(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/00 20200101AFI20220111BHJP
D06F 17/12 20060101ALI20220111BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
D06F39/00 Z
D06F17/12
D06F39/08 301A
(21)【出願番号】P 2018237232
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2019-11-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397027031
【氏名又は名称】株式会社ケーアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】今井 和洋
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328762(JP,A)
【文献】特開2006-43103(JP,A)
【文献】特開2018-148997(JP,A)
【文献】特許第4264798(JP,B2)
【文献】特開2017-144109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20-1/26
C02F 1/30-1/38
D06F 1/00-51/02
D06F 58/02-58/08
D06F 58/20-58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りに回転可能であって、洗濯物を洗濯する洗濯槽と、
前記洗濯物を洗濯する洗濯水として電解水を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽に貯蔵された前記電解水中に
前記貯蔵槽の底壁から微細気泡を発生させる発生手段と、
前記電解水を前記貯蔵槽から前記洗濯槽に供給し、かつ、前記洗濯槽から排水された前記電解水を前記貯蔵槽に供給する循環手段と、
を備え、
前記循環手段は、前記貯蔵槽に貯蔵された前記電解水を前記洗濯槽に供給する第一供給部と、前記洗濯槽から排水された前記電解水を前記貯蔵槽に供給する第二供給部と、を有し、
前記第一供給部の一端は、前記貯蔵槽
の下部に接続されており、前記第一供給部の他端は、前記洗濯槽の開口部の上方に位置しており、前記他端には、前記洗濯槽の回転により前記洗濯槽の側壁の内面に押し付けられた前記洗濯物に向かって前記電解水を噴射するシャワーヘッドが形成されている、
洗濯機。
【請求項2】
前記貯蔵槽は、前記電解水に接触するように配置された電極を有し、
前記電極は、電圧が加えられることにより、前記貯蔵槽に貯蔵された前記電解水を電気分解する、
請求項
1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記洗濯槽の前記側壁の前記内面には、前記洗濯物を固定する吊下部が形成されている、
請求項1
又は2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯物を洗濯する洗濯機として、例えば特許文献1に記載されているように、軸線周りに回転可能であって、洗濯物を収容する洗濯槽を備えた洗濯機が知られている。特許文献1に記載の洗濯機において、洗濯槽に供給された洗濯水は、洗い工程が完了すると、洗濯槽から排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような洗濯機では、洗濯槽から排水された洗濯水が再利用されないため、洗濯水を効率的に利用することができず、環境に悪い。そこで、洗濯槽から排水された洗濯水を再利用することが考えられるが、排水された洗濯水は、洗い工程で洗濯物の汚れを分解することにより汚れるため、洗浄効果を維持することが難しい。このような洗濯水を再利用しても、洗濯物を適切に洗濯することができない。
【0005】
