(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】生理活性物質担持用磁性粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20220111BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220111BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G01N33/531 B
G01N33/543 541A
C08F2/44 A
(21)【出願番号】P 2017095828
(22)【出願日】2017-05-12
【審査請求日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2017095688
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591122956
【氏名又は名称】株式会社LSIメディエンス
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】門脇 淳
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜王
(72)【発明者】
【氏名】平口 定叡
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-163421(JP,A)
【文献】特表2009-531296(JP,A)
【文献】特表2004-533530(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035806(WO,A1)
【文献】佐々木祐亮 ほか4名,原子移動ラジカル重合により合成した両親媒性ブロックポリマーを用いた転相乳化法によるO/W型エマルション,高分子学会予稿集(CD-ROM),日本,2013年08月28日,Vol.62 No.2,Page.ROMBUNNO.2PB056
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、および磁性体を準備し、混合する工程、
得られた混合物を超音波照射により剪断してモノマー微小油滴を形成する工程、並びに
前記ラジカル重合開始剤の重合開始温度まで加熱して前記モノマー微小油滴を重合させる工程
を含む、ミニエマルション重合により製造される生理活性物質担持用磁性粒子であって、該乳化剤は、下記一般式(1):
【化1】
〔式中、nは、2以上の整数であり、mは、2以上の整数であり、
R1及びR4は、それぞれ独立して、少なくともいずれか一方が生理活性物質担持用官能基であり、
R2
-1及びR2
-2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、
R3は、親水性化合物に由来する官能基であり、
R5は、疎水性を付与する官能基であり、
R6は、ハロゲン原子、アルキル基、不飽和結合を含む炭化水素基、又は、乳化剤合成時の開始剤由来の官能基である〕
で表される両親媒性ブロックコポリマーである、前記生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項2】
前記R1又はR4が、カルボキシル基、マレイミド基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、及びエポキシ基からなる群から選択される基である、請求項1に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項3】
前記R3における前記親水性化合物が、オリゴエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、ポリペプチド、単糖類、及び多糖類からなる群から選択される化合物である、請求項1又は2に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項4】
前記R5が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換または非置換の芳香族化合物基、カルボニル基、アミド基、アミノ基、アルデヒド基、及びケト基、並びに、アミン、アルデヒド、ケトン、及びエーテルの各化合物に由来する官能基からなる群から選択される1又はそれ以上の官能基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項5】
前記乳化剤の分子量が、400~100万である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項6】
前記親水性セグメントの分子量が、200~50万である、請求項1~5のいずれか一項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項7】
前記疎水性セグメントの分子量が、200~50万である、請求項1~6のいずれか一項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項8】
前記R1又はR4のカルボキシル基を有する官能基が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸からなる群から選択されるポリカルボン酸に由来する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項9】
前記R1又はR4のカルボキシル基が1個以上であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項10】
前記R6が、疎水性側に二重結合が導入された官能基である、請求項1~9のいずれか一項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
【請求項11】
モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、および磁性体を準備し、混合する工程、
得られた混合物を超音波照射により剪断してモノマー微小油滴を形成する工程、並びに
前記ラジカル重合開始剤の重合開始温度まで加熱して前記モノマー微小油滴を重合させる工程
を含む、ミニエマルション重合により生理活性物質担持用磁性粒子を製造する方法であって、
前記ミニエマルション重合を行う際に、該乳化剤が下記一般式(1):
【化2】
〔式中、nは、2以上の整数であり、mは、2以上の整数であり、
R1及びR4は、それぞれ独立して、少なくともいずれか一方が生理活性物質担持用官能基であり、
R2
-1及びR2
-2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、
R3は、親水性化合物に由来する官能基であり、
R5は、疎水性を付与する官能基であり、
R6は、ハロゲン原子、アルキル基、不飽和結合を含む炭化水素基、又は、乳化剤合成時の開始剤由来の官能基である〕
で表される化合物であることを特徴とする、生理活性物質担持用磁性粒子の製造方法。
【請求項12】
制御/リビングラジカル重合又はイオン重合により前記乳化剤を合成する工程を更に含む、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性物質担持用磁性粒子及びその製造方法に関する。
なお、本明細書における「分析」には、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床診断検査の現場では、多数の検体について疾病診断の指標となる多岐に渡る物質を短時間且つ高精度に測定し、その結果を迅速・正確に治療現場にフィードバックすることが求められている。例えば、粒子表面に生理活性物質(抗体、酵素、受容体等のタンパク質、抗原、DNAやRNA等の核酸物質、或いは糖鎖等)を結合させた分析系や、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定によって、微量な分析対象物質の正確な定量が多く実施されている。特に検出感度や正確性を向上させるための方法として、分析対象物質に対する抗原又は抗体を、磁性体を含有させたポリスチレン等の高分子からなる微粒子(いわゆる磁性粒子)の表面に担持させた粒子を利用した方法が公知である。
