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特許6997983未固化液回収装置および未固化液回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】未固化液回収装置および未固化液回収方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20220203BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20220203BHJP
   E02D 5/24 20060101ALI20220203BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20220203BHJP
   G01N 1/12 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E02D1/04
E02D5/34 Z
E02D5/24
E02D3/12 102
G01N1/12 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017168360
(22)【出願日】2017-09-01
(65)【公開番号】P2019044468
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000201504
【氏名又は名称】前田製管株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517308057
【氏名又は名称】丸井重機建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000177416
【氏名又は名称】三和機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061619
【氏名又は名称】田中 武文
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】前田 直之
(72)【発明者】
【氏名】長坂 悌二
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 和博
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144914(JP,A)
【文献】特開2015-081424(JP,A)
【文献】特開2013-122166(JP,A)
【文献】特開2011-236554(JP,A)
【文献】特開2001-073360(JP,A)
【文献】特開2012-041718(JP,A)
【文献】米国特許第04157664(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00ー3/12
E02D 5/22ー5/80
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒部材により形成した外側ロッド2の内側に、中空円筒部材により形成した内側ロッド10を上下自在に嵌合させ、外側ロッド2の側面に形成した外側採取口7に、内側ロッド10の側面に形成した内側採取口15を合致させて内側ロッド10の回収室14内に未固化液を回収する構成とし、外側ロッド2と内側ロッド10との間に、未固化液の静液圧による内側ロッド10の上昇を機械的機構により規制する操作機構20を設けた未固化液回収装置。
【請求項2】
請求項1において、前記操作機構20は、未固化液の静液圧による内側ロッド10の上昇を、前記操作機構20の規制体により、前記内側ロッド10の上昇規制状態と上昇規制解除状態とに切り替える構成とした未固化液回収装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記操作機構20は、前記内側ロッド10の上部にプッシュロッド21の下部を固定状態に取付け、プッシュロッド21の上部は外側ロッド2の上部よりも上方に突出させてキャスター23を取付け、キャスター23の上下移動路に交差するように平板状の下側規制体24と上側規制体28とを設け、下側規制体24にはキャスター23が通過する下側通過口26を設け、上側規制体28にはキャスター23が通過する上側通過口30を設け、下側通過口26と上側通過口30とは位相を相違させて設けて構成した未固化液回収装置。
【請求項4】
