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特許6998036サスペンションアーム及びそれを備えるサスペンション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】サスペンションアーム及びそれを備えるサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B60G7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017157965
(22)【出願日】2017-08-18
(65)【公開番号】P2019034666
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正志
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-081915(JP,A)
【文献】特開2000-255235(JP,A)
【文献】特開2000-071731(JP,A)
【文献】特開2014-162327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状のサスペンションアームであって、
サスペンションアームは、一端側に配される車体に対する取付部と、
他端側に配される車輪の支持部材に対する取付部とを含んでおり、車体に対する取付部を軸として車体の上下方向に揺動可能に構成されており、
サスペンションアームは、複数の金属製の板材によって中空状に構成されており、
サスペンションアームの揺動を規制する規制部による荷重が入力される部分における金属製の板材に凸部が設けられており、凸部を覆うように金属製の板材から構成されるリインフォースメントメンバが固定されており、
前記凸部は、規制部に向かって突出する形状であり、
前記凸部及び前記リインフォースメントメンバは、平坦部を備えており、前記凸部の平坦部は、前記リインフォースメントメンバの平坦部に比して、面積が小さい形状であり、
前記リインフォースメントメンバと前記凸部を設けた金属製の板材との間に間隙が形成されたサスペンションアーム。
【請求項2】
サスペンションアームは、一端側に車体に対する取付部を備える第1アーム部と一端側に車体に対する取付部を備える第2アーム部とを有しており、
第1アーム部及び第2アーム部の少なくともいずれか一方に凸部と平坦部を有するリインフォースメントメンバとを備える請求項1に記載のサスペンションアーム。
【請求項3】
リインフォースメントメンバを構成する板材の厚みは、凸部が設けられた金属の板材の厚みに比べて、より大きいものである請求項1又は2に記載のサスペンションアーム。
【請求項4】
リインフォースメントメンバ形状は、第1アーム部又は第2アーム部の長手方向に対して第1アーム部及び第2アーム部の少なくともいずれか一方の一部を覆い隠すものである請求項2又は3に記載のサスペンションアーム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載したサスペンションアームを備えるサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサスペンションアーム及びそれを備えるサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を独立して懸架するサスペンション装置が広く使用されている。このようなサスペンション装置では、車輪を上下方向に揺動可能に支えるサスペンションアームと、車輪から入力される急激な荷重の変化などを吸収するバネ及びショックアブソーバーとを備える。自動車が凹凸のある路面を走行する際には、サスペンション装置によって衝撃が緩和されるため、乗員は快適に乗車することができる。
【0003】
上記のようなサスペンション装置では、車輪が車体の上方に大きく揺動すると、サスペンション装置が破損する原因となる。そのような過剰な揺動運動を防ぐためにバンプストッパと呼ばれる部材がサスペンションアーム又は車体フレームに設けられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、アッパーアームにバンプストッパを設けて、車体のフレームを構成するサイドメンバに回動を規制するためのブラケットを設けることが記載されている。図1において破線で記載されているように、アッパーアームが上方に揺動しすぎた際には、サイドメンバに設けたブラケットにバンプストッパーが当接して、アッパーアームが過剰に揺動することを規制する。図6には、バンプストッパの位置に補強用のブラケットを内蔵したサスペンションアームが記載されている。
【0005】
特許文献2には、アッパ部材とロア部材とから構成されるロアアームにおいて、アッパ部材の所定の位置にバンプストッパを設けたロアアームが記載されている。ロアアームは、中空形状であり、バンプストッパの位置に補強部材を内蔵する。
【0006】