【0003】
具体的には、磁性粒子に結合した第一抗体により分析対象物質をトラップし、磁石で集積させて未反応物質等を洗浄後(いわゆるB/F分離)、酵素や蛍光剤等シグナルを発生する物質を標識した第二抗体を添加して分析するサンドイッチ法等が利用されている。また、B/F分離は、細胞、タンパク質、核酸または化学物質等の標的物質の定量、分離、精製または分析等の生化学用途にも利用可能である。この分析方法や分離方法は、遠心分離法、カラム分離法または電気泳動法などの手法に比べて、少量の試料に対しても実施でき、標的物質を変性させずに短時間で実施できる特徴を有するため、磁性粒子は極めて有用な機能材料とされる。
【0004】
磁性粒子を用いて生体試料の分析を行う場合は、磁性粒子の表面に抗原又は抗体のような生理活性物質を固定することが必要である。その方法として、物理的又は化学的に担持させる方法が用いられている。例えば、物理的吸着により磁性粒子に抗原又は抗体のような生理活性物質を直接固定化するか、あるいは、磁性粒子の表面の官能基、例えば、カルボキシル基、マレイミド基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、又はエポキシ基などを介した共有結合により、磁性粒子に抗原又は抗体のような生理活性物質を結合させる方法が使用されている。
物理的な結合方法に比べて、化学的結合方法の優位な点は、抗体が共有結合を介して磁性粒子表面に結合されることから、生理活性物質を安定に表面に担持できることである。
特に磁性粒子を用いた分析では、B/F分離操作の際に、物理結合で固定化された一次抗体が磁性粒子から剥がれる恐れがあるため、化学結合で一次抗体を固定化することが望ましい。
【0005】
臨床診断検査に用いられる体外診断薬の性能は主原料の性能に大きく依存する。主原料は大きく2種類ある。1つは、目的物を認識する抗体に代表される生理活性物質であり、もう1つは、該生理活性物質を担持する粒子である。診断薬用途の粒子の物性は主に、粒径、分散性、磁性体含有率、非特異反応の観点から評価される。これら各項目はそれぞれがトレードオフの関係にあると言え、各々の性能のバランスに優れた粒子を安定的に製造し供給することは容易ではない。
【0006】
粒子表面に固定される生理活性物質の量は、粒子の比表面積すなわち粒径に依存しているといえる。つまり、粒子の比表面積が小さいと、1粒子に結合する生理活性物質の数が減少し、1粒子に結合できる標的物質の量も減少するために検出感度の低下を招く。従って、粒子の比表面積はある程度大きいことが好ましい。
しかし、粒子の比表面積が必要以上に大きくなりすぎると、標的物質以外の物質が粒子に結合する非特異結合が多く生じるために好ましくない。磁性粒子が目的としていない物質(非対象物質)を捕捉してしまう非特異吸着は、非対象物質と磁性粒子との物理的・化学的な相互作用によって生じる。
非特異吸着が増えると、測定結果が不正確となることや、精製や分離が不十分となる可能性がある。そこで従来は非特異吸着をブロッキングと言われる工程によって低減・回避してきた。ブロッキングは、生理活性物質を粒子上に固定化した後に、アルブミンやカゼイン等の生体由来材料で粒子表面を被覆する方法である。しかし、ブロッキング剤の被覆効果が十分得られない場合や、ブロッキング剤の変質等によってその作用が経時的に変化し、非特異吸着が発生する場合がある。このため、ブロッキング剤による非特異吸着の低減効果は十分なものであるとは言えなかった。
【0007】
一方で、粒子作製時における課題として、粒子の分散性が、更に、磁性粒子の場合には、粒子に含まれる磁性体含有率の問題がある。
生体を構成する要素は水が占める割合が非常に高く、生体内における分子反応の多くは水が関係する環境下で行われる。従って、上述したような、生体試料中における標的物質の定量、分離、精製または分析等においては、粒子表面が親水性である微粒子が有用である場合が多い。
しかし、微粒子は金属、無機物およびポリスチレン・ポリメタクリレートなどの粒子を構成するポリマーなど一般的に疎水性であり、粒子どうしが凝集・沈降してしまい安定性が高いとは言えない。分散性を向上させ、保存安定性を改善するために界面活性剤などの安定剤を用いる場合もあるが、この安定剤自体が非特異吸着の原因になったり、製造段階で使用される磁性粒子原料が残留して非特異吸着の原因になってしまうという二次的な問題点が生じる。
特に磁性粒子を作製する場合には磁性体を使用するが、磁性体自身が凝集しやすい性質をもつ。
また、磁性粒子には、磁気印加時に速やかに集磁できるといった磁気応答性が求められるが、こういった磁気応答性を得るには、当然のことながら磁性粒子中の磁性体含有量を高くする必要がある。しかし、その含有量を上げると、磁性粒子の安定性が低下するという問題を生じる。また、磁性粒子を合成する難易度も高くなる。
【0008】
磁性粒子表面への官能基の導入方法は、種々報告されているが、その多くは、官能基を有するモノマーを粒子合成時に添加する方法である。例えば、スチレンとカルボキシル基を有するアクリル酸と磁性体を共重合することによって、カルボキシル基を粒子表面に導入した磁性粒子を得ることができる。例えば、二重結合を有し更にポリエチレグリコールなどの親水性高分子を介して官能基を有する化合物をマクロモノマーとして、スチレンなどのモノマーと共重合しラテックス表面に結合させる技術がある。このような方法では、官能基の量と官能基どうしの距離をいかに制御するかが問題となっており、この事が原因で、製造ロット差が生じ、安定して精度良く生理活性物質を担持した粒子を作製できない場合があることが問題となっている。このことは、磁性粒子の診断薬用途としての機能性を見積もることが困難となり、臨床診断薬の製造へ安定した供給が出来ないこととなる。
【0009】
上記のような、導入された磁性粒子表面の官能基量の定量方法は、例えば、カルボキシル基の定量に使用される酸塩基滴定を行い、電気伝導度の変化から定量する方法がある。しかしこの方法では、正確な定量は困難である。それは、診断薬用途の磁性粒子は粒径が小さく官能基量が微量であること、磁性体を構成する金属酸化物がイオン性を有する上、粒子が疎水性で分散性が良くないと、表面官能基量の定量にも影響を与えるためである。
また、磁性粒子表面と生体試料を結合させるための生理活性物質担持用の官能基の間の距離を制御することは、臨床診断薬などのバイオマテリアルへの応用を考えた場合に重要である。それは、粒子表面からの距離は、抗体をはじめとする生理活性物質の活性に大きく影響を及ぼすことが予想されるためである。粒子合成の段階でカルボキシル基を有するモノマーを使用した場合には、生理活性部位としての官能基と粒子間の距離が不明なため、生理活性物質の特性を精密に制御することは難しいと考えられる。
【0010】
粒子表面の官能基量を定量することが困難であることに加えて、合成した粒子表面にどのような状態でマクロモノマー由来のポリエチレングリコールが存在しているのかは、分析することが難しい。また、乳化重合やミニエマルション重合時では、通常のラジカル重合と比べて重合系が複雑であるため、スチレンとマクロモノマーの共重合性は分析することが困難である。
【0011】
そのため、生理活性物質を担持でき磁気応答性に優れるという性能的なバランスに優れ、製造後に複雑な評価系を必要とせずに診断薬用途として安定的に供給可能な磁性粒子の製造には、いくつもの課題が存在し、且つ、各条件が複雑に関係し合うために困難性が増しており、十分に達成されているとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2004-99844号公報
【文献】特開2007-127426号公報
【文献】特表2007-527454号公報
【文献】特開2008-191128号公報
【文献】特開2016-207879号公報
