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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】足ひれ
(51)【国際特許分類】
   A63B 31/11 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A63B31/11
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020013310
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021118820
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391042128
【氏名又は名称】鬼怒川パシフィック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100073483
【弁理士】
【氏名又は名称】八鍬 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100164286
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚隆
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-31240(JP,B1)
【文献】実開昭50-52697(JP,U)
【文献】実開昭57-32056(JP,U)
【文献】特開平6-233835(JP,A)
【文献】特開平9-192263(JP,A)
【文献】特開昭61-24892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の足に装着され、前記使用者の遊泳の際の推進方向の前方から後方に向けて流体を流す表裏貫通した貫通孔が設けられた足ひれであって、
前記足ひれの裏面を上向きにした場合の前記貫通孔の底面に設けられた突起部であり、前記貫通孔の内側に端部が位置し、当該端部から前記後方の方向に延びるように設けられた突起部を有することを特徴とする足ひれ。
【請求項2】
前記突起部は、前記後方になるにつれて厚みが増す形状を有していることを特徴とする、請求項1に記載の足ひれ。
【請求項3】
前記突起部は、前記足ひれの左右方向に複数並んで設けられており、前記左右方向の外側に位置する突起部の後方終端は、内側に位置する突起部の後方終端よりも、後方に位置することを特徴とする、請求項1または2に記載の足ひれ。
【請求項4】
前記突起部は、前記足ひれの本体部と離間分離しない一体物となっていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の足ひれ。
【請求項5】
前記突起部は、前記足ひれの本体部に着脱可能に設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の足ひれ。
【請求項6】
前記足ひれの左右方向における前記突起部の幅の寸法長さは、前記突起部の最も厚くなっている厚みの寸法長さよりも長いことを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の足ひれ。
【請求項7】
前記突起部は、前記貫通孔の前記後方の側の開口部から突出していることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の足ひれ。
【請求項8】
使用者の足に装着され、前記使用者の遊泳の際の推進方向の前方から後方に向けて流体を流す表裏貫通した貫通孔が設けられた足ひれであって、
前記足ひれの裏面を上向きにした場合の前記貫通孔の底面と同一面上に設けられた突起部であり、前記貫通孔の前記後方の側の開口部から規定長さ分後方までの間に端部が位置し、当該端部から前記後方の方向に延びるように設けられた突起部を有することを特徴とする足ひれ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊泳の際に用いられる足ひれに関する。
【背景技術】
【0002】
シュノーケリング、スキューバダイビング、水中作業などにおいて、遊泳者は、推進力を得るために足ひれを装着する。
【0003】
