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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】端子モジュールおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6581 20110101AFI20220111BHJP
   H01R 13/6473 20110101ALI20220111BHJP
   H01R 13/516 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01R13/6581
H01R13/6473
H01R13/516
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018247607
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107568
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】一尾 敏文
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063795(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003466(WO,A1)
【文献】特開2017-098081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6581
H01R 13/6473
H01R 13/516
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の被覆電線と、前記被覆電線の外周を覆う導電性のシールド部と、前記シールド部の外周を覆うシース部と、を有するシールド電線と、
前記被覆電線に接続される内導体と、
前記内導体を収容し、前記被覆電線が引き出される樹脂製の端子収容部材と、
前記端子収容部材を収容し、前記被覆電線が引き出される筒状部を有する金属製の第1外導体と、
前記第1外導体の前記筒状部において前記被覆電線が引き出される側の端部を覆う覆い部を有する金属性の第2外導体と、を備えた端子モジュールであって、
前記第1外導体における前記端部には、前記第2外導体の前記覆い部の内周面に沿って配され、前記被覆電線が引き出される方向に向かうほど前記筒状部の軸線に向かって延出する絞り込み部が設けられており、
前記端子収容部材は、前記端子収容部材の外面に凹んで設けられ、前記筒状部に前記端子収容部材を収容する過程において、前記絞り込み部との干渉を回避する逃がし部を有している端子モジュール。
【請求項2】
前記筒状部は、角筒状に形成され、前記絞り込み部は、前記筒状部の角部に連なるように丸みを帯びて形成されており、
前記端子収容部材は、角柱状に形成されており、
前記逃がし部は、前記端子収容部材の前記絞り込み部側の隅部に前記端子収容部材の挿入方向に沿って形成されている請求項1に記載の端子モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子モジュールと、
前記端子モジュールを収容するハウジングと、を備えたコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、端子モジュールおよびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信用の信号が伝送されるシールド電線の端末に接続されたシールドコネクタとして、特開2013-229255号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。このシールドコネクタは、シールド電線のシールド箔とシース部とを皮剥ぎして露出させたシールド線に接続されるオス端子と、オス端子を収容するインナハウジングと、インナハウジングを覆う筒状部を有し、シールド電線のシールド箔に接続されるシールドシェルと、シールドシェルを覆うシールドシェルカバーとを備えている。
【0003】
