(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】美容器
(51)【国際特許分類】
A46B 13/02 20060101AFI20220128BHJP
A46B 15/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A46B13/02
A46B15/00 Z
(21)【出願番号】P 2016145090
(22)【出願日】2016-07-25
【審査請求日】2019-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】関口 哲生
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0065927(US,A1)
【文献】特開2015-208485(JP,A)
【文献】特開2015-213557(JP,A)
【文献】特開2011-87889(JP,A)
【文献】特開2013-13601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、上記本体部の外側に配置され、多数のブラシ毛を有するブラシ部と、上記本体部内に配置され、上記ブラシ部を振動させる振動モータとを有する美容器であって、
上記ブラシ部は、上記ブラシ
毛からなるブラシ本体と、上記ブラシ本体を保持するブラシホルダーと、を有し、
上記ブラシ本体は、上記ブラシ毛の毛先のうち、最も外側に配置された毛先の位置を滑らかに連ねてなる最外輪郭面を有しており、
上記ブラシ毛は、上記最外輪郭面に毛先が配置された第1ブラシ毛と、
上記最外輪郭面よりも内側に毛先が配置された第2ブラシ毛とを有しており、
上記ブラシ部における隣り合う上記ブラシ毛の間隔は、毛先に近いほど広がっており、
上記最外輪郭面から上記第2ブラシ毛の毛先までの距離が0.25~2.0mmである、美容器。
【請求項2】
上記第1ブラシ毛及び上記第2ブラシ毛は、その先端にテーパ部を有している、請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
上記第1ブラシ毛及び上記第2ブラシ毛は合成繊維から構成されている、請求項1または2に記載の美容器。
【請求項4】
上記第1ブラシ毛及び上記第2ブラシ毛は波状に縮れている、請求項1~3のいずれか1項に記載の美容器。
【請求項5】
上記第1ブラシ毛の本数は、上記ブラシ毛全体の本数の20~60%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の美容器。
【請求項6】
上記第1ブラシ毛と上記第2ブラシ毛とが均一に混合されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の美容器。
【請求項7】
上記本体部は、その内部に、上記振動モータを保持するモータ保持部と、上記本体部に対して上記モータ保持部を相対的に変位可能な状態で連結する連結部と、上記モータ保持部から延設され、上記ブラシ部に接続されるブラシ取り付け部とを有しており、上記振動モータは、偏心錘を備えた回転軸を有しており、上記ブラシ取り付け部は、上記振動モータにおける上記回転軸の軸心方向と異なる方向に延設されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の美容器。
【請求項8】
上記ブラシ本体は、上記第2ブラシ毛の毛先の位置よりも内側に毛先が配置された第3ブラシ毛を有している、請求項1~7のいずれか1項に記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の表面や毛穴の内部に付着した汚れ等を除去することを目的として、毛先を微細に振動させることができるように構成された振動ブラシが用いられることがある。この種の振動ブラシに適用される振動体駆動装置として、本体部と、本体部に支持される振動体とを備えた振動体駆動装置が提案されている(特許文献1)。この装置の本体部には、振動部としての振動モータと、振動部で発生させた振動を振動体としてのブラシ体に伝達する振動伝達軸とが設けられている。また、ブラシ体は、一方向に突出する一群のブラシ毛からなるブラシ束を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の振動ブラシにおいては、ブラシ毛の毛先がブラシ束の先端面に配置されているため、ブラシ束の先端面にブラシ毛の毛先が密集している。それ故、振動を発生させた際に、隣り合うブラシ毛の毛先が干渉し、ブラシ毛の毛先の振幅が小さくなるおそれがある。
【0005】
また、ブラシ束の先端面を肌に接触させると、ブラシ毛の毛先の大部分が毛穴以外の肌表面に押し付けられる。そのため、ブラシ毛の毛先の振動が肌表面との間の摩擦によって規制され、ブラシ毛の毛先の振幅が小さくなるおそれがある。
【0006】
また、肌表面や毛穴内部の汚れをより効率よく除去するため、振動ブラシを使用する際に、ブラシ束に水や液状の洗浄剤等を含ませることがある。しかし、従来のブラシ束は、その先端面にブラシ毛の毛先が密集しているため、水等を含ませた際に、毛先が太い束状にまとまりやすい。そのため、ブラシ束に水等を含ませた場合には、ブラシ毛の毛先の振幅がより小さくなりやすい。
【0007】
このように、従来の振動ブラシは、上述したブラシ毛の毛先の干渉や、ブラシ毛と肌との摩擦により、ブラシ毛の毛先の振幅が小さくなり、肌の汚れ等を効率よく除去することが難しい。
【0008】
また、ブラシ毛の毛先が密集しているブラシ束においては、毛先を肌に接触させた際にブラシ毛が撓みにくいという問題がある。このようなブラシ束を振動させると、ブラシ束の振動がほとんどそのままブラシ毛の毛先に伝わるため、ブラシ毛の毛先と肌との摩擦が大きくなりやすい。そして、ブラシ毛の毛先と肌との摩擦が過度に大きい場合には、肌への刺激が強くなり、使用者に不快感を与えるおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、肌への刺激が少なく、肌表面や毛穴内部の汚れを効率よく除去することができる美容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、本体部と、上記本体部の外側に配置され、多数のブラシ毛を有するブラシ部と、上記本体部内に配置され、上記ブラシ部を振動させる振動モータとを有する美容器であって、
上記ブラシ部は、上記ブラシ毛からなるブラシ本体と、上記ブラシ本体を保持するブラシホルダーと、を有し、
上記ブラシ本体は、上記ブラシ毛の毛先のうち、最も外側に配置された毛先の位置を滑らかに連ねてなる最外輪郭面を有しており、
上記ブラシ毛は、上記最外輪郭面に毛先が配置された第1ブラシ毛と、
上記最外輪郭面よりも内側に毛先が配置された第2ブラシ毛とを有しており、
上記ブラシ部における隣り合う上記ブラシ毛の間隔は、毛先に近いほど広がっており、
上記最外輪郭面から上記第2ブラシ毛の毛先までの距離が0.25~2.0mmである、美容器にある。
【発明の効果】
【0011】