【文献】特開2010-123984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、磁性粒子の合成に関する前記の問題を克服することに成功した。すなわち、本発明の課題は、分析精度や感度が高く、且つ、安定して製造できる分析試薬を提供可能な、粒径分布が狭く均一で分散性に優れ、且つ、磁性体含有率の小さくない磁性粒子であって、生理活性物質を担持させる官能基量を制御可能であり、且つ、非特異反応を抑制する親水性化合物を磁性粒子表面に導入できる、新規の生理活性物質担持用磁性粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来は、一つの問題点しか解決できない、しかも十分には解決できず、また、非常に煩雑で難しい方法しか知られていなかったが、驚くべきことに、前記課題は、モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、磁性体を用いてミニエマルション重合を行う際に、乳化剤として下記一般式(1)で示されるような、一分子内に生理活性物質担持用官能基を有し、且つ、親水性セグメント及び疎水性セグメントからなる両親媒性ブロックコポリマーであって、前記親水性セグメントが非特異反応を抑制する、高分子乳化剤を使用することによって、全ての問題点を同時に、より簡便な方法で解決することができる。
【0015】
本発明は、以下に関する:
[1]モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、磁性体を重合して得られる生理活性物質担持用磁性粒子であって、該乳化剤は、下記一般式(1):
【化1】
〔式中、nは、2以上の整数であり、mは、2以上の整数であり、
R1及びR4は、それぞれ独立して、少なくともいずれか一方が生理活性物質担持用官能基であり、
R2
-1及びR2
-2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、
R3は、親水性化合物に由来する官能基であり、
R5は、疎水性を付与する官能基であり、
R6は、ハロゲン原子、アルキル基、不飽和結合を含む炭化水素基、又は、乳化剤合成時の開始剤由来の官能基である〕
で表される両親媒性ブロックコポリマーである、前記生理活性物質担持用磁性粒子。
[2]前記R1又はR4が、カルボキシル基、マレイミド基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、及びエポキシ基からなる群から選択される基である、[1]の生理活性物質担持用磁性粒子。
[3]前記R3における前記親水性化合物が、オリゴエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、ポリペプチド、単糖類、及び多糖類からなる群から選択される化合物である、[1]又は[2]の生理活性物質担持用磁性粒子。
[4]前記R5が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換または非置換の芳香族化合物基、カルボニル基、アミド基、アミノ基、アルデヒド基、及びケト基、並びに、アミン、アルデヒド、ケトン、及びエーテルの各化合物に由来する官能基からなる群から選択される1又はそれ以上の官能基である、[1]~[3]のいずれかの生理活性物質担持用磁性粒子。
[5]前記乳化剤の分子量が、400~100万である、[1]~[4]のいずれかの生理活性物質担持用磁性粒子。
[6]前記親水性セグメントの分子量が、200~50万である、[1]~[5]のいずれかの生理活性物質担持用磁性粒子。
[7]前記疎水性セグメントの分子量が、200~50万である、[1]~[6]のいずれかの生理活性物質担持用磁性粒子。
[8]前記R1又はR4のカルボキシル基を有する官能基が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸からなる群から選択されるポリカルボン酸に由来する、請求項1~8のいずれか1項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
[9]前記R1又はR4のカルボキシル基が1個以上であることを特徴とする、[1]~[8]のいずれか1項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
[10]前記R6が、疎水性側に二重結合が導入された官能基である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の生理活性物質担持用磁性粒子。
[11]モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤を用いてミニエマルション重合を行う際に、該乳化剤が下記一般式(1):
【化2】
〔式中、nは、2以上の整数であり、mは、2以上の整数であり、
R1及びR4は、それぞれ独立して、少なくともいずれか一方が生理活性物質担持用官能基であり、
R2
-1及びR2
-2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、
R3は、親水性化合物に由来する官能基であり、
R5は、疎水性を付与する官能基であり、
R6は、ハロゲン原子、アルキル基、不飽和結合を含む炭化水素基、又は、乳化剤合成時の開始剤由来の官能基である〕
で表される化合物であることを特徴とする、生理活性物質担持用磁性粒子の製造方法。
[12]前記乳化剤の合成が、制御/リビングラジカル重合又はイオン重合である、[11]の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分析精度や感度が高く、且つ、安定して製造できる分析試薬を提供可能な、粒径分布が狭く均一で分散性に優れ、且つ、磁性体含有率の小さくない磁性粒子であって、生理活性物質を担持させる官能基量を制御可能であり、且つ、非特異反応を抑制する親水性化合物を磁性粒子表面に導入できる、新規の生理活性物質担持用磁性粒子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】抗体を修飾した生理活性物質担持用磁性粒子の体外診断薬の評価
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「アルキル基」とは、飽和された直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素を意味する。前記アルキル基は、例えば、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を含有する。
【0019】
本明細書において「不飽和結合を含む炭化水素」とは、少なくとも1つの不飽和結合、例えば、二重結合又は三重結合を有する直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素を意味し、例えば、二重結合を有するアルケニル基、三重結合を有するアルキニル基を挙げることができる。前記の不飽和結合を含む炭化水素は、例えば、2~20個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子、2~4個の炭素原子、または2~3個の炭素原子を含有する。
【0020】
本明細書において「ポリアミノ酸」とは、基本骨格が、アミノ酸が脱水縮合したものであって、全体として親水性を示すポリアミノ酸であれば、特に限定されるものではなく、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン等の20種類の必須アミノ酸、L-オルニチン、一連のα-アミノ酸、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω-エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸-L-フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L-システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α-アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であっても良い。これらのアミノ酸は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリアルギニン、ポリリジン等のように、1種類のアミノ酸のみからなるホモポリアミノ酸であることもできるし、2種類以上のアミノ酸からなるポリアミノ酸であることもできる。また、2種類以上のアミノ酸を含む共重合体成分の例としては、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸、メルカプトホスホン酸等が挙げられる。
