(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】画像処理システム
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
(21)【出願番号】P 2018042861
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】509162388
【氏名又は名称】エイチエスティ・ビジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 仁弘
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-068765(JP,A)
【文献】特開2017-194413(JP,A)
【文献】特開2013-042795(JP,A)
【文献】特開2015-114226(JP,A)
【文献】特開2010-117331(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188650(WO,A1)
【文献】特開2004-340770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
G01N 21/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を載置する載置台と、
前記載置台に対向して配置され、前記薬剤を撮像する撮像装置と、
前記載置台と前記撮像装置との間に設けられ、前記載置台に載置された前記薬剤を覆い、前記薬剤の前記撮像装置側の面に向けて光を照射するドーム型照明と、
前記載置台に載置された前記薬剤を側方から囲い、前記薬剤の頂部に向けて光を照射するリング型照明と、
前記リング型照明及び前記ドーム型照明の間に設けられてそれぞれの照明の干渉を防止する遮光体と、
複数種類の前記薬剤のそれぞれについて、種類の識別のために外形情報及びマーカー情報からなる複数の識別情報を予め登録するデータベースと、
前記撮像装置及び前記ドーム型照明を用いて前記薬剤を撮像した第1画像
に対して前記薬剤の外形が明瞭となるように画像処理を施し、当該画像処理後の前記第1画像と前記複数の識別情報のそれぞれの前記外形情報とを比較して、前記第1画像に示される前記薬剤の外形に類似する前記外形情報の前記識別情報を、候補情報として検出し、
前記候補情報の前記マーカー情報が印刷である場合、前記薬剤を撮像した前記第1画像に対して前記薬剤の表面に付された印刷のマーカーが明瞭となるように画像処理を施し、当該画像処理後の前記第1画像と前記候補情報の前記マーカー情報とを比較して、前記薬剤の種類を判定する一方、
前記候補情報の前記マーカー情報が刻印である場合、前記撮像装置及び前記リング型照明を用いて前記薬剤を撮像した第2画像
に対して前記薬剤の表面に付された刻印のマーカーが明瞭となるように画像処理を施し、前記第2画像と前記候補情報の前記マーカー情報とを比較して、前記薬剤の種類を判定する画像処理装置と、を備え
、
前記ドーム型照明は、前記リング型照明と別体で構成されて前記リング型照明の上面に設けられ、前記載置台上の中心の位置より前記薬剤の分だけ高い位置から内周面までの距離を均一にして中空の半球状に形成され、
また、前記ドーム型照明は、複数の第2光源群を備え、各第2光源群は、当該ドーム型照明の周方向に等間隔に配置された複数の第2光源からなり、隣接する前記第2光源群は、前記複数の第2光源の周方向の位置をずらして配置され、
前記リング型照明は、当該リング型照明の周方向に等間隔に配置された複数の第1光源を備え、拡散光を前記載置台に載置された前記薬剤の頂部に向けて照射するために、前記各第1光源は、前記薬剤の頂部と同じ高さ又は前記薬剤の頂部よりも僅かに上方に配置されることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記複数の
第2光源群は、前記載置台の中心に対してそれぞれ異なる仰角で配置され、仰角が大きくなるに連れて前記撮像装置の光軸から前記複数の
第2光源までの距離が小さくなるように構成され
