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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】構真柱の回転用治具
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/05 20060101AFI20220111BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
E04G21/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020085270
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021179131
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087712
【弁理士】
【氏名又は名称】山木 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100212037
【弁理士】
【氏名又は名称】座間 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】北平 彰彦
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-216986(JP,A)
【文献】実開昭58-166992(JP,U)
【文献】実開昭50-54686(JP,U)
【文献】実開昭62-199288(JP,U)
【文献】特開2015-108251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0217096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/05
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割部材のそれぞれを保持具に互いの中心軸が一致するように保持させて、前記保持具をその中心軸回りに回転させながら隣り合う前記分割部材の端部同士を繋ぎ合わせることにより、構真柱を横向きに寝かせた状態で形成するために用いられる構真柱の回転用治具であって、
前記回転用治具の中心軸方向に細長く伸び、その長さ途中部を、前記保持具の中心軸と前記回転用治具の中心軸が一致するように、前記保持具に保持させることができるよう構成された保持部と、
前記保持部の長さ方向の一方の端部に一体的に設けられ、前記分割部材の中心軸と前記回転用治具の中心軸が一致するように、前記分割部材の長さ方向の一方の端部に固定することができるよう構成された連結部を備えた
ことを特徴とする構真柱の回転用治具。
【請求項2】
前記保持部は、その長さ方向に対して垂直な断面形状が、前記構真柱の長さ方向に対して垂直な断面形状と略同一の形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の構真柱の回転用治具。
【請求項3】
前記連結部は、前記分割部材の長さ方向の一方の端部に対して着脱可能である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の構真柱の回転用治具。
【請求項4】
前記保持部の長さ方向の他方の端部に吊部が設けられた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の構真柱の回転用治具。
【請求項5】
回転機構を有する保持具と構真柱との間に設けられて当該保持具の回転力を構真柱に伝達する構真柱の回転用治具において、
前記保持具に接続されて回転可能な保持部と、
前記保持部の回転中心軸と同軸的に前記保持部の一方の端部から外方に向かって延設されて前記構真柱に着脱可能な連結部と、を備えた
ことを特徴とする構真柱の回転用治具。
【請求項6】
前記回転中心軸に対して垂直な断面において、前記回転中心軸から前記保持部の外縁までの寸法と前記回転中心軸から前記連結部の外縁までの寸法は異なる
ことを特徴とする請求項5に記載の構真柱の回転用治具。
【請求項7】
回転機構を有する保持具に接続されて回転可能な保持部と、前記保持部の回転中心軸と同軸的に前記保持部の一方の端部から外方に向かって延設されて構真柱に着脱可能な連結部とを備えた回転用治具を用いた構真柱の回転方法において、
前記保持部、前記連結部及び前記構真柱の回転中心軸を全て一致させた状態で前記保持具の回転力を前記構真柱に伝達して前記構真柱を回転させる
ことを特徴とする構真柱の回転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数に分割された部材を繋ぎ合わせて一本の構真柱を形成するために用いられる構真柱の回転用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の地上部分の施工と並行して、地下構造を上階から下階へと施工する逆打ち工法における逆打ち支柱の建て込み工法として、施工現場で造成される場所打ち杭のコンクリートの内部に、地下構造の柱部材(構真柱)の下端部を埋設して一体化する構真柱工事(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
