(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】蓋部構造及びこれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 17/353 20060101AFI20220111BHJP
B65D 43/16 20060101ALI20220111BHJP
B65D 51/20 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B65D17/353
B65D43/16 300
B65D43/16
B65D51/20
(21)【出願番号】P 2017164478
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391029325
【氏名又は名称】明星産商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】漆原 修
(72)【発明者】
【氏名】万野 幸人
(72)【発明者】
【氏名】大西 春二
(72)【発明者】
【氏名】森山 寿幸
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-007633(JP,U)
【文献】登録実用新案第3166394(JP,U)
【文献】特開2002-225911(JP,A)
【文献】特開2007-176545(JP,A)
【文献】特開2004-299768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/353
B65D 43/16
B65D 51/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に形成された環状の弱化線により囲まれた中栓と、前記中栓の端縁に取り付けられたプルリングと
、
前記容器本体と連結され、前記中栓に対して開閉自在に設けられた開閉体と、前記環状の弱化線の外縁から延出する環状壁と、前記開閉体の前記環状壁と対向する表面から延出するインナーリング及びアウターリングと、を含む蓋部構造であって、
前記プルリングを通る所定の直線によって前記環状の弱化線を2分割した一方に含まれる複数の位置から、前記中栓上にそれぞれ延伸する複数の弱化線からなる第1弱化線群と、
前記2分割した他方に含まれる複数の位置から、前記中栓上にそれぞれ延伸する複数の弱化線からなる第2弱化線群とが、
前記一方の複数の位置を前記所定の直線に正投影した各点と、前記他方の複数の位置を前記所定の直線に正投影した各点とが、交互に並ぶよう、形成され
、
前記開閉体を閉じた状態で、
前記インナーリングは、前記環状壁の内周面と当接し、
前記アウターリングは、前記環状壁の外周面と少なくとも前記容器本体と前記開閉体との連結部の反対側を含む所定の範囲において係合し、
前記開閉体の前記表面から前記インナーリングと前記環状壁とが当接する位置までの距離は、前記開閉体の前記表面から前記環状壁と前記アウターリングとの係合する位置までの距離よりも短く、
前記開閉体を開いた状態から閉じた状態へとする際は、前記環状壁と前記アウターリングとが係合した後に、前記環状壁と前記インナーリングとが当接する、蓋部構造。
【請求項2】
前記環状の弱化線は、平面視において楕円形状、または長円形状であって、前記所定の直線は、前記楕円形状または前記長円形状の長手軸方向に延伸する、請求項1に記載の蓋部構造。
【請求項3】
前記環状壁の上端面の幅は、1mm以上である、請求項
1または2のいずれかに記載の蓋部構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の蓋部構造を有し、収納構造と一体的に形成されている、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋部構造及びこれを用いた包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェイスマスク、ウエットティッシュ等のシート状の内容物を清拭液、化粧液、薬液等の液体に含浸させ、折り畳んだ状態で収容する包装容器が知られている。(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されている包装容器は、合成樹脂等により成形された下側が開口する断面が略台形状の容器本体と、フィルムを容器本体の開口側の周縁に熱シール等によって固着した底壁部と、容器本体の上壁部に形成された矩形長孔状の取り出し口を開閉自在に塞ぐ開閉ラベルとにより構成される。開閉ラベルは合成樹脂フィルムの単体又は複合体、アルミ箔に合成樹脂フィルムをラミネートしたラミネート材等からなり、取り出し口の外周に対応して塗布された粘着剤を介して上壁部に剥離可能に貼着されている。