ることを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を撮像した画像に基づいてその種類を認識する画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院の薬局や調剤薬局では、医師の発行した処方箋に基づいて、薬剤師が薬剤を調剤して患者に提供している。このとき、薬剤師は、膨大な種類の錠剤やカプセル等の薬剤から、処方箋に記載された薬剤を取り出すピッキング作業や、取り出した薬剤に間違いがないか確認する監査作業を行う。ここで、間違った薬剤を調剤する調剤ミスを防止することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1の調剤検品システムは、薬剤の品目を特定する薬剤バーコードが記載されたバーコード部を付し、対応する薬剤が収納された薬剤収納体を調剤棚に多数個配列しておき、目的の薬剤収納体を選択するに際して、薬剤に対応する薬剤バーコードが予め記憶されたコンピュータに処方箋に記入された年月日、患者名、処方された薬剤の品目等の処方内容を予め入力し、調剤データとして記憶させてハンディターミナルに転送し、この調剤データを画面表示装置に所定の形態にて表示する。ハンディターミナルにより選択した薬剤収納体のバーコード部を読取り、調剤データ中の薬剤バーコードとバーコード部の薬剤バーコードとを照合し、一致すると、一致マークを画面表示装置に表示し、一致しないときには警報を鳴らす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の調剤検品システムでは、調剤棚に間違った薬剤が収納されると、薬剤認識の正確性が低下し、間違った薬剤が調剤棚から取り出されてそのまま使用されると、調剤ミスを発生させるおそれがある。また、調剤棚に収納する薬剤の追加や変更の度に、バーコードの付け替えをする手間が掛かり、また、ハンディターミナルを取り扱いながらピッキング作業を行うので、ユーザーに負担が掛かり、薬剤認識の作業性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記した課題を解決すべくなされたものであり、ユーザーの負担を軽減しつつ、薬剤認識の正確性を向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理システムは、上記した目的を達成するため、薬剤を載置する載置台と、前記載置台に対向して配置され、前記薬剤を撮像する撮像装置と、前記載置台と前記撮像装置との間に設けられ、前記載置台に載置された前記薬剤を覆い、前記薬剤の前記撮像装置側の面に向けて光を照射するドーム型照明と、前記載置台に載置された前記薬剤を側方から囲い、前記薬剤の頂部に向けて光を照射するリング型照明と、複数種類の前記薬剤のそれぞれについて、種類の識別のために外形情報及びマーカー情報からなる複数の識別情報を予め登録するデータベースと、前記撮像装置及び前記ドーム型照明を用いて前記薬剤を撮像した第1画像と、前記複数の識別情報のそれぞれの前記外形情報とを比較して、前記第1画像に示される前記薬剤の外形に類似する前記外形情報の前記識別情報を、候補情報として検出し、前記候補情報の前記マーカー情報が刻印である場合、前記撮像装置及び前記リング型照明を用いて前記薬剤を撮像した第2画像と、前記候補情報の前記マーカー情報とを比較して、前記薬剤の種類を判定する画像処理装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
更に、上記した画像処理システムにおいて、前記ドーム型照明は、複数の光源群を備え、前記各光源群は、前記載置台の中心の周りに間隔を空けて配置された複数の光源を備え、前記複数の光源群は、前記載置台の中心に対してそれぞれ異なる仰角で配置され、仰角が大きくなるに連れて前記撮像装置の光軸から前記複数の光源までの距離が小さくなるように構成され、前記リング型照明は、前記ドーム型照明の最も小さい仰角で配置された前記光源群で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザーの負担を軽減しつつ、薬剤認識の正確性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像処理システムを前側から示す概要図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像処理システムを左側から示す概要図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像処理システムにおける動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の画像処理システム1は、載置装置10と、撮像装置20と、照明装置30と、データベース40と、画像処理装置50とを備え、認識対象の薬剤(例えば、錠剤やカプセル)の種類(製品種別)を認識するように構成される。
図1及び
図2では、各部間の接続を破線で示す。
【0012】
