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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】パイプ曲げ装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/024 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B21D7/024 P
B21D7/024 A
B21D7/024 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018074731
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019181507
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】306027530
【氏名又は名称】株式会社ソ-キナカタ
(73)【特許権者】
【識別番号】514241548
【氏名又は名称】株式会社カヨウコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】仲田 昭三
(72)【発明者】
【氏名】鹿養 和良
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-259836(JP,A)
【文献】特開2003-311335(JP,A)
【文献】特開平01-293920(JP,A)
【文献】実開昭62-151021(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を鉛直方向として直列配置された、外面の形状の異なる複数の曲げ駒と、前記複数の曲げ駒を直列方向に移動させる曲げ駒移動手段と、前記複数の曲げ駒をそれぞれ独立的に軸方向に昇降させる曲げ駒昇降手段と、前記複数の曲げ駒と軸方向が平行になるよう配置された曲げローラと、前記曲げローラを軸方向に昇降させるローラ昇降手段と、前記上昇した曲げ駒の外面に沿って前記上昇した曲げローラを移動させるローラ移動手段とで構成された曲げユニットを、パイプの伸長方向に対して移動可能に配設したことを特徴とするパイプ曲げ装置。
【請求項2】
請求項1に記載したパイプ曲げ装置において、
ローラ移動手段は軸方向に垂直なX方向移動手段及びY方向移動手段を備え、曲げローラはXY面内で移動自在になっていることを特徴とするパイプ曲げ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載したパイプ曲げ装置において、
曲げユニットを、パイプの伸長方向両側に配設したことを特徴とするパイプ曲げ装置。
【請求項4】
請求項3に記載したパイプ曲げ装置において、
複数の曲げ駒のうち相対的に小さい曲げ駒の外面には、その水平方向に平行に複数の溝が形成されており、一方の曲げユニットのローラの外面には、その水平方向に平行に前記曲げ駒側の複数の溝と対向して複数の溝が形成され、他方の曲げユニットのローラの外面は滑らかに形成されていることを特徴とするパイプ曲げ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載したパイプ曲げ装置において、
曲げユニットには、パイプの伸長方向先側にテーブルが配設されていることを特徴とするパイプ曲げ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載したパイプ曲げ装置において、
曲げユニットには、複数の曲げ駒の直列配置側にパイプを水平姿勢で伸長させる姿勢ガイドが設けられていることを特徴とするパイプ曲げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性変形可能な金属製のパイプの曲げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製のパイプの曲げ加工自体は、従来から行われており、特許文献1に記載のように、パイプを固定治具と加圧治具との間に挟み、加圧治具を固定治具の外面に対してパイプを沿わせる方向に押し付けながら移動させることで、固定治具の外面を転写した形状にパイプを曲げ成形するのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-323424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、パイプは、冷凍サイクルの冷媒配管、エンジン冷却水を循環させる冷水配管等にも広く利用されているが、取付け側の取り回し要求にしたがって複雑な形状に成形されるものが少なくない。その一例が、図1に示すように成形されたパイプPになっており、複数の箇所が種々の角度で曲げられている。