【0004】
また、ウエットティッシュ等のシート状の内容物を収容可能な軟包装袋の開口部に取付けて開口部の開閉を可能とする取出口栓(蓋体に相当)が知られている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2に開示されている取出口栓は、開口予定部を塞ぐ中栓に渦巻き状の弱化線が設けられている。取出口栓の使用者は、中栓に取付けられたプルリングを引くことで、弱化線を破断し、中栓を取出口栓本体から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-078828号公報
【文献】特開2002-225911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の包装容器では、内容物には清拭液等の液体が多く含まれている場合がある。このような場合、内容物の取り出しに際して、当該液体が取り出し口の周囲に付着をして取り出し口の外周に塗布された粘着剤の粘着力を低下させ、再封時に密封性が低下するという問題があった。
【0008】
これに対して、特許文献2の蓋体構造では、密封性の低下は抑制できるが、開口を大きくし難いという問題があった。すなわち、特許文献2の蓋体構造に大きな開口を設定した場合は、弱化線の破断に大きな力が必要となるとともに、取り外された中栓が螺旋状に長く伸びてかさばり廃棄しにくくなるという問題があった。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、小さな力で取り外すことができるとともに、取り外した後にもかさばらない中栓を用いた、密封性の低下を抑制できる蓋部構造及びこれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、容器本体に形成された環状の弱化線により囲まれた中栓と、中栓の端縁に取り付けられたプルリングと、容器本体と連結され、中栓に対して開閉自在に設けられた開閉体と、環状の弱化線の外縁から延出する環状壁と、開閉体の環状壁と対向する表面から延出するインナーリング及びアウターリングと、を含む蓋部構造であって、プルリングを通る所定の直線によって環状の弱化線を2分割した一方に含まれる複数の位
置から、中栓上にそれぞれ延伸する複数の弱化線からなる第1弱化線群と、2分割した他方に含まれる複数の位置から、中栓上にそれぞれ延伸する複数の弱化線からなる第2弱化線群とが、一方の複数の位置を所定の直線に正投影した各点と、他方の複数の位置を所定の直線に正投影した各点とが、交互に並ぶよう、形成され、開閉体を閉じた状態で、インナーリングは、環状壁の内周面と当接し、アウターリングは、環状壁の外周面と少なくとも容器本体と開閉体との連結部の反対側を含む所定の範囲において係合し、開閉体の表面からインナーリングと環状壁とが当接する位置までの距離は、開閉体の表面から環状壁とアウターリングとの係合する位置までの距離よりも短く、開閉体を開いた状態から閉じた状態へとする際は、環状壁とアウターリングとが係合した後に、環状壁とインナーリングとが当接する、蓋部構造である。
【0011】
また、本発明の他の局面は、上記の蓋部構造を有し、収納構造と一体的に形成されている、包装容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小さな力で取り外すことができるとともに、取り外した後にもかさばらない中栓を用いた、密封性の低下を抑制できる蓋部構造及びこれを用いた包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓋部構造を備えた包装容器の開閉体を開いた状態を示す平面図及び断面図
【
図2】本発明の一実施形態に係る蓋部構造を備えた包装容器の開閉体を閉じた状態を示す平面図及び断面図
【
図3】本発明の一実施形態に係る蓋部構造を備えた包装容器の拡大断面図
【
図4】本発明の一実施形態に係る蓋部構造を備えた包装容器から中栓を取り外す方法を示した平面図
【
図5】本発明の変形例に係る蓋部構造を備えた包装容器の開閉体を閉じた状態を示す平面図及び断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る蓋部構造を備えた包装容器100について、
図1、
図2を参照して説明する。
図1に、開閉体300を開いた状態の包装容器100の平面図(