特許文献3には、アッパプレートとロアプレートとから構成されるロアアームが記載されている。ロアアームの後部上面には、バンプストッパと対応する位置にバンプストッパと接触する部分を保護する当て板材を溶接することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-255235号公報
【文献】特開2007-30658号公報
【文献】特開2012-81915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1や特許文献2のような補強部材を内蔵するサスペンションアームは、補強部材とサスペンションアームとを溶接などで固定する必要がある。しかしながら、補強部材は中空状のサスペンションアームに内蔵されているため、補強部材とサスペンションアームの溶接を行う作業が煩雑になりがちであった。
【0009】
特許文献3のような当て板材をロアアームに溶接する構造でも、なおロアアームの強度が不足する可能性がある。
【0010】
本発明は、補強部材を内蔵せず、スペンションアームの揺動を規制する規制部が接面する部分における剛性を高めたサスペンションアーム及びそれを備えるサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
中空形状のサスペンションアームであって、サスペンションアームは、一端側に配される車体に対する取付部と、他端側に配される車輪の支持部材に対する取付部とを含んでおり、車体に対する取付部を軸として車体の上下方向に揺動可能に構成されており、サスペンションアームは、複数の金属製の板材によって中空状に構成されており、サスペンションアームの揺動を規制する規制部が当接する部分における金属製の板材に凸部が設けられており、凸部を覆うように金属製の板材から構成されるリインフォースメントメンバが固定されているサスペンションアーム及びそれを備えるサスペンション装置によって、上記の課題を解決する。
【0012】
上記のサスペンションアーム及びサスペンション装置では、サスペンションアームの揺動を規制する規制部による荷重が入力される部分における金属製の板材に凸部が設けられており、その上にリインフォースメントメンバが被せられている。これにより、規制部による荷重が入力される部分の強度を向上させて、規制部によって入力される荷重によってサスペンションアームが撓んだり破損することを防ぐことができる。また、リインフォースメントメンバと凸部との組み合わせによって、強度が向上するため、凸部が設けられる金属製の板材の厚みを小さくして、サスペンションアームを軽量化することも可能である。
【0013】
上記のサスペンションアーム及びサスペンション装置において、サスペンションアームは、一端側に車体に対する取付部を備える第1アーム部と一端側に車体に対する取付部を備える第2アーム部とを有しており、第1アーム部及び第2アーム部の少なくともいずれか一方に凸部と平坦部を有するリインフォースメントメンバとを備える構成とすることが好ましい。第1アーム部又は第2アーム部にはショックアブソーバーの取付部などの他の部品が連結されない。他の部品に影響されないので、第1アーム部又は第2アーム部においては、リインフォースメントメンバの面積を大きく構成することが可能になる。また、車輪の支持部材に対する取付部の周辺に凸部と平坦部を有するリインフォースメントメンバとを配置する必要がなくなる。このため、第1アーム部及び第2アーム部の少なくともいずれか一方に凸部と平坦部を有するリインフォースメントメンバとを廃することによって、車輪の支持部材に対する取付部の周辺の部品のレイアウトの自由度を高めることが可能になる。
【0014】
上記のサスペンションアーム及びサスペンション装置において、リインフォースメントメンバを構成する板材の厚みは、凸部が設けられた金属の板材の厚みに比べて、より大きくすることが好ましい。これによって、凸部が設けられた金属の板材の厚みを相対的に薄く構成することが可能になる。凸部が設けられる金属の板材を薄くすることによって、凸部を形成する際の加工力が小さくて済むので、凸部を成形する際の作業性を向上させることができる。また、凸部が設けられる金属の板材を薄くすることによって、サスペンションアームの重量を小さくして軽量化を図ることができる。リインフォースメントメンバを構成する板材の厚みを相対的に大きくすることによって、サスペンションアームにおいて規制部によって荷重が入力される部分の強度を向上させることができる。
【0015】
上記のサスペンションアーム及びサスペンション装置において、リインフォースメントメンバ形状は、第1アーム部又は第2アーム部の長手方向に対して第1アーム部及び第2アーム部のうちの少なくともいずれか一方の一部を覆い隠すものすることが好ましい。リインフォーメントメンバの長さを一部を覆い隠す程度にすることで、リインフォースメントメンバを設けることによる重量の増加を軽減することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、補強部材を内蔵せず、サスペンションアームの揺動を規制する規制部が接面する部分における剛性を高めたサスペンションアーム及びそれを備えるサスペンション装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】サスペンション装置の一実施形態を示す側面図である。
