(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルムおよびエポキシ樹脂含有層転写フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220111BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20220111BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20220111BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20220111BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/38
B32B33/00
C09J7/20
C09J163/00
(21)【出願番号】P 2017199068
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】辻内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 竜一
(72)【発明者】
【氏名】中垣 貴充
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-231790(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171221(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087884(WO,A1)
【文献】特開2016-044283(JP,A)
【文献】特開2009-073971(JP,A)
【文献】特開2010-275500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂含有層が積層された転写フィルムに用いられる離型フィルムであって、基材フィルム上に、下記の組成物(II)からなる離型層を備えたエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム。
組成物(II);炭素数8以上のアルキル基とエチレン性不飽和基とを含む化合物(α)および2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物(β)を含有し、
前記炭素数8以上のアルキル基とエチレン性不飽和基とを含む化合物(α)が
、
下記の(メタ)アクリロイル基と水酸基とを分子中にそれぞれ1個以上有する(メタ)アクリレート化合物と、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、炭素数が8~30の高級アルコールとを反応させて得られる化合
物である、
組成物。
(メタ)アクリロイル基と水酸基とを分子中にそれぞれ1個以上有する(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び分子中に2~30個のアルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上である化合物。
【請求項2】
基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルムの離型層上にエポキシ樹脂含有層が積層されてなる、エポキシ樹脂含有層転写フィルム。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂含有層が熱硬化性樹脂層である、請求項3に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂層が熱硬化性接着剤層である、請求項4に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルムおよびエポキシ樹脂含有層転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、例えば、回路基板の封止樹脂あるいは多層プリント配線板の層間絶縁樹脂として適用されることが知られている。上記用途におけるエポキシ樹脂の適用方法として、エポキシ樹脂を熱接着剤として適用する方法が知られている。熱接着剤は、感圧粘着剤や感圧接着剤とは違って、常温では接着性や粘着性が発現しないことから、上記用途に好適である。
【0003】
熱接着剤は、離型フィルム(セパレータ)に積層された熱接着テープあるいは熱接着シートとして供給されている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-136602号公報
【文献】特開2005-39247号公報
【文献】特開2010-109383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
離型フィルムに積層された熱接着剤の被着体(回路基板など)への転写は、熱プレス転写が一般的である。離型フィルムは熱プレス後に剥離される。この熱プレス転写工程において、離型フィルムが比較的スムーズに剥離されることが求められる。
【0006】
上述のとおり、回路基板の封止樹脂や多層プリント配線板の層間絶縁層としてエポキシ系熱接着剤が有効であるが、離型フィルムに積層されたエポキシ系熱接着剤は、とりわけ、加熱プレス後に剥離性が低下する傾向にある。
【0007】
また、シリコーン系離型剤を用いた離型フィルムは、精密電子機器に接点障害等の不具合を発生させることがある。
【0008】
エポキシ系熱接着剤のようなエポキシ樹脂含有層を回路基板などの被着体に転写するための離型フィルムには、上記したように、熱プレス後の剥離性が良好であること、および精密電子機器の接点障害等の不具合発生を抑制することが求められる。しかし、前述した特許文献1~3では、上記要求特性を十分に満足させることはできなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、熱プレス後の剥離性が良好であること、および精密電子機器の接点障害等の不具合発生を抑制することを同時に満足する、エポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム、およびエポキシ樹脂含有層転写フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的は以下の発明によって達成された。
[1]エポキシ樹脂含有層が積層された転写フィルムに用いられる離型フィルムであって、基材フィルム上に、組成物(I)または組成物(II)からなる離型層を備えた、エポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム。
組成物(I);炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)および架橋剤(b)を含有する組成物
組成物(II);炭素数8以上のアルキル基とエチレン性不飽和基とを含む化合物(α)を含有する組成物
[2]組成物(I)における架橋剤(b)がメラミン系架橋剤である、[1]に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム。
[3]組成物(I)における炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)が、炭素数8以上のアルキル基を含むポリビニル樹脂または炭素数8以上のアルキル基を含むアルキド樹脂である、[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム。
[4]組成物(II)が、さらに、2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物(β)を含有する、[1]に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム。
[5][1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルムの離型層上にエポキシ樹脂含有層が積層されてなる、エポキシ樹脂含有層転写フィルム。
[6]前記エポキシ樹脂含有層が熱硬化性樹脂層である、[5]に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム。
