(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B23Q3/06 301H
(21)【出願番号】P 2018189995
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2020-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 剛
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、
前記ボディと相対的に回動動作して、支持構造との間でワークWを挟んでクランプ状態を形成するクランプアームと、
直線状に変位する変位体を有し、前記変位体の変位に基づき前記クランプアームの回動動作を行う駆動機構とを備えるクランプ装置であって、
前記変位体は、前記クランプアーム又は前記クランプアームと一体に回動する回動部に接触して、前記クランプアームの回動動作を案内すると共に前記クランプ状態で前記クランプアームの回動動作を規制するガイド面を有し、
前記クランプアーム又は前記回動部に対向する位置に設けられ、前記変位体の変位時に当該変位体に接触し、前記クランプアーム又は前記回動部に向けて当該変位体を弾力的に押圧する押圧機構を備
え、
前記変位体は、該変位体の変位方向と直交する方向に微量に移動可能に構成され、
前記押圧機構は、前記変位体に接触して転動する押圧ローラと、該押圧ローラを前記変位体に向けて付勢して前記直交する方向に前記変位体を押圧する付勢部材とを有し、
前記回動部は、前記ガイド面に沿って転動可能な駆動力伝達ローラを備え、前記クランプアームによるワークのクランプ時において、前記駆動力伝達ローラと前記押圧ローラとが同じ高さである
クランプ装置。
【請求項2】
請求項1記載のクランプ装置において、
前記ガイド面は、前記変位体の変位方向に対して傾斜する傾斜面と、前記傾斜面に連なり前記変位方向に平行なガイド面側平行面とを有し、
前記クランプアーム又は前記回動部は、前記クランプ状態で前記ガイド面側平行面に位置する
クランプ装置。
【請求項3】
請求項
1記載のクランプ装置において、
前記駆動機構は、前記回動部を有すると共に、前記変位体の変位動作を前記クランプアームの回動動作に変換する駆動力伝達部を備
える
クランプ装置。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項に記載のクランプ装置において、
前記変位体は、前記押圧ロー
ラに押圧される押圧面を有し、
前記押圧面は、前記変位体の変位方向に平行な押圧面側平行面と、前記クランプ状態で前記押圧ロー
ラが接触する箇所に設けられた凹部とを含む
クランプ装置。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載のクランプ装置において、
前記押圧機構は、前記付勢部材の付勢力を調整する調整部を有する
クランプ装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のクランプ装置において、
前記駆動機構は、圧力流体の供給及び排出に基づき前記変位体を変位させる駆動部を有する
クランプ装置。
【請求項7】
請求項
6記載のクランプ装置において、
前記ボディの側面には、前記圧力流体を供給及び排出するコネクタが取り付けられ、
前記押圧機構は、前記コネクタが取り付けられる前記側面と同じ側面に設けられる
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをクランプするクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストン及びピストンロッドの変位に基づきクランプアームを回動動作させて、クランプアームによりワークをクランプするクランプ装置が開示されている。このクランプ装置は、ピストンロッドとクランプアームの間にリンク機構(第1リンク、第2リンク)を備えると共に、クランプの曲面部に接触する傾斜面(クサビ面)をピストンロッドの端部側側面に有する。すなわち、クランプ装置は、リンク機構により、ピストンロッドの変位をクランプアームの回動動作に変換しつつ、クサビ面により、クランプアームの回動案内とワークのクランプ状態でクランプアームの回動を規制(ロック)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように、クランプアーム(又はクランプアームに連動する回動部)の一部が傾斜面に接触してロックを行うクランプ装置は、クランプ状態でクランプアームからクランプ反力を傾斜面に受ける。この場合、クランプ反力は、ピストンロッドを押し出す方向に分力をかけることになるので、クランプ装置は、クランプ反力が大きい場合にクランプ状態のロックが解除されるおそれがある。
【0005】