上記美容器は、上記第1ブラシ毛と、上記第2ブラシ毛とを備えた上記ブラシ部を有している。上記第1ブラシ毛の毛先は上記ブラシ部の上記最外輪郭面に配置されており、上記第2ブラシ毛の毛先は、上記最外輪郭面よりも内側に配置されている。これにより、上記最外輪郭面における隣り合うブラシ毛の毛先の間隔を、従来の振動ブラシよりも広くすることができる。それ故、上記美容器は、上記ブラシ部を振動させた際の隣り合う上記第1ブラシ毛の毛先の干渉を従来よりも低減することができる。
【0012】
また、上記ブラシ部は、上記最外輪郭面を肌に当接させた際に、上記第2ブラシ毛の毛先が肌表面から離隔している状態を容易に実現することができる。さらに、上記第2ブラシ毛の毛先が肌表面に当接した際の押圧力を、上記第1ブラシ毛の毛先よりも弱くすることもできる。それ故、上記第2ブラシ毛は、毛先が肌表面に当接している上記第1ブラシ毛に比べて大きい振幅で振動することができる。そして、上記第2ブラシ毛の振動が上記第1ブラシ毛に伝わることにより、上記第1ブラシ毛の毛先を効率よく振動させることができる。
【0013】
さらに、上記ブラシ部は、上記最外輪郭面における隣り合うブラシ毛の毛先の間隔が広くなっているため、水等を含ませた際に生じるブラシ毛の束の太さを従来よりも細くすることができる。それ故、上記ブラシ部は、水等を含ませた場合にも、上記第1ブラシ毛の毛先を効率よく振動させることができる。
【0014】
このように、上記美容器によれば、上記第1ブラシ毛の毛先の干渉を従来よりも低減するとともに、上記第1ブラシ毛の毛先を効率よく振動させることができる。その結果、上記第1ブラシ毛の振幅を従来よりも大きくし、肌表面や毛穴内部の汚れを効率よく除去することができる。
【0015】
また、上記ブラシ部は、上記最外輪郭面における隣り合うブラシ毛の毛先の間隔が広くなっているため、上記最外輪郭面を肌に当接させた際に、上記ブラシ毛を従来の振動ブラシよりも容易に撓ませることができる。そして、上記ブラシ毛が撓んだ状態で上記ブラシ部を振動させることにより、上記ブラシ毛の毛先に伝わる振動を適度に緩和することができる。その結果、上記ブラシ部を振動させた際の肌への刺激を低減することができる。
【0016】
以上のように、上記美容器によれば、肌への刺激を低減するとともに、肌表面や毛穴内部の汚れを効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
参考例1における、美容器の斜視図である。
【
図2】
参考例1における、美容器の下面図である。
【
図3】
参考例1における、美容器の側面図である。
【
図4】
参考例1における、美容器の部品展開図である。
【
図5】
参考例1における、美容器のヘッド部にモータ保持部を取り付けた状態の上面図である。
【
図8】
参考例1における、モータベースの側面図である。
【
図9】
参考例1における、モータ保持部の上面図である。
【
図11】
参考例1における、弾性部材の斜視図である。
【
図12】
参考例1における、ブラシホルダーの下面図である。
【
図13】
参考例1における、ブラシ部の最外輪郭面近傍の拡大図である。
【
図14】
参考例1における、第1ブラシ毛の一例を示す平面図である。
【
図15】
参考例1における、(a)モータ保持部の回転運動、(b)この回転運動に応じたブラシ部の毛先の動きの一例を示す前面図である。
【
図16】
参考例1の美容器を充電するための充電台の正面図である。
【
図18】
図16のXVIII-XVIII線矢視断面図である。
【
図19】
実施例1における、ブラシ部の側面図である。
【
図20】
実施例2における、ブラシ部の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記美容器において、上記ブラシ部の最外輪郭面とは、ブラシ毛の毛先のうち、最も外側に配置された毛先の位置を滑らかに連ねてなる輪郭面、即ち、美容器を使用する際に肌に接触させる面をいう。最外輪郭面の形状は、上記美容器の用途や、肌表面や毛穴の汚れ等を除去しようとする部位に応じて設定することができる。
【0019】
例えば、最外輪郭面は、平坦な形状を呈していてもよい。この場合には、例えば背中や腕部などの比較的平坦な部分において、最外輪郭面と肌との接触面積を広くし、肌表面や毛穴の汚れ等を迅速に除去することができる。また、最外輪郭面は、外周端縁よりも中央部が突出した凸曲面状を呈していてもよい。この場合には、例えば顔等の比較的起伏が大きい部分において、最外輪郭面を肌の起伏に応じて接触させ、肌表面や毛穴の汚れ等をむらなく除去することができる。
【0020】
上記最外輪郭面から上記第2ブラシ毛の毛先までの距離は、0.25~2.0mmとする。上記距離を0.25mm以上とすることにより、上記最外輪郭面を肌に当接させた際に、第2ブラシ毛の毛先と肌表面とが離隔した状態をより容易に実現することができる。また、第2ブラシ毛の毛先が肌表面に当接する際の押圧力をより低くすることもできる。これらの結果、第2ブラシ毛の毛先と肌との摩擦をより低減し、上記ブラシ部を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0021】
上記の作用効果をより確実に得る観点からは、最外輪郭面から上記第2ブラシ毛の毛先までの距離は、0.35mm以上であることがより好ましく、0.50mm以上であることがさらに好ましい。
【0022】
一方、上記距離を3.0mm以下とすることにより、第2ブラシ毛の毛先を第1ブラシ毛の毛先に近い位置に配置し、第2ブラシ毛の振動を第1ブラシ毛により効率よく伝達することができる。その結果、第1ブラシ毛の毛先をより効率よく振動させることができる。さらに、この場合には、第2ブラシ毛の毛先を肌表面に接触させ、第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛の両方により肌表面や毛穴の汚れを除去することができる。
【0023】
それ故、上記距離を3.0mm以下とすることにより、肌表面や毛穴の汚れ等をより効率よく除去することができる。上記の作用効果をより確実に得る観点からは、最外輪郭面から上記第2ブラシ毛の毛先までの距離は、2.0mm以下であることがより好ましく、1.50mm以下であることがさらに好ましく、1.25mm以下であることが特に好ましい。
【0024】
上記第1ブラシ毛及び上記第2ブラシ毛は、その先端にテーパ部、即ち毛先に近いほど外径が細くなっている部分を有していてもよい。この場合には、第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛の毛先が肌表面に当接した際に、テーパ部をより容易に撓ませることができる。その結果、ブラシ部を振動させた際に、ブラシ部の毛先に伝わる振動を十分に緩和することができ、ひいてはブラシ部を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0025】
さらに、この場合には、最外輪郭面における隣り合うブラシ毛の間隔をより広くすることができる。そのため、第1ブラシ毛の振幅をより大きくし、肌表面や毛穴内部の汚れをより効率よく除去することができる。
【0026】
テーパ部の長さは4~10mmとすることができる。テーパ部の長さを4mm以上とすることにより、肌への刺激を低減する効果をより確実に得ることができる。一方、テーパ部の長さが過度に長くなると、第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛のコシが低下し、かえって肌表面や毛穴の汚れを除去効率の低下を招くおそれがある。このような問題を回避する観点からは、テーパ部の長さを10mm以下とすることが好ましい。