【0021】
本明細書において、親水性化合物として用いる「単糖類」又は「多糖類」とは、全体として親水性を示す単糖類又は多糖類であれば、特に限定されるものではなく、前記単糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、キシロース、フラクトース等を挙げることができ、前記多糖類としては、例えば、トレハロース、スクロース、ラクトース、マルトース、ラフィノース、グルコン酸、デキストラン、デキストリン、アガロース、カルボキシメチル(CM)-セルロース、ヘパリン、可溶性澱粉等を挙げることができる。多糖類は直鎖であっても分技鎖を有するものであっても構わない。
【0022】
本明細書において「置換または非置換の芳香族化合物基」における「芳香族化合物基」とは、トルエン、スチレン、ベンゼン等が好ましく、スチレンがコストの面及び重合の容易さの点でより好ましい。
また、置換基としては、例えば、α-、o-、m-又はp-体の、アルキル基(例えば炭素数1~20のアルキル基)、水酸基、アルコキシル基(例えば炭素数1~20のアルコキシル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボン酸(塩)基、ハロアルキル、エステル置換体などを挙げることができる。これらの置換基を有するものとしては、例えば、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸、2,4-ジメチルスチレン、パラジメチルアミノスチレン、ビニルベンジルクロライド、ビニルベンズアルデヒド、インデン、1-メチルインデン、アセナフタレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルフルオレン等の重合性不飽和芳香族化合物を挙げることができる。
【0023】
本発明の生理活性物質担持用磁性粒子は、モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、磁性体を含み、該乳化剤は、下記に記載する特徴を有するものである。
【0024】
本発明で使用可能な乳化剤は、以下の一般式(1):
【化3】
で表され、少なくとも以下の特徴:
[1]疎水性セグメント及び親水性セグメントを有する両親媒性ブロックコポリマーであって、
[2]前記親水セグメント(R1又はR4のいずれか一カ所以上)に生理活性物質担持用官能基を有する。
本願発明における、ブロックコポリマーとは、構成単位となる化合物が2種類以上である場合とする。
【0025】
前記乳化剤と前記モノマーは、共有結合しても良いし、共有結合しなくても良い。例えば、前記乳化剤が、疎水性セグメント内もしくは末端に、重合可能な二重結合を有する場合、磁性粒子と共有結合することが可能である。一方、前記乳化剤の疎水性セグメントは、磁性粒子と強く相互作用するため、重合反応時に添加された乳化剤は磁性粒子に強く結合され、共有結合しなくても安定な状態を保つことができるので、重合反応が容易であり好ましい。
【0026】
本発明で使用可能な乳化剤の主鎖〔-(CH2-C)n-(CH2-C)m-〕はアルキル鎖からなる。
また、本発明で使用可能な乳化剤の分子量(数平均分子量)としては、400以上100万以下、好ましくは500以上50万以下、更に好ましくは600以上30万以下、特に好ましくは1000以上20万以下である。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
また、本発明で使用可能な乳化剤の分子量分布としては、多分散度であるMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が、1以上2以下、好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.3以下であると良い。制御/リビングラジカル重合又はイオン重合によって、容易に合成することができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0027】
本発明で使用可能な乳化剤の親水性セグメントは、全体として親水性であれば良い。また、親水性セグメントの主鎖〔-(CH2-C)m-〕及びグラフト鎖〔-R3-R4〕の長さは、適宜、公知のものから選択したり、任意に合成したりすることができる。
親水性セグメントとしては、分子量200以上50万以下、好ましくは250以上40万以下、更に好ましくは300以上30万以下、特に好ましくは500以上25万以下である。mは、2以上の整数であり、2以上2000以下の整数が好ましく、更に3以上1000以下の整数が好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0028】
前記親水性セグメントのグラフト鎖は、親水性化合物部分を含み、基R3として、該親水性化合物に由来する官能基を有する。
本発明に使用可能な前記親水性化合物としては、例えば、オリゴエチレングリコール、ポリエチレングリコール、オリゴエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸)、ポリアミノ酸、ポリペプチド、単糖類、多糖類等が挙げられる。本発明で使用可能な乳化剤として合成可能な親水性化合物であれば、公知のものから適宜選択して使用することができる。
基R3の分子量は、40~1万が好ましく、更に80~5000が好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0029】
親水性セグメントにおける基R1又はR4の少なくともいずれか一方は、生理活性物質担持用官能基である。生理活性物質は、親水性セグメントの前記生理活性物質担持用官能基と化学結合して担持される。本発明で使用可能な生理活性物質担持用官能基としては、公知の生理活性物質担持用官能基から適宜選択して使用することができるが、例えば、カルボキシル基、マレイミド基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、又はエポキシ基等が挙げられる。目的に合わせて、種類や数を適宜選択することができる。生理活性物質担持用官能基が導入された乳化剤を使用することによって、一微粒子に導入する生理活性物質担持用官能基量を容易に制御することができる。
【0030】
例えば、基R3が、オリゴエチレングリコール、ポリエチレングリコール、オリゴエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、ポリペプチド、単糖類、多糖類に由来する官能基である場合、これらの親水性化合物の水酸基を、前記のカルボキシル基、マレイミド基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、又はエポキシ基等に置換することにより、基R4を生理活性物質担持用官能基とすることができる。
あるいは、基R3が、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸)に由来する官能基である場合、前記ポリカルボン酸のカルボキシル基が基R4(すなわち、生理活性物質担持用官能基)として機能する。
【0031】
