(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】有機親水性塗料組成物、及び親水性皮膜、並びに熱交換器用アルミニウム材
(51)【国際特許分類】
C09D 129/04 20060101AFI20220111BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220111BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220111BHJP
C09D 171/02 20060101ALI20220111BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20220111BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20220111BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C09D129/04
C09D5/00 Z
C09D7/63
C09D171/02
F28F1/32 H
F28F13/18 B
F28F21/08 A
(21)【出願番号】P 2017085701
(22)【出願日】2017-04-24
【審査請求日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2016085705
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511113718
【氏名又は名称】アルコム・ニッケイ・スペシャルティ・コーティングズ・エスデーエヌ・ビーエッチデー
【氏名又は名称原語表記】Alcom Nikkei Specialty Coatings Sdn. Bhd.
【住所又は居所原語表記】No.3, Persiaran Waja, Bukit Raja Industrial Estate, 41050 Klang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】石井 透
(72)【発明者】
【氏名】ヌル-サラフィナ モハメッド-ナスリ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/056576(WO,A1)
【文献】特開2009-139036(JP,A)
【文献】特開2002-275407(JP,A)
【文献】特開2014-000534(JP,A)
【文献】特開2007-268860(JP,A)
【文献】特開平04-366182(JP,A)
【文献】特開2006-1909(JP,A)
【文献】特開平5-302042(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0518699(EP,A2)
【文献】特開平5-025793(JP,A)
【文献】特開2006-169500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
F28F 1/00- 1/44
F28F 11/00- 19/06
F28F 21/00- 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂
及びポリエチレングリコール系樹脂を含むと共に、添加成分としてフェノール化合物を含有する有機親水性塗料組成物であり、
前記添加成分として含有されるフェノール化合物が、分子中に2つ以上のヒドロキシフェニル基を有すると共に、各ヒドロキシフェニル基にはヒドロキシル基に対して立体障害効果を示す嵩高置換基が存在
し、
前記有機親水性塗料組成物が、樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂40~100g/L及びポリエチレングリコール系樹脂4~15g/Lを含有し、かつ、添加成分としてフェノール化合物0.01~12g/Lを含有することを特徴とする有機親水性塗料組成物。
【請求項2】
前記フェノール化合物の各ヒドロキシフェニル基中に存在する嵩高置換基が、ヒドロキシル基に隣接して位置するアルキル基であることを特徴とする
請求項1に記載の有機親水性塗料組成物。
【請求項3】
前記フェノール化合物の各ヒドロキシフェニル基中に存在する嵩高置換基が、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、及びtert-ブチル基から選ばれた1種又は2種以上のアルキル基であることを特徴とする
請求項2に記載の有機親水性塗料組成物。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系樹脂が完全鹸化タイプである
請求項1~3のいずれかに記載の有機親水性塗料組成物。
【請求項5】
前記
請求項1~4のいずれかに記載の有機親水性塗料組成物を塗布して焼き付けた皮膜であり、硬質材料の本体表面の一部又は全部を被覆することを特徴とする親水性皮膜。
【請求項6】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面の一部又は全部に、前記