【0027】
上記第1ブラシ毛及び上記第2ブラシ毛は、合成繊維から構成されていてもよい。この場合には、ブラシ毛を肌に当接させた際の肌触りに優れ、衛生管理が容易なブラシ部を得ることができる。また、ブラシ毛に水や洗浄剤等を含ませた際に形成されるブラシ毛の束の太さをより細くすることができる。更に、ブラシ毛の長さや太さを容易に制御することができるため、ブラシ毛の寸法の生産上のばらつきをより低減することができる。
【0028】
第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛に用いられる合成繊維としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル等を採用することができる。第1ブラシ毛は、1種類の合成繊維から構成されていてもよく、2種類以上の合成繊維が混在していてもよい。同様に、第2ブラシ毛は、1種類の合成繊維から構成されていてもよく、2種類以上の合成繊維が混在していてもよい。また、第1ブラシ毛と第2ブラシ毛とは、同一の合成繊維から構成されていてもよく、異なる合成繊維から構成されていてもよい。
【0029】
上記第1ブラシ毛及び上記第2ブラシ毛は、波状に縮れていてもよい。この場合には、最外輪郭面を肌に当接させた際に、第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛をより容易に撓ませることができる。そのため、ブラシ部を振動させた際に、ブラシ部の毛先に伝わる振動を十分に緩和することができ、ひいてはブラシ部を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0030】
上記第1ブラシ毛の本数は、上記ブラシ毛全体の本数の20~60%であることが好ましい。第1ブラシ毛の本数をブラシ毛全体の20%以上とすることにより、上記最外輪郭面に、第1ブラシ毛の毛先を十分に多く配置することができる。その結果、肌表面に当接する第1ブラシ毛の毛先の数を十分に多くし、第1ブラシ毛による肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。汚れの除去効率をより高める観点からは、第1ブラシ毛の本数は、ブラシ毛全体の本数の30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
また、第1ブラシ毛の本数をブラシ毛全体の60%以下とすることにより、上記最外輪郭面における、隣り合うブラシ毛の毛先の間隔を十分に広くすることができる。その結果、第1ブラシ毛の毛先をより効率よく振動させ、第1ブラシ毛による肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。さらに、この場合には、第1ブラシ毛がより撓みやすくなるため、ブラシ部を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0032】
このように、第1ブラシ毛の本数を上記特定の範囲とすることにより、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うとともに、ブラシ部を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0033】
上記第1ブラシ毛と上記第2ブラシ毛とは均一に混合されていることが好ましい。この場合には、上記最外輪郭面に、第1ブラシ毛の毛先を均一に配置することができる。その結果、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。
【0034】
上記ブラシ部における隣り合う上記ブラシ毛の間隔は、毛先に近いほど広がっている。これにより、上記最外輪郭面における、隣り合うブラシ毛の毛先の間隔を十分に広くすることができる。その結果、第1ブラシ毛の毛先をより効率よく振動させ、第1ブラシ毛による肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。さらに、この場合には、第1ブラシ毛がより撓みやすくなるため、ブラシ部を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0035】
上記ブラシ毛は、第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛に加えて、更に、第2ブラシ毛の毛先の位置よりも内側に毛先が配置された第3ブラシ毛を有しており、該第3ブラシ毛は、第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛に取り囲まれ、束状にまとまって配置されていてもよい。この場合には、第3ブラシ毛の束の周囲に配置された第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛が、第3ブラシ毛の束と最外輪郭面との間に形成される空間に押し出されやすい。そして、第1ブラシ毛及び第2ブラシ毛が上記の空間に押し出されることにより、最外輪郭面における隣り合うブラシ毛の毛先の間隔をより広くすることができる。その結果、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うとともに、ブラシ部を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0036】
また、この場合には、液状あるいは泡状の洗浄剤を含ませた状態でブラシ部を振動させた際に、第3ブラシ毛の束と最外輪郭面との間に形成される空間に空気が入りやすくなる。それ故、ブラシ部を振動させた際に、よりきめ細かな泡を発生させ、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。
【0037】
さらに、この場合には、ブラシ毛を洗浄する際に、第3ブラシ毛が配置された部分から多数のブラシ毛を容易に掻き分けることができる。それ故、ブラシ部の内部まで容易に洗浄を行うことができる。また、ブラシ部を洗浄した後に、短時間でブラシ部を乾燥させることができる。これらの結果、ブラシ部の衛生管理をより容易に行うことができる。
【0038】
上記本体部は、その内部に、上記振動モータを保持するモータ保持部と、上記本体部に対して上記モータ保持部を相対的に変位可能な状態で連結する連結部と、上記モータ保持部から延設され、上記ブラシ部に接続されるブラシ取り付け部とを有しており、上記振動モータは偏心錘を備えた回転軸を有しており、上記ブラシ取り付け部は、上記振動モータにおける上記回転軸の軸心方向と異なる方向に延設されていてもよい。
【0039】
この場合、上記振動モータにより付与される上記ブラシ取り付け部の振動は、上記回転軸の軸心方向への変位と、この軸心方向に直交する任意の方向への変位とを組み合わせた複雑な変位を含むものとなる。そして、この振動が上記ブラシ取り付け部を介して上記ブラシ部に効率よく伝わることにより、毛穴の深さ方向への変位と、この方向に直交する任意の方向への変位とを組み合わせた複雑な変位を伴う振動を上記ブラシ部の毛先に付与することができる。その結果、上記ブラシ部により、肌の表面や毛穴の内部に付着している汚れ等をより効率よく除去することができる。
