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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ワークの搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/05 20060101AFI20220111BHJP
   B65G 47/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B23Q7/05 Z
B65G47/08 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020080340
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021171901
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2020-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592063397
【氏名又は名称】技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】橋本 功喜
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-144574(JP,U)
【文献】特開平06-271054(JP,A)
【文献】特開平03-249016(JP,A)
【文献】実開平02-148701(JP,U)
【文献】実開昭61-009108(JP,U)
【文献】米国特許第08622196(US,B1)
【文献】特開昭52-029078(JP,A)
【文献】実開昭52-056876(JP,U)
【文献】特開平7-81731(JP,A)
【文献】中国実用新案第208592631(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00 - 7/18
B65G 47/00 - 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な左右一対の回転軸と、該回転軸を互いに逆方向に同一回転数で同期回転させる駆動機構とを備えてなり、前記回転軸は、軸方向に傾け、前記駆動機構を介して回転駆動することにより、双方に共通に係合させて保持するワークを軸方向の傾きに沿って傾斜方向に連続搬送するとともに、双方を同一高さにセットしてロック可能であり、左右に傾けて傾き角度を調節し、互いに異なる高さにセットしてロック可能であることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項2】
前記回転軸上のワークの横振れを規制する左右のガイドを設けることを特徴とする請求項1記載のワークの搬送装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、一方の前記回転軸に連結する駆動モータと、双方の前記回転軸を連結するギヤとを備えることを特徴とする請求項1または請求項記載のワークの搬送装置。
【請求項4】
前記駆動モータ、ギヤは、それぞれ前記回転軸の反対側の軸端に配置することを特徴とする請求項記載のワークの搬送装置。
【請求項5】
前記各回転軸の中間部を支持する支持ローラを設け、前記支持ローラは、前記回転軸上のワークと干渉しないように、前記各回転軸の外周の下内側から上外側に至る約半周に接するように複数個を均等に分散して配置することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか記載のワークの搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばエンジン部品のコンロッド(連接棒(コネクチングロッド)をいう、以下同じ)のような異形のワークを搬送するためのワークの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンロッドの加工ラインにおいて、ワークとしてのコンロッドを搬送するための搬送装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