そのような構真柱工事に用いられる一般的な構真柱2(図5参照)は、建築構造物の規模、特に地下構造の深度が大きくなるにつれて長さ寸法が大きくなり、そのような長大な構真柱2は、トラック等に積載して運搬することができないため、従来は、予め所定の長さ寸法に分割されて製造され、それらを別々に運搬して施工現場に搬入し、その場で溶接等によって繋ぎ合わせている。
【0004】
従来の、分割された部材を繋ぎ合わせて構真柱2を形成する方法としては、図6(b)に示すように、まず、複数に分割された構真柱2の分割部材3のそれぞれを、円環状に形成され、反転機10を用いてその中心軸回りに回転可能な回転機構を有する保持具8の保持機構8aに設置して、互いの中心軸が一致するように、分割部材3の長さ途中部を複数の保持具8に保持させる。
【0005】
そして、図6(a)に示すように、それら複数の分割部材3を、横向きに寝かせた状態で、それぞれの長さ部分が構真柱2の長さ方向(図中左右方向)に沿って水平に伸びるよう並べる。
【0006】
そして、それら複数の分割部材3を回転させながら、隣り合う分割部材3の端面同士が互いに対向する接合部Wを、構真柱2の全周に亘って溶接等により接合することにより、隣り合う分割部材3を繋ぎ合わせて、一本の構真柱2を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-295931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような従来の構真柱を形成する方法では、構真柱2の寸法が一定以上の大きさになった場合、既製の保持具8では保持することができなくなり、横向きに寝かせた状態で分割部材3を繋ぎ合わせることができなくなるという問題点があった。
【0009】
このような場合、従来は、施工現場に縦孔を掘削して、構真柱2の分割部材3をその縦孔の内部に縦向きに配置し、その鉛直上方向に分割部材3を継ぎ足しながら溶接等することにより、縦向きに起こした状態で一本の構真柱2を形成していた。
【0010】
しかしながら、そのような方法では、施工現場における縦孔のスペースの確保や溶接作業に必要な高所作業用の車両等の確保等、さまざまな作業や費用が発生するため、それにより、工期の遅れや施工コストの増加を招くという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、複数の分割部材を繋ぎ合わせて一本の構真柱を形成する際に、それらの複数の分割部材を、大きさ等によらず、横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることができる構真柱の回転用治具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1による構真柱の回転用治具は、上記課題を解決するために、
複数の分割部材のそれぞれを保持具に互いの中心軸が一致するように保持させて、前記保持具をその中心軸回りに回転させながら隣り合う前記分割部材の端部同士を繋ぎ合わせることにより、構真柱を横向きに寝かせた状態で形成するために用いられる構真柱の回転用治具であって、
前記回転用治具の中心軸方向に細長く伸び、その長さ途中部を、前記保持具の中心軸と前記回転用治具の中心軸が一致するように、前記保持具に保持させることができるよう構成された保持部と、
前記保持部の長さ方向の一方の端部に一体的に設けられ、前記分割部材の中心軸と前記回転用治具の中心軸が一致するように、前記分割部材の長さ方向の一方の端部に固定することができるよう構成された連結部を備えた
ことを特徴とするものである。
【0013】
上記構成の構真柱の回転用治具によれば、図7に示すような保持具8が保持することのできないような大きさの幅広部2cを上端部に有する構真柱2の分割部材3であったとしても、分割部材3の上端部に回転用治具12を取り付けることにより、分割部材3の幅広部2c側の端部を、回転用治具12の保持部14を介して、保持具8に保持させることができるため、横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることができる。
【0014】
そして、それにより、上述したような、縦孔の内部で縦向きに起こした状態で構真柱を形成する作業を行う必要がなくなるため、そのためのさまざまな作業や費用が発生せず、それに伴う、工期の遅れや施工コストの増加を防止することができる。
【0015】
さらに、図7に示すような上端部に幅広部2cを有する構真柱2は重心が高く、縦向きに起こした状態で作業を行うと風等の影響を受けて不安定になり易くなるが、横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることにより、より安全に作業を行うことができる。