請求項3において、前記下側規制体24に設けた下側通過口26には内側ロッド10の軸心を中心とする円弧状の通過溝27を連設し、前記上側規制体28に設けた上側通過口30には内側ロッド10の軸心を中心とする円弧状の上側通過溝31を連設し、下側規制体24と上側規制体28との何れかの下面にキャスター23が当接すると操作機構20を内側ロッド10の上昇規制状態とし、操作機構20の回転軸25を回転させて下側通過口26と上側通過口30の何れかをキャスター23が通過する状態とすると、操作機構20によるロッド10の上昇規制が、規制解除状態となるように構成した未固化液回収装置。
【請求項5】
請求項3において、前記下側規制体24は、前記内側採取口15が外側採取口7の下方に位置するように、外側ロッド2の上部から所定間隔をおいて配置設定し、前記上側規制体28は内側採取口15が外側採取口7に一致した状態でキャスター23が下面に当接するように下側規制体24より上方に所定間隔をおいて配置設定した未固化液回収装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかの請求項において、前記外側ロッド2の外側採取口7および内側ロッド10の内側採取口15は、外側ロッド2および内側ロッド10の軸心に対して交差方向に開口させ、外側ロッド2の内周面には、外側採取口7の上下両側に、上下方向に所定間隔をおいて複数のシール部材40を並設した未固化液回収装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れかの請求項において、外側ロッド2の外周面の所定位置には外側ロッド2の軸心に対して放射方向に突出する抵抗板35を設けた未固化液回収装置。
【請求項8】
中空円筒部材により形成した外側ロッド2の内側に、中空円筒部材により形成した内側ロッド10を上下自在に嵌合させて未固化液採取装置1を構成し、外側ロッド2の側面に形成した外側採取口7の下方に、内側ロッド10の側面に形成した内側採取口15が位置する操作機構20による規制状態で、未固化液採取装置1を未固化液の採取を希望する所望深度にまで下降させ、所望深度にて操作機構20の規制を解除して、内側ロッド10を地盤中の未固化液による静液圧により上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15と外側ロッド2の外側採取口7とを一致させ、この状態で操作機構20により内側ロッド10の静液圧による上昇を規制して回収室14内に未固化液を流入させ、次に、再び、操作機構20の規制を解除して、内側ロッド10を地盤中の未固化液による静液圧により上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15を外側ロッド2の外側採取口7より上方に位置させ、内側ロッド10の内側採取口15を外側ロッド2の内周面により閉塞し、この状態で、未固化液採取装置1全体を地盤から上昇させて、未固化液を回収する未固化液回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭工事において、杭下端部の根固め、球根造成、杭周辺の固定等の作業における未固化液の採取に使用される未固化液回収装置および未固化液回収装置方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、既製杭埋め込み工法の実施において、根固めの液を地中に注入し、土壌と混合した後、上記根固め液を未固化状態で採取し、該根固め液の土壌との混合撹拌状態を調査して固化後の強度等を予測する品質管理作業を行っている。
この未固化液の採取に、従来は、例えば杭建込みに使用した掘削機のロッド下端に採取器を取りつけ、該採取器の未固化液採取口を開閉する操作ロッドを掘削ロッドに沿って上方へ延長し、操作ロッドを回転させて採取口を開閉する構造のものが知られている(特許文献1)。
また、操作ロッドを上下させて採取口を開閉する構成は、公知である(特許文献2)。
また、操作ロッドを回転させてから上動させて採取口を開く構成は、公知である(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-81424号公報
【文献】特開2001-73360号公報
【文献】特開2012-144914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例のうち、特開2015-81424号公報に記載されたものは、操作ロッドを回転させて採取口を開閉する構成のため、シール性が低く、未固化液に異物が混入するという課題がある。
