(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
A01D 34/63 20060101AFI20220111BHJP
A01D 34/74 20060101ALI20220111BHJP
A01D 34/78 20060101ALI20220111BHJP
B64C 37/00 20060101ALI20220111BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A01D34/63 Z
A01D34/74
A01D34/78 Z
B64C37/00
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2020134486
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】大和 拓海
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0035606(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107231880(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106304947(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 39/18
B64C 37/00
B64C 39/02
B64C 27/473
B64C 27/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部を飛行させるための空気流を回転によって発生させる回転翼と、
前記回転翼を回転させる回転翼駆動部と、
前記回転翼駆動部の駆動を制御する制御部と、
前記回転翼に配置され、前記回転翼の回転に伴って回転する切断部と、を備える飛行体。
【請求項2】
前記切断部は、前記回転翼の径方向先端部に配置される請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記切断部の先端よりも前記回転翼の回転軸側で前記回転翼の周方向に延びるように形成される保護部材を更に備える請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記保護部材は、前記回転翼を囲う請求項3に記載の飛行体。
【請求項5】
前記切断部は、前記回転翼の回転軸から径方向に延びる前記回転翼の羽根に沿って配置される請求項1に記載の飛行体。
【請求項6】
前記本体部よりも下方に配置され、接地状態で回転することで前記本体部の水平方向の移動を補助する移動補助手段を更に備える請求項1から5の何れかに記載の飛行体。
【請求項7】
前記移動補助手段を駆動する移動補助手段駆動部を更に備える請求項6に記載の飛行体。
【請求項8】
前記本体部から延出し、前記回転翼を支持する支持部と、
前記支持部を上下方向に移動させる支持部駆動機構と、を更に備える請求項1から7の何れかに記載の飛行体。
【請求項9】
前記本体部から延出し、前記回転翼を支持する支持部と、
前記支持部に対する前記回転翼の回転軸の角度を変更する角度変更機構を更に備える請求項1から8の何れかに記載の飛行体。
【請求項10】
前記回転翼は複数配置され、
前記制御部は、着陸した状態で前記回転翼の回転に伴って回転する前記切断部で対象物を切断する場合に、前記角度変更機構を制御して少なくとも1つの前記回転翼の回転軸の角度を調整し、該回転翼を回転させることで前記本体部を水平方向に移動させるための空気流を発生させる請求項9に記載の飛行体。
【請求項11】
前記回転翼は複数配置され、
平面視において、複数の前記回転翼の外側を囲うように張り渡されるガード部を更に備える請求項1から10の何れかに記載の飛行体。
【請求項12】