シールドコネクタを組み立てる際には、まず、シールド線に圧着接続されたオス端子をインナハウジング内に挿入することによって、インナハウジング内にオス端子が収容された端子モジュールを構成する。そして、端子モジュールをシールドシェルの後端部に設けられた挿入部から筒状部に挿入し、シールドシェルの挿入部を上方から覆うようにシールドシェルカバーを装着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-229255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のコネクタは、シールド電線の端末において皮剥ぎされたシールド線が、シールドシェルおよびシールドシェルカバーによって覆われているものの、シールドシェルとシールドシェルカバーとの間の隙間が大きいと、隙間からノイズが漏れたり、外部からのノイズが侵入したりすることによって通信品質が低下してしまう。このため、シールドシェルの筒状部の端部に径方向内側に絞り込んだ絞り込み部を形成し、絞り込み部に対してシェルカバーを沿わせることでシールドシェルとシールドシェルカバーとの間の隙間を小さくする構成が検討されている。
【0006】
ところが、筒状部の端部に絞り込み部を形成すると、筒状部内に挿入部からインナハウジングを挿入する際に、絞り込み部とインナハウジングとが干渉するなどシールドシェルへのインナハウジングの組み付け作業が悪化してしまう。
【0007】
本明細書では、通信品質が低下することを抑制しつつ、組み付け作業性が悪化することを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示される技術は、少なくとも1本の被覆電線と、前記被覆電線の外周を覆う導電性のシールド部と、前記シールド部の外周を覆うシース部と、を有するシールド電線と、前記被覆電線に接続される内導体と、前記内導体を収容し、前記被覆電線が引き出される樹脂製の端子収容部材と、前記端子収容部材を収容し、前記被覆電線が引き出される筒状部を有する金属製の第1外導体と、前記第1外導体の前記筒状部において前記被覆電線が引き出される側の端部を覆う覆い部を有する金属性の第2外導体と、を備えた端子モジュールであって、前記第1外導体における前記端部には、前記第2外導体の前記覆い部の内周面に沿って配され、前記被覆電線が引き出される方向に向かうほど前記筒状部の軸線に向かって延出する絞り込み部が設けられており、前記端子収容部材は、前記端子収容部材の外面に凹んで設けられ、前記筒状部に前記端子収容部材を収容する過程において、前記絞り込み部との干渉を回避する逃がし部を有している構成とした。
【0009】
また、本明細書によって開示される技術は、コネクタであって、前記端子モジュールと、前記端子モジュールを収容するハウジングと、を備えている。
このような構成の端子モジュールによると、第1外導体の絞り込み部に対して第2外導体の覆い部を沿うように配置できるから、第1外導体の筒状部の端部および絞り込み部と第2外導体の覆い部との間の隙間からノイズが漏れたり、外部からノイズが侵入したりすることを抑制することができる。これにより、端子モジュールにおいて通信品質が低下することを抑制することができる。
【0010】
また、端子収容部材に逃がし部が設けられているから、第1外導体の筒状部に対して端子収容部材を収容する過程において絞り込み部と端子収容部とが干渉することを回避することができる。これにより、第1外導体に端子収容部を組み付ける組み付け作業性が悪化することを抑制することができる。
【0011】
本明細書によって開示される端子モジュールは、以下の構成としてもよい。
前記筒状部は、角筒状に形成され、前記絞り込み部は、前記筒状部の角部に連なるように丸みを帯びて形成されており、前記端子収容部材は、角柱状に形成されており、前記逃がし部は、前記端子収容部材の前記絞り込み部側の隅部に前記端子収容部材の挿入方向に沿って形成されている構成としてもよい。
【0012】
一般に、角筒状の筒状部の端部を金属製の覆い部によって覆う場合、筒状部の角部と覆い部との間に隙間が形成されやすくなる。ところが、このような構成によると、筒状部の角部の端部に絞り込み部が丸みを帯びて形成されているから、筒状部の端部および絞り込み部と覆い部との間の隙間を小さくすることができる。これにより、筒状部の端部および絞り込み部と覆い部との間の隙間からノイズが漏れたり、外部からノイズが侵入したりすることを抑制し、通信品質が低下することを抑制することができる。
【0013】
