(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】RFタグアンテナ、RFタグおよび導電体付きRFタグ
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/16 20060101AFI20220111BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20220111BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01Q9/16
H01Q1/38
G06K19/077 252
(21)【出願番号】P 2020521215
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2019019826
(87)【国際公開番号】W WO2019225526
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018100017
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-312923(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172349(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/114821(WO,A1)
【文献】特開2002-151944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01Q 1/00- 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップを取り付けるRFタグアンテナであって、
第1面、前記第1面に対向して形成された第2面、前記第1面および前記第2面との間に厚みを有する絶縁基材と、
前記第1面に設けられた平板状からなるアンテナ部と、
前記第2面に設けられ前記アンテナ部と対向して配置された平板状からなるグランド部と、
前記アンテナ部および前記グランド部の間を電気的に短絡するよう設けられた短絡部と、
前記第1面に設けられ前記ICチップに給電するよう構成された給電部と、を含み、
前記アンテナ部は、それぞれ直交する方向に長く配置された第1アンテナ部および第2アンテナ部を含み、
前記グランド部は、それぞれ直交する方向に長く配置された第1グランド部および第2グランド部を含む、
前記アンテナ部と前記短絡部との間に切欠部が形成され、前記切欠部内に前記給電部が形成されている、RFタグアンテナ。
【請求項2】
少なくとも前記短絡部および前記給電部により構成されるインダクタパターン部と、
少なくとも前記アンテナ部、前記グランド部および前記絶縁基材により構成されるコンデンサ部と、により、読取装置から送信された電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される、請求項1に記載のRFタグアンテナ。
【請求項3】
前記絶縁基材は第1絶縁基材と第2絶縁基材とを有するL字状に形成され、
前記第1絶縁基材および前記第2絶縁基材の前記第1面に、L字状に形成された前記アンテナ部の前記第1アンテナ部および前記第2アンテナ部がそれぞれ設けられ、
前記第1絶縁基材および前記第2絶縁基材の前記第2面に、L字状に形成された前記グランド部の前記第1グランド部および前記第2グランド部がそれぞれ設けられ、
前記絶縁基材の角部の側面に前記短絡部が設けられている、請求項1または2に記載のRFタグアンテナ。
【請求項4】
前記給電部は、前記短絡部に接続された第1給電部および第2給電部を有し、前記第1給電部および前記第2給電部は、前記第1給電部および前記第2給電部間に前記ICチップを接続するよう構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項5】
前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部との間にスリットが形成され、前記スリットが前記切欠部と連通している、請求項1から
4のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項6】
前記短絡部と前記第1給電部および前記第2給電部との間に、設定の内部面積を有する空間領域が形成されている、請求項1から
5のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項7】
前記アンテナ部および前記グランド部は、平面視でX字状に形成された平板状の導電部材を折り曲げ、前記導電部材の隣接する一方の導電素体を前記絶縁基材の前記第1面に設け、前記導電部材の隣接する他方の導電素体を前記絶縁基材の前記第2面に設けることにより構成されている、請求項1から
6のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項8】
前記第1アンテナ部および前記第2アンテナ部は矩形状の板状導電部材から形成され、前記第1グランド部および前記第2グランド部は矩形状の板状導電部材から形成されている、請求項1から
7のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項9】
前記絶縁基材は、誘電体からなる、請求項1から
8のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項10】
前記絶縁基材は、発泡スチロールからなる、請求項1から
8のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項11】
前記絶縁基材は、前記第1面側における誘電率と、前記第2面側における誘電率とが互いに異なる、請求項1から
10のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項12】
前記絶縁基材は、前記第1面側から前記第2面側に向けて縮径する同径または異径の1または複数の穴が形成された、請求項1から
11のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項13】
前記絶縁基材は、前記第1面側における誘電率が前記第2面側における誘電率よりも小さくなるよう形成された、請求項1から
12のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項14】