前記ガード部は、前記回転翼の回転に伴って回転する前記切断部で対象物を切断する場合の前記回転翼の位置よりも上方に配置される請求項11に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行体を利用して対象物を切断する技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして特許文献1がある。特許文献1には、刈刃等を有する除草部が飛行体の下部に取り付けられた除草機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術のように飛行体を利用することにより、飛行によって除草機を切断する対象物である草が生えている場所まで運ぶことができる。しかし、特許文献1の技術は機動性に優れているものの、飛行体の下部に草を切断する切断部が取り付けられているので、飛行体全体の重量が増加し、燃費や消費電力の観点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、対象物を切断でき、構造がより簡素化された飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の飛行体は、本体部と、前記本体部を飛行させるための空気流を回転によって発生させる回転翼と、前記回転翼を回転させる回転翼駆動部と、前記回転翼駆動部の駆動を制御する制御部と、前記回転翼に配置され、前記回転翼の回転に伴って回転する切断部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象物を切断でき、構造がより簡素化された飛行体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る飛行体を示す平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る飛行体が飛行している様子を示す側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る飛行体が対象物を切断している様子を模式的に示す側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る飛行体の制御装置に関する電気的な構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る飛行体が飛行している様子を示す側面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る飛行体の制御装置に関する電気的な構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る飛行体を示す平面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る飛行体を示す平面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る飛行体が対象物を切断している様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の限定的ではない例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0010】
本発明の第1実施形態に係る飛行体1について説明する。
図1は飛行体1の平面図、
図2は飛行体1が飛行している様子を示す側面図、
図3は飛行体1が対象物を切断している様子を示す側面図である。
【0011】
本実施形態に係る飛行体1は、無人で飛行可能であり、地面2に存在する対象物3を切断可能なドローンである。なお、「無人で飛行可能」とは、飛行体に人が搭乗しない状態で飛行できることを意味し、自律飛行可能である場合だけでなく、人によって飛行体が遠隔操縦される場合も含む。
【0012】
飛行体1によって切断される対象物3の種類は、特に限定されない。例えば、地面2に生える草などが挙げられる。本実施形態の対象物3が草である場合を例に説明する。
【0013】
飛行体1は、本体部10と、本体部10から延出するアーム部20と、脚部30と、アーム部20に支持される回転翼40と、回転翼40を駆動させる回転翼駆動部41と、回転翼40を補強する保護部材60と、回転翼40に配置される切断部50と、アーム部駆動機構70と、角度変更機構80と、を備える。なお、回転翼40、回転翼駆動部41、切断部50、及び保護部材60は、本体部10を飛行させる機能と対象物3を切断する機能を有する回転翼ユニットを形成する。
【0014】
本体部10は、平面視において飛行体1の中心に位置する。本体部10は、後述する飛行体1の各種の制御を行う制御装置100やカメラ104等を備える。
【0015】
アーム部20は、その一側の端部(以下、基端部)が本体部10に接続され、他側の端部(以下、先端部)に回転翼40が配置される支持部である。本実施形態では、4本(複数)のアーム部20のそれぞれが、平面視において本体部10から放射状(径方向)に延びている。4本のアーム部20の間隔は、平面視における周方向で等間隔となっている。なお、