また、端子収容部材は、絞り込み側の隅部に逃がし部が設けられて丸みを帯びた形態となっているから、端子収容部を上下反転させて組み付けるといったいわゆる誤組みを防止する誤組防止部として逃がし部を兼用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書によって開示される技術によれば、通信品質が低下することを抑制しつつ、組み付け作業性が悪化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るコネクタの斜視図
図2】コネクタの正面図
図3図2のA-A線断面図
図4】コネクタの分解斜視図
図5】ロア部材とアッパ部材とを組み付ける前の状態を示す斜視図
図6】ロア部材とアッパ部材とを組み付ける前の状態を示す正面図
図7】上下反転させたアッパ部材の斜視図
図8】第1外導体の斜視図
図9】第1外導体の平面図
図10】第1外導体の側面図
図11】第1外導体の背面図
図12】内導体が組み付けられた上下反転状態のアッパ部材にロア部材を組み付ける前の状態を示す斜視図
図13】内導体が端子収容部材に収容された状態を示す斜視図
図14】内導体が端子収容部材に収容された状態を示す正面図
図15】内導体が端子収容部材に収容された状態を示す側面図
図16】第1外導体に端子収容部材を組み付ける前の状態を示す斜視図
図17】筒状部に端子収容部材が収容された状態を示す斜視図
図18】筒状部に端子収容部材が収容された状態を示す側面図
図19】第1外導体に第2外導体を組み付ける前の状態を示す斜視図
図20】上下反転させた状態の端子モジュールの斜視図
図21】端子モジュールの平面図
図22】端子モジュールの底面図
図23】他の実施形態に係る第1外導体に端子収容部材を組み付ける前の状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本明細書に開示された技術における一実施形態について図1から図23を参照して説明する。
【0017】
本実施形態は、例えば電気自動車やハイブリット自動車等の車両に搭載され、例えば車両内における車載電装品(カーナビゲーションシステム、ETC、モニタ等)と外部機器(カメラ等)との間や、車載電装品間の有線の通信経路に配される通信用のコネクタ10を例示している。なお、以下の説明において、F側を前側、B側を後側として説明する。
【0018】
コネクタ10は、図1から図4に示すように、シールド電線11と、シールド電線11の前側の端末に接続される複数の内導体20と、複数の内導体20を収容する端子収容部材30と、端子収容部材30の外周を覆った状態でシールド電線11に接続される外導体50と、外導体50を収容するハウジング70とを備えて構成されている。
【0019】
シールド電線11は、複数の被覆電線12と、複数の被覆電線12の外周を一括して覆う編組線からなるシールド部15と、シールド部15のさらに外周を覆う絶縁性の被覆からなるシース部16とを備えて構成されている。本実施形態のシールド電線11は、2本の被覆電線12がシールド部15に一括して覆われている。
【0020】
各被覆電線12は、導電性を有する芯線13を絶縁性の絶縁被覆14によって覆った形態とされている。被覆電線12は、シールド部15に覆われた状態では、2本の被覆電線12が捻って撚り合わせた状態となっており、シールド電線11の端末である前端部では、シース部16が皮剥ぎされて、撚りが解かれた状態の2本の被覆電線12とシールド部15とが露出している。
【0021】
シールド部15は、複数の導電性を有する金属細線を筒状に編んで形成されている。シース部16の端末から露出したシールド部15は、シース部16の端部上に折り返されてシース部16の端部の外周を覆っており、このシールド部15が折り返された部分は、折り返し部15Aとされている。
【0022】
折り返し部15Aから前方に引き出された各被覆電線12の前端部は、絶縁被覆14がさらに皮剥ぎされることによって芯線13が露出しており、露出した芯線13には内導体20が電気的に接続されている。
【0023】
内導体20は、導電性を有する金属板材をプレスなどによって加工することによって形成されている。内導体20は、いわゆる雄型端子であって、ピン型の端子接続部22を有しており、端子接続部22の後方に芯線13および絶縁被覆14の端末に圧着して接続される電線接続部24が連なって形成されている。