基R1又はR4が生理活性物質担持用官能基でない場合は、公知の原子や官能基から適宜選択して使用することができるが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20の低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基)が挙げられる。
【0032】
基R2-1及びR2-2は、乳化剤の両親媒性や、生理活性物質担持用官能基の機能を妨げない限り、特に限定されるものではないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等が好ましい。R2-1及びR2-2は、同じでも良いし、異なっても良い。それぞれの化合物や合成方法に合わせて、適宜選択して使用することができる。
【0033】
また、親水性セグメントは、下記一般式(2):
【化4】
で表されるように、2種類以上のモノマーユニットを含む構造であってもよい。この場合、1分子内に多数の生理活性物質を担持できることから、生理活性物質を効率よく磁性粒子に修飾することが期待できる。
【0034】
該モノマーユニットは、親水性セグメント内においてブロック共重合体としても、ランダム共重合体としても存在することができる。また、親水性セグメントの末端に位置してもよいし、親水性セグメント中に、例えば、繰り返し配列のように混在する構造であってもよい。末端に位置する親水性セグメント(例えば、一般式(2)における親水性セグメント2)は、生理活性物質担持用セグメントとして機能することができ、内部に位置する親水性セグメント(例えば、一般式(2)における親水性セグメント1)は、非特異反応抑制セグメント及び/又は生理活性物質担持用セグメントとして機能することができる。
【0035】
一般式(2)のように2種類以上の親水性セグメントを含む、本発明の乳化剤(以下、多親水性セグメント含有乳化剤と称する)においては、一般式(1)の場合同様に、本発明で使用可能な乳化剤の主鎖〔例えば、-(CH2-C)n-(CH2-C)m- (CH2-C)O〕はアルキル鎖からなる。
また、本発明で使用可能な乳化剤の分子量(数平均分子量)としては、400以上100万以下、好ましくは500以上50万以下、更に好ましくは600以上30万以下、特に好ましくは1000以上20万以下である。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
また、本発明で使用可能な乳化剤の分子量分布としては、多分散度であるMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が、1以上2以下、好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.3以下であると良い。制御/リビングラジカル重合又はイオン重合によって、容易に合成することができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0036】
多親水性セグメント含有乳化剤において、本発明で使用可能な乳化剤の親水性セグメントは、全体として親水性であれば良い。また、親水性セグメントの主鎖〔-(CH2-C)m-〕及びグラフト鎖〔-R3-1-R4-1〕の長さは、適宜、公知のものから選択したり、任意に合成したりすることができる。
親水性セグメントとしては、分子量200以上50万以下、好ましくは250以上40万以下、更に好ましくは300以上30万以下、特に好ましくは500以上25万以下である。mは、2以上の整数であり、2以上2000以下の整数が好ましく、更に3以上1000以下の整数が好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0037】
多親水性セグメント含有乳化剤において、前記親水性セグメントのグラフト鎖は、親水性化合物部分を含み、例えば、一般式(2)における基R3-1又はR3-2として、該親水性化合物に由来する官能基を有する。
本発明に使用可能な前記親水性化合物としては、例えば、オリゴエチレングリコール、ポリエチレングリコール、オリゴエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸)、ポリアミノ酸、ポリペプチド、単糖類、多糖類等が挙げられる。本発明で使用可能な乳化剤として合成可能な親水性化合物であれば、公知のものから適宜選択して使用することができる。
【0038】
多親水性セグメント含有乳化剤(例えば、一般式(2))において、親水性セグメントにおける基R1、R4-1、又はR4-2の少なくともいずれか一つは、生理活性物質担持用官能基である。生理活性物質は、親水性セグメントの前記生理活性物質担持用官能基と化学結合して担持される。本発明で使用可能な生理活性物質担持用官能基としては、公知の生理活性物質担持用官能基から適宜選択して使用することができるが、例えば、カルボキシル基、マレイミド基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、又はエポキシ基等が挙げられる。目的に合わせて、種類や数を適宜選択することができる。生理活性物質担持用官能基が導入された乳化剤を使用することによって、一微粒子に導入する生理活性物質担持用官能基量を容易に制御することができる。
【0039】
例えば、基R3-1又はR3-2が、オリゴエチレングリコール、ポリエチレングリコール、オリゴエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、ポリペプチド、単糖類、多糖類に由来する官能基である場合、これらの親水性化合物の水酸基を、前記のカルボキシル基、マレイミド基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、又はエポキシ基等に置換することにより、基R4-1、R4-2を生理活性物質担持用官能基とすることができる。
あるいは、基R3-1又はR3-2が、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸)に由来する官能基である場合、前記ポリカルボン酸のカルボキシル基が基R4-1やR4-2(すなわち、生理活性物質担持用官能基)として機能する。
【0040】
基R1、R4-1又はR4-2が生理活性物質担持用官能基でない場合は、公知の原子や官能基から適宜選択して使用することができるが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20の低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基)が挙げられる。
【0041】
基R2-1、R2-2、及びR2-3は、乳化剤の両親媒性や、生理活性物質担持用官能基の機能を妨げない限り、特に限定されるものではないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等が好ましい。R2-1及びR2-2は、同じでも良いし、異なっても良い。それぞれの化合物や合成方法に合わせて、適宜選択して使用することができる。
【0042】
本発明で使用可能な乳化剤の疎水性セグメントは、全体として疎水性であれば良い。また、疎水性セグメントの主鎖〔-(CH2-C)n-〕及びグラフト鎖〔-R5〕の長さは、適宜、公知のものから選択したり、任意に合成したりすることができる。
疎水性セグメントとしては、分子量200以上50万以下、好ましくは300以上40万以下、更に好ましくは500以上30万以下、特に好ましくは1000以上25万以下である。nは、2以上の整数であり、2以上5000以下の整数が好ましく、更に3以上2000以下の整数が好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0043】
基R5は、疎水性セグメント全体として疎水的であれば特に制限されることはないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換または非置換の芳香族化合物基、カルボニル基、アミド基、アミノ基、アルデヒド基、ケト基、あるいは、アミン、アルデヒド、ケトン、又はエーテルの各化合物に由来する官能基(例えば、前記各化合物から1又はそれ以上の原子が除かれた基)等が挙げられる。R5は、全て同じ基であることもできるし、2以上の異なる基であることもできる。