【0016】
また、本発明の請求項2による構真柱の回転用治具は、
前記保持部は、その長さ方向に対して垂直な断面形状が、前記構真柱の長さ方向に対して垂直な断面形状と略同一の形状に形成されている
ことを特徴とするものである。
【0017】
上記構成の構真柱の回転用治具によれば、保持部14の断面形状が図5に示すような一般的な構真柱2の断面形状と略同一の形状に形成されているため、構真柱2と同程度の十分に大きな強度を得ることができると共に、工場等で構真柱2の分割部材3を製造する際に使用する部材の一部を流用して、回転用治具12の保持部14を形成することができる。
【0018】
また、本発明の請求項3による構真柱の回転用治具は、
前記連結部は、前記分割部材の長さ方向の一方の端部に対して着脱可能である
ことを特徴とするものである。
【0019】
上記構成の構真柱の回転用治具によれば、回転用治具12の連結部が構真柱2の分割部材3に対して着脱可能に固定できるように構成されているため、分割部材3を繋ぎ合わせる作業が完了した後に回転用治具12を取り外すことができ、取り外した回転用治具12を再度使用することができる。
【0020】
また、本発明の請求項4による構真柱の回転用治具は、
前記保持部の長さ方向の他方の端部に吊部が設けられた
ことを特徴とするものである。
【0021】
上記構成の構真柱の回転用治具によれば、保持部14の長さ方向の他方の端部に吊部18が設けられているため、その吊孔18cにシャックル等を取り付けて、クレーン等を用いて回転用治具12を吊り上げることができるようになっているため、施工現場における回転用治具12の取り回しを向上させることができる。
【0022】
また、分割部材3を繋ぎ合わせる作業が完了した後に回転用治具12を取り外さずにおくことにより、クレーン等を用いて回転用治具12を吊り上げて、構真柱2を吊り上げることができるため、施工現場で構真柱2を形成した後の、構真柱2の建て起こしや、杭孔までの移動、杭孔内への下降等の作業の効率を向上させることができる。
【0023】
また、シャックル等を取り付けることができる側板部18bが、吊部18の端板部18aの外側面の4か所に設けられたことにより、構真柱2の下端部側を吊り上げるための治具が構真柱2の外周部のどの位置に設けられていたとしても、これに対応する側板部18bを4か所の中から選択してシャックル等を取り付けることができるため、回転用治具12を取り付けた際の回転用治具12の中心軸回りの向きによらず、スムーズに建て起こし等の作業を行うことができる。
【0024】
また、本発明の請求項5による構真柱の回転用治具は、
回転機構を有する保持具と構真柱との間に設けられて当該保持具の回転力を構真柱に伝達する構真柱の回転用治具において、
前記保持具に接続されて回転可能な保持部と、
前記保持部の回転中心軸と同軸的に前記保持部の一方の端部から外方に向かって延設されて前記構真柱に着脱可能な連結部と、を備えた
ことを特徴とするものである。
【0025】
上記構成の構真柱の回転用治具によれば、回転機構によって回転する保持具8の回転力が、回転用治具12を介して、構真柱2の分割部材3へと伝達されるため、構真柱2の形状や大きさを、保持具8の保持機構8aの形状や大きさによらずに、自由に決定することができる。
【0026】
また、本発明の請求項6による構真柱の回転用治具は、
前記回転中心軸に対して垂直な断面において、前記回転中心軸から前記保持部の外縁までの寸法と前記回転中心軸から前記連結部の外縁までの寸法は異なる
ことを特徴とするものである。
【0027】
上記構成の構真柱の回転用治具によれば、構真柱2の分割部材3の大きさが、保持具8に保持させることができる寸法より大きかった(又は小さかった)としても、回転用治具12を介することにより、保持具8に保持させることができる。
【0028】
また、本発明の請求項7による構真柱の回転方法は、
回転機構を有する保持具に接続されて回転可能な保持部と、前記保持部の回転中心軸と同軸的に前記保持部の一方の端部から外方に向かって延設されて構真柱に着脱可能な連結部とを備えた回転用治具を用いた構真柱の回転方法において、
前記保持部、前記連結部及び前記構真柱の回転中心軸を全て一致させた状態で前記保持具の回転力を前記構真柱に伝達して前記構真柱を回転させる
ことを特徴とするものである。
【0029】
上記構成の構真柱の回転方法によれば、上述したように、構真柱2の分割部材3を、回転用治具12を介して、保持具8に保持させることにより、分割部材3の大きさによらずに横向きに寝かせた状態で分割部材3を繋ぎ合わせることができるようになるため、縦孔の内部で縦向きに起こした状態で構真柱を形成する作業を行う必要がなくなり、それに伴う、工期の遅れや施工コストの増加を防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明による構真柱の回転用治具によれば、複数の分割部材を繋ぎ合わせて一本の構真柱を形成する際に、それらの複数の分割部材を、大きさ等によらず、横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施の形態に係る構真柱の回転用治具12を示す正面図である。