従来の搬送装置は、左右の固定台の間にワークの搬送通路を溝状に形成し、搬送通路内には、ワークを搬送する左右の昇降可能な搬送バーが固定台上に出没可能に配置されている。また、搬送通路の下方には、偏心軸部を有する駆動軸を設け、搬送バーと駆動軸の偏心軸部との間には、偏心軸部と一体に昇降運動する伝達部材が介装されている。そこで、搬送通路に小端部側を垂下するようにして搬入されるワークは、大端部側を左右の固定台上に係合させてそのままストックし得るとともに、駆動軸を回転駆動することにより伝達部材を介して搬送バーを間欠的に送り動作させ、固定台上のワークを搬送通路に沿って歩進させて、いわゆるウォーキング搬送をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-126580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、ワークは、搬送通路内の搬送バーを介して固定台上を歩進しながら搬送されるから、搬送中に過大な振動や騒音を発生し易い上、ワークを歩進させるために必要な全体部品点数が多く、装置の全体構成が複雑高価になりがちであるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、ワークを保持する左右一対の回転軸を主要部材とすることによって、有害な振動騒音を生じるおそれがなく、全体構成も簡単なワークの搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、互いに平行な左右一対の回転軸と、回転軸を互いに逆方向に同一回転数で同期回転させる駆動機構とを備えてなり、回転軸は、軸方向に傾け、駆動機構を介して回転駆動することにより、双方に共通に係合させて保持するワークを軸方向の傾きに沿って傾斜方向に連続搬送するとともに、双方を同一高さにセットしてロック可能であり、左右に傾けて傾き角度を調節し、互いに異なる高さにセットしてロック可能であることをその要旨とする。
【0008】
なお、回転軸上のワークの横振れを規制する左右のガイドを設けることができる。
【0009】
また、駆動機構は、一方の回転軸に連結する駆動モータと、双方の回転軸を連結するギヤとを備えてもよく、駆動モータ、ギヤは、それぞれ回転軸の反対側の軸端に配置してもよい。
【0010】
さらに、各回転軸の中間部を支持する支持ローラを設け、支持ローラは、回転軸上のワークと干渉しないように、各回転軸の外周の下内側から上外側に至る約半周に接するように複数個を均等に分散して配置してもよい。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、左右一対の回転軸は、回転駆動せずに静止しているとき、双方の回転軸上に共通に係合させて保持するワークをそのままストックすることができる。一方、回転軸は、駆動機構を介して回転駆動すると、回転軸上のワークを軸方向の傾きに沿って傾斜方向に円滑に連続搬送することができる上、搬送中のワークを回転軸上に物理的に停留させれば、いわゆるアキュムレート動作が可能である。さらに、ワークの搬送中に振動騒音を生じることがない上、所要部品点数も少なく、全体構成も簡単である。
【0012】
ワークを搬送中の回転軸の軸方向の傾きは、回転軸とワークとの間の小さな動摩擦係数によっても、ワークが回転軸の外周に沿って不用意に滑落することなく円滑に搬送し得るように、水平面からの傾斜角を適切に設定するものとする。なお、ワークの搬送速度は、主として回転軸の傾斜角と回転数とによって制御され、回転軸の回転方向は、それぞれの外周の上側が互いに遠去かる方向(以下、外回り方向という)にすると、逆方向(以下、内回り方向という)にする場合に比して、搬送中のワークの安定性がよく、より好ましいことが分かっている。ただし、回転軸の回転方向は、実用上の支障がない限り、外回り方向、内回り方向のいずれにしてもよい。
【0013】
回転軸は、左右に傾けることなく双方を同一高さにセットすると、左右対称のワークを正立状態にして安定に保持して搬送することができ、左右に傾けて異なる高さにセットすると、左右非対称のワークに対応させる他、左右対称のワークにも対応させ得る場合があり、ワークの適用可能範囲を拡大することができる。
【0014】
左右のガイドは、搬送中のワークの横振れを規制し、ワークの姿勢の乱れを抑えてワークの搬送を一層安定にすることができる。なお、ガイドは、たとえば左右の回転軸の間に垂下する搬送中のワークの下端部を左右両側から挟むようにして、左右の回転軸と平行に配置することが好ましい。
【0015】
駆動機構は、駆動モータを介して一方の回転軸を回転駆動し、その回転軸によりギヤを介して他方の回転軸を逆方向に回転駆動することにより、左右の回転軸を互いに逆方向に同期回転させることができる。ただし、このときのギヤは、たとえば各回転軸の軸端にそれぞれ装着する2枚1組の同径のギヤを互いに噛み合わせればよい。なお、駆動モータとギヤは、回転軸の反対側の軸端に分散して配置すると、全体をバランスよくコンパクトにまとめることができる。
【0016】