前記絶縁基材は、前記第1面側に発泡スチロールの層を形成し、前記第2面側に誘電率の高い層を形成した、請求項1から
13のいずれか1項に記載のRFタグアンテナ。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか1項に記載のRFタグアンテナと、
前記RFタグアンテナに設けられたICチップと、を含むRFタグ。
【請求項16】
請求項1から
14のいずれか
1項に記載のRFタグアンテナと、
前記RFタグアンテナに設けられたICチップと、
前記RFタグアンテナのグランド部と、直接電気的にあるいは容量を介して接続された導電体と、を含む、導電体付きRFタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグアンテナ、RFタグおよび導電体付きRFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品や部品等の在庫管理、物流管理等を行う管理システムにおいて、RFID(Radio Frequency Identification)技術が利用されている。このRFID技術を用いたシステムでは、RFタグとリーダライタ(以下、読取装置という。)との間で無線通信が行われ、RFタグに記憶される識別情報等が読取装置により読み取られる。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2012-253700号公報)には、放射導体やグランド導体の取付けを容易なものとし、導体間の接続信頼性の向上を図る無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品について開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の無線通信デバイスは、第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と放射導体及びグランド導体とを接続する給電導体と、放射導体とグランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイスであって、少なくとも放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体は、それぞれ平板状をなす金属導体として構成されており、金属導体は、放射導体部分が誘電体ブロックの第1主面に配置され、グランド導体部分が誘電体ブロックの第2主面に配置され、給電端子部分が主として誘電体ブロックの側面に配置され、短絡導体部分が主として誘電体ブロックの側面に配置されているものである。
【0005】
特許文献2(特開2007-124696号公報)には、UWB(Ultra Wide Band)技術を利用したBroadband-PAN(Personal Area Network)などの、超広帯域かつ小型なアンテナ装置が必要とされる通信システムにおいても利用可能な低背位化した広帯域アンテナ装置について開示されている。
【0006】
特許文献2に記載の広帯域アンテナ装置においては、少なくともその一部が互いに対向するように配設された導体地板と放射導体板とを備えた広帯域アンテナ装置であって、前記導体地板と前記放射導体板との間に、使用無線周波数における比透磁率が1より大きく概ね8以下となる磁性体を介在させるものである。
【0007】
特許文献3(特開2013-110685公報)には、UHF帯の電波で用いられ、金属部材に取り付けられていても通信を良好に行うことができるRFIDタグの読み取り用の薄型アンテナについて開示されている。
【0008】
特許文献3に記載の薄型アンテナタイヤは、磁性シートと、磁性シートの一方の面上に配置されたアンテナ部と、磁性シートの他方の面上に配置された導体地板と、を備え、磁性シートの厚さ方向に見たときに、アンテナ部および導体地板は少なくとも一部が重なるように配置され、磁性シートの厚さが200μm以上600μm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-253700号公報
【文献】特開2007-124696号公報
【文献】特開2013-110685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行文献1には、逆F型のRFタグアンテナについて開示されている。しかしながら、誘電体を用いても長距離の読取を行うことができないという問題がある。
【0011】
また、特許文献2および3においては、同軸線路またはストリップ線路を用いて給電するなど構造が複雑なため、製造コストが嵩むという問題、さらには、用途に応じて共振周波数を調節することが難しいという問題があった。
また、RFタグを導体に近づけると共振周波数がずれてしまい通信に支障が出るという問題、またはRFタグ設置面の裏面に電波を照射した場合には通信できないという問題もあった。
【0012】
さらに、特許文献1においては、無線通信デバイスを付した金属物品が開示されているが、指向性の方向が限定されており、容易に読取を行うことができないという問題があった。
【0013】
本発明の主な目的は、全方位、いわゆる無指向性および通信距離の長いRFタグアンテナ、RFタグおよび導電体付きRFタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)
一局面に従うRFタグアンテナは、ICチップを取り付けるRFタグアンテナであって、第1面、第1面に対向して形成された第2面、第1面および第2面との間に厚みを有する絶縁基材と、第1面に設けられた平板状からなるアンテナ部と、第2面に設けられアンテナ部と対向して配置された平板状からなるグランド部と、アンテナ部およびグランド部の間を電気的に短絡するよう設けられた短絡部と、第1面に設けられICチップに給電するよう構成された給電部と、を含み、アンテナ部は、それぞれ直交する方向に長く配置された第1アンテナ部および第2アンテナ部を含み、グランド部は、それぞれ直交する方向に長く配置された第1グランド部および第2グランド部を含むものである。
【0015】
アンテナ部は第1アンテナ部および第2アンテナ部によって、いわゆるL字形状で形成される。また、グランド部は第1グランド部および第2グランド部によって、いわゆるL字形状で形成される。そして、L字形状のアンテナ部が絶縁基材の第1面に形成され、このアンテナ部に対向する位置において絶縁基材の第2面にL字形状のグランド部が形成される。