このような複雑な曲げ成形を、例えば、特許文献1に記載の典型的なパイプ曲げ器具を用いて実施しようとすると、固定治具側に要求される外面の形状が複数となるので、一々固定治具を交換するか、または、一つの固定治具に複数の外面を形成することになる。しかしながら、交換は手間の掛かる作業であり、一つの固定治具には設計上の制約から形成しても外面の形状は精々二つである。しかも、加圧治具の回転方向は右回りか左回りのどちらかに限定される。
そのため、固定治具と加圧治具がセットとなったパイプ曲げ器具を、パイプPの曲げ予定箇所に応じて複数の位置に設置することが、結局のところ一番手間の掛からない対応になっていた。
従って、加圧治具の動作を自動化しても、それだけでは、自動化のメリットは少なく、手作業で行っているのが実情である。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、一台設置するだけで、長尺なパイプの複数の箇所を、種々の角度で曲げて複雑な形状に自動的に成形できるパイプ曲げ装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1の発明は、軸方向を鉛直方向として直列配置された、外面の形状の異なる複数の曲げ駒と、前記複数の曲げ駒を直列方向に移動させる曲げ駒移動手段と、前記複数の曲げ駒をそれぞれ独立的に軸方向に昇降させる曲げ駒昇降手段と、前記複数の曲げ駒と軸方向が平行になるよう配置された曲げローラと、前記曲げローラを軸方向に昇降させるローラ昇降手段と、前記上昇した曲げ駒の外面に沿って前記上昇した曲げローラを移動させるローラ移動手段とで構成された曲げユニットを、パイプの伸長方向に対して移動可能に配設したことを特徴とするパイプ曲げ装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したパイプ曲げ装置において、ローラ移動手段は軸方向に垂直なX方向移動手段及びY方向移動手段を備え、曲げローラはXY面内で移動自在になっていることを特徴とするパイプ曲げ装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載したパイプ曲げ装置において、曲げユニットを、パイプの伸長方向両側に配設したことを特徴とするパイプ曲げ装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載したパイプ曲げ装置において、複数の曲げ駒のうち相対的に小さい曲げ駒の外面には、その水平方向に平行に複数の溝が形成されており、一方の曲げユニットのローラの外面には、その水平方向に平行に前記曲げ駒側の複数の溝と対向して複数の溝が形成され、他方の曲げユニットのローラの外面は滑らかに形成されていることを特徴とするパイプ曲げ装置である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載したパイプ曲げ装置において、曲げユニットには、パイプの伸長方向先側にテーブルが配設されていることを特徴とするパイプ曲げ装置である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載したパイプ曲げ装置において、曲げユニットには、複数の曲げ駒の直列配置側にパイプを水平姿勢で伸長させる姿勢ガイドが設けられていることを特徴とするパイプ曲げ装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パイプ曲げ装置を一台設置するだけで、パイプの複数の箇所を種々の角度で曲げて複雑な形状に自動的に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るパイプ曲げ装置で曲げ成形したパイプの上面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るパイプ曲げ装置の上面図である。
図3図2のパイプ曲げ装置の前面図である。
図4図2のパイプ曲げ装置に備えられたR側曲げユニットの上面図である。
図5図4のR側曲げユニットの斜視図である。
図6図4のR側曲げユニットの一部透明化した上面図である。
図7図6のR側曲げユニットの前面図である。
図8図6のR側曲げユニットの後面図である。
図9図6のR側曲げユニットの左側面図である。
図10図6のR側曲げユニットの斜視図である。
図11図6のR側曲げユニットの斜視図である。
図12図6のR側曲げユニットの要部拡大斜視図である。
図13図4のR側曲げユニットの要部拡大斜視図である。
図14図13のR側曲げユニットによるパイプの曲げ動作のイメージ図である。
図15図2のパイプ曲げ装置に備えられたL側曲げユニットの上面図である。
図16図2のパイプ曲げ装置に備えられたパイプクランプユニットの斜視図である。
図17図2のパイプ曲げ装置に備えられたパイプ懸架ユニットの斜視図である。
図18図17のパイプ懸架ユニットの側面図である。
