(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ジオテキスタイル
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E02D17/18 A
(21)【出願番号】P 2019566755
(86)(22)【出願日】2017-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2017062995
(87)【国際公開番号】W WO2018219431
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519424607
【氏名又は名称】エコール・ポリテクニーク・フェデラル・デ・ローザンヌ(イーピーエフエル)
【氏名又は名称原語表記】ECOLE POLYTECHNIQUE FEDERALE DE LAUSANNE(EPFL)
【住所又は居所原語表記】EPFL-TTO,EPFL Innovation Park J,CH-1015 Lausanne,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100133639
【氏名又は名称】矢野 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリオス・テルジス
(72)【発明者】
【氏名】ライセ・ラルイ
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204875409(CN,U)
【文献】特開平02-261124(JP,A)
【文献】特開平05-125733(JP,A)
【文献】特表2008-508450(JP,A)
【文献】特開2014-005617(JP,A)
【文献】特開2017-025528(JP,A)
【文献】特開平10-237871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0253785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤工学用途のジオシンセティックスであって、
周辺ジオ材料に増殖する配置で
石灰化細菌を担持する細菌担体と、
流動網に沿って前記周辺ジオ材料に反応剤を広げて、固体炭酸カルシウムを生成するように、表面上に設けられた開口部と、
前記反応剤を前記流動網に供給する一組の流入口と、
前記反応剤の少なくとも一部分を前記流動網から排出するための一組の流出口と、
を備えた流動網と、
を備え
、
前記細菌担体は、
前記流動網に連結され内部に前記石灰化細菌を収容するカプセル、あるいは、
表面に前記石灰化細菌を付着させる伸長可能な繊維、を含むジオシンセティックス。
【請求項2】
前記ジオシンセティックスが、ジオメンブレン、ジオグリッド、ジオドレイン、および伸長チューブシステムのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のジオシンセティックス。
【請求項3】
前記ジオメンブレンが、貫通穴のない巻回可能なマットである請求項2に記載のジオシンセティックス。
【請求項4】
前記
石灰化細菌
が前記
カプセルから排出され、前記反応剤が前記カプセルを通って前記流動網から排出されるように、前記
カプセルが、生分解性層、篩状要素、可溶性メンブレン、またはそれらの組み合わせを含む請求項1
乃至3のいずれか1項に記載のジオシンセティックス。
【請求項5】
前記流動網が、連結部で互いに連結された一組のロッドを備えた請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のジオシンセティックス。
【請求項6】
前記ロッドが、前記
石灰化細菌および前記反応剤を受容するように配置され、前記
石灰化細菌および前記反応剤が、前記開口部を通って前記ロッドを脱出するように配置されている、請求項
5に記載のジオシンセティックス。
【請求項7】
前記流動網は、さらに、伸長可能な導管を備え、
前記ジオシンセティックスが、第1端板および第2端板を備え、
前記伸長可能な繊維
及び前記伸長可能な導管を
、前記第1端板および前記第2端板に連結
し、分離した前記第1端板と前記第2端板との間で
