IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ヒーター機器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蒸し器 図1
  • 特許-蒸し器 図2
  • 特許-蒸し器 図3
  • 特許-蒸し器 図4
  • 特許-蒸し器 図5
  • 特許-蒸し器 図6
  • 特許-蒸し器 図7
  • 特許-蒸し器 図8
  • 特許-蒸し器 図9
  • 特許-蒸し器 図10
  • 特許-蒸し器 図11
  • 特許-蒸し器 図12
  • 特許-蒸し器 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】蒸し器
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/04 20060101AFI20220111BHJP
   A47J 27/04 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A47F3/04 A
A47J27/04 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016220554
(22)【出願日】2016-11-11
(65)【公開番号】P2018075292
(43)【公開日】2018-05-17
【審査請求日】2019-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591231269
【氏名又は名称】日本ヒーター機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松坂 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏明
【審査官】関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087099(JP,A)
【文献】実開平06-041615(JP,U)
【文献】実開平04-036923(JP,U)
【文献】特開2004-321290(JP,A)
【文献】実開平02-048774(JP,U)
【文献】特開2014-028051(JP,A)
【文献】特開2003-070603(JP,A)
【文献】特開2001-161552(JP,A)
【文献】特開平06-209848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/04
A47J 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数段の商品陳列棚が設けられる蒸し器本体と、
前記蒸し器本体の少なくとも前面部に設けられたガラス部材と、
前記蒸し器本体の上部領域に設けられた天井部と、
前記蒸し器本体の下部に設けられると共に当該蒸し器本体内の上部側に向けて商品加熱用の蒸気を送り出す蒸気発生手段と、
前記商品陳列棚上の商品を照らす照明装置と、
記天井部に配置され、当該天井部の前記蒸し器本体内の空間に面した下面側の温度が、前記蒸し器本体内の空間温度よりも十分高くなるように加熱する加熱装置
を具備し、
前記天井部は、天井板と、前記天井板の上方に配置される前記加熱装置と、前記加熱装置の上方に配置される断熱部材と、前記断熱部材の上方に配置される上部外面板と、を有し、
前記天井部は、前記天井板と、前記加熱装置と、前記断熱部材と、前記上部外面板とに分解可能である
蒸し器。
【請求項2】
請求項1に記載した蒸し器において、
前記上部外面板は、前記蒸し器本体から取り外し可能であり、前記上部外面板を前記蒸し器本体から取り外すことにより前記断熱部材が露出し、前記断熱部材を前記蒸し器本体から取り外すことにより前記加熱装置が露出することを特徴とする
蒸し器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した蒸し器において、
前記上部外面板は、前記断熱部材の上部に所定の隙間をおいて配置されていることを特徴とする
蒸し器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一つに記載した蒸し器において、