図2】サスペンションアームの一実施形態を示す平面図である。
図3図3のサスペンションアームの平面側斜視図である。
図4図3のサスペンションアームの底面側斜視図である。
図5図2のAA部分における断面図である。
図6図2のBB部分における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下で説明するサスペンションアームは、本発明の実施形態の一例に過ぎない。
【0019】
本実施形態のサスペンションアームは、図1に示したサスペンション装置1を構成する一部品であり、具体的には、ロアアーム11である。
【0020】
サスペンション装置1は、ロアアーム11と、アッパーアーム12と、車輪の支持部材13と、ショックアブソーバー14と、コイルスプリング15と、サスペンションアームの過剰な揺動を規制する規制部16とを有する。
【0021】
図2ないし図4に示したように、ロアアーム11は、その一端側に車体に対する取付部17aを備えており、他端側に車輪の支持部材13に対する取付部18aを有する。ロアアーム11は、図2及び図3に示したように、第1アーム部111と第2アーム部112とを備えており、それぞれの一端側に車体に対する取付部17aが配される。
【0022】
図2及び図3に示したように、平面視及び底面視において、ロアアーム11は、略三角形状であり、その他端側にショックアブソーバー14の端部を軸支するブラケット113を設けることができる所定の面積を有する幅広部を有する。第1アーム部111及び第2アーム部112は、平面視及び底面視において、棒状のアームが一端側に向かって斜めに突出する形状となっており、上述の幅広部に比べてその幅が小さい形状である。
【0023】
ロアアーム11の車体に対する取付部17aは、中空の管状部材から構成される。環状部材の内部には、ゴムブッシュが内蔵されている。車体側の軸をゴムブッシュに挿通することによって、ロアアーム11は車体の上下方向に揺動可能な状態で車体に支持される。中空の管状部材は、第1アーム部111及び第2アーム部112の一端側に溶接等によって固定されている。
【0024】
ロアアーム11の他端側には、車輪の支持部材13に対する取付部18aが配される。取付部18aは、図3に示したようにボールを受けるケース181aと、ケース181aに対して摺動可能に収納されるボール182aと、ボール182aに連結されるロッド183aとを有するボールジョイントから構成される。ケース181aには、ロアアーム11にボールジョイントを固定するための固定部184aが配される。固定部184aは、板状の部材である。図3に示したように、板状の固定部184aは、サスペンションアームの他端側の開口部に差し込まれた状態で、アッパメンバ116とロアメンバ117と溶接により固定されている。サスペンションアームの他端側の開口は、アッパメンバ116とロアメンバ117の他端部によって形成される。
【0025】
図1及び図3に示したように、ロアアーム11の幅広部の上面側には一端側から他端側に向かって傾斜する傾斜部114が設けられている。これによって、ロアアーム11の他端に配される開口部が小さくなり、ロアアーム11の上面側の部材とロアアーム11の下面側の部材との間に固定部184aを挟み込みやすい形状となっている。
【0026】
傾斜部114には、上面側に向かって突出する第1壁151、及び第2壁152を含むブラケット113が配される。第1壁151と第2壁152とが向かい合う位置関係にあり、第1壁151及び第2壁152には貫通孔154が設けられており、ショックアブソーバー14の端部が連結される。
【0027】
図1に示したように、車輪の支持部材13は、車幅方向の内側に向かって突出するボールジョイントの取付部131a、131bと、上下の取付部131a、131bを連結する連結部132とを有しており、ナックルと呼ばれる。連結部132の中ほどには、車輪を支持するための支持部が配される。
【0028】
図1に示したように、上記のボールジョイントのロッド183aは、車体の下方に向けて突出しており、車輪の支持部材13の取付部131aの上面側にロッド183aの先端側を固定する。
【0029】
ロアアーム11は、図3に示したように、複数の金属製の板材を接合することによって中空状に構成されているため、第1アーム部111及び第2アーム部112が延びる方向に沿って接合線115が現れる。本実施形態の場合、ロアアーム11は、アッパメンバ116とロアメンバ117との計2枚の金属板を溶接によって接合することによって構成されている。このようにサスペンションアームを複数の金属板から構成することによって、複雑な形状を複数枚の金属板に分けてプレス成型することが可能になる。また、サスペンションアームを中空状にすることによって、軽量化を図ることが可能になる。
【0030】
アッパメンバ116とロアメンバ117のそれぞれは、ロアアーム11を上下に分割する形状であり、第1アーム部111、第2アーム部112、及び幅広部を有する。アッパメンバ116とロアメンバ117のそれぞれは、第1アーム部111及び幅広部の左右の縁に折曲部を有する。アッパメンバ116とロアメンバ117は、折曲部において溶接され、一体化されている。