前記繊維および前記導管が長手方向に伸長する請求項1
または2に記載のジオシンセティックス。
【請求項8】
前記
導管が、前記開口部を備えた請求項
7に記載のジオシンセティックス。
【請求項9】
前記伸長可能な繊維が、細菌樹脂コーティングを備えた請求項
1乃至8のいずれか1項に記載のジオシンセティックス。
【請求項10】
前記流動網
は、
略平行な連続管
群を備え
、
前記開口部は、前記連続管
群の周辺に配置され、
前記連続管群は、前記反応剤を循環させ、前記カプセル内の前記石灰化細菌を受けいれるように構成されており、
前記連続管群の周りに、前記開口部として透過性スリーブ
が配置された請求項1
または2に記載のジオシンセティックス。
【請求項11】
石灰化細菌および反応剤を、開口部をその表面上に備える流動網に担持して、前記反応剤が前記流動網に沿って周辺ジオ材料に運ばれるようなジオシンセティックスを用いて、前記周辺ジオ材料内において微生物学的に炭酸カルシウム沈殿を発生させる方法であって、
前記流動網は、前記反応剤を前記流動網に供給するための一組の流入口と、前記反応剤の少なくとも一部分を前記流動網から排出するための一組の流出口とをさらに備え、
前記石灰化細菌が前記流動網に接続されたカプセルに収容されて、前記石灰化細菌が、前記ジオシンセティックスから前記周辺ジオ材料に増殖するように、あるいは、
伸長可能な繊維が前記石灰化細菌をその表面に担持して、前記石灰化細菌が、前記ジオシンセティックスから前記周辺ジオ材料に増殖するように、
前記ジオシンセティックスの既定の場所に前記
石灰化細菌を導入するステップと、
前記周辺ジオ材料と接触するように前記ジオシンセティックスを配置するステップと、
前記反応剤が前記流動網内で循環して、前記反応剤および前記
石灰化細菌の少なくとも一部が前記ジオシンセティックスから前記ジオ材料に広がって前記ジオ材料において固体炭酸カルシウムを生成するように、前記一組の流入口から前記流動網に前記反応剤を供給するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記一組の流入口を通して追加の細菌を前記流動網に供給するステップをさらに含む請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
固定もしくは変動する間隔で断続的に、または連続的に前記流動網に前記反応剤を供給する請求項1
1または1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記
石灰化細菌が、凍結乾燥細菌細胞、増殖性細菌細胞、細菌胞子、および細菌樹脂コーティングのうちの少なくとも1つである、請求項1
1、1
2または1
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤工学用途のジオシンセティックス(ジオシンセティック要素)に関する。より具体的には、本発明によるジオシンセティックスは、石灰化細菌のための細菌担体および流動網を備える。本発明は、ジオシンセティックスを使用することによってジオ材料における微生物炭酸カルシウム沈殿を誘導する方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
土壌補強方法の概念および実装の背景にある原動力は、一方では、現代の土木工事の基礎の複雑性または土地の安定化の解決に関連する。他方では、インフラの時代として、復旧作業、および技術者が地下を強化することを可能にするツールの実装の必要性が高まっている。さらに、交通機関作業等の大規模なインフラ計画と直面する場合、技術者は、不均質な基質および様々な土壌の種類に遭遇する。これらのうちのいくつかは、必要な耐荷力を提供できず、または、侵食および液状化等の環境上の脅威を受けやすいことから、幅広い強化および安定化の操作が必要である。
【0003】
既存の産業技術によって、石灰化細菌を使用せずに上記課題のいくつかについてある程度取り組むことが可能になる。このような技術は、高圧下(噴射グラウチング、セメントグラウチング、マイクロセメントグラウチング)でポンプにより地面に送り込まれる人工的に製造されたセメント流体の利用に依存するか、またはジオシンセティックの実装に依存する。ジオシンセティック材料は、通常、ポリプロピレンまたは他のポリマー基質から構成され、盛土の施行のためおよび侵食に対する傾斜地または土手の保護のための土壌形成の安定化を目的とする。ジオテキスタイル、ジオグリット、ジオネット、ジオメンブレン、ジオシンセティック粘度ライナー、ジオフォーム、ジオセル、およびジオコンポジットの8つの主要な製品カテゴリーが識別され、全て、様々な用途を対象とし、様々な設置方法で使用される。