前記加熱装置をヒーターで構成すると共に、このヒーターを前記天井板と金属製のカバー部材との間に挟まれるように配置したことを特徴とする
蒸し器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸し器に係り、さらに詳しくは、陳列商品の加湿・保温用の蒸気により生じた水滴が、商品陳列棚上に陳列されている肉まん等の商品上へ落下するのを防止できる蒸し器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、コンビニエンスストア等の店頭に、調理済みのあんまんや肉まん等のいわゆる中華まんじゅうを加熱販売するために、加湿・保温機能を備えた蒸し器が設置されるようになってきている。
以上のような蒸し器は、当該蒸し器を構成する蒸し器本体内の食品陳列棚に載せたあんまんや肉まん等を、蒸し器本体の下方から蒸気発生手段により蒸気を発生させて蒸す構成となっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、以上の特許文献1に開示された蒸し器においては、蒸気発生手段により発生した蒸気が蒸し器本体内に充満すると共に、その蒸気が上昇して蒸し器本体の天井面に接触したとき結露し水滴となる。
そうすると、その水滴はどこにも行き場がなくなり、天井面の内面から、あんまんや肉まん等の商品上に垂れ落ちてしまう。その結果、あんまんや肉まん等は、商品としての価値がなくなり、売れないという問題が生じる。
【0004】
そこで、上記のような各問題点を解決しようとして、図13に示すような構造の蒸し器110が提案されている。
すなわち、この蒸し器110では、蒸し器本体111の天板125と最上段の商品陳列棚150との間で天板125寄りの位置に、蒸気により発生した水滴が商品陳列棚150上に垂れ落ちないように、防滴ガラス114が設けられている。
【0005】
上記蒸し器110における防滴ガラス114は、蒸し器本体111の背面側から前面側に向かって、前面側が低くなるような、所定角度の傾斜状に設置されている。
そして、蒸し器本体111の下部に配置されている蒸気発生手段140で発生し、上昇してきた蒸気が天板125の下面に接触して結露し水滴となる。そして、その水滴が防滴ガラス114の上面に落下するようになっている。
【0006】
水滴は、防滴ガラス114の先端からフロントガラス115を構成する内フロントガラス116の内側面を伝わって下方に流れ落ち、蒸し器本体111のフロントガラス115の下端側に設けられている水タンクに戻るような構成となっている。
フロントガラス115は、上記内フロントガラス116と外内フロントガラス117とで構成された二重構造となっている。また、蒸し器本体111の背面には、把手161を備えた開閉扉160が設けられている。
なお、図13において左側が、客が商品を選択・注文し、かつ受け取るための前面側であり、右側が、店の係員が蒸し器110の内部に商品を陳列したり、陳列してある商品の中から所定の商品を取り出し、かつ受け渡す背面側である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-190010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記防滴ガラス114を用いた構造の蒸し器110では、天板125から落下した水滴のほとんどが防滴ガラス114の上面を伝って前面側に流れ落ちる。
防滴ガラス114の上面に落ちる水滴は、前述のように、蒸気発生手段140から発生した蒸気が、蒸し器本体111の内部空間を上昇して天板125に接触して結露し水滴となったものである。
そして、蒸気発生手段140に使用される水はほとんどが水道水であり、この水道水には、各種のミネラル成分(カルシウム等)が含まれている。蒸気微粒子中や結露した水滴中にもこれらのミネラル成分は存在するため、落下した水滴中のそれらの成分が流れきれずに防滴ガラス114の上面に固着し白濁化することがある。
その結果、蒸し器110の外部から見たとき、防滴ガラス114の白濁化した部分が目につくので、顧客に、不衛生、不快な印象を与えることになり、販売にも影響するという問題が生じている。
【0009】
その問題を解決するためには、定期的に防滴ガラス114の清掃を行う必要がある。