また、クランプ装置は、寸法誤差等によりワークの厚みが変化した場合に、クランプアームがワークをクランプしたとしてもピストンロッドが進出予定位置(クランプアームをロックする位置)まで移動せず、ロック状態とならない場合がある。すなわち、従来のクランプ装置は、クランプアームのクランプ状態をロックするロック範囲が狭く、ワークの厚みの変化に対応できないという課題もある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ロック状態を良好に確立することができ、しかもロック範囲を拡大することでワークの厚みの変化に良好に対応可能なクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様は、ボディと、前記ボディと相対的に回動動作して、支持構造との間でワークを挟んでクランプ状態を形成するクランプアームと、直線状に変位する変位体を有し、前記変位体の変位に基づき前記クランプアームの回動動作を行う駆動機構とを備えるクランプ装置であって、前記変位体は、前記クランプアーム又は前記クランプアームと一体に回動する回動部に接触して、前記クランプアームの回動動作を案内すると共に前記クランプ状態で前記クランプアームの回動動作を規制するガイド面を有し、前記クランプアーム又は前記回動部に対向する位置に設けられ、前記変位体の変位時に当該変位体に接触し、前記クランプアーム又は前記回動部に向けて当該変位体を弾力的に押圧する押圧機構を備え、
前記変位体は、該変位体の変位方向と直交する方向に微量に移動可能に構成され、
前記押圧機構は、前記変位体に接触して転動する押圧ローラと、該押圧ローラを前記変位体に向けて付勢して前記直交する方向に前記変位体を押圧する付勢部材とを有し、
前記回動部は、前記ガイド面に沿って転動可能な駆動力伝達ローラを備え、前記クランプアームによるワークのクランプ時において、前記駆動力伝達ローラと前記押圧ローラとが同じ高さである。
【発明の効果】
【0008】
上記のクランプ装置は、変位体を弾力的に押圧する押圧機構を備えることで、変位体を邪魔することなく変位させ、またクランプアームのクランプ状態ではクランプアーム又は回動部に変位体のガイド面を強く接触させることができる。このため、クランプ装置は、クランプアームのロック(回動動作の規制)の信頼性が向上し、例えば、装置を小型に構成しても、クランプ状態を充分に確立することが可能となる。そして、押圧機構の弾力的な押圧は、クランプアームのクランプ状態でも変位体を多少変位させることで、ワークの厚みの変化にも対応可能なロック範囲を得る。これにより、クランプ装置は、ワークやクランプ装置の寸法誤差を許容して、安定したクランプ力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクランプ装置の斜視図である。
【
図3】
図2のクランプ装置において押圧機構が設けられた部分の構造を示す拡大側面断面図である。
【
図4】クランプ装置のアンクランプ状態を示す側面断面図である。
【
図5】クランプ装置のクランプ時の動作途中を示す側面断面図である。
【
図6】
図6Aは、ジョイントが上方に変位する際のジョイント、リンク構造及び押圧機構の動作を説明する第1説明図である。
図6Bは、
図6Aに続くジョイント、リンク構造及び押圧機構の動作を説明する第2説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係るクランプ装置10は、
図1に示すように、ボディ12と、ボディ12に対し相対的に回動動作するクランプアーム14と、ボディ12に固定される支持構造16とを備える。クランプアーム14は、支持構造16との間でワークW(
図4参照)を挟んでクランプ状態(把持状態)を形成する。例えば、クランプ装置10は、自動車の製造ラインにおいて移動ロボットのエンドエフェクタに複数取り付けられ、成形されたパネル等の部品(ワークW)を相互に協働して保持しワークWを移動させる。
【0012】
ボディ12は、クランプアーム14が回動可能に設けられる第1ハウジング18と、第1ハウジング18の矢印Z2側(下辺側)に連結される第2ハウジング20とを有する。第1及び第2ハウジング18、20の内部には、
図2に示すように駆動機構22が組み込まれている。駆動機構22は、第2ハウジング20において駆動力を発生させる駆動部24と、第1ハウジング18において駆動部24の駆動力に基づきクランプアーム14の回動動作を行う駆動力伝達部26とを含む。
【0013】
具体的には
図1及び
図2に示すように、駆動部24は、エア等の圧力流体の供給及び排出に基づき直線状の駆動力を発生させる流体圧シリンダに構成されている。なお、駆動部24は、流体圧シリンダに限定されるものではなく、例えば、電力供給に基づき直動運動する(直線状の駆動力を発生させる)構成でもよい。
【0014】
第2ハウジング20は、矢印Z方向に長い角筒状(直方状)の外観に形成される一方で、その内側に円筒状のシリンダ室28を有するシリンダチューブに構成されている。駆動部24は、この第2ハウジング20と、シリンダ室28に変位自在に収容されるピストン30と、ピストン30に連結されるピストンロッド32と、ピストンロッド32を変位自在に支持するロッドカバー34とを有する。ピストン30及びピストンロッド32は、第2ハウジング20に対し相対的に変位する部品であり、本明細書の変位体36の一部にあたる。
【0015】
第2ハウジング20は、第1ハウジング18に対し矢印Z1側の端面が連結される。シリンダ室28は、第2ハウジング20内を長手方向に沿って延在し、第2ハウジング20の長手方向両端を貫通している。第2ハウジング20の他端部には、シリンダ室28を気密に閉塞する蓋体38が装着される。
【0016】
第2ハウジング20の矢印X1側の側壁20aには、シリンダ室28と外部を連通する第1ポート40が一端側(矢印Z1側)に設けられると共に、シリンダ室28と外部を連通する第2ポート42が他端側(矢印Z2側方向)に設けられている。第1及び第2ポート40、42には、クランプ装置10の使用時(製造ラインへの組み込み時)に、図示しない圧力流体供給源に繋がる配管のコネクタ44がそれぞれ接続される。圧力流体供給源は、第1ポート40又は第2ポート42に対して圧力流体の供給と排出(大気開放)を選択的に行う装置である。