【0004】
微生物学的に誘導された炭酸カルシウム沈殿(MICP)は、炭酸カルシウム(CaCO
3)粒子(微生物セメントとも呼ばれる)の土壌マトリクス内の形成および成長をもたらす既知の反応機構である。MICPは、土壌安定性およびその機械的特性の改善に使用され得る。既知の解決では、尿素分解石灰化細菌が、直接、土壌または他の地質学的形成に導入されてきた。浸潤を介する、ポンプおよび抽出ウェルのシステムを介する、または骨材との直接混合を介するMICPの適用が、土壌固めについて知られている。石工の生成のため、防塵制御のため、およびいくつかの建設材料の製造ためにMICPを使用することも知られている。MICPは、微生物誘導尿素加水分解(式1)に基づく自然工程である。この自然反応機構は、いくつかの細菌株に見られるウレアーゼ酵素によって触媒化される。触媒化された尿素加水分解は、非触媒化反応に比べて10
14倍速く完了する。尿素加水分解によって生成された利用可能な重炭酸塩
【化1】
は、塩化カルシウム等のカルシウム源の存在下で、固体炭酸カルシウム結晶(式2)に沈殿する。
【化2】
【0005】
例えば、FR2873725およびFR2911887は、多孔質材料の抵抗力を向上させるための石灰化細菌の一科および脱窒細菌の一科の使用を開示している。これらの文献では、石灰化細菌および反応液を土壌に直接供給することによってMICPを適用するための方法について記載している。また、FR2985746も、資源の節約および設置費用のさらなる削減の手段として、MICP工程の異なるステップを通して水の再循環を導入する。しかしながら、単一の注入ウェルを介して土壌に細菌を直接供給することは、常に最適な解決とは限らず、これは、その供給によって、炭酸カルシウム沈殿が注入源付近に限定され、周辺ジオ材料における石灰化細菌の増殖が不十分であるからである。したがって、より大量の土壌を改善するためには、注入の重供給装備および時間のかかる繰り返しが必要になる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、地盤工学用途におけるMICPの使用に関連する上記に特定した問題の少なくとも一部を克服することを目的とする。
【0007】
本発明の第1の態様によると、請求項1に列挙される、地盤工学用途のためのジオシンセティックスが提供される。
【0008】
提案されたジオシンセティックスの利点のうちのいくつかは、以下の通りである。
●提案されたジオシンセティックスは、例えば、中実の複合メンブレンもしくは格子、拡張可能な繊維のシステム、または既製のドレインとして実装され得る。細菌細胞および循環網を含まないこれらの要素は、地盤工学の分野における多種多様な用途について既知であり、かつ使用されている。提案された新しいジオシンセティックスは、土壌の機械的性能の改善のためのMICPの実装を可能にする手段により、従来の要素と比べて追加の価値を呈する。したがって、本発明によるジオシンセティックスは、産業用途に容易に再現性があり、産業は、同様の種類の製品に既に精通している。
●石灰化細菌および循環網を備えるジオシンセティックスを設計することによって、MICPを制御方式で適用することが可能になる。さらに、ジオシンセティックスにおける細菌細胞の場所は、バイオセメンテーション前またはその最中に工場または設置場所であらかじめ決定され得る。これにより、石灰化細菌の均質な最終分布がもたらされ、最終的には微生物セメントの最終分布がもたらされる。
●提案されたジオシンセティックスの製造工程は、細菌および循環網を含まない既存のジオシンセティックスの製造工程と比べて比較的僅かな調整を必要とする。
●細菌を土壌に直接供給する代わりに、提案されたジオシンセティックスを工場で製造することによって、品質管理試験を容易に実施することが可能になり、設置場所においてMICP工程を監視する必要性が軽減される。これは、経費削減にもつながる。