しかし、防滴ガラス114を清掃するには、当該防滴ガラス114を蒸し器本体111から取り外して清掃することになるが、防滴ガラス114は、蒸し器本体111の大きさに対応する平板状の1枚のガラスで構成されているため、その防滴ガラス114の取り外し、取付け時にも、最大限の注意を払う等、その取り扱いが難しく、ちょっとした弾みで外部の物体等に当たり、割れてしまうという問題がある。
【0010】
また、割れてしまった防滴ガラス114は、新しいものに交換しなければならず、余分な費用が掛かるので、経済的な損失も生じると言う問題もある。
また、商品陳列棚の上方に防滴ガラス114を設けることになるため、その分、蒸し器110の全体構成が複雑となる。
【0011】
さらに、蒸し器本体111において、防滴ガラス114が商品陳列棚の上方に配置されており、その防滴ガラス114は前面側が低くなるように配置されているので、蒸し器本体111に対して防滴ガラス114の占めるスペースが大きくなっている。
そのため、防滴ガラス114の部分がデッドスペースとなり、上部の商品の陳列スペースを狭めてしまうなどの問題もあった。
【0012】
本発明の目的は、上述した各課題を解決するために提案されたものであり、商品加温・保湿用の蒸気により生じる水滴が天井部の下面に付着するのを防止して、水滴が商品陳列棚上の商品に落下することを防止できると共に、デッドスペースをなくし、スペースの有効利用を図れる蒸し器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の蒸し器は、内部に複数段の商品陳列棚が設けられる蒸し器本体と、この蒸し器本体の少なくとも前面部に設けられたガラス部材と、前記蒸し器本体の上部領域に設けられた天井部と、前記蒸し器本体の下部に設けられると共に当該蒸し器本体内の上部側に向けて前記商品加熱用の蒸気を送り出す蒸気発生手段と、前記商品陳列棚上の商品を照らす照明装置と、を具備した蒸し器において、
前記天井部に、当該天井部の前記蒸し器本体内の空間に面した下面側の温度が、前記蒸し器本体内の空間温度よりも十分高くなるように加熱する加熱装置を装備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蒸し器によれば、天井部に装備された加熱装置により天井部が加熱され、天井部の蒸し器本体内の空間に面した下面側の温度が、蒸し器本体内の空間温度よりも高くなっているので、商品加温・保湿用の蒸気により生じる水滴が天井部の下面に付着することを防止できる。その結果、水滴が商品陳列棚上の商品に落下することを防止できる
また、天井部の下面に水滴が付着しないのでそこからの水滴の落下がない。そのため、従来のように、水滴の落下を受ける防滴ガラスを配置する必要がなくなる。
その結果、防滴ガラスを配置した分のスペースに商品陳列棚をもう一段配置することができるので、デッドスペースをなくし、スペースの有効利用を図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る蒸し器の一実施形態を示す全体斜視図である。
図2】前記実施形態の蒸し器の天井部を分解した状態の全体を示す斜視図である。
図3】前記実施形態の蒸し器本体の上部に天井板を取付けた状態を示す斜視図である。
図4】(A)は前記実施形態で使用されるシリコーンコードヒーターを示す平面図であり、(B)は図4(A)のB矢視図である。
図5図1におけるV-V線に沿った縦断面図である。
図6図5におけるa部の拡大詳細図である。
図7図1におけるVII-VII線に沿った縦断面図である。
図8図7におけるb部の拡大詳細図である。
図9図7におけるc部の拡大詳細図である。
図10図7の状態から角度を変えて見た縦断面図である。
図11図2におけるXI-XI線に沿った平断面図である。
図12】前記実施形態の蒸し器の背面図である。
図13】従来の蒸し器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1図12を参照して本発明に係る蒸し器の一実施形態を説明する。
本実施形態の蒸し器10は、中華まん等を収容した蒸し器本体11の天井部30に加熱装置であるシリコーンコードヒーター32を設置して、天井部30の温度を蒸し器本体11の内部空間の温度より高くなるように温度制御し、かつ、その温度を維持することで、天井部30を構成する天井板31の下面に水滴が付着しないようにしたものである。
【0017】