各回転軸の中間部に設ける支持ローラは、回転軸を補強し、回転軸上のワークの許容総重量を大きくすることができる。なお、支持ローラは、回転軸上に保持して搬送するワークと干渉しないように、たとえば各回転軸の外周の下内側から上外側に至る約半周に接するように、複数個を均等に分散して配置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】全体模式斜視図
図2】全体構成模式説明図
図3】要部模式動作説明図(1)
図4】要部模式動作説明図(2)
図5】要部拡大動作説明図
図6】他の実施形態を示す図5(A)相当説明図
図7】動作諸元を示す図表
図8】他の実施形態を示す図5(A)相当図
図9図8のX矢視相当要部模式拡大図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0019】
ワークの搬送装置は、互いに平行な左右一対の回転軸11、11と、回転軸11、11の両端に分散配置して駆動機構20を形成する減速ギヤ21a付きの駆動モータ21、ギヤ22、22とを備えてなる(図1図2)。ただし、図2(A)、(B)は、それぞれ一部破断模式平面図、一部破断模式側面図である。
【0020】
各回転軸11の両端部は、それぞれベアリング12を介して支持されており、回転軸11、11の両端のベアリング12、12…は、それぞれ共通の内外のホルダプレート12a、12bに挟み込むようにして保持されている。一方の回転軸11の一方の軸端は、フレキシブルカップリング21bを介して駆動モータ21と一体の減速ギヤ21aの出力軸に連結されており、回転軸11、11の他方の軸端には、それぞれ互いに噛み合う同径のギヤ22、22が装着されている。なお、ギヤ22、22は、横長のホルダプレート12a、12bと一体の蓋板13a付きのケーシング13に収納されている。
【0021】
駆動モータ21は、たとえば速度制御可能なサーボモータとし、スタッド21c、21c…を介してギヤ22、22と反対側のホルダプレート12bの外面側に固定されている。そこで、駆動モータ21を正逆に回転すると、回転軸11、11を外回り方向(図1の矢印方向)、内回り方向(同図の矢印と反対方向)に同期回転させることができる。
【0022】
各内側のホルダプレート12aの内面側には、幅狭の上部が回転軸11、11の間を下から上に突き抜けるようにしてフレームプレート31が配設されている。各フレームプレート31の下部は、左右に斜めに拡幅され、ベースプレート32上に立設されている。また、フレームプレート31、31の下部は、左右の補強板33、33を介して連結されている。各ホルダプレート12aは、対応するフレームプレート31の中間部の支点ピン34を介して左右に回転自在に支持され、支点ピン34は、左右の回転軸11、11、ベアリング12、12の中間点に配置されている。
【0023】
両側のホルダプレート12a、12aは、左右の連結板14、14を介して連結されている。各連結板14は、補強板33と同様の帯板材であり、両端をホルダプレート12a、12aの各短辺上の凹部14aにそれぞれ嵌め込むようにしてねじ止めされている。ただし、各連結板14は、図1において、一点鎖線により略示されており、図2において、図示が省略されている。補強板33、33、連結板14、14は、いずれも回転軸11、11と平行である。
【0024】
各外側のホルダプレート12bの上下の長辺の片側約半分には、それぞれ上向き、下向きの規制片12c、12cが一体に形成されている(図1図3)。ただし、図3(A)、(B)は、それぞれ図1のX、Y矢視相当模式図であり、図3(A)では、ケーシング13の蓋板13aを取り外して図示されており、同図(B)では、ホルダプレート12a、12a用の連結板14、14が断面表示されている。
【0025】
各フレームプレート31には、上下の外向きのサポート35a、35aを介し、横向きのセットボルト35、35が付設されている。セットボルト35、35は、それぞれ回転軸11、11、ホルダプレート12a、12bの上下に位置し、各セットボルト35の頭部は、対応する規制片12cの頂部に外向きにねじ止めする短い円柱状のストッパ35bに対向している。
【0026】
そこで、回転軸11、11は、各フレームプレート31上の上下のセットボルト35、35の頭部を対応する規制片12c、12c上のストッパ35b、35bに当接させてホルダプレート12a、12bを水平に固定することにより同一高さにセットすることができる。また、このとき、各フレームプレート31の内面側において支点ピン34の上下に設けるセットねじ36、36を締め付けることにより、回転軸11、11の高さをロックすることができる。ただし、各セットねじ36は、フレームプレート31に形成する円弧状のガイド孔36aを貫通してホルダプレート12aにねじ込まれている。
【0027】
