【0074】
任意選択的に、モードビーティングは、励起光を変調するために導波路構造内を伝搬する任意の数の光学モードによって実行され得る。たとえばモードビーティングは、導波路構造内を同時に伝搬する第1および第2の光学モードのみによって実行され得る。
【0075】
任意選択的に、超解像撮像は、蛍光体ではなく量子ドットを備える試料に実行され得る。この例において、試料に向けられる励起光は、量子ドットを刺激し、超解像撮像のための光を放出させる。
【0076】
任意選択的に、処理構成20は、たとえば対物レンズ4によって集光された光を濾過するためのバンドフィルタなど、1または複数のフィルタも含んでよい。たとえばフィルタは、励起光に対応する光を遮断し、蛍光体によって放出された光に対応する光を透過させるように構成され得る。
【0077】
図6a、
図6b、および
図6cは、考えられる3つの異なる導波路構造における層の断面図を示す。
【0078】
図6aは、
図3および
図4に関して上述したスラブ導波路構造200における層の断面図を、試料ウェル206から離れた領域において示す。
【0079】
図6bは、リブ導波路構造300を画定するように導波路構造の上側クラッド層204内にエッチングされたリッジを有することによって横方向の導光がもたらされる任意選択的変形例を示す。リブ導波路構造300において、リッジは、上側クラッド層204を通るがコア層203を通らないエッチング部分である。リブ導波路300構造における横方向の導光は、コア層203の外側へ向けられるエバネッセント場の強度を高める。その結果、スラブ導波路構造200と比べて、リブ導波路構造300内に画定された試料ウェル207と重なるエバネッセント場の強度が高くなることにより、試料206と相互作用する励起光の強度が高くなる。励起光の強度の増加は、より強い蛍光発光をもたらす。
【0080】
図6cは、ストリップ導波路構造400を画定するように導波路構造のコア層203を通って更にエッチングされたリッジを有することによって、試料206に向けられるエバネッセント場の強度の更なる増加がもたらされる追加の変形例を示す。ストリップ導波路構造400における横方向の導光は、コア層203の外側へ向けられるエバネッセント場の強度を高める。その結果、スラブ導波路構造200およびリブ導波路構造300と比べて、ストリップ導波路構造300内に画定された試料ウェル207に重なるエバネッセント場の強度が高くなることにより、試料206と相互作用する励起光の強度が高くなる。励起光の強度の増加は、より強い蛍光発光をもたらす。
【0081】
一般に、リブ導波路は、側壁の粗さの低減によって伝搬損失を低減する。またリブ導波路は、単一モード条件に対し(たとえば厚さおよび幅などの)導波路パラメータを拡大する。ただし、光はストリップ導波路内により強く閉じ込められ、より鋭い曲がり、折り返しを可能にし、導波路構造の設置面積を低減する。また、両方の導波路内で同様の誘導パワーの場合、ストリップ導波路はリブ導波路よりもエバネッセント場における高い強度を有する。更に、両方の導波路が単一モードにされていない限り、所与の導波路パラメータに関して通常、ストリップ導波路はリブ導波路よりも多い数のモードを支持する。撮像条件に依存して、スラブ、リブ、またはストリップ導波路ジオメトリのいずれかが用いられてよい。(バイオイメージングに用いられる可視波長に関して伝搬損失が著しく高まる場合に)エバネッセント場における高パワーが必要である場合、リブ導波路を用いることが好適であるが、変動光場ベースの撮像技術の場合は、より多い数のモードを支持することができるためにストリップ導波路が好適である。ただし、スラブ、リブ、またはストリップ導波路構造は全て、任意の超解像撮像技術に用いることができる。
【0082】
スラブ導波路構造200、リブ導波路構造300、およびストリップ導波路構造400の幅は、好適には1ミクロン~100ミクロンの範囲である。
【0083】
任意選択的に、リブまたはストリップ導波路構造は、上側クラッド層204に画定された試料ウェル207の幅を拡大するために長さ方向に広くなってよい。導波路構造の幅を拡大することは、導波路構造に沿って伝搬する光場の幅を広げ、試料206を保持するためのより大きな試料ウェル207を可能にする。より広い励起光場と結合したより大きな試料ウェル207は、より大きな試料面積が超解像撮像のために撮像されることを可能にする。