そして、本実施形態の蒸し器10は、例えば、コンビニエンスストアの売り場のレジ用カウンターの上等に配置されるようになっている。
なお、図1において左斜め手前側が、客が商品を選択・注文し、かつ受け取るための前面側であり、右斜め奥側が、店の係員が蒸し器10の内部に商品を陳列したり、陳列してある商品の中から所定の商品を取り出して受け渡す背面側である。
【0018】
[蒸し器全体の概略説明]
まず、蒸し器10の全体の概略を説明する。
蒸し器10は、図1,2等に示すように、内部に複数段の商品陳列棚であるトレイ50が配置された蒸し器本体11と、この蒸し器本体11の前面部に設けられたガラス部材であるフロントガラス16と、蒸し器本体11の側面部の一部に設けられたガラス部材であるサイドガラス23と、蒸し器本体11の上面部に設けられた天井部30と、蒸し器本体11の下部に設けられると共に、当該蒸し器本体11内の上部空間側に向けて商品加熱・保湿用の蒸気を送り出す蒸気発生手段40と、蒸し器本体11に設けられ前記トレイ50を照らす照明装置60と、蒸し器本体11の背面に設けられ商品Cの出し入れを可能とする開閉扉70と、を備えて構成され、これにより、蒸し器10は全体略縦型の四角形の箱型形状に形成されている。
【0019】
[天井部の説明]
前述のように、蒸し器10では、天井部30を構成する天井板31の下面の温度が蒸し器本体11内部の空間温度よりも高くなるように温度制御され、かつ、その温度を維持することで、天井板31の下面に水滴が付着しないようにしたものである。
ここで、本実施形態では、蒸気発生手段40から送り込まれる蒸気により、蒸し器本体11の内部空間の温度が、例えば、75℃になるように温度設定されており、これに対して、天井板31の下面の温度は、例えば、85℃となるように温度設定されている。
ただし、これらの各温度に限定されるものではなく、陳列商品の種類に応じて適宜変えることができる。この場合でも、天井板31の下面の温度が、蒸し器本体11の内部空間の温度よりも十分高くなるように温度設定すればよい。
【0020】
そして、天井板31の下面の温度と蒸し器本体11の内部空間(特に、最上段のトレイ50近傍の空気温度)との温度差については、実験を重ねた結果、天井板31の下面の温度が蒸し器本体11の内部空間の温度よりも、約1℃以上高ければ、天井板31の下面への結露防止が確認できた。
しかし、開閉扉70を開閉した際等、蒸し器本体11の内部空間や天井板31が急激に冷やされたときの温度復帰を考慮すると、少なくとも、約5℃の差が必要である。そのため、本実施形態のように、蒸し器本体11の内部空間と天井板31の下面との温度差を約10℃以上に設定すれば、ほとんどの外乱に対しても確実な結露防止の効果が得られる。
【0021】
そこで、まず、天井部30の説明をする。
天井部30は、図2に示すように、蒸し器本体11の上部に取付けられた、例えば、ステンレス製の天井板31と、この天井板31の上方に配置され加熱装置を構成するシリコーンコードヒーター32と、このシリコーンコードヒーター32の上方に配置される断熱部材33と、この断熱部材33の上方に配置される上部外面板34とを備えて構成されている。
【0022】
そして、シリコーンコードヒーター32で天井板31の下面を、上述のように、例えば85℃となるまで加熱することにより、天井板31の温度が、蒸し器本体11の内部空間の温度、例えば75℃よりも高くなっている。
その結果、蒸気発生手段40から送り込まれる蒸気が天井板31の下面に接触しても、その蒸気が天井板31の下面で凝縮して水滴になることはなく、その結果、中華まん等の商品Cへの水滴の落下を防止することができる。
また、天井板31の下面に水滴が付着しないのでそこからの水滴の落下がない。そのため、従来のように、水滴の落下を受ける防滴ガラスを配置する必要がなくなるので、防滴ガラスを配置した分のスペースに商品陳列棚をもう一段配置することができる。つまり、デッドスペースをなくし、スペースの有効利用を図れるようになる。
【0023】
図2に示すように、天井板31は蒸し器本体11の上部に取付けられている。
すなわち、天井板31は、図4に詳細を示すように、略四角形形状に形成されており、その幅方向、つまり、図2において前面側および背面側と直交する方向の両端部が、図6に示すように、前記サイドガラス23を構成する内サイドガラス23Aの上部に天井板支持部材23Aaを介して支持されている。そして、この天井板支持部材23Aaは、内サイドガラス23Aの内面に接着等により固着されている。