【0040】
上記連結部は、上記本体部と上記モータ保持部との間に介在させた弾性部材を有していてもよい。この場合には、振動モータを振動させた際にモータ保持部が弾性部材から反発力を受けるため、ブラシ取り付け部により効率よく振動を伝達することができる。その結果、ブラシ取り付け部の振幅をより大きくすることができ、ひいては肌の表面や毛穴の内部に付着している汚れをより効率よく除去することができる。
【0041】
上述した「弾性部材」としては、振動モータから生じる振動に伴って容易に弾性変形可能な材質から構成されている部材を採用することができる。弾性部材としては、具体的には、天然ゴム、合成ゴム及び熱可塑性エラストマー等の公知のエラストマーからなる部材及び金属ばねや樹脂ばね等の公知のばね等を採用することができる。
【0042】
上記連結部は、上記本体部または上記モータ保持部のいずれか一方に設けられたガイド棒と、他方に保持された上記弾性部材とを有しており、上記ガイド棒は、上記弾性部材を貫通していてもよい。この場合には、モータ保持部及びこれに連なるブラシ取り付け部が、ガイド棒に沿って比較的自由に移動することができる。そのため、ガイド棒に沿う方向へのブラシ取り付け部の振幅をより大きくすることができ、ひいては当該方向へのブラシ部の毛先の振幅をより大きくすることができる。また、この場合には、美容器の組み立てをより容易に行うことができる。
【0043】
上記ブラシ取り付け部は、上記振動モータにおける上記回転軸の軸心方向に対して略直角方向に延設されていることが好ましい。この場合には、上記ブラシ取り付け部の振動における、上記軸心方向に直交する任意の方向への振幅をより大きくすることができる。そして、この振動がブラシ部の毛先に伝わることにより、ブラシ部の毛先を、毛穴の深さ方向により大きく振動させることができる。そのため、毛穴の内部に付着している汚れ等をより効率よく除去することができる。
【0044】
また、この場合には、ブラシ取り付け部の振動における、上記軸心方向への振幅が過度に大きくなることを抑制することができる。その結果、ブラシ部の毛先と肌の表面との摩擦をより軽減することができる。
【0045】
上述した「ブラシ取り付け部が振動モータにおける回転軸の軸心方向に対して略直角方向に延設されている」状態には、ブラシ取り付け部の延設方向が、回転軸の軸心方向に対して幾何学上の直角方向である状態と、回転軸の軸心方向に対して幾何学上の直角方向から若干傾いている状態とが含まれる。より具体的には、ブラシ取り付け部の延設方向と回転軸の軸心方向とのなす角度が75~115°であれば、上述した作用効果を十分に奏することができる。
【0046】
また、ブラシ取り付け部の延設方向と回転軸の軸心方向とのなす角度が90°に近くなるほど、毛穴の深さ方向へのブラシの振幅を大きくすることができる。かかる観点からは、ブラシ取り付け部の延設方向と回転軸の軸心方向とのなす角度を80~110°にすることが好ましく、85~95°にすることがより好ましく、88~92°にすることが更に好ましい。
【0047】
上記第1ブラシ毛及び上記第2ブラシ毛は、上記ブラシ取り付け部の延設方向に沿って延びていることが好ましい。この場合には、ブラシ取り付け部の振動を効率よくブラシ部の毛先に伝達することができる。その結果、肌の表面や毛穴の内部に付着している汚れ等をより効率よく除去することができる。
【実施例】
【0048】
(
参考例1)
上記美容器の
参考例について、図を用いて説明する。
図1~
図3に示すように、美容器1は、本体部2と、本体部2の外側に配置され、多数のブラシ毛311(311a、311b)を有するブラシ部3と、
図6に示すように、本体部2内に配置され、ブラシ部3を振動させる振動モータ4とを有している。
図13に示すように、ブラシ部3は、ブラシ毛311の毛先312のうち、最も外側に配置された毛先312の位置を滑らかに連ねてなる最外輪郭面310を有している。ブラシ毛311は、最外輪郭面310に毛先312aが配置された多数の第1ブラシ毛311aと、最外輪郭面310よりも内側に毛先312bが配置された多数の第2ブラシ毛311bとを有している。
【0049】
また、美容器1は、
図6に示すように、振動モータ4を保持するモータ保持部5と、本体部2に対してモータ保持部5を相対的に変位可能な状態で連結する連結部11(11a、11b)と、モータ保持部5から延設され、ブラシ部3に接続されるブラシ取り付け部6とを有している。振動モータ4は、
図6に示すように、偏心錘41を備えた回転軸42を有している。また、ブラシ取り付け部6は、振動モータ4における回転軸42の軸心方向420と異なる方向に延設されている。
【0050】
なお、
図3、
図6及び
図15においては、第1ブラシ毛311aと第2ブラシ毛311bとの境界を明瞭に示したが、実際には、両者の境界が不明瞭になることがある。また、
図1及び
図4においては、便宜上、第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bの記載を省略した。
【0051】
図1~
図3に示すように、美容器1の本体部2は棒状を呈している。
図4~
図6に示すように、振動モータ4及びモータ保持部5は本体部2の長手方向における端部に収容されている。なお、
図4~
図6においては、簡略化のため、ネジや電線等の接続部品の記載を一部省略している。
【0052】
図5及び
図6に示すように、振動モータ4の回転軸42は、本体部2の長手方向に沿って伸びている。また、
図6に示すように、ブラシ取り付け部6は、振動モータ4における回転軸42の軸心方向420に対して直角方向に延設されている。ブラシ取り付け部6は、本体部2の外部まで延設されている。また、ブラシ取り付け部6の先端には、ブラシ部3が着脱可能に取り付けられている。
【0053】
以下において、振動モータ4における回転軸42の軸心方向420を「前後方向X」、前後方向Xにおける振動モータ4が収容されている側を「前方X1」、その反対側を「後方X2」ということがある。また、ブラシ取り付け部6の延設方向を「上下方向Z」、上下方向Zにおけるブラシ部3側を「下方Z2」、その反対側を「上方Z1」ということがある。また、前後方向X及び上下方向Zの両方に直交する方向を「幅方向Y」ということがある。美容器1の方向に関するこれらの記載はいずれも便宜上のものであり、美容器1を実際に使用する際の向きとは何ら関係がない。
【0054】
本例の美容器1において、前後方向Xにおける本体部2の断面形状は略楕円状を呈している。また、
図2及び
図3に示すように、前後方向Xにおける本体部2の中央部20は、両端部に比べてわずかに細くなっている。
【0055】
図1~
図3に示すように、本例のブラシ部3は、本体部2の側周面に配置されている。また、本例のブラシ部3は、
図3に示すように、第1ブラシ毛311aと、第2ブラシ毛311bとを有するブラシ本体31と、ブラシ本体31を保持するブラシホルダー32とを有している。第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bは、上下方向Z、即ち、ブラシ取り付け部6の延設方向に沿って延びている。