請求項1~4のいずれかに記載の有機親水性塗料組成物を塗布して焼き付けた親水性皮膜を有することを特徴とする熱交換器用アルミニウム材。
【請求項7】
前記熱交換器用アルミニウム材がプレコートフィン材である
請求項6に記載の熱交換器用アルミニウム材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材、銅又はその合金からなる銅材、鋼材等の金属材料を始めとして、プラスチック材料、ガラスやタイル等のセラミックス材料等の種々の硬質材料の表面に親水性皮膜を形成するための有機親水性塗料組成物、及びこの有機親水性塗料組成物を用いて形成された親水性皮膜、並びに前記親水性皮膜を有する熱交換器用アルミニウム材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料、プラスチック材料、セラミックス材料等の種々の硬質材料の表面に親水性皮膜を有する親水性硬質材料は様々な分野で用いられている。例えば、アルミニウム材を硬質材料とする親水性硬質材料は、軽量で熱伝導性や加工性等に優れていることから、フィン材やチューブ材等の種々の熱交換器用アルミニウム材として建物や自動車等で用いる空調機器等の用途に汎用されている。
【0003】
そして、このような親水性硬質材料においては、単に親水性に優れているということだけでなく、その用途に応じて、多様で特有な機能が要求されている。例えば、熱交換器用アルミニウム材においては、特にフィン材の場合、熱交換器の熱交換効率を高める目的や、熱交換器、ひいては空調機器の小型化を進める目的等のため、フィン相互間の間隔をできるだけ狭くすることや、フィンにルーバーと称される切れ目を入れることが行なわれており、このために、冷房時等において、空気中の水分がフィン表面等の熱交換表面で凝縮し、この凝縮した凝縮水が水滴として熱交換表面に溜り易く、熱交換面積を減少せしめて熱交換効率を低下させ、あるいは、フィン相互間にブリッジを形成して通風抵抗を増加させ、結果として熱交換器の熱交換効率を大きく低下させる原因になることから、このフィン材の表面に親水性塗料組成物を用いて親水性皮膜を設け、フィン材表面の水濡れ性を高めて水滴の生成を可及的に防止し、これによって凝縮水による水滴の生成を長期に亘って抑制する試みが行われており、また、この様なフィン材については、熱交換器に組み込まれる前に、予め親水性皮膜を設けて長期親水性が付与されたプレコートフィン材として供給されている。
【0004】
そこで、このような熱交換器用アルミニウム材表面の親水性皮膜を形成するための親水性塗料組成物についても、水ガラスやシリカ等の無機系の親水性塗料組成物から始まり、この無機系親水性塗料組成物の問題点、すなわち成形時の金型磨耗や冷房運転時の不快臭の問題を解決したポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、セルロース系樹脂等の水溶性の親水性樹脂を含む有機親水性塗料組成物が提案され(特許文献1~4参照)、更に、これら有機親水性塗料組成物を用いて形成された親水性皮膜の問題点、すなわち耐水性や長期親水性が低下するという問題を解決したものとして、ポリビニルアルコール系樹脂及びポリエチレングリコール系樹脂に1価又は2価の元素を有する硝酸化合物を添加した有機親水性塗料組成物が提案され(特許文献5)、更にまた、長期親水性を確保できると共に有機酸類や有機エステル類等の汚染物質が付着するのを防止する耐汚染性を有するものとして、ポリアクリル酸・スルホン酸系コポリマー等の親水性樹脂にジブチルヒドロキシトルエン、カルバジド化合物、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムから選ばれた特定の化合物を添加した有機親水性塗料組成物も提案されている(特許文献6)。
【0005】
ところで、建物や自動車等で用いる近年の空調機器は、冬季には暖房用として用いられ、また、夏季には冷房用として用いられる冷暖房用空調機器であることが多く、このような冷暖房用空調機器に用いられる熱交換器用アルミニウム材、特にフィン材の使用環境は冬季と夏季とで全く異なっており、例えば、冬季の暖房運転時には結露水の発生がなくて調理時の油滴、床用のワックスやオイル等に起因する油性汚れ、整髪料や化粧品などに起因する油性汚れ、喫煙等に起因するニコチンや多環芳香族炭化水素等の油性汚れ等を始めとしてハウスダスト等の様々な汚染物質等が付着し易い環境になり、反対に、夏季の冷房運転時には結露水の発生によりこれらの汚染物質等が付着し難い環境になる。そこで、プレコートフィン材においては、できるだけ長期間に亘って優れた熱交換効率を維持するという観点から、その親水性皮膜に対しては、上述した長期親水性等の性能に加えて、暖房運転時にフィン材の親水性皮膜に一旦付着した汚染物質等に対して、冷房運転時にフィン材表面に発生する凝縮水でこれら汚染物質等を容易に洗い流すことができる、いわゆる「自浄性能」を備えていることが望ましい。
【0006】