図2図1に示す回転用治具12を示す図であって、図2(a)は図1におけるA-A線矢視断面図であり、図2(b)は図1におけるB-B線矢視断面図である。
図3】回転用治具12の使用方法について説明するための図であって、上端部に回転用治具12が取り付けられた構真柱2の分割部材3の上端部周辺を拡大して示す拡大正面図である。
図4】回転用治具12を用いて幅広部2cを有する分割部材3を含む複数の分割部材3を繋ぎ合わせて構真柱2を形成する方法について説明するための概略側面図である。
図5】一般的な構真柱2を示す図であって、図5(a)はその側面図であり、図5(b)は図5(a)におけるC-C線矢視断面図であり、図5(c)は図5(a)におけるD-D線矢視断面図である。
図6】複数の分割部材3を繋ぎ合わせて構真柱2を形成する方法について説明するための図であって、図6(a)はその概略側面図であり、図6(b)は図6(a)におけるE-E線矢視概略断面図である。
図7】上端部に幅広部2cを有する構真柱2を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明による構真柱の回転用治具を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0033】
図1ないし図4は、本発明の一実施の形態に係る回転用治具12について説明するために参照する図である。
【0034】
本実施の形態に係る回転用治具12は、図1に示すように、回転用治具12の中心軸方向(図中上下方向、請求項5の回転中心軸も含む)に細長く伸びる保持部14と、保持部14の長さ方向の一方(図中下側)の端部に設けられた連結部16を備えている。
【0035】
回転用治具12の保持部14は、図2(a)に示すように、保持部14の長さ方向(図1中上下方向)に対して垂直な断面形状が略十字型に形成された板状のウェブ部14aと、このウェブ部14aの略十字型の断面の4つの先端部のそれぞれに対して略直角に接合され、それぞれの先端部に沿って保持部14の長さ方向に伸びるように設けられた4つの板状のフランジ部14bを備えている。
【0036】
すなわち、保持部14は、その長さ方向に対して垂直な断面形状が、図5に示すような一般的な構真柱2の断面形状(同図(b)及び(c)参照)と略同一の形状に形成されている。
【0037】
そして、保持部14は、その長さ方向に対して垂直な幅方向(図2(a)の上下左右方向)の寸法が、図7に示す幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3の上端部に設けられた幅広部2cの幅寸法より小さく、保持部14の長さ部分を、回転機構を有する保持具8の保持機構8a(図6(b)参照)に設置して、保持部14の長さ途中部を保持具8に保持させることができるような寸法に形成されている。
【0038】
回転用治具12の連結部16は、図2(b)に示すように、連結部16の長さ方向(図1中上下方向)に対して垂直な断面形状が略十字型に形成された板状のウェブ部16aと、このウェブ部16aの略十字型の断面の4つの先端部のそれぞれに対して略直角に接合され、それぞれの先端部に沿って連結部16の長さ方向に伸びるように設けられた4つの板状のフランジ部16bを備えている。
【0039】
そして、連結部16のウェブ部16aは、4つの先端部のそれぞれの厚さ寸法及び幅寸法が、図7に示す幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3の上端部に設けられた幅広部2cのウェブ部2aの4つの先端部の厚さ寸法及び幅寸法と略同一に形成されると共に、連結部16の4つのフランジ部16bは、それぞれの厚さ寸法及び幅寸法が、図7に示す構真柱2のフランジ部2bの厚さ寸法及び幅寸法と略同一に形成されている。
【0040】
すなわち、連結部16は、その長さ方向に対して垂直な断面形状が、図7に示す幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3の上端部に設けられた幅広部2cの断面形状と略同一の形状、及び略同一の大きさに形成されている。
【0041】
そして、連結部16の保持部14と反対側(図1中下側)の端部は、回転用治具12の長さ方向(図1中上下方向)に対して垂直かつ平坦に形成されている。
【0042】
それにより、回転用治具12の連結部16の保持部14と反対側の端部に、図7に示す幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3の上端面と略同一の形状、及び略同一の大きさの接続端面12aが形成されるようになっている。
【0043】
また、連結部16の保持部14側(図1中上側)の端部は、ウェブ部16aの幅寸法が、連結部16の長さ途中部から上端部に向かって徐々に小さくなり、それに伴い、4つのフランジ部16bが、連結部16の長さ途中部から中心軸側に折れ曲がって、保持部14のフランジ部14bの外側面に向かって傾斜するように形成されている。