【0017】
駆動部24のピストン30は、円盤状に形成され、その外周面には環状溝を介してピストンパッキン30aが装着される。ピストンパッキン30aは、シリンダ室28の内周面に気密に接触することで、シリンダ室28を、ロッド側シリンダ室46と蓋体側シリンダ室48とに区画する。第1ポート40は、ピストン30が矢印Z1側に移動してもロッド側シリンダ室46に常に連通する位置に形成される。第2ポート42は、ピストン30が矢印Z2側に移動しても蓋体側シリンダ室48に常に連通する位置に形成される。
【0018】
ピストンロッド32は、矢印Z方向に延在する棒状に形成され、ピストン30に固定される被固定部32aを矢印Z2側に有すると共に、駆動力伝達部26に連結される連結部50を矢印Z1側に有する。被固定部32aは、ピストン30の中心のピストン孔30bに挿通された状態で加締められることにより、ピストンロッド32とピストン30を一体化する。連結部50は、ピストン30の胴体部分に対して環状に窪む首部52aと、首部52aに連なると共に首部52aに対し径方向外側且つ環状に突出する拡径部52bとを有する。
【0019】
ロッドカバー34は、第1ハウジング18側のシリンダ室28の開口部に固定され、挿通孔34aを中央に有する筒状に形成されている。ロッドカバー34は、ピストンロッド32の胴体部分を挿通孔34aに配置し、ピストンロッド32の変位をガイドする。ロッドカバー34の内周面には、環状溝を介してロッドパッキン35が装着され、このロッドパッキン35は、ピストンロッド32の外周面に摺接することで、シリンダ室28から第1ハウジング18内への圧力流体の漏出を防止する。
【0020】
上記の第2ハウジング20が連結される第1ハウジング18は、
図2に示すように、2つの部材を矢印Y方向に組み付けてボルトで締結されることにより箱状に形成される。第1ハウジング18の内側には、駆動力伝達部26を収容する収容空間54が設けられている。第1ハウジング18の矢印Z2側の面(下面)は、収容空間54を開放しており、第2ハウジング20の連結状態でピストンロッド32の一端側(矢印Z1側)を収容空間54に挿入させる。また第1ハウジング18は、矢印X2側の側面の所定位置にも収容空間54を開放する開口部54aを有する。開口部54aには、支持構造16の一部が挿入され、開口部54a付近の矢印Y方向の両側面に形成されたボルト孔を通して締結ボルト56が挿入されることで、支持構造16がボディ12に固定される。
【0021】
そして
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るクランプ装置10は、第1ハウジング18の矢印X1側の面(側面18a)に押圧機構100を装着している。押圧機構100は、第2ハウジング20においてコネクタ44が接続される側壁20a(第1及び第2ポート40、42の形成面)と同じ側面に設けられる。押圧機構100は、駆動力伝達部26と協働することで、クランプアーム14のクランプ状態におけるロック(クランプアーム14の回動規制)を強固に形成する。この押圧機構100については後に詳述する。
【0022】
また、第1ハウジング18の矢印Z1側の面(上面)には、クランプアーム14によるクランプ状態を強制解除するためのクランプ解除機構58が設けられる。クランプ解除機構58は、ベース60と、第1ハウジング18に締結される固定用ねじ62と、ベース60及び第1ハウジング18を貫通して収容空間54内に進入可能な解除用ピン64とを有する。解除用ピン64は、駆動力伝達部26の後述するジョイント66に対向する位置に配置される。解除用ピン64は、ユーザの操作下に収容空間54に進出することで、クランプ状態で矢印Z1側に位置しているジョイント66にその先端が接触して駆動部24側(矢印Z2側)に押圧する。
【0023】
第1ハウジング18に収容される駆動力伝達部26は、ピストンロッド32に連結されるジョイント66と、ジョイント66の直線状の変位を回動動作に変換するリンク構造68とを有する。ジョイント66は、本明細書において駆動機構22の変位体36にあたる。すなわち、変位体36は、ピストン30、ピストンロッド32及びジョイント66を含み、矢印Z方向に沿って直線状に変位するものである。
【0024】
ジョイント66は、矢印X方向に幅広なブロック状に形成されている。ジョイント66の高さ方向(矢印Z方向)の所定位置には、矢印X方向に長い長孔70が形成されている。また、ジョイント66の矢印Z2側には、ピストンロッド32の連結部50が係合する連結凹部72が設けられている。
【0025】
連結凹部72は、ピストンロッド32の首部52a及び拡径部52bよりも一回り大きな相似形状に形成され、微量な余裕をもって連結部50に連結される。これによりジョイント66は、ピストンロッド32と共に矢印Z方向に変位するだけでなく、変位方向と直交する矢印X方向にも微量に移動可能に構成される。例えば、ピストンロッド32に対するジョイント66の矢印X方向の変位可能量は、0.5mm~1.0mm程度に設定される。
【0026】
ジョイント66のクランプアーム14を臨む側面(矢印X2側の面)には、ガイド面74が形成されている。またジョイント66のガイド面74と反対側(矢印X1側)の側面には、押圧機構100に押圧される押圧面76が形成されている。ガイド面74及び押圧面76については後に詳述する。