[7]前記熱硬化性樹脂層が熱硬化性接着剤層である、[6]に記載のエポキシ樹脂含有層転写フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム、および本発明のエポキシ樹脂含有層転写フィルムは、熱プレス後の剥離性が良好であること、および精密電子機器の接点障害等の不具合発生を抑制することを同時に満足する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のエポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルムは、離型フィルム上に一時的に積層されたエポキシ樹脂含有層を被着体(例えば、回路基板等)に転写するための離型フィルムである。すなわち、エポキシ樹脂含有層が積層された転写フィルムに用いられる離型フィルムである。以下、エポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルムを、単に「離型フィルム」ということがある。
【0013】
本発明の離型フィルムは、基材フィルム上に離型層を備える。この離型フィルムの離型層上にエポキシ樹脂含有層が積層されることによってエポキシ樹脂含有層転写フィルムが得られる。このエポキシ樹脂含有層転写フィルムのエポキシ樹脂含有層が熱プレスによって被着体に転写される。エポキシ樹脂含有層転写フィルムの離型フィルムは熱プレス後に剥離される。以下、エポキシ樹脂含有層転写フィルムを、単に「転写フィルム」ということがある。
【0014】
本発明の離型フィルムにおいて、離型層は組成物(I)または組成物(II)からなる。
【0015】
組成物(I);炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)および架橋剤(b)を含有する組成物。
【0016】
組成物(II);炭素数8以上のアルキル基とエチレン性不飽和基を含む化合物(α)を含有する組成物。
【0017】
離型層を、上記の組成物(I)または組成物(II)からなる層とすることによって、熱プレスによって被着体に転写されたエポキシ樹脂含有層と離型フィルムとの剥離性(以下、単に「剥離性」ということがある)が向上する。
【0018】
以下、組成物(I)および組成物(II)について詳細に説明する。
【0019】
[組成物(I)]
組成物(I)は、炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)および架橋剤(b)を含有する。
【0020】
炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)におけるアルキル基は、直鎖状あるいは分岐状のアルキル基を含む。該炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)のアルキル基の炭素数は、離型層とエポキシ樹脂含有層との剥離性を向上させるという観点から、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上が特に好ましい。上記アルキル基の炭素数は30以下が好ましく、28以下がより好ましく、25以下が特に好ましい。
【0021】
以下の説明において、炭素数8以上のアルキル基を「長鎖アルキル基」ということがあり、また炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)を「長鎖アルキル基含有化合物(a)」ということがある。
【0022】
長鎖アルキル基含有化合物(a)としては、側鎖に長鎖アルキル基を有する化合物が好ましく用いられる。具体的には、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アルキド樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物等が挙げられる。
【0023】
上記化合物の中でも、剥離性を向上させるという観点から、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂および長鎖アルキル基含有アルキド樹脂がより好ましく、特に、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂が好ましい。
【0024】
長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール重合体(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を含む)、エチレン-ビニルアルコール重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を含む)あるいはビニルアルコール-アクリル酸共重合体(酢酸ビニル-アクリル酸共重合体の部分ケン化物を含む)と、長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物とを反応させることによって合成することができる。
【0025】
長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物としては、炭素数が8以上のアルキル基を有するモノイソシアネート化合物が挙げられ、具体的には、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
長鎖アルキル基含有アルキド樹脂としては、長鎖アルキル基を有する多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を、脂肪油や脂肪酸などの変性剤で変性したものが挙げられる。
【0027】
多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和多塩基酸や、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン-無水マレイン酸付加物、テルペン-無水マレイン酸付加物、ロジン-無水マレイン酸付加物などのその他多塩基酸が挙げられる。
【0028】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトールなどの四価以上のアルコールが挙げられる。
【0029】
変性剤としては、大豆油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油などの脂肪油、及びこれらの脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸などの油脂及び油脂脂肪酸、ロジン、コバール、コハク、セラックなどの天然樹脂、エステルガム、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。また、ステアリン酸変性アルキド樹脂及び/又はステアリン酸変性アクリル樹脂とアミノ樹脂との硬化樹脂も塗布性と剥離性のバランスの観点から好ましい。
【0030】
長鎖アルキル基含有アクリル樹脂としては、長鎖アルキル基を有するアクリル酸モノマーあるいはメタクリル酸モノマー、例えば、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシルなどの単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。
【0031】
上記共重合体に用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレンなどが挙げられる。
【0032】
上記した長鎖アルキル基含有化合物(a)は、市販されており、それらを使用することができる。市販品としては、中京油脂社製のレゼムシリーズの「K-256」、「N-137」、「P-677」、「Q-472」、アシオ産業(株)社製の“アシオレジン(登録商標)”シリーズの「RA-80」、「RA-95H」、「RA-585S」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の“ピーロイル(登録商標)”シリーズの「HT」、「1050」、「1010」、「1070」、「406」、日本酢ビ・ポバール社製の「ZF-15」、「ZF-15H」、日本触媒社製の“エポミン(登録商標)”「RP-20」などが挙げられる。
【0033】
組成物(I)における架橋剤(b)としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤等が挙げられる。中でも、組成物(I)における架橋剤(b)がメラミン系架橋剤であることが特に好ましい。架橋剤(b)としてメラミン系架橋剤を用いることにより剥離性がさらに向上する。
【0034】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0035】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレン-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。
【0037】
カルボジイミド系架橋剤としては、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。