そこで、本発明は、洗浄効果を維持しながら洗濯水を再利用することができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、軸線周りに回転可能であって、洗濯物を洗濯する洗濯槽と、洗濯物を洗濯する洗濯水として電解水を貯蔵する貯蔵槽と、貯蔵槽に貯蔵された電解水中に微細気泡を発生させる発生手段と、電解水を貯蔵槽から洗濯槽に供給し、かつ、洗濯槽から排水された電解水を貯蔵槽に供給する循環手段と、を備える。
【0007】
本発明の一態様の洗濯機では、洗濯水として電解水が貯蔵槽から洗濯槽に供給されるため、洗剤等を加えなくても洗浄効果を奏する。さらに、発生手段によって、貯蔵槽に貯蔵された電解水中に微細気泡が発生するため、微細気泡を含む電解水が洗濯槽に供給される。これにより、洗濯物の繊維等に電解水がより入り込み易くなり、洗浄効果が向上する。洗濯槽から排水された電解水は、循環手段によって、貯蔵槽に供給される。この際、貯蔵槽において、電解水中の油分やゴミ等の汚れが微細気泡と共に浮上するため、当該汚れを取り除いて電解水を浄化することができる。そして、浄化された電解水が、循環手段によって、貯蔵槽から洗濯槽に再度供給される。これにより、洗濯槽から排水された電解水を洗濯水として、洗浄効果を維持しつつ再利用することができる。
【0008】
発生手段は、貯蔵槽の下方から微細気泡を発生させてもよい。この場合、貯蔵槽の下方から発生した微細気泡は、貯蔵槽内の電解水の中を、下方から上方に向かって上昇していく。この微細気泡の上昇によって、電解水の中に生じた汚れを下方から上方に向かって好適に浮上させることができ、電解水の浄化をより適切におこなうことができる。
【0009】
発生手段は、貯蔵槽の底壁から微細気泡を発生させてもよい。この場合、貯蔵槽の下方から微細気泡を好適に発生させることができる。
【0010】
循環手段は、貯蔵槽に貯蔵された電解水を洗濯槽に供給する第一供給部と、洗濯槽から排水された電解水を貯蔵槽に供給する第二供給部と、を備え、第一供給部は、貯蔵槽の下部に接続されていてもよい。この場合、貯蔵槽に貯蔵された電解水が、貯蔵槽の下部に接続された第一供給部によって洗濯槽に供給される。これにより、洗濯槽には、貯蔵槽内の電解水のうち、液面よりも下部に近い側の電解水が、液面付近の電解水よりも優先的に供給されることとなる。その結果、電解水中を浮上した汚れを、洗濯水として再利用する電解水と共に洗濯槽に供給してしまうことを抑制することができる。
【0011】
貯蔵槽は、電解水に接触するように配置された電極を有し、電極は、電圧が加えられることにより、貯蔵槽に貯蔵された電解水を電気分解してもよい。この場合、電極に電圧が加えられることによって電解水が電気分解されると、電解水中に酸素と水素とが発生する。酸素は、電解水中に溶けて溶存酸素となり、電解水に対する殺菌効果を奏する。また、水素は、電解水中の汚れを浮上させる効果を奏する。以上より、電解水を殺菌及び浄化しながら適切に再利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄効果を維持しながら洗濯水を再利用することができる洗濯機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る洗濯機の全体構成の一例を示す一部断面図である。
【
図2】
図1の洗濯機における外槽及び洗濯槽の断面構成を示す図である。
【
図3】貯蔵槽における電解水の浄化作用を説明するための図である。
【
図4】
図3の微細気泡周辺を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る洗濯機1の概略構成について説明する。
図1は、洗濯機1の全体構成の一例を示す一部断面図である。
【0016】
図1に示されるように、洗濯機1は、筐体10と、外槽20と、洗濯槽30と、モータ40と、遊星ギヤ50と、貯蔵槽60と、発生装置70と、循環手段80と、を備える。
【0017】
筐体10は、例えば地面等の所定の載置面に載置されている。筐体10は、載置面に対して垂直な上下方向Zで一方側が開口され、かつ、上下方向Zで他方側が閉鎖された、有底の略角筒状を呈している。以下、上下方向Zで一方側を単に「上側」ともいい、上下方向Zで他方側を単に「下側」ともいう。
【0018】