図1の上図)及びA-A’線で切断した断面図(
図1の下図)を示す。また、
図2に、開閉体300を閉じた状態の包装容器100の平面図(
図2の上図)及びB-B’線で切断した断面図(
図2の下図)を示す。なお、以下の説明では、便宜上、包装容器100を正立させた際の上下方向(
図1、
図2の下図における紙面上下方向)を上下という。
【0015】
包装容器100は、容器本体200と、容器本体200上に設けられた連結部であるヒンジ210により容器本体200に連結された開閉体300とを含んで構成される。なお、容器本体200と開閉体300とは、一体的成形により製造することができる。
【0016】
<容器本体>
容器本体200は、図示しない内容物を収容するための収納構造を備える容器である。
図1、
図2に示すように、容器本体200は、内部に収容空間を備える箱型の容器であり、下面が開口している。容器本体200は、上面に、ヒンジ210と、凹部270と、環状弱化線220で囲まれた中栓230と、環状弱化線220の外縁から上方に延出する環状壁250とを含んで構成される。容器本体200は、例えば、収容空間にシート状の内容物及び清拭液等の液体を収納したのち、下面の開口にフィルムをシールして用いることができる。
【0017】
(凹部)
凹部270は、開閉体300を閉じた際に開閉体300が略重なる窪みである。
図1に示すように、凹部270は、容器本体200の上面略中央に矩形状に、容器本体200の上面の一部を開閉体300の形状に対応させて窪ませることにより形成されている。
【0018】
(中栓)
中栓230は、容器本体200の開口予定部を閉塞する部材である。
図1に示すように、中栓230は、凹部270の略中央に形成された環状弱化線220に囲まれている。中栓230は、上面の端縁に支柱を介してプルリング260が取付けられ、下面に複数の弱化線(第1弱化線群241及び第2弱化線群242)により構成される弱化線群240が形成されている。
【0019】
(環状弱化線)
環状弱化線220は、中栓230を容器本体200から取り外す際のきっかけとなる弱化線である。
図1の上図に示すように、環状弱化線220は、一例として、凹部270に楕円形状のハーフカットを形成することで設けることができる。環状弱化線220の形状は、環状であれば特に限定されないが、内容物の取り出し易さや、中栓230の取り外し易さを考慮すると、楕円形状や一対の円弧と一対の直線とを含む長円形状(トラック形状)等が好ましい。環状弱化線220のハーフカットは、
図1、
図2に示すように、凹部270の下面に形成してもよいし、上面に形成してもよい。環状弱化線220の肉厚は、例えば、0.20mm以上0.30mm以下とすることができる
【0020】
(弱化線群)
弱化線群240は、中栓230を容器本体200から取り外す際に、中栓230の姿勢を制御することにより、環状弱化線220の破断に要する力を軽減するために設けられる。弱化線群240は、第1弱化線群241と第2弱化線群242とから構成される。弱化線群240は、一例として、
図1の上図に示すように、環状弱化線220から中栓230上に延伸する3本の直線状の弱化線を所定の間隔でくし歯状に並べた第1弱化線群241及び第2弱化線群242とをかみ合わせるように配置して形成することができる。第1弱化線群241及び第2弱化線群242は、いずれも一端が環状弱化線220に接し、他端は環状弱化線220に接さないように形成されている。
【0021】
第1弱化線群241及び第2弱化線群242は、上記の形態に限定されない。すなわち、プルリング260を通る仮想的な直線Lによって、例えば中栓230を略半分ずつの面積に2分割して、環状弱化線220も2分割したとき、第1弱化線群241が、環状弱化線220を2分割した一方に含まれる複数の位置から、中栓230上にそれぞれ延伸する複数の弱化線からなり、第2弱化線群242が、2分割した他方に含まれる複数の位置から、中栓230上にそれぞれ延伸する複数の弱化線からなり、一方の複数の位置を所定の直線Lに正投影した各点と、他方の複数の位置を所定の直線Lに正投影した各点とが、交互に並ぶよう、形成されていればよい。弱化線群240の肉厚は、例えば、0.4mm以上0.8mm以下とすることができる。
【0022】
このような弱化線群240を備える中栓230への樹脂充填を行うためのゲートは、例えば、プルリング260の支柱とこれに最も近い弱化線群240を構成する弱化線との間に設けることができる。このゲートから充填された樹脂は、弱化線群240と環状弱化線220との間を通って中栓230内に充填することができる。
【0023】
(環状壁)