【0024】
被覆電線12において内導体20とシールド部15における折り返し部15Aとの間に被覆電線12はシールド部15から露出した露出部17とされており、露出部17には、露出部17におけるインピーダンスを調整するための調整部材80が装着されている。
【0025】
調整部材80は、導電性を有する金属板材をプレスなどによって加工することによって形成されている。調整部材80は、被覆電線12における露出部17の外周にそれぞれ装着される2つの調整部本体82と、2つの調整部本体82を連結する連結部85とを備えて構成されている。
【0026】
それぞれの調整部本体82は、露出部17の外周面を周方向に覆う略円筒状に形成されている。調整部本体82は、露出部17の前後方向略中央部に装着されており、調整部本体82の前後方向の長さ寸法は、露出部17の前後方向の長さ寸法よりもやや短くなっている。
【0027】
連結部85は、上方に向かって膨らむように湾曲した形態とされており、2つの調整部本体82を左右方向に連結している。また、連結部85は、図12に示すように、後部に比べて前部が左右方向に幅広に形成されている。したがって、調整部材80は、後部よりも前部が左右方向に幅広となっている。
【0028】
端子収容部材30は、合成樹脂製であって、図12から図16に示すように、前後方向に長い直方体状に形成されている。
端子収容部材30の前後方向中央部よりも前側には、前後方向に延びるキャビティ32が左右方向に2つ並んで形成されている。各キャビティ32内には、図3および図12に示すように、被覆電線12に接続された内導体20が収容されている。
【0029】
端子収容部材30の後部は、2つの内導体20から後方に引き出された露出部17が調整部材80を装着した状態で収容される大収容部33とされている。
【0030】
また、端子収容部材30は、図4から図7図12から図16に示すように、下部に配置されるロア部材35と、上部に配されるアッパ部材40とを上下方向に組み合わせることで構成されている。
【0031】
ロア部材35は、図4から図6に示すように、端子収容部材30の下壁31Dを構成する底壁35Dと、底壁35Dの両側縁35DWに設けられた一対の係止片36とを備えて構成されている。底壁35Dは、前後方向に長い略矩形の板状に形成されており、底壁35Dには2つの内導体20が左右方向に並んで載置されるようになっている。
【0032】
一対の係止片36は、底壁35Dの前後方向略中央部において上方に延出されて形成されており、各係止片36は、左右方向に貫通する略矩形状の係止孔36Aを有している。
【0033】
アッパ部材40は、図4から図7に示すように、端子収容部材30の上壁31Uを構成する天井壁40Uと、天井壁40Uの前端部に設けられた前壁42と、天井壁40Uの左右方向の両側縁にそれぞれ設けられた側壁44とを備えて構成されている。
【0034】
天井壁40Uは、前後方向に長い略矩形の平板状に形成されており、ロア部材35の底壁35Dとは反対側から内導体20および被覆電線12の端部を覆う大きさとされている。天井壁40Uの左右方向略中央部には、天井壁40Uから下方に向けて延出する隔壁45が形成されている。隔壁45は、アッパ部材40とロア部材35とが組み付けられると、ロア部材35の底壁35Dと上下方向に対向するように近接して配され、端子収容部材30内に内導体20が収容される2つのキャビティ32を構成する。
【0035】
前壁42は、天井壁40Uの前端縁から下方に延びた板状に形成されており、前壁42には、雄端子が挿通される挿入口42Aが設けられている。
【0036】
一対の側壁44は、それぞれが天井壁40Uから下方に延出した形態とされており、前壁42の左右方向の両側の側縁にそれぞれ連なって形成されている。
【0037】
各側壁44の前後方向略中央部には、アッパ部材40とロア部材35とが組み付けられた際に、ロア部材35の係止片36が嵌合される嵌合凹部44Aが形成されている。嵌合凹部44Aは、側壁44の側面から内側に向かって凹んだ形態をなしており、嵌合凹部44Aの内面には、外方にむかって突出する係止突起46が形成されている。
【0038】
係止突起46は、アッパ部材40とロア部材35とが組み付けられて嵌合凹部44A内にロア部材35の係止片36が嵌合された際に、図13および図15に示すように、係止片36の係止孔36Aに嵌まり込んでアッパ部材40とロア部材35とを組み付けた状態に保持するようになっている。