このような足ひれには、更なる推進力を得るために、表裏を貫通する孔(以下、ジェットホールと称する)が設けられているものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3183529号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水や空気などの流体は、物体の表面に接すると、引き寄せられて張り付く性質を有しており、この性質をコアンダ効果と称する。物体が滑らかな形状となっている場合、流体は、コアンダ効果により当該物体に張り付いて滑らかな形状に沿って流れる。
【0006】
以下、コアンダ効果に基づきジェットホールに流体を取り込む従来構成の足ひれについて説明する。図8は、従来の足ひれの斜視図であり、足ひれを装着した使用者が水中または陸上などを歩行する際に視認可能な面を示したものである。この面を、ここでは「オモテ面」(表面)と称する。また図9は、図8に示す足ひれ100Aの反対面(ここでは「裏面」と称する)を示す斜視図であり、図10は、図9に示した裏面を上側とした姿勢での足ひれ100Aの断面図である。また各図面に示されるX軸、Y軸、Z軸の方向は共通であり、バタ足などで遊泳する場合の推進方向を基準に、「前方」および「後方」を表記している。また必要に応じて、左右方向、上下方向も各図面に表記している。
【0007】
図8に示す足ひれ100Aの姿勢において、使用者は、足嵌め部50の開口部であるフットポケット50Aにつま先を挿入し、固定部50Bに取り付けられた不図示のストラップの長さを、自らの足首のサイズに合うように調整する。これにより、使用者は足ひれ100Aを装着する。
【0008】
足ひれ100Aを装着した使用者がバタ足などで遊泳する場合、通常、使用者(=遊泳者)の腹が下側となり、背が上側となる姿勢で遊泳する。このような使用者の姿勢を、ここでは「遊泳姿勢」と称する。使用者が遊泳姿勢となっている場合、足ひれ100Aは、図9図10に示すように、裏面が上側(上面)となり、オモテ面が下側(下面)となる。
【0009】
足ひれ100Aには、図10に示すように、水掻き部であるブレード60と足嵌め部50とを仕切るように、足ひれ100Aのオモテ面から裏面に至るまで貫通した孔であるジェットホール10が設けられている。尚、ここで例示しているジェットホール10は、図8図9に示すように、キール11により左右方向(X軸方向)において3つのパートに仕切られているが、態様はこれに限定されない。
【0010】
ジェットホール10は、オモテ面60A側の開口部10Aの方が、裏面60B側の開口部10Bよりも推進方向において前方となるように設けられている。オモテ面60A側の開口部10Aは、前方に位置する足嵌め部50の方を向くように開口しており、裏面60B側の開口部10Bは、後方に位置するブレード60の方を向くように開口している。
【0011】
このような構成を有するジェットホール10を設ける利点について、図11を参照しつつ説明する。
【0012】
使用者が足ひれ10Aを装着してバタ足などで遊泳する際、ブレード60の水中内での上下移動に伴い、裏面の60Bで乱流(カルマン渦)が発生する。そのため、バタ足により下方向に強く足を動かす動作(以下、「キック動作」と称する)により、ブレード60の裏面60B(ブレード上面)の上部が負圧となるため、乱流は、負圧側に引き寄せられてブレード60の裏面60Bの上部に留まる傾向となる。このように、乱流が発生してこれがブレード60付近に留まると、推進力が減衰する。
【0013】
この推進力の減衰を緩和するため、足ひれ100Aには、ブレード面を表裏貫通する孔であるジェットホール10が設けられている。ジェットホール10は、バタ足によるキック動作の際、周囲の水を開口部10Aから取り込んで孔内に巻き込む。これにより、オモテ面60Aから裏面60Bに向かってのジェット水流が発生する。このジェット水流が、コアンダ効果により裏面60B側に留まっている乱流を後方側に押し流して除去することで、乱流の影響を低減させ、推進力の減衰を緩和させることができる。
【0014】
しかしながら、従来の足ひれ100Aの構成では、ジェットホール10に巻き込まれた水が開口部10Bから排出する直後に拡散するため、コアンダ効果が減衰して物体表面から剥離し、乱流を効率的に後方に押し流すことができない。
【0015】
