IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社飯塚製作所の特許一覧 ▶ 有限会社リンクテクノスの特許一覧 ▶ 学校法人慶應義塾の特許一覧

<>
  • 特許-キャピラリ研磨装置 図1
  • 特許-キャピラリ研磨装置 図2
  • 特許-キャピラリ研磨装置 図3
  • 特許-キャピラリ研磨装置 図4
  • 特許-キャピラリ研磨装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】キャピラリ研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 19/16 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B24B19/16 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021010393
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2021-01-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516019482
【氏名又は名称】株式会社飯塚製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】521038795
【氏名又は名称】有限会社リンクテクノス
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 修
(72)【発明者】
【氏名】庄司 豊
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 均
(72)【発明者】
【氏名】平山 明由
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-125913(JP,A)
【文献】特開2008-137113(JP,A)
【文献】特開2000-292649(JP,A)
【文献】特許第3486835(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛管であるキャピラリのテーパ状に研磨される先端部よりも後方の保持部分キャピラリ保持部の回転中心に沿って保持するキャピラリ保持部と、
前記キャピラリ保持部を、前記回転中心の周りで回転させる保持部回転部と、
前記キャピラリの前記保持部分と前記先端部との間に位置する案内部分を、前記保持部回転部に対する一定の位置で回転自在となるように支持するオフセット案内部と、
回転軸線の周りで、該回転軸線を中心とするテーパ状又は円筒状の砥面を回転させる回転砥石と、
前記テーパ状の研磨がなされるように、前記保持部回転部と前記回転砥石との位置関係を調整する位置関係調整手段とを備え、
前記オフセット案内部は、前記案内部分を支持する位置が、前記キャピラリ保持部の前記回転中心からオフセットした位置となるように、前記キャピラリの前記保持部分に対して前記案内部分を変位させつつ該案内部分を案内するものであることを特徴とするキャピラリ研磨装置。
【請求項2】
前記オフセット案内部は、
前記キャピラリの前記案内部分の前記支持及び前記案内を行うための案内通路を形成するための少なくとも3つの案内部材と、
各案内部材を、前記案内通路を形成する第1位置と該第1位置の径方向外側の退避位置である第2位置との間で移動させる移動機構とを備えることを特徴とする請求項に記載のキャピラリ研磨装置。
【請求項3】
前記キャピラリ保持部は、平面を有する第1保持部材と、該平面との間に前記キャピラリの前記保持部分を挟んで固定する波型の表面を有する第2保持部材とを備え、該波型の表面の各溝は、該保持部分と交差する方向に延在することを特徴とする請求項1又は2に記載のキャピラリ研磨装置。
【請求項4】
前記砥面は、テーパ形状を有し、後端側から先端側にかけて粒度が異なる砥粒を先端側の方ほど粗くなるように配置して構成されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のキャピラリ研磨装置。
【請求項5】