図19図4のR側曲げユニットによる、曲げ成形の順次工程におけるパイプの曲げ動作の説明図である。
図20図19に続く工程における、曲げ動作の説明図である。
図21図20の後の工程における、曲げ動作の説明図である。
図22図21に続く工程における、曲げ動作の説明図である。
図23図22の後の最終工程における、R側曲げユニットによる曲げ動作の完了状態と、並行して実施された図15のL側曲げユニットによる曲げ動作の完了状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るパイプ曲げ装置1について、図面にしたがって説明する。
図2、3に示すように、このパイプ曲げ装置1は、フレーム状の固定基台3を備える。この固定基台3は、左右方向に長くなっており、上端には前後方向の縁寄りにそれぞれ水平天面を有する載置テーブル5、7がそれぞれ取付けられているが、中間は開放部9になって上下方向に開放されている。
【0015】
この固定基台3の右側にR側曲げユニット11が取付けられている。図4、5に示すように、このR側曲げユニット11は、フレーム状の移動基台13を備える。この移動基台13の下側には前後方向の断面が逆凹面になった摺動部15が形成されている。一方、上記した固定基台3側には前後方向の断面が凸面になったガイドレール(図示省略)が取付けられており、このガイドレールに摺動部15が摺動自在に嵌合して、移動基台13は固定基台3に対して左右方向に移動自在になっている。
移動基台13の上端には水平天面を有する載置テーブル17が取付けられており、その天面は固定基台3側の載置テーブル5、7の天面と同じ高さになっている。この載置テーブル17が固定基台3側の載置テーブル5、7の間に位置しており、移動基台13が停止したときには、前後方向で、載置テーブル5~載置テーブル17~載置テーブル7と連続した大きな載置面が形成される。
【0016】
移動基台13には、左端側に載置テーブル17の欠落した部分があり、上下方向に開放されており、そこで曲げ加工が実施される。左端には、ブロック状の姿勢ガイド部19が取付けられており、載置テーブル17よりも上方に突出している。この姿勢ガイド部19にはガイド溝21が形成されている。このガイド溝21は前後方向の断面が上端から下方に向かって延びるスリット状になっており、左右方向で貫通されている。このガイド溝21は、載置テーブル17の前後方向のほぼ中心に位置している。
曲げ加工の際には、図13に示すように、パイプPがこのガイド溝21に挟まれ、水平姿勢にガイドされた状態で、左右両方向に伸長する。このガイド溝21には複数のパイプPが鉛直方向に直列した状態で同時に挟み込むことが可能になっている。
【0017】
姿勢ガイド部19の右側に隣接して、4種類の曲げ駒23、25、27、29が設けられている。図6~9に示すように、これらの曲げ駒23、25、27、29はいずれも軸状をなしているが、互いに異なる外径の円弧状外周面を有している。図13に示すように、外径が相対的に小さい方の2つの曲げ駒23、27の円弧状外周面にはそれぞれ周方向に平行に複数のガイド溝23a、27aが形成されている。
4種類の曲げ駒23、25、27、29は、それぞれの軸方向を鉛直方向として、前後方向に直列配置されており、ガイド溝23a、27aは水平方向に平行に並んでいる。曲げ駒23、25、27、29の円弧状外周面がパイプを曲げ成形するときの転写面になっており、前後及び右側方向を向いている。
【0018】
曲げ駒23、25、27、29の下部には、それぞれ、シリンダ式の電動アクチュエータ31、33、35、37のロッドが連結されており、それぞれのアクチュエータ31、33、35、37が独立的に作動して、曲げ駒23、25、27、29は軸方向に昇降可能になっている。
アクチュエータ31、33、35、37の本体側は連結部39に連結されている。移動基台13にはボールねじ式の電動アクチュエータ41が取付けられており、アクチュエータ41の作動により、螺進するナット部に連結された連結部39が前後方向に、すなわち直列方向に対して平行に移動する。従って、曲げ駒23、25、27、29は一つの纏まった列として水平面(XY面)内を前後方向(Y方向)に移動可能になっている。
【0019】
更に、曲げ駒23、25、27、29の右側には、曲げローラ43が設けられている。この曲げローラ43は、円柱状をなしており、図13に示すように、その外周面には周方向に平行にガイド溝43aが形成されている。
この曲げローラ43は、軸方向を鉛直方向として配置されており、曲げ駒23、25、27、29と軸方向が平行になっている。従って、曲げ駒23、27のガイド溝23a、27aと同じように、曲げローラ43のガイド溝43aも水平方向に平行に並んでいる。曲げ駒23、27のガイド溝23a、27aと、曲げローラ43のガイド溝43aは、溝の間隔、サイズ及び数は同じに設定されている。
【0020】