【0038】
メラミン系架橋剤として用いられるメラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子の少なくとも1つがメチロール化されたメチロール化メラミン化合物が好ましく、さらに、メチロール化メラミン化合物のメチロール基を炭素数が1~4の低級アルコールで部分もしくは完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン化合物が好ましい。
【0039】
エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが挙げられる。
【0040】
メラミン系架橋剤は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC(株)の“スーパーベッカミン(登録商標)”J-820-60、同J-821-60、同J-1090-65、同J-110-60、同J-117-60、同J-127-60、同J-166-60B、同J-105-60、同G840、同G821、三井化学(株)の“ユーバン(登録商標)”20SB、同20SE60、同21R、同22R、同122、同125、同128、同220、同225、同228、同28-60、同2020、同60R、同62、同62E、同360、同165、同166-60、同169、同2061、住友化学(株)の“スミマール(登録商標)”M-100、同M-40S、同M-55、同M-66B、日本サイテックインダストリーズの“サイメル(登録商標)”303、同325、同327、同350、同370、同235、同202、同238、同254、同272、同1130、(株)三和ケミカルの“ニカラック(登録商標)”MS17、同MX15、同MX430、同MX600、ハリマ化成(株)のバンセミンSM-975、同SM-960、日立化成(株)の“メラン(登録商標)”265、同2650Lなどが挙げられる。
【0041】
組成物(I)は、離型層の硬化を促進させるために酸触媒(c)を含有することが好ましい。酸触媒(c)としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、p-トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0042】
組成物(I)における長鎖アルキル基含有化合物(a)の含有量は、剥離性を向上させるという観点から、組成物の固形分総量100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、長鎖アルキル基含有化合物(a)の含有量が多くなり過ぎると、離型層の強度(硬度)が低下し耐溶剤性や耐熱性が低下することがあるので、長鎖アルキル基含有化合物(a)の含有量は、97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。
【0043】
組成物(I)における架橋剤(b)の含有量は、剥離性を向上させるという観点から、組成物の固形分総量100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。一方、架橋剤(b)の含有量が多くなり過ぎると、離型層表面の剥離力が高くなることあるので、架橋剤(b)の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0044】
組成物(I)が酸触媒(c)を含有する場合の酸触媒(c)の含有量は、剥離性を向上させるという観点から、組成物の固形分総量100質量%に対して、0.1~10質量%の範囲が好ましく、0.3~5質量%の範囲がより好ましく、0.5~3質量%の範囲が特に好ましい。
【0045】
組成物(I)は、さらに、バインダー樹脂を含有することができる。かかるバインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0046】
組成物(I)からなる離型層は、基材フィルム上に塗布された組成物(I)を加熱硬化して形成されること好ましい。すなわち、組成物(I)は、熱硬化性組成物であることが好ましい。組成物(I)を硬化させる際の条件(加熱温度、時間)は特に限定されないが、加熱温度は70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。上限は300℃程度である。加熱時間は3~300秒が好ましく、5~200秒がより好ましい。
【0047】
組成物(I)は、例えば、ウェットコーティング法により塗布することができる。ウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0048】
[組成物(II)]
組成物(II)は、炭素数8以上のアルキル基とエチレン性不飽和基とを含む化合物(α)を含有する。以下、炭素数8以上のアルキル基とエチレン性不飽和基とを含む化合物(α)を「長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)」ということがある。
【0049】
長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)におけるアルキル基は、直鎖状あるいは分岐状のアルキル基を含む。該長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)のアルキル基の炭素数は、離型層とエポキシ樹脂含有層との熱プレス後の剥離性を向上させるという観点から、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上が特に好ましい。上記アルキル基の炭素数は30以下が好ましく、28以下がより好ましく、25以下が特に好ましい。
【0050】
長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)におけるエチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。
【0051】
長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)の具体例を以下に例示する。尚、以下の説明において、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」の総称である。
【0052】
長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)としては、例えば、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0053】
特に、以下に示す長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)が好ましく用いられる。すなわち、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを分子中にそれぞれ1個以上有する(メタ)アクリレート化合物と、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、炭素数が8~30の高級アルコールとを反応させて得られる化合物である。
【0054】
上記(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-アシッドフォスフェート、エポキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、分子中に2~30個のアルキレンオキシ基(例えば、エンチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基など)を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
上記(メタ)アクリレート化合物の中でも、剥離力を比較的小さくし、かつ耐熱性を向上させるという観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、分子中に2~30個のアルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0056】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、さらにはこれら各種ジイソシアネート化合物と水とを反応させて得られるビウレット型ポリイソシアネート化合物、または各種ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の多価アルコールとを反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート化合物、または各種化合物をイソシアヌレート化せしめて得られる多量体等公知のものがあげられる。