●循環網がジオシンセティックスの一部であるため、設置場所における任意の掘削ウェルまたは他の広範な掘削配置を有する必要がなくなる。これにより、より柔軟性のあるMICP適用方策がもたらされる。
●ジオシンセティックスが拡張可能な繊維のシステムとして実装される場合、このシステムを、増加含有量の微粒子(シルトおよび粘度等)を含む土壌に載置することによって、反応剤の循環および低圧下でのMICPの誘導のための必要な多孔性が作成される。
【0009】
本発明の第2の態様によると、微生物的に誘導された炭酸カルシウム沈殿をジオ材料に誘導する方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様は、添付の特許請求の範囲に列挙されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例示の実施形態に関する以下の記載により明らかになる。
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態による、斜視図におけるジオメンブレンを概略的に示す。
【
図3】本発明の第2の実施形態による、斜視図におけるジオグリッドを概略的に示す。
【
図4】例示の用途における、斜視図における
図3のジオグリッドを概略的に示す。
【
図5A】本発明の第3の実施形態による、斜視図における拡張可能な超極細繊維のシステムを概略的に示す。
【
図5B】本発明の第3の実施形態による、斜視図における拡張可能な超極細繊維のシステムを概略的に示す。
【
図6A】
図5Aおよび
図5Bの拡張可能な超極細繊維のシステムを土壌に挿入する工程を概略的に示す。
【
図6B】
図5Aおよび
図5Bの拡張可能な超極細繊維のシステムを土壌に挿入する工程を概略的に示す。
【
図6C】
図5Aおよび
図5Bの拡張可能な超極細繊維のシステムを土壌に挿入する工程を概略的に示す。
【
図6D】
図5Aおよび
図5Bの拡張可能な超極細繊維のシステムを土壌に挿入する工程を概略的に示す。
【
図7】本発明の第4の実施形態による、斜視図におけるジオシンセティックドレインを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のいくつかの実施形態について、添付の図面を参照してここで詳細に記載する。異なる図面に現れる同一または対応する機能的および構造的要素に同じ参照番号が割り当てられる。
【0014】
本発明は、様々な種類の土壌、砂、砂礫、および岩等のジオ材料の安定性および/もしくは機械的特性、または地下作業におけるその形成を改善する手段としてのMICPの実装のための、新規のジオシンセティックスおよびその適用方法を説明する。提案された新規のジオシンセティックスは、Sporosarcina Pasteurii等の石灰化細菌細胞を担持するように配置されている、既製の複合格子層、繊維システム、既製のドレイン等を含み得る。提案された新規のジオシンセティックスまたは製品を使用することによるMICP工程の適用によって、尿素分解石灰化細菌の土壌または他の地質学的形成への直接導入(湿潤を介する、ポンプおよび抽出ウェルのシステムを介する、または骨材との直接混合を介する)の代替が提供される。提案されたジオシンセティックスを使用することによるMICP工程の適用は、例えば、ジオ材料の耐荷力を向上させること、傾斜地を安定化すること、ジオ材料を固めること、弱い基礎を修復すること、侵食から土壌を保護すること、および/または液状化に対するその抵抗力を改善することを目的とする。
【0015】
図1および2は、本発明の第1の実施形態によるジオシンセティックス1を概略的に示す。
図1は、概略斜視図であり、一方、
図2は、