【0056】
図2及び
図3に示すように、本例のブラシ本体31は、上下方向Zに伸びた円柱状を呈しており、上方Z1の端面においてブラシホルダー32に保持されている。また、
図3及び
図13に示すように、ブラシ本体31の下方Z2の端面には、第1ブラシ毛311aの毛先312aが配置されている。
【0057】
本例の最外輪郭面310は、ブラシ本体31の下方Z2の端面、即ち第1ブラシ毛311aの毛先312aを滑らかに連ねてなる輪郭面から構成されており、
図3に示すように平坦な形状を呈している。
【0058】
第2ブラシ毛311bの毛先312bは、最外輪郭面よりも内側に配置されている。本例においては、
図13に示す、最外輪郭面310から第2ブラシ毛311bの毛先312bまでの距離dは0.25~3.0mmである。
【0059】
図13に示すように、第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bは、毛先312a、312bに近いほど外径が細くなっているテーパ部313を有している。テーパ部313の長さLは、4~10mmである。
【0060】
本例のブラシ部3における、第1ブラシ毛311aの材質と第2ブラシ毛311bの材質とは同一である。具体的には、本例の第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bは、ポリブチレンテレフタレートから構成されている。また、
図14に一例を示すように、本例の第1ブラシ毛311aは、波状に縮れている。図には示さないが、第2ブラシ毛311bも、第1ブラシ毛311aと同様に、波状に縮れている。
【0061】
第1ブラシ毛311aの本数は、ブラシ毛311全体の本数の20~60%である。また、第2ブラシ毛311bの本数は、ブラシ毛311全体の本数の40~80%である。第1ブラシ毛311aと第2ブラシ毛311bとは、均一に混合されている。
【0062】
図12に示すように、ブラシホルダー32は、カップ状を呈するホルダー本体部321と、下面視におけるホルダー本体部321の中央に配置されたばねカバー322(
図6参照)と、ホルダー本体部321とばねカバー322との間に保持されたブラシ装着ばね323とを有している。
図4及び
図12に示すように、ホルダー本体部321の中央には、後述するシャフト62における回転規制部622(
図8参照)の形状に対応した六角形の貫通孔324が形成されている。この貫通孔324に回転規制部622を挿入するとともに溝部624内にブラシ装着ばね323を係合させることにより、ブラシ部3を着脱可能に装着することができる。また、貫通孔324に回転規制部622を挿入することにより、ブラシ部3が装着された状態において、ブラシ取り付け部6を回転中心とするブラシ部3の回転運動を規制することができる。
【0063】
図4に示すように、本体部2は、ブラシ取り付け部6が突出している下側ハウジング21と、ネジ221(
図6参照)を介して下側ハウジング21に締結される中間ハウジング22と、中間ハウジング22に係合される上側ハウジング23とを有している。
図1~
図3に示すように、下側ハウジング21は、本体部2の下側半分の外壁を構成している。また、上側ハウジング23は、本体部2の上側半分の外壁を構成している。
【0064】
本体部2の外表面における、下側ハウジング21と上側ハウジング23との間には、中間ハウジング22の外周端縁が露出している。下側ハウジング21、中間ハウジング22及び上側ハウジング23は、ABS樹脂より構成されている。また、中間ハウジング22の表面には、導電性を有するクロムめっき膜が形成されている。
【0065】
図6に示すように、下側ハウジング21と中間ハウジング22との間には、美容器1を動作させるための部品を収容する中空部25が形成されている。
図4~
図6に示すように、下側ハウジング21の外周端縁と中間ハウジング22の外周端縁との間には、Oリング211が狭持されている。また、
図6に示すように、中間ハウジング22と、これを下側ハウジング21に締結するネジ221との間にもOリング222が狭持されている。美容器1は、これらのOリング211、222により、下側ハウジング21と中間ハウジング22との間から中空部25内への水分等の浸入を防止することができるように構成されている。
【0066】
図6に示すように、下側ハウジング21は、ブラシ取り付け部6が突出している開口部212の周囲に、ブラシ収容壁部214を有している。ブラシ収容壁部214は、下側ハウジング21から下方Z2に向かって立設されている。また、ブラシ収容壁部214の内側には、ブラシ部3が着脱可能に取り付けられている。
【0067】
また、
図4に示すように、下側ハウジング21は、前方X1の端部に、3本のガイド棒24を有している。ガイド棒24は、上方Z1に向かって立設されている。また、ガイド棒24の上端部には、Eリング241(
図5及び
図7参照)を取り付けるための係止溝242(
図7参照)が形成されている。
【0068】
図6に示すように、モータ保持部5は、ガイド棒24に取り付けられるモータベース51と、モータベース51との間に振動モータ4を保持するモータカバー52とを有している。
図8~
図10に示すように、モータベース51は、板状部511と、板状部511から上方Z1に向かって突出したモータ受け部512とを有している。本例の板状部511及びモータ受け部512は、ABS樹脂から構成されている。
【0069】
板状部511は、3箇所の貫通孔513(
図10参照)を有している。また、
図7、
図9及び
図10に示すように、貫通孔513には、弾性部材53が上下方向Zの両側から取り付けられている。
【0070】
本例の弾性部材53は、スチレンゴムから構成されている。弾性部材53は、
図11に示すように、ガイド棒24が挿通される挿通孔531を備え、円盤状を呈するゴム基部532と、挿通孔531の周囲に立設された4箇所の突起533とを有している。各突起533の幅は、隣り合う突起533間の間隔と略同一となっている。
【0071】
図10に示すように、貫通孔513内においては、一対の弾性部材53(53a、53b)のうち一方の弾性部材53aにおける隣り合う突起533aの間に他方の弾性部材53bの突起533bが挿入されている。また、板状部511は、一対のゴム基部532(532a、532b)の間に挟持されている。
【0072】
図5~
図7に示すように、弾性部材53には、下側ハウジング21のガイド棒24が挿通されている。また、
図6及び
図7に示すように、ガイド棒24は、弾性部材53の上端面よりも上方Z1に突出している。
図7に示すように、この突出部分には、Eリング241を取り付ける係止溝242が形成されている。
【0073】
図5及び
図7に示すように、係止溝242にEリング241を取り付けることにより、下側ハウジング21に対してモータベース51を相対的に変位可能な状態で連結することができる。このように、本例の連結部11は、モータベース51の板状部511に保持された弾性部材53と、下側ハウジング21に設けられたガイド棒24と、係止溝242に取り付けられたEリング241とから構成されている。また、本例の美容器1は、3箇所の連結部11を有している。各連結部11は、本体部2に設けられたガイド棒24と、モータベース51に保持された弾性部材53とを有しており、ガイド棒24は、弾性部材53を貫通している。