載置装置10は、認識対象の薬剤を載置するもので、例えば、筐体11と、摺動板12と、載置台13とを備える。筐体11は、上方から見て円形で、上面が開口した箱型形状に形成され、底面11aと底面11aに立設された円筒状の壁面11bとを有する。壁面11bの前面には、摺動板12を引出可能な引出開口11cが形成される。なお、筐体11の底面11aには、摺動板12の移動を支持するレール(図示せず)や溝(図示せず)が設けられてもよい。
【0013】
摺動板12は、前後方向に長く、筐体11の引出開口11cを介して筐体11内に収納可能な板状に形成される。摺動板12は、筐体11の底面11a上を摺動可能に構成され、摺動板12の下面には、底面11aのレールや溝に対応する、溝やレールが設けられてもよい。摺動板12の前面は、引出開口11cを塞ぐ蓋状に形成され、摺動板12を摺動する際に操作される取っ手を有してもよい。
【0014】
載置台13は、摺動板12の上面に取り付けられる。載置台13は、筐体11内に収納された摺動板12に対して、載置台13の中心が筐体11の底面11aの中心(下記の撮像装置20のカメラ光軸A(光軸))に対応するような位置に配置される。なお、載置台13の上面には、載置台13上に薬剤を載置した際の滑り止めが設けられてもよい。薬剤は、そのまま載置台13に載置されてもよく、あるいは撮像装置20側から見て透明材料の包装がされた状態で載置台13に載置されてもよい。
【0015】
なお、載置装置10は、摺動板12の収納や引出開口11cの閉塞を検知する開閉センサー(図示せず)や、載置台13に載置された薬剤を検知する薬剤センサー(図示せず)を備えてもよく、これらの検知結果を画像処理装置50へ送信してもよい。
【0016】
撮像装置20は、認識対象の薬剤の画像を撮像するもので、例えば、CCD等のカメラ21と、カメラ21に取り付けられたレンズ22とを備える。撮像装置20は、載置装置10の筐体11に収納された載置台13にカメラ21を対向させた状態で、載置台13の上方に配置される。このとき、撮像装置20は、カメラ21及びレンズ22の撮像中心となるカメラ光軸Aが、筐体11の底面11aの中心に対応するように位置決めされる。なお、撮像装置20は、載置装置10に対して固定して取り付けられてよく、例えば、筐体11から上方に延びた支持棒に取り付けられてよい。撮像装置20は、載置装置10に対して、水平方向においては位置決めされるが、垂直方向には移動可能に構成されてもよく、カメラ21及びレンズ22を移動させるアクチュエータ(図示せず)を備えてもよい。
【0017】
撮像装置20は、画像処理装置50に通信可能に接続される。撮像装置20は、画像処理装置50に制御されることによって撮像処理を行い、撮像結果の画像を画像処理装置50へ送信する。
【0018】
照明装置30は、認識対象の薬剤に対して照明するもので、例えば、リング型照明31と、ドーム型照明32とを備える。照明装置30は、載置装置10の上方で、筐体11の上面の開口を覆うように配置される。リング型照明31及びドーム型照明32の間には、それぞれの照明の干渉を防止する遮光体を設けてもよい。
【0019】
リング型照明31は、環状に形成され、筐体11の上面に設けられる。例えば、リング型照明31は、筐体11の壁面11bと同じ厚さを有し、壁面11bから連続した内周面及び外周面を有する。リング型照明31は、筐体11と一体的に構成されてよく、あるいは、別体で構成されてもよい。
【0020】
リング型照明31は、水平方向において、カメラ光軸Aと同じ中心を有して、カメラ光軸Aから内周面までの距離を均一にし、垂直方向において、載置台13に載置された薬剤の高さよりも長く構成される。即ち、リング型照明31は、載置台13に載置された薬剤を側方から囲うように構成される。
【0021】
リング型照明31は、その壁体に第1光源群33を備え、第1光源群33は、リング型照明31の周方向に等間隔に配置された複数の第1光源33aからなる。各第1光源33aは、例えば、LEDで構成される。また、リング型照明31は、内周面に沿って形成された拡散板34を備える。
【0022】
リング型照明31において、複数の第1光源33aは、拡散板34よりも径方向外側に配置され、拡散板34に向けて光を照射し、拡散板34は、拡散光をリング型照明31の中心に向けて照射する。なお、リング型照明31は、拡散光を載置台13に載置された薬剤の頂部(撮像装置20側の端部)に向けて照射するために、各第1光源33aが垂直方向においてこの頂部と同じ高さ又はこの頂部よりも僅かに上方に配置されるとよい。
【0023】
リング型照明31は、画像処理装置50に通信可能に接続される。リング型照明31は、画像処理装置50に制御されることによって複数の第1光源33aの点灯及び消灯が切り換えられ、複数の第1光源33aは、個別に制御されてもよい。