【0044】
このような疎水性セグメントの主鎖及びR2-1及びR5は、例えば、炭素二重結合を有するモノマーを重合して得ることができる。前記モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレンスルホン酸、スチレン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド等を挙げることができ、これらの1つを単独で、あるいは、複数組合せて用いることができる。
【0045】
本発明で使用可能な乳化剤の疎水性セグメントの末端R6は、乳化剤の重合法に従って、公知のものから適宜選択して使用することができる。例えば、乳化剤の重合に使用する開始基に由来する官能基やハロゲン原子、アルキル基、不飽和結合を含む炭化水素基が挙げられる。また、磁性粒子を合成する際の重合法に従って、公知のものから適宜選択して使用することもできる。例えば、磁性粒子を合成する際にモノマーと共有結合する場合には、二重結合を導入することもできる。
【0046】
本発明で使用可能な乳化剤の合成は、例えば、制御/リビングラジカル重合、イオン重合を使用することができる。制御/リビングラジカル重合として例えば、RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer Polymerization)、NMP(Nitroxide Mediated Polymerization)、ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)等が挙げられる。制御/リビングラジカル重合、イオン重合で合成された乳化剤を用いることで、本発明の生理活性物質担持用磁性粒子の製造ロット間差を小さくすることができる。
これらの合成方法は、親水性セグメントに導入する生理活性物質担持用官能基等によって、好適な方法を選択することができる。
【0047】
本発明で使用可能な乳化剤の合成は、公知の方法から適宜選択して使用することができるが、例えば、疎水性セグメントから合成を開始し、その後、親水性セグメントを合成する場合や、親水セグメントから合成し、その後、疎水性セグメントを合成する方法等がある。目的に応じて好適な方法を選択することができる。
【0048】
本発明で使用可能なラジカル重合開始剤としては、通常のミニエマルション重合で使用可能なラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、過酸化開始剤、過硫酸開始剤、アゾ系開始剤、アゾ系低温型開始剤、又はレドックス開始剤を挙げることができる。本発明においては、転相乳化温度よりも低温で重合を行うことができる点で、レドックス開始剤もしくは、アゾ系低温型開始剤を用いることが好ましいが、特に制約を設けるものではない。
【0049】
前記過酸化開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ-t-ブチルペルオキシド(DBPO)、過酸化アンモニウムを挙げることができる。前記過硫酸開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸ナトリウム(NPS)を挙げることができる。
【0050】
前記アゾ系開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を挙げることができる。アゾ系開始剤の内、低温で実施できる前記アゾ系低温型開始剤としては、例えば、水溶性アゾ重合開始剤であるVA-044(和光純薬工業)もしくは油溶性アゾ重合開始剤であるV-70(和光純薬工業)等を挙げることができる。
【0051】
前記レドックス開始剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン[N,N,N‘,N‘-tetramethylethylenediamine(TMEDA)]/過硫酸カリウム[potassium persulfate(KPS)]、FeSO4/KPS、FeSO4/H2O2、アスコルビン酸(ビタミンC)/H2O2等を挙げることができる。
【0052】
本発明の磁性体含有微粒子中に含まれる磁性体は、磁性体である限り、特に制限はないが、酸化鉄系の物質が代表的でありフェライト、Fe3O4で表現されるマグネタイトが挙げられる。特に、飽和磁化が高く、かつ残留磁化が低い磁気材料としてγFe2O3、Fe3O4が好ましい。本発明で使用する磁性体微粒子は、残留磁化が少ないことが求められ、例えば、粒子径5~20nm程度のフェライトおよび/またはマグネタイトの微粒子が好適に使用できる。
【0053】
微粒子中の上記磁性体粒子の含有率としては、ポリマー重量に対して10重量%以上含有される。十分な磁気応答性を発現するためには磁性体含有量が高い方が好ましく、好ましくは含有率が20重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上であり、さらに好ましくは30重量%以上である。一方で、磁性体が樹脂微粒子の表面に露出することを避けるために磁性体含有率は、通常、70重量%以下であり、好ましくは60重量%以下であり、特に好ましくは50重量%以下である。
【0054】
本発明で使用可能なモノマーは、通常のミニエマルション重合で使用可能なモノマーを使用することができる。例えば、スチレン、スチレン誘導体(例えば、クロロメチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、ジビニルベンゼン、アクリル酸若しくはメタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フタル酸、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステル[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート]、酢酸ビニルを挙げることができる。さらにこれらのモノマーは、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0055】
本発明の生理活性物質担持用磁性粒子の製造方法は、上記の本発明の生理活性物質担持用磁性粒子を製造することができれば特に制限することは無く、重合反応の際に上記の本発明で使用可能な乳化剤を使用すること以外は、従来公知のミニエマルション重合(例えば、M. Antonietti, K. Landfester, Prog. Polym. Sci.,2002, 27, 689-757、J.M. Asua, Prog. Polym. Sci., 2002, 27, 1283-1346)と同様にして実施することができる。
【0056】
通常のミニエマルション重合は、これに限定されるものではないが、例えば、モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、磁性体を混合する工程、前記混合物を剪断する工程、並びに前記混合物を重合開始温度まで加熱して重合させる工程を含むことができる。ミニエマルション重合では、重合用モノマーと乳化剤とを混合した後、例えば、超音波照射による剪断工程を実施することにより、前記剪断力によりモノマーが引きちぎられ、乳化剤に覆われたモノマー微小油滴が形成される。次いで、ラジカル重合開始剤の重合開始温度まで加熱することにより、モノマー微小油滴をそのまま重合し、磁性粒子が得られる。
【0057】
磁性粒子の重合時の反応条件、例えば、溶媒、混合比、温度、反応時間などは、使用するモノマー、及び、生理活性物質担持用官能基の種類、開始剤、乳化剤、合成する磁性粒子の平均粒径、微粒子表面に担持させる生理活性物質の量などに応じて、例えば、パイロット試験を実施することにより適宜決定することができる。
【0058】
モノマーに可溶な長鎖アルカンや高級アルコールをモノマー油滴内に溶解させたものをハイドロフォーブとして添加し、油滴の浸透圧を高めることで油滴の安定性を向上させ、オストワルド熟成による粒径の不均一性の増大を抑制し、単分散なラテックス粒子を合成することができる。