また、前記公知例のうち、特開2001-73360号公報に記載されたものは、土圧により採取口を開く構成のため、所望深度に下降させる途中で滞留している土砂等に押し込む際に、採取口が意図せず開口するという課題がある。
また、前記公知例のうち、特開2012-144914号公報に記載されたものは、操作ロッドの回転とバネ圧により、採取ロを開口させる構成のため、未固化液採取後、さらに、装置をバネ圧に抗して下方に押し込まなければならず、掘削孔底部のみでしか採取できないという課題がある。
本発明は、簡単な構成でありながら、所望深度の未固化液を確実に採取できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、中空円筒部材により形成した外側ロッド2の内側に、中空円筒部材により形成した内側ロッド10を上下自在に嵌合させ、外側ロッド2の側面に形成した外側採取口7に、内側ロッド10の側面に形成した内側採取口15を合致させて内側ロッド10の回収室14内に未固化液を回収する構成とし、外側ロッド2と内側ロッド10との間に、未固化液の静液圧による内側ロッド10の上昇を機械的機構により規制する操作機構20を設けた未固化液回収装置としたものである。
請求項2の発明は、前記操作機構20は、未固化液の静液圧による内側ロッド10の上昇を、前記操作機構20の規制体により、前記内側ロッド10の上昇規制状態と上昇規制解除状態とに切り替える構成とした未固化液回収装置としたものである。
請求項3の発明は、前記操作機構20は、前記内側ロッド10の上部にプッシュロッド21の下部を固定状態に取付け、プッシュロッド21の上部は外側ロッド2の上部よりも上方に突出させてキャスター23を取付け、キャスター23の上下移動路に交差するように平板状の下側規制体24と上側規制体28とを設け、下側規制体24にはキャスター23が通過する下側通過口26を設け、上側規制体28にはキャスター23が通過する上側通過口30を設け、下側通過口26と上側通過口30とは位相を相違させて設けて構成した未固化液回収装置としたものである。
請求項4の発明は、前記下側規制体24に設けた下側通過口26には内側ロッド10の軸心を中心とする円弧状の通過溝27を連設し、前記上側規制体28に設けた上側通過口30には内側ロッド10の軸心を中心とする円弧状の上側通過溝31を連設し、下側規制体24と上側規制体28との何れかの下面にキャスター23が当接すると操作機構20を内側ロッド10の上昇規制状態とし、操作機構20の回転軸25を回転させて下側通過口26と上側通過口30の何れかをキャスター23が通過する状態とすると、操作機構20によるロッド10の上昇規制が、規制解除状態となるように構成した未固化液回収装置としたものである。
請求項5の発明は、前記下側規制体24は、前記内側採取口15が外側採取口7の下方に位置するように、外側ロッド2の上部から所定間隔をおいて配置設定し、前記上側規制体28は内側採取口15が外側採取口7に一致した状態でキャスター23が下面に当接するように下側規制体24より上方に所定間隔をおいて配置設定した未固化液回収装置としたものである。
請求項6の発明は、前記外側ロッド2の外側採取口7および内側ロッド10の内側採取口15は、外側ロッド2および内側ロッド10の軸心に対して交差方向に開口させ、外側ロッド2の内周面には、外側採取口7の上下両側に、上下方向に所定間隔をおいて複数のシール部材40を並設した未固化液回収装置としたものである。
請求項7の発明は、外側ロッド2の外周面の所定位置には外側ロッド2の軸心に対して放射方向に突出する抵抗板35を設けた未固化液回収装置としたものである。
請求項8の発明は、中空円筒部材により形成した外側ロッド2の内側に、中空円筒部材により形成した内側ロッド10を上下自在に嵌合させて未固化液採取装置1を構成し、外側ロッド2の側面に形成した外側採取口7の下方に、内側ロッド10の側面に形成した内側採取口15が位置する操作機構20による規制状態で、未固化液採取装置1を未固化液の採取を希望する所望深度にまで下降させ、所望深度にて操作機構20の規制を解除して、内側ロッド10を地盤中の未固化液による静液圧により上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15と外側ロッド2の外側採取口7とを一致させ、この状態で操作機構20により内側ロッド10の静液圧による上昇を規制して回収室14内に未固化液を流入させ、次に、再び、操作機構20の規制を解除して、内側ロッド10を地盤中の未固化液による静液圧により上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