【0024】
天井板31の前方側端部は、図7,8に示すように、前記フロントガラス16を構成する内フロントガラス16A保持用の内ガラス上部保持枠20の水平部に形成された取付溝20Aに挿入され保持されている。
また、天井板31の背面側端部は、図7,9に示すように、蒸し器本体11の背面プレート部11Aに設けられた天井板取付け部材37の取付溝37Aに挿入され保持されており、この天井板取付け部材37は、背面プレート部11Aの内面に固着された受部材36に取付けられている。
そして、取付溝20Aおよび取付溝37Aの下面と、上記天井板支持部材23Aaの上端面とは垂直方向の略同一高さ位置となるように設定されている。
【0025】
ここで、天井板31の上端面の全周、および内サイドガラス23A等との隙間には、コーキングが施されており、これにより、蒸し器本体11の内部の蒸気が上方に漏れないようになっている。
【0026】
天井板31の上方には、前記シリコーンコードヒーター32が配置されている。このシリコーンコードヒーター32は、図4に示すように、電熱線32Aをシリコーンゴムと一体成型したものである。
シリコーンコードヒーター32は、その全体形状が前記天井板31よりわずかに小さな四角形形状に形成されている。また、シリコーンコードヒーター32の上面は、電熱線32Aともども金属製のカバー部材であるアルミ箔32Bで覆われている。つまり、シリコーンコードヒーター32は、前記天井板31とアルミ箔32Bとの間に挟まれた状態で配置されている。
このアルミ箔32Bは、電熱線32Aにより発生した熱を保温する役割と、電熱線32Aにより発生した熱を全体に伝える役割とを果たしている。
【0027】
シリコーンコードヒーター32の電熱線32Aの端部は、図示しないが、蒸し器本体11を構成する柱部材12A(図2参照)の内部を通って、背面側の下部に配置されている電装ボックス80に配置されている温度制御装置である所定のヒーター制御部に接続されるようになっている。
シリコーンコードヒーター32の裏面には粘着剤が塗布され、さらに粘着剤の上面に剥離紙が被せられている。そして、シリコーンコードヒーター32を前記天井板31に取付けるには、剥離紙を剥がしてから両者32,31の位置合わせをしながら行うようにすればよい。
【0028】
このようなシリコーンコードヒーター32の上方には、図2,6,8等に示すように、断熱部材33が配置されている。そして、この断熱部材33として、本実施形態では真空断熱部材が用いられている。
断熱部材33は、シリコーンコードヒーター32よりわずかに大きな外形形状に形成され、前記内ガラス上部保持枠20と天井板取付け部材37との上面に載置されており、このとき、断熱部材33の下面とシリコーンコードヒーター32の電熱線32Aとの間には所定寸法の隙間が形成されている。
また、断熱部材33の前方側端部は、図8に示すように、前記内ガラス上部保持枠20の水平な部分に載せられた状態で、その上面が断熱部材押え部材38により動かないように押圧されている。
【0029】
図2,6等に示すように、断熱部材33の上方には上部外面板34が配置されている。
この上部外面板34は、例えば、ステンレスのプレート部材で形成され、断熱部材33と略同じ大きさの略四角形形状となっており、断熱部材33を覆った状態で前記蒸し器本体11の上部に取付けられるようになっている。
【0030】
また、上部外面板34の背面側端部には下方に向かって折曲げられた第1折曲げ部34Aが形成されており、上部外面板34の幅方向(蒸し器本体11の前後方向と直交する方向)両端部には、下方に向かって折曲げられた第2折曲部34B,34Bが形成され、これらの第2折曲部34B,34Bは、蒸し器10の前面側から背面側に向かって途中まで延びて形成されている。
【0031】
第1折曲げ部34Aは、図9に示すように、蒸し器本体11の前記背面プレート部11Aの上端部に引掛けた状態で取付けられるようになっている。
このような上部外面板34の上面には、図2に示すように、蒸し器本体11に取付けるためのビス用孔34cと、後に詳細を述べる連結部材15の折曲部15Aに取付けるための皿コネジ用孔34dとが形成されている。
【0032】
第2折曲部34Bは、上部外面板34が取付けられたとき、図6に示すように、内サイドガラス23Aと外サイドガラス23Bとの略中間位置に配置されるようになっており、また、側面樹脂フレーム13の内側面にわずかに入り込んだ状態で、かつ上端面よりわずかに低い位置となるように設定されている。