【0057】
上記ポリイソシアネート化合物の中でも、分子量が50~500のポリイソシアネート化合物が好ましく、分子量が100~400のポリイソシアネート化合物がより好ましく、特に分子量が130~300のポリイソシアネート化合物が好ましい。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)が好ましい化合物として例示される。特に、剥離性向上の観点から、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)が好ましい。
【0058】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖状の高級アルコールとして、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニールアルコールなど、直鎖状の不飽和高級アルコールとしてオレイルアルコールなど、分岐型高級アルコールとして2-ヘキシルデカノール、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラドデカノールなどが挙げられる。
【0059】
高級アルコールとしては、市販品を使用することができる。例えば、直鎖状の飽和高級アルコールとしては、“コノール(登録商標)”10WS、コノール1098、コノール1275、コノール20F、コノール20P、コノール1495、コノール1670、コノール1695、コノール30CK、コノール30OC、コノール30RC、コノール30F、コノール30S、コノール30SS、コノール30T、コノール2265、コノール2280(新日本理化株式会社製の商品名)、“カルコール(登録商標)”0898、カルコール0880、カルコール1098、カルコール2098、カルコール4098、カルコール6098、カルコール8098、カルコール200GD、カルコール2475、カルコール2474、カルコール2473、カルコール2463、カルコール2455、カルコール2450、カルコール4250、カルコール6870、カルコール6850、カルコール8688、カルコール8665、カルコール220-80(花王(株)の商品名)、直鎖状の不飽和高級アルコールとしては、“リカコール(登録商標)”60B、リカコール70B、リカコール75BJ、リカコール85BJ、リカコール90B、リカコール90BR、リカコール90BHR、リカコール110BJ、“アンジェコール(登録商標)”50A、アンジェコール60AN、アンジェコール70AN、アンジェコール80AN、アンジェコール85AN、アンジェコール90AN、アンジェコール90NR、アンジェコール90NHR(新日本理化(株)商品名)、分岐型の高級アルコールとしては“エヌジェコール(登録商標)”160BR、エヌジェコール200A、エヌジェコール240A(新日本理化(株)の商品名)などが挙げられる。
【0060】
本発明の離型フィルムにおいて、組成物(II)が、さらに、2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物(β)を含有することが好ましい。以下、2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物(β)を「重合性化合物(β)」ということがある。ここで、重合性化合物(β)には、前述の長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)は含まれない。つまり、重合性化合物(β)は、炭素数8以上のアルキル基を含まない化合物である。
【0061】
重合性化合物(β)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート-トルエンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート-イソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマーなどが挙げられる。
【0062】
上記化合物の中でも、分子中に2~7個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、特に分子中に3~6個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
【0063】
組成物(II)は、バインダー成分として分子中にエチレン性不飽和基を1個有する化合物を含有することができる。かかる化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
組成物(II)は、さらに、光重合開始剤を含有することが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えばアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p-イソプロピル-α-ヒドロキシイソブチルフェノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0065】
また、光重合開始剤は一般に市販されており、それらを使用することができる。例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の“イルガキュア(登録商標)”184、イルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、“DAROCUR(登録商標)” TPO、DAROCUR1173等、日本シイベルヘグナー(株)製の“Speedcure(登録商標)”MBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、“Esacure(登録商標)” ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46等、日本化薬(株)製の“KAYACURE(登録商標)” DETX-S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
【0066】
組成物(II)における長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)の含有量は、剥離性を向上せるという観点から、組成物の固形分総量100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が特に好ましい。一方、長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)の含有量が多くなり過ぎると離型層の強度(硬度)が低下し耐溶剤性や耐熱性が低下することがあるので、長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)の含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0067】
組成物(II)が重合性化合物(β)を含む場合の重合性化合物(β)の含有量は、離型層の強度(硬度)を高めて耐溶剤性や耐熱性を向上させるという観点から、組成物の固形分総量100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、重合性化合物(β)の含有量が多くなり過ぎると、離型層表面の剥離力が高くなることがあるので、重合性化合物(β)の含有量は90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
【0068】
組成物(II)が光重合開始剤を含む場合の光重合開始剤の含有量は、組成物の固形分総量100質量%に対して0.1~10質量%の範囲が適当であり、0.5~8質量%の範囲が好ましい。
【0069】
組成物(II)からなる離型層は、基材フィルム上に塗布された組成物(II)に活性エネルギー線を照射し硬化して形成されること好ましい。すなわち、組成物(II)は、活性エネルギー線硬化性組成物であることが好ましい。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、β線、γ線などが挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、紫外線および電子線が好ましく、特に紫外線が好ましく用いられる。
【0070】
紫外線を照射するための光源としては、特に限定されないが、例えば、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく用いられる。また、紫外線を照射するときに、低酸素濃度下の雰囲気下、例えば、酸素濃度が500ppm以下の雰囲気下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができるので好ましい。