そこで本発明は、上記した従来技術の課題を解決するため、足ひれを用いて遊泳する際の推進力を増進させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本発明に係る足ひれは、使用者の足に装着され、使用者の遊泳の際の推進方向の前方から後方に向けて流体を流す表裏貫通した貫通孔が設けられた足ひれであって、足ひれの裏面を上向きにした場合の貫通孔の底面に設けられた突起部であり、貫通孔の内側に端部が位置し、当該端部から後方の方向に延びるように設けられた突起部を有することを特徴とする。
また上記の突起部は、後方になるにつれて厚みが増す形状を有していることを特徴とする。
上記の突起部は、足ひれの左右方向に複数並んで設けられており、左右方向の外側に位置する突起部の後方終端は、内側に位置する突起部の後方終端よりも、後方に位置することを特徴とする。
また上記の突起部は、足ひれの本体部と離間分離しない一体物となっていることを特徴とするが、上記の突起部は、足ひれの本体部に着脱可能に設けられていることを特徴としてもよい。
上記の足ひれにおいて、足ひれの左右方向における突起部の幅の寸法長さは、突起部の最も厚くなっている厚みの寸法長さよりも長いことを特徴とする。
上記の突起部は、貫通孔の後方の側の開口部から突出していることを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明に係る足ひれは、使用者の足に装着され、使用者の遊泳の際の推進方向の前方から後方に向けて流体を流す表裏貫通した貫通孔が設けられた足ひれであって、足ひれの裏面を上向きにした場合の貫通孔の底面と同一面上に設けられた突起部であり、貫通孔の後方の側の開口部から規定長さ分後方までの間に端部が位置し、当該端部から後方の方向に延びるように設けられた突起部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、足ひれを用いて遊泳する際の推進力を増進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の足ひれの裏面を例示する斜視図である。
図2】実施形態の足ひれの断面を例示する斜視図である。
図3】実施形態の足ひれのオモテ面を例示する平面図である。
図4図3のA-A’断面を例示する図である。
図5】突起部の第1のバリエーションを例示する図である。
図6】突起部の第2のバリエーションを例示する図である。
図7】ジェットホールの後方外側に突起部を設けた場合の断面図である。
図8】足ひれのオモテ面を例示する斜視図である。
図9】従来の足ひれの裏面を例示する斜視図である。
図10】従来の足ひれの断面図である。
図11】ジェットホールを設けることの利点を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態の構成について図面を参照しつつ説明する。尚、上記の図8図11で説明した各部位と同様の機能を有する部位については、同じ符号を用い、説明を省略する場合がある。
【0020】
また、上記の図8図11と同様に、以降で説明する各図面についても、X軸、Y軸、Z軸の方向は共通であり、「前方」、「後方」の表記は、バタ足などで遊泳する場合の推進方向を基準にしている。また必要に応じて、左右方向、上下方向も各図面に表記している。
【0021】
図1は、本実施形態の足ひれ100の裏面を例示する斜視図であり、上記で説明した図9に対応している。また図2は、本実施形態の足ひれ100の断面を例示する斜視図であり、図3は、足ひれ100のオモテ面を例示する平面図である。図4は、図3のA-A’断面を例示する図であり、上記で説明した図10に対応している。
【0022】
足ひれ100は、使用者の遊泳の際に、推進力を増加させるために使用者の足に装着されるものであり、本実施形態では、ゴムまたは樹脂による素材で構成される。
【0023】
足ひれ100には、当該足ひれ100の表裏を貫通した貫通孔であるジェットホール10が設けられている。尚、本実施形態において、ジェットホール10は、キール11により左右方向(X軸方向)において3つのパートに仕切られているが、仕切りの有無や仕切りの数などについては特に限定されない。
【0024】
ジェットホール10は、オモテ面60Aの側に設けられる開口部10Aと、裏面60Bの側に設けられ、開口部10Aよりも推進方向の後方に位置する開口部10Bとを有している(図4参照)。ジェットホール10は、バタ足によるキック動作が行われると、開口部10A(以下、「前方開口部10A」とする)から取り込んだ水を開口部10B(以下、「後方開口部10B」とする)から排出する。これによりジェットホール10は、推進方向の前方から後方に向けたジェット水流を発生させることができる。