前記位置関係調整手段は、3軸方向に移動可能な併進ステージと、2軸周りの回転ステージとを備えることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のキャピラリ研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリの先端部をテーパ状に研磨するキャピラリ研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の先端部をテーパ状に研磨する技術として、折り曲げられたワイヤのカーブしている先端部の近傍をチャックで保持し、チャックを、該先端部の中心軸線の周りに回転させながら、該先端部に対して、回転軸線の周りで回転する回転砥石の砥面を当てて該先端部をテーパ状に研磨する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の技術では、回転砥石の砥面は、回転軸線に対して直角を成す平面となっている。チャックと回転砥石は、異なる速度で回転される。研磨された金属製のワイヤは、イオンビームを生成するためのエミッタとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7696489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、回転砥石の砥面は、回転軸線に対して直角を成す平面となっているので、直径が300μm程度で中空状に30μm程度の穴が開いた細い硝子製キャピラリの先端部を先端角がかなり小さいテーパ状に研磨する場合、キャピラリの先端部が回転砥石の砥面から大きな力を受ける。このため、キャピラリに破損が生じたり、研磨時に偏心が生じて適切な研磨を行うことができなかったりするおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、直径が300μm程度で中空状に30μm程度の穴が開いた細い硝子製のキャピラリの先端部を先端角がかなり小さいテーパ形状に支障なく形成できるキャピラリ研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のキャピラリ研磨装置は、
毛管であるキャピラリのテーパ状に研磨される先端部よりも後方の保持部分キャピラリ保持部の回転中心に沿って保持するキャピラリ保持部と、
前記キャピラリ保持部を、前記回転中心の周りで回転させる保持部回転部と、
前記キャピラリの前記保持部分と前記先端部との間に位置する案内部分を、前記保持部回転部に対する一定の位置で回転自在となるように支持するオフセット案内部と、
回転軸線の周りで、該回転軸線を中心とするテーパ状又は円筒状の砥面を回転させる回転砥石と、
前記テーパ状の研磨がなされるように、前記保持部回転部と前記回転砥石との位置関係を調整する位置関係調整手段とを備え、
前記オフセット案内部は、前記案内部分を支持する位置が、前記キャピラリ保持部の前記回転中心からオフセットした位置となるように、前記キャピラリの前記保持部分に対して前記案内部分を変位させつつ該案内部分を案内するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、回転砥石の砥面が回転軸線を中心とするテーパ状又は円筒状の砥面であるため、キャピラリの先端部の研磨が進行して先端部のテーパ形状が長くなっても、該テーパ形状の先端部と砥面との接触面積は、砥面が平面である場合に比べて少ない。
【0009】
このため、硝子製で脆いキャピラリの先端部が回転砥石の砥面から回転方向に受ける力を、砥面が平面である場合に比べて抑制することができる。したがって、直径が300μm程度で中空状に30μm程度の穴が開いた細いキャピラリの先端部を、破損や偏心を極力排除しつつ、先端角がかなり小さいテーパ形状に支障なく形成することができる。
【0010】
また、テーパ形状の先端部は直径が小さいことから周速が遅く、特に脆い先端部分が受ける力が弱まる効果もある。
また、キャピラリが多少曲がっていても、その案内部分が、オフセット案内部の案内通路内のガイドパイプにより、保持部回転部の回転中心に対してオフセットされた位置を通るように案内されるので、案内部分の先端側の先端部をその中心線の周りで偏心や角度の変動を生じさせることなく回転させることができる。したがって、支障なく先端部をテーパ形状に成形することができる。
【0013】
この場合、前記オフセット案内部は、
前記キャピラリの前記案内部分の案内を行う案内通路を形成するための少なくとも3つの案内部材と、
各案内部材を、前記案内通路を形成する第1位置と、該第1位置の径方向外側の退避位置である第2位置との間で移動させる移動機構とを備えてもよい。
【0014】
これによれば、各案内部材を第2位置に退避させた状態でキャピラリの案内部分を各案内部材の中心側に配置し、各案内部材を第1位置に移動させることにより、キャピラリの案内部分を、容易にオフセット案内部の案内通路により案内させた状態となるように配置することができる。
【0015】
本発明において、前記キャピラリ保持部は、平面を有する第1保持部材と、該平面との間に前記キャピラリの前記保持部分を挟んで固定する波型の表面を有する第2保持部材とを備え、該波型の表面の各溝は、該保持部分と交差する方向に延在していてもよい。これによれば、キャピラリ保持部により、キャピラリの保持部分を容易かつ確実に保持することができる。
【0016】