【0031】
アッパーアーム12の構成は、ロアアーム11の構成と基本的には同様であり、一端側に車体に対する取付部17bが配されており、他端側に車輪の支持部材13に対する取付部18bが配される。車体や車輪の支持部材13に対する連結構造もロアアーム11の場合と同様である。すなわち、ボールジョイントのロッドは、車体の上方に向けて突出しており、車輪の支持部材13の取付部131aの下面側にロッドの先端側を固定する。ただし、アッパーアーム12にはショックアブソーバー14は連結されず、第1アーム部と第2アーム部との間をショックアブソーバー14が通過する構造となっている。
【0032】
図1に示したように、アッパアーム12とロアアーム11との間には、サスペンションアームの過剰な揺動を規制する規制部16が設けられる。本実施形態のサスペンション装置1では、規制部16は、取付部161と、取付部161の下面に固定された弾性部162とから構成される。取付部161は、車体のサイドメンバ4の側面に固定される。弾性部162の形状は、鋭利な形状など小さい面積に荷重が集中するような形状ではなく、例えば、円柱状、多角柱状などの形状とすることが好ましい。
【0033】
ロアアーム11が揺動した際に、ロアアーム11が規制部16に接触する位置、すなわち規制部16による荷重が入力される部分には、リインフォースメントメンバ19が設けられている。本実施形態のサスペンションアームでは、リインフォースメントメンバ19は、図2に示したように、金属製の板状の部材であり、平面視においては、短手方向(幅方向)に対しては第1アーム部111又は第2アーム部112の全部を覆い隠し、長手方向に対しては第1アーム部111又は第2アーム部112の一部を覆い隠し、全体を覆い隠さない形状である。より具体的には、リインフォースメントメンバ19は、上述の弾性部162が接触する面積以上の大きさであり、第1アーム部又は第2アーム部の長手方向の長さの半分以下の形状である。リインフォースメントメンバ19は、図5に示したように、平坦部191とその両縁部から下方に突出する突部192、193を有する形状である。突部192、193は、リインフォースメントメンバ19を構成する板材の端部を下方に折り曲げた形状を有する。
【0034】
リインフォースメントメンバ19は、突部192、193の部分を第1アーム部又は第2アーム部の長手方向に沿ってロアアーム11のアッパメンバ116の両側面の上部に対して溶接することで固定されている。補強部材を中空状のロアアームの中に内蔵する構成の場合は、補強部材と中空状のロアアームを溶接するときには、ロアアームの内部に補強部材を溶接することになるため、溶接作業が行いにくく、生産性が悪い。本実施形態のロアアーム11では、ロアアーム11の外側にリインフォースメントメンバ19を溶接するので、溶接作業を行いやすく、生産性がよい。
【0035】
図5及び図6に示したように、ロアアーム11の形状は、リインフォースメントメンバ19の裏面と凸部51を設けた金属製の板材(アッパメンバ116)の上面とが接面し、リインフォースメントメンバ19と凸部51を設けた金属製の板材との間に間隙52が配されるものである。例えば、ロアアーム11を防錆塗料に浸漬するなど方法を実施することによって、間隙を経て防錆塗料が細部まで浸透するので、リインフォースメントメンバ19と凸部51を設けた金属製板材との間の板材など防錆塗料がいきわたり難い部分も含めて塗装し、ロアアームの全体を防錆することが可能になる。このため、安価ではあるものの防錆性能には劣る炭素鋼などの金属板から防錆性能に優れたサスペンションアーム及びサスペンション装置を製造することが可能になる。
【0036】
図3及び図5に示したように、本実施形態のロアアーム11では、ロアアーム11が揺動した際に、ロアアーム11が規制部16に接触する位置、すなわち規制部16による荷重が入力される部分に、凸部51を設けている。凸部51は、ロアアーム11を構成する金属の板材を凸部51に対応する形状を有する金型の間に挟んで圧力を加えることによって形成することが可能である。凸部51は、このようなプレス成型によって形成されるため、凸部51の裏面は凹部となっている。
【0037】
本実施形態のロアアーム11では、凸部51を覆い隠すようにリインフォースメントメンバ19がロアアーム11に固定されている。ロアアーム11の過剰な揺動を規制する規制部16によって荷重が入力される部分を、リインフォースメントメンバ19と、凸部51を有する金属製の板材とから構成しているため、ロアアーム11を構成する金属製の板の厚みを小さくしても十分な強度を確保することが可能である。ロアアーム11を構成する金属板の厚みを小さくすることにより、凸部51をより小さい加工力で形成することが可能になり、凸部51を形成する際の作業性を向上させることが可能になる。
【0038】