外槽20は、筐体10内に配置されている。外槽20と筐体10との間には、洗濯槽30の回転による振動を抑制するための防振装置90が設けられている。外槽20は、有底の略円筒状を呈している。外槽20は、略円筒状の側壁21と、側壁21の中空部を下端側から塞ぐ底壁22と、を有する。側壁21の上端には、開口部21aが形成されている。底壁22は、その一部分が上側に突出している。外槽20の形状の詳細については、
図2を参照して後述する。
【0019】
洗濯槽30は、外槽20内に配置されている。洗濯槽30は、外槽20よりも小さい有底の略円筒状を呈している。洗濯槽30は、軸線Xを略中心として、軸線Xに沿った方向に延在するように配置されており、軸線X周りに回転可能とされている。軸線Xに沿った方向は、上下方向Zすなわち載置面に対して垂直方向に限らず、垂直方向から傾斜した方向も含む。洗濯槽30は、上下方向Zに沿って延在するとは限らず、上下方向Zに対して傾斜していてもよい。
【0020】
洗濯槽30は、略円筒状の側壁31と、側壁31の中空部を下端側から塞ぐ底壁32と、を有する。側壁31の上端には、開口部31aが形成されている。側壁31と底壁32とによって、洗濯槽30には、内部空間33が形成されており、当該内部空間33に洗濯物Lが収容される。底壁32は、その一部分が上側に突出している。洗濯槽30の形状の詳細については、
図2を参照して後述する。
【0021】
洗濯槽30の側壁31の内面31bには、例えば洗濯物Lを掛けたハンガー等を吊り下げるための吊下部(不図示)が形成されている。当該吊下部に洗濯物Lを掛けたハンガー等が吊り下げられることにより、洗濯物Lが洗濯槽30の側壁31の内面31bに固定され、洗濯槽30と共に回転する。洗濯物Lは、洗濯槽30の回転による遠心力の作用によって、内面31bに押し付けられる。
【0022】
洗濯槽30の内部空間33には、洗濯物Lを洗濯する洗濯水として電解水が供給される。電解水は、水を電気分解することによって得られる水溶液であって、例えば機能性アルカリ電解水であることが好ましい。機能性アルカリ電解水とは、不純物を含まない高純度の純水に電解補助剤として炭酸カリウムを添加し、電気分解することにより得られる水溶液である。機能性アルカリ電解水は、水分子のクラスターサイズを減少させ界面活性機能を増大させる。また、アルカリイオン水に溶け込んだ水酸化カリウムの作用により、強力な洗浄、脱脂、及び防錆効果を奏する。機能性アルカリ電解水は、例えばpH8.5~pH13.2程度、好ましくはpH11.5~pH13.2程度のpH濃度を有する。なお、電解水は、上記の機能性アルカリ電解水に限られず、水を電気分解することによって得られる水溶液であれば、何でもよい。
【0023】
洗濯槽30の内部空間33に供給される電解水は、微細気泡を含む。微細気泡とは、微細な気泡であって、例えばISO 20480-1:2017で規格された直径100μm以下のファインバブルである。微細気泡は、ファインバブルのうち、直径1μm以上かつ100μm以下のマイクロバブルであってもよく、直径1μm未満のウルトラファインバブルであってもよい。
【0024】
微細気泡は、直径100μmよりも大きい直径を有する通常の気泡よりも、気泡体積が微細である。このため、微細気泡は、通常の気泡よりも、上昇速度が遅く、水溶液中における滞在時間が長い。また、微細気泡は、負に帯電しているため、微細気泡同士で反発し合う性質を有する。よって、微細気泡同士が結合し難く、一定の気泡濃度を維持することができる。
【0025】
なお、外槽20の開口部21a及び洗濯槽30の開口部31aは、蓋(不図示)等によって開閉可能とされている。また、洗濯槽30の側壁31及び底壁32には複数の貫通孔(不図示)が形成されており、洗濯槽30に供給された洗濯水は、この貫通孔を通って外槽20と洗濯槽30との間を行き来可能とされている。ただし、底壁32のうち上側に突出する凸部34(
図2参照)には、貫通孔が形成されておらず、遊星ギヤ50が配置された部分には洗濯水が行き来しないようにされている。
【0026】
モータ40は、軸線Xを通る位置において、外槽20の外側に配置されている。モータ40は、外槽20の底壁22に固定されている。モータ40の動力伝達軸41(
図2参照)は、外槽20の底壁22を貫通し、遊星ギヤ50を介して洗濯槽30に接続されている。モータ40が駆動されると、動力伝達軸41が回転し、その回転の駆動力が遊星ギヤ50を介して洗濯槽30に伝達される。これにより、洗濯槽30が軸線X周りに回転する。