【0033】
上部外面板34の取付けは、まず、第1折曲げ部34Aを背面プレート部11Aの上端部に引掛けておいて、上部外面板34にあけられているビス用孔34c(図2参照)から、取付ビス(図略)を差込み、その取付ビスを、蒸し器本体11を構成する柱部材12A(図3参照)にあけられているネジ孔12a(図3参照)に螺合させると共に、図8に示すように、皿コネジ用孔34dから皿コネジ(図略)を差込み、その皿コネジを連結部材15の折曲部15Aにあけられているネジ孔15a(図2参照)に螺合させることで、上部外面板34が蒸し器本体11に取付、固定されるようになっている。
【0034】
[蒸し器全体の詳細説明]
前記蒸し器本体11は、図3,5,11に示すように、蒸し器10の幅方向両側、かつ背面側に配置された柱部材12A、およびその柱部材12Aの下部において当該柱部材12Aに連続する略四角形状の四角枠12Bとを含み形成された本体ケース12と、この本体ケース12の外側に設けられ、それぞれの柱部材12Aおよび四角枠12Bに取付けられた一対の側面樹脂フレーム13,13と、これらの各側面樹脂フレーム13,13の前面側に各側面樹脂フレーム13,13に連続して設けられた一対の前面樹脂フレーム14,14を備えて構成されている。
また、四角枠12Bの下端には底面部材11Bが設けられ、この底面部材11Bの外面には、四隅に配置されてゴム脚11Cが設けられている。
【0035】
各側面樹脂フレーム13,13の形状は、図2等に示すように、正面視で略コ字状に形成されており、これに対して各前面樹脂フレーム14は前方側に緩やかに膨出した湾曲状に形成されている。そして、側面樹脂フレーム13と前面樹脂フレーム14との先端部同士が当接するようになっており、このとき、両樹脂フレーム13,14間に略長方形形状の空間部が形成され、この空間部に前記サイドガラス23を構成する外サイドガラス23Bが嵌めこまれるようになっている。
【0036】
各前面樹脂フレーム14,14同士は、図1,2等に示すように、連結部材15により各フレーム14,14の上部同士が連結されている。
すなわち、連結部材15は、図8に詳細を示すように、上端部領域がR形状になった断面中空の砲弾状に形成されており、その先端部に、天井部30側に向かって、かつ段落状の前記折曲げ部15Aが形成されている。このような形状の連結部材15の断面外形形状は、前面樹脂フレーム14の外周に沿った形状となっている。
【0037】
[フロントガラスの説明]
図1,8,10等に示すように、前記フロントガラス16は、内フロントガラス16Aと外フロントガラス16Bとが、所定の隙間を置いて対向配置された二重構造となっている。
外フロントガラス16Bは、その上端部側から下端部側までが前方側に緩やかに膨出する湾曲状の断面形状となっている。この外フロントガラス16Bの上端部は、図8に詳細を示すように、外フロントガラス上部保持部材18に保持されている。
【0038】
また、外フロントガラス16Bの下端部は、図7,10に示すように、前面樹脂フレーム14の下部に設けられた外フロントガラス下部保持部材19に保持されている。
この外フロントガラス下部保持部材19は、前記蒸し器本体11の底面部材11Bに固着されており、したがって、外フロントガラス16Bは、上記連結部材15から蒸し器10の前面全体を覆った状態で取付けられている。
【0039】
これに対して、内フロントガラス16Aは、図10に示すように、前記天井部30近傍から蒸気発生手段40を構成する蒸気分散板45近傍まで直線状に延びて形成されている。
この内フロントガラス16Aは、その上端部が、図8に詳細を示すように、前記内ガラス上部保持枠20に保持されており、この内フロントガラス上部保持枠20は、各前面樹脂フレーム14,14の内面間に架けわたされ、かつ固着されている。
内フロントガラス16Aの下端部は、図7等に示すように、前記蒸気分散板45を載置するフランジ部の一部に固定された、内フロントガラス下部保持枠21に挿入されて保持されている。
【0040】
[サイドガラスの説明]
前記サイドガラス23は、図5,6,11に詳細を示すように、内サイドガラス23Aと外サイドガラス23Bとが、所定の隙間を置いて対向配置された二重構造となって設けられている。