【0027】
図2及び
図3に示すように、リンク構造68は、ジョイント66に回転自在に連結される一対のリンクアーム78と、一対のリンクアーム78に対し回転自在に連結されるレバーアーム80(回動部)と、リンクアーム78と共にジョイント66に回転自在に取り付けられる一対のガイドローラ82と、第1ハウジング18の内面に形成され一対のガイドローラ82の移動を案内する一対の案内溝84とを含む。
【0028】
一対のリンクアーム78は、長板に形成され、長手方向一端に固定された第1ピン78aと、長手方向他端に固定された第2ピン78bにより相互に連結している。第1ピン78aは、ジョイント66の長孔70に移動及び回動可能に挿入され、またリンクアーム78の外側に設けられた一対のガイドローラ82を軸支している。第2ピン78bは、レバーアーム80の一端に回動自在に軸支されている。
【0029】
レバーアーム80は、上記の通り、リンクアーム78の長手方向他端に一端が連結している。その一方で、レバーアーム80の他端は、支持ピン86を介してクランプアーム14の一端に回動不能に連結されている。支持ピン86は、クランプアーム14との接続部位において断面矩形状に形成され、第1ハウジング18の図示しない軸受孔に軸支されている。すなわち、リンク構造68は、リンクアーム78の一端がジョイント66に連れて矢印Z2側に変位することに伴い、リンクアーム78の他端がレバーアーム80の一端を
図2中の反時計回りに回動させる。レバーアーム80は支持ピン86を基点に回動し、これによりクランプアーム14も反時計回りに回動する。逆に、リンクアーム78の一端が矢印Z1側に変位することに伴い、リンクアーム78の他端がレバーアーム80の一端を時計回りに回動させて、クランプアーム14も時計回りに回動する。
【0030】
また、レバーアーム80の延在方向途中位置には、切り欠き部80aが設けられ、この切り欠き部80a内に駆動力伝達ローラ88が設けられている。駆動力伝達ローラ88は、レバーアーム80の軸支ピン80bに回転自在に軸支され、ジョイント66のガイド面74に転動可能に接触する。ここで、ジョイント66のガイド面74は、矢印Z1側から矢印Z2側に向かって順に、端部傾斜面74a、中間傾斜面74b及びガイド面側平行面74cを有する。
【0031】
端部傾斜面74aは、ジョイント66の変位方向(矢印Z方向)に対して大きく傾斜し且つ短く延在している。中間傾斜面74bは、ジョイント66の変位方向に対して小さく(例えば8°)傾斜し、端部傾斜面74aとガイド面側平行面74cとの間を延在している。中間傾斜面74bは、長孔70の高さ方向にまたがっており、端部傾斜面74aやガイド面側平行面74cよりも長く延在している。ガイド面側平行面74cは、ジョイント66の変位方向に沿って平行(すなわち、ジョイント66の変位方向に対して0°の角度)に形成されている。ガイド面側平行面74cは、ピストン30よりも上方且つ長孔70よりも多少下側に設けられている。またガイド面74の矢印Z2側には、駆動力伝達ローラ88の乗り越えを規制する湾曲面75が形成されている。
【0032】
リンク構造68の一対のガイドローラ82は、第1ハウジング18に形成された案内溝84に配置されることで、ジョイント66の変位時に案内溝84に沿って転動する。案内溝84は、側面断面視で、ピストン30の軸方向(矢印Z方向)と同方向に延在し、且つ途中位置(クランプアーム14が軸支される支持ピン86と同じ高さ位置)で矢印X2側に向かって斜めに延在し、再び矢印Z方向に延在している。ジョイント66の変位時には、この案内溝84に応じて一対のガイドローラ82及びリンクアーム78の一端(第1ピン78a)が矢印X方向にも多少変位する。これにより、ジョイント66の直線状の動作力がリンクアーム78に効率的に伝達される。
【0033】
上記の駆動力伝達部26により回動するクランプアーム14は、ボディ12(第1ハウジング18)の矢印Y方向両面に配置される一対のアーム部90と、一対のアーム部90の他端部同士を連結する連結体92とを有する。また、第1ハウジング18の矢印Y方向両面には、一対のアーム部90を回動可能に配置する配置用切り欠き18bが形成されている。
【0034】
一対のアーム部90は、互いにボディ12を挟んで一体的に回動する。一対のアーム部90の一端には、断面矩形状の支持ピン86が挿入される方形状の支持孔90aが形成されている。一対のアーム部90の他端部には、連結体92を連結する連結ねじ91が挿入される。
【0035】
連結体92は、例えば、断面略長方形状のブロック体からなり、上下に貫通する把持体用ねじ孔92aが幅方向中央部に形成されている。把持体用ねじ孔92aには、支持構造16に対向するように第1把持体94が螺合される。第1把持体94は、連結体92の下面(矢印Z2側の面)から突出する突出部94aを有する。突出部94aの突出端は、略半球状に形成され、第1把持体94の螺合位置により突出量を変更することが可能である。
【0036】
支持構造16は、側面視で略T字状の支持体96を有し、この支持体96は、第1ハウジング18の開口部54aに挿入されて締結ボルト56により固定される。支持体96は、第1ハウジング18から矢印X2側に突出する支持部96aと、支持部96aから矢印Z2側に延出する取付部96bとを有する。支持部96aの一端部には、第2把持体98が取り付けられる。
【0037】