【0039】
外導体50は、図19から図22に示すように、端子収容部材30の外周を覆う第1外導体51と、第1外導体51およびシールド電線11の折り返し部15Aの外周を覆うように第1外導体51に組み付けられる第2外導体60とによって構成されている。
【0040】
第1外導体51は、導電性を有する金属板材をプレスなどによって加工することによって形成されている。第1外導体51は、図3に示すように、端子収容部材30を収容する筒状部52と、筒状部52の下側後端縁に設けられたシールド接続部53とを備えている。
【0041】
筒状部52は、図8から図11に示すように、正面視略矩形の角筒状に形成されている。筒状部52における左右方向の内寸法は、端子収容部材30の左右方向の幅寸法よりも僅かに大きく形成されており、図3に示すように、筒状部52内に端子収容部材30が後方から適合して収容されるようになっている。
【0042】
シールド接続部53は、筒状部52の下側後端縁から斜め下後方に向かって延びる繋ぎ片54と、繋ぎ片54の後端縁から後方に向かって延びる略矩形の板状の舌片55とを備えている。
【0043】
繋ぎ片54は、図8および図9に示すように、筒状部52の下側後端縁から後方に向かうほど左右方向の幅寸法が小さくなるように形成されており、筒状部52の軸線を中心に僅かに円弧状に形成されている。
舌片55は、繋ぎ片54の円弧状の後端縁に連なるように筒状部52の軸線を中心にやや円弧状に形成されており、筒状部52内に端子収容部材30が収容されると、図17から図19に示すように、シールド電線11における折り返し部15Aの下方に配置されるようになっている。
【0044】
第2外導体60は、導電性を有する金属板材をプレスなどによって加工することによって形成されている。第2外導体60は、図19に示すように、筒状部52からシールド電線11の折り返し部15Aの位置まで延びる覆い部61と、覆い部61の前部に設けられた一対の固定バレル62と、覆い部61の後部に設けられた一対の接続バレル63とを備えて構成されている。
【0045】
覆い部61は、筒状部52の後部から折り返し部15Aまでの領域を上方から覆う大きさに形成されており、覆い部61の前部には、上下方向に貫通するランス孔61Aが設けられている。
【0046】
一対の固定バレル62は、覆い部61の前部における左右方向の両側縁に設けられており、左右方向の両側から巻き付くように筒状部52の後部に圧着されるようになっている。
【0047】
一対の接続バレル63は、一対の固定バレル62の後方に連なるように覆い部61の後部における左右方向の両側縁に設けられている。
【0048】
一対の接続バレル63のうちの一方は、折り返し部15Aにおける左右方向の一方の側部に沿って配置される側板64と、側板64の上端に設けられた固定片65とを有しており、他方は、折り返し部15Aにおける左右方向の他方の側部に沿って配置される側板64と、側板64の上端に設けられた2つの固定片65とを有している。
【0049】
それぞれの固定片65は、図20および図22に示すように、折り返し部15Aの下方に配置された第1外導体51の舌片55と共に折り返し部15Aの下部に巻き付くように圧着固定される。
【0050】
また、それぞれの固定片65の先端部には、内側に向かって折り返したフック部66が形成されている。
【0051】
フック部66は、図20に示すように、それぞれの固定片65が圧着されると舌片55の左右方向の両側縁のいずれか一方に引っ掛かることにより、それぞれの固定片65をシールド部15から外れないように固定する。これにより、第1外導体51と第2外導体60とによって構成される外導体50がシールド電線11のシールド部15に電気的に接続固定されるようになっている。
【0052】
ハウジング70は、合成樹脂製であって、図3に示すように、内導体20と端子収容部材30と外導体50とがシールド電線11の端末に組み付けられた端子モジュール68を収容するモジュール収容部72を有している。
【0053】
モジュール収容部72は、図1から図4に示すように、前後方向に貫通する略角筒状に形成されており、モジュール収容部72内には、端子モジュール68の外導体50におけるランス孔61Aの縁部と係止可能なランス73が設けられている。ランス73は、端子モジュール68がモジュール収容部72の正規収容位置に収容されると、図3に示すように、ランス孔61Aに嵌まり込み、ランス73とランス孔61Aの縁部とが係止することで端子モジュール68がハウジング70内に保持されるようになっている。