【0071】
紫外線の照射光量は、50mJ/cm2以上が好ましく、100mJ/cm2以上がより好ましく、150mJ/cm2以上が特に好ましい。また、紫外線の照射光量は2000mJ/cm2以下が好ましく、1000mJ/cm2以下がより好ましい
組成物(II)は、例えば、ウェットコーティング法により塗布することができる。ウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0072】
[離型層]
精密電子機器の接点障害等の不具合発生を抑制するという観点から、離型層はシリコーン系化合物を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、離型層がシリコーン系化合物を実質的に含有しないとは、離型層を形成するための組成物(I)または組成物(II)におけるシリコーン系化合物の含有量が、組成物の固形分総量100質量%に対して5質量%以下であることを意味する。上記含有量はさらに3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0073】
ここで、シリコーン系化合物とは、従来からシリコーン系離型剤として一般的に知られているシリコーン系化合物を指す。シリコーンとは、有機基(例えばアルキル基やフェニル基など)をもつケイ素と酸素が交互に結合してできた主鎖より成るポリマーである。例えば、基本骨格としてジメチルポリシロキサンを有するシリコーン系化合物がよく知られている。
【0074】
離型層の厚みは、10~1000nmが好ましく、20~600nmがより好ましく、20~500nmがさらに好ましく、50~300nmが特に好ましい。
【0075】
離型層上に積層されるエポキシ樹脂含有層の良好な塗工性を確保するという観点、および剥離性を向上させるという観点から、離型層の表面自由エネルギーは、20~35mJ/m2が好ましく、21~32mJ/m2がより好ましく、22~30mJ/m2が特に好ましい。離型層の表面自由エネルギーが20mJ/m2未満になるとエポキシ樹脂含有層の塗工性が悪化することがあり、一方、35mJ/m2より大きくなると剥離性が低下することがある。
【0076】
離型層を前述の組成物(I)または組成物(II)で形成することによって、離型層の表面自由エネルギーを上述の範囲とすることができる。
【0077】
ここで、表面粗自由エネルギーは、接触角計、例えば、協和界面科学(株)の「Drop Master DM501」を用いて測定することができる。詳細は後述する。
【0078】
離型層の表面粗さSRaは、エポキシ樹脂含有層の表面設計によって適宜設定される。例えば、転写されたエポキシ樹脂含有層の表面を平滑としたい場合は、離型層の表面粗さSRaは50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、15nm以下が特に好ましい。上記SRaは、離型フィルムの滑り性や巻き取りを確保するという観点から、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、8nm以上が特に好ましい。
【0079】
離型層の表面粗さSRaを50nm以下に制御する方法としては、基材フィルムの離型層を積層する面の表面粗さSRaが50nm以下である基材フィルムを使用する方法が好ましい。さらに、離型層には実質的に粒子を含有させないことが好ましい。ここで、離型層が粒子を実質的に含有しないとは、離型層を形成する組成物における粒子含有量が組成物の固形分総量100質量%に対して3.0質量%以下であることを意味する。上記粒子含有量は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0080】
一方、転写されたエポキシ樹脂含有層の表面に微細凹凸構造を付与したい場合は、離型層の表面粗さSRaは100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、300nm以上が特に好ましい。上記SRaの上限は1000nm程度である。
【0081】
離型層の表面粗さSRaを100nm以上に制御する方法としては、基材フィルムの離型層が積層される面の表面粗さSRaが100nm以上である基材フィルムを使用する方法が好ましい。
【0082】
ここで、表面粗さSRaは、光干渉型顕微鏡、例えば、(株)菱化システム製の「VertScan」を用いて測定することができる。
【0083】
[基材フィルム]
本発明の離型フィルムに用いられる基材フィルムとしては、特に限定されず、各種プラスチックフィルムを使用することができる。例えば、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、環状オレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
【0084】
これらのプラスチックフィルムの中でも、耐熱性が良好である、ポリイミドフィルムポリエステルフィルム、環状オレフィンフィルムが好ましい。上記ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0085】
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを使用する場合は、基材フィルムの表面粗さSRaを制御するという観点から、3層積層構成のポリエステルフィルムが好ましい。3層積層構成としては、A層/B層/A層またはA層/B層/C層が挙げられる。ここで、A層、B層およびC層は、それぞれ組成が異なることを意味する。
【0086】
上記3層構成において、A層またはC層に粒子を含有させることによって、ポリエステルフィルムの表面粗さSRaを制御することができる。例えば、A層またはC層に含有させる粒子の平均粒子径および/または含有量を調整することによって、ポリエステルフィルムの表面粗さSRaを制御することができる。
【0087】
生産設備の簡易化や生産性向上の観点から、A層/B層/A層の3層積層構成のポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0088】
基材フィルムの厚みは、10~200μmが好ましく、15~150μmがより好ましく、20~100μmが特に好ましい。
【0089】
基材フィルムは、片面もしくは両面に、基材フィルムから発生するオリゴマー成分の析出を抑制するためのプライマー層を設けることができる。プライマー層としては、有機アルミニウム化合物を含む有機ケイ素化合物やポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0090】
有機アルミニウム化合物を含む有機ケイ素化合物に用いられる有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートヒス(エチルアセトアセテート)などのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
【0091】
有機アルミニウム化合物を含む有機ケイ素化合物に用いられる有機ケイ素化合物としては、γ-メタクリロキシ基含有オルガノアルコキシシラン、エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有アセトキシシランおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0092】
また、プライマー層として、鉛筆硬度(JIS K5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度)がF~2Hの硬化樹脂層を用いることができる。この硬化樹脂層としては、従来から公知のハードコート層成分を適宜調整して用いることができる。
【0093】
プライマー層の厚みは、0.1~1.0μmが好ましく、0.2~0.5μmがより好ましい。
【0094】
プライマー層を基材フィルムの離型層側に設ける場合は、プライマー層は基材フィルムと離型層との間に配置される。
【0095】
[エポキシ樹脂含有層転写フィルム]
本発明の転写フィルムは、本発明の離型フィルムの離型層上にエポキシ樹脂含有層が積層されてなる。
【0096】
転写フィルムの熱プレス後に離型フィルムをスムーズに剥離するには、離型フィルムとエポキシ樹脂含有層との熱プレス後の剥離力は、1.0N/50mm未満が好ましく、0.5N/50mm未満がより好ましく、0.3N/50mm未満が特に好ましい。一方、上記剥離力が過度に低くなると、加工工程で転写フィルムからエポキシ樹脂含有層が剥がれたり、離型フィルムへのエポキシ樹脂含有層の塗布性が悪化することがあるので、上記剥離力は、0.01N/25mm以上が好ましい。
【0097】
[エポキシ樹脂含有層]