本発明で用いることのできるハイドロフォーブとしては、通常のミニエマルション重合で使用可能なハイドロフォーブを使用することができ、例えば、ヘキサデカン、シルセスキオキサン、又は疎水性ポリマー(例えばポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル)を挙げることができ、ヘキサデカン又はポリスチレンが好ましい。
【0059】
上記のように、一般的に、ハイドロフォーブを使用することによって粒径を均一にすることができるが、さらに、本発明者らは、ハイドロフォーブを使用すると磁性粒子内で相分離を引き起こし、磁性粒子中に含まれる磁性体が均一ではなくなる場合があることを見出した。粒径が小さくなるに従って磁性粒子に含まれる磁性体含有量が下がる場合があるため、ハイドロフォーブを使用して磁性粒子作製する場合、重合モノマーとの比率を調整することによって、磁性体含有率を調整することができる。当業者であれば、作製された磁性粒子の特性を評価し、適宜これらの比率を設定することができる。
【0060】
また、蛍光分子の存在下で重合反応を行うことによって、蛍光機能を有する磁性粒子を作製することもできる。例えば、希土類金属キレート錯体は蛍光寿命が長く、スペクトル幅が狭いという特徴を有することから、バックグラウンドによるノイズが回避できるため、好ましい。
【0061】
このような蛍光を示す希土類金属キレート錯体を構成する希土類金属としては、ユーロピウム、サマリウム、テルビウム、およびジスプロシウムを挙げる事ができる。
このような蛍光機能を有する粒子は、体外診断薬の測定方法の一つである時間分解蛍光免疫測定法に用いることができる。生じる蛍光を時間分解測定する時間分解蛍光免疫測定法では、より高感度な測定を可能にすることができる点で好ましい。
【0062】
本発明の生理活性物質担持用磁性粒子を使用すること以外は、公知の方法に従って、分析試薬を作製することができる。
本発明で示す分析試薬とは、生理活性物質担持用磁性粒子に、生体試料中の分析対象物質と反応可能な生理活性物質を担持させた、該分析対象物質を分析するための試薬である。
また、生理活性物質と分析対象物質の組み合わせ、また、生理活性物質と生理活性物質担持用官能基との反応は、公知の方法から適宜選択して使用することができる。
【0063】
従来技術に沿って考えれば、磁性粒子を液相に分散させながらモノマーを重合して、粒子を封入するポリマーを形成させる重合法では、磁性粒子表面に水溶性高分子を修飾することは可能であっても、粒子間距離は分子量等を制御することは困難であり、また、粒径の小さな磁性粒子では、磁性体の含有量を大きくすることが困難と考えられていたところ、本願発明によれば、磁性体含有量も比較的大きく、磁性粒子が全体に均一に分散される粒子を製造できることは、顕著な効果を有するものである。
【0064】
本発明の実施形態で使用可能な生理活性物質としては、生体試料中の分析対象物質と反応可能な物質であって、例えば、抗原、抗体、酵素、受容体、DNA、RNA、糖鎖等が挙げられる。
【0065】
本発明の実施形態で使用可能な生体試料中の分析対象物質としては、IgG、C反応性タンパク質(CRP)、フェリチン、β-2マイクログロブリン、α-フェトプロティン(AFP)、IgE、B型肝炎ウィルス(HBS抗体又はHBc抗体)、Dダイマー、フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)、可溶性フィブリン(Soluble fibrin:SF)、プラスミン・α2-プラスミンインヒビター複合体(PPI)、前立腺特異抗原(PSA)、エラスターゼ1、エラスターゼXDP、トロンボモジュリン(TM)、又はアルブミン(好ましくは血清アルブミン)、トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)、プレセプシン、ミオグロビン、CEA、AFP、フェリチン、β2M、PIVKA2、PSA、PAP、CA19-9、CA125、CA15-3、CA72-4、ST-439、SCC抗原、γ-SM、NSE、BCA225、ペプシノゲン(I、II)、proGRP、シフラ、HER2/neu、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(T3、T4、FT3、FT4)、T3UPTAKE、コルチゾール、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、成長ホルモン(HGH)、ACTH、インスリン、Cペプチド、DHEA-S、エストラジオール(E2)エストリオール(E3)、テストステロン、プロゲステロン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG、HCGpreg、β-HCG)、PTH、インタクトPTH、wholePTH、hANP、オステオカルシン、カルシトニン、プロカルシトニン、サイログロブリン、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NTproBNP)、PINP、尿中デオキシピリジノリン、BAP、βクロスプラス(尿)、HCV抗体、HCVコア抗体、HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原・抗体、HBc抗体IgM型HBc抗体、B型肝炎ウイルスコア関連抗原、HAV抗体、IgM型HAV抗体、IgG型HAV抗体、HIV抗原・抗体、HIV抗体1/2、HIVp24抗原、HTLV-1抗体、IgG型サイトメガロ抗体、梅毒TP抗体、抗CCP抗体、総IgE、特異IgE、抗核抗体、抗DNA抗体、抗ssDNA抗体、抗ds抗体、抗TSHレセプター抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗SSA/Ro抗体、抗SSB/La抗体、抗Sm抗体、抗RNP抗体、抗ガラクトース欠損IgG抗体、P-ANCA、MPO-ANCA、IgG、IgA、IgM、IgD、ミオグロビン、C3・C4、トロポニンT、トロポニンI、α1-M、KL-6、好酸球塩基性タンパク(ECP)、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、バルプロ酸、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、テオフィリン、ジゴキシン、シクロスポリン、タクロリムス、葉酸、CK-MB、VB12、sIL-2R、EPO等を挙げることができる。
【0066】
例えば、前記生理活性物質として抗体を用いる場合には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いることができる。また、抗体の種類としては、免疫グロブリン分子自体のほか、抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2又はFv等も使用可能である。
例えば、前記生理活性物質としてDNAを用いる場合には、分析対象物質の相補的な約5~100塩基のDNAプローブを用いることができる。
【0067】
本発明の実施形態で使用可能な分析可能な被検試料は、前記分析対象物質を含む可能性のある試料であれば、特に限定されず、特には生体試料、例えば、血液、血清、血漿、尿、髄液、又は細胞若しくは組織破砕液などを挙げることができる。
【0068】
本発明の実施形態で使用可能な分析試薬は、公知のラテックス法(例えば、ラテックス凝集法、ラテックスを用いたB/F分離)で用いることができる。
ラテックス凝集法では、前記分析試薬と被検試料とを液中で接触させた際に生じた凝集の度合い(凝集度)を光学的に分析(特には測定)することにより、被検試料中の分析対象物質の量を分析(特には測定)することができる。ラテックス粒子の凝集度を光学的に検出する具体的方法においては、例えば、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を測定する光学機器を用いて測定を行うことができる。好ましい測定波長は300~800nmである。測定方法は、公知の方法に従い、用いるラテックス粒子の大きさ(平均粒径)若しくは濃度の選択、又は反応時間の設定により、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度の増加又は減少を測定することにより行うことができる。また、これらの方法を併用することも可能である。