【0041】
内サイドガラス23Aは、図11に示すように、蒸気分散板45近傍から上部外面板34近傍まで連続して設けられた内サイドガラス保持枠部材に保持されている。
また、外サイドガラス23Bは、図5,11に示すように、側面樹脂フレーム13に保持されている。
なお、図5,6,10,11、また図3に示されているサイドガラス23やフロントガラス16から、実際には、蒸し器本体11内のトレイ50およびその上面に載置されている中華まん等の商品Cが見えるが、それらの図が、断面表示が主であったり、表示が煩雑となったりするため、トレイ50および中華まん等の商品Cの表示は省略してある。
【0042】
[蒸気発生手段の説明]
前述のように、蒸し器本体11の下部には、当該蒸し器本体11内の上部側に向けて商品加熱用の蒸気を送り出す蒸気発生手段40が設けられている。
この蒸気発生手段40は、図1,7等に示すように、沸騰筒43内の水を集中的に加熱して蒸気を発生させるヒーター44と、この沸騰筒43で発生した蒸気を蒸し器本体11内に均等に分散して送り出す蒸気分散板45と、を備えて構成されている。
【0043】
[トレイ50の説明]
食品陳列棚である前記トレイ50は、図1,7,11等に示すように、トレイ用ガイドレール51を介して、前記蒸し器本体11の内部に所定間隔で6段に配置されている。これらのトレイ50の食品載置面は網目状に形成されている。そのため、蒸気発生手段40から発生した蒸気が最上段まで通過可能となっている。
【0044】
[照明装置の説明]
以上のような蒸し器10では、蒸し器本体11の内部を照らす複数の照明装置60が設けられている。
すなわち、図7,8,11に示すように、照明装置60は、蒸し器本体11の上方から内部を照らす上側照明装置61と、蒸し器本体11の両側面から内部を照らす側面照明装置62,62とで構成されている。
【0045】
[開閉扉の説明]
前記開閉扉70は、図1,12等に示すように、蒸し器本体11の背面に設けられており、この開閉扉70を開閉することにより、蒸し器本体11の内部に商品を陳列したり、陳列してある商品の中から所定の商品を取り出し、かつ受け渡したりすることができる。
【0046】
開閉扉70の中央領域には、二重構造のドアガラス72が設けられている。
また、開閉扉70の下方位置には、図1,7等に示すように、電装ボックス80が設けられている。この電装ボックス80の内部には、前記蒸気発生手段40を駆動するための制御用基板等の各種の電気部品が配置されている。
なお、前記シリコーンコードヒーター32の電熱線32Aの先端部は、電装ボックス80の内部の前記ヒーター制御部(図略)に接続されている。
【0047】
以上のような蒸し器本体11では、蒸し器10を作動すると、まず、蒸し器本体11の下部の蒸気発生手段40により蒸気が発生し、その蒸気が蒸気分散板45を経由して、蒸し器本体11の内部に充満する。
しかし、蒸し器10の作動と同時に天井部30の天井板31がシリコーンコードヒーター32により加熱され、天井板31の下面の温度が蒸し器本体11の内部空間の温度よりも高くなるように温度制御されているので、天井板31に水滴が生ずることがない。
その結果、蒸気によって発生した水滴が、天井板31から肉まん等の陳列商品C上に垂れ落ちることがなくなる。
【0048】
以上のような構成の本実施形態の蒸し器10によれば、次のような効果が得られる。
(1)天井部30の天井板31がシリコーンコードヒーター32により加熱され、天井板31の下面の温度が蒸し器本体11の内部の温度よりも高くなるように温度制御されているので、天井板31に水滴が付着することがない。
その結果、水滴が、天井板31から肉まん等の陳列商品C上に垂れ落ちることがなくなるので、常に、品質に差のない陳列商品Cを販売することができる。
【0049】
(2)天井板31から水滴の落下がないので、従来の蒸し器における防滴ガラスが不要になる。そのため、その防滴ガラスが占めていた分のスペースが空きスペースとなり、そのスペースにもう一段のトレイ50を配置することができる。その結果、デッドスペースがなくなり、スペースの有効活用が可能となる。
【0050】
(3)シリコーンコードヒーター32の電熱線32Aが、中央領域部の周囲に二重巻状に配線されており、周囲からの熱が中央領域部にも伝わるので、全体に熱が行きわたり、シリコーンコードヒーター32が効率よく加熱される。
【0051】