図2及び
図3では、紙面奥側に位置する2本のアーム部20の図示を省略している。
【0016】
脚部30は、本体部10から水平方向に延出する第1脚部31と、下方に延びる第2脚部32と、第2脚部32に接続される移動補助手段である車輪33と、を含む。
図1に示すように、本実施形態では、4本(複数)の脚部30のそれぞれが、平面視において本体部10から放射状(径方向)に延びた後に、下方に延びるように形成される。
【0017】
第1脚部31は、その一側の端部が本体部10に接続され、他側の端部(以下、先端部)の下面に第2脚部32が接続される。第1脚部31は、平面視において本体部10から径方向に延びている。4本の第1脚部31の間隔は、平面視において周方向に等間隔となっている。また、4本の第1脚部31のそれぞれは、周方向に隣接する2本のアーム部20の間に位置する。
【0018】
第2脚部32は、第1脚部31の先端部から下方に延びる。第2脚部32の下端には、車輪33が回転自在に支持される。
【0019】
車輪33は、飛行体1が着陸した状態で地面2に接触し、水平面内を回転自在な回転体を有する。車輪33は、本体部10よりも下方に配置され、接地状態で回転することで本体部10の水平方向の移動を補助する。車輪33の種類としては、例えば、旋回キャスター等が挙げられる。本実施形態の車輪33は、駆動源を備えない従動輪である。
【0020】
回転翼40は、アーム部20の先端部に配置される回転翼駆動部41に回転自在に取り付けられる。回転翼駆動部41は、内蔵する正逆回転可能な回転翼モータ42によって回転翼40を回転させる。回転翼40の回転によって所定の方向に流れる空気流Fが発生する。
【0021】
本実施形態では、4本のアーム部20のそれぞれに回転翼40及び回転翼駆動部41が支持される。即ち、本実施形態の飛行体1は、4個の回転翼40と4個の回転翼駆動部41を備える。また、4個の回転翼40の間隔は、アーム部20と同様に平面視における周方向で等間隔となっている。なお、
図2及び
図3では、紙面奥側に位置する2個の回転翼40や2個の回転翼駆動部41の図示を省略している。
【0022】
図1に示すように、回転翼40は、その回転軸Aから径方向に延びる4枚の羽根43を含んで構成される。回転翼モータ42が回転すると、羽根43が回転する。
【0023】
保護部材60は、回転翼40の径方向先端部に配置される。保護部材60は、後述する切断部50の先端よりも回転翼40の回転軸A側で回転翼40の周方向に延びるように形成される。本実施形態では、保護部材60は、回転翼40を囲う環状に形成される。回転翼40の各羽根43の先端は、保護部材60の内周面に固定される。本実施形態では、回転翼40と保護部材60はそれぞれ別体であるが一体成形されていてもよい。
【0024】
切断部50は、対象物3を切断可能な刃物である。切断部50は、保護部材60を介して回転翼40の径方向先端部に配置される。
【0025】
本実施形態では、1つの回転翼40に対して4個の切断部50が配置される。切断部50は、保護部材60の外周面に固定される。具体的には、切断部50は、保護部材60における回転翼40の各羽根43が固定される面とは反対側の面に固定される。即ち、切断部50は、回転翼40及び保護部材60よりも回転翼40の径方向外側に位置する。切断部50の素材の種類は特に限定されない。例えば、金属やプラスチック、セラミック等が挙げられる。
【0026】
アーム部駆動機構70は、アーム部20を上下方向に移動させる機構である。アーム部駆動機構70は、本体部10に形成されるスリット71と、可動部72と、アーム部駆動モータ73を含む。
【0027】
スリット71は、本体部10の側面に上下方向に延びるように形成される。本体部10に形成されるスリット71には、可動部72が配置される。
【0028】
可動部72は、アーム部20の基端部に取り付けられる。可動部72は、スリット71に沿って上下方向に移動可能に配置される。
【0029】
アーム部駆動モータ73は、本体部10に内蔵される。アーム部駆動モータ73が駆動することによって可動部72が上方又は下方に移動する。可動部72の移動に伴って、可動部72に取り付けられるアーム部20も上方又は下方に移動する。即ち、アーム部駆動機構70のアーム部駆動モータ73の駆動を制御することで、アーム部20及びアーム部20に支持される回転翼40の高さを調整できる。
【0030】
角度変更機構80は、アーム部20に対する回転翼40の回転軸Aの角度を変更する機構である。角度変更機構80は、関節部81と角度変更モータ82を含む。