【0074】
モータカバー52は、
図5に示すネジ521によりモータ受け部512に締結されている。モータカバー52とモータ受け部512との間には、振動モータ4が狭持されている。なお、本例のモータカバー52は、ABS樹脂から構成されている。
【0075】
本例の振動モータ4は、シリンダ型の振動モータ4である。振動モータ4は、回転軸42の軸心方向420が本体部2の長手方向に沿うように配置されている。また、振動モータ4の偏心錘41は、前後方向Xにおける前方X1側に配置されている。
【0076】
図5及び
図6に示すように、3箇所の連結部11(11a、11b)のうち2箇所の連結部11aは、振動モータ4の重心40に対して回転軸42の軸心方向420における前方X1側に配置されており、残る1箇所の連結部11bは後方X2側に配置されている。
【0077】
図9に示すように、ブラシ取り付け部6は、上面視において、3箇所の貫通孔513の中央に設けられている。
図10に示すように、ブラシ取り付け部6は、板状部511と一体に形成された筒状部61と、筒状部61を上下方向Zに貫通するシャフト62とを有している。
図6に示すように、筒状部61の下方Z2の端部は、下側ハウジング21の開口部212を介して本体部2の外側まで延設されている。
【0078】
また、開口部212における下側ハウジング21と筒状部61との間は、シール部材213により塞がれている。このシール部材213により、開口部212から中空部25内への水分等の浸入を防止することができる。なお、本例のシール部材213は、ニトリルゴムから構成されている。
【0079】
本例のシャフト62は、金属から構成されている。
図6に示すように、シャフト62の上方Z1の端部は、中空部25内まで延設されている。また、シャフト62の上端面には、シャフト62と電流生成部12(後述)とを電気的に接続するためのネジ孔621(
図7及び
図10参照)が設けられている。
図8及び
図10に示すように、シャフト62の下方Z2の端部は、筒状部61よりも下方Z2に突出している。
図8に示すように、この突出部分は、六角柱状を呈する回転規制部622と、回転規制部622から下方Z2に突出したブラシ係合部623とを有している。ブラシ係合部623には、ブラシ部3を係合させるための溝部624が設けられている。
【0080】
本例の美容器1において振動モータ4の偏心錘41を回転させると、その慣性により、振動モータ4が振動する。そして、振動モータ4の振動に伴って、モータ保持部5に微小な変位や傾きが発生する。モータ保持部5の変位や傾きの方向は、振動モータ4の回転数や、モータ保持部5等の具体的な形状等によって種々の方向に変化する。
【0081】
例えば
図15(a)に示すように、モータ保持部5は、偏心錘41の慣性によって、前後方向Xに延びた中心軸C1の周りを回転することがある(矢印A1)。この回転運動がブラシ取り付け部6を介してブラシ部3に伝わると、
図15(b)に示すように、ブラシ本体31の毛先312a、312bが前後方向Xに延びた中心軸C2の周りを回転する(矢印A2)。その結果、ブラシ毛311の毛先312a、312bに、幅方向Yへの変位及び上下方向Zへの変位を伴う振動が付与される。
【0082】
図15に示したブラシ毛311の毛先312a、312bの動きは一例であり、モータ保持部5が種々の方向に振動し、あるいは傾くことにより、前後方向X、幅方向Y及び上下方向Zへの変位を組み合わせた複雑な変位を伴う振動をブラシ本体31の毛先312a、312bに付与することができる。これにより、肌表面や毛穴Hの内部の汚れDを効率よく除去することができる。
【0083】
次に、本例の美容器1のその他の部分についてより詳細に説明する。
図6に示すように、下側ハウジング21と中間ハウジング22との間の中空部25には、振動モータ4に加えて、電流生成部12及び受電コイル部13が収容されている。電流生成部12は、振動モータ4の駆動を制御する制御基板121と、制御基板121及び振動モータ4に電力を供給する電源部122とを有している。制御基板121と電源部122とは互いに係合されており、前後方向Xにおける美容器1の中央部に配置されている。制御基板121は、振動モータ4、電源部122、受電コイル部13及び発光モジュール16のそれぞれと、図示しない電線を介して電気的に接続されている。
【0084】
本例の電源部122は、二次電池である。受電コイル部13は、前後方向Xにおける後方X2の端部に配置されている。受電コイル部13は、美容器1の外部に配置した送電コイルから送信された電力を受信することができるように構成されている。受電コイル部13が受信した電力は、制御基板121を介して電源部122に充電される。
【0085】
より具体的には、本例の美容器1は、
図16~
図18に示す充電台7を用いて充電することができる。充電台7は、
図18に示すように、美容器1の後方端部17、即ち受電コイル部13が内蔵されている側の端部の形状に対応する凹部71を有しており、凹部71内に美容器1の後方端部17を差し込むことができるように構成されている。また、充電台7の内部には、送電コイル72が収容されている。送電コイル72は、美容器1の後方端部17が凹部71内に差し込まれた状態において、充電台7の壁部711及び下側ハウジング21(図示略)を介して受電コイル部13と対面する位置に配置されている。
【0086】
また、
図3、
図4及び
図6に示すように、本例のブラシ部3は、多数の繊維からなるブラシ本体31と、ブラシ本体31を保持するブラシホルダー32と、ブラシホルダー32の外表面に配置されたブラシ電極325とを有している。ブラシ電極325は、電流生成部12を介して電極部14と電気的に接続されている。
【0087】
本例のブラシ電極325は、電気伝導性を有するクロムめっき膜から構成されている。ブラシ電極325は、ホルダー本体部321の表面に設けられており、ブラシ装着ばね323を介してブラシ取り付け部6のシャフト62と電気的に接続されている。また、シャフト62の上方Z1の端部に設けられたネジ孔621には、制御基板121から延設された電線の端子123(
図5、
図7参照)がネジにより締結されている。これにより、ブラシ電極325と電流生成部12とが電気的に接続されている。
【0088】
本例の美容器1は、使用者が電極部14を把持するとともに、ブラシ電極325と肌との間に電気伝導性を有する液状や泡状などの洗浄剤を介在させることにより、使用者、ブラシ電極325、電流生成部12及び電極部14を含む閉回路を形成することができる。そして、この閉回路に微弱な電流を流すことにより、イオンクレンジングを実施し、電荷を有する汚れ成分を肌からより容易に除去することができる。
【0089】
ここで、イオンクレンジングとは、ブラシ電極を肌に付着した汚れ成分とは反対の極性に帯電させることにより、汚れ成分をブラシ電極に引きつけて肌から汚れ成分を取り除きやすくする技術である。例えば、ブラシ電極をプラスに帯電させることで、マイナスに帯電している汚れ成分をブラシ電極に引きつけることができる。
【0090】