15を外側ロッド2の外側採取口7より上方に位置させ、内側ロッド10の内側採取口15を外側ロッド2の内周面により閉塞し、この状態で、未固化液採取装置1全体を地盤から上昇させて、未固化液を回収する未固化液回収方法としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、地盤中の未固化液による静液圧を利用して上昇する内側ロッド10を、機械的機構の操作機構20により規制するので、駆動シリンダ等の駆動機構(アクチュエータ)等を用いずに、所望深度の未固化液を回収することができ、製造コスト・作業コストを低減することができ、また、未固化液回収作業を容易にすることができる。
請求項2の発明では、静液圧による内側ロッド10の上昇を操作機構20の規制体により内側ロッド10の上昇規制状態と上昇規制解除状態とに切り替えるので、操作機構20を簡素に構成でき、未固化液回収装置の製造コスト・作業コストを低減することができる。
請求項3の発明では、内側ロッド10の上部のプッシュロッド21のキャスター23の上下移動路に交差する平板状の下側規制体24と上側規制体28に、位相を相違させて下側通過口26および上側通過口30を設けて操作機構20を構成しているので、この簡単な構成で操作機構20上昇規制状態と操作機構20の上昇規制解除状態との切替えを実現できる。
請求項4の発明では、下側規制体24および上側規制体28の下側通過口26および上側通過口30には夫々内側ロッド10の軸心を中心とする円弧状の下側通過溝27および上側通過溝31を連設しているので、操作機構20上昇規制状態と操作機構20の上昇規制解除状態との切替えを実現できる。
請求項5の発明では、下側規制体24は内側採取口15が外側採取口7の下方に位置するように配置設定しているので、所望深度まで確実に内側採取口15を閉塞することができ、また、上側規制体28は内側採取口15が外側採取口7に一致した状態でキャスター23が下面に当接するように配置設定しているので、外側採取口7と内側採取口15とを確実に一致させ、かつ、保持できる。
請求項6の発明では、外側ロッド2の外側採取口7および内側ロッド10の内側採取口15は、外側ロッド2および内側ロッド10の軸心に対して交差方向に開口させ、外側ロッド2の内周面には、外側採取口7の上下両側に、上下方向に所定間隔をおいて複数のシール部材40を並設しているので、十分なシール性能を確保でき、採取未固化液にセメントミルクや水の混入を防止できる。
請求項7の発明では、外側ロッド2の外周面の所定位置には外側ロッド2の軸心に対して放射方向に突出する抵抗板35を設けているので、外側ロッド2を固定状態に保持して下側規制体24と上側規制体28を回転させることができ、操作機構20の切替えを確実にすることができる。
請求項8の発明では、地盤中の未固化液による静液圧を利用して未固化液のサンプルを回収できるので、駆動シリンダ等の駆動機構(アクチュエータ)等を不要にして、製造コスト・作業コストを低減することができ、また、未固化液回収作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】未固化液回収装置の作業開始前の状態の一例を示す側面図。
図2】未固化液回収装置の正面図。
図3】操作機構の上昇規制状態の断面図および操作機構の下側規制体および上側規制体の平面図。
図4】外側採取口と内側採取口との一致状態の断面図および操作機構の下側規制体および上側規制体の平面図。
図5】外側採取口から内側採取口が上昇した状態の断面図および操作機構の下側規制体および上側規制体の平面図。
図6】未固化液回収装置の回収状態の断面図および操作機構の下側規制体および上側規制体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図により説明すると、1は未固化液採取装置であり、未固化液採取装置1は既製杭埋め込み工法の実施において、地中に注入した根固め液及び杭周液の土壌との混合状態の未固化液(サンプル)を採取するものである。未固化液採取装置1は、縦長で中空円筒部材により形成した外側ロッド2を有し、外側ロッド2は外側円筒部内に空気室4を形成し、外側円筒部3の下端は開放して下端開口部5に形成し、外側円筒部3の上部は上板部6により閉塞している。
【0009】
未固化液採取装置1は上下方向に所定長さに形成し、外側円筒部3の上下方向中間所定位置には地盤中の未固化液を採取する外側採取口7を形成する。外側採取口7は外側ロッド2の軸心方向に対して交差方向である横方向に開口させる。