【0024】
ドーム型照明32は、均一した所定の厚さを有する中空の半球状に形成され、リング型照明31の上面に設けられる。例えば、ドーム型照明32は、リング型照明31と同じ厚さを有し、リング型照明31から連続した内周面及び外周面を有する。ドーム型照明32は、リング型照明31と一体的に構成されてよく、あるいは、別体で構成されてもよい。
【0025】
ドーム型照明32は、水平方向において、カメラ光軸Aと同じ中心を有して、垂直方向の位置に拘らずカメラ光軸Aから内周面までの距離を均一にして構成される。また、ドーム型照明32は、載置台13上の中心の位置、好ましくは、それより薬剤の分だけ高い位置から、内周面までの距離を均一にして構成される。即ち、ドーム型照明32は、載置台13に載置された薬剤を上方から覆うように構成される。また、ドーム型照明32の上面には、カメラ光軸Aに対応する位置にカメラ開口32aが形成され、カメラ開口32aを介してドーム型照明32内を臨むように撮像装置20が設けられる。
【0026】
ドーム型照明32は、その壁体に複数の第2光源群35(光源群)を備え、各第2光源群35は、水平方向に平行なドーム型照明32の周方向に等間隔に配置された複数の第2光源35a(光源)からなる。各第2光源35aは、例えば、LEDで構成される。また、ドーム型照明32は、内周面に沿って形成された拡散板36を備える。
【0027】
ドーム型照明32において、複数の第2光源群35は、載置台13上の中心に対してそれぞれ異なる仰角で配置される。各第2光源群35は、仰角が大きくなるに連れてカメラ光軸Aから複数の第2光源35aまでの距離が小さくなるように構成される。なお、隣接する第2光源群35は、複数の第2光源35aの周方向の位置をずらして配置されてよい。また、複数の第2光源35aは、拡散板36よりも径方向外側に配置され、拡散板36に向けて光を照射し、拡散板36は、拡散光をドーム型照明32の中心(載置台13に載置された薬剤の上面(撮像装置20側の面))に向けて照射する。
【0028】
ドーム型照明32は、画像処理装置50に通信可能に接続される。ドーム型照明32は、画像処理装置50に制御されることによって複数の第2光源群35の複数の第2光源35aの点灯及び消灯が切り換えられ、複数の第2光源群35は、個別に制御されてもよく、更に、複数の第2光源35aは、個別に制御されてもよい。
【0029】
データベース40は、複数種類の薬剤のそれぞれについて、種類の識別のために外形情報及びマーカー情報からなる複数の識別情報を予め登録する。識別情報には、薬剤の種類も記録される。外形情報は、例えば、薬剤の外形や色を明瞭にした画像であり、外形の特徴点や特徴ベクトルを抽出し易い画像である。または、画像から抽出された外形の特徴点や特徴ベクトル自体を外形情報の識別情報としてもよい。マーカー情報は、薬剤の表面に付された印刷や刻印等のマーカーを明瞭にした画像であり、マーカーの特徴点や特徴ベクトルを抽出し易い画像である。または、画像から抽出されたマーカーの特徴点や特徴ベクトル自体をマーカー情報の識別情報としてもよい。データベース40は、画像処理装置50と通信可能に構成されていて、ユーザーが画像処理装置50によって識別情報を登録してもよく、あるいは、データベース40を直接操作して識別情報を登録してもよい。
【0030】
画像処理装置50は、認識対象の薬剤の種類を認識するもので、例えば、CPU等からなる制御部51と、ROMやRAM等からなる記憶部52と、撮像装置20や照明装置30(リング型照明31、ドーム型照明32)と通信する通信部53と、液晶ディスプレイやタッチパネル等からなる表示部54と、キーボードやマウス等からなる操作部55とを備える。また、画像処理装置50は、カメラ制御部56、照明制御部57、画像処理部58及び画像認識部59を備える。
【0031】
画像処理装置50は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等で構成されてよい。なお、表示部54がタッチパネルからなる場合、表示部54及び操作部55は、一体的に構成されてよい。通信部53は、撮像装置20や照明装置30と有線又は無線(例えば、赤外線やBluetooth(登録商標)等)で接続される。また、通信部53は、上記に加えてデータベース40にもインターネットやLANを介して有線や無線で接続される。
【0032】