本実施例のように、ブラシ電極と使用者との間の電流経路を洗浄剤から構成することにより、ブラシ毛311として使用可能な材料の選択肢を広くすることができる。ブラシ毛311としては、例えば合成樹脂等の非導電材料を使用することができる。また、熊野筆(登録商標)などを利用することもできる。
【0091】
本例の美容器1は、下面視における下側ハウジング21の中央部に配置されたスイッチプレート15(
図2及び
図3参照)を介して制御基板121の切り替えスイッチ(図示略)を押し込むことにより、振動モータ4のオン状態とオフ状態との切り替え、及び、ブラシ電極325と電極部14とを介して肌に流す微弱電流の発生と停止との切り替えを行うことができるように構成されている。
【0092】
また、
図6に示すように、下側ハウジング21におけるブラシ収容壁部214の内側には、発光モジュール16が配置されている。発光モジュール16は、振動モータ4がオン状態になっているときに発光するように構成されている。
【0093】
発光モジュール16の下方Z2は、蓋部161により覆われている。蓋部161とブラシ収容壁部214との間には、Oリング162が狭持されている。これにより、蓋部161とブラシ収容壁部214との間から発光モジュール16側に水分等が浸入することを防止できる。
【0094】
本例の美容器1の作用効果について説明する。美容器1は、多数の第1ブラシ毛311aと、多数の第2ブラシ毛311bとを備えたブラシ部3を有している。そのため、最外輪郭面310における、隣り合うブラシ毛311の毛先312a、312bの間隔が従来の振動ブラシよりも広くなっている。それ故、美容器1は、ブラシ部3を振動させた際の隣り合う第1ブラシ毛311aの毛先312aの干渉を従来よりも低減することができる。
【0095】
また、ブラシ部3は、最外輪郭面310を肌に当接させた際に、第2ブラシ毛311bの毛先312bが肌表面から離隔している状態を容易に実現することができる。さらに、第2ブラシ毛311bの毛先312bが肌表面に当接した際の押圧力を、第1ブラシ毛311aの毛先312aよりも弱くすることができる。それ故、第2ブラシ毛311bを第1ブラシ毛311aに比べて大きい振幅で振動させ、ひいては第1ブラシ毛311aの毛先312aを効率よく振動させることができる。
【0096】
また、ブラシ部3は、最外輪郭面310における、隣り合うブラシ毛311の毛先312a、312bの間隔が広くなっているため、最外輪郭面310を肌に当接させた際に、ブラシ毛311を従来の振動ブラシよりも容易に撓ませることができる。それ故、美容器1によれば、ブラシ毛311の毛先312a、312bに伝わる振動が適度に緩和され、ブラシ部3を振動させた際の肌への刺激を低減することができる。
【0097】
また、最外輪郭面310から第2ブラシ毛311bの毛先312bまでの距離は、0.25~3.0mmである。そのため、ブラシ部3を振動させた際の肌への刺激をより低減するとともに、肌表面や毛穴の汚れ等をより効率よく除去することができる。
【0098】
第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bは、毛先312a、312bに近いほど外径が細くなっているテーパ部313を有している。また、テーパ部313の長さは4~10mmである。そのため、テーパ部313の撓みによりブラシ部3の毛先312a、312bに伝わる振動を十分に緩和することができ、ひいてはブラシ部3を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0099】
また、第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bは、波状に縮れている。そのため、最外輪郭面310を肌に当接させた際に、第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bをより容易に撓ませることができる。その結果、ブラシ毛311をより容易に撓ませることができ、ひいてはブラシ部3を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0100】
第1ブラシ毛311aの本数は、ブラシ毛311全体の本数の20~60%である。そのため、肌表面に当接する第1ブラシ毛311aの毛先312aの数を十分に多くし、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うとともに、ブラシ部3を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0101】
また、第1ブラシ毛311aと第2ブラシ毛311bとは均一に混合されている。そのため、最外輪郭面310に、第1ブラシ毛311aの毛先312aを均一に配置することができる。その結果、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うとともに、ブラシ部3を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0102】
また、本体部2は、その内部に、振動モータ4を保持するモータ保持部5と、本体部2に対してモータ保持部5を相対的に変位可能な状態で連結する連結部11と、モータ保持部5から延設され、ブラシ部3に接続されるブラシ取り付け部6とを有している。振動モータ4は、偏心錘41を備えた回転軸42を有している。そして、ブラシ取り付け部6は、振動モータ4における回転軸42の軸心方向420と異なる方向に延設されている。
【0103】
そのため、振動モータ4により付与されるブラシ取り付け部6の振動は、回転軸42の軸心方向420(前後方向X)への変位と、軸心方向420に直交する任意の方向(幅方向Y、上下方向Z)への変位とを組み合わせた複雑な変位を伴うものとなる。そして、この振動がブラシ取り付け部6を介してブラシ部3に効率よく伝わることにより、例えば
図13や
図15に示すように、毛穴Hの深さ方向(上下方向Z)への変位と、この方向に直交する任意の方向(前後方向X、幅方向Y)への変位とを組み合わせた複雑な変位を伴う振動をブラシ毛311の毛先312a、312bに付与することができる。その結果、ブラシ部3により、肌の表面や毛穴の内部に付着している汚れ等を効率よく除去することができる。
【0104】
さらに、本例においては、ブラシ取り付け部6は、軸心方向420に対して直角方向(上下方向Z)に延設されている。そのため、上述したブラシ取り付け部6の振動における、軸心方向420に直交する任意の方向(幅方向Y、上下方向Z)への振幅をより大きくすることができるとともに、軸心方向420(前後方向X)への振幅が過度に大きくなることを抑制することができる。そのため、ブラシ毛311の毛先312a、312bを、毛穴の深さ方向により大きく振動させることができる。そのため、ブラシ毛311の毛先312a、312bと肌の表面との摩擦をより軽減しつつ、毛穴の内部に付着している汚れ等をより効率よく除去することができる。
【0105】
また、連結部11は、本体部2とモータ保持部5との間に介在させた弾性部材53を有している。そのため、振動モータ4を振動させた際にモータ保持部5が弾性部材53から反発力を受け、ブラシ取り付け部6により効率よく振動を伝達することができる。その結果、ブラシ取り付け部6の振幅をより大きくすることができ、ひいては肌の表面や毛穴の内部に付着している汚れをより効率よく除去することができる。