エポキシ樹脂含有層におけるエポキシ樹脂は、特に限定されず、公知の化合物および樹脂を用いることができる。例えば、回路基板の封止樹脂あるいは多層プリント配線板の層間絶縁樹脂に用いられるエポキシ樹脂、熱硬化性接着剤に用いられるエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0098】
エポキシ樹脂の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールとフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂肪環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、ナフタレン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0099】
このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、大日本インキ化学工業(株)製のHP4032、HP4032D、HP4700、N-690、N-695、ジャパンエポキシレジン(株)製の“エピコート(登録商標)”807、エピコート828EL、エピコート152、日本化薬(株)の“EPPN(登録商標)”-502H、NC7000L、NC3000H、東都化成(株)製のESN185、ESN475等が挙げられる。
【0100】
エポキシ樹脂含有層は、エポキシ系樹脂以外の他の熱硬化性樹脂を配合することもできる。他の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂と架橋するノボラック型フェノール樹脂、ビニルフェノール樹脂、臭素化ビニルフェノール等が挙げられる。
【0101】
エポキシ樹脂含有層は、さらに、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、チオール系硬化剤またはこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの等が挙げられる。また、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア等の硬化促進剤を併用して用いてもよい。
【0102】
硬化剤の具体例としては、例えば、ジシアンジアミド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4,4’-トリアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)-1、3、5-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、トリアジン構造含有ノボラック樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0103】
エポキシ樹脂含有層は、熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、カルボキシ化アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(カルボキシ化NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン-エチレン共重合体(SEBS)、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(アクリルゴム)、カルボキシ化エチレンアクリルゴム、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0104】
エポキシ樹脂含有層は、無機あるいは有機の充填材を含有することができる。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。有機充填材としては、好ましくはアクリルゴム粒子、シリコーン粒子が挙げられる。
【0105】
本発明の転写フィルムにおいて、エポキシ樹脂含有層が熱硬化性樹脂層であることが好ましい。エポキシ樹脂含有層が熱硬化性樹脂層であることにより、硬化後に比較的高い強度が得られやすくなる。熱硬化性樹脂層は、温度100~200℃で硬化することが好ましく、120~180℃で硬化することが特に好ましい。
【0106】
本発明の転写フィルムにおいて、上記熱硬化性樹脂層が熱硬化性接着剤層であることがより好ましい。
【0107】
エポキシ樹脂含有層の厚みは、10~100μmが適当であり、20~80μmが好ましい。
【0108】
[離型フィルムおよび転写フィルムの適用例]
本発明の離型フィルムは、エポキシ樹脂含有層転写フィルムの離型フィルムとして適用される。つまり、本発明の離型フィルムの離型層上にエポキシ樹脂含有層を積層してエポキシ樹脂含有層転写フィルムを得ることができる。
【0109】
本発明の転写フィルムは、回路基板や多層プリント配線板などに適用される。つまり、本発明の転写フィルムを構成するエポキシ樹脂含有層は、回路基板の封止樹脂層として、あるいは多層プリント配線板の層間絶縁層として、回路基板や多層プリント配線板に熱プレスによって転写される。
【実施例】
【0110】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例1~12、101~112は、参考例1~12、101~112とする。
[測定方法および評価方法]
(1)転写フィルムの熱プレス後の剥離力の測定
<被着体>
被着体として、圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製、厚さ35μm)の粗面に厚さ25μmのポリイミド層が積層された基板を用意した。
【0111】
<熱プレスによるエポキシ樹脂含有層の転写>
転写フィルムのエポキシ樹脂含有層面と被着体の圧延銅箔とが対向するように重ねて試験用積層体を作製した。この積層体を、加熱プレス装置(ミカドテクノス(株)製の2ton真空ヒータープレス 型番MKP-150TV-WH)に挿入し、プレス温度160℃、プレス圧2MPaにて20分間熱プレスした。その後、積層体を取り出し、常温で1時間放置後、剥離力を測定した。
【0112】
<剥離力の測定>
積層体を幅50mm×長さ70mmに切り出して測定用サンプルとした。この測定用サンプルについて、引張り試験機にて、300mm/minの速度で、離型フィルム側を180°に引き剥したときの剥離力を測定した。
【0113】
<剥離性の評価>
A(最良);剥離力が0.3N/50mm未満。
B(良);剥離力が0.3N/50mm以上、0.5N/50mm未満。
C(可);剥離力が0.5N/50mm以上、1.0N/50mm未満。
D(不可);剥離力が1.0N/50mm以上、または離型フィルムとエポキシ樹脂含有層との界面で剥離されず離型フィルムもしくはエポキシ樹脂含有層が破壊された場合。
【0114】
(2)離型層の表面自由エネルギーの測定
表面自由エネルギーおよびその各成分(分散力、極性力、水素結合力)の値が既知の3種の液体として、水、ジヨードメタン、1-ブロモナフタレンを用い、23℃、65%RH下で、接触角計DropMasterDM501(協和界面科学(株)製)にて、各液体の離型層上での接触角を測定する。1つの測定面に対し5回測定を行いその平均値を接触角(θ)とする。この接触角(θ)の値および各液体の既知の値(Panzerによる方法IV(日本接着協会誌第15巻、第3号、第96頁に記載)の数値から、北崎・畑の式より導入される下記式を用いて各成分の値を計算する。
【0115】
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=γL(1+cosθ)/2
ここで、γLd、γLp、γLhは、それぞれ測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分を表し、θは測定面上での測定液の接触角を表し、また、γSd、γSp、γShは、それぞれ積層膜表面の分散力、極性力、水素結合力の各成分の値を表し、γLは各液体の表面エネルギーを表す。既知の値およびθを上記の式に代入して得られた連立方程式を解くことにより、測定面(離型層表面)の3成分の値を求める。
【0116】
下記式の通り、求められた分散力成分の値と極性力成分の値と水素結合力成分の値の和を、表面自由エネルギー(E)の値とする。
【0117】
E=γSd+γSp+γSh
(3)表面粗さSRaの測定
基材フィルムおよび離型層の表面粗さSRaは、光干渉型顕微鏡((株)菱化システム社製、VertScan2.0、型式:R5300 GL-Lite-AC)を用いて、観察モード=Waveモード、面補正=4次、フィルター=530nmWhite、対物レンズ=50倍、測定領域=252.69×189.53μmにて表面形態観察し、求めた。測定は1水準につき10回行い、その平均値から求めた。尚、基材フィルムの表面粗さSRaは、離型層を塗布する面の表面粗さSRaである。