【0027】
遊星ギヤ50は、軸線Xを通る位置において、外槽20の底壁22と洗濯槽30の底壁32との間に配置されている。遊星ギヤ50は、モータ40の動力伝達軸41の回転に連動して回転する複数の歯車を有する。遊星ギヤ50は、洗濯槽30の底壁32に固定されており、歯車が回転する駆動力を洗濯槽30に伝達する。
【0028】
貯蔵槽60は、筐体10の外側に配置されている。貯蔵槽60は、例えば地面等の所定の載置面に、上下方向Zに延在するように載置されている。貯蔵槽60は、上側が開口され、かつ、下側が閉鎖された、有底の略角筒状を呈している。貯蔵槽60は、略角筒状の側壁61と、側壁61の中空部を下端側から塞ぐ底壁62と、を有する。側壁61の上端には、開口部61aが形成されている。
【0029】
貯蔵槽60には、電解水生成装置(不図示)により生成された電解水EWが供給される。これにより、貯蔵槽60は、洗濯槽30に供給する電解水EWを貯蔵する。また、貯蔵槽60には、発生装置70によって発生された微細気泡が供給される。これにより、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EW中に、微細気泡が含まれる。
【0030】
貯蔵槽60は、電解水EWに接触するように配置された電極65を有する。電極65は、例えば白金電極であり、陽極及び陰極を含む。電極65は、電圧が加えられることにより、貯蔵槽60に貯蔵された電解水を電気分解する。
【0031】
貯蔵槽60は、発生装置70によって発生される微細気泡と電極65による電気分解の作用によって、貯蔵している電解水を浄化する。貯蔵槽60における電解水の浄化作用の詳細については、
図3及び
図4を参照して後述する。なお、貯蔵槽60は、貯蔵する電解水の水質を分析するための水質分析機器64を有していてもよい。
【0032】
発生装置70は、微細気泡を発生させる発生手段である。発生装置70は、例えば、マイクロバブル発生装置である。発生装置70による微細気泡の発生方式は、特に限定されない。微細気泡は、例えば、エジェクター方式、キャビテーション方式、旋回流方式、又は加圧溶解方式等、種々の方式によって発生され得る。
【0033】
発生装置70は、貯蔵槽60の下方に配置されている。例えば、発生装置70は、貯蔵槽60の底壁62に配管等を介して接続されており、底壁62から貯蔵槽60の内部に微細気泡を送り込む。すなわち、発生装置70は、貯蔵槽60の下方から微細気泡を発生させる。
【0034】
循環手段80は、外槽20と貯蔵槽60との間に配置されている。循環手段80は、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWを貯蔵槽60から洗濯槽30に供給すると共に、洗濯槽30から排水された電解水EWを貯蔵槽60に供給する。すなわち、循環手段80は、洗濯槽30と貯蔵槽60との間で、電解水EWを循環させる。具体的には、循環手段80は、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWを洗濯槽30に供給する第一供給部81と、洗濯槽30から排水された電解水EWを貯蔵槽60に供給する第二供給部82と、を有する。
【0035】
第一供給部81は、貯蔵槽60の下部に接続されており、貯蔵槽60の下部側から洗濯槽30に電解水EWを供給する。貯蔵槽60の下部とは、例えば、貯蔵槽60における上下方向Zで中心位置よりも下方の部分である。本実施形態では、貯蔵槽60の下部は、例えば底壁62である。
【0036】
第一供給部81は、貯蔵槽60の底壁62から洗濯槽30の開口部31a側まで延在する配管83と、配管83の途中部に配置されたポンプ84と、を含む。配管83の一端83aは、貯蔵槽60の下部、例えば底壁62に接続されており、配管83の他端83bは、洗濯槽30の開口部31aの上方に位置している。配管83の他端83bには、電解水EWをシャワー状に噴射するシャワーヘッド83cが形成されている。
【0037】
貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWは、ポンプ84によって汲み上げられ、配管83内を一端83aから他端83bに向かって流れ、配管83の他端83bから洗濯槽30の開口部31aに向かって放出される。これにより、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWが洗濯槽30に供給される。配管83の一端83aが貯蔵槽60の底壁62に接続されているため、洗濯槽30には、貯蔵槽60内の電解水EWのうち、電解水EWの液面よりも底壁62に近い電解水EWが、液面付近の電解水EWよりも優先的に供給される。配管83の他端83bに形成されたシャワーヘッド83cによって、電解水EWは、配管83の他端83bから、洗濯槽30内に収容された洗濯物Lに向かってシャワー状に噴射される。
【0038】
第二供給部82は、外槽20の底壁22から貯蔵槽60の開口部61a側まで延在する配管85と、配管85の途中部に配置されたポンプ86と、を含む。配管85の一端85aは、外槽20の底壁22に接続されており、配管85の他端85bは、貯蔵槽60の開口部61aの上方に位置して開口されている。なお、配管85は、筐体10を貫通している。
【0039】
洗濯槽30から排水された電解水EWは、ポンプ86によって汲み上げられ、配管85内を一端85aから他端85bに向かって流れ、配管85の他端85bから貯蔵槽60の開口部61aに向かって放出される。これにより、洗濯槽30から排水された電解水EWが貯蔵槽60に供給される。
【0040】
以上のように構成された洗濯機1は、不図示の制御装置により、洗い工程及び脱水工程等を含む洗濯運転が制御される。洗い工程では、洗濯水として貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWが洗濯槽30の内面31bに向かって供給される。この状態でモータ40が駆動され洗濯槽30が回転すると、洗濯槽30の回転による遠心力が洗濯物L及び電解水EWに作用する。遠心力の作用によって洗濯槽30の側壁31の内面31bに固定された洗濯物Lは、洗濯槽30と共に回転する。この固定された洗濯物Lの繊維を、遠心力が作用した電解水EWが通過することによって、洗濯物Lの汚れが落とされる。洗濯槽30内の電解水EWは、適宜、排水され、循環手段80によって貯蔵槽60に供給され、その洗濯や次回の洗濯に再利用される。
【0041】
ここで、従来技術の洗濯機では、洗濯槽に供給される洗濯水は、洗い工程が完了すると洗濯槽から排水される。これに対し、本実施形態に係る洗濯機1では、洗い工程が完了すると、洗濯水としての電解水EWが貯蔵槽60に供給されて浄化精製された後、洗濯水として洗濯槽30に供給される。すなわち、本実施形態の洗濯機1では、洗濯水としての電解水EWを洗濯槽30と貯蔵槽60との間で循環させる循環システムを有し、洗濯水としての電解水EWを浄化精製し、洗浄効果を維持しながら再利用する。
【0042】
本実施形態では、洗濯水として電解水を用いており、洗剤等を使用しない。このため、洗濯物Lに付着した洗剤等をすすぐためのすすぎ工程を必要としない。よって、洗い工程に続き、脱水工程がおこなわれる。脱水工程では、洗い工程と同様、モータ40が駆動され洗濯槽30が回転する。これにより、洗濯槽30内の洗濯物Lに遠心力が作用する。遠心力の作用によって、洗濯物Lは洗濯槽30の側壁31の内面31bに押し付けられ、洗濯物Lが脱水される。脱水工程によって洗濯物Lから出た電解水EWは、洗濯槽30から排水され、循環手段80によって貯蔵槽60に供給される。
【0043】
次に、
図2を参照して、外槽20及び洗濯槽30の形状について詳細に説明する。
図2は、外槽20及び洗濯槽30の断面構成を示す図である。説明のため、
図2においては、遊星ギヤ50の図示を省略し、筐体10を二点鎖線で仮想的に示している。なお、外槽20及び洗濯槽30は、例えば金属製であって、一体形成されていてもよく、複数の部材の組み合わせとして構成されていてもよい。
【0044】
図2に示されるように、外槽20の底壁22は、軸線X周りの中央部分において、軸線Xに沿った方向で上側に上げ底状とされた凸部24を有している。具体的には、底壁22は、軸線Xに沿った方向で側壁21の下端21bと略同じ高さに位置する基準底部22aと、軸線Xに沿った方向で基準底部22aよりも上側に位置する上げ底部22bと、基準底部22aと上げ底部22bとを接続する接続部22cと、を有する。