画像処理装置50は、制御部51が記憶部52に記憶されたプログラムやデータに従って演算処理を実行して各部を制御するように構成される。なお、カメラ制御部56、照明制御部57、画像処理部58及び画像認識部59は、記憶部52に記憶されるプログラムで構成されてよく、汎用のコンピュータの画像処理装置50にインストールされるアプリケーションで構成されてもよい。画像処理装置50は、ユーザーが操作部55の操作によって入力した薬剤認識指示に応じて、撮像装置20に薬剤の画像を撮像させ、その画像に基づいて薬剤の種類を認識する。
【0033】
なお、画像処理装置50は、薬剤認識指示が入力されたとき、撮像装置20の開閉センサーが摺動板12の未収納や引出開口11cの開放を検知した場合、又は、撮像装置20の薬剤センサーが薬剤を未検知の場合に、認識不可能として、表示部54等によってエラーを報知してもよい。
【0034】
カメラ制御部56は、通信部53を介して接続された撮像装置20を制御して、撮像装置20に撮像処理を実行させる。例えば、カメラ制御部56は、上記した薬剤認識指示に応じて、載置装置10の載置台13上に載置された薬剤について、ドーム型照明32を点灯して(
図3のステップS1)撮像する第1撮像(
図3のステップS2)と、リング型照明31を点灯して(
図3のステップS3)撮像する第2撮像(
図3のステップS4)とを、順次実行させる。以下、ドーム型照明32を用いて撮像した画像を第1画像と称し、リング型照明31を用いて撮像した画像を第2画像と称する。カメラ制御部56は、第1画像及び第2画像を、通信部53を介して撮像装置20から入力する。なお、カメラ制御部56は、撮像装置20の垂直移動を制御してもよい。
【0035】
照明制御部57は、通信部53を介して接続された照明装置30のリング型照明31及びドーム型照明32を制御して、リング型照明31及びドーム型照明32に照明処理を実行させる。例えば、照明制御部57は、上記した第1撮像の際にドーム型照明32を点灯させてリング型照明31を消灯させる第1照明と、上記した第2撮像の際にリング型照明31を点灯させてドーム型照明32を消灯させる第2照明とを、順次実行させる。
【0036】
なお、照明制御部57は、本実施形態の第1照明や第2照明では、ドーム型照明32の複数の第2光源群35を一斉に点灯及び消灯させるが、複数の第2光源群35を個別に点灯及び消灯させることもできる。また、照明制御部57は、本実施形態の第1照明や第2照明では、各第2光源群35の複数の第2光源35aを一斉に点灯及び消灯させるが、複数の第2光源35aを個別に点灯及び消灯させることもできる。更に、照明制御部57は、本実施形態の第1照明や第2照明では、リング型照明31の複数の第1光源33aを一斉に点灯及び消灯させるが、複数の第1光源33aを個別に点灯及び消灯させることもできる。
【0037】
画像処理部58は、カメラ制御部56が撮像装置20から入力した第1画像及び第2画像に対して、シャープ化や二値化等の所定の画像処理を施して、画像認識部59による下記の画像認識に適した画像となるように加工する。例えば、画像認識部59で第1画像に基づいて薬剤の外形認識を行う場合、画像処理部58は、薬剤の外形や色が明瞭となるように第1画像に画像処理を施す。また、画像認識部59で第1画像又は第2画像に基づいて薬剤のマーカー認識を行う場合、画像処理部58は、薬剤の表面に付された印刷や刻印等のマーカーが明瞭となるように第1画像又は第2画像に画像処理を施す。
【0038】
画像認識部59は、データベース40から複数の識別情報を入力し、画像処理部58で画像処理された第1画像や第2画像と、各識別情報とを比較して、第1画像や第2画像に相当する識別情報、即ち、薬剤の種類を認識する。画像認識部59は、薬剤の外形認識(
図3のステップS5~S6)とマーカー認識(
図3のステップS7~S9)とを順次実行する。
【0039】
外形認識では、画像認識部59は、画像処理部58によって薬剤の外形や色を明瞭にした第1画像を入力し、この第1画像と、複数の識別情報の外形情報とを比較する(
図3のステップS5)。例えば、画像認識部59は、外形情報と同じ外形や色の画像が第1画像内に存在するかどうか、また存在するとすればどこに存在するかを、外形情報と第1画像との相対位置を網羅的に変化させて類似度を計測することで判定する。類似度の計測には、例えば、下記の数式に示す正規化相関や、輪郭線形状(エッジ要素)の比較が用いられる。正規化相関の数式において、外形情報の輝度値をT(i,j)で、第1画像の輝度値をI(i,j)で示す。座標(i,j)は、マーカー情報の画像の幅をm画素、高さをn画素としたとき、左上は(0,0)で示され、右下は(m-1,n-1)で示される。
【0040】
【0041】