図1の線A-Aに沿った部分断面図であるが、線A-Aの全長に沿った断面図を示していない。本実施形態によると、ジオシンセティックス1は、ジオメンブレン1であり、折り畳んだときに筒状を形成し、展開したときにマット型の実質的に平坦な要素を形成し、水平にまたは傾斜面上に据え付けることができる。本例におけるジオメンブレン1は、後に説明する様々な形態において単に細菌とも呼ばれる石灰化細菌細胞を受容または収容するための中空のカプセル、空洞、または担体3の組を備える。本例では、カプセル3は、細菌の担体網を形成するように、複数の実質的に平行な列に配置されている。しかしながら、カプセル3を配置する様々な他の方式が可能である。本例では、カプセル3は、メンブレン1の、上面と呼ばれる本来平坦な第1の表面5から突出するように配置されている。この図示された例では、カプセル3は、メンブレンの上面5のみから突出するが、別の解決では、カプセル3は、メンブレン1の断面幅を完全に横断するように、底面と呼ばれる第2の表面7からも突出し得る。しかしながら、メンブレン1を横断する代わりに、上面5上に第1の組のカプセル3と、底面7上に第2の組のカプセル3が存在してもよい。カプセル3は、透過性、生分解性、もしくは可溶性(水溶性)であり得、または周囲の環境に細菌を分散することを可能にする篩を備え得る。カプセル3は、凍結乾燥(フリーズドライ)細菌細胞、細菌胞子、また増殖性細菌細胞(液体培地中)の据え付けのために設計されている。カプセルが篩または別の同様の要素を備える場合、カプセル3は、残りのメンブレンと同じ複合樹脂材料から作製され得る。
【0016】
ウレアーゼ酵素を含む細菌細胞は、ジオシンセティック担体網における既定の位置にカプセル化される。本例では、カプセル化は、以下に説明する2つのステップで行われる。
(a)細菌培養の成長のおよび凍結乾燥:増殖性細胞は、液体栄養培地において無菌状態下で成長し、所望のバイオマス濃度で採取される。採取することは、液体培養を遠心分離し、上清を除去し、かつペレットを収集することを指す。ペレットは、溶液のイオン強度を固定するように、好ましくは脱イオン水および10%のスクロースまたは任意の追加の要素を含む培地中で再懸濁される。再懸濁後、ペレットを-80°Cで凍らせる。その後、ペレットを凍結乾燥して、フリーズドライ細胞を得る。再懸濁されたペレットは、好ましくは、ジオシンセティックス1におけるカプセルまたはホルダの形状に対応する所望の形状のフリーズドライ細菌培養を最終的に得るために、-80°Cで凍らせる前に既製のホルダに据え付けられる。
(b)フリーズドライ細胞の据え付け:細菌細胞は、設置前にグリッドの既定の位置に、ジオメンブレン1または他の生分解性もしくは水溶性材料と同じ材料から構成されたカプセル3に据え付けられる。カプセル化乾燥細胞の最終の質量および位置は、予測された地盤工学的用途、設置場所におけるジオ材料の種類、ならびに微生物セメントの所望の量に基づいて決定される。
【0017】
メンブレン1は、単に反応剤とも呼ばれる、反応液または反応剤培地、および採用されたMICP方策に応じて任意選択により追加の細菌を循環させるための反応剤循環網または流動網も備える。循環網は、
図2に示すように、メンブレンに埋め込まれ得るか、または代わりにメンブレンの上面5および/または底面7に載置されてもよい。したがって、
図1および2の例では、循環網は、上面5および底面7と実質的に平行に、かつ上面5と底面7との間に通る。さらに、本例では、循環網は、反応剤および任意選択により追加の細菌がカプセル3を通って循環網から周囲の環境に脱出するように、循環網における開口部を通ってカプセル3に連結されている。反応剤がカプセルを通って循環網を脱出するときに、反応剤が同時に細菌細胞を押し流すことに留意されたい。細菌が反応剤に接触すると、微生物セメントが形成されて、ジオシンセティックス1の周辺のジオ材料を安定化させる。
図2に示す例では、循環網は、カプセル3を突き通る。循環網は、導管または管9を含んでもよい。最大断面寸法(例えば、断面が円形である場合は直径)は、1cm~0.1mmであり得る。しかしながら、特定の用途では、最大断面寸法は、より大きく、例えば最大10cmであってもよい。
【0018】
メンブレンは、循環網について流入口11の組および流出口13の組をさらに備える。