よって、第1アンテナ部と第2アンテナ部とが放射する電磁波の偏波面が互いに直交するので、本発明のRFタグアンテナを利用することにより、RFタグと読取装置との全方位の無指向性の通信が可能となる。すなわち、アンテナを2方向に延在させることで、アンテナ特性を向上させることができる。従って、RFタグアンテナを備えたRFタグは、アンテナの向きによらず、読取装置との安定した通信が可能である。
【0016】
(2)
第2の発明にかかるRFタグアンテナは、一局面に従うRFタグアンテナにおいて、少なくとも短絡部および給電部により構成されるインダクタパターン部と、少なくともアンテナ部、グランド部および絶縁基材により構成されるコンデンサ部と、により、読取装置から送信された電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されるものである。
この場合、インダクタパターン部にICチップを設けることにより、インダクタパターン部と、上記コンデンサ部と、ICチップの内部の静電容量とにより共振回路が形成される。また、インダクタパターン部は、平板を切欠くことにより形成されるため、薄型化を実現することができる。
【0017】
(3)
第3の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第2の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、絶縁基材は第1絶縁基材と第2絶縁基材とを有するL字状に形成され、第1絶縁基材および第2絶縁基材の第1面に、L字状に形成されたアンテナ部の第1アンテナ部および第2アンテナ部がそれぞれ設けられ、第1絶縁基材および第2絶縁基材の第2面に、L字状に形成されたグランド部の第1グランド部および第2グランド部がそれぞれ設けられ、絶縁基材の角部の側面に短絡部が設けられてもよい。
【0018】
この場合、L字状に形成された絶縁基材の第1面にアンテナ部が設けられ、第2面にグランド部が設けられるので、各部材がL字状に形成され広い範囲の放射指向性とすることができる。しかも、絶縁基材、アンテナ部およびグランド部によってコンデンサが構成される。さらに、絶縁基材の角部の側面に設けられた短絡部を介してアンテナ部とグランド部とが接続される。このような構成により、RFタグアンテナの製造が容易でまた薄型化を実現することができる。
【0019】
(4)
第4の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第3の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、給電部は、短絡部に接続された第1給電部および第2給電部を有し、第1給電部および第2給電部は、第1給電部および第2給電部間にICチップを接続するよう構成されていてもよい。
【0020】
この場合、短絡部および給電部を、連続する導電性部材から構成することができるので、短絡部および給電部の形成が容易であり、またタグの厚みを薄形とすることができる。しかも、第1給電部および第2給電部の間にICチップを架け渡すことにより、インダクタパターン部と、ICチップの内部の静電容量および絶縁基材とにより共振回路が形成され、無指向性のRFタグを形成することができる。
【0021】
(5)
第5の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第4の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、アンテナ部と短絡部との間に切欠部が形成され、切欠部内に給電部が形成されていてもよい。
【0022】
この場合、薄形でコンパクトなRFタグを構築することができる。また、インダクタパターン部は、平板を切欠くことにより形成されるため、薄型化を実現することができる。
【0023】
(6)
第6の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第5の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、第1アンテナ部と第2アンテナ部との間にスリットが形成され、スリットが切欠部と連通していてもよい。
【0024】
この場合、第1アンテナ部と第2アンテナ部との間に形成されたスリットにより、第1アンテナ部および第2アンテナ部のスリット側端部をインダクタンス成分として作用させることができ、このインダクタンス成分によってアンテナ部とICチップのインピーダンスを整合させることができる。
【0025】
(7)
第7の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第6の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、短絡部と第1給電部および第2給電部との間に、設定の内部面積を有する空間領域が形成されていてもよい。
【0026】
この場合、少なくとも短絡部と第1給電部および第2給電部によって構成されるインダクタパターン部の内部面積が設定されることにより、インダクタパターン部のインピーダンスを一定にすることができる。
【0027】
(8)
第8の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第7の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、アンテナ部およびグランド部は、平面視でX字状に形成された平板状の導電部材を折り曲げ、導電部材の隣接する一方の導電素体を絶縁基材の第1面に設け、導電部材の隣接する他方の導電素体を絶縁基材の第2面に設けることにより構成されていてもよい。
【0028】
この場合、X字状の平板状導電部材を折り曲げ、絶縁基材に貼着するだけでアンテナ部とグランド部を形成することができるので、製造が極めて簡単で製造コストも安価となる。
【0029】
(9)
第9の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第8の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、第1アンテナ部および第2アンテナ部は矩形状の板状導電部材から形成され、第1グランド部および前記第2グランド部は矩形状の板状導電部材から形成されていてもよい。
【0030】
この場合、アンテナ部およびグランド部の製造が極めて容易で、しかも安定した無指向性を持つ小型RFタグを製造することができる。
【0031】
(10)