そして、画像認識部59は、外形情報及び第1画像に示された薬剤の外形や色の類似度が高い場合、第1画像の薬剤の外形や色に類似する外形情報に対応する識別情報を、候補情報として検出する(絞り込む)(
図3のステップS6)。なお、画像認識部59は、第1画像に関する候補情報を2つ以上検出してよい。
【0042】
マーカー認識では、画像認識部59は、画像処理部58によって薬剤のマーカーを明瞭にした第1画像又は第2画像を入力し、第1画像又は第2画像と、候補情報のマーカー情報とを、候補情報毎に比較する。このとき、画像認識部59は、マーカー情報に示されるマーカーが印刷である場合(
図3のステップS7:YES)、画像処理部58によってマーカーを明瞭にした第1画像と、マーカー情報とを比較する(
図3のステップS8)。一方、画像認識部59は、マーカー情報に示されるマーカーが刻印である場合(
図3のステップS7:NO)、画像処理部58によってマーカーを明瞭にした第2画像と、マーカー情報とを比較する(
図3のステップS9)。
【0043】
例えば、画像認識部59は、マーカー情報と同じマーカーの画像が第1画像内に存在するかどうか、また存在するとすればどこに存在するかを、マーカー情報と第1画像又は第2画像との相対位置を網羅的に変化させて類似度を計測することで判定する。類似度の計測には、例えば、上記の数式に示す正規化相関や、輪郭線形状(エッジ要素)の比較が用いられる。
【0044】
そして、画像認識部59は、マーカー情報及び第1画像又は第2画像に示されたマーカーの類似度が最も高い候補情報(識別情報)に示された薬剤の種類を、認識対象の薬剤の種類として判定(認識)する(
図3のステップS10)。ここで認識された薬剤の種類は、表示部54によってユーザーに向けて表示される。
【0045】
上記したように、本実施形態によれば、画像処理システム1は、載置台13と、撮像装置20と、ドーム型照明32と、リング型照明31と、データベース40と、画像処理装置50とを備える。載置台13は、認識対象の薬剤を載置する。撮像装置20は、載置台13に対向して配置され、薬剤を撮像する。ドーム型照明32は、載置台13と撮像装置20との間に設けられ、載置台13に載置された薬剤を覆い、薬剤の撮像装置20側の面に向けて光を照射する。リング型照明31は、載置台13に載置された薬剤を側方から囲い、薬剤の頂部に向けて光を照射する。データベース40は、複数種類の薬剤のそれぞれについて、種類の識別のために外形情報及びマーカー情報からなる複数の識別情報を予め登録する。画像処理装置50は、撮像装置20及びドーム型照明32を用いて薬剤を撮像した第1画像と、複数の識別情報のそれぞれの外形情報とを比較して、第1画像に示される薬剤の外形に類似する外形情報の識別情報を、候補情報として検出する。そして、画像処理装置50は、候補情報のマーカー情報が刻印である場合、撮像装置20及びリング型照明31を用いて薬剤を撮像した第2画像と、候補情報のマーカー情報とを比較して、薬剤の種類を判定(認識)する。
【0046】
このような構成によれば、ドーム型照明32は全方位から均等に光を照射するので、薬剤の表面の光沢の発生を抑制することができるため、薬剤の外形や色を適切に示す第1画像を撮像することができる。また、薬剤が透明フィルム製の包装で覆われていても、ドーム型照明32は、フィルム表面の照明の映り込みや光沢の発生を抑制することができるので、包装を透過して薬剤の外形や色を適切に示す第1画像を撮像することができる。更に、ドーム型照明32は、複数の薬剤を撮像する場合でも、隣接する薬剤に対して照明を遮蔽することがないので、複数の薬剤の外形を明瞭にした第1画像を撮像することができる。このような第1画像を用いることで、データベース40に登録された複数の識別情報の内、外形や色の類似度が高い候補情報を適切に検出することができる。
【0047】
また、リング型照明31は側方から薬剤の頂部に向けて水平に光を照射するので、刻印のマーカーの陰影を明瞭にした第2画像を撮像することができる。このような第2画像を用いることで、薬剤に付された刻印のマーカーと、候補情報のマーカー情報との比較を高精度に行うことができ、刻印のマーカーが付された薬剤の種類を適切に認識することができる。なお、ドーム型照明32は、薬剤の表面の光沢の発生を抑制するので、薬剤に付された印刷のマーカーを適切に示す第2画像を撮像することができる。このような第2画像を用いることで、薬剤に付された印刷のマーカーと、候補情報のマーカー情報との比較を高精度に行うことができ、印刷のマーカーが付された薬剤の種類を適切に認識することができる。
【0048】