【0118】
[基材フィルム]
基材フィルムとして下記のポリエステルフィルムおよびポリイミドフィルムを用意した。
【0119】
<ポリエステルフィルム1>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” R75X)を用意した。このポリエステルフィルムは、厚みが25μmであり、表面粗さSRaが25nmであった。
【0120】
<ポリエステルフィルム2>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” FB40)を用意した。このポリエステルフィルムは、厚みが16μmであり、表面粗さSRaが8nmであった。
【0121】
<ポリエステルフィルム3>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” X42)を用意した。このポリエステルフィルムは、厚みが50μmであり、表面粗さSRaが400nmであった。
【0122】
<ポリエステルフィルム4>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” S10)を用意した。このポリエステルフィルムは、厚みが100μmであり、表面粗さSRaが25nmであった。
【0123】
<ポリイミドフィルム1>
東レデュポン(株)のポリイミドフィルム(“カプトン(登録商標)”H100)を用意した。このポリイミドフィルムは厚みが25μmであり、表面粗さSRaが50nmであった。
【0124】
[実施例1]
ポリエステルフィルム1の一方の面に、組成物(I)として下記の組成物p1をグラビアコーターで塗布し100℃で予備乾燥後、160℃で加熱乾燥し、離型層を形成して離型フィルムを作製した。離型層の厚みは100nmであった。
【0125】
<組成物p1>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);下記合成の長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂a1を10質量部
・架橋剤(b);メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M-55)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
<長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂a1の合成>
4つ口フラスコにキシレン200質量部、オタデシルイソシアネート600質量部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、ポリビニルアルコール(平均重合度500、ケン化度88モル%)100質量部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。
【0126】
ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140質量部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。
【0127】
[実施例2]
下記組成物p2に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0128】
<組成物p2>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050)を固形分換算で10質量部
・架橋剤(b);メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M-55)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例3]
下記組成物p3に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0129】
<組成物p3>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050)を固形分換算で10質量部
・架橋剤(b);メラミン系架橋剤(DIC(株)の商品名「スーパーベッカミンG」821)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
[実施例4]
下記組成物p4に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0130】
<組成物p4>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050)を固形分換算で10質量部
・架橋剤(b);メラミン系架橋剤(三井化学(株)の「ユーバン」28-60)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例5]
下記組成物p5に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
【0131】
<組成物p5>
・長鎖アルキル基含有化合物(a)と架橋剤(b)の混合物として、長鎖アルキル基含有アルキド樹脂とメラミン系架橋剤の混合物(日立化成(株)の「“テスファイン(登録商標)”303」)を固形分換算で10質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(日立化成(株)の「ドライヤー900」)を固形分換算で0.3質量部
・溶媒;トルエンを17質量部、メチルエチルケトンを6質量部
[実施例6]
下記組成物p6に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
【0132】
<組成物p6>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);下記合成の長鎖アルキル基含有アクリル樹脂a2を10質量部
・架橋剤(b);メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M-55)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
<長鎖アルキル基含有アクリル樹脂a2の合成>
撹拌機、窒素導入管、冷却管、ラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、メタクリル酸オクタデシル70質量部、アクリル酸ブチル25質量部、アクリル酸5質量部およびトルエン150質量部を入れ、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、2,2-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を加え、60℃に加熱して24時間重合反応を行い、アクリル系重合体の粘稠溶液を得た。このアクリル系重合体は、メタクリル酸オクタデシルとアクリル酸ブチルとアクリル酸とのランダム共重合体からなり、側鎖に長鎖アルキル基としてオクタデシル基を有するとともに、官能基としてカルボキシル基を有するものであり、数平均分子量は9.6万であった。
【0133】
[実施例7]
下記組成物p7に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
【0134】
<組成物p7>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);実施例1で合成された長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂a1を10質量部
・架橋剤(b);イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)の「“タケネート(登録商標)”」D-103H)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例8]
下記組成物p8に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
【0135】
<組成物p8>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);実施例1で合成された長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂a1を10質量部
・架橋剤(b);エポキシ系架橋剤(エチレングリコールジグリシジルエーテル)を2.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例9]