第10の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第9の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、絶縁基材は、誘電体からなってもよい。
【0032】
この場合、絶縁基材が誘電体からなるので、数ミリサイズの全方位の無指向性を持つ小型RFタグを実現することができる。
【0033】
(11)
第11の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第9の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、絶縁基材は、発泡スチロールからなってもよい。
【0034】
この場合、絶縁基材は、発泡スチロールからなるので、数センチメートルサイズのRFタグを実現することができる。また、発泡スチロールを用いることで、空気に近い絶縁基材を用いることができる。
また、アンテナ部とグランド部との開口部を大きく取ることができる。
【0035】
(12)
第12の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第11の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、絶縁基材は、第1面側における誘電率と、第2面側における誘電率とが互いに異なってもよい。
【0036】
この場合、第1面側における誘電率と、第2面側における誘電率とが互いに異なるので、各面側の板状導電部材の大きさ、または開口面積を得るのに有効である。
【0037】
(13)
第13の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第12の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、絶縁基材は、第1面側から第2面側に向けて縮径する同径または異径の1または複数の穴が形成されてもよい。
【0038】
この場合、絶縁基材は、第1面側から第2面側に向けて縮径する同径または異径の1または複数の穴が形成されるので、誘電率の違いにより各面側の板状導電部材の大きさ、または開口面積を得るのに有効である。また、誘電率の調整を絶縁基材の加工で対応することができる。
【0039】
(14)
第14の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第13の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、絶縁基材は、第1面側における誘電率が第2面側における誘電率よりも小さくなるよう形成されてもよい。
【0040】
この場合、使用態様に応じて第1面側をアンテナ部、第2面側をグランド部とした場合、第2面側の誘電率を第1面側の誘電率より大きくしたことにより、アンテナ側の開口面積を変化させなくても、グランド側に対して相対的に大きくなるので、RFタグアンテナのサイズを大きくすることなく、読取装置との間の通信距離をのばすことができる。
【0041】
(15)
第15の発明にかかるRFタグアンテナは、一の局面から第14の発明のいずれかにかかるRFタグアンテナにおいて、絶縁基材は、第1面側に発泡スチロールの層を形成し、第2面側に誘電率の高い層を形成してもよい。
【0042】
この場合、使用態様に応じて第1面側をアンテナ部、第2面側をグランド部とした場合、第2面側の誘電率を第1面側の誘電率より大きくしたことにより、アンテナ側の開口面積を変化させなくても、グランド側に対して相対的に大きくなるので、RFタグアンテナのサイズを大きくすることなく、読取装置との間の通信距離をのばすことができる。
【0043】
(16)
他の局面にかかるRFタグは、請求項1から15のいずれかに記載のRFタグアンテナと、RFタグアンテナに設けられたICチップと、を含むものである。
【0044】
この場合、ICチップを設けることにより、インダクタパターン部と、ICチップの内部の静電容量および絶縁基材とにより共振回路が形成され通信距離をのばすことができるとともに、金属部材に載置することもできる。
また、全方位の無指向性のRFタグを形成することができる。
【0045】
(17)
さらに他の局面にかかるRFタグは、請求項1から15のいずれかに記載のRFタグアンテナと、RFタグアンテナに設けられたICチップと、RFタグアンテナのグランド部と、直接電気的にあるいは容量を介して接続された導電体と、を含むものである。
【0046】
この場合、ICチップを設けることにより、インダクタパターン部と、ICチップの内部の静電容量および絶縁基材とにより共振回路が形成される。さらに、導電体をアンテナとして利用することができる。
また、全方位の無指向性のRFタグを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図2】RFタグ用アンテナの一例を示す模式的展開図である。
【
図3】
図2のRFタグ用アンテナの要部を示す詳細説明図である。
【
図4】RFタグにシート部材を設けた状態を示す模式的断面図である。
【
図5】RFタグを導電性部材に貼着した例を示す模式的断面図である。
【
図6】RFタグおよび導電性部材の等価回路の一例を示す模式図である。
【
図7】RFタグの読取実験の結果を示す模式図である。
【
図8】RFタグの放射パターンを示す模式図である。
【
図10】絶縁基材のさらに他の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0049】
[本実施の形態]
図1は、本実施の形態にかかるRFタグ100の一例を示す模式的斜視図であり、
図2は、RFタグ100のRFタグアンテナ110の一例を示す模式的展開図である。
【0050】
図1および
図2に示すように、本発明にかかるRFタグ100は、RFタグアンテナ110、絶縁基材140、およびICチップ500を含む。
RFタグアンテナ110は、アンテナ部120、グランド部130、インダクタパターン部150、短絡部160および給電部170を含む。
アンテナ部120は、第1アンテナ部121、第2アンテナ部122を含み、グランド部130は、第1グランド部131、第2グランド部132を含む。
【0051】
第1アンテナ部121および第2アンテナ部122は、矩形状の平面状導電部材からなる。第1アンテナ部121は、長辺と短辺とを有する。また、第2アンテナ部122の長辺は、第1アンテナ部121の長辺と直交する方向に設けられる。すなわち、第1アンテナ部121の延在方向と、第2アンテナ部122の延在方向とは、90度(直角、直交)の状態である。