また、凸部51を有する金属製の板材、すなわちアッパメンバ116は、ロアアーム11の一端側から他端側までに至る領域を覆う大きめの部材である。このアッパメンバ116の厚みを上述のように小さくすることによって、ロアアーム11及びそれを含むサスペンション装置1の重量を大幅に軽量化することが可能になる。一方、リインフォースメントメンバ19は、図3に示した通り、第1アーム部111又は第2アーム部112の長手方向に対して第1アーム部111及び第2アーム部112の少なくともいずれか一方の一部を覆い隠す形状である。すなわち、リインフォースメントメンバ19は、アッパメンバ116に比べると小さいものであるから、リインフォースメントメンバ19の厚みを大きくして剛性を向上させても、ロアアーム11及びそれを含むサスペンション装置1の重量に大きな影響はない。
【0039】
上記の実施形態におけるロアアーム11の凸部51は、その凸形状によって補強効果を発揮する。例えば、規制部16によってロアアーム11のリインフォースメントメンバ19に対して荷重が入力されると、ロアアーム11の上面が下方に凹む方向に力が作用する。凸部51を設けることによって剛性が向上し、さらに、リインフォースメントメンバ19を設けることによって板厚が大きくなるため、凹む方向にロアアーム11が変形することを防ぐことが可能になる。
【0040】
図1に示したように、車輪が上下に変位すると、ロアアーム11は車体に対する取付部17aを軸として上下に揺動する。規制部16がリインフォースメントメンバ19に対して接触すると、規制部16に対応する位置におけるロアアーム11の上面には圧縮応力が作用する。本実施形態のロアアーム11では、凸部51及びリインフォースメントメンバ19を設けられているので、規制部16に対応する部分におけるロアアーム11の断面係数が大きくなる。このため、ロアアーム11は、総じて板厚が小さく軽量ながらも、圧縮応力に対して十分に対抗できるようになっている。
【0041】
図1に示したように、ロアアーム11の一端側におけるロアアームの厚みと、ロアアームの他端側におけるロアアームの厚みを比較すると、傾斜部114によって、ロアアーム11が車体に取り付けられる一端側におけるロアアーム11の厚み(断面積)が、他端側におけるロアアーム11の厚みに比べて、大きくなる形状となっている。これによって、規制部16が接触するロアアームの一端側における断面係数を増大させて、ロアアーム11が圧縮応力に対して対抗できるようにされている。
【0042】
図5に示したように、本実施形態のロアアーム11は、凸部51も上記の平坦部191とは別の平坦部511を有する。区別するために、凸部51に設けられた平坦部を第2平坦部511と呼び、リインフォースメントメンバに設けられた平坦部を第1平坦部191と呼ぶ。
【0043】
図5及び図6に示したように、第2平坦部511の面積は、第1平坦部191の面積よりも小さく、第1平坦部191と第2平坦部511とは接面した状態となっている。
【0044】
大きい面積で荷重を支える場合は、小さい面積で同じ荷重を支える場合と比較して、撓み量は大きくなる。リインフォースメントメンバ19の第1平坦部191は、面積が比較的に大きいため、撓みやすい。しかし、第1平坦部191は、より面積が小さい第2平坦部511と接面しているため、より面積の小さい第2平坦部511によって支えられた状態になっている。リインフォースメントメンバ19単独で荷重を支える場合に比較すると、より面積の小さい第2平坦部511によっても荷重が支えられるため、より剛性が高くなり、曲げや撓みが生じにくくなる。また、リインフォースメントメンバ19の第1平坦部191は、比較的に面積が大きいため、リインフォースメントメンバ19の広い面積に荷重を分散させて受け止めて、リインフォースメントメンバ19が破損することを防止することが可能になる。
【0045】
上記の実施形態に係るサスペンションアームでは、弾性部162を取付部161の下面に固定することで規制部16を構成した。規制部については、弾性部をリインフォースメントメンバ19の上に設けて、弾性部が接触する受部材を車体側に設ける構成にしてもよい。
【0046】
上記の実施形態に係るサスペンション装置1では、凸部51及びリインフォースメントメンバ19をロアアーム11に設ける構成を示したが、これらの部材はアッパーアームに設けてもよい。また、上記の実施形態に係るサスペンション装置1では、第2アーム部112に凸部51及びリインフォースメントメンバ19を設ける構成を示したが、第1アーム部にこれらの部材を設けてもよいし、第1アーム部及び第2アーム部の両方にこれらの部材を設けてもよい。
【0047】
上記の実施形態では、サスペンションアームがダブルウィッシュボーン式のサスペンション装置を構成するロアアームである例を示したが、ストラット式のサスペンション装置に用いられるサスペンションアームであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
17a 車体に対する取付部
13 車輪の支持部材
18a 車輪の支持部材に対する取付部
16 規制部
51 凸部
19 リインフォースメントメンバ
111 第1アーム部
112 第2アーム部
1 サスペンション装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6