曲げローラ43は、プレート状の支持アーム45の上面に取付けられて、一体に移動するようになっている。この支持アーム45は曲げローラ43の取付け側である左側先端部は幅狭になっており、曲げローラ43の外周面は支持アーム45よりも外方に突出している。
支持アーム45には可動部46がリニアガイド46Aを介して上下方向へ相対移動可能に連結されている。
この可動部46の連結プレート46Bにサーボモータ47によるボールねじ駆動のナット部が連結されており、サーボモータ47の作動により、螺進するナット部の左右方向への移動に追従して、支持アーム45が水平面(XY面)内を左右方向(X方向)に移動自在になっている。
また、サーボモータ49によるボールねじ駆動のナット部にベースプレート50が連結されており、このベースプレート50は移動基台13に前後移動可能に支持されている。ペースプレート50に上記したサーボモータ47の本体側が固定支持されており、サーボモータ49の作動により、螺進するナット部の前後方向への移動に追従して、サーボモータ47及び可動部46と共に、支持アーム45が水平面(XY面)内で前後方向(Y方向)に移動自在になっている。
【0021】
更に、図12に示すように、可動部46の連結プレート46Bの下面側にはエアシリンダ設置部46Cが連続しており、ベースプレート50の開口部を通り抜けて下側に延びている。ここに、エアシリンダ51の本体部が設置されている。このエアシリンダ51のロッド51Aが支持アーム45の下面に固定されており、エアシリンダ51の作動により、ロッドの移動に追従して、支持アーム45が上下方向に移動可能になっている。
【0022】
上記の構成により、曲げ駒23、25、27、29のうち、曲げ加工に用いる曲げ駒を択一的に曲げ加工位置まで移動させることができ、その他の曲げ駒は下降させておくことで干渉を排除できる。
曲げ加工の際には、パイプPを曲げ駒23、…のいずれかと曲げローラ43との間に挟み、曲げローラ43を曲げ駒23、……のいずれかの外周面に対してパイプPを沿わせる方向に押し付けながら移動させることができる。
また、この曲げ加工では、曲げローラ43は疑似円弧軌道上で移動するが、曲げローラ43の移動軌道はこの疑似円弧軌道に限定されないので、曲げ加工の前には、パイプPをなぞることで癖を整えることができ、更に、曲げ加工の後には、パイプPから水平面上を退避した後で下降することでパイプPへの干渉を排除できる。
【0023】
曲げ加工の際には、図13に示す位置関係で、パイプPが姿勢ガイド部19のガイド溝21から右方に水平に伸長しており、なお、パイプPは1本ではなく、複数を同時に曲げ加工することが可能になっており、その場合には、パイプPは複数ガイド溝21に挟み込まれている。
曲げ加工に、曲げ駒23を用いる場合には、図14に示すように、姿勢ガイド部19から右方に伸長したパイプPを上昇した曲げ駒23の円弧状外周面に沿わせ、同様に上昇した曲げローラ43を曲げ駒23に対してパイプPを押し付けながら移動する。
【0024】
曲げ駒23のように外径が小さいものに沿わせて曲げる場合には、パイプPが潰れないように、パイプPが入り込むガイド溝23aが形成されている。
また、パイプPは直状に成形した場合でも、端側は癖が出やすいが、曲げローラ43で押し付けるときに、そのガイド溝43aに入った状態で押し付けられるので、上方に滑っていかず、曲げ駒23のガイド溝23aに綺麗に入るようになっている。
【0025】
R側曲げユニット11の移動基台13には、ラック・ピニオン式の電動アクチュエータ52のサーボモータ52Aが固定され、このサーボモータ52Aにはピニオン52Bが接続されている。一方、固定基台3側にはラックが設けられており、このピニオン52Bが固定基台3側のラックと噛み合い、右方から左方に向かって、パイプPの複数の曲げ予定箇所への移動が可能となっている。
パイプPには複数の曲げ予定箇所が設定されているが、R側曲げユニット11は、パイプPの右端側の曲げ予定箇所から左方の曲げ予定箇所まで順次曲げ加工していくようになっており、所定の曲げ予定箇所での曲げ加工が終了すると、その左隣りの曲げ予定箇所まで、R側曲げユニット11が移動する。
【0026】
パイプPの複数の箇所での曲げ加工が順次済むと、R側曲げユニット11がパイプPの伸長方向左方に順次進行するので、曲げ加工済みの部分は、曲げローラ43よりも右方に相対的に進行することになり、載置テーブル17に載せられる。曲げ角度によっては、曲げ加工済みの部分が載置テーブル17からはみ出す場合もあるが、固定基台3側の載置テーブル5、7が載置テーブル17と連続しており、更に、曲げ加工の途中で、別途、載置テーブルを横付けすることで、載置面を拡大できるので、これから曲げ加工する曲げ予定箇所が垂れ下がるようなことはない。
【0027】