そこで、従来においても、固形分中15重量%以上のアクリル系高分子体(A:スルホン酸基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーをそれぞれ40mol%以上含む重合体)と固形分中40重量%以上のアクリル系高分子体(B:カルボキシル基含有モノマーを65mol%以上含む重合体)とを含むアクリル系高分子体混合物の水溶液に、アンモニアやジメチルエタノールアミン(DMEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジメチルアミン(DMA)等のアミン、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、カルボキシメチルセルロースアンモニウム(CMC-アンモニウム)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)等のアルカリ金属水酸化物をそれぞれ所定の割合で添加して得られた塗料組成物、及びこの塗料組成物由来の塗膜を有する熱交換器用フィンが提案されており、この塗料組成物及び熱交換器用フィンによれば、油脂等の汚染物質が付着しても、冷房運転時の結露水により汚染物質を洗い流し、長期間に亘って親水性を維持することができるとされている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-173,632号公報
【文献】特開平02-258,874号公報
【文献】特開平05-302,042号公報
【文献】特開平09-014,889号公報
【文献】特許第3,890,908号公報
【文献】特許第5,319,952号公報
【文献】特開2010-159,379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献7の塗料組成物は、アクリル系高分子体(A)及び(B)という特殊なアクリル系高分子体混合物を主成分とするほか、特殊なアルカリ金属水酸化物の使用とアンモニア又はアミンの添加が必須であり、製品コストが高価にならざるを得ず、また、塗装作業時にアミン臭の発生が避けられないほか、冷暖房運転時にもアミン臭の発生が懸念され、無機系親水性塗料組成物における成形時の金型磨耗や冷房運転時の不快臭とは異なる別の不快臭の問題がある。
【0009】
そこで、本発明者らは、これまでの長期親水性等の性能に加えて、不快臭発生の問題がなく、親水性皮膜の表面に一旦付着した汚染物質等を使用途中で容易に洗い流すことができる自浄性能を発現することができ、しかも、特に限定するものではないが、プレコートフィン材等の熱交換器用アルミニウム材の用途に有用な有機親水性塗料組成物の開発について鋭意検討した結果、意外なことには、樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂を含むと共に、特定の置換基を有してポリビニルアルコール系樹脂の結晶化を抑制する水素結合抑制効果を発揮するフェノール化合物を添加成分として添加することにより、目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、金属材料を始めとしてプラスチック材料、セラミックス材料等の種々の硬質材料の表面に、長期親水性等の性能に加えて自浄性能を有する親水性皮膜を形成するための有機親水性塗料組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このような有機親水性塗料組成物により形成された親水性皮膜を有するプレコートフィン材等の熱交換器用アルミニウム材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂及びポリエチレングリコール系樹脂を含むと共に、添加成分としてフェノール化合物を含有する有機親水性塗料組成物であり、
前記添加成分として含有されるフェノール化合物が、分子中に2つ以上のヒドロキシフェニル基を有すると共に、各ヒドロキシフェニル基にはヒドロキシル基に対して立体障害効果を示す嵩高置換基が存在し、
前記有機親水性塗料組成物が、樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂40~100g/L及びポリエチレングリコール系樹脂4~15g/Lを含有し、かつ、添加成分としてフェノール化合物0.01~12g/Lを含有することを特徴とする有機親水性塗料組成物。
(2) 前記フェノール化合物の各ヒドロキシフェニル基中に存在する嵩高置換基が、ヒドロキシル基に隣接して位置するアルキル基であることを特徴とする前記(1)に記載の有機親水性塗料組成物。
(3) 前記フェノール化合物の各ヒドロキシフェニル基中に存在する嵩高置換基が、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、及びtert-ブチル基から選ばれた1種又は2種以上のアルキル基であることを特徴とする前記(2)に記載の有機親水性塗料組成物。
(4) ポリビニルアルコール系樹脂が完全鹸化タイプである前記(1)~(3)のいずれかに記載の有機親水性塗料組成物。
【0012】
(5)
前記(1)~(4)のいずれかに記載の有機親水性塗料組成物を塗布して焼き付けた皮膜であり、硬質材料の本体表面の一部又は全部を被覆することを特徴とする親水性皮膜。
(6) アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面の一部又は全部に、前記(1)~(4)のいずれかに記載の有機親水性塗料組成物を塗布して焼き付けた親水性皮膜を有することを特徴とする熱交換器用アルミニウム材。