【0052】
なお、本実施の形態においては、第1アンテナ部121の延在方向および第2アンテナ部122の延在方向が直交する、またはL字状、とは、主に90度の場合を言う。しかしながら、90度の状態のみに限定されず、第1アンテナ部121の延在方向と第2アンテナ部122の延在方向とが、60度以上120度以下の範囲で設けられる場合も含むものとする。すなわち、第1アンテナ部121および第2アンテナ部122がL字状、またはL字状に近い場合も、本明細書ではL字状または直交に含めるものとする。
【0053】
なお、
図1に示すRFタグ100は、シート部材600(
図4参照)により全体または一部が包装されていてもよい。以下、各部について説明を行う。
【0054】
(絶縁基材140)
本実施の形態においては、絶縁基材140はL字状に形成されており、第1絶縁基材141と第2絶縁基材142とを有する。第1絶縁基材141および第2絶縁基材142の第1面に、同じくL字状に形成されたアンテナ部120の第1アンテナ部121および第2アンテナ部122がそれぞれ設けられ、第1絶縁基材141および第2絶縁基材142の第2面に、同じくL字状に形成されたグランド部130の第1グランド部131および第2グランド部132がそれぞれ設けられている。さらに、絶縁基材140の角部は切欠されており、この角部の側面に短絡部160が設けられている。
【0055】
また、本実施の形態においては、絶縁基材140は、発泡スチロールからなる。本来は、絶縁基材の代わりに空気を用いることが最も好ましいが、第1アンテナ部121および第1グランド部131、第2アンテナ部122および第2グランド部132の所定の間隔維持および接触を防止するため、90%以上空気を有する発泡スチロールを利用することが好ましい。
【0056】
その結果、第1アンテナ部121および第1グランド部131、第2アンテナ部122および第2グランド部132の空間距離を絶縁基材140によって一定に維持することができる。また、絶縁基材140の比誘電率は1%以上20%以下の範囲内であることが望ましい。
また、絶縁基材140としてセラミックを用いた場合には、第1アンテナ部121および第1グランド部131、第2アンテナ部122および第2グランド部132の開口面積が小さくなり、通信距離が低減されるが、RFタグ100を小型化することができる。
【0057】
一方、絶縁基材140として発泡スチロール等の比誘電率が1%以上5%以下の材質を用いた場合には、アンテナ部120およびグランド部130の開口面積を大きく維持することができ、通信距離を数メートルから数十メートルまでのばすことができる。
【0058】
なお、発泡スチロールからなる絶縁基材140の厚みは、0.5mm以上3mm以下の範囲であることが望ましい。
なお、本実施の形態において絶縁基材140は、発泡スチロールからなることとしているが、これに限定されず、絶縁体であればよく、ポリエチレン、ポリイミド、薄物発泡体(ボラ―ラ)等、絶縁性を有する他の発泡体または素材を用いてもよい。
また、本実施の形態においては、絶縁基材140が一つの部材からなることとしているが、これに限定されず、複数の絶縁基材を用いて、本発明にかかる絶縁基材140を形成してもよい。
【0059】
また、本実施の形態においては、絶縁基材140の第1面および第2面の平面形状は、アンテナ部120およびグランド部130とほぼ同じ形状としているが、これに限定されず、絶縁基材140の平面形状はアンテナ部120およびグランド部130のサイズより大きくてもよい。
【0060】
例えば、平板状の絶縁基材140を使用することもできる。その場合は、絶縁基材140の第1面にL字形状のアンテナ部120が設けられ、同じ第1面にアンテナ部120が設けられていない領域が存在する。同様に、絶縁基材140の第2面にL字形状のグランド部130が設けられ、同じ第2面にグランド部130が設けられていない領域が存在する。
絶縁基材140の形状は立方体形状であってもよい。例えば、立方体形状の絶縁基材の第1の角部の3面に亘って連続するアンテナ部120が設けられ、第1の角部に対向しまたは隣接する第2の角部の3面に亘って連続するグランド部130が設けられていてもよい。
【0061】
以上のように、本実施の形態にかかるRFタグアンテナ110は、RFタグアンテナ110の絶縁基材140として発泡スチロールを用いているため、ある程度の大きさの開口面積を確保することができ、板状アンテナの感度向上を図ることができる。
【0062】
なお、上記の実施の形態においては、絶縁基材140として発泡スチロールを用いる場合について説明したが、誘電体を用いてもよい。例えば、誘電体として、樹脂、セラミック、紙等であってもよい。さらに、絶縁基材140は、発泡形状でもよく、空洞が1または多数形成されていてもよく、異種の材質が混合または積層された複合材料からなってもよい。
【0063】
図3は、
図2に示したRFタグアンテナ110の要部を示す詳細説明図である。
【0064】
(アンテナ部120)
アンテナ部120は、それぞれ直交する方向に長く配置された第1アンテナ部121および第2アンテナ部122を含む。すなわち、第2アンテナ部122は、第1アンテナ部121の延在方向に対して直交する方向に延在する。
図3に示すように、第1アンテナ部121は矩形状の板状導電部材から形成され、第1アンテナ部121は、辺921、辺922、辺923、辺924、辺925、辺926、辺927により囲まれた領域からなる。
また、第2アンテナ部122は矩形状の板状導電部材から形成され、第2アンテナ部122は、辺931、辺932、辺933、辺934、辺935、辺936、辺937により囲まれた領域からなる。
第1アンテナ部121と第2アンテナ部122の延存方向の長さは同一とすることができる。つまり、第1アンテナ部121と第2アンテナ部122のサイズは同一とすることができる。
【0065】
ここで、説明のために、辺921、辺922、辺923、辺924、辺925、辺926、辺927の長さの合計を値T1とする。
また、辺931、辺932、辺933、辺934、辺935、辺936、辺937の長さの合計を値T2とする。
【0066】
本実施の形態において、当該値T1、値T2は、電波の波長λ(ラムダ)を用いた場合、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つに該当するように設計されている。
【0067】
本実施の形態において、値T1、値T2は、使用する周波数の波長λの半分の長さに設計した。波長λは、伝搬速度(光速(c))/周波数(F)により算出できる。