第2把持体98は、第1把持体94の突出部94aよりも大きな頭部98aを有するねじ構造に構成され、頭部98aが支持部96aから矢印Z1側に突出するように取り付けられる。頭部98aの突出端は、略半球状に形成されている。第2把持体98は、支持部96aの下方側にナット99が螺合されることで、支持体96に対し強固に固定される。
【0038】
また、取付部96bは、支持部96aに対して所定長さ下方向(矢印Z2側)に延在し、その端部に取付用ねじ孔96b1が形成されている。この取付用ねじ孔96b1は、クランプ装置10を製造ラインに設置する際に、他の部材に固定するために使用される。
【0039】
図1及び
図2に示すように、クランプ装置10の押圧機構100は、第1ハウジング18の矢印X1側の側面18aに装着される押圧機構ハウジング102を有する。押圧機構ハウジング102は、装着状態で、第1ハウジング18の矢印Y方向の両側面及び矢印Z1側の面(上面)に面一に連なり、且つ矢印Z方向の寸法が第1ハウジング18よりも小さな箱状に形成されている。
【0040】
押圧機構ハウジング102の矢印X
1側の端面102aには、押圧機構100をボディ12に装着するためのねじ止め孔104が連通するねじ止め切り欠き104aが四隅に設けられている。各ねじ止め孔104は、矢印X方向に延在し、装着時には第1ハウジング18のねじ穴(不図示)に対向する。そして装着ボルト106がねじ止め孔104を挿通してねじ穴に螺合されることで、押圧機構100が固定される。また
図2及び
図3に示すように、第1ハウジング18は、押圧機構ハウジング102の装着位置に、矢印X方向に延在して収容空間54に連通する連通孔54bを有している。
【0041】
押圧機構ハウジング102の内部には円筒状の空間108が形成されている。空間108には、連通孔54bを通して収容空間54内に進出可能な押圧ローラ110と、押圧ローラ110を軸支するローラホルダ112と、ローラホルダ112を付勢する圧縮スプリング114(付勢部材)とが収容されている。また押圧機構ハウジング102の矢印X
1側の端面102aには、圧縮スプリング114の付勢力を調整する調整部116(
図1参照)が設けられている。
【0042】
押圧ローラ110は、押圧機構100の装着状態で、収容空間54内に設けられたレバーアーム80(回動部)に対向する位置に配置される。押圧ローラ110は、駆動力伝達ローラ88と同程度の大きさに形成され、ジョイント66の変位時に、ガイド面74と反対側(矢印X1側)のジョイント66の押圧面76に接触して転動する。なお、ジョイント66(変位体36)に接触して押圧する構成は、押圧ローラ110に限定されるものではない。例えば、押圧機構100は、押圧ローラ110に替えて、ジョイント66に接触する表面の摩擦係数が低い接触体(不図示)を適用してもよい。この種の接触体としては、すべりで摩擦係数が低くなるように表面処理(低摩擦材料の選択、研磨や潤滑剤の塗布等の加工)を施したものを用いることがあげられる。
【0043】
押圧面76は、矢印Z1側に端部傾斜面76aを備えると共に、端部傾斜面76aに連なりジョイント66の変位方向(矢印Z方向)に平行に延在する押圧面側平行面76bを有する。また押圧面76は、ジョイント66が矢印Z1側のストロークエンドに移動した位置(クランプアーム14のクランプ状態)で、押圧ローラ110が若干入り込むことが可能な凹部76cを有する。凹部76cは、例えば、0.2mm程度の深さであり、押圧ローラ110の曲率と同じ曲率の円弧状に形成されている。
【0044】
ローラホルダ112は、付勢受け部118と、付勢受け部118から矢印X2方向に突出する一対の突片120と、押圧ローラ110を回動自在に軸支する軸受けピン122とを含む。付勢受け部118は、圧縮スプリング114の内部に挿入される凸部118aと、凸部118aから径方向外側に突出し圧縮スプリング114の一端が接触する円盤状の座面部118bとを有する。一対の突片120は、押圧ローラ110と共に連通孔54bに挿入可能な大きさに形成され、相互間を架橋する軸受けピン122を強固に支持している。押圧ローラ110は、一対の突片120の突出端に対し矢印X2側に若干突出している。
【0045】
圧縮スプリング114は、ローラホルダ112の座面部118bに接触する矢印X2側の一端と、その反対側(矢印X1側)の他端とを有する円筒状に形成されている。圧縮スプリング114の他端は、調整部116の収容体128に接触する。すなわち、圧縮スプリング114は、収容体128からローラホルダ112が離間する方向(矢印X2側)に向かって付勢力(弾性力)を発揮する。なお、押圧ローラ110(ローラホルダ112)に付勢力を付与する付勢部材は、圧縮スプリング114に限定されず、例えば、ゴム部材、皿ばね、板ばねを適用してもよい。
【0046】
押圧機構100の調整部116は、押圧機構ハウジング102の外部に露出される締結体124と、締結体124の雌ねじ孔124aにねじ込まれる調整用ねじ126と、調整用ねじ126に接触する上記の収容体128とを有する。また、押圧機構ハウジング102の矢印X1側の端面102aには、押圧機構ハウジング102と空間108とを連通し、調整用ねじ126がねじ込まれるハウジング側ねじ孔103が設けられている。
【0047】
調整用ねじ126は、ユーザにより締結体124及び押圧機構ハウジング102に対して回転操作がなされることで、矢印X方向に変位して押圧機構ハウジング102内の収容体128の位置を変動させる。締結体124や調整用ねじ126には、調整用ねじ126の操作量や調整基準等を示す目盛124b(