【0031】
関節部81は、アーム部20と回転翼駆動部41の間に配置される。具体的には、関節部81は、アーム部20の先端部に可動軸Bを支点として回転可能に保持される。可動軸Bは、平面視においてアーム部20の延出方向に直交する方向に延びる軸である。関節部81には、回転翼駆動部41が取り付けられる。
【0032】
角度変更モータ82は、アーム部20の先端部に内蔵される。角度変更モータ82の駆動により、可動軸Bを支点として関節部81が回転するとともに、回転翼駆動部41と当該回転翼駆動部41に取り付けられる回転翼40も可動軸Bを支点として回転する。この結果、例えば、
図3に示すように、角度変更機構80によってアーム部20に対する回転翼40の回転軸Aの角度が変更される。
【0033】
次に、制御装置100について説明する。
図4は、飛行体1の制御装置100に関する電気的な構成を示すブロック図である。
図4において回転翼モータ42やアーム部駆動モータ73、角度変更モータ82については、右回りの順にアルファベットを付し、回転翼モータ42a~42d、アーム部駆動モータ73a~73d、角度変更モータ82a~82dを区別して説明する。回転翼モータ42aは回転翼40aを回転させ、回転翼モータ42bは回転翼40bを回転させ、回転翼モータ42cは回転翼40cを回転させ、回転翼モータ42dは回転翼40dを回転させる。また、アーム部駆動モータ73aは回転翼40aを支持するアーム部20を動かし、アーム部駆動モータ73bは回転翼40bを支持するアーム部20を動かし、アーム部駆動モータ73cは回転翼40cを支持するアーム部20を動かし、アーム部駆動モータ73dは回転翼40dを支持するアーム部20を動かす。また、角度変更モータ82aは回転翼40aの回転軸Aの角度を変更し、角度変更モータ82bは回転翼40bの回転軸Aの角度を変更し、角度変更モータ82cは回転翼40cの回転軸Aの角度を変更し、角度変更モータ82dは回転翼40dの回転軸Aの角度を変更する。
【0034】
制御装置100は、例えばCPU、メモリ等を有し、制御プログラムを実行するコンピュータであり、飛行体1の飛行や対象物3を切断するための切断動作の制御処理を実行する。制御装置100には、バッテリ等の電源装置(図示省略)、カメラ104等の検出部、操作用コントローラやGPS等の外部装置と信号の送受信を行う通信装置105、ジャイロセンサ101、加速度センサ102、高度センサ103等の各種電子機器が電気的に接続される。
【0035】
図3に示すように、制御装置100は、モード選択部110と、飛行制御部120と、切断制御部130と、を備える。モード選択部110と、飛行制御部120と、切断制御部130は、制御装置100に記憶されるプログラムの一部によって構成される。
【0036】
モード選択部110は、飛行体1が飛行するための制御を行う飛行モードと、地上に生える草である対象物3を切断するための制御を行う切断モードを選択可能である。
【0037】
モード選択部110は、飛行体1が地面2に着陸した状態で飛行モードから切断モードに切り替える。モード選択部110は、予め定められた領域内に着陸すると飛行モードから切断モードに切り替わる構成としてもよい。また、モード選択部110は、通信装置105等を介して外部から受信した信号に基づき、飛行モードと切断モードを選択してもよい。外部からの信号とは、ユーザーが外部のコントローラを操作して発信した信号等が挙げられる。
【0038】
飛行制御部120は、飛行モードにおいて、ジャイロセンサ101、加速度センサ102、高度センサ103、カメラ104等からの各種情報や通信装置105等を介して外部から受信した信号、予め定められたプログラムに基づいて飛行体1の飛行を制御する。飛行制御部120は、回転翼モータ42a~42dの駆動を制御することにより、回転翼40a~40dの回転数等を調整する。例えば、飛行制御部120は、回転翼40a~40dを回転させて下方に向かう空気流Fを発生させて本体部10を飛行させる。
【0039】
切断制御部130は、切断モードにおいて、ジャイロセンサ101、加速度センサ102、高度センサ103、カメラ104からの各種情報や通信装置105等を介して外部から受信した信号、予め定められたプログラムに基づいて、地面2から生える対象物3を切断するための飛行体1の動作を制御する。例えば、回転翼40a~40dの回転方向や回転数、高さ、角度等の制御を行う。
【0040】
次に、
図1から