本発明において、前記砥面は、テーパ形状を有し、後端側から先端側にかけて粒度が異なる砥粒を先端側の方ほど粗くなるように配置して構成されてもよい。これによれば、キャピラリの先端部を精度よくテーパ状に形成すると同時に、研磨速度を向上させることができる。
【0017】
また、砥面のテーパは、直線、曲線、多段であってもよい。
【0018】
本発明において、前記位置関係調整手段は、3軸方向に移動可能な併進ステージと、2軸周りの回転ステージとを備えてもよい。これによれば、回転砥石に対してキャピラリの先端部の位置や姿勢を適切に調整しながら先端部の研磨を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るキャピラリ研磨装置を示す斜視図である。
図2図1のキャピラリ研磨装置の要部を示す斜視図である。
図3図1のキャピラリ研磨装置においてオフセット案内部によりキャピラリの回転軸がオフセットするようにして案内されることを示す図である。
図4図1のキャピラリ研磨装置におけるオフセット案内部の要部を示す斜視図である。
図5】(a)は、図1のキャピラリ研磨装置における砥面に対してキャピラリの先端部が位置決めされたときの様子を示し、(b)は先端部の研磨が完了したときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るキャピラリ研磨装置の斜視図である。図1に示すように、このキャピラリ研磨装置1は、キャピラリ2のテーパ状に研磨される先端部よりも後方の部分を保持するキャピラリ保持部3と、キャピラリ保持部3を、キャピラリ保持部3が保持するキャピラリ2の保持部分を中心として回転させる保持部回転部4とを備える。
【0021】
キャピラリ保持部3は、平面を有する第1保持部材5と、該平面との間にキャピラリ2のキャピラリ保持部3が保持する保持部分を挟んで固定する波型の表面を有する第2保持部材6とを備える。第2保持部材6の波型の表面の各溝は、キャピラリ2の該保持部分と交差する方向に延在する。保持部回転部4は、本実施形態では、中空アクチュエータで構成される。
【0022】
また、キャピラリ研磨装置1は、回転軸線の周りで砥面を回転させる回転砥石機構7と、キャピラリ2の先端部がテーパ状に研磨されるように、保持部回転部4と回転砥石機構7との位置関係を調整する位置関係調整手段とを備える。回転砥石機構7の回転は、ブラシレスモータ8によって行われる。位置関係調整手段は、3軸方向に移動可能な併進ステージと、2軸周りの回転ステージとを備える。
【0023】
併進ステージは、X軸方向に案内されるXステージ9、X軸に垂直なY軸方向に案内されるYステージ10及びY軸に垂直なZ軸方向に案内されるZステージ11によって構成される。回転ステージは、Zステージ11上でYZ平面に平行な平面内で回転される第1回転ステージ12(図2参照)、及び第1回転ステージ12上で第1回転ステージ12の回転軸に平行な平面内で該回転軸に垂直な回転軸線の周りで回転される第2回転ステージ13(図2参照)によって構成される。
【0024】
回転砥石機構7の砥面14は、回転砥石機構7の回転軸線を中心とするテーパ状のものであり、そのテーパ形状の後端側から先端側にかけて粒度が異なる砥粒を、先端側の方ほど粗くなるように配置して構成される。
【0025】
図2は、キャピラリ研磨装置1の要部を示す。図2においては、キャピラリ保持部3により保持されたキャピラリ2の先端部15の近傍部分が示されている。図2に示すように、キャピラリ保持部3の先端側には、キャピラリ2のキャピラリ保持部3による保持部分よりも先端部15側の一部である案内部分を、キャピラリ2の該保持部分に対してオフセットした直線を中心として回転するように案内するオフセット案内部16が設けられる。
【0026】
図3は、オフセット案内部16によってキャピラリ2の案内部分がオフセットして案内される様子を示す。オフセット案内部16は、図3に示すように、キャピラリ保持部3がキャピラリ2を範囲S1において保持する保持部分17に対し、その先端側にやや離れたキャピラリ2の範囲S2の部分である案内部分18をオフセット量Dだけオフセットさせて回転自在に案内する。
【0027】
なお、キャピラリ2における範囲S1の先端側に隣接した部分から範囲S2を含む部分にかけて、樹脂製のガイドパイプ19を外嵌し、その部分におけるキャピラリ2の破損を防止しつつスムーズな案内を確保するのが好ましい。
【0028】
図4は、オフセット案内部16をそのカバー20(図2参照)を外して見た様子を示す。図4に示すように、オフセット案内部16は、キャピラリ2の案内部分18(範囲S2)の案内を行う案内通路を形成するための少なくとも3つの案内部材21と、各案内部材21を、前記案内通路を形成する第1位置と該第1位置の径方向外側の退避位置である第2位置との間で移動させる移動機構とを備える。