【0025】
ここで、ジェットホール10の各開口部について定義付ける。図4の姿勢において、端部P1から真上方向に垂直線を引いた場合の当該垂直線を含む流路断面およびその周囲を、ここでは前方開口部10Aとする。また、図4に示す端部P2から裏面60Bに向けて垂線を引いた場合の当該垂線を含む流路断面およびその周囲を、ここでは後方開口部10Bとする。尚、このように本実施形態では前方開口部10A、後方開口部10Bを定義付けるが、この態様に限定されない。
【0026】
図1などに示すように、足ひれ100の裏面を上向きにした場合のジェットホール10の内側底面には、突起部12A、12Bが左右方向に並んで設けられている。突起部12A、12Bは、ジェットホール10により形成される流路の方向に沿って設けられている。また突起部12A、12Bは、前方開口部10Aの端部P1(図2もしくは図4参照)から、後方の方向に延びるように設けられている。図1図4に例示する足ひれ100において、突起部12A、12Bは、後方開口部10Bを経由してジェットホール10の外側に突出するまで延設している。
【0027】
また、図2図4に示すように、突起部12A、12Bは、前方の端部P1では厚みが無くジェットホール10を形成する内側面と同一面となっているが、後方になるにつれて滑らかに厚みが増していく形状となっている。このような形状とすることで、ジェットホール10内に取り込まれた水は、コアンダ効果により、突起部12A、12Bの表面、および突起部12A、12Bが設けられているジェットホール底面(ブレード60の裏面60Bの延長面)に張り付いて、滑らかな形状に沿って流れる。また、突起部12A、12Bのそれぞれの側面が加わることから、この分、後方開口部10B付近の張り付き面を大きくすることができる。これにより、流体の張り付きの度合いを増長させることができ、流体が面から剥離しても暫くは散乱せずに直進進行を維持する(コアンダ効果による流体の直進進行を暫く持続させることができる)。
【0028】
また、このような突起部12A、12Bをジェットホール10の出口側の後方開口部10Bに向けて厚くすることで、後方開口部10Bでは、凹凸形状を有する断面となり、元の断面(突起部12A、12Bを設けないとする場合の後方開口部10Bの断面)に比べて面積が小さくなる。よって、流速と断面積との関係から、突起部12A、12Bを設けないとする場合に比べて、ジェットホール10から排出される流体の速度を速めることができ、バタ足などによりブレード60の上面付近に形成される乱流(カルマン渦)を、勢いよく後方に押し流すことができる。また突起部12A、12Bの厚みを、後方になるにつれて滑らかに増す構成とすることで、流体の移動を妨げることなく、滑らかに流体を後方に進行させることができる。
【0029】
尚、本実施形態では、前方開口部10Aの端部P1から突起部12A、12Bを設けているが、態様はこれに限定されず、ジェットホール10の孔内部の途中から突起部12A、12Bを設けてもよい。すなわち、ジェットホール10の内側に前方側の端部が位置し、当該端部から後方の方向に延びるように、突起部12A、12Bを設ければよい。尚、ここでの「ジェットホール10の内側」とは、ジェットホール10の孔の内部はもとより、端部P1、P2も含まれる。
【0030】
また本実施形態では、図1に示すように、左右方向に並んだ3つのジェットホール10のうち、中央のジェットホール10には突起部12A、12Bに相当するものが設けられていないが、態様はこれに限定されず、中央のジェットホール10にも突起部を設けてもよい。
【0031】
図1に示すように、突起部12A、12Bは、ジェットホール10の内側から、後方開口部10Bの後方外側まで突き出すように延設されている。これにより、後方開口部10Bから排出した流体のコアンダ効果を、排出後においてもさらに持続させて散乱を緩和することができる。
【0032】
また図1に示すように、突起部12A、12Bは左右方向に並んで設けられているが、左右方向の外側に位置する突起部12Aの方が、内側に位置する突起部12Bよりも推進方向において長い。換言すると、左右方向の外側に位置する突起部12Aの後方終端は、内側に位置する突起部12Bの後方終端よりも、後方に位置するように設けられている。
【0033】