【0045】
基準底部22aは、下側から見て、軸線Xよりも側壁21寄りに位置している。基準底部22aは、側壁21の下端21bに接続され、軸線Xに沿った方向に対して略垂直方向に延在している。上げ底部22bは、下側から見て、基準底部22aよりも軸線X寄りに位置している。上げ底部22bは、基準底部22aよりも上側の位置で、軸線Xに沿った方向に対して略垂直方向に延在している。接続部22cは、下側から見て、基準底部22aと上げ底部22bとの間に位置している。接続部22cは、基準底部22aから上げ底部22bまで、軸線Xに沿った方向に延在している。
【0046】
洗濯槽30は、外槽20と同様の形状を呈している。洗濯槽30の底壁32は、軸線X周りの中央部分において、軸線Xに沿った方向で上側に上げ底状とされた凸部34を有している。具体的には、底壁32は、軸線Xに沿った方向で側壁31の下端31cと略同じ高さに位置する基準底部32aと、軸線Xに沿った方向で基準底部22aよりも上側に位置する上げ底部32bと、基準底部32aと上げ底部32bとを接続する接続部32cと、を有する。
【0047】
基準底部32aは、下側から見て、軸線Xよりも側壁31寄りに位置している。基準底部32aは、側壁32の下端31cに接続され、軸線Xに沿った方向に対して略垂直方向に延在している。上げ底部32bは、下側から見て、基準底部32aよりも軸線X寄りに位置している。上げ底部32bは、基準底部32aよりも上側の位置で、軸線Xに沿った方向に対して略垂直方向に延在している。接続部32cは、下側から見て、基準底部32aと上げ底部32bとの間に位置している。接続部32cは、軸線Xに沿った方向に延在している。
【0048】
洗濯槽30の底壁32の凸部34によって、凸部34の外側面34aで囲まれた空間35が画成されている。空間35は、軸線Xに沿った方向で、洗濯槽30の底壁32の基準底部32aよりも上方の空間である。空間35には、外槽20の凸部24(上げ底部22b及び接続部22cの一部)が入り込んでいる。
【0049】
空間35は、前述したモータ40を配置するための空間として機能する。モータ40は、上端側にフランジ42を有しており、当該フランジ42が外槽20の底壁22の上げ底部22bに固定されている。モータ40の動力伝達軸41は、フランジ42の上方に伸びており、外槽20の底壁22の上げ底部22bを貫通する。上げ底部22bを貫通した動力伝達軸41は、外槽20の凸部24と洗濯槽30の凸部34との間に位置する遊星ギヤ50に噛み合わされ、遊星ギヤ50を介して洗濯槽30の底壁32の上げ底部32bに接続されている。
【0050】
このように、モータ40が空間35に入り込むように配置されているため、軸線Xに沿った方向で、モータ40の大部分が、洗濯槽30の底壁32の基準底部32aの上方に位置している。これにより、例えば洗濯槽30の底壁32の基準底部32aの下方にモータ40の全体が配置される場合よりも、洗濯槽30とモータ40とを含む上下方向Zでの高さを低くすることができる。
【0051】
また、洗濯槽30の底壁32が凸部34を有することによって、洗濯槽30の内部空間33は、軸線Xに沿った方向でモータ40と対向する第一空間33Aと、軸線Xに沿った方向で第一空間33Aよりもモータ40側に突出する第二空間33Bと、を含む。
【0052】
第一空間33Aは、内部空間33のうち、上側から見て、軸線X周りの中央の空間である。第一空間33Aは、第二空間33Bよりも軸線Xに沿った方向で狭い空間とされている。本実施形態では、第一空間33Aは、洗濯物Lが収容されない空間であり、モータ40を配置する空間35を形成するために省スペース化されている。
【0053】
第二空間33Bは、内部空間33のうち、上側から見て、軸線Xよりも側壁31寄りの空間である。すなわち、第二空間33Bは、第一空間33Aの周縁の空間である。第二空間33Bは、軸線Xに沿った方向で第一空間33Aよりもモータ40側に突出することにより、第一空間33Aよりも軸線Xに沿った方向で広い空間とされている。これにより、第二空間33Bは、洗濯物Lを適切に収容することが可能である。例えば、第二空間33Bは、ハンガー等に掛けた状態の洗濯物Lを、曲げたり弛ませることなく真っ直ぐ収容することができる。
【0054】
次に、