図4を参照しながら、飛行モードと切断モードにおける制御装置100による制御例について説明する。
【0041】
飛行モードにおいて、飛行制御部120は、回転翼40がアーム部20よりも下方に位置し、回転軸Aが上下方向に延びる状態で、回転翼駆動部41の駆動を制御し、回転翼40から下方に向かう空気流Fを発生させて本体部10を飛行させる。
【0042】
対象物3が生える所定の領域内の地面2に飛行体1が着陸すると、モード選択部110によって飛行モードから切断モードに切り替わる。
【0043】
切断モードに切り替わると、切断制御部130は、回転翼モータ42の駆動を制御して、飛行時とは逆の方向に回転翼40を回転させる。
図3に示すように、回転翼40の回転に伴って回転する切断部50が対象物3に接触することで対象物3が切断される。このとき、回転翼40が飛行時とは逆の方向に回転しているので、回転翼40から上方に向かう空気流Fが発生し、空中から地面2に向かう力が本体部10に加わる。これにより、本体部10が空中に浮上せず、対象物3の切断時における飛行体1の安定した姿勢を維持できる。また、回転翼40の外周が保護部材60によって囲まれているので、対象物3の回転翼40との接触を防止できる。さらに、保護部材60が回転翼40を囲う環状に形成されるので、保護部材60が対象物3と接触した場合に生じる衝撃を外部に逃がしやすくなり、回転翼40に伝わる衝撃を低減できる。
【0044】
また、切断制御部130は、アーム部駆動機構70のアーム部駆動モータ73の駆動を制御し、アーム部20の上下方向における位置を調整する。アーム部20の位置を調整することで、回転翼40の地面2からの距離を調整でき、切断後の対象物3の高さを調整できる。
【0045】
また、切断制御部130は、角度変更機構80の角度変更モータ82の駆動を制御して回転翼40の回転軸Aの角度を調整する。これにより、対象物3が切断される角度を調整できる。
【0046】
切断モードにおける飛行体1の移動のための制御の一例について説明する。飛行体1は回転翼40の回転によって発生する空気流Fと、地面2に接触する車輪33の回転を利用して地面2に沿って移動する。
【0047】
切断制御部130は、目標方向に応じて、少なくとも1つの回転翼40の回転軸Aの角度を調整し、水平方向の推力が発生するように該回転翼40を回転させて飛行体1を移動させる。
【0048】
例えば、目標方向が回転翼40cを支持するアーム部20が延びる方向(
図3では本体部10から紙面斜め右奥に向かう方向)である場合、角度変更モータ82a~82dのうち角度変更モータ82aを駆動して回転翼40aの回転軸Aの角度を変更する。
図3では、アーム部20に対して回転翼40aの回転軸Aが平行になるように調整しているが、回転翼40aの回転軸Aの角度は回転によって水平方向の推力が発生する角度であればよい。例えば、回転翼40aがアーム部20よりも上方に位置し、アーム部20に対して回転翼40aの回転軸Aが左斜め上に延びる角度であってもよい。
【0049】
切断制御部130は、必要に応じてアーム部駆動モータ73aを駆動して回転翼40aを支持するアーム部20の上下方向における位置を調整する。そして、切断制御部130は、回転翼モータ42aの駆動を制御して、飛行時と同じ方向に回転翼40aを回転させる。これにより、回転翼40aから本体部10とは反対側(
図3では紙面斜め左手前側)に向かう空気流Fが発生し、回転翼40cを支持するアーム部20が延びる方向に本体部10を移動させる水平方向の推力が発生する。この水平方向の推力と該推力による地面2に接触する車輪33の回転によって本体部10が移動する。このとき、回転翼40b~40dはアーム部20よりも下方に位置し、回転軸Aが上下方向に延び、飛行時とは逆の方向に回転している。このため、飛行体1の進行方向に存在する対象物3は、本体部10の移動に伴って回転翼40b~40dに配置される切断部50で切断される。
【0050】
上記制御例では、回転翼40を飛行時とは逆の方向に回転させて対象物3を切断していたが、飛行時と対象物3の切断時における回転翼40の回転方向を変更せずに回転翼40の回転軸Aの角度を切り替えてもよい。
【0051】
例えば、
図5に示すように、飛行モードにおいて飛行制御部120は、回転翼40がアーム部20よりも上方に位置し、回転翼40の回転軸Aが上下方向に延びる状態で、回転翼40から下方に向かう空気流Fを発生させて本体部10を飛行させる。
【0052】
切断モードに切り替わると、