このように、左右外側に位置する突起部12Aを、後方開口部10Bの遠方まで延設させることで、突起部12Bに比べて、ジェットホール10から排出される流体のコアンダ効果を持続させることができ、流体の後方に方向付けられた直進性を更に持続させることができる。これにより、左右方向の内部側において、早い段階で流体がブレード面から剥離して散乱し始めても、暫くの間はこの散乱を外側から閉じ込めて抑制することができる。
【0034】
尚、外側の突起部12Aのみならず、内側の突起部12Bも後方開口部10Bの遠方まで延設させてもよいが、剛性が増してブレード60のしなり具合が悪くなる可能性もある。よって本実施形態では、内側と外側の突起部それぞれで長さに差をもたせ、外側の突起部12Aのみを長くしている。
【0035】
また、突起部12A、12Bは、各図面に示すように平らな形状となっている。換言すると、突起部12A、12Bの幅寸法の長さ(左右方向における長さ)は、突起部12A、12Bの最も厚くなっている厚みの寸法長さよりも長くなっている。
【0036】
このように、突起部12A、12Bを平らな形状とすることで、突起部12A、12Bを設けたことによる抵抗の度合いを緩和することができる。仮に、ブレード60の面に対して立設していると認められる程度に厚い突起部を設けると、これがジェットホール10内の水流の進行を妨げる壁となってしまい、逆に推進力の低下につながる。本実施形態では、このような懸案を排除するため、突起部12A、12Bを平らな形状とした。
【0037】
本実施形態では、突起部12A、12Bをブレード60の裏面60B側、すなわち図4のように、足ひれ100の裏面を上向きにした場合でのジェットホール10の底面側に設けた。ここで、仮にジェットホール10の内側上面や内側側面に突起部を設けると、ジェットホール10を抜けた直後に、張り付きの対象となる物体表面が無くなるため、流体が剥離してコアンダ効果を維持することができない。よって本実施形態では、突起部12A、12Bを、ブレード60の裏面60Bと連接し同一面を形成しているジェットホール10の底面に設けた。これにより、張り付きの対象となる面がジェットホール10の後方においても延在することとなり、流体は、ジェットホール10を抜けても、コアンダ効果を維持して面に張り付き、後方遠方まで直進性を維持することができる。
【0038】
また本実施形態では、足嵌め部50、ブレード60、ジェットホール10により構成される足ひれ100の本体部と、突起部12A、12Bとを一体物として扱い、足ひれ100を製造する。よって、足ひれ100の本体部と突起部12A、12Bとは、原則的に離間分離することなく一体物となっている。これに対し、ジェットホールを有する足ひれに、突起部12A、12B相当の部材を、接着またはネジ締めなどにより使用者が後付けで取り付け可能とする構成としてもよい。足ひれの中には、漕いでも変形しないゴム製や樹脂製の製品なども存在している。このような足ひれには、突起部を、使用者の都合により別途用意して取り付けたり、取り外したりしてもよい。
【0039】
以下、本実施形態の足ひれ100の他のバリエーションを例示する。
【0040】
図5は第1のバリエーションを例示するものであり、図5(A)に斜視図、図5(B)に断面図を示している。図5に例示する足ひれ100は、上記同様、左右方向に複数の突起部90A、90Bを並べて配置させているが、突起部90A、90Bのいずれも、推進方向(ジェットホール10の流路方向)における長さが同一となるようにしている(図5(A)参照)。図5に示す足ひれ100においては、流体の左右方向内側の散乱を外側から閉じ込める効果については限定的となるが、突起部90A、90Bの全てで同じ形状の部材を用いることができる。よって、突起部を着脱可能にした構成の場合、1つの型で突起部の製造を行うことができる。
【0041】
また図5(B)に示すように、突起部90A、90Bは、ジェットホール10の前方開口部10A(もしくはジェットホール10の孔内部の途中であってもよい)から、後方開口部10Bの手前までの間に設けられており、後方開口部10Bの外側には突出していない。すなわち突起部90A、90Bは、ジェットホール10の内側のみに設けられた構成となっている。このように、ジェットホール10の内側のみに突起部を設けても、突起部を設けない従来構成に比べて、後方に向けたジェット水流の直進性および非拡散性を持たせることができる。
【0042】