【0029】
この移動機構は、本体22と、本体22に設けられ、案内通路を形成する案内部材21を先端部に有する3本の開閉レバー23aを備える。各開閉レバー23aは、本体22に設けられて開閉レバー23aの先端部と後端部との間に位置する支持軸24により回動自在に支持される。
【0030】
各開閉レバー23aの後端部には、各開閉レバー23aを、支持軸24の周りで回動させるための回動ピン25が設けられる。この回動により、各案内部材21は、案内通路を形成する第1位置と、該第1位置の径方向外側の退避位置である第2位置との間で移動する。また、開閉レバー23aと同様の開閉レバー23bが、開閉レバー23aが形成する案内通路の後方に隣接する案内通路を構成するように設けられる。
【0031】
各開閉レバー23a、23bの回動ピン25は、カバー20の6個のピン穴26(図2参照)に挿入され、カバー20が所定角だけ回転することにより各開閉レバー23a、23bの案内部材21が前記第1、第2位置間で移動するようになっている。この所定角度は、図2に示すように、本体22に固定された4つの案内ピン27をそれぞれ通したカバー20の4つの長穴28により規定される。
【0032】
オフセット案内部16は、このカバー20の所定角度の回転を行うための2つのつまみ部材29を備える。2つのつまみ部材29は、相互に周方向に離れる方向に付勢され、かつそれぞれは、径方向に突出するように本体22及びカバー20に固定される。すなわち、オフセット案内部16は、2つのつまみ部材29を、前記付勢力に抗して相互に近寄せるようにつまむことによって、上記所定角度だけカバー20を回転させ、案内部材21を第2位置から第1位置に移動させて案内通路を形成するように構成される。
【0033】
図5(a)は、回転砥石機構7の砥面14に対してキャピラリ2の先端部15が位置決めされたときの様子を示す。図5(b)は、先端部15の研磨が完了したときの様子を示す。図5(a)に示すように、キャピラリ2の外径φ1は300μm程度であり、キャピラリ2の孔の直径φ2は30μm程度である。図5(b)のように、キャピラリ2の先端部15の研磨が完了した時点では、先端部15の先端では、キャピラリ2の孔と外径との距離dが10~15μm程度となる。
【0034】
このような先端部15の研磨を行うに際しては、まず、キャピラリ保持部3の第1保持部材5と第2保持部材6との間にキャピラリ2を先端部15から所定距離だけ離れた部分において挟み、次に、挟んだ部分の先端側にガイドパイプ19を外嵌させて取り付ける。
【0035】
キャピラリ2のポリイミドのコーティング30を先端部15の部分については、研磨前に焼いて取り除くこともできる。
【0036】
次に、第1、第2保持部材5、6を保持部回転部4に装着すると同時に、キャピラリ2の範囲S2の部分(案内部分18)を、オフセット案内部16で案内し得るようにオフセット案内部16の中心部に位置付ける。
【0037】
この位置付けは、オフセット案内部16のつまみ部材29をつまんで各案内部材21を第2位置に退避させた状態で、各案内部材21の内側にキャピラリ2の案内部分18(図3の範囲S2の部分)を配置し、つまみ部材29を離すことにより行われる。つまみ部材29を離したきに、各案内部材21が第1位置に位置して案内通路が形成され、案内通路の内側にガイドパイプ19を介してキャピラリ2の案内部分18が位置づけられる。
【0038】
次に、保持部回転部4によってキャピラリ保持部3を回転させながらキャピラリ2の先端部15の位置を、併進ステージ(X、Y、Zステージ9、10、11)及び回転ステージ(第1、第2回転ステージ12、13)により調整し、回転砥石機構7の砥面14に対して図5(a)のように位置決めする。
【0039】
次に、回転砥石機構7をキャピラリ2の回転速度に比べてかなり速い速度で高速回転させながら、キャピラリ2の先端部15を、上記併進ステージ及び回転ステージの必要な機能を用いて、回転砥石機構7側に、ほぼ先端部15の長さ方向沿って移動させる動作を開始する。これにより、回転砥石機構7の砥面14に対して先端部15が接触し、先端部15の研磨が開始される。先端部15の移動速度は、例えば、6μm/sである。
【0040】
この間、キャピラリ2の先端部15は、オフセット案内部16の案内通路によるガイドパイプ19を介した案内によって、偏心や角度の変動をさほど生じることなく回転の中心線が一定に維持されつつ、砥面14に押し付けられながら、研磨が行われる。なお、この間に、先端部15が適切なテーパ形状に成形されるように、オフセット案内部16の姿勢や位置を、必要に応じて、上記併進ステージ及び回転ステージにより調整することができる。このような調整は、先端部15をカメラにより観察しながら行うことができる。
【0041】