【0054】
さて、第1外導体51の筒状部52における左右方向両側の下側角部52Aの後端縁52Bには、図8から図11に示すように、第2外導体60の覆い部61の内周面61Bに沿って配され、被覆電線12が引き出される方向である後方に向かうほど筒状部52の軸線に向かって延出する絞り込み部56がそれぞれ設けられている。
【0055】
各絞り込み部56は、シールド接続部53の繋ぎ片54の側縁に連なるように丸みを帯びて形成されており、図に示すように、繋ぎ片54の両側における絞り込み部56間の距離L1は筒状部52の後端開口の左右方向の幅寸法L2よりもやや小さくなっている。
【0056】
したがって、第1外導体51を後方から視ると、端子収容部材30を挿入するための挿入経路Rは、図11に示すように、下部が上部に比べて左右方向に幅狭となっている。
【0057】
また、筒状部52における左右方向両側の下側角部52Aの後端縁52Bに絞り込み部56が繋ぎ片54の側縁に連なるように丸みを帯びて形成されているから、第2外導体60の一対の固定バレル62が筒状部52の後部に圧着され、一対の接続バレル63が折り返し部15Aに圧着されると、図20および図22に示すように、第2外導体60の覆い部61の内周面61Bに絞り込み部56が沿って配され、筒状部52の後端部および絞り込み部56と覆い部61との間の隙間を小さくすることができるようになっている。
【0058】
一方、端子収容部材30の左右方向両側の下側隅部30Aには、図13から図16に示すように、第1外導体51の筒状部52に端子収容部材30を収容する過程において、端子収容部材30が絞り込み部56と干渉することを回避する逃がし部34がそれぞれ形成されている。
【0059】
各逃がし部34は、端子収容部材30の側壁31Wの外面および下壁31Dの外面に凹んで形成されており、端子収容部材30の挿入方向(前後方向)に沿うように端子収容部材30の全長に亘って設けられている。また、各逃がし部34は、図11に示すように、第1外導体51の絞り込み部56の後端縁56Aを後方から視たときの傾斜状態と同じになるように、下方に向かうほど内側に向かって傾斜した形態とされている。
【0060】
また、端子収容部材30における逃がし部34は、図4から図7に示すように、アッパ部材40の側壁44の下端縁44Bに形成されていると共に、ロア部材35の底壁35Dにおける左右方向の両側縁35DWおよび係止片36における下縁部36Bに形成されている。そして、これらの逃がし部34は、図13から図16に示すように、アッパ部材40とロア部材35とを上下方向に組み付けることによって一体となり、端子収容部材30の左右方向両側の下側隅部30Aに逃がし部34が前後方向の全長に亘って形成されるようになっている。
【0061】
したがって、端子収容部材30は、下部が上部に比べて左右方向に幅狭となっており、端子収容部材30の下部は、図14に示すように、正面視逆台形状となっている。また、端子収容部材30の逃がし部34は、第1外導体51の筒状部52に端子収容部材30を収容する過程において、絞り込み部56の内側を進入し、筒状部52に対して端子収容部材30が挿入できなくなることを回避することができるようになっている。
【0062】
本実施形態は、以上のような構成であって、次に、通信用のコネクタ10の組み立て手順の一例を簡単に説明し、続けて、コネクタ10の作用および効果について説明する。
【0063】
まず、シールド電線11のシース部16を皮剥ぎして、2本の被覆電線12の端末とシールド部15を露出させ、シールド部15をシース部16の外面に折り返して折り返し部15Aを形成する。また、2本の被覆電線12の前端部の絶縁被覆14を皮剥ぎして芯線13を露出させ、露出した芯線13に電線接続部24を圧着して内導体20を接続する。
【0064】
次に、シールド電線11の2本の被覆電線12の露出部17に調整部材80を装着する。ここで、調整部材80は、露出部17に装着する前の展開状態では、図4に示すように、調整部本体82を構成する上側の部分が上方に開いた状態となっている。調整部本体82が開いた状態の調整部材80上に被覆電線12の露出部17を配置し、露出部17に巻き付けるようにして調整部本体82を圧着することにより露出部17に調整部材80が固定される。