外側ロッド2には縦方向に長い内側ロッド10を上下摺動自在に密に嵌合させる。内側ロッド10も中空円筒部材により内側円筒部11を形成する。内側円筒部11の下端は下側閉塞部12により閉塞し、内側円筒部11の上部は上側閉塞部13により閉塞し、内側円筒部11内には未固化液を回収する回収室14を形成する。内側ロッド10には回収室14と連通する横方向の内側採取口15を形成し、内側ロッド10の回収室14は内側採取口15以外の部分は内側円筒部11と下側閉塞部12および上側閉塞部13により密閉状態に形成する。
【0010】
しかして、未固化液採取装置1は、密閉状態の回収室14を有する内側ロッド10を、地盤中の未固化液による静液圧により上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15を外側ロッド2の外側採取口7に一致させ、内側ロッド10の回収室14内に未固化液を回収し、次に、地盤中の未固化液による静液圧により内側ロッド10をさらに上昇させて、外側ロッド2の内周により内側ロッド10の内側採取口15を閉塞し、この状態で未固化液採取装置1全体を地盤から上昇させて、未固化液を回収する。
すなわち、内側ロッド10を上昇させる静液圧とは、静止している液体に働く圧力であり、液体中の一点に作用する圧力は方向によらず同じ大きさで、その大きさは液体の密度・重力加速度・深さの積に等しくなる。
【0011】
内側ロッド10は側面および下面が未固化液に接しており、内側ロッド10の側面に働く圧力は全周に作用して力が釣り合っている状態となるので、内側ロッド10の上昇には影響しないが、内側ロッド10の上面は外側ロッド2の空気室4内の空気に接しているため、静液圧は作用せず、内側ロッド10の下面に作用する未固化液の密度と外側ロッド2の空気室4の空気(大気)の密度の差分上向きに力が働くことになる。
これにより、未固化液採取装置1の位置が深くなることで静液圧の上向きの力が大きくなり、外側ロッド2に対して上下自在の内側ロッド10には上昇させるように静液圧が常時作用し、回収室14内に未固化液を回収した後も内側ロッド10を上昇させるように作用する。
【0012】
この静液圧による内側ロッド10の上昇を規制し、かつ、規制を解除して内側採取口15と外側採取口7を一致させ、その後、内側ロッド10のさらなる上昇を許容する操作機構20を、外側ロッド2と内側ロッド10との間に設ける。
操作機構20は、内側ロッド10の上部にプッシュロッド21の下部を固定状態に取付ける。プッシュロッド21の上部は外側ロッド2の上板部6を貫通させて上方に突出させ、プッシュロッド21の上部にキャスター23を取付ける。キャスター23は操作機構20の下側規制体24の下面に当接させ、内側ロッド10の静液圧による上昇を規制する。
【0013】
下側規制体24は操作機構20の回転軸25に固定し、回転軸25は外側ロッド2の上板部6に回転のみ自在に取付ける。下側規制体24にはキャスター23の上動を許容する下側通過口26を設け、下側通過口26にはプッシュロッド21の上動を許容する通過溝27を連通状態に設ける。下側規制体24の所定間隔おいた上方位置の回転軸25には上側規制体28を設ける。
上側規制体28は、その下面にキャスター23が当接すると、外側ロッド2の外側採取口7に内側ロッド10の内側採取口15が一致するように設定する。
したがって、操作機構20は、プッシュロッド21のキャスター23が下側規制体24の下側通過口26を通過して、上側規制体28の下面にキャスター23が当接すると、外側ロッド2の外側採取口7に内側ロッド10の内側採取口15を一致させ、外側採取口7と内側採取口15から回収室14内に未固化液M(図4)を回収する。
【0014】
上側規制体28にはキャスター23の上動を許容する上側通過口30を設け、上側通過口30にはプッシュロッド21の上動の許容および下動を規制する上側通過溝31を連通状態に設ける。
したがって、操作機構20は、プッシュロッド21のキャスター23が上側規制体28の上側通過口30を通過して、キャスター23が上側規制体28より上動すると、外側ロッド2の外側採取口7に一致していた内側ロッド10の内側採取口15が外側採取口7より上方に外れ、外側ロッド2の内周面により内側採取口15を閉塞し、この状態で未固化液採取装置1全体を地盤から上昇させて、未固化液を回収する。
この場合、下側規制体24の下側通過口26と上側規制体28の上側通過口30とは、平面視において位相を相違させ、下側通過口26を通過したキャスター23は必ず上側規制体28の下面に当接するように構成する。
【0015】