固定基台3の左側には、図2、3に示すように、L側曲げユニット53が取付けられている。このL側曲げユニット53は、図15に示すように、R側曲げユニット11と左右方向にほぼ対称な構成になっており、同様に動作して、パイプPの左端側の曲げ予定箇所から右方の曲げ予定箇所まで順次曲げ加工していくようになっており、所定の曲げ予定箇所での曲げ加工が終了すると、その右隣りの曲げ予定箇所まで、L側曲げユニット53が移動する。
【0028】
但し、曲げローラ43’の外周面にはガイド溝は形成されておらず、滑らかになっている。L側曲げユニット53が受け持つ最も左端寄りの曲げ予定箇所は、R側曲げユニット11が受け持つ最も右端寄りの曲げ予定箇所より端側から離れており、その分だけ端に重量が乗り、癖が出にくくなっている。その一方で、パイプPの接続部となる側の端は拡径する場合が多く、ガイド溝43aがあると、端の拡径分だけ大きく溝を形成しなければならなくなるが、拡径されていない箇所を曲げ加工するときには、その拡径分は余分な隙間となり、パイプPを押し付け難くさせる。このようなパイプPの曲げ形状を考慮して設計されている。
また、載置テーブル17’も、パイプPの曲げ形状を考慮して前後方向中心部の左端が延長されている。
【0029】
R側曲げユニット11と、L側曲げユニット53がそれぞれ、1本のパイプPに対して左右両側から順次曲げ加工を進めていくことになっており、パイプPの左右方向の中間部が、移動不能にクランプされている。図2、3に示すように、このクランプには、曲げ加工装置1に設けたクランプユニット55が利用されている。
このクランプユニット55は、図2、3に示すように、パイプ曲げ装置1の左右方向の中間に設けられている。
【0030】
このクランプユニット55のガイド溝57は、R側曲げユニット11と、L側曲げユニット53のそれぞれの姿勢ガイド部19のガイド溝21とほぼ同じ断面形状になっており、パイプPがクランプユニット55のガイド溝57と、R側曲げユニット11の姿勢ガイド部19のガイド溝21と、L側曲げユニット53の姿勢ガイド部19のガイド溝21の三箇所で水平姿勢に支持され、左右方向に伸長する。
パイプPは、クランプユニット55のガイド溝57に差し込まれてクランプされる。なお、複数のパイプPを同時にクランプすることも可能となっている。
【0031】
また、パイプPが長尺な場合には、上記した三箇所の支持では途中が弛むので、図2、3に示すように、R側用パイプ懸架ユニット59が、曲げ加工装置1のスタンド部に複数吊下げ支持されている。
このR側用パイプ懸架ユニット59には、エアシリンダ61の本体側が固定されており、エアシリンダ61の作動により、そのロッドが上下方向に伸縮する。このロッド側の下端にパイプ懸架部63が取付けられている。このパイプ懸架部63には、チャック爪65が設けられており、チャック前の開口時には、R側曲げユニット11の姿勢ガイド部19のガイド溝21と開口側が上下で異なっているが、前後方向の開口断面はほぼ同じになっている。エアシリンダ61の作動に連動してパイプ懸架部63が下降するときには、チャック爪65の下端にある開口は開閉アーム67の矢印方向への回動により閉じられる。また、チャック爪65も閉じられる。従って、このチャック爪65に挿通されたパイプPは吊下げ支持されて水平姿勢が維持される。
なお、R側曲げユニット11が左方に進行すると、姿勢ガイド部19が近づくが、一定の距離まで近づくと、パイプ懸架部63が退避位置まで上昇すると共に、パイプPを解放するので、姿勢ガイド部19の移動の邪魔にはならない。
【0032】
図2、3に示すように、L側用パイプ懸架ユニット69も備えられており、L側用パイプ懸架ユニット69は、R側用パイプ懸架ユニット59と、左右方向にほぼ対称な構成になっており、同様に動作してパイプPがクランプされる。
【0033】
図1に示す形状に成形するために、パイプPを複数の曲げ予定箇所で順次曲げ加工する。この順次工程におけるR側曲げユニット11側の曲げ駒23、……と曲げローラ43によるパイプPの曲げ加工を説明する。なお、視認の便宜のために、曲げローラ43が下降位置にあるときには、外周輪郭が点線で描かれている。
図19、20にしたがって最初の曲げ加工を説明する。
【0034】
パイプPを水平に左右方向に伸長する状態にセットした後に、(R側工程01-01)に示すように、R側曲げユニット11が移動して、R側曲げユニット11の姿勢ガイド部19の直ぐ右側に、パイプPの曲げ予定箇所が来る。
その後、曲げ駒23がセット位置まで移動する。曲げ駒23は前後方向の移動でパイプPと交差する場合には、下降状態で前後方向に移動した後に上昇してセット位置に到達する。曲げ駒23はガイド溝23aがあるので、その中にパイプPの一部が入る。
【0035】
その後、(R側工程01-02)に示すように、曲げローラ43側も同様にして、下降状態で前後左右方向に移動した後に上昇してセット位置に到達する。曲げローラ43にもガイド溝43aがあるので、上記曲げ駒23のガイド溝23aに入った側とは反対側の一部が綺麗に入り、パイプPの端側が曲げ駒23から跳ねて飛び出したりすることはない。