具体的に周波数が920MHzの場合、伝搬速度(光速(c))を300Mm/sとし、値Tは、値T=(300÷920MHz)/2≒163mmとなる。
この場合、値T1およびT2が163mmとなるように各辺の長さを調整する。なお、当該値T1およびT2は近似値であるので、値T1およびT2の数値自体が±5%前後の誤差を有してもよい。RFタグ100の読取距離が短くなるが、調整により仕様に適応させることができるからである。
【0068】
また、本実施の形態において、第1アンテナ部121および第2アンテナ部122は、アルミニウムの金属薄膜からなる。一般的に本実施の形態における薄膜は3μm以上35μm以下の厚みから形成される。
第1アンテナ部121および第2アンテナ部122は、エッチングまたはパターン印刷等の手法によって形成される。
【0069】
第1アンテナ部121および第2アンテナ部122は、絶縁基材140の第1面に直接設けてもよく、あるいは樹脂フィルム上に導電性材料によって形成された第1アンテナ部121および第2アンテナ部122を絶縁基材140に接着剤などを用いて貼着することで絶縁基材140の第1面に設けるようにしてもよい。
【0070】
(グランド部130)
グランド部130は、それぞれ直交する方向に長く配置された第1グランド部131および第2グランド部132を含む。すなわち、第2グランド部132は、第1グランド部131の延在方向に対して直交する方向に延在する。
図2に示すように、第1グランド部131および第2グランド部132は、アルミニウムの金属薄膜からなる。一般的に本実施の形態における薄膜は3μm以上35μm以下の厚みから形成される。
【0071】
第1グランド部131および第2グランド部132は矩形状の板状導電部材から形成されている。
第1グランド部131と第2グランド部132の延存方向の長さは同一とすることができる。つまり、第1グランド部131と第2グランド部132のサイズは同一とすることができる。
第1グランド部131および第2グランド部132は、エッチングまたはパターン印刷等の手法によって形成される。
第1グランド部131および第2グランド部132は、絶縁基材140の第2面に直接設けてもよく、あるいは樹脂フィルム上に導電性材料によって形成された第1グランド部131および第2グランド部132を絶縁基材140に接着剤などを用いて貼着することで絶縁基材140の第2面に設けるようにしてもよい。
【0072】
図2に示すように、アンテナ部120およびグランド部130は、平面視でX字状に形成された平板状の導電部材を、
図3に示す2つの山折線に沿ってコ字状に折り曲げ、導電部材の隣接する一方の導電素体を絶縁基材140の第1面に設け、導電部材の隣接する他方の導電素体を絶縁基材140の第2面に設けることにより構成することができる。
この場合、一方の1対の導電素体によってL字状のアンテナ部120が形成され、他方の1対の導電素体によってL字状のグランド部130が形成される。一方の導電素体と他方の導電素体とはほぼ対称に形成されている。
【0073】
導電部材を絶縁基材140の面に沿って折り曲げると、
図3に示す2つの山折線の間の領域が絶縁基材140の角部の側面に配置される。この絶縁基材140の側面に、アンテナ部120とグランド部130とを接続する短絡部160が形成される。
一方の導電素体と他方の導電素体とが交差する交差領域に、以下に説明する給電部170およびインダクタパターン部150が形成されている。
【0074】
(給電部170)
給電部170は、絶縁基材140の第1面に設けられICチップ500に給電するよう構成されている。
すなわち、アンテナ部120と短絡部160との間に切欠部180が形成され、切欠部180内に給電部170が形成されている。給電部170は、短絡部160に接続された第1給電部171および第2給電部172を有する。第1給電部171および第2給電部172は比較的細線のパターンにてL字状に形成され、第1給電部171と第2給電部172の先端部は互いに向かい合い、第1給電部171と第2給電部172の先端部の間に空隙部が形成されている。この空隙部にICチップ500が配置され、ICチップ500は第1給電部171および第2給電部172に電気的に接続されている。
【0075】
そして、短絡部160と第1給電部171および第2給電部172とで囲まれる領域に、設定の内部面積Sを有する空間領域が形成されている。
第1アンテナ部121と第2アンテナ部122との間にスリット124が形成され、スリット124は切欠部180(および空間領域S)と連通している。
【0076】
(インダクタパターン部150)
インダクタパターン部150は、少なくとも短絡部160および給電部170により構成される。すなわち、給電部170はインダクタパターン部150の一部を兼用している。この構成によりインダクタパターン部150の構成を簡略化することができる。
【0077】
コンデンサCは、少なくともアンテナ部120、グランド部130および絶縁基材140により構成される。これらのインダクタパターン部150とコンデンサCとにより、読取装置(図示せず)から送信された電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される。インダクタパターン部150の詳細は以下のとおりである。
【0078】
図3に示すように、インダクタパターン部150は、短絡部160および給電部170の縁からなり、辺151、辺152、辺153、辺154、辺155、辺156、辺157、辺158、辺159、辺160、辺161からなる。インダクタパターン部150は、環形状の回路の一部である辺153、辺159との間を切欠いた形状からなる。すなわち、具体的には、アルファベット文字のC形状からなる。
【0079】
すなわち、インダクタパターン部150は、
図3に示すように、辺154、辺155、辺156、辺157、辺158により囲まれた領域(内部面積S)を有する。
なお、インダクタパターン部150は、辺153と辺159との間を切欠く場合について説明したが、これに限定されず、辺153と辺159との間に絶縁部を形成してもよい。
【0080】
本実施の形態において、インダクタパターン部150は、アルミニウムの金属薄膜からなる。一般的に本実施の形態における薄膜は3μm以上35μm以下の厚みから形成される。
インダクタパターン部150は、エッチングまたはパターン印刷等の手法によって形成される。また、導電性パターンが形成された樹脂フィルムを絶縁基材140に接着剤などで貼着することによっても形成することができる。