また、外側ロッド2の内周面により内側採取口15を閉塞すると、この状態で回転軸25を逆転させ、キャスター23を上側規制体28の上側通過口30上方から退避させ、上側規制体28の上面上方に移動させ、この状態で未固化液採取装置1全体を地盤から上昇させ、上側規制体28とキャスター23との当接により未固化液採取装置1全体を支持する。
また、前記回転軸25の中心には外気と連通する空気孔33を設け、外側ロッド2の空気室4内の空気圧を大気圧とし、これにより、静液圧との圧力差で内側ロッド10を上昇させる。
【0016】
また、下側規制体24と上側規制体28は回転軸25により一体状にキャスター23(外側ロッド2)に対して回転するように構成し、回転軸25を外側円筒部3の上板部6に回転のみ自在に取付けている。
本実施形態では、外側ロッド2の外周面の所定位置には外側ロッド2の軸心に対して放射方向に突出する抵抗板35を設け、抵抗板35と未固化液との接触抵抗により、外側ロッド2と内側ロッド10を回転軸25に対して反力を取って固定状態としている。
【0017】
前記下側規制体24および上側規制体28の下側通過口26および上側通過口30にはストッパ38を夫々設け、下側規制体24および上側規制体28の下側通過口26および上側通過口30の夫々にキャスター23が一致すると、回転軸25の回転を停止するように構成する。
そのため、下側通過口26と上側通過口30とキャスター23との一致を確実にでき、操作機構20の規制解除を確実にできる。
外側ロッド2の外側円筒部3の内周面には、上下方向に所定間隔をおいて複数のシール部材40を並設する。シール部材40は外側採取口7の上下両側に複数並設する
【0018】
しかして、未固化液採取装置1により地盤中の未固化液を採取する手段は任意であるが、以下、一例を示す。45は地盤上に設置したベースマシンであり、ベースマシン45のマスト46にアースオーガー47を上下動自在に取付け、アースオーガー47の掘削ロッド48の下部に未固化液採取装置1の回転軸25を取付ける。アースオーガー47は掘削ロッド48を正逆駆動回転自在に構成し、これにより、未固化液採取装置1の回転軸25は地盤中で正逆回転して、未固化液を採取する構成としている。
【0019】
(実施形態の作用)
本発明は上記構成であり、地盤所定位置にベースマシン45を設置してセメントミルク等を地盤に注入して地盤改良あるいは杭の施工をする。
未固化液採取装置1は、中空円筒部材により形成した外側ロッド2の内側に、中空円筒部材により形成した内側ロッド10を嵌合させ、外側ロッド2と内側ロッド10との間に、未固化液の静液圧による内側ロッド10の上昇を機械的機構により規制する操作機構20を設けているので、操作機構20により外側ロッド2の外側採取口7の下方に内側ロッド10の内側採取口15が位置する規制状態で、マスト46に対してアースオーガー47を下降させ、未固化液採取装置1を未固化液の採取を希望する所望深度にまで下降させる。
【0020】
所望深度に未固化液採取装置1を下降させたら、操作機構20の規制を解除して、内側ロッド10を地盤中の未固化液による静液圧により上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15と外側ロッド2の外側採取口7とを一致させ、回収室14内に未固化液を流入させる。
次に、回収室14内に未固化液を流入させると、再び、操作機構20の規制を解除して、内側ロッド10を地盤中の未固化液による静液圧により上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15を外側ロッド2の外側採取口7より上方位置させ、内側ロッド10の内側採取口15を外側ロッド2の内周面により閉塞する。
この状態で、アースオーガー47を上昇させて、未固化液採取装置1全体を地盤から上昇させて、未固化液を回収する。
【0021】
したがって、地盤中の未固化液による静液圧を利用して上昇する内側ロッド10を、機械的機構により規制する操作機構20とにより、内側ロッド10を構成しているので、駆動シリンダ等の駆動機構(アクチュエータ)等を用いずに、所望深度の未固化液を回収することができ、製造コスト・作業コストを低減することができ、また、未固化液回収作業を容易にすることができる。
また、地盤中の未固化液による静液圧を利用して内側ロッド10を上昇させて、内側ロッド10の内側採取口15の開口と閉塞をさせるので、掘削孔の底部のみならず、中間所望部分での未固化液の回収を可能にできる。
【0022】