【0065】
次に、図12に示すように、上下反転させたアッパ部材40の天井壁40U上に2つの内導体20を組み付け、アッパ部材40に対してロア部材35を上方から組み付ける。これにより、図13から図16に示すように、内導体20が端子収容部材30に収容される。
【0066】
ここで、アッパ部材40にロア部材35を組み付けると、アッパ部材40の側壁44の下端縁44Bに形成された逃がし部34と、ロア部材35の底壁35Dの左右方向の両側縁35DWおよび係止片36の下縁部36Bに形成された逃がし部34とが一体となり、端子収容部材30の下側における左右方向両側の下側隅部30Aに前後方向に端子収容部材30の全長に亘って延びる逃がし部34が形成される。
【0067】
次に、図16から図19に示すように、外導体50の第1外導体51における筒状部52の後方から端子収容部材30を挿入し、第1外導体51に対して第2外導体60を組み付ける。
【0068】
第2外導体60の組み付けは、第1外導体51の舌片55が下側になるように第2外導体60の覆い部61を第1外導体51に上方から組み付け、固定バレル62を筒状部52に巻き付けるようにして圧着する。また、接続バレル63のそれぞれの固定片65を舌片55およびシールド部15に巻き付けるようにして圧着する。
【0069】
ここで、一対の固定バレル62が筒状部52の後部に圧着され、一対の接続バレル63が折り返し部15Aに圧着されると、筒状部52における左右方向両側の下側角部52Aの後端縁52Bに絞り込み部56が繋ぎ片54の側縁に連なるように丸みを帯びて形成されているから、図20および図22に示すように、第2外導体60の覆い部61の内周面61Bが絞り込み部56に沿って配され、筒状部52の後端部および絞り込み部56と覆い部61との間の隙間を小さくすることができる。これにより、筒状部52の後端部および絞り込み部56と覆い部61との間の隙間からノイズが漏れたり、外部からノイズが侵入したりすることを抑制し、通信品質が低下することを抑制することができる。
【0070】
また、それぞれの固定片65が圧着されると、図20に示すように、固定片65のフック部66が舌片55の側縁に引っ掛かることで固定片65が舌片55およびシールド部15から外れないように固定され、シールド電線11の端末に内導体20と端子収容部材30と外導体50とが組み付けられた端子モジュール68が完成する。
【0071】
最後に、端子モジュール68をハウジング70のモジュール収容部72に後方から挿入し、端子モジュール68が正規の収容位置に至ると、図3に示すように、ランス73が外導体50のランス孔61Aに嵌まり込み、端子モジュール68がハウジング70内に抜け止めされて保持される。これにより、通信用のコネクタ10が完成する。
【0072】
次に、通信用のコネクタ10の作用および効果について説明する。
【0073】
本実施形態のように、第1外導体の筒状部の後端部を第2外導体の覆い部によって覆う場合、筒状部と覆い部との間の隙間が大きいと、隙間からノイズが漏れたり、外部からのノイズが侵入したりすることによって通信品質が低下してしまう。そこで、筒状部の後端部に後方に向かうほど径方向内側に延出された絞り込み部を形成し、絞り込み部に対して覆い部を沿わせることで第1外導体と第2外導体との間の隙間を小さくすることが考えられる。しかしながら、筒状部の端部に絞り込み部を形成すると、筒状部内に端子収容部材を挿入する際に、絞り込み部と端子収容部材とが干渉し、筒状部へ端子収容部材を挿入する組み付け作業の悪化が懸念される。
【0074】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、本実施形態の構成を見出した。すなわち、本実施形態のコネクタ10における端子モジュール68は、少なくとも1本の被覆電線12と、被覆電線12の外周を覆う導電性のシールド部15と、シールド部15の外周を覆うシース部16と、を有するシールド電線11と、被覆電線12に接続される内導体20と、内導体20を収容し、被覆電線12が引き出される樹脂製の端子収容部材30と、端子収容部材30を収容し、被覆電線12が引き出される筒状部52を有する金属製の第1外導体51と、第1外導体51の筒状部52において被覆電線12が引き出される側の後端部を覆う覆い部61を有する金属性の第2外導体60と、を備え、第1外導体51の後端部には、図16に示すように、第2外導体60の覆い部61の内周面61Bに沿って配され、被覆電線12が引き出される方向である後方に向かうほど筒状部52の軸線に向かって延出する絞り込み部56が設けられており、端子収容部材30は、端子収容部材30の下壁31Dおよび側壁31Wの外面に凹んで設けられ、筒状部52に端子収容部材30を収容する過程において、絞り込み部56との干渉を回避する逃がし部34を有している。