【0081】
本実施の形態において、インダクタパターン部150の内部面積Sにより、インダクタパターン部150のインピーダンスを一定にすることができる。
これにより、アンテナ部120とICチップ500の処理回路との間のインピーダンス整合をとることができる。
【0082】
(ICチップ500)
ICチップ500は、RFタグアンテナ110の上面側(第1アンテナ部121、第2アンテナ部122と同一平面上)に配置されている。ICチップ500は、RFタグアンテナ110のアンテナ部120が受信した電波に基づいて動作する。
【0083】
具体的に本実施の形態にかかるICチップ500は、まず、読取装置から送信される搬送波の一部を整流して、ICチップ500自身が動作するために必要な電源電圧を生成する。そして、ICチップ500は、生成した電源電圧によって、ICチップ500内の制御用の論理回路、商品の固有情報等が格納された不揮発性メモリを動作させる。
また、ICチップ500は、読取装置との間でデータの送受信を行うための通信回路等を動作させる。
【0084】
(シート部材600)
図4は、
図1から
図3のRFタグ100にシート部材600を設けた状態を示す模式的一部断面図である。
図4に示すように、RFタグ100は、その周囲をシート部材600に包まれていても良い。
シート部材600は、主にポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性樹脂シートからなる。なお、ポリエチレンテレフタレートの他に、シート部材600としてポリイミド、ポリ塩化ビニル等の絶縁性のある素材または樹脂を1種または複数種用いてもよい。
【0085】
シート部材600は、絶縁基材140の第1面および第2面に設けられたアンテナ部120およびグランド部130を外部から保護するためのものである。そのため、シート部材600の厚みは、数マイクロメートル以上数百マイクロメートル以下であることが好ましく、数十マイクロメートル程度の厚みであることがより好ましい。
本実施の形態においては、シート部材600を設けることとしているが、これに限定されず、シート部材600を設けなくてもよく、他の絶縁被膜処理を用いてアンテナ部120およびグランド部130を保護するようにしてもよい。
また、第1アンテナ部121と第2アンテナ部122とにおいてシート部材600を別々に設けてもよい。
【0086】
(RFタグアンテナ110、ICチップ500および導電性部材900)
図5は、
図4に示したRFタグ100を導電性部材900に貼着した例を示す模式的断面図である。
【0087】
図5に示すように、RFタグ100は、導電性接着剤または接着層450等により導電性部材900に貼着される。本実施の形態において導電性部材900は、導電性の金属板からなる。具体的には、金属製の箱、金属板を含む箱、ケース、金属部材を含む箱、ケース、等、任意の金属部位を有するものである。
【0088】
なお、
図5においては、導電性接着剤または接着層450を用いることとしているが、これに限定されず、両面テープ、はんだ、1液性または2液性のエポキシ樹脂等の任意の導電性の接着材であってもよい。
また、RFタグ100と導電性部材900とを間接的に電気接続する場合は、絶縁性接着剤または接着層を用いてRFタグ100を導電性部材900に貼着するようにしてもよい。
【0089】
図6は、RFタグ100および導電性部材900の等価回路の一例を示す模式図である。
【0090】
図6に示すように、RFタグ100および導電性部材900の等価回路は、インダクタパターン部150のインダクタパターンLと、ICチップ500の内部容量からなるコンデンサCbと、は互いに並列接続されている。インダクタパターンLおよびICチップ500は、読取装置から送信される電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成する。
この共振回路の共振周波数f[Hz]は、式(1)により与えられる。共振周波数fの値は、読取装置から送信される電波の周波数帯域に含まれるように設定される。
【0091】
【0092】
式(1)において、La:インダクタパターンLのインダクタンス、Cb:ICチップ500内部の等価容量を意味する。
【0093】
ここで、ICチップ500には、内部にコンデンサを含むものがあり、また、ICチップ500は浮遊容量を有する。そのため、共振回路の共振周波数fを設定する場合、ICチップ500内部の等価容量Cbを利用したものである。
すなわち、共振回路は、インダクタパターンLのインダクタンス、およびICチップ500の内部の等価容量Cbを考慮して設定された共振周波数fを有する。なお、Cbとしては、例えば、使用するICチップの仕様諸元の一つとして公表されている静電容量値を用いることができる。
【0094】
上記のように、ICチップ500内部の等価容量Cbを利用することで、新たなコンデンサを設ける必要がなくなる。また、共振回路の共振周波数fを、電波の周波数帯域に精度良く設定することができる。その結果、RFタグ100の読み取り性能をさらに向上させることができる。また、ICチップ500が生成する電源電圧をさらに高くすることができる。
【0095】
また、
図6に示すように、導電性部材900は、絶縁基材140を介してRFタグ100と容量結合している状態にすることができる。すなわち、絶縁基材140がコンデンサの役割を有する。
その結果、導電性部材900をアンテナ部120と同様に用いることができるので、導電性部材900の表面側および裏面側のいずれからでも読取装置の電波を受信することができる。
【0096】
なお、本実施の形態においては、RFタグ100の第1グランド部131および第2グランド部132と導電性部材900との間にシート部材600が介在される場合について説明したが、また、電気的に直接接続または間接的に接続されていればよい。
さらに、本実施の形態において、導電性部材900は、金属板からなってもよい。なお、本願において「導体」とは、一般的な辞書的意味と同様に、電気の伝導率、金属が典型的な例である。ただし、「導体」は、金属に限定されるものではなく、例えば人体、草木、水、地面などであってもよい。
【0097】
図7および
図8は、
図1から
図6において説明したRFタグ100の読取実験の結果を示す模式図である。
【0098】
図7(A)に示すように、RFタグ100の周囲には、少なくとも直交する方向を含む複数の電磁界を形成することができる。
また、
図5において導電性部材900に貼着した場合について説明したが、