しかして、未固化液採取装置1は、中空円筒部材により形成した外側ロッド2の内側に、中空円筒部材により形成した内側ロッド10を上下摺動自在に嵌合させ、外側ロッド2と内側ロッド10との間に、未固化液の静液圧による内側ロッド10の上昇を規制する操作機構20を設けているので、駆動シリンダ等の駆動機構を用いずに、所望深度の未固化液を回収することができる。
また、操作機構20は、内側ロッド10の上昇の規制を解除して外側ロッド2の内側採取口15と内側ロッド10の外側採取口7を一致させるので、この点でも、駆動シリンダ等の駆動機構を用いずに、所望深度の未固化液を回収することができる。
【0023】
また、操作機構20は、未固化液回収後、内側ロッド10の上昇の規制を解除するので、内側ロッド10の外側採取口7を外側ロッド2の内周面により密閉状態に閉塞でき、回収した未固化液に、セメントミルクや水等が混入するのを防止でき、未固化液の検出精度を向上させることができる。
すなわち、外側ロッド2の外側円筒部3内に空気室4を形成し、外側円筒部3の下端は開放して下端開口部5に形成し、この外側ロッド2に内部に回収室14を形成した内側ロッド10を、上下摺動自在に密に嵌合させているので、操作機構20の規制を解除すると、外側ロッド2の外側採取口7の下方に位置している内側ロッド10の内側採取口15は内側ロッド10の未固化液の静液圧による上昇して、前記したように、内側ロッド10の内側採取口15は外側ロッド2の外側採取口7と一致して、内側ロッド10の回収室14内に未固化液を流入させることができる。
【0024】
そして、未固化液の回収後に、さらに、操作機構20の規制を解除すると、内側ロッド10は未固化液の静液圧によりさらに上昇し、内側ロッド10の内側採取口15は外側ロッド2の外側採取口7より上方位置して、内側採取口15は外側ロッド2の内周面により閉塞された状態になるので、内側ロッド10の外側採取口7を外側ロッド2の内周面により密閉状態に閉塞でき、回収した未固化液に、目的深度以外での未固化液が混入することを防止でき、未固化液の検出精度を向上させることができる。
この場合、外側ロッド2の内周面には、上下方向に所定間隔をおいて複数のシール部材シール部材40を並設しているので、内側ロッド10の内側採取口15は未固化液の回収前と回収後の両者において、外側ロッド2の内周面により閉塞され、回収未固化液に、異物の混入を防止できる。
【0025】
また、外側ロッド2に対して上下する内側ロッド10の内側採取口15を、シール部材40により閉塞するので、この点でも、シール性能を向上させることができる。
操作機構20は、内側ロッド10の上部にプッシュロッド21の下部を固定状態に取付け、プッシュロッド21の上部は外側ロッド2の上部よりも上方に突出させてキャスター23を取付け、キャスター23の上下移動路に交差するように下側規制体24と上側規制体28を設け、下側規制体24と上側規制体28には位相を相違させてキャスター23が通過する下側通過口26および上側通過口30を設けて構成しているので、まず、ベースマシン45のアースオーガー47の掘削ロッド48の下部に未固化液採取装置1の回転軸25を取付けると、未固化液採取装置1は外側ロッド2に対して内側ロッド10が自重で下降し、操作機構20の下側規制体24の下面下方にキャスター23を位置させ、操作機構20は内側ロッド10の上昇を規制する。
【0026】
この状態で、マスト46に対してアースオーガー47を下降させ、未固化液採取装置1を未固化液の採取を希望する所望深度にまで下降させる。
所望深度に未固化液採取装置1を下降させたら、操作機構20の回転軸25を回転(例えば、正回転)させ、操作機構20の下側規制体24の下側通過口26をキャスター23の上方位置させると、操作機構20はキャスター23の上昇を許容し、その結果、内側ロッド10は地盤中の未固化液による静液圧により上昇を開始し、キャスター23が操作機構20の上側規制体28の下面に当接して内側ロッド10の上昇が停止し、これ以上の内側ロッド10の上昇を操作機構20が規制する。
内側ロッド10の上昇が停止すると、内側ロッド10の内側採取口15は外側ロッド2の外側採取口7と一致するので、回収室14内に未固化液を流入させる。
【0027】
次に、操作機構20の回転軸25を逆回転させ、操作機構20の上側規制体28の上側通過口30をキャスター23の上方位置させると、操作機構20による内側ロッド10の上昇規制が解除され、内側ロッド10は地盤中の未固化液による静液圧によりさらに上昇を開始し、キャスター23が操作機構20の上側規制体28の上側通過口30を通過して上側規制体28の上面より上方に位置する。
キャスター23が操作機構20の上側規制体28の上面より上方に位置すると、内側ロッド10の内側採取口15は外側ロッド2の外側採取口7より上方位置して、内側採取口15は外側ロッド2の内周面により閉塞された状態になる。