図1参照)が形成されていてもよい。
【0048】
収容体128は、ローラホルダ112の付勢受け部118と対をなす形状に形成されている。すなわち収容体128は、圧縮スプリング114の内部に挿入される凸部128aと、凸部128aから径方向外側に突出し圧縮スプリング114の一端が接触する円盤状の座面部128bとを有する。収容体128は、調整用ねじ126による押圧機構ハウジング102内での位置調整に基づき、圧縮スプリング114がローラホルダ112(押圧ローラ110)に付与する付勢力を調整することができる。
【0049】
本実施形態に係るクランプ装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。なお、以下の説明においては、
図4に示すアンクランプ状態を初期位置として説明する。
【0050】
この初期位置において、圧力流体供給源は、第1ポート40を介してロッド側シリンダ室46に圧力流体を供給し、また第2ポート42を介して蓋体側シリンダ室48から圧力流体を排出する。このため、ピストン30が矢印Z2側に位置し、ピストン30の矢印Z2側の位置に応じてピストンロッド32、ジョイント66も矢印Z2側に位置する。
【0051】
このアンクランプ状態において、ジョイント66は、駆動力伝達部26のレバーアーム80から離間して矢印Z2側に位置している。駆動力伝達部26のリンクアーム78は、ジョイント66の初期位置に引っ張られることで、概ね矢印Z方向に沿う姿勢となっており、レバーアーム80の一端をジョイント66の上方(矢印Z1側)に配置している。このため、レバーアーム80に軸支されている駆動力伝達ローラ88もジョイント66の上方に位置し、レバーアーム80に連結されたクランプアーム14も支持構造16に対し略直交するように離間した状態となっている。また、クランプアーム14は、薄板状のワークWをクランプするため、第1把持体94の突出量が調整されている。
【0052】
さらに、アンクランプ状態においてジョイント66が矢印Z2側に位置していることで、押圧機構100の押圧ローラ110もジョイント66に非接触となっている。押圧ローラ110は、圧縮スプリング114に押されたローラホルダ112の付勢受け部118が第1ハウジング18に接触して、収容空間54に最大量で進出している。
【0053】
クランプ装置10は、クランプの動作時に、第2ポート42を介して圧力流体供給源から蓋体側シリンダ室48に圧力流体が供給され、ロッド側シリンダ室46の圧力流体を第1ポート40から排出する。これによりピストン30が第1ハウジング18側(矢印Z1側)に向かって押圧されて、ピストンロッド32及びジョイント66が一体的に矢印Z1側に変位する。
【0054】
ジョイント66は、一対の案内溝84に沿って各ガイドローラ82を転動させながら矢印Z1側に変位して、この変位時にリンクアーム78は第1ピン78aを支点に時計回りに回動する。このリンクアーム78の回動と共にレバーアーム80が回動し、クランプアーム14も支持ピン86を支点として時計回りに回動動作する。
【0055】
ジョイント66は、矢印Z1側への変位過程でレバーアーム80の駆動力伝達ローラ88に接触する。これにより駆動力伝達ローラ88がガイド面74に沿って転動する。駆動力伝達ローラ88は、まず端部傾斜面74aに接触することでレバーアーム80の時計回りの回動を補助する。さらにジョイント66は、矢印Z1側に変位すると、収容空間54に進出している押圧ローラ110に接触する。これにより押圧ローラ110が押圧面76に沿って転動する。押圧ローラ110は、まず端部傾斜面76aを転動することで、変位体36に対し徐々に押圧力を付与する。
【0056】
図5に示すように、クランプアーム14が回動動作によりワークWにある程度近接した段階(例えば、第1把持体94と第2把持体98の間隔が所定値(3.5mm)になった位置)で、押圧ローラ110は端部傾斜面7
6aから押圧面側平行面76bに移行する(以下、押圧開始点という)。これにより押圧ローラ110は、変位方向と直交する方向である矢印X2側に向かってジョイント66を押圧しつつ、押圧面側平行面76bを転動する。この際、
図6Aに示すように、ジョイント66は、ピストンロッド32の連結部50に対し連結凹部72が余裕をもっていることで、押圧ローラ110の押圧に伴い矢印X2側に微量に移動することが可能である。
【0057】
また押圧開始点において、駆動力伝達ローラ88は、ガイド面74の中間傾斜面74bに移行している。ジョイント66は矢印X2側に微量に移動していることで、中間傾斜面74bと駆動力伝達ローラ88との接触圧が高まっており、中間傾斜面74bに沿って駆動力伝達ローラ88を確実に転動させる。またジョイント66は、駆動力伝達ローラ88及び押圧ローラ110に挟まれた状態でも、各ローラが転動することで、矢印Z1側に円滑に変位することができる。
【0058】
クランプアーム14がワークWを最初にクランプする段階(クランプ開始点という)では、駆動力伝達ローラ88は、