環状壁250は、開閉体300に形成されたインナーリング310及びアウターリング320のそれぞれと当接、係合して、包装容器100を密封するための部材である。
図1、
図2に示すように、環状壁250は、環状弱化線220の外縁から上方に延出(起立)し、一例として、平面視において楕円形状となるように形成されている。
図3に、環状壁250とアウターリング320及びインナーリング310とが嵌合した様子を示す。
図3は、
図2のC部を拡大した断面図である。
図3に示すように、環状壁250の上端外周面からは、アウターリング320と係合する係合突起251が突出している。
【0024】
<開閉体>
開閉体300は、ヒンジ210により容器本体200に連結され、中栓230に対して開閉自在に設けられた部材である。
図1、
図2に示すように、開閉体300は、開閉体300の容器本体200の環状壁250と対向する表面から延出(垂下)する、インナーリング310及びアウターリング320を備える。
図3に示すように、インナーリング310及びアウターリング320のそれぞれを環状壁250に係合、当接させることにより包装容器100を密封することができる。開閉体300のヒンジ210と反対側の端部には、開閉体300を開
けるための波形形状の指掛け部330を設けている。包装容器100の使用者は、指掛け部330の凹部331と、容器本体200の凹部270との間に指を入れた後、指掛け部330の凸部332に指を掛けることにより、開閉体300を持ち上げて開くことができる。
【0025】
(インナーリング)
インナーリング310は、開閉体300を閉じた状態で、環状壁250の内周面と当接するように形成されている。
図3に示すように、開閉体300を閉じた状態で、インナーリング310の外周面の先端部が環状壁250の内周面に当接するとともに、インナーリング310の開閉体300との接合部と環状壁250とにより囲まれた領域に隙間ができるように、インナーリング310を、開閉体300の表面から外方に向かって拡がるように形成してもよい。
【0026】
(アウターリング)
アウターリング320は、開閉体300を閉じた状態で、環状壁250の外周面と少なくともヒンジ210の反対側を含む所定の範囲において係合するように形成される。
図3に示すように、アウターリング320は、環状壁250と対向する内周面の先端から突出する係合爪321を備え、係合爪321は環状壁250の外周面に形成された係合突起251と係合する。
図1の上図に示すように、係合爪321は、アウターリング320のヒンジ210の反対側を含む所定の範囲に形成されている。係合爪321をこの範囲に形成することで、開閉体300をヒンジ210とは反対側の方向へ向かって引っ張りながら閉じることができる。このため、包装容器100のようにヒンジ210の延伸方向が中栓230の短手方向に設定された場合であっても、開閉体300の長手方向における遊びを抑制して密閉性を高めることができる。
【0027】
図3に示すように、開閉体300を閉じた状態においては、開閉体300の表面からインナーリング310と環状壁250とが当接する位置までの距離D1は、開閉体300の表面から環状壁250の係合突起251とアウターリング320の係合爪321との係合する位置までの距離D2よりも短くなるように形成されることが好ましい。
【0028】
インナーリング310及びアウターリング320の高さを、上記の関係(距離D1<距離D2)となるように設定することにより、環状壁250の先端は高さの異なる2つの位置から挟み込まれる。これにより、環状壁250の先端をアウターリング320の係合爪321に向かって押し付けることができる。このため、環状壁250の先端を同じ高さで挟み込んだ場合と比べて、開閉体300による包装容器100の密封性を高めることができる。
【0029】
また、インナーリング310の当接位置をアウターリング320の係合位置よりも上方に設定したことにより、開閉体300のヒンジ210とは反対側の端部を上方に持ち上げることで、アウターリング320と環状壁250との係合をわずかな力で解除して、開閉体300を容易に開くことができる。
【0030】
また、開閉体300を閉じた状態で環状壁250の上端面(天面)は、開閉体300の表面に面で接触することが好ましい。環状壁250をこのように設定することで、環状壁250と開閉体300との接触面積が増加して密封性が高まる。また、環状壁250の先端部とインナーリング310及びアウターリング320で囲まれた空間に、内容物に含まれる液体により被膜が形成されて密封性が向上する効果も期待できる。これらの効果を得るためには、環状壁250の上端面の幅D3は1mm以上とすることが好ましい。