図3に示すように、切断制御部130は角度変更モータ82の駆動を制御して回転翼40をアーム部20に対して180度回転させて、アーム部駆動モータ73の駆動を制御してアーム部20を下方に移動させる。そして、切断制御部130は、回転翼モータ42の駆動を制御して飛行モードと同じ回転方向で回転翼40を回転させることで、回転翼40から上方に向かう空気流Fが発生させる。これにより、空中から地面2に向かう力を加えて本体部10を浮上させずに対象物3を切断できる。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態に係る飛行体1Aについて説明する。
図6は、飛行体1Aの制御装置100に関する電気的な構成を示すブロック図である。なお、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0054】
飛行体1Aは、車輪33を駆動する移動補助手段駆動部である車輪駆動モータ34を備える点が第1実施形態に係る飛行体1とは主に異なる。
【0055】
車輪駆動モータ34は、第2脚部32の下端側に内蔵される。切断モードにおいて、切断制御部130Aは、車輪駆動モータ34の駆動を制御して、車輪33の回転方向及び回転スピードを調整する。これにより、飛行体1Aの移動方向や移動速度をより正確に調整できる。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態に係る飛行体1Bについて説明する。
図7は、飛行体1Bを示す平面図である。なお、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0057】
飛行体1Bは、本体部10と、本体部10から延出するアーム部20と、脚部30と、アーム部20に支持される回転翼40と、回転翼40を駆動させる回転翼駆動部41と、回転翼40に配置される切断部50Aと、アーム部駆動機構70と、角度変更機構80と、を備える。飛行体1Bは、切断部50Aの構成と保護部材60を備えてない点が第1実施形態の飛行体1とは異なる。
【0058】
図7に示すように、切断部50Aは、回転翼40の回転軸Aから径方向に延びる羽根43に沿って配置される。また、切断部50Aと羽根43は、周方向で交互に配置される。本実施形態では、回転翼40の回転に伴って回転する切断部50Aで対象物3を切断する場合の回転翼40の回転方向前側に切断部50Aが配置され、該回転方向後側に羽根43が配置される。
図7では、切断制御部130によって全ての回転翼40が右回りに回転するように回転翼駆動部41の駆動が制御される。これにより、回転翼40よりも先に切断部50Aに接触することになり、回転翼40を保護しながら対象物3を切断できる。
【0059】
次に、本発明の第4実施形態に係る飛行体1Cについて説明する。
図8は飛行体1Cを示す平面図、
図9は飛行体1Cが対象物3を切断している様子を示す側面図である。なお、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0060】
飛行体1Cは、本体部10と、本体部10から延出するアーム部20と、脚部30と、アーム部20に支持される回転翼40と、回転翼40を駆動させる回転翼駆動部41と、回転翼40に配置される切断部50と、保護部材60と、アーム部駆動機構70と、角度変更機構80と、回転翼ガード90と、を備える。飛行体1Cは、回転翼ガード90を備える点が第1実施形態の飛行体1とは異なる。
【0061】
回転翼ガード90は、第1脚部31の先端部に連結される延出部91と、延出部91の先端から上方に延出するガード支持部92と、ガード支持部92によって支持されるガード部94と、を備える。
【0062】
延出部91は、第1脚部31から更に径方向外側に水平方向に延びる。なお、ここでいう「外側」とは、平面視において、飛行体1の本体部10の重心又は中心を起点としたときに本体部10から離れた側であり、前記起点を球の中心として径方向外側と表現することもできる。
【0063】
ガード支持部92は、延出部91の先端から上方に延びている。ガード支持部92と回転翼40は、当該回転翼40が回転してもガード支持部92に接触しない位置関係となっている。ガード支持部92には、ガード部94を固定するための固定部93が配置される。
【0064】