(7) 前記熱交換器用アルミニウム材がプレコートフィン材である前記(6)に記載の熱交換器用アルミニウム材。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有機親水性塗料組成物によれば、金属材料を始めとしてプラスチック材料、セラミックス材料等の種々の硬質材料の表面に、不快臭発生の問題がなく、しかも、長期親水性等の性能に加えて自浄性能を有する親水性皮膜を形成することができる。
【0014】
また、本発明の有機親水性塗料組成物を用いて形成された親水性皮膜を有するプレコートフィン材等の熱交換器用アルミニウム材は、不快臭発生の問題がなく、しかも、長期親水性等の性能に加えて、その表面が仮に結露水等の発生しない暖房時等に汚染されたとしても、冷房時等において結露水等の水が接近するとこの水により容易に洗い流されるという自浄性能が発揮され、また、定期的に行われる洗浄作業も従来に比べて極めて容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の有機親水性塗料組成物、及び親水性皮膜、並びに熱交換器用アルミニウム材について、詳細に説明する。
本発明の有機親水性塗料組成物は、樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂(PVA)を含有し、また、添加成分としてフェノール化合物を含有するものであり、前記添加成分として含有されるフェノール化合物が、分子中に2つ以上のヒドロキシフェニル基を有すると共に、各ヒドロキシフェニル基にはヒドロキシル基に対して立体障害効果を示す嵩高置換基が存在するものである。
【0016】
本発明の有機親水性塗料組成物において、その樹脂成分を構成するポリビニルアルコール系樹脂(PVA)については、-[CH2-CH(OH)]n-の繰返し構造を有する線状ポリマーであり、好ましくはその鹸化度が97モル%以上、より好ましくは98.5モル%以上99.8モル%以下の完全鹸化タイプのポリビニルアルコールであるのがよく、また、好ましくはその平均重合度(n)が500~2000、より好ましくは1000~1700のPVAであるのがよい。鹸化度が97モル%より低いと、親水性と耐水性が共に悪化する虞があり、また、平均重合度(n)については500より低いと、親水性と耐水性が共に悪化する虞があり、反対に、2500より高くなると粘度が上昇して作業性が低下する虞がある。
【0017】
このようなポリビニルアルコール系樹脂(PVA)としては、各種の官能基を導入した変性品も含まれ、例えば、エチレンオキサイド基を導入したものとして日本合成化学社製商品名WO-320N、カルボキシル基を導入したものとして同じく日本合成化学社製商品名T-330H等を始めとして、これら以外にもアセトアセチル基、スルホン酸基等を導入したもの等の多くの製品が上市されているが、いずれも使用することができる。
【0018】
また、上記の有機親水性塗料組成物の樹脂成分については、得られた親水性皮膜の更なる長期親水性を向上させるために、好ましくはポリエチレングリコール系樹脂(PEG)を配合するのがよく、このようなポリエチレングリコール系樹脂(PEG)については、より好ましくはその重量平均分子量が1000以上20000以下、より好ましくは4000以上11000以下であるのがよく、単独重合体のポリエチレングリコールや、エチレングリコール・プロピレングリコール等の共重合体等を例示することができる。重量平均分子量については、1000より小さいと親水性が相対的に低下する虞があり、反対に、20000より大きくなると塗料浴の安定性が損なわれる虞が生じる。樹脂成分中をPEG配合する場合、このPEGの配合割合については、PVAとPEGの合計に対して、10質量%以上22質量%以下、好ましくは14質量%以上19質量%以下であるのがよく、PEGの配合割合が10質量%より低いと、PEGを配合する効果が乏しく、反対に、22質量%を超えて添加しても、逆にPEGを配合する効果が低下する。
【0019】
そして、本発明においては、上記のポリビニルアルコール系樹脂(PVA)を樹脂成分とし、また、これら樹脂成分中に、添加成分として水素結合抑制効果を有するフェノール化合物を添加する。この添加成分として使用するフェノール化合物については、分子中に2つ以上のヒドロキシフェニル基を有すると共に、各ヒドロキシフェニル基にはヒドロキシル基に対して立体障害効果を示す嵩高置換基が存在することが必要であり、これによって、親水性皮膜を形成する線状ポリマーのPVAにおいて、フェノール化合物がPVAの線状高分子鎖の間に介在し、各線状高分子鎖間の一部を押し広げ、これら押し広げられた各線状高分子鎖中の水酸基(OH)が水素結合するのを抑制し、いわゆる水素結合抑制効果を発現してフリーの水酸基が減少するのを抑制し、親水性皮膜の親水性が低下するのを長期に亘って防止するものと考えられる。
【0020】