図6Bに示すように、中間傾斜面74bの矢印Z2側(ガイド面側平行面74c付近)に位置している。クランプ開始点は、ワークWの厚みにも依るが、例えば、第1把持体94と第2把持体98の間隔が2.5mm以下になった位置である。この際、レバーアーム80は、ワークWに接触したクランプアーム14からクランプ反力を受けて、駆動力伝達ローラ88によりジョイント66を矢印X1側に押す。これにより押圧ローラ110は、圧縮スプリング114の付勢力に抗して矢印X1側に弾力的に変位しつつ、ジョイント66の矢印Z1側への変位を継続させる。逆に言えば、押圧ローラ110は、クランプ反力に抗するようにジョイント66を矢印X2側に弾力的に押圧しつつジョイント66を変位させる。従って、クランプ装置10は、ワークWが寸法誤差等により厚みが変化していてもこの寸歩誤差を許容してジョイント66を変位させ、中間傾斜面74bに沿ってレバーアーム80(駆動力伝達ローラ88)を回動させる。
【0059】
その結果、クランプアーム14がワークWをクランプしたクランプ状態で、
図3に示すように、駆動力伝達ローラ88がガイド面側平行面74cに位置するようになる。駆動力伝達ローラ88は、ジョイント66の変位方向と平行なガイド面側平行面74cに位置することで、クランプアーム14からクランプ反力を受けても、ジョイント66に矢印Z2側への分力を生じさせない。つまりクランプ状態では、駆動力伝達ローラ88の転動が規制され、その結果、レバーアーム80及びクランプアーム14の回動動作がロックされた(回動が規制された)状態が良好に確立する。
【0060】
特に、クランプ状態では、駆動力伝達ローラ88と押圧ローラ110とはジョイント66を挟んで同じ高さ(矢印Z方向)位置にある。つまり、押圧ローラ110の押圧方向の延長は、クランプ状態における駆動力伝達ローラ88の位置に重なる。このため、押圧ローラ110は、レバーアーム80に向けてジョイント66を弾力的に押圧して駆動力伝達ローラ88に強い押圧力をかけることで、クランプ状態のロックを強化することができる。
【0061】
さらにクランプ状態では、押圧ローラ110が押圧面76の凹部76cに入り込む。押圧ローラ110が凹部76cに入り込んでも、凹部76cが浅いため押圧ローラ110によるジョイント66への押圧力は殆ど低下しない。その一方で、クランプ装置10は、押圧ローラ110と凹部76cが嵌り合うことで、ジョイント66の矢印Z2側への移動が一層抑制されることになり、クランプ状態を一層良好に維持することができる。なお、押圧面76は、凹部76cを備えない構成でもよい。
【0062】
ワークWのクランプ状態を解除する場合には、ロッド側シリンダ室46に圧力流体を供給すると共に、蓋体側シリンダ室48から圧力流体を排出することで、ピストン30が第1ハウジング18から離間する方向(矢印Z2側)に移動する。これによりピストンロッド32及びジョイント66が一体的に変位する。ジョイント66は、矢印Z2側に引っ張られて変位するので、矢印X方向に押圧し合っている駆動力伝達ローラ88及び押圧ローラ110も、ガイド面74及び押圧面76を容易に転動することになる。そして、ジョイント66の矢印Z2側への変位に伴い、リンクアーム78が第1ピン78aを支点として反時計回りに回動し、レバーアーム80及びクランプアーム14も支持ピン86を支点として反時計回りに回動する。つまり、クランプアーム14が支持構造16から離間し、ワークWのクランプ状態が解除される。
【0063】
なお、ワークWのクランプ状態において、圧力流体の供給が停止してワークWがクランプ状態のままとなってしまった場合には、作業者が、クランプ解除機構58の解除用ピン64を押し込む。これにより、解除用ピン64の先端がジョイント66側に向かって移動して接触し、ジョイント66を矢印Z2側に押圧することでジョイント66を駆動部24側に向かって変位させることができる。この場合も、駆動力伝達ローラ88及び押圧ローラ110がガイド面74及び押圧面76を容易に転動してジョイント66の変位を許容することができる。
【0064】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、クランプ装置10は、リンク構造68を介して駆動部24の駆動力を変換してクランプアーム14を回動させる構成に限定されず、種々の構造を適用し得る。例えば、クランプ装置10は、ピストンロッド32(変位体36)がクランプアーム14に直接接触して、ピストンロッド32の変位に伴いクランプアーム14を回動させる構成をとり得る。この場合でも、ピストンロッド32のクランプアーム14に接触する部分に上記のガイド面74を設けて、ガイド面74と反対側を押圧機構100で押圧することにより、クランプ状態を強固にすることができる。
【0065】
また、押圧機構100の構成は、押圧ローラ110、圧縮スプリング114等の構造に限定されものではない。例えば、押圧機構100は、第1ハウジング18のクランプアーム14又はレバーアーム80の対向する位置の内面に、矢印X2側にジョイント66を弾力的に押圧する図示しない弾性凸部を設けた構成でもよい。弾性凸部は、ジョイント66の摺接に対応するため、摩擦係数が充分に低いものが適用されるとよい。
【0066】
上述の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について、以下に記載する。
【0067】
クランプ装置10は、変位体36を弾力的に押圧する押圧機構100を備えることで、クランプアーム14のクランプ状態においてクランプアーム14又は回動部(レバーアーム80)に変位体36のガイド面74を強く接触させることができる。また押圧機構100は、変位体36を邪魔することなく、変位体36を変位方向に変位させる。このため、クランプ装置10は、クランプアーム14のロック(回動動作の規制)の信頼性が向上し、例えば、小型に形成しても、クランプ状態を良好に確立することが可能となる。そして、押圧機構100の弾力的な押圧は、クランプアーム14のクランプ状態でも変位体36を多少変位させることで、ワークWの厚みの変化にも対応可能なロック範囲を得る。これにより、クランプ装置10は、ワークWやクランプ装置10の寸法誤差を許容して、安定したクランプ力を発揮することができる。