【0084】
図5a、
図5b、および
図5cは、リブ導波路構造300の上側クラッド層204に試料ウェル207が形成された3つの代替構成のそれぞれの平面図を示す。
図5aおよび
図5bにおいて、リブ導波路構造300の幅は、より大きな試料面積207を画定するために断熱的に拡大され、導波路構造に沿って伝搬する光場の幅を広げる。発明者は、導波路構造の幅を断熱的に拡大することにより、断熱領域450より前の領域に伝搬する光の光学モードプロファイルが維持され得ることを発見した。たとえば、断熱構造450は、断熱構造に至るまでの導波路構造に伝搬する光の基本モードプロファイルを維持する。
【0085】
任意選択的に、リブまたはストリップ導波路構造の幅は、
図5bの領域460に示すように、試料ウェル207領域の後、細くなってよい。
【0086】
スラブ導波路構造を備える導波路部品1は、標準的な半導体製造技術を用いて製造され得る。たとえばスラブ導波路構造は、第1に、シリコン基板にSiO2の下層202をスパッタリングすること、第2に、SiO2の下層202にTa2O5のコア層203をスパッタリングすること、その後第3に、コア層203にSiO2の上層204をスパッタリングすることによって製造され得る。試料ウェル207は、フォトリソグラフィおよびウェットエッチングを用いて上層204に間隙を画定することによって形成され得る。
【0087】
リブ導波路構造を備える導波路部品1は、リッジを画定するために上側クラッド層204をイオンビームミリングすることによって製造され得る。上側クラッド層204は、好適には、コア層203から200nm上の深さにエッチングされる。イオンビームミリングは、導波路の側壁の粗さを有利に低減することにより、導波路構造内での光伝搬損失を低減させる。
【0088】
任意選択的に、導波路構造および試料ウェル207は、導波路部品1の基板201上にモノリシックに一体化され得る。
【0089】
任意選択的に、導波路部品1は、複数の導波路構造を備えてよい。各導波路構造は、入力光を受光し、励起光を試料ウェル207内へ向けてよい。追加または代替として、導波路構造は複数の導波路構造を備えてよく、各導波路構造が入力光を受光し、複数の導波路構造の1または複数へ励起光を向けてよい。
【0090】
試料206を試料ウェル207内へ載置する前に、導波路部品1は、5%(v/v)のHellmanex(登録商標)(Sigma Aldrich(登録商標)製)に70℃で10分間導波路部品を浸すことによって洗浄され得る。その後、Hellmanex(登録商標)は、導波路部品を第1に脱イオン水に、第2にイソプロパノール(Sigma Aldrich(登録商標)製)に、第3に脱イオン水に浸すことによって除去され得る。
【0091】
試料ウェル207は、
図3に示すように導波路コア層203上に構成されたバイオ層205を含んでよい。バイオ層は、試料内の蛍光体と導波路コア層203との非特異的結合を防ぎ、BSAまたはPEGを備えてよい。またバイオ層205は、試料ウェル207内で直接試料を培養することを容易にする。バイオ層205は、好適であるが必須ではない。また、バイオ層の厚さは、エバネッセント場が試料ウェル207内の試料と重なることを確実にするように選択され、一般的には20nm未満である。
【0092】
任意選択的に、試料は、たとえばカバーガラスへの細胞付着のために用いられる既知のプロトコルなどの標準的プロトコルの後、導波路部品1の試料ウェル207内で直接作製され得る。
【0093】
ストリップ導波路構造400におけるリッジ410の側壁は、試料206を保持するためのドック207を画定してよい。すなわち、リッジの側壁は、試料ウェル207を画定してよい。この例において、試料206に向けられ試料ウェル207と重なるのは、リッジの側部においてコア層203の外側で伝搬するエバネッセント場である。試料ウェルをリッジの側壁に隣接して構成することは、本開示に係る、試料と相互作用するエバネッセント場の強度の増加による利益も得る。すなわち、導波路構造の側壁は、試料を支持することによって、試料を受け入れるための試料ウェル207を形成してよい。導波路部品は、試料を保持するための他の構造を含んでもよい。
【0094】