各フレームプレート31上の上下のセットボルト35、35の一方の長さを調節して対応するストッパ35bに頭部を当接させると(図4)、各ホルダプレート12a、12bを介して回転軸11、11を左右に傾け、回転軸11、11を互いに異なる高さにセットすることができる。ただし、図4(A)、(B)は、それぞれ上のセットボルト35、ストッパ35bを使用することによりギヤ22、22側から見て回転軸11、11を右に傾けたときの図3(A)、(B)相当図である。なお、このとき、フレームプレート31上の上下のセットねじ36、36は、上下のガイド孔36a、36a内の位置を変えて再締付けするものとする。また、図4において、上のセットボルト35、ストッパ35bを使用するに代えて、下のセットボルト35、ストッパ35bを使用すれば、回転軸11、11を逆方向に傾けることができる。
【0028】
かかるワークの搬送装置は、たとえば図1図2において、ギヤ22、22側を高く、駆動モータ21側を低くして回転軸11、11を軸方向に傾けて設置し、コンロッドのワークWのストック、搬送に使用することができる。以下、説明する。
【0029】
まず、左右の回転軸11、11を同一高さにセットして回転駆動せずに静止させると(図5)、複数のワークW、W…を回転軸11、11上に順次搬入してストックすることができる。ただし、図5(A)、(B)は、それぞれ要部拡大模式縦断面図、要部拡大模式側面図であり、図5(B)において、回転軸11、補強板33は、左から右に向けて下向きに傾いているものとする。
【0030】
回転軸11、11上の各ワークWは、ピストンに連結する小径孔Wa 側の小端部を回転軸11、11の間に垂下させ、キャップWc を介してクランク軸に連結する大径孔Wb 側の大端部を回転軸11、11に掛けるようにして共通に係合させると、回転軸11、11との間の静摩擦力により静止中の回転軸11、11上に安定に保持してストックすることができる。ただし、図5のワークWは、左右対称であり、小径孔Wa は、左右の補強板33、33の間に位置している。
【0031】
そこで、駆動モータ21を起動して回転軸11、11をたとえば外回り方向(図1の矢印方向)に同期回転させると、回転軸11、11上の各ワークWは、回転軸11、11の軸方向の傾きに沿って回転軸11、11の傾斜方向に連続的に搬送することができる(図5(B)の矢印K方向)。また、このとき、ワークWの小径孔Wa の両側の補強板33、33は、ワークWの横振れを規制する左右のガイドとして作用する。
【0032】
一方、ワークWとしてのコンロッドが左右非対称のときは、回転軸11、11を左右に傾けて互いに異なる高さにセットすることにより(図6(A))、ワークWの小端部を補強板33、33の間に正しく垂下させて対応することができる。ただし、左右対称のワークWであっても、実用上の支障がない限り、回転軸11、11の高さを異ならせて対応させてもよい(図6(B))。
【0033】
また、回転軸11、11の軸方向の傾きとして、駆動モータ21側を高く、ギヤ22、22側を低くすれば、回転軸11、11上のワークWをギヤ22、22に向けて搬送することができる。なお、ワークの搬送装置の動作諸元の一例をまとめると、たとえば図7のとおりである。
【他の実施の形態】
【0034】
各回転軸11の中間部には、補強用の支持ローラ41、41…を配設することができる(図8図9)。各組の支持ローラ41、41…は、ホルダプレート12a、12a用の連結板14に付設するブラケット42の両面において、対応する各回転軸11の下内側から上外側にかけて回転軸11の外周にほぼ均等に接するように複数個を配列することにより、回転軸11、11上のワークWと干渉することなく、回転中の回転軸11を有効に補強することができる。
【0035】
以上の説明において、駆動モータ21、ギヤ22、22は、回転軸11、11の両端に分散して配置するに代えて、たとえば図1において、ギヤ22、22用のケーシング13の側面または蓋板13a側の外面に駆動モータ21を搭載することにより、回転軸11、11の同一端側に集約して配置してもよい。なお、このときの駆動モータ21は、回転軸11に直結してもよく、ギヤ、チェーン、ベルトなどの伝動部材を介して回転軸11に連結してもよい。
【0036】
また、この発明において、ワークWは、回転軸11、11上に保持して円滑に搬送し得る限り、コンロッド以外の物品であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、振動騒音を発生することがない上、所要部品点数も少なく、全体としてコンパクトにまとめることができるから、コンロッドを含む任意のワークの加工ライン等において、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
W…ワーク
11…回転軸
20…駆動機構
21…駆動モータ
22…ギヤ
41…支持ローラ

特許出願人 技研株式会社
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9