【0031】
また、開閉体300を開いた状態から閉じた状態へとする際は、アウターリング320の係合爪321が環状壁250の係合突起251を乗り越えて係合した後に、環状壁250の上端面が開閉体300の表面に接触し、その後、環状壁250とインナーリング310の端部とが当接するように、各部の寸法が設定されることが好ましい。
【0032】
各部の寸法をこのように設定することにより、環状壁250を、アウターリング320によりインナーリング310側へわずかに倒した後、インナーリング310を背後から当接させることができる。これにより、一連の動きにより環状壁250は弾性変形をしながらインナーリング310とアウターリング320との間に挟みこむことができる。したがって、簡便な操作によって開閉体300を閉じながら、環状壁250とインナーリング310及びアウターリング320とを確実に密着させて、開閉体300による包装容器100の密封性を高めることが可能となる。
【0033】
(中栓の取り外し方法)
次に、中栓230の取り外し方法について、
図4を参照して説明する。
図4の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、包装容器100の中栓230を拡大した部分平面図である。
【0034】
包装容器100の使用者は、中栓230の端縁に取付けられたプルリング260を、白矢印で示すように他端側へ向かって所定の力で引く。この力の方向は、直線Lの延伸方向と略同じである。
【0035】
以下では、便宜上、プルリング260を挟んで、図の左側の環状弱化線220を環状弱化線220aと呼び、図の右側の環状弱化線220を環状弱化線220bと呼ぶ。また、環状弱化線220aに発生した破断の進行点を破断部280aと呼び、環状弱化線220bに発生した破断の進行点を破断部280bと呼ぶ。また、弱化線群240を構成する複数の弱化線は、プルリング260に近い側から弱化線240a、弱化線240b、弱化線240c、弱化線240d、弱化線240e、弱化線240fと呼ぶ。
【0036】
初めに、中栓230のプルリング260側の端部において環状弱化線220の破断が発生する。そして、プルリング260をさらに引くことにより、破断部280a及び破断部280bのそれぞれが、黒矢印で示すように環状弱化線220a、環状弱化線220b上を弱化線240aの近傍まで同時に進行する(
図4の(a))。
【0037】
破断部280bが、環状弱化線220bと弱化線240aとの接点に達すると、中栓230は、下面に弱化線240aが形成されているため、弱化線240aに沿って上方へ折れ曲がる。このように、破断部280bが弱化線240aに達すると、プルリング260から中栓230を引っ張る力が、弱化線240aに沿って中栓230の折り曲げに作用し、破断部280bの進行には作用しにくくなる。これにより、破断部280bは、一旦、環状弱化線220b上の弱化線240aとの接点で進行を停止する。
【0038】
一方で、弱化線240aは、環状弱化線220aに接していないため、破断部280aは環状弱化線220a上を停止することなく進行することができる(
図4の(b))。
【0039】
破断部280aが、環状弱化線220aと弱化線240bとの接点に達すると、中栓230は、弱化線240bに沿って上方へ折れ曲がる。このように、破断部280aが弱化線240bに達すると、プルリング260から中栓230を引っ張る力が、弱化線240bに沿って中栓230の折り曲げに作用し、破断部280aの進行には作用しにくくなる。これにより、破断部280aは、一旦、環状弱化線220a上の弱化線240bとの接点で進行を停止する。
【0040】
破断部280a、破断部280bともにそれぞれ、弱化線240b、弱化線240aに達して進行を停止すると(
図4の(c))、プルリング260から中栓230を引っ張る力がプルリング260に近い方の破断部280bの進行に再び作用する。そして、再び進行を開始した破断部280bは、環状弱化線220b上を弱化線240cまで停止することなく進行する(
図4の(d)、
図4の(e))。
【0041】
以下、図示しないが、プルリング260から中栓230を引っ張ることにより、上記の説明と同様に、破断部280a及び破断部280bを環状弱化線220a及び環状弱化線220b上でそれぞれ交互に進行させる。そして、破断部280a及び破断部280bを、すべての環状弱化線220a及び環状弱化線220b上で進行させることにより、すなわち、環状弱化線220を全て破断することにより、中栓230を容器本体200から取り外すことができる。