この状態で、アースオーガー47を上昇させて、未固化液採取装置1全体を地盤から上昇させて、内側ロッド10の下側閉塞部12を外すと、回収室14から未固化液を回収できる。
【0028】
このように、操作機構20は上下一対の下側規制体24および上側規制体28と内側ロッド10側に取付けたキャスター23により構成しているので、機械的に内側ロッド10の上昇の規制する機構を簡単に構成でき、しかも、操作機構20の回転軸25を正逆回転させるだけであるから、操作も容易である。
また、内側ロッド10は中空円筒部材により形成した内側円筒部11の下端を下側閉塞部12により、内側円筒部11の上部を上側閉塞部13により閉塞して内部に回収室回収室14を形成しているので、内側ロッド10の回収室14は内側採取口15以外の部分は内側円筒部11と下側閉塞部12および上側閉塞部13により密閉状態となり、静液圧による内側ロッド10の上昇作用の確実性を向上させることができる。
【0029】
また、回転軸25の中心には外気と連通する空気孔33を設けているので、外側ロッド2の空気室4内の空気圧を大気圧とし、これにより、静液圧との圧力差で内側ロッド10を上昇させる。
また、操作機構20は、上下一対の下側規制体24および上側規制体28に、下側通過口26および上側通過口30と通過溝27および上側通過溝31をそれぞれ設けるだけで、キャスター23の上昇の規制および規制解除できるので、操作機構20の構成を簡素に実現できる。
【0030】
また、操作機構20は、内側ロッド10の上部に下部を固定状態に取付けた一対のプッシュロッド21の上部にキャスター23を取付けて構成しているので、下側規制体24または上側規制体28の下面にキャスター23が当接した状態で、下側規制体24または上側規制体28の回転抵抗を減少させ、円滑に操作機構20を作動させることができる。
また、操作機構20は、上側規制体28の下面にキャスター23が当接すると、外側ロッド2の外側採取口7に内側ロッド10の内側採取口15が一致するように設定しているので、外側ロッド2の外側採取口7と内側ロッド10の内側採取口15との一致操作が確実に行われ、かつ、一致した状態を確実に保持できる。
【0031】
同様に、操作機構20は、上側規制体28にキャスター23の上動を許容する上側通過口30を設けているので、外側ロッド2の外側採取口7に一致していた内側ロッド10の内側採取口15が外側採取口7から外れ、外側ロッド2の内周面により内側採取口15を確実に閉塞できる。
この場合、下側規制体24の下側通過口26と上側規制体28の上側通過口30とは、平面視において位相を相違させているので、下側通過口26を通過したキャスター23は必ず上側規制体28の下面に当接し、外側ロッド2の外側採取口7と内側ロッド10の内側採取口15との一致状態を保持する。
また、操作機構20の下側規制体24と上側規制体28は、回転軸25により一体状にキャスター23(外側ロッド2)に対して回転するように構成しているので、アースオーガー47により掘削ロッド48を正逆回転させるだけで、操作機構20の規制および規制解除の操作を行うことができる。
【0032】
内側ロッド10の内側採取口15は、内側ロッド10の内側円筒部11に横方向に開口させた内側採取口15を形成しているので、上下方向に開口させた内側採取口15に比し、シールド性の確保を容易にできる。
外側ロッド2の外周面の所定位置には外側ロッド2の軸心に対して放射方向に突出する抵抗板35を設けているので、外側ロッド2の抵抗板35と地盤との接触抵抗により、外側ロッド2と内側ロッド10とを回転軸25に対して反力を取って固定状態にすることができ、操作機構20の規制および規制解除の操作を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
1…未固化液採取装置、2…外側ロッド、3…外側円筒部、4…空気室、5…下端開口部、7…外側採取口、10…内側ロッド、11…内側円筒部、12…下側閉塞部、13…上側閉塞部、14…回収室、15…内側採取口、20…操作機構、21…プッシュロッド、22…上板部、23…キャスター、24…下側規制体、25…回転軸、26…下側通過口、27…下側通過溝、28…上側規制体、30…上側通過口、31…上側通過溝、33…空気孔、35…抵抗板、38…ストッパ、40…シール部材、45…ベースマシン、46…マスト、47…アースオーガー、48…掘削ロッド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6