代替構成において、導波路構造の端面は、試料206を保持するためのドック207を画定する。すなわち、導波路構造の端面は、試料ウェル207を画定してよい。この例において、導波路部品1の端面から出て導波路部品1に沿って導かれる入力光は、試料206へ向けられる。試料ウェル207は、導波路構造を基板層まで、または基板層を貫通して終端とすることによって画定され得る。典型的に、導波路構造は、導波路構造をエッチングまたは割断することによって終端とされ得る。
【0095】
図7は、端面照明構成の例を示す。導波路部品1は、基板201上に形成されたマルチコア導波路構造、および導波路構造の端面250によって画定された試料ウェル207を備える。導波路構造の端面250は、試料ウェル207の壁部を画定し、試料206が支持され得る支持台を提供する。
【0096】
マルチコア導波路構造の層は、第1の導光層203aおよび第2の導光層203b(または第1のコア層203aおよび第2のコア層203b)を含む。第1のコア層203aは、上側クラッド層204と下側クラッド層202との間に挟まれる。下側クラッド層204は、基板201と第1のコア層203aとの間に構成される。第2のコア層203bは、上側クラッド層204と上面クラッド層214との間に挟まれる。第1のコア層203aは、上側クラッド層204および下側クラッド層202よりも高い屈折率を有する。第2のコア層203bは、上側クラッド層204および上面クラッド層214よりも高い屈折率を有する。
【0097】
試料ウェルおよび端面は、マルチコア導波路構造において基板層201までエッチングされた間隙によって形成され、それによって入力光は、コアの各々から、導波路構造の外かつ自由空間内へ、または試料内へ導かれ得る。
【0098】
超解像撮像中の第1の時間に、アクチュエータ12は、光注入デバイス40を第1の光注入位置に配置する。第1の光注入位置において、光注入デバイスは、マルチコア導波路構造の第1のコア203aを通るように入力光を導くために導波路部品1へ入力光を注入する。第1のコア層203aは、試料ウェル207の第1の領域を通るように第1の高さにおいて注入光を導波路構造から外に向ける。
【0099】
超解像撮像中の第1の時間の後の第2の時間に、アクチュエータ12は、光注入デバイス40を第2の光注入位置に配置する。第1の光注入位置において、光注入デバイスは、マルチコア導波路構造の第2のコア203bを通るように入力光を導くために導波路部品1へ入力光を注入する。第2のコア層203bは、試料ウェル207の第2の領域を通るように第2の高さにおいて注入光を導波路構造から外に向ける。第2の高さは、第1のコア領域203aに対する第2のコア層203bの位置によって定められる。試料ウェル207を通る第1の領域510は、励起光が向けられない分離領域によって第2の領域520から分離される。
【0100】
導波路構造から外に向けられた光は、試料内の蛍光体を刺激し、蛍光発光および発光させる。実質的に試料の第1の領域510における蛍光体のみが、203aの第1のコア層から発出する励起光によって刺激される。同様に、実質的に試料の第2の領域520における蛍光体のみが、203bの第2のコア層から発出する励起光によって刺激される。試料206において励起される体積は基本的に、導波路構造の端面250から発出する励起光の体積に限定される。
【0101】
放出光は集光され、
図2に関して説明したように超解像撮像を提供するために処理される。試料ウェルの様々な領域を通るように励起光を向けることにより、マルチコア構造は、試料ウェル207内の試料206の様々な領域が励起光によって刺激されることを有利に可能にする。特に、マルチコア導波路は、試料内の様々な高さに位置する蛍光体が刺激され、それによって試料の様々な深さから発光することを可能にする。試料の様々な深さからの放出光を集光することにより、様々な試料深さにおける超解像撮像が可能である。(理解されるように、本明細書における高さ、深さ、幅などへの言及は、文脈が指示しない限り、装置が特定の方向で動作するように限定するものとして理解すべきではない。)
【0102】
要するに、この例において、端面250自体が試料ウェル207の側壁の一部であり、試料206と接触している。たとえば、光は、適切な結合技術を用いて、たとえば端面250と反対側の入射面において結合される光を集中させる対物レンズによって、