図7(B)に示すように、RFタグ100を球状導電体に貼着した場合、大きく複数の電磁界を形成することができる。すなわち、全方位の指向性を高めることができる。
図7から、全方位的に無指向に近い放射指向性を有していることがわかる。よって、タグの向きによらず、読取装置との安定した通信が可能である。従って、タグが付けられた複数の商品がランダムな向きで荷詰めされたような場合でも、各商品のタグと通信することができる。
【0099】
次いで、
図8に示すように、RFタグ100の放射パターンを示す。
図8は、921MHzの垂直波および水平波に対する本発明の実施形態に係るRFタグの第1アンテナ部と第2アンテナ部をX軸、Y軸に配置したときの、XY平面、YZ平面、ZX平面における放射指向性を示している。
図8から、垂直波でも、Y―Z面、Z―X面、X-Y面の全てにおいて、放射を確認できた。さらに、水平波でも、X-Y面の放射を確認することができた。以上のことから、本実施の形態にかかるRFタグ100は、全方向から読み取ることができることがわかった。
【0100】
(他の絶縁基材)
図9は、絶縁基材140の他の例を示す模式図である。
【0101】
図9に示すように、絶縁基材140は、発泡スチロール素材145および樹脂素材146の積層体からなってもよい。本実施の形態においては、発泡スチロール素材145および樹脂素材146の両者のサイズ長は同一に設計した。
【0102】
具体的に、発泡スチロール素材145においては、発泡スチロール素材145の比誘電率εa=1.0、周波数900MHzとして波長λ1を算出する。
その結果、発泡スチロール素材145に貼着したアンテナ部120は、誘電率に影響されないため、波長λ1は、λ1=(300/920MHz)/12 ≒333mmとなる。
【0103】
一方、樹脂素材146においては、樹脂素材146の比誘電率εb=5.0、周波数900MHz、伝搬速度300Mm/sとして波長λ2を算出する。
その結果、樹脂素材146において、波長λ2は、λ2=(300/920MHz)/52 ≒149mmとなる。
なお、樹脂素材146は、セラミック、紙、等であってもよい。
【0104】
ここで、第1アンテナ部121または第2アンテナ部122の値T1、値T2は、それぞれ333mmであるため、333/149≒2.23倍長い波長の402MHzで共振することとなる。
つまり、見かけ上744mmの第1グランド部131、第2グランド部132が形成されたものと同じになる。
その結果、導電体900にRFタグ100を取り付ける状態と同じにすることができ、金属対応または非金属対応の通信距離を充分に有するRFタグ100を実現させることができる。
【0105】
(さらに他の絶縁基材)
図10は、絶縁基材140のさらに他の例を示す模式的断面図である。
【0106】
図10に示すように、絶縁基材140は、表面141、裏面142を有する。
また、表面141から裏面142に向かって縮径する、1または複数の穴143を有する。ここで、穴143は、連続して縮径するものに限定されず、階段状で縮径されるものも含まれる。
【0107】
本実施の形態において穴143は、階段状または円錐状である場合について説明しているが、これに限定されず、表面141から裏面142まで貫通していない円筒、角筒、楕円筒であってもよく、表面141から裏面142まで貫通していない、または貫通した円錐筒、角錐筒、楕円錐筒であってもよい。
さらに、表面141から裏面142に向かって形状が変化するものであってもよい。例えば、表面141側においては、星型の穴であり、裏面142側に向かって穴の断面が円形になってもよい。
また、
図9においては、穴143の径は、同じ場合について説明を行っているが、これに限定されず、同じであってもよく、異なるものであってもよい。
【0108】
以上のように、表面141側および裏面側142の比誘電率を変化させることにより、見かけ上、所定よりも長い第1グランド部131および第2グランド部132を形成することとなるため、金属対応または非金属対応の通信距離を充分に有するRFタグ100を実現させることができる。
また、誘電率の違いにより、各面側の板状導電部材の大きさを小さくすることができ、または、開口面積を実製品よりも大きくすることができる。また、誘電率の調整を絶縁基材の加工で対応することができる。
すなわち、各面側の板状導電部材の大きさを小さくしても、性能を見かけ上板状導電部材を大きくした状態と同じとなり、製品の小型化を実現することができる。また、開口面積を小さくしても、性能を見かけ上開口面積を大きくした状態と同じとなり、製品の小型化を実現することができる。
【0109】
以上により、RFタグ100および導電性部材900は、導電性部材900をアンテナ部120として利用することができるとともに、大きな開口面積を有することができるので、RFタグ100の感度を向上させることができる。
【0110】
また、導電性部材900をアンテナ部120として利用することができるので、導電性部材900のRFタグ100を設けた面の裏側からも読取装置による読み取りが可能となる。
【0111】
本発明においては、ICチップ500が『ICチップ』に相当し、RFタグアンテナ110が『RFタグアンテナ』に相当し、インダクタパターン部150が『インダクタパターン部』に相当し、切欠部180が『切り欠き部』に相当し、アンテナ部120、第1アンテナ部121、第2アンテナ部122が『アンテナ部』に相当し、グランド部130、第1グランド部131、第2グランド部132が『グランド部』に相当し、表面141が『第1面』に相当し、裏面142が『第2面』に相当し、絶縁基材140が『絶縁基材』に相当し、値T,値T2が『アンテナ部の周囲長さ』に相当し、樹脂素材146が『誘電体』に相当し、発泡スチロール素材145、発泡スチロールが『発泡スチロール』に相当し、穴143が『1または複数の穴』に相当し、RFタグ100が『RFタグ』に相当し、導電性部材900が『導電体』に相当し、導電性部材900およびRFタグ100が『導電体付きRFタグ』に相当する。
【0112】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0113】
100 RFタグ
110 RFタグアンテナ
120 アンテナ部
121 第1アンテナ部
122 第2アンテナ部
130 グランド部
131 第1グランド部
132 第2グランド部
140 絶縁基材
141 表面
142 裏面
143 穴
145 発泡スチロール素材
146 樹脂素材
150 インダクタパターン部
170 給電部
180 切り欠き部
500 ICチップ
900 導電性部材,導電体
T1、T2 値