【0044】
そして、図1に示すように、連結部16は、保持部14の長さ方向の一方(図中下側)の端部に、連結部16の中心軸と保持部14の中心軸が、回転用治具12の中心軸と一致するように配置され、保持部14と一体的に設けられている。
【0045】
また、連結部16の接続端面12a寄りのウェブ部16aやフランジ部16bには、図1に示すように、それらのウェブ部16aやフランジ部16bを厚さ方向に貫通するボルト孔16cが複数設けられている。
【0046】
一方、図1に示すように、回転用治具12の保持部14の長さ方向の他方(図中上側)の端部には、クレーン等を用いて回転用治具12を吊り上げたり移動させたりするための、吊部18が設けられている。
【0047】
回転用治具12の吊部18は、図1及び図2(a)に示すように、回転用治具12の長さ方向に所定の厚さ寸法を有し、平面形状が略八角形に形成された板状の端板部18aと、端板部18aの外側面に設けられ、保持部14と反対側(図1中上側)に伸びる4つの細長い板状の側板部18bを備えている。
【0048】
吊部18の端板部18aは、図2(a)に示すように、保持部14の長さ方向の他方の端部に一体的に設けられており、その平面形状を形成する8つの辺のうちの4つの辺が、保持部14の長さ方向に対して垂直な断面における4つのフランジ部14bのそれぞれの外側辺に沿うように形成されている。
【0049】
そして、吊部18の側板部18bは、上記フランジ部14bの外側辺に相当する端板部18aの4つの外側面の、それぞれの略中央部に端板部18aと一体的に設けられ、それぞれの側板部18bの保持部14と反対側に伸びるその板部には、回転用治具12の中心軸から径方向外側に向けて側板部18bを貫通する吊孔18cが形成されている。
【0050】
このような回転用治具12は、構真柱2と同様に、十分な強度を有する鋼材により形成され、保持部14、連結部16、及び吊部18は、一体的に設けられている。
【0051】
次に、本実施の形態に係る回転用治具12を用いて、図7に示すような幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3を含む複数の分割部材3を繋ぎ合わせて、一本の構真柱2を形成する方法について説明する。
【0052】
まず、図3に示すように、回転用治具12を、幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3(図7参照)の上端部に、回転用治具12の連結部16の接続端面12aと分割部材3の上端面を突き合わせるようにして、分割部材3の中心軸と回転用治具12の中心軸が一致するように配置する。
【0053】
そして、図3に示すように、2枚の連結板20を用いて、隣り合う分割部材3の上端部のウェブ部2aと回転用治具12の連結部16のウェブ部16a(及び、隣り合う分割部材3の上端部のフランジ部2bと回転用治具12の連結部16のフランジ部16b)を同時に挟み込み、ボルト及びナットを用いて、これらの2枚の連結板20を両側から締め付けることにより、回転用治具12を分割部材3の上端部に固定する。
【0054】
そして、図4に示すように、そのようにして分割部材3に取り付けられた回転用治具12の保持部14と、回転用治具12が取り付けられた分割部材3の回転用治具12と反対側(図中左側)の端部を、それぞれ、円環状に形成されると共に、反転機10を用いてその中心軸回りに回転可能な回転機構を有する保持具8の保持機構8aに設置して(図6(b)参照)、保持具8の中心軸と分割部材3の中心軸、すなわち、保持具8の中心軸と回転用治具12の中心軸が一致するように、それぞれの長さ途中部をそれぞれの保持具8に保持させる。
【0055】
そして、回転用治具12が取り付けられた分割部材3を含む複数の分割部材3を、横向きに寝かせた状態で、それぞれの長さ部分が構真柱2の長さ方向(図4中左右方向)に沿って水平に伸びるよう並べ、それぞれの分割部材3の中心軸が一致すると共に、隣り合う分割部材3の長さ方向(図4中左右方向)の一方の端部同士を接続できるように配置する。
【0056】
そして、複数の反転機10を用いて、回転用治具12が取り付けられた分割部材3を含む複数の分割部材3を保持する全ての保持具8を、その中心軸回りに同時かつ同一速度で回転させることにより、隣り合って配置された分割部材3を、互いの端部同士を接続できるように配置した状態のまま、その中心軸回りに回転させる。
【0057】
そして、それら複数の分割部材3を回転させながら、隣り合う分割部材3の端面同士が互いに対向する接合部Wを、構真柱2の全周に亘って溶接等により接合することにより、隣り合う分割部材3を繋ぎ合わせる。
【0058】
このようにして、本実施の形態に係る回転用治具12を用いることにより、図7に示すような、保持具8が保持することのできない大きさの幅広部2cを上端部に有する構真柱2であったとしても、横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることができる。