【0106】
また、連結部11は、本体部2に設けられたガイド棒24と、モータ保持部5に保持された弾性部材53とを有しており、ガイド棒24は、弾性部材53を貫通している。そのため、モータ保持部5及びこれに連なるブラシ取り付け部6が、ガイド棒24に沿って比較的自由に移動することができる。その結果、ガイド棒24に沿う方向へのブラシ取り付け部6の振幅をより大きくすることができ、ひいては肌の表面や毛穴の内部に付着している汚れをより効率よく除去することができる。また、美容器1の組み立てをより容易に行うという効果を得ることもできる。
【0107】
以上のように、美容器1によれば、肌への刺激を低減するとともに、肌表面や毛穴内部の汚れを効率よく除去することができる。
【0108】
(実施例1)
本例は、最外輪郭面340の形状を変更したブラシ部302の例である。なお、本実施例以降において用いる符号のうち、既出の実施例または参考例において用いた符号と同一のものは、特に説明のない限り、既出の実施例または参考例における構成要素等と同様の構成要素等を表す。
【0109】
本例のブラシ部302におけるブラシ本体34は、
図19に示すように、ブラシ毛311の根元から先端側へ向かうにつれて拡開している。これにより、ブラシ部302における隣り合うブラシ毛311の間隔が、毛先312a、312bに近いほど広がっている。
【0110】
また、ブラシ部302の最外輪郭面340は、その外周端縁341よりも中心342が突出した凸曲面状を呈している。ブラシ部302の最外輪郭面340には、第1ブラシ毛311aの毛先312aが配置されている。また、第2ブラシ毛311bの毛先312bは、最外輪郭面340よりも内側に配置されている。
【0111】
本例のブラシ本体34は、最外輪郭面340の近傍に、第1ブラシ毛311aの先端部分が突出している領域Aを有している。この領域Aは、例えば
図19に示す側面視においては、最外輪郭面340に沿って形成された、比較的ブラシ毛311が密集していない領域として確認される。また、領域Aよりもブラシ毛311の根元に近い側には、領域Aに比べてブラシ毛311の毛先312a、312bが密集している領域Bが存在していることを確認することができる。
【0112】
本例における最外輪郭面340と第2ブラシ毛311bの毛先312bとの距離dは、0.25~3.0mmである。その他は参考例1と同様である。
【0113】
本例のように、最外輪郭面340が平坦でない場合であっても、第2ブラシ毛311bの毛先312bを最外輪郭面310よりも内側に配置することにより、参考例1と同様の作用効果を奏することができる。また、この場合には、例えば顔等の比較的起伏が大きい部分において、最外輪郭面340を肌の起伏に応じて接触させ、肌表面や毛穴の汚れ等をむらなく除去することができる。
【0114】
また、本例のブラシ部302における隣り合うブラシ毛311の間隔は、毛先312a、312bに近いほど広がっている。そのため、最外輪郭面340における、隣り合うブラシ毛311の毛先312a、312bの間隔を十分に広くすることができる。その結果、第1ブラシ毛311aの毛先312aをより効率よく振動させ、第1ブラシ毛311aによる肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。さらに、この場合には、ブラシ部3を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0115】
(
実施例2)
本例は、
図20及び
図21に示すように、第1ブラシ毛311a、第2ブラシ毛311bに加えて、更に、第2ブラシ毛311bの毛先312bの位置よりも内側に毛先312cが配置された第3ブラシ毛311cを有するブラシ部303の例である。
図21に示すように、本例のブラシ部303は、
実施例1と同様の形状を呈するブラシ本体34を有している。なお、
図21においては、便宜上、ブラシホルダー32の記載を省略した。
【0116】
図20及び
図21に示すように、第3ブラシ毛311cは、第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bに取り囲まれ、束状にまとまって配置されている。本例においては、
図20に示すように、下面視におけるブラシ本体34の中心342の周囲に、3つの第3ブラシ毛311cの束が配置されている。第3ブラシ毛311cの束の太さは2mmである。また、第3ブラシ毛311cの毛先312cと、ブラシ本体34の中心342との高さの差は6mmである。その他は
実施例1と同様である。
【0117】
本例のブラシ部303においては、
図21に一例を示すように、第3ブラシ毛311cの束の周囲に配置された第1ブラシ毛311a及び第2ブラシ毛311bが、第3ブラシ毛311cの束と最外輪郭面340との間に形成される空間343に押し出されやすい。そのため、最外輪郭面340における隣り合うブラシ毛311の毛先312の間隔をより広くすることができる。その結果、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うとともに、ブラシ部303を振動させた際の肌への刺激をより低減することができる。
【0118】
また、この場合には、液状あるいは泡状の洗浄剤を含ませた状態でブラシ部303を振動させた際に、第3ブラシ毛311cの束と最外輪郭面340との間に形成される空間343に空気が入りやすくなる。それ故、ブラシ部303を振動させた際に、よりきめ細かな泡を発生させ、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。
【0119】
さらに、この場合には、ブラシ毛311を洗浄する際に、第3ブラシ毛311cが配置された部分からブラシ毛311を容易に掻き分け、ブラシ部303の内部の洗浄を行うことができる。また、ブラシ部303を洗浄した後に、短時間でブラシ部303を乾燥させることができる。これらの結果、ブラシ部303の衛生管理をより容易に行うことができる。
【0120】
また、本例においては、第3ブラシ毛311がブラシ本体34の中心342の周囲に配置されている。そのため、ブラシ本体34の中心342を肌に接触させ、肌表面や毛穴の汚れ等の除去をより効率よく行うことができる。さらに、第1ブラシ毛311aの毛先の振幅を大きくする、洗浄剤を使用した際にきめ細かい泡を発生させる等の、上述した第3ブラシ毛311による作用効果を得ることもできる。
【0121】
本発明に係る美容器1は、上述した実施例の態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0122】
例えば、実施例2においては3つの第3ブラシ毛311cの束を有するブラシ部303の例を示したが、第3ブラシ毛311cの束の数やその太さ、長さ、配置は実施例3の態様に限定されるものではなく、美容器の用途等に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 美容器
2 本体部
3、302、303 ブラシ部
311a 第1ブラシ毛
311b 第2ブラシ毛
312a、312b 毛先