【0042】
なお、破断部280aが弱化線240fを通過した後、または破断部280bが弱化線240eを通過した後における、破断部280a及び破断部280bの進行の順序は特に限定されない。プルリング260からの中栓230の引っ張りの向きに応じて、破断部280a及び破断部280bが同時に進行して中栓230のプルリング260の取付けられた端部とは反対側の端部で接続するようにしてもよいし、いずれか一方のみが進行して弱化線240eまたは弱化線240fで接続するようにしてもよい。
【0043】
以上のようにして、プルリング260を引き続けることにより、破断部280a及び破断部280bが、交互に環状弱化線220上を進行する。したがって、中栓230の取り外しに必要な力は、初めの弱化線240aに達するまでを除いて、環状弱化線220a及び環状弱化線220bを同時に破断して破断部280a及び破断部280bを同時に形成する場合と比べて小さくすることができる。
【0044】
プルリング260による中栓230の引っ張りに要する力は、破断部280a及び破断部280bの進行する環状弱化線220を、プルリング260による中栓230の引っ張りの方向に近づけることにより低減することができる。このため、引っ張り方向が環状弱化線220の長手方向となること、すなわち、直線Lが環状弱化線220の長手方向に延伸することが好ましい
【0045】
また、このようにして容器本体200から取り外された中栓230は、弱化線群240に沿って折り曲がってロール状にコンパクトになるため、ゴミの減容にも適している。
【0046】
(作用・効果)
以上説明したように、本発明によれば、渦巻き状に弱化線を形成した従来の構造と比較して、大きい開口を採用した場合であっても、中栓230を小さな力で取り外すことができる。また、取り外した後の中栓230は、ロール状になるためかさばらない。
【0047】
また、開閉体300をインナーリング310及び係合爪321を備えるアウターリング320により、環状壁250と当接、係合させる構造としたため、密封性能が持続され、
密封性の低下を抑制することができる。また、係合部が噛み合う際の衝撃により、包装容器100の使用者は、確実に密封されたことを知ることができる。
【0048】
また、容器本体200と開閉体300とを樹脂等を用いて一体成型により製造することで、容器本体に開閉フィルムを貼り付ける工程が不要となるため、製造工程を減らすことができ低コストで包装容器100を製造することができる。また、容器本体200の剛性を高めることができるため、開閉体300の開閉も容易である。また、内容物を収納する前の包装容器100であれば開閉体300を閉じることで重ねて収容することが可能である。
【0049】
<変形例>
容器本体と開閉体との連結形態は、包装容器100の形態に限定されない。
図5に、包装容器100と連結形態が異なる変形例に係る包装容器101の平面図(
図5の上図)、D-D’線で切断した断面図(
図5の下図)、及び連結部211の拡大断面図を示す。包装容器101と包装容器100とは容器本体と開閉体との連結形態のみが異なる。すなわち、包装容器100は容器本体200と開閉体300とが一体成型され、ヒンジ210により連結されている。これに対して、包装容器101は容器本体201と開閉体301とが別体に形成され、連結部211により連結されている。包装容器101の連結部211以外の部分は、包装容器100と同様に形成されている。
【0050】
包装容器101の連結部211は、容器本体201の上面から突出する2つの軸受け部290と、開閉体301に軸受け部290に嵌合可能に形成された2つの回転軸340とにより構成される。
図5に示すように、回転軸340が軸受け部290に回転可能に嵌合することにより、開閉体301は容器本体201に連結され、中栓230に対して開閉自在に設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、包装容器とその蓋部構造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
100、101 包装容器
200、201 容器本体
210 ヒンジ
211 連結部
220 環状弱化線
230 中栓
240 弱化線群
241 第1弱化線群
242 第2弱化線群
250 環状壁
251 係合突起
260 プルリング
270 凹部
280a、280b 破断部
290 軸受け部
300、301 開閉体
310 インナーリング
320 アウターリング
321 係合爪
330 指掛け部
331 凹部
332 凸部
340 回転軸