また、本発明者らの検討によれば、添加成分として添加するフェノール化合物の各ヒドロキシフェニル基中に存在する嵩高置換基については、好ましくはヒドロキシル基に隣接して位置するアルキル基であるのがよく、また、より好ましくはメチル基、エチル基、iso-プロピル基、及びtert-ブチル基から選ばれた1種又は2種以上のアルキル基であるのがよい。このようなヒドロキシフェニル基を2つ以上有するフェノール化合物の典型例としては、例えば、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)(CAS No.119-47-1;Rhein Chemie社製商品名:Additin RC7115)等の2,2’-メチレンビス(6-アルキル-p-クレゾール)類や、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート(CAS No.27676-62-6;ADEKA社製商品名:アデカAO-20)等のトリス-(3,5-ジアルキル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート類や、トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフエニル)-ブタン(CAS No.1843-03-4;ADEKA社製商品名:アデカAO-30)等のトリス-(2-アルキル-4-ヒドロキシ-5-アルキルフェニル)-ブタン類や、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)(CAS No.85-60-9;ADEKA社製商品名:アデカAO-40)等の4,4’-ブチリデンビス(6-アルキル-m-クレゾール)類や、テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン(CAS No.6683-19-8;ADEKA社製商品名:アデカAO-60)等のテトラキス[3-(3,5-ジアルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン類や、3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(CAS No.90498-90-1;ADEKA社製商品名:アデカAO-80)等の3,9-ビス[2-[3-(3-アルキル-4-ヒドロキシ-5-アルキルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン類や、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(CAS No.1709-70-2;ADEKA社製商品名:アデカAO-330)等の1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジアルキル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン類や、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](CAS No.23128-74-7;BASF社製商品名:Irganox 1098)等のN,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジアルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]類等を例示することができる。なお、これらは何れも酸化防止剤として用いられているものであり、本発明において添加成分として用いるフェノール化合物については、好適にはフェノール系酸化防止剤の中から選択して使用することができる。
【0021】
本発明において、樹脂成分として用いられるポリビニルアルコール系樹脂(PVA)と、添加成分として用いられるフェノール化合物との配合割合については、通常、PVAが40g/L以上100g/L以下、好ましくは50g/L以上70以下であって、添加成分のフェノール化合物が0.01g/L以上12g/L以下、好ましくは0.4g/L以上6.0g/L以下の割合である。ここで、PVAの配合割合が40g/Lより低くなると、塗装で必要膜厚を得るのが難しくなる虞があり、反対に、100g/Lを超えて高くなると、塗料の安定性が低下する虞が生じ、また、添加成分のフェノール化合物の配合割合が0.01g/Lより低くなると、安定した親水性が得られない虞があり、反対に、12g/Lを超えて高くなると、密着性・外観不良という問題が生じる虞が生じる。そして、樹脂成分としてポリエチレングリコール系樹脂(PEG)が用いられる場合には、PVAとの配合割合を考慮して、通常4g/L以上15g/L以下、好ましくは9g/L以上14以下であるのがよく、4g/Lより低くなると、親水性向上効果が低下する虞があり、反対に、15g/Lを超えて高くなると、塗料の安定性が低下する虞が生じる。
【0022】
本発明の有機親水性塗料組成物は、樹脂成分として上記のポリビニルアルコール系樹脂(PVA)を含むと共に添加成分として上記のフェノール化合物を含むものであり、必要により、貯蔵中の腐敗防止を目的に有機銅系、有機ヨード系、イミダゾール系、イソチアゾリン系、ピリチオン系、トリアジン系、銀系等の抗菌・抗黴作用を有する防腐剤や、タンニン酸、没食子酸、フイチン酸、ホスフィン酸等の防錆剤や、ポリアルコールのアルキルエステル類、ポリエチレンオキサイド縮合物等のレベリング剤や、相溶性を損なわない範囲で添加されるポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド等の充填剤や、酸化チタン、フタロシアニン化合物等の着色剤や、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩系等の界面活性剤等の第三添加成分を添加することができる。