図3及び
図4を参照して、貯蔵槽60における電解水EWの浄化作用について詳細に説明する。
図3は、貯蔵槽60における電解水EWの浄化作用を説明するための図である。
図4は、
図3の微細気泡MB周辺を拡大して示す図である。
【0055】
図3に示されるように、貯蔵槽60の底壁62側から発生した微細気泡MBは、貯蔵槽60内の電解水EW中を下方から上方に向かってゆっくりと上昇する。すなわち、微細気泡MBは、貯蔵槽60の底壁62から電解水EWの水面EWaに向かって上昇する。なお、
図3では、上下方向Zに延在する所定の幅の層として微細気泡MBが発生しているように図示するが、これに限られず、微細気泡MBは、貯蔵槽60の全体に広がるように発生していてもよく、上下方向Zに延在する所定の幅の層が貯蔵槽60内で複数形成されるように発生していてもよい。
【0056】
図4に示されるように、微細気泡MBは、負に帯電しているため、電解水EW中で正に帯電して浮遊する油分やゴミ等の汚れ66を吸着しながら、電解水EW中を上昇する。微細気泡MBは、水面EWaに近づくにつれて縮小し、水面EWa付近で消失する。このような微細気泡MBの上昇により、汚れ66が水面EWaに浮上する。水面EWaに浮上した汚れ66を電解水EWから取り除くことによって、電解水EWが浄化される。なお、微細気泡MBは、必ずしも水面EWa付近で消失するとは限らず、水面EWaから離れた位置で消失するものが含まれていてもよく、水面EWaまで消失せずに電解水EW中を滞在し続けるものが含まれていてもよい。
【0057】
さらに、
図3に示されるように、貯蔵槽60には、陽極65a及び陰極65bを含む電極65が、電解水EWに接触するように設けられている。すなわち、電極65は、電解水EW内に浸っている。陽極65aと陰極65bとの間に電圧が加えられると、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWが電気分解される。電解水EWの電気分解によって、陽極65aでは酸化反応が起こり酸素が発生し、陰極65bでは還元反応が起こり水素が発生する。
【0058】
陽極65aで発生した酸素は、電解水EW中に溶けて溶存酸素となり、電解水EWに対する殺菌効果を奏する。また、陰極65bで発生した水素は、微細気泡MBと同様にして、電解水EW中の汚れ66を浮上させる。
【0059】
以上、本実施形態に係る洗濯機1によれば、洗濯水として電解水EWが貯蔵槽60から洗濯槽30に供給されるため、洗剤等を加えなくても洗浄効果を奏する。例えばドライクリーニングでは油脂分の溶出のみで、タンパク質、ゴミ、又はシミ等の汚れは除去できないが、本実施形態では洗濯水として電解水を用いることによって、これらの汚れを効果的に除去することができる。さらに、発生装置70によって、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EW中に微細気泡MBが発生するため、微細気泡を含む電解水EWが洗濯槽30に供給される。これにより、洗濯物Lの繊維等に電解水EWがより入り込み易くなり、洗浄効果が向上する。洗濯槽30から排水された電解水EWは、循環手段80によって、貯蔵槽60に供給される。この際、貯蔵槽60において、電解水EW中の汚れ66が微細気泡MBと共に浮上するため、当該汚れ66を取り除いて電解水EWを浄化することができる。そして、浄化された電解水EWが、循環手段80によって、貯蔵槽60から洗濯槽30に再度供給される。これにより、洗濯槽30から排水された電解水EWを洗濯水として、洗浄効果を維持しつつ再利用することができる。
【0060】
本実施形態によれば、発生装置70によって、貯蔵槽60の下方から微細気泡MBが発生する。これにより、貯蔵槽60の下方から発生した微細気泡MBは、貯蔵槽60内の電解水EWの中を、下方から上方に向かって上昇していく。この微細気泡MBの上昇によって、電解水EWの中に生じた汚れを下方から上方に向かって好適に浮上させることができ、電解水EWの浄化をより適切におこなうことができる。
【0061】
本実施形態によれば、発生装置70によって、貯蔵槽60の底壁62から微細気泡MBを発生させるため、貯蔵槽60の下方から微細気泡MBを好適に発生させることができる。
【0062】