図1の例では、流入口11が1つだけ示され、流出口13が3つ示される。反応剤および任意選択により追加の細菌が、流入口11の組を通って循環網に導入される一方で、反応剤の少なくとも一部分が、必要に応じて再利用されるように、流出口13の組を通って循環網を出るように配置されている。流入口11の組は、循環網の第1の端点にある一方で、流出口13の組は、循環網の第2の異なる端点にある。循環網は、メンブレンをジオ材料内またはジオ材料上に載置する前または後に部分的または実質的に完全に反応剤で充填されてもよい。埋め込み流動網における反応液の循環によって、カプセル3から周辺ジオ材料へ細胞が拡散される。MICP工程の設計に基づくと、増殖性石灰化細胞を含む反応剤培地の追加の体積を循環網にさらに供給することが可能である。反応剤は、水中に溶解尿素および/もしくは溶解カルシウムの組み合わせを、または塩化アンモニウム等の他の要素を含み得る。例えば、反応剤は、塩化カルシウムおよび尿素の等モル濃度を含み得る。循環網は、循環網を通る連続流動によって反応剤で充填され得る。代替として、反応剤の循環は、循環網5を通る固定または変動する間隔の回分流動を介して発生する。反応剤流動方向が、メンブレン1の連続隣接層の間で、または単一層内の管5の連続列の間で異なることも可能である。さらに、作動中の流入口および/または流出口の数を選択および動的に変動させることが可能である。埋め込み網を通って適用される精密な流動体制は、所望のMICP方策に基づいて選ばれる。反応液およびその流動構成に関する上記記載が以下に説明する実施形態にも適用することに留意されたい。
【0019】
図3は、本発明の第2の実施形態を概略的に示す。本例では、ジオシンセティックス1は、第1の実施形態のメンブレンと同様に巻回および巻戻しすることができるジオグリッドまたは格子である。ジオグリッド1は、ロッド15または管の組を備え、これらは、本例では、互いに実質的に平行に配置されている。ロッド15は、樹脂複合体であってもよく、ロッドの全てまたはいくつかだけが、細菌を担持するように、かつ反応剤がロッド15を通過することが可能になるように中空である。言い換えると、ロッド15は、細菌および反応剤の両方を受容するように配置されている。ロッドは、追加の構造的完全性も土壌に提供する。ロッド15のうちのいくつかは、ジオグリッド1の強度を向上させるように、中実かつ非中空であってもよい。ロッド15の第1の端部は、流入口11を形成し得、一方、ロッド15の第2の端部は、流出口13を形成し得る。ロッド15は、開口部、穴、オリフィス、切れ目、またはスリット17をその表面上に備え、細菌細胞および反応液の周囲の環境への拡散を可能にする。開口部17は、ロッドの外周に均一または不均一に、かつロッド15(循環網)に沿って縦方向に分布され得る。開口部のサイズおよび/または位置は、この場合も、MICP工程を適用するために選ばれた方式、および/または環境に依存する。
図3に示すように、ロッド15は、本例では金属または樹脂製繊維である連結要素19で互いに連結されている。これらの繊維は、複合ジオグリッド1の強度および安定性をさらに向上させる。
【0020】
図4は、盛土の施行に使用する場合のジオグリッド1を概略的に示す。この場合、MICP工程が適用されたジオグリッド1は、例えば、液状化リスクを緩和する。盛土は、土壌層21に施工され、その全体の安定性を向上させるためにジオシンセティックスが土壌層間に載置されることが多い。言い換えると、
図3のジオグリッド1は、複数の水平層に載置されてもよく、その垂直間隔は設計に従って決定される。簡素化するため、
図4に示すジオグリッド層は、1つだけである。
図4では、ジオグリッドの先端が盛土の傾斜に従って上方に、次いで安定性の向上のために土壌を封入するように後方に折り畳むことを可能にするために、ジオグリッド1の幅が盛土の幅を超える。ジオグリッド1が土壌層21の間に載置されると、ジオグリッド1に組み込まれた中空ロッド15の網を使用することによって、MICP工程が適用される。盛土は、典型的には、交通機関作業(道路、鉄道等)に建設され、地震帯における液状化危険を受けやすい。MICPの適用によって、核形成および微生物セメント粒子の成長がもたらされ、これらは、液状化を防止するのに必要な粘着を土壌に与える。提案された設計方法の主要な利点は、ロッドまたは管15の網が、盛土の施行中または施工後に複数の代替の方式で作動され得ることである(復旧作業が必要な場合)。例として、同じジオグリッド層の個々のロッド15を、代替として、反応剤の注入および抽出として使用することができる。さらに、所定の個々のジオグリッド層を注入源として使用することができる一方で、その上および下の層が、抽出源としての役割を果たし、その逆も同様である。したがって、この設計方法によって、MICPの適用において柔軟性が提示され、沈殿した微生物セメントの均質性が確実になる。
【0021】
図5Aおよび