図6は第2のバリエーションを例示する図であり、図1に示す突起部12A、12Bよりも、左右方向の幅寸法を長くした突起部91を例示している。図6に示す足ひれ100においても、流体の左右方向内側の散乱を外側から閉じ込める効果については限定的となる。しかしながら、流路方向に対し、幅を設けた突起を設置することから、ジェットホール10から出る水流の圧縮率が上がり水流の速度が上がるため、コアンダ効果の出力を高めることが期待できる。更に、突起部を着脱可能にした構成とする場合、図1に示す構成では計4つの突起部を取り付ける必要があるが、図6の構成では2つですむため、突起部の着脱の手間を低減させることができる。
【0043】
その他にも様々なバリエーションが想定されるが、表裏貫通する貫通孔が設けられた足ひれにおいて、足ひれの裏面を上向きにした場合の貫通孔の底面に突起部を設けられていればよい。また、突起部の端部が貫通孔の内側に位置し、当該端部から後方の方向に延びるように突起部が設けられていればよい。
【0044】
上記で説明した突起部12A、12B、91は、ジェットホール10の流路方向に沿って、後方開口部10Bを挟んでジェットホール10の内側から外側にかけて延設しているが、突起部の後方終端の位置は、これに限定されない。例えば、図5の例のように、ジェットホール10の内側から後方開口部10Bの直前までに突起部90を設けてもよい。すなわち、突起部は、ジェットホール10の内側から後方の方向に延びるように設けられていればよく、後方終端の位置は、ジェットホール10の内側であるか外側であるかを問わない。
【0045】
もしくは、図7の断面図に示すように、突起部をジェットホール10内には設けず、ジェットホール10の後方外側のみに設けてもよい。すなわち、後方開口部10Bから規定長さ(図7に示す長さL)分後方までの間のいずれかの位置に、突起部92の端部を設け、当該端部から後方に延びるように突起部を設けてもよい。ここでの「規定長さL」とは、後方開口部10Bから抜けたジェット水流が、コアンダ効果の影響を受けなくなったと認められるまでの設計長さであり、例えば10cmである。図7の例では、この「規定長さL」の範囲内、換言すると、流体のコアンダ効果による表面張り付きが少なからず行われている範囲内に、突起部が設けられる。
【0046】
図7の例の場合、流体のコアンダ効果による表面張り付きは、後方開口部10Bから抜けた後に一時的に衰退するが、流体が後方に移動して突起部に差し掛かることで、表面張り付きの度合いが増加する。よって図7の例においても、後方に向けたジェット水流の直進性を少なからず維持させることができる。尚、この図7の例においても、足ひれ100の裏面を上向きにした場合のジェットホール10の底面(より正しくは、ジェットホール10の底面と同一面を形成するブレード60の裏面60B)に、突起部92が設けられる。
【0047】
上記で説明した突起部(12A、12B、90、91)は、いずれも後方になるにつれて厚みが増す形状とし、後方の終端が最も厚い寸法となるようにしているが、これに限定されない。途中までは後方になるにつれて厚みが増す形状とし、当該途中からは厚みの変わらない形状(もしくは当該途中からは薄くなる形状)としてもよい。すなわち、突起部は、その全体もしくは一部が、後方になるにつれて厚みが増す形状となっていればよい(後方になるにつれて厚みが増す形状を有していればよい)。
【0048】
本実施形態では、足ひれにおいて、ジェットホールの底面に設けられ、ジェットホールの流路方向に沿って、後方の方向に延びた突起部を有する構成について説明した。このような突起部を設けることで、流体の後方開口部からの排出速度を速め、勢いよく乱流(カルマン渦)を後方に押し出すことができる。
【0049】
本実施形態のような突起部を設けることで、ブレード面に表裏貫通の孔(ジェットホール)を通過する水流の道中、または水流の道中から出口を過ぎた先まで凸状または凹状の形状を有することとなり、コアンダ効果が持続して面から剥離し難くなるため、水流の直進性および非拡散性を持たせることができる。
【0050】
以上、本実施形態により、足ひれを用いて遊泳する際の推進力を増進させることができる。
【0051】
本実施形態は、本発明の技術思考を具体化するための一例を示すものであって、本発明は上記の説明及び図示したものに限定させるものではない。
【符号の説明】
【0052】
10 ジェットホール
10A、10B 開口部
11 キール
12A、12B、90A、90B、91、92 突起部
50 足嵌め部
50A フットポケット
50B 固定部
60 ブレード
60A オモテ面
60B 裏面
100、100A 足ひれ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11