本実施形態によれば、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWが、貯蔵槽60の底壁62に接続された第一供給部81によって洗濯槽30に供給される。これにより、洗濯槽30には、貯蔵槽60内の電解水EWのうち、液面EWaよりも底壁62に近い電解水EWが、液面EWa付近の電解水EWよりも優先的に供給されることとなる。その結果、電解水EW中を浮上した汚れ66を、洗濯水として再利用する電解水EWと共に洗濯槽30に供給してしまうことを抑制することができる。
【0063】
本実施形態によれば、貯蔵槽60が有する電極65に電圧が加えられることにより、貯蔵槽60に貯蔵された電解水EWが電気分解され、電解水EW中に酸素と水素とが発生する。酸素は、電解水EW中に溶けて溶存酸素となり、電解水EWに対する殺菌効果を奏する。また、水素は、電解水EW中の汚れを浮上させる効果を奏する。以上より、電解水EWを殺菌及び浄化しながら適切に再利用することができる。
【0064】
本実施形態によれば、第二空間33Bを形成することで洗濯物Lを適切に収容するスペースを確保することができる。このため、例えばハンガー等に掛けたまま洗濯物Lを収容して皺等の形成を抑制しながら洗濯することができ、洗濯が完了した後の後工程が容易になる。これに加え、第一空間33Aを形成することでモータ40を配置するための空間35が形成されているため、洗濯物Lを適切に収容するスペースを確保した場合であっても、洗濯槽30とモータ40とを含む上下方向Zでの高さが高くなり過ぎない。その結果、洗濯物Lを適切に収容するスペースを確保しつつ、洗濯機1全体として省スペース化を図ることができる。
【0065】
本実施形態によれば、微細気泡MBによって電解水EWの流動性が高まるため、電解水EWと洗濯物Lとの間、又は洗濯物Lの繊維間で発生する摩擦を低減させることができ、洗濯物Lの洗濯による傷みを抑制することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他に適用したものであってもよい。
【0067】
たとえば、上記実施形態では、洗濯槽30の内部空間33に洗濯物Lがハンガー等に吊り下げられた状態で収容される例について説明したが、これに限られない。例えば、ハンガー等に吊り下げず、洗濯物Lを畳んだ状態又は弛んだ状態等で洗濯槽30の内部空間33に収容してもよい。また、上記実施形態では、洗濯槽30の内部空間33のうち第一空間33Aには洗濯物Lが収容されない例について説明したが、これに限られず、第一空間33Aに洗濯物Lが収容されていてもよい。
【0068】
上記実施形態では、貯蔵槽60の下方に発生装置70が配置されている例について説明したが、これに限られない。例えば、発生装置70は、貯蔵槽60の側壁61に対向するように貯蔵槽60に並置されていてもよい。また、貯蔵槽60に並置された発生装置70から貯蔵槽60の底壁62まで延在して当該底壁62に接続された配管等を通して、貯蔵槽60の下方から微細気泡MBを発生させてもよい。また、発生装置70は、必ずしも貯蔵槽60の下方から微細気泡MBを発生させなくてもよく、例えば、貯蔵槽60における上下方向Zで中心位置付近から微細気泡MBを発生させてもよい。
【0069】
上記実施形態では、発生装置70がマイクロバブル発生装置である例について説明したが、これに限られない。発生装置70は、微細気泡MBを発生させる以外の機能を備えた装置によって実現されてもよい。例えば、発生装置70は、電解水生成装置であってもよく、電解水生成装置により電解水EWを生成すると共に電解水EW中に微細気泡を発生させてもよい。また、微細気泡MBを発生させる発生手段は、例えば、装置を用いずに化学反応等によって発生させる手段により実現されてもよい。
【0070】
上記実施形態では、洗濯水に洗剤等が含まれない例について説明したが、これに限られず、洗濯水に洗剤等を含んでもよい。また、洗濯機1による洗濯運転には、上記の工程だけでなく、すすぎ工程又は乾燥工程等、種々の工程が含まれてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…洗濯機、30…洗濯槽、60…貯蔵槽、70…発生装置(発生手段)、80…循環手段、EW…電解水、L…洗濯物、MB…微細気泡、X…軸線