従って、本実施形態の画像処理システム1では、薬剤の外観上の特性、包装の有無、マーカーの特徴等の様々な状況に対して、個別に構成された装置を用意することなく、統一的な構成によって、各薬剤の種類を適切に認識することができる。また、簡易な操作によって薬剤認識を行うことができ、薬剤の状況に合わせた処理を自動的に行うので、ユーザーの負担を軽減すると共に、薬剤認識の正確性を向上することが可能である。
【0049】
なお、上記した実施形態では、ドーム型照明32は、リング型照明31と同じ厚さを有し、リング型照明31から連続した内周面及び外周面を有する例を説明したが、リング型照明31及びドーム型照明32は、この例に限定されない。例えば、他の実施形態では、リング型照明31の内周面は、ドーム型照明32の内周面より大きな直径で形成されて、リング型照明31が、ドーム型照明32に比べて、より離間した位置で薬剤に照射するように構成されてもよい。あるいは、リング型照明31の内周面は、ドーム型照明32の内周面より小さな直径で形成されて、リング型照明31が、ドーム型照明32に比べて、より近接した位置で薬剤に照射するように構成されてもよい。なお、リング型照明31の外周面は、リング型照明31の内周面の形状に合わせて形成されてよく、ドーム型照明32の外周面の形状に合わせる必要はない。
【0050】
上記した実施形態では、リング型照明31は、載置台13の中心の周りに間隔を空けて配置された複数の第1光源33a(光源)からなる第1光源群33(光源群)を備え、ドーム型照明32は、複数の第2光源35aからなる複数の第2光源群35を備える構成を説明した。ここで、リング型照明31とドーム型照明32とが一体的に構成される場合、載置台13上の中心に対して最も小さい仰角で配置されたドーム型照明32の第2光源群35を、リング型照明31の第1光源群33として適用してもよい。
【0051】
このように、ドーム型照明32の一部を用いてリング型照明31を構成することで、照明装置30の構成、配置及び制御を取り扱い易くすることができる。
【0052】
上記した実施形態では、ドーム型照明32が均一した所定の厚さを有する中空の半球状に形成される例を説明したが、ドーム型照明32は、この例に限定されない。例えば、他の実施形態では、ドーム型照明32は、上方に向かって縮径する多角形筒状に形成されてもよい。
【0053】
上記した実施形態では、載置装置10の上方に照明装置30を設け、照明装置30の上方に撮像装置20を設けて、載置装置10に載置された薬剤を上方から撮像する構成を説明したが、本発明の画像処理システム1は、この構成に限定されない。例えば、他の実施形態の画像処理システム1では、載置装置10の下方に照明装置30を設け、照明装置30の下方に撮像装置20を設けて、載置装置10に載置された薬剤を下方から撮像するように構成されてもよい。この場合、載置装置10、撮像装置20及び照明装置30は、
図1とは上下反転した状態で配置され、照明装置30において、ドーム型照明32は、リング型照明31の下面に設けられる。また、載置装置10では、載置台13には、薬剤を収容して落下を防止する箱型状の薬剤ケース(図示せず)が設けられ、薬剤ケースは、透明材料で形成される。
【0054】
上記した実施形態では、データベース40と画像処理装置50とが通信可能に接続される例を説明したが、本発明は、この例に限定されない。例えば、他の実施形態では、画像処理装置50がデータベース40を含んで構成されてもよい。
【0055】
上記した実施形態では、リング型照明31及びドーム型照明32が拡散光を利用して薬剤を照明する例を説明したが、リング型照明31及びドーム型照明32は反射光等を利用して薬剤を照明するように構成されてもよい。
【0056】
なお、本発明は、上記した構成の画像処理システム1に限定されず、
図3に示すようなフローによって薬剤の種類を認識する画像処理方法を実現できれば、他の構成の画像処理システムを採用してもよい。
【0057】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う画像処理システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像処理システム
10 載置装置
11 筐体
11a 底面
11b 壁面
11c 引出開口
12 摺動板
13 載置台
20 撮像装置
21 カメラ
22 レンズ
30 照明装置
31 リング型照明
32 ドーム型照明
32a カメラ開口
33 第1光源群
33a 第1光源
34 拡散板
35 第2光源群
35a 第2光源
36 拡散板
40 データベース
50 画像処理装置
51 制御部
52 記憶部
53 通信部
54 表示部
55 操作部
56 カメラ制御部
57 照明制御部
58 画像処理部
59 画像認識部