その後、(R側工程01-03)に示すように、曲げローラ43が、パイプPをなぞり、整えながら、曲げ加工位置まで移動する。
その後、(R側工程01-04)に示すように、曲げローラ43は疑似円弧軌道上を動きながらパイプPを曲げ駒23の円弧状外周面を転写した形状に曲げる。更に、曲げ駒23でU形に曲げると、パイプPがスプリングバックすると曲げ角度が設計条件よりも開くので、曲げ駒23の円弧状外周面から離れた後も、スプリングバックを見込んだ量だけ深く押し込んでおく。
その後、(R側工程01-05)に示すように、曲げローラ43が退避位置まで移動した後に下降する。
【0036】
その後、(R側工程01-06)に示すように、R側曲げユニット11が移動して、R側曲げユニット11の姿勢ガイド部19の直ぐ右側に、パイプPの次の曲げ予定箇所が来る。また、曲げ駒25が上記と同様な動作でセット位置まで移動する。曲げローラ43も上記と同様な動作で移動を開始する。
その後、(R側工程01-07)に示すように、曲げローラ43がセット位置に到達する。
その後、(R側工程01-08)に示すように、曲げローラ43が、パイプPをなぞり、整えながら、曲げ加工位置まで移動する。
その後、(R側工程01-09)に示すように、曲げローラ43は疑似円弧軌道上を動きながらパイプPを曲げ駒25の円弧状外周面を転写した形状に曲げる。更に、パイプPがスプリングバックすると曲げ角度が設計条件よりも開くので、曲げローラ43を深く押し込む。
その後、(R側工程01-10)に示すように、曲げローラ43が退避位置まで移動した後に下降する。
【0037】
その後、複数の工程を経て、R側曲げユニット11の左方への移動に伴い、R側曲げユニット11の右側にパイプPが長く伸長していくが、姿勢ガイド部19のガイド溝21の下端と載置テーブル17の天面の高さはほぼ同じになっているので、右方のパイプPが垂れることはない。
【0038】
図21、22にしたがって、後の工程を説明する。
(R側工程04-01)に示すように、R側曲げユニット11が移動して、R側曲げユニット11の姿勢ガイド部19の直ぐ右側に、パイプPの次の曲げ予定箇所が来る。また、曲げ駒27が上記と同様な動作でセット位置まで移動する。曲げローラ43も上記と同様な動作で移動を開始する。
その後、(R側工程04-02)に示すように、曲げローラ43がセット位置に到達する。
その後、(R側工程04-03)に示すように、曲げローラ43が、パイプPをなぞり、整えながら、曲げ加工位置まで移動する。
その後、(R側工程04-04)に示すように、曲げローラ43は疑似円弧軌道上を動きながらパイプPを曲げ駒27の円弧状外周面を転写した形状に曲げる。更に、パイプPがスプリングバックすると曲げ角度が設計条件よりも開くので、曲げローラ43を深く押し込む。
その後、(R側工程04-05)に示すように、曲げローラ43が退避位置まで移動した後に下降する。
この工程で、パイプPは、大きなL字形になるが、この曲げ加工の前に、固定基台3に別体の載置テーブルを横付けしておくことで、全てテーブルの載置面に載った状態となっている。
【0039】
R側最終工程で、曲げローラ43が退避位置まで移動して曲げ駒29を利用して加工すると、図23に示す形状に、パイプPが曲げ成形される。
一方、L側曲げユニット53も、並行して曲げ加工を行っており、最終的には、図23(L側)に示す形状に、パイプPが曲げ成形される。
従って、図1に示す完成形状に、パイプPが曲げ成形される。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、移動基台13、曲げ駒23、……、曲げローラ43の移動手段が具体的に記載されているが、所定の移動が実現できるものであれば、その移動手段は限定されない。
【符号の説明】
【0041】
1…パイプ曲げ装置 3…固定基台 5、7…載置テーブル
9…開放部 11…R側曲げユニット 13…移動基台
15…摺動部 17、17’…載置テーブル 19…姿勢ガイド部
21…ガイド溝 23、25、27、29…曲げ駒
23a、27a…ガイド溝 31、33、35、37…アクチュエータ
39…連結部 41…アクチュエータ 43、43’…曲げローラ
43a…ガイド溝 45…支持アーム 46…可動部
46A…リニアガイド 46B…連結プレート 46C…エアシリンダ設置部
47…サーボモータ 49…サーボモータ 50…ベースプレート
51…エアシリンダ 51A…ロッド 52…アクチュエータ
52A…サーボモータ 52B…ピニオン 53…L側曲げユニット
55…クランプユニット 57…ガイド溝
59…R側用パイプ懸架ユニット 61…エアシリンダ
63…パイプ懸架部 65…チャック爪 67…開閉アーム
69…L側用パイプ懸架ユニット
P…パイプ
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