(4)シリコーンコードヒーター32の上面がアルミ箔32Bで覆われているので、アルミ箔32Bによる伝熱効果が得られる。
【0052】
(5)シリコーンコードヒーター32の上方に断熱部材33が配置されているので、シリコーンコードヒーター32の熱が外部、つまり上方に逃げるのを防止することができる。その結果、シリコーンコードヒーター32の熱の大部分は天井板31に伝わって、不要な放熱が少なくなることから、省エネ効果を得ることができる。
【0053】
(6)断熱部材33の上部には所定の隙間をおいて上部外面板34が配置され、この上部外面板34は、天井板31、シリコーンコードヒーター32および断熱部材33を覆っているので、各部材31,32,33が保護されると共に、上部外面板34と所定の隙間とも断熱効果を得ることができる。
【0054】
(7)本実施形態の蒸し器10では防滴ガラスが使用されていない。そのため、従来の蒸し器で使用されていた防滴ガラスでの問題点、つまり、水滴落下による防滴ガラスの表面の白濁化により、顧客に不衛生、不快な印象を与える等の問題がなくなる。その結果、見た目にも清潔な状態を維持することができるので、販売促進にもつながる。
【0055】
(8)本実施形態の蒸し器10では防滴ガラスを使用していないので、従来の防滴ガラスを使用した場合に生じる問題点、つまり、防滴ガラスの清掃時にその防滴ガラスが割れたり、割れたガラスの交換等の問題がなくなる。その結果、それらに係る煩わしい手間や、費用が不要となり経済的な損失も回避できる。
【0056】
以上、前記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、前記実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0057】
例えば、前記実施形態では、天井板31を加熱するヒーター32をシリコーンコードヒーター32で構成したが、これに限らない。天井板31を加熱することができればよいので、シリコーンラバーシートヒーター、カーボンヒーター、マイカヒーター、セラミックヒーター等を加熱装置として使用してもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、断熱部材33を真空断熱部材で構成したが、これに限らず、グラスウールやロックウール等の繊維系断熱部材でもよく、また、ウレタンフォームやフェノールフォーム当の発泡系断熱部材を用いてもよい。要は、シリコーンコードヒーター32の熱を外部に逃がさないようなものであればよい。
【0059】
さらに、前記実施形態では、天井板31をステンレス製の不透明なプレート部材で構成したが、これに限らない。例えば、ガラス等の透明部材と透明ヒーター、透明導電膜付ガラス、細電熱線埋め込みガラス等による構成としてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、蒸し器本体11の内部空間の温度が、例えば、75℃になるように温度設定し、天井板31の下面の温度が、例えば、85℃となるように温度設定したが、これに限らない。
陳列商品Cの種類によって、蒸し器本体11の内部空間および天井板31の下面の温度設定を変えてもよい。この場合、天井板31の下面の温度が、蒸し器本体11の内部空間の温度よりも約1℃以上高くなるように温度設定すればよい。
そして、蒸し器本体11の内部空間と天井板31の下面との温度差が10℃以上あれば、ほとんどの外乱に対しても確実な結露防止の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る蒸し器は、例えばコンビニエンスストア等のレジ用カウンターに設置する際に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
10 蒸し器
11 蒸し器本体
12 本体ケース
13 一対の側面樹脂フレーム
14 一対の前面樹脂フレーム
15 連結部材
16 フロントガラス
23 サイドガラス
30 天井部
31 天井板
32 シリコーンコードヒーター
32A 電熱線
33 断熱部材
34 上部外面板
40 蒸気発生手段
50 トレイ(商品陳列棚)
60 照明装置
61 上部照明装置
62 側面照明装置
70 開閉扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13