ガード部94は、平面視において、複数の回転翼40である回転翼40a~40dの外側を囲うように張り渡される。具体的には、可撓性を有する4本(複数本)のガード部94を4本のガード支持部92の間に接続し、略四角形(多角形)が形成されるように張り渡す。即ち、4本(複数本)のガード部94によって略四角形(多角形)が形成されており、複数の回転翼40の全ては、この四角形の内側に位置する。また、本実施形態において、ガード部94は、回転翼40の回転に伴って回転する切断部50で対象物3を切断する場合の回転翼40の位置よりも高い位置に設定される。これにより、切断部50によって対象物3が切断される位置よりも高い位置にガード部94が位置するので、ガード部94が対象物3の切断位置に接触することがない。よって、切断部50による対象物3の切断を妨げずに、本体部10や回転翼40に対する対象物3以外の物体の接触を防止できる。
【0065】
以上の説明から明らかなように、本発明の各実施形態は、以下の各構成により、それぞれ有利な効果を奏する。
【0066】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)は、本体部(10)と、本体部(10)を飛行させるための空気流(F)を回転によって発生させる回転翼(40)と、回転翼(40)を回転させる回転翼駆動部(41)と、回転翼駆動部(41)の駆動を制御する制御装置(100)と、回転翼(40)に配置され、回転翼(40)の回転に伴って回転する切断部(50)と、を備える。これにより、回転翼(40)に切断部(50)が配置されるので、回転翼(40)の回転によって対象物(3)が存在する地面(2)まで飛行でき、回転翼(40)の回転に伴って回転する切断部(50)で対象物(3)を切断できる。よって、飛行用と対象物(3)の切断用の駆動源を回転翼駆動部(41)に統一でき、飛行体(1)の構造をより簡素化できる。また、飛行体(1)全体を軽量化できる。これによって、飛行体(1)がエンジン等のガソリンを燃料とする動力によって動く場合は燃費を改善でき、バッテリ等から発生する電力で動く場合は消費電力を低減できる。
【0067】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、切断部(50)は、回転翼(40)の径方向先端部に配置される。これにより、切断部(50)が回転翼(40)の外周に配置されるので、対象物(3)が回転翼(40)に接触する前に切断部(50)で切断できる。よって、対象物(3)の回転翼(40)への接触を抑制できる。
【0068】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)は、切断部(50)の先端よりも回転翼(40)の回転軸(A)側で回転翼(40)の周方向に延びるように形成される保護部材(60)を更に備える。これにより、回転翼(40)の周方向に保護部材(60)が形成されるので、回転翼(40)の強度が向上する。よって、少なくとも先端が保護部材(60)よりも回転翼(40)の径方向外側に位置する切断部(50)によって対象物(3)を切断する際に、回転翼(40)が対象物(3)から受ける衝撃を緩和できる。
【0069】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、保護部材(60)は、回転翼(40)を囲う。これにより、回転翼(40)の全周に亘って保護部材(60)が形成されるので、対象物(3)を切断する際に、保護部材(60)よりも回転軸(A)側への対象物(3)の侵入を防ぎ、回転翼(40)への対象物(3)の衝突を防止できる。
【0070】
本発明の実施形態に係る飛行体(1B)において、切断部(50A)は、回転翼(40)の回転軸(A)から径方向に延びる回転翼(40)の羽根(43)に沿って配置される。これにより、よりシンプルな構成で対象物(3)を切断できる。
【0071】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)は、本体部(10)よりも下方に配置され、接地状態で回転することで本体部(10)の水平方向の移動を補助する車輪(33)を更に備える。これにより、車輪(33)の回転によって地面(2)との摩擦が低減されるので、本体部(10)をより円滑に移動させることができる。
【0072】
本発明の実施形態に係る飛行体(1A)は、車輪(33)を駆動する車輪駆動モータ(34)を更に備える。これにより、車輪駆動モータ(34)の駆動を制御することで直接車輪(33)の回転方向や回転速度を調整できるので、本体部(10)の移動速度や移動方向をより正確に調整できる。