このようにして、研磨開始から10分程度経過すると、図5(b)のように先端部15がテーパ状に成形され、先端部15の研磨が完了する。この後、研磨が完了したキャピラリ2を、上述と逆の手順に従ってキャピラリ研磨装置1から取り出し、取得することができる。
【0042】
なお、上記のキャピラリ2の先端部15の研磨に際して先端部15が極力偏心しないように、砥面14に対する先端部15の押し付け力、キャピラリ2の回転速度、キャピラリ2におけるオフセット案内部16から先端部15までの長さやその反対側の長さなどが適切に調整される。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、回転砥石機構7の砥面14がテーパ状であるため、キャピラリ2の先端部15の研磨が進行して先端部15のテーパ形状が長くなっても、テーパ形状の先端部15と砥面14との接触面積は、砥面14が平面である場合に比べて少ない。
【0044】
また、テーパ形状の先端部は周速が遅く、研磨時に受ける力が弱まる効果もある。
【0045】
このため、キャピラリ2の先端部15が回転砥石機構7の砥面14から回転方向に受ける力を、砥面が平面である場合に比べて抑制することができる。したがって、直径が300μm程度の細いキャピラリ2の先端部15を、破損や偏心を極力排除しつつ、先端角がかなり小さいテーパ形状に支障なく形成することができる。
【0046】
また、オフセット内部16を備えるので、キャピラリ2が多少曲がっていても、オフセット案内部16により案内部分18が直線を中心線として回転されるように案内されるので、案内部分18の先端側の先端部15をその中心線の周りで偏心や角度の変動を生じさせることなく回転させることができる。したがって、支障なく先端部15をテーパ形状に成形することができる。
【0047】
また、オフセット案内部16は、キャピラリ2の案内部分18の案内を行う案内通路を形成する各案内部材21を、案内通路を形成する第1位置と退避位置である第2位置との間で移動させる移動機構を備えるので、各案内部材21を第2位置に退避させた状態でキャピラリ2の案内部分18を各案内部材21の中心側に容易に配置してから、案内通路により案内させた状態とすることができる。
【0048】
また、キャピラリ保持部3は、第1保持部材5と、波型の表面を有する第2保持部材6とを備えるので、キャピラリ保持部3によるキャピラリ2の保持部分17の保持を容易かつ確実に行うことができる。
【0049】
また、砥面14は、テーパ形状を有し、後端側から先端側にかけて粒度が異なる砥粒を先端側の方ほど粗くなるように配置して構成されるので、キャピラリ2の先端部15を精度よくテーパ状に形成すると同時に、研磨速度を向上させることができる。
【0050】
また、キャピラリ2の先端部15についての位置関係調整手段として、3軸方向に移動可能な併進ステージと、2軸周りの回転ステージとを備えるので、回転砥石機構7に対してキャピラリ2の先端部15の位置や姿勢を適切に調整しながら先端部15の研磨を行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転砥石機構7の砥面14は、円筒状の面であってもよい。また、ガイドパイプ19は、比較的固い樹脂で形成された前端側部分と比較的柔らかい樹脂で形成された後端側部分とを接合して構成してもよい。この場合、前端側部分がキャピラリ2の案内部分18を被覆するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…キャピラリ研磨装置1、2…キャピラリ、3…キャピラリ保持部、4…保持部回転部、5…第1保持部材、6第2保持部材、7…回転砥石機構、8…ブラシレスモータ、9…Xステージ、10…Yステージ、11…Zステージ、12…第1回転ステージ、13…第2回転ステージ、14…砥面、15…先端部、16…オフセット案内部、17…保持部分、18…案内部分、19…ガイドパイプ、20…カバー、21…案内部材、22…本体、23a、23b…開閉レバー、24…支持軸、25…回動ピン、26…ピン穴、27…案内ピン、28…長穴、29…つまみ部材、30…コーティング。
【要約】
【課題】直径が300μm程度の細いキャピラリの先端部を先端角がかなり小さいテーパ形状に支障なく形成できるキャピラリ研磨装置を提供する。
【解決手段】キャピラリ研磨装置1は、キャピラリ2のテーパ状に研磨される先端部15よりも後方の部分を保持するキャピラリ保持部3と、キャピラリ保持部3を、その保持部分17を中心として回転させる保持部回転部4と、回転軸線の周りで砥面14を回転させる回転砥石機構7と、先端部15がテーパ状に研磨されるように、保持部回転部4と回転砥石機構7との位置関係を調整するX、Y、Zステージ9~11と、第1、第2回転ステー12、ジ13とを備える。砥面14は、テーパ状のものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5