図5Bは、本発明の第3の実施形態によるジオシンセティックス1を示す。本実施形態では、ジオシンセティックス1は、拡張可能または伸縮自在の超極細繊維のシステムである。このシステムは、第1の板またはキャップ23と第2の板またはキャップ25との間に載置された樹脂製超極細繊維19の組を、
図5Bに示すようにシステムの伸長状態で備える。これらの2つの板23、25は、互いに分離され得る。
図5Aは、閉鎖または格納状態のシステムを示し、一方、
図5Bは、開放または伸長状態のシステムを示す。本例では、このシステムは、拡張可能な超極細繊維19を備え、これは、後に説明するように掘削を介するMICPの適用のために細菌樹脂でコーティングされ得る。コーティングは、ヒドロゲル樹脂等の溶解可能な細菌樹脂コーティングであり得る。コーティングは、乾燥凍結(フリーズドライ)細菌細胞を含み、コーティングが溶解すると、反応剤と接触する。第1の板23と第2の板25とが分離すると、オージェまたは他の同様の掘削機構の助けにより、繊維が下から上に展開する。超極細繊維19は、追加の完全性をジオ材料に提供するだけでなく、(i)細菌細胞が掘削経路に沿って分布されること、および(ii)増加含有量の微粒子を含む土壌にMICP工程を適用するための掘削中に十分な空間が生み出されることを確実にする。本例では、このシステムは、反応液および任意選択により細菌を受容するための微細管9の網をさらに備え、掘削穴を反応液で充填させることを可能にする。さらに、超極細繊維リング27が、追加の完全性をシステムに追加するために提供され得る。第1および第2の端板23、25は、システムの閉鎖状態で繊維19、管9、およびリング27を収容するように中空である。第1および/または第2の板23、25は、繊維19、管9、および/またはリング27を石灰化細菌で含浸させることができるように、増殖性細菌が多く含まれる溶液も受容し得る。これらの要素が展開するとき、これらの要素が依然として細菌のうちの少なくとも一部をその表面上に維持し、これらの細菌が反応剤と接触するとき、微生物セメントが形成される。
【0022】
図6Aから
図6Dは、MICPを対象の深さで誘導するためのシステムの掘削と下から上への展開を介して、伸長可能な樹脂製超極細繊維1のシステムを土壌に適用する工程を示す。本例における掘削は、分離可能な板23、25を組み込むように修正された先端を有するオージェ29によって実行される。2つの板23、25は、オージェの先端で保護される。所望の深さに到達すると(
図6A)、オージェ29は、上方に移動し(
図6Bおよび
図6C)、固定ロッド31は、第1の板(底板)2
5を所望の深さに固定させるために伸長または延伸し、一方、第2の板(上板)2
3は、オージェの先端に続いて上方に移動する。展開すると、超極細繊維19は、周辺ジオ材料と混合される。
図6Cおよび
図6Dにおける破線は、システムに組み込まれた繊維19の全長が、所望の深さ、ジオ材料の種類、および/または想定の適用の性質によって決定されることを示す。超極細繊維1のシステムが十分に展開すると(
図6D)、上側板2
3は、回収および再利用され得る。底
板2
5を固定するために使用したロッド31は、MICPを超極細繊維19付近に誘導するための反応液の循環のための導管をさらに備え得る。この目的のため、導管およびロッド31は、反応剤が導管およびロッド31から脱出することを可能にするように、その表面上に開口部を備える。微細管19も、反応液の循環および散布のために使用され得る。この種類の適用の利点は、掘削中に細菌細胞を土壌に載置する(例えば、樹脂コーティングを繊維19上に有することによって、および/または含浸手法によって)ことができ、その存在によって、掘削経路に沿った微生物セメントの沈殿が確実になることである。さらに、超極細繊維システム1の掘削および設置中に空間が生み出される。これにより、増加含有量の微粒子を含む土壌へのMICPの適用を拡張することが可能になる。
【0023】
図7は、本発明の第4の実施形態によるジオシンセティックス1を示す。本実施形態では、ジオシンセティックス1は、ジオ材料に載置することができる既製のドレインである。