【0068】
また、ガイド面74は、変位体36の変位方向に対して傾斜する傾斜面(中間傾斜面74b)と、傾斜面に連なり変位方向に平行なガイド面側平行面74cとを有し、クランプアーム14又は回動部(レバーアーム80)は、クランプ状態でガイド面側平行面74cに位置する。クランプ装置10は、変位体36の変位方向に対して傾斜する中間傾斜面74bにより、変位体36の変位時にクランプアーム14又はレバーアーム80を中間傾斜面74bに沿わせることができ、押圧機構100が押圧しても変位体36がスムーズに移動できる。しかも、クランプ状態では、ガイド面側平行面74cにクランプアーム14又はレバーアーム80が位置するので、クランプアーム14又はレバーアーム80からの反力を変位体36が受けても、変位体36の移動を強固に抑制することができる。
【0069】
また、変位体36は、当該変位体36の変位方向と直交する方向に微量に移動可能に構成され、押圧機構100は、直交する方向に変位体36を押圧する。これにより、クランプ装置10は、クランプアーム14又はレバーアーム80に変位体36を一層強く押しつけて、変位体36によるクランプアーム14のロックをより確実に行うことができる。
【0070】
また、押圧機構100は、変位体36に接触して転動する押圧ローラ110又は摩擦係数が低く構成され変位体36に接触する接触体と、押圧ローラ110又は接触体を付勢する付勢部材(圧縮スプリング114)とを備える。押圧機構100は、押圧ローラ110(又は接触体)及び圧縮スプリング114を備えることで、変位体36の変位時に押圧ローラ110が押圧することになる。このため、変位体36を確実に押圧しつつ、変位体36の変位方向への移動をより一層円滑化することが可能となる。
【0071】
また、駆動機構22は、回動部(レバーアーム80)を有すると共に、変位体36の変位動作をクランプアーム14の回動動作に変換する駆動力伝達部26を備え、回動部は、ガイド面74に沿って転動可能な駆動力伝達ローラ88を備える。これにより、レバーアーム80は、変位体36の変位時に、ガイド面74に沿って駆動力伝達ローラ88を転動させながらレバーアーム80自体を回動させる。その結果、レバーアーム80は、クランプアーム14をより良好に回動動作させることができる。
【0072】
また、押圧ローラ110又は接触体の押圧方向の延長は、クランプ状態における駆動力伝達ローラ88の位置に重なる。これにより、クランプ装置10は、クランプ状態で押圧ローラ110(又は接触体)と駆動力伝達ローラ88との間に変位体36を挟むことになる。従って、押圧ローラ110の押圧力が駆動力伝達ローラ88に確実に伝わり、クランプ状態をより強固に維持することができる。
【0073】
また、変位体36は、押圧ローラ110又は接触体に押圧される押圧面76を有し、押圧面76は、変位体36の変位方向に平行な押圧面側平行面76bと、クランプ状態で押圧ローラ110又は接触体が接触する箇所に設けられた凹部76cとを含む。クランプ装置10は、押圧ローラ110が押圧面側平行面76bを転動することで、変位体36を変位方向にスムーズに変位させる。しかもクランプ状態で押圧ローラ110(又は接触体)が凹部76cに入り込むことになり、変位体36の変位方向への変位をより確実に規制して、ロックを維持することができる。
【0074】
また、押圧機構100は、付勢部材(圧縮スプリング114)の付勢力を調整する調整部116を有する。クランプ装置10は、調整部116を有することで、押圧機構100による押圧ローラ110の押圧力を調整可能とし、この結果、変位体36からクランプアーム14又はレバーアーム80にかける接触力が調整されるので、適切なクランプ力が得られる。よって例えば、クランプ装置10が経年しても、ワークWのクランプ状態を良好に維持することができる。
【0075】
また、駆動機構22は、圧力流体の供給及び排出に基づき変位体36を変位させる駆動部24を有する。これにより、クランプ装置10は、押圧機構100により変位体36を押圧しても、変位方向に沿って変位体36を安定的に進出又は後退させることができる。
【0076】
また、ボディ12の側面には、圧力流体を供給及び排出するコネクタ44が取り付けられ、押圧機構100は、コネクタ44が取り付けられる側面(側壁20a)と同じ側面18aに設けられる。クランプ装置10は、コネクタ44が取り付けられる側面に押圧機構100を備えることで、押圧機構100が突出していても圧力流体のコネクタ44のスペース分を利用することになる。すなわち、クランプ装置10の使用状態では、押圧機構100がスペースを殆どとることがなくなり、周辺機器との干渉を抑えて設置を容易化させることができる。
【符号の説明】
【0077】
10…クランプ装置 12…ボディ
14…クランプアーム 22…駆動機構
24…駆動部 26…駆動力伝達部
36…変位体 66…ジョイント
74…ガイド面 74a…端部傾斜面
74b…中間傾斜面 74c…ガイド面側平行面
76…押圧面 76a…端部傾斜面
76b…押圧面側平行面 76c…凹部
80…レバーアーム 88…駆動力伝達ローラ
100…押圧機構 102…押圧機構ハウジング
110…押圧ローラ 114…圧縮スプリング
116…調整部 W…ワーク