図6の左側からそれぞれの導波層内へ結合される。
【0103】
試料206に向けられた励起光が導波路構造の端面250から発出する構成において、導波路構造の上側クラッド層204は空気であってよい。すなわち、導波路構造の層は、基板201上に構成された下側クラッド層202および下側クラッド層202上に構成されたコア領域203を備えてよい。
【0104】
図7には示されないが、試料ウェル内の試料206は、導波路構造の端面250と接するのではなく端面250と接しないように載置されてもよい。この構成において、励起光は、端面250から試料206へ自由空間において伝搬する。
【0105】
任意選択的に、この構成における試料ウェル207は、基板201の上面におけるウェルの底部に堆積されたバイオ層205を備えてよい。バイオ層205は、試料内の蛍光体と基板層201との非特異的結合を防ぎ、BSA、PEG、またはPLLを備えてよい。また、バイオ層は、試料ウェル207内で直接試料を培養することを容易にする。バイオ層205は、好適であるが必須ではない。
【0106】
任意選択的に、導波路構造の端面250は平面である。
【0107】
導波路構造の端面250から発出する励起光は、わずかに発散し得る。励起光の発散は、端面250における導波路構造の幅に依存する。導波路構造の端面から外に向けられる励起光の発散を軽減するために、導波路構造の幅は、励起光を集中させるレンズを形成するために長さ方向に先細りであってよい。
【0108】
図8aは、先細り端面650を形成するように長さ方向に幅が先細りである、ストリップ導波路構造400を示す。任意選択的に、導波路構造の高さもまた長さ方向に先細りであり、2次元に先細りの端面を画定してよい。発明者は、少なくとも1次元においてアキシコンレンズを画定するように導波路領域の端面650を先細りにすることは、導波路構造から外へ向けられ試料206に向けられる光(すなわち励起光)の発散を軽減するために特に有利であることを発見した。導波路構造の端部領域を先細り先端部650のように形成することにより、ビーム成形のためのアキシコンレンズが生じる。アキシコンレンズは、導波路構造を通る入力光の伝搬方向に沿った線焦点をもたらす。
【0109】
導波路構造の幅は、適切なマスクに従ってレンズを形成するように導波路の端面を形作るために、イオンビームミリングまたは他の任意の適切なエッチング技術を用いて先細りにされ得る。あるいは導波路構造の幅は、レンズを形成するように導波路の端面を形作るために、再成長および選択的成長または他の任意の適切なエピタキシャル技術を用いて先細りにされ得る。導波路構造の高さもまた、適切なエッチングプロセスを用いて(たとえばある程度)先細りにされ得る。
【0110】
追加または代替として、導波路構造の端面から外に向けられる励起光の発散を軽減するために、導波路構造の端面に光を集中させるための回析格子660が設けられ得る。
【0111】
図8bは、ストリップ導波路構造の端面に構成された回析格子660を示す。この例において、回析格子660は励起光に重なり、励起光の発散を軽減して励起光を試料206に集中させるように励起光を反射する。回析格子660は、標準的なエッチング技術を用いて導波路構造および/または基板の1または複数の層にエッチングされ得る。
【0112】
導波路構造の端部領域は、基板層201に垂直かつ対物レンズ4の光軸3と平行な面において導波路構造から発出する励起光を偏向させるために、スタティックまたはプログラマブル音響回析格子660を画定してよい。その結果、導波路構造から発出する励起光ビームの高さは、プログラマブル音響回析格子660を調整することによって制御され得る。
【0113】
当業者には理解されるように、本発明は、本発明のいくつかの特定の実施形態を説明することによって示されたが、これらの実施形態に限定されるものではない。様々な変形例および改良例が、添付の特許請求の範囲の範囲内で可能である。
【0114】
本明細書に含まれる従来技術への任意の参照は、そのような技術が世界中のあらゆる国で共通の一般的知識の一部を成すことを認めるものとしてみなされるものではない。「備える」という語および「備えている」などの変化形は、文脈が明確な言葉または必然的な暗示によって他の場合を必要とする場合を除き、包括的または開放的な意味で用いられる。