【0073】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)は、本体部(10)から延出し、回転翼(40)を支持するアーム部(20)と、アーム部(20)を上下方向に移動させるアーム部駆動機構(70)と、を更に備える。これにより、アーム部(20)を上下方向に移動させることで回転翼(40)の高さを変更できるので、切断後の対象物(3)の高さを調整できる。
【0074】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)は、本体部(10)から延出し、回転翼(40)を支持するアーム部(20)と、アーム部(20)に対する回転翼(40)の回転軸(A)の角度を変更する角度変更機構(80)を更に備える。これにより、回転翼(40)の回転軸(A)の角度を変更できるので、対象物(3)を切断する角度を調整できる。
【0075】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、回転翼(40)は複数配置され、制御装置(100)は、着陸した状態で回転翼(40)の回転に伴って回転する切断部(50)で対象物(3)を切断する場合に、角度変更機構(80)を制御して少なくとも1つの回転翼(40)の回転軸(A)の角度を調整し、回転翼(40)を回転させることで本体部(10)を水平方向に移動させるための空気流(F)を発生させる。これにより、回転翼(40)の回転を利用して地面(2)を移動できるので、切断時における飛行体(1)の機動力が向上する。また、飛行体(1)がエンジン等のガソリンを燃料とする動力によって動く場合は燃費を改善でき、バッテリ等から発生する電力で動く場合は消費電力を低減できる。
【0076】
本発明の実施形態に係る飛行体(1C)において、回転翼(40)は複数配置され、平面視において、複数の回転翼(40)の外側を囲うように張り渡されるガード部(94)を更に備える。これにより、回転翼(40)よりも外側にガード部(94)が張り渡されるので、水平方向において、対象物(3)以外の物体の切断部(50)への接触を防止できる。
【0077】
本発明の実施形態に係る飛行体(1C)において、ガード部(94)は、回転翼(40)の回転に伴って回転する切断部(50)で対象物(3)を切断する場合の回転翼(40)の位置よりも上方に配置される。これにより、ガード部(94)が対象物(3)の切断位置に接触しないので、切断部(50)による対象物(3)の切断を妨げずに、本体部(10)や回転翼(40)に対する対象物(3)以外の物体の接触を防止できる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0079】
第1実施形態や第2実施形態、第4実施形態では、保護部材60が回転翼40の周方向に延び、回転翼40を囲う環状に形成されるが、保護部材60の形状は特に限定されない。例えば、保護部材60を回転翼40の周方向に延び、回転翼40を囲う多角形状に形成してもよい。
【0080】
上記実施形態では、切断部50は刃物であるが、紐状の樹脂であってもよい。紐状の樹脂としては、例えばナイロンカッターが挙げられる。
【0081】
上記実施形態では、各回転翼40に配置される切断部50は4個であったが、その数は特に限定されない。例えば、3個以下であっても、5個以上であってもよい。
【0082】
第1実施形態や第2実施形態、第4実施形態では、保護部材60が切断部50と回転翼40の間に配置されていたが、切断部50が保護部材60を介さずに回転翼40に固定され、保護部材60が回転翼40及び切断部50のいずれかに固定される構成であってもよい。
【0083】
第4実施形態では、ガード部94は、切断部50で対象物3を切断する場合の回転翼40の位置よりも高い位置に設定されるが、ガード部94の設置位置は特に限定されない。例えば、切断部50で対象物3を切断する場合の回転翼40の位置と略同じ高さの位置であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1、1A、1B、1C・・・飛行体、10・・・本体部、40・・・回転翼、41・・・回転翼駆動部、50、50A・・・切断部、100・・・制御部
【要約】
【課題】対象物を切断でき、構造がより簡素化された飛行体を提供すること。
【解決手段】飛行体1は、本体部10と、本体部10を飛行させるための空気流Fを回転によって発生させる回転翼40と、回転翼40を回転させる回転翼駆動部41と、回転翼駆動部41の駆動を制御する制御装置100と、回転翼40に配置され、回転翼40の回転に伴って回転する切断部50と、を備える。
【選択図】
図3