ラテックスを用いたB/F分離では、前記分析試薬と被検試料とを液中で接触させた後、B/F分離を行うことにより、ラテックス粒子と液とを分離し、前記ラテックス粒子に結合した分析対象物質、あるいは、前記液中に残存する分析対象物質を分析(特に測定)することにより、被検試料中の分析対象物質の量を分析(特には測定)することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは、本発明の範囲を限定するものではない。
≪実施例1:マクロRAFT剤 HOOC-POEGMA
14の合成≫
【化5】
【0070】
100mLナスフラスコに、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(oligo(ethylene glycol)methyl ether methacrylate、OEGMA、新中村化学工業社製)7.0g、RAFT剤として、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(4-cyano-4-[(dodecylsulfanylthiocarbonyl)surfanyl]pentanic acid、CSPA、シグマ-アルドリッチ社製)0.4g、 1,4-ジオキサン(関東化学社製)20mL、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(2,2’-azobisisobutyronitrile、AIBN、東京化成社製)0.016gを加え,凍結脱気を三回行った。その後、窒素雰囲気下にし、70℃で9時間重合した。反応溶液をエバポレーターにより除去し、テトラヒドロフラン(THF、関東化学社製)にて希釈した後、ヘキサン(関東化学社製)を用いて再沈殿を3回行うことにより、マクロRAFT剤 HOOC-POEGMA14を精製した。
1H-NMR(Buruker DPX300NMR、Buruker社製)を用いて、マクロRAFT剤 HOOC-POEGMA14の平均重合度は14であること、ゲル浸透クロマトグラフィー(HLC-8220GPC、TOSOH社製)を用いて、マクロRAFT剤 HOOC-POEGMA14の多分散度は、1.25であることを確認した。
【0071】
≪実施例2:両親媒性ブロックコポリマーHOOC-(POEGMAn-b-PStm)の合成≫
【化6】
【0072】
100mLナスフラスコに、HOOC-POEGMA14 6.0g、スチレン(関東化学社製)0.67g、トルエン(関東化学社製)6.4mL、AIBN0.013gを加え,凍結脱気を3回行った。窒素雰囲気下にし,80℃で24時間重合した。反応溶液をエバポレーターにより除去し,THFにて希釈した後,ヘキサン(関東化学社製)を用いて再沈殿を3回行うことにより、両親媒性ブロックコポリマーPSt5-b-POEGMA14-COOHを精製した。
【0073】
≪実施例3:両親媒性ブロックコポリマーHOOC-(POEGMA
14-b-PSt
5)への二重結合の導入≫
【化7】
【0074】
100mLナスフラスコに、PSt5-b-POEGMA14-COOH(1.0g)、n-ヘキシルアミン(東京化成社製)0.25g、テトラヒドロフラン(THF、関東化学社製)4.2mLを加え、凍結脱気を3回行った。窒素雰囲気下にし、室温で24時間重合させた。反応溶液をエバポレーターにより除去し、THFにて希釈した後、ヘキサンを用いて再沈殿を3回行うことにより、HS-PSt5-b-POEGMA14-COOHを精製した。
【0075】
アルゴン雰囲気の下、ヒートガンで水分を除去した後、塩化カルシウム管、滴下漏斗、およびアルゴンバルーンを取り付けた50 mL三口フラスコにトリエチルアミン(関東化学社製)0.075g、乾燥させたTHF、および上記で精製したHS-PSt5-b-POEGMA14-COOHを加え、撹拌した。塩化メタクリロイル90μLおよび乾燥させたTHFを滴下し、アルゴンガスバブリング下、最初の30分間は水浴にて撹拌し、後に室温下に切り替え、15時間撹拌した。生成した塩を濾紙にて除去し、エバポレーターにて反応溶液を除去した。続いてTHFにて希釈した後、ヘキサンを用いて再沈殿を3回行うことにより、二重結合を導入した両親媒性ブロックコポリマー メタクリロイルチオ-PSt5-b-POEGMA14-COOHを精製した。
1H1-NMR(Buruker DPX300NMR、Buruker社製)を用いて、二重結合の導入率は77%であること、ゲル浸透クロマトグラフィー(HLC-8220GPC、TOSO社製)を用いて、二重結合を導入した両親媒性ブロックコポリマー メタクリロイルチオ-PSt5-b-POEGMA14-COOHの多分散度は、1.27であることを確認した。
【0076】
≪実施例4:磁性粒子の合成方法≫
磁性体にスチレン、ジビニルベンゼン、およびハイドロフォーブとしてポリスチレンを加え、超音波洗浄機(BRANSON,3510)にて、3分間超音波処理し,モノマー/磁性体複合分散溶液(溶液A)を得た。
100mLのサンプル瓶に、超純水、実施例3で作製した二重結合導入両親媒性ブロックコポリマー、および水溶性開始剤の過硫酸カリウムを溶解させ、マグネチックスターラーにて撹拌した(溶液B)。
溶液Bに溶液Aを移し、超音波分散機を用いて,氷冷下15分間超音波照射し、モノマー/磁性体複合油滴を得た。
得られたモノマー/磁性体複合油滴を100 mL三口フラスコに移し、N2バブリングした後、200rpmで攪拌し、ウォーターバスを70℃に昇温し8時間後撹拌して重合した。
8時間後、反応器を冷却し、重合を停止させた。
磁石によって集磁し、水分散溶媒の除去および超純水への再分散を3回行うことによって、磁性粒子を精製した。
各原料の仕込み量は以下の表1の通りである。
【0077】
【0078】
≪実施例5:磁性粒子の物性評価≫
走査型電子顕微鏡(JEOL社製、JEOL-6510)にて撮影した磁性粒子の画像から無作為に100個の磁性粒子の粒径を測定し、平均値を算出した。 また、熱重量測定装置(SHIMADZU社製、DTA-60A)によって磁性粒子中の磁性体の含有率を算出した結果を表2に示す。
ハイドロフォーブとして用いたポリスチレンの仕込み量を変化させることによって、磁性粒子の粒径および、磁性体の含有率を制御することができる。本発明の方法によれば、診断薬用途として有用な粒径、磁性体含有率である磁性粒子を安定的に製造可能であることがわかった。
【0079】
【0080】
≪実施例6:磁性粒子への抗体修飾≫
実施例5において、サンプル1の条件で製造された磁性粒子を使用して、生理活性物質を担持し体外診断薬としての有用性について評価を行った。1.0wt%の磁性粒子1.0mLに、100mg/mLのEDC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride)水溶液100μLを添加し10分間攪拌した。そこに、1.0mg/mLのTAT(トロンビン-アンチトロンビン複合体)抗体500μLを添加し、さらに1時間攪拌した。撹拌終了後、磁石を用いて、抗体を結合した磁性粒子を回収して反応溶液を蒸留水で3回洗浄して抗体修飾磁性粒子を調製した。
【0081】
≪実施例7:体外診断薬の性能評価≫
TATキャリブレーター(株式会社LSIメディエンス社製)を用いて、TAT抗体を修飾した磁性粒子の発光量を測定した。装置は、全臨床検査システムSTACIA(株式会社LSIメディエンス社製)を用いた。得られた発光量の結果を
図1に示す。
TATが20ng/mLと非常に低い値においても、充分な発光量を確認することができた。また、TATが0ng/mL、いわゆるブランク値が非常に低いことから、本発明による磁性粒子は体外診断薬として有用であると考えられた。