基材フィルムをポリエステルフィルム2に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0136】
[実施例10]
基材フィルムをポリエステルフィルム3に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0137】
[実施例11]
基材フィルムをポリエステルフィルム4に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0138】
[実施例12]
基材フィルムをポリイミドフィルム1に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0139】
[比較例1]
ポリエステルフィルム1に離型層を積層せずに、ポリエステルフィルム1をそのまま離型フィルムとして用いた。
【0140】
[比較例2]
下記組成物p9に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0141】
<組成物p9>
付加反応型の硬化性シリコーン樹脂であるKS847H(信越化学工業(株)製)40質量部、硬化剤であるPL-50T(信越化学工業(株)製)0.4質量部をトルエン500質量部、n-ヘプタン500質量部に混合した。
【0142】
[比較例3]
下記組成物p10に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0143】
<組成物p10>
メラミン系樹脂であるRP-50((株)三羽研究所製)20質量部、硬化剤である“プラスコート(登録商標)”DEPクリア(和信化学工業(株)製)4質量部をトルエン50質量部、シクロヘキサノン50質量部に混合した。
【0144】
[比較例4]
下記組成物p11に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0145】
<組成物p11>
・長鎖アルキル基含有化合物(a);実施例6で合成された長鎖アルキル基含有アクリル樹脂a2を12.5質量部
・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例21]
ポリエステルフィルム1からなる基材フィルムの一方の面に、組成物(II)として下記組成物p21をグラビアコーターで塗布し、100℃で乾燥後、紫外線を300mJ/cm2照射し硬化させて離型層を形成して離型フィルムを作製した。離型層の厚みは200nmであった。
【0146】
<組成物p21>
長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)として下記で合成した長鎖アルキル基含有重合性化合物α1を25質量部、重合性化合物(β)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を75質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。この組成物をトルエンとイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度4質量%に調製した。
【0147】
<長鎖アルキル基含有重合性化合物α1の合成>
撹拌機および温度計を装備したフラスコに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物として2-ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)の「BHEA」を100質量部、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)の「“ミリオネート(登録商標)”MT」)を240質量部、高級アルコールとしてステアリルアルコール(新日本理化(株)の「コノール30SS」)26質量部を仕込み、100℃まで昇温して7時間保温して反応させ、IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、反応を終了させた。
【0148】
[実施例22]
下記の組成物p22に変更する以外は、実施例21と同様にして離型フィルムを作製した。
【0149】
<組成物p22>
長鎖アルキル基含有重合性化合物(α)として下記で合成した長鎖アルキル基含有重合性化合物α2を15質量部、重合性化合物(β)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を85質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。この組成物をトルエンとイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度4質量%に調製した。
【0150】
<長鎖アルキル基含有重合性化合物α2の合成>
撹拌機および温度計を装備したフラスコに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物として2-ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)の「BHEA」を100質量部、ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)の商品名「HDI」)を86質量部、高級アルコールとしてステアリルアルコール(新日本理化(株)の「コノール30SS」)46質量部を仕込み、100℃まで昇温して7時間保温して反応させ、IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、反応を終了させた。
【0151】
[比較例21]
下記の組成物p23に変更する以外は、実施例21と同様にして離型フィルムを作製した。
【0152】
<組成物p23>
下記で合成した非重合性長鎖アルキル基含有化合物(分子内にエチレン性不飽和基を含まない化合物)を15質量部、重合性化合物(β)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を85質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。この組成物をトルエンとイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度4質量%に調製した。
【0153】
<非重合性長鎖アルキル基含有化合物の合成>
撹拌機、窒素導入管、冷却管、ラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、メタクリル酸オクタデシル70質量部、アクリル酸ブチル25質量部、アクリル酸5質量部およびトルエン150質量部を入れ、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、2,2-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を加え、60℃に加熱して24時間重合反応を行い、アクリル系重合体の粘稠溶液を得た。このアクリル系重合体は、メタクリル酸オクタデシルとアクリル酸ブチルとアクリル酸とのランダム共重合体からなり、側鎖に長鎖アルキル基としてオクタデシル基を有するとともに、官能基としてカルボキシル基を有するものであり、数平均分子量は9.6万であった。
【0154】
[実施例101~112、121~122および比較例101~104、121]
実施例1~12、21~22および比較例1~4、21で作製したそれぞれの離型フィルムの離型層上に、以下のようにしてエポキシ樹脂含有層を積層して、それぞれの転写フィルムを得た。
【0155】
<エポキシ樹脂含有組成物の調製>
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート828EL」)100質量部、熱可塑性樹脂としてカルボキシ化NBR(日本ゼオン社製、商品名「“ニポール(登録商標)”1072」)を50質量部、硬化剤として4,4′-ジアミノジフェニルスルホン30質量部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解分散させて、固形分濃度が30質量%となるように調製した。
【0156】
<転写フィルムの作製>
それぞれの離型フィルムの離型層上に、上記組成物を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、150℃、20分間乾燥し、エポキシ樹脂含有層を形成して転写フィルムを作製した。
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の離型フィルムおよび転写フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0157】