図7では、ドレイン1の端部が1つだけ示される。これらのドレイン1は、何メートルもの長さであってもよい。所定の数のドレインが、典型的には、所定の範囲内に実質的に垂直に載置され、この場合、数は、例えば、土壌組成に依存する。図面で分かるように、ドレイン1は、本例では透過性である外側布33またはスリーブによって囲まれた微細管9の組を備える。本例では、微細管は、長方形の断面を有する。しかしながら、円形等の他の形状が同等に可能であり得る。水または他の反応剤培地は、水を表面から地下の土壌形成に導くために微細管9の組および/または外側布33を突き通るように配置されている。微細管9は、石灰化細菌を受容および保持するように配置され、反応液を循環させるためにも使用される。その外周上の開口部によって、細菌および反応液を周囲の環境に拡散することが可能になる。したがって、微細管9は、カプセル化担体およびその後の反応剤循環網を形成する。ドレイン1は、例えば管9の隣に通ってドレイン1の強度を向上させるための中実ロッド(中空であってもなくてもよい)も備えてもよい。
【0024】
上に説明した通り、
図1から3は、埋め込み循環網およびジオ材料への直接適用のための細菌カプセル化の既定の位置を提供することにより、ジオシンセティックス1の複合層の新しい設計を示す。
図4aおよび4bは、伸長可能な超極細繊維1のシステムの新しい設計を示し、一方、
図7は、既製のドレイン1の新しい設計を示す。これら全ての設計において、ジオシンセティックス1は、いくつかの(他の)構造要素に加えて、細菌(少なくとも反応剤の循環前)および循環網を備える。このような設計の利点は、循環網および石灰化細胞の既定の位置へのカプセル3または担体の組み込みである。これにより、設置場所への据え付け時に、石灰化バイオマスの均質な分布が確実になる。細菌細胞は、固定の注入源から長い距離を進む必要がなく、これは、例えば複合体におけるカプセル化によりその位置があらかじめ決定されるからである。上述のように、カプセル3は、可溶性もしくは生分解性であってもよく、または残りのジオシンセティックス1と同じ複合材料から作製されるが、例えば、細菌細胞の周囲の環境への均質散布を可能にするように篩を備える。微細管9の網またはロッド15は、MICPを直接適用するために使用され、複合層とジオ材料との間の接着の向上、周辺の体積の全体の強度および剛性の向上を対象にする。本発明の別の利点は、提案されたジオシンセティックス1が軽量であり、容易に運ぶことができ、設置場所で巻戻しまたは展開することができることである。さらに、同様の製品、ただしカプセル化された石灰化細菌の提供または流動網の提供のない製品が、従来のジオシンセティック用途に製造および使用される。したがって、その加工および設置に関する確立されたノウハウが存在し、土壌の層の間の据え付けによって、または掘削および/もしくは混合を介する穴の内部直接適用によってのいずれかで行われる。
【0025】
本発明について図面および前述の記載において詳細に図示および記載されたが、このような図面および記載が、例証的または例示的であり、制限的ではないと考えられるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。他の実施形態および変形例が理解され、図面、開示、および添付の請求項の研究に基づいて、請求された発明を実行するときに当業者によって達成され得る。さらなる実施形態を得るために異なる実施形態の教示を組み合わせてもよい。例えば、第1の実施形態と関連して説明した説明された反応剤流動工程を他の実施形態にも適用してもよい。本発明のさらなる変形例を、例えば、連続的な底面および上面を除去することによって、第1の実施形態から容易に入手してもよい。本変形例によると、循環網は、周辺ジオ材料に直接露出され得る。循環網を配置する方式(例えば、循環網の管が相互に通る間隔および角度)は、得られたジオシンセティックマトリクスまたは格子の外観を画定する。得られたマトリクスは、相互連結された三角形(または長方形または他の形状)の組み合わせの外観でもよく、この場合、三角形の縁は、循環網の管によって形成され、三角形の縁内の範囲は、マトリクスが設置されると、空であるか、またはジオ材料に占拠され得る。
【0026】
特許請求の範囲において、単語の「備える」は、他の要素またはステップを除外せず、名詞は、複数であることを除外しない。相互に異なる独立請求において異なる特徴が列挙されるという単なる事実が、これらの特徴の組み合わせを有利に使用することができないことを示唆しない。