【0059】
すなわち、図3及び図4に示すように、幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3の上端部に回転用治具12を取り付けることにより、分割部材3の幅広部2c側の端部が、回転用治具12の保持部14となり、その幅寸法を幅広部2cの幅寸法より小さく、保持部14の長さ部分を、回転機構を有する保持具8の保持機構8a(図6(b)参照)に設置して、保持部14の長さ途中部を保持具8に保持させることができるような寸法に形成することができる。
【0060】
そして、回転用治具12の保持部14は、保持具8に保持させることができるため、幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3であっても、その幅広部2c側の端部を、回転用治具12の保持部14を介して、保持具8に保持させることができ、横向きに寝かせた状態でその中心軸回りに回転させながら繋ぎ合わせることができるようになっている。
【0061】
したがって、このような本実施の形態に係る構真柱の回転用治具12によれば、複数の分割部材を繋ぎ合わせて一本の構真柱を形成する際に、それらの複数の分割部材を、大きさ等によらず、横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることができる。
【0062】
そして、それにより、上述したような、縦孔の内部で縦向きに起こした状態で構真柱を形成する作業を行う必要がなくなるため、そのためのさまざまな作業や費用が発生せず、それに伴う、工期の遅れや施工コストの増加を防止することができる。
【0063】
さらに、図7に示すような上端部に幅広部2cを有する構真柱2は重心が高く、縦向きに起こした状態で作業を行うと風等の影響を受けて不安定になり易くなるが、横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることにより、より安全に作業を行うことができる。
【0064】
また、本実施の形態に係る回転用治具12は、その保持部14の断面形状が構真柱2の断面形状と略同一の形状に形成されているため、構真柱2と同程度の十分に大きな強度を得ることができると共に、工場等で構真柱2の分割部材3を製造する際に使用する部材の一部を流用して、回転用治具12の保持部14を形成することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る回転用治具12は、回転用治具12の連結部が構真柱2の分割部材3に対して着脱可能に固定できるように構成されているため、分割部材3を繋ぎ合わせる作業が完了した後に回転用治具12を取り外すことができ、取り外した回転用治具12を再度使用することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る回転用治具12は、保持部14の長さ方向の他方(図1中上側)の端部に吊部18が設けられているため、その吊孔18cにシャックル等を取り付けて、クレーン等を用いて回転用治具12を吊り上げることができるようになっているため、施工現場における回転用治具12の取り回しを向上させることができる。
【0067】
また、分割部材3を繋ぎ合わせる作業が完了した後に回転用治具12を取り外さずにおくことにより、クレーン等を用いて回転用治具12を吊り上げて、構真柱2を吊り上げることができるため、構真柱2を形成した後の、構真柱2の建て起こしや、杭孔までの移動、杭孔内への下降等の作業の効率を向上させることができる。
【0068】
また、シャックル等を取り付けることができる側板部18bが、吊部18の端板部18aの外側面の4か所に設けられたことにより、構真柱2の下端部側を吊り上げるための治具が構真柱2の外周部のどの位置に設けられていたとしても、これに対応する側板部18bを4か所の中から選択してシャックル等を取り付けることができるため、回転用治具12を取り付けた際の回転用治具12の中心軸回りの向きによらず、スムーズに建て起こし等の作業を行うことができる。
【0069】
なお、本発明は、前記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明と同一の目的を達成することができるものであれば、種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、前記実施の形態に係る回転用治具12においては、図2(a)に示すように、回転用治具12の保持部14は、その長さ方向に対して垂直な断面形状が、構真柱2の断面形状(図5(b)及び(c)参照)と略同一の形状に形成されているが、保持部14の長さ途中部を保持具8に保持させることができれば、保持部14の断面形状はどのような形状に形成されていてもよい。