【0075】
すなわち、本実施形態によると、図20および図22に示すように、第1外導体51の筒状部52の後端縁52Bに設けられた絞り込み部56に対して第2外導体60の覆い部61を沿うように配置できるから、第1外導体51の筒状部52および絞り込み部56と第2外導体60の覆い部61との間の隙間からノイズが漏れたり、外部からノイズが侵入したりすることを抑制することができる。これにより、端子モジュール68において通信品質が低下することを抑制することができる。
【0076】
また、端子収容部材30に逃がし部34が設けられているから、図11に示すように、第1外導体51の筒状部52に対して端子収容部材30を収容する過程において、絞り込み部56と端子収容部材30とが干渉することを回避することができる。これにより、第1外導体51に端子収容部材30を組み付ける組み付け作業性が悪化することを抑制することができる。
【0077】
また、筒状部52は、角筒状に形成され、絞り込み部56は、筒状部52の下側角部52Aの後端縁52Bに連なるように丸みを帯びて形成されており、端子収容部材30は、直方体状(角柱状)に形成されており、逃がし部34は、端子収容部材30の絞り込み部56側である下側隅部30Aに端子収容部材30の挿入方向である前後方向に沿って形成されている。
【0078】
一般に、角筒状の筒状部の後端部を金属製の覆い部によって覆う場合、筒状部の角部と覆い部との間に隙間が形成されやすくなる。
【0079】
ところが、本実施形態によると、図8および図11に示すように、筒状部52の下側角部52Aの後端縁52Bに絞り込み部56が丸みを帯びて形成されているから、筒状部52の後端部および絞り込み部56と覆い部61との間の隙間を小さくすることができる。これにより、筒状部52の後端部および絞り込み部56と覆い部61との間の隙間からノイズが漏れたり、外部からノイズが侵入したりすることを抑制し、通信品質が低下することを抑制することができる。
【0080】
また、端子収容部材30は、下側隅部30Aに逃がし部34が設けられて丸みを帯びた形態となっているから、端子収容部材30を上下反転させて組み付けるといったいわゆる誤組みを防止する誤組防止部として逃がし部34を兼用することができる。
【0081】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0082】
(1)上記実施形態では、筒状部52の下側後端縁にシールド接続部53の繋ぎ片54に連なるように絞り込み部56を構成した。しかしながら、これに限らず、絞り込み部を繋ぎ片と独立して構成してもよい。
【0083】
(2)上記実施形態では、筒状部52の下側後端縁に1つのシールド接続部53が形成された構成とした。しかしながら、これに限らず、筒状部52の後端縁に複数のシールド接続部が形成された構成にしてもよい。
【0084】
(3)上記実施形態では、内導体20を雄側端子として構成した。しかしながら、これに限らず、図23に示すように、内導体120を雌型端子として構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10:コネクタ
12:被覆電線
15:シールド部
16:シース部
20:内導体
30:端子収容部材
30A:下側隅部(「隅部」の一例)
34:逃がし部
51:第1外導体
52:筒状部
52A:下側角部(「角部」の一例)
52B:後端縁(「端部」の一例)
56:絞り込み部
60:第2外導体
61:覆い部
68:端子モジュール
70:ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18
図19
図20
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図22
図23