【0071】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12においては、回転用治具12の連結部16は、その長さ方向の保持部14と反対側の端面が、図7に示す幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3の上端面と略同一の形状、及び略同一の大きさに形成されているが、幅広部2cを有する構真柱2の分割部材3の上端部に取り付けることができれば、連結部16はどのような形状に形成されていてもよい。
【0072】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12においては、回転用治具12の連結部16は構真柱2の分割部材3に、連結板20とボルト及びナットを用いて固定されているが、回転用治具12の連結部16と構真柱2の分割部材3はどのような手段で固定されていてもよい。
【0073】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12においては、図3に示すように、回転用治具12の接続端面12aと分割部材3の上端面が互いに対向し、互いの端面同士をわずかに離した状態で配置されているが、回転用治具12と分割部材3の中心軸が一致していれば、回転用治具12の接続端面12aと分割部材3の上端面が互いに接触した状態で固定されていてもよい。
【0074】
そして、回転用治具12の接続端面12aと分割部材3の上端面が、互いに接触せずに離れた状態で固定されているのであれば、回転用治具12の接続端面12aと分割部材3の上端面は互いに垂直かつ平坦に形成されていなくてもよい。
【0075】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12においては、図6に示すように、分割部材3や回転用治具12の保持部14を保持するために円環状に形成された保持具8を用いているが、分割部材3や回転用治具12の保持部14を保持して、それらの中心軸回りに回転させることができれば、保持具8は円環状に形成されていなくてもよい。
【0076】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12において、回転用治具12が取り付けられる構真柱2は、図5(b)及び(c)に示すように、その長さ方向に対して垂直な断面形状が、略十字型に形成されたウェブ部2aとこのウェブ部2aの4つの先端部のそれぞれに対して略直角に設けられた4つのフランジ部2bを備えて形成されているが、構真柱2はそのような断面形状のものに限定されるものではなく、例えば、構真柱2の断面が略十字型やH型、I型等に形成されていてもよいし、または、構真柱2が角筒状や円筒状に形成されていてもよい。
【0077】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12においては、図4に示すように、複数の分割部材3の端部同士が互いに対向し、互いの端面同士をわずかに離した状態で配置された接合部Wを溶接等により接合することにより、複数の分割部材3を繋ぎ合せているが、複数の分割部材3は、溶接以外の他の手段で繋ぎ合せてもよい。
【0078】
例えば、図3に示す回転用治具12と分割部材3の固定部のような、連結板20を用いて複数の分割部材3を繋ぎ合わせてもよいし、そのような連結板20を用いた固定手段と、上記のような溶接による固定手段を併用してもよい。
【0079】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12において、回転用治具12が取り付けられる構真柱2は、その上端部に保持具8に保持させることができない大きさの幅広部2cが設けられているが、そのような幅広部2cが構真柱2の上端部ではなく、例えば、構真柱2の下端部や上下両端部に形成されているような場合であっても、前記実施の形態に係る回転用治具12を用いることによって、幅広部2cを有する分割部材3を横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることができる。
【0080】
また、前記実施の形態に係る回転用治具12において、回転用治具12が取り付けられる構真柱2は、分割部材3の幅広部2cの幅寸法が大きすぎるため、保持具8に保持させることができなくなっているが、その他の理由、例えば、分割部材3の幅寸法が極端に小さいとか、分割部材3の側面が傾斜している等の理由により、分割部材3を保持具8に保持させることができなくなっていた場合であっても、前記実施の形態に係る回転用治具12を用いることによって、そのような分割部材3を横向きに寝かせた状態で繋ぎ合わせることができる。
【符号の説明】
【0081】
2 構真柱
2a ウェブ部
2b フランジ部
2c 幅広部
3 分割部材
4 ダイヤフラム
6 スタッド
8 保持具
8a 保持機構
10 反転機
12 回転用治具
12a 接続端面
14 保持部
14a ウェブ部
14b フランジ部
16 連結部
16a ウェブ部
16b フランジ部
16c ボルト孔
18 吊部
18a 端板部
18b 側板部
18c 吊孔
20 連結板
W 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7