【0023】
本発明の有機親水性塗料組成物を調製するに際しては、上述した樹脂成分、添加成分、及び第三添加成分を水、アセトン、エチレングリコールモノブチルエーテル(別名:「ブチルセロソルブ」又は「ブチセロ」)等の適当な分散媒、好ましくは水、イソプロピルアルコール、エタノール等の水系分散媒中に溶解させ又は分散させて調製する。そして、この際の調製方法については、特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)が比較的水に溶け難いので、好ましくは、先ずPVAを常温の水に5~10分間分散させた後、80~90℃で30~60分間加熱し、溶解させた後に所定の濃度となるように水を加え、次いで必要により攪拌下にポリエチレングリコール系樹脂(PEG)を添加して溶解させ、その後にフェノール化合物を、好ましくは界面活性剤を用いて乳化させ、均一な水分散液として添加し、混合する。
【0024】
そして、本発明の有機親水性塗料組成物を種々の硬質材料の表面に塗布する方法についても、特に制限はなく、例えば、通常良く用いられるロールコーターを用いる方法や、塗布量管理に便利なグラビアロールを用いる方法や、厚塗りするのに便利なナチュラルコート方式や、塗布面を綺麗に仕上げるのに有利なリバースコート方式等を採用することができる。
【0025】
例えば、本発明の有機親水性塗料組成物を用い、本発明のプレコートフィン材等の熱交換器用アルミニウム材を調製するに際しては、アルミニウム材の表面に親水性皮膜を形成する際に、先ず、ロールコーター等を用いてアルミニウム材の表面に塗料組成物を塗布し、次いで例えばフローターオーブン等により高温通風下での加熱、好ましくは10~30m/分の高温通風下に200~300℃の高温で10~15秒間の加熱を行う。
【0026】
本発明の有機親水性塗料組成物を用いて硬質材料の表面に形成される親水性皮膜の膜厚については、硬質材料の種類や用途等により異なり、特に制限はないが、例えばプレコートフィン材である場合、通常0.05~5μm、好ましくは0.1~2μm、より好ましくは0.5~1.5μm程度であるのがよい。また、本発明で得られた親水性皮膜に含まれる主要な3成分の比率は、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA):70重量%~98重量%、ポリエチレングリコール系樹脂(PEG):0重量%~20重量%、及びフェノール化合物:0.1重量%~10重量%である。
【0027】
ここで、本発明者らの検討によれば、本発明の有機親水性塗料組成物において、上記の水素結合抑制効果を有するフェノール化合物は、その分子中の嵩高置換基で守られた2つ以上のヒドロキシフェニル基における水酸基が樹脂成分中のポリビニルアルコール系樹脂(PVA)の互いに隣接する2つの線状高分子鎖中の水酸基と親和性を示し、これら2つの線状高分子鎖の間に入り込んでフェノール化合物の分子の大きさに応じて2つの線状高分子鎖の間を押し広げ、水素結合抑制効果を発現してPVAの結晶化を抑制すると共に、水分子のような比較的小さな分子についてはその接近を許容して長期に亘って良好な親水性を発揮すると同時に、油性汚れのような比較的大きな分子やハウスダスト等の汚染物質についてはその接近を阻止して良好な耐汚染性を発揮するものと考えられる。そして、このように長期に亘って良好な親水性を発揮すると同時に比較的大きな汚染物質に対してその接近を阻止し良好な耐汚染性を発揮することから、例えばプレコートフィン材の親水性皮膜として用いた場合には、仮に結露水等の発生しない暖房時等において親水性皮膜の表面に油性汚れやハウスダスト等の汚染物質が付着したとしても、その付着の程度は強固ではなく、しかも、冷房時等において結露水等の水が接近すると、この水が親水性皮膜と汚染物質との間に容易に入り込み、親水性皮膜の表面から汚染物質を浮き上がらせ、結露水等の水と共に洗い流して自浄性能を発揮するものと考えられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
なお、以下の実施例及び比較例において、親水性(初期親水性及び長期親水性)、耐水性、耐汚染性、及び自浄性の各性能については、それぞれ下記の方法で求めた。
【0029】
〔試験片の調製〕
常法により脱脂処理及び洗浄処理を行ったアルミニウム材(AA3102;厚さ0.10mm)に対して、実施例1、3~12、及び、比較例1~5においては下記のクロメート処理により表面に耐食皮膜を形成し、また、実施例2及び13においては下記のウレタンプライマー処理により表面に耐食塗膜を形成する表面処理を行い、7cm×15cmの大きさに切り出して試験片調製用の表面処理アルミ片を準備した。
(1) クロメート処理:クロメート処理剤(日本ペイント社製商品名:アルサーフ407/47)を用い、アルミニウム材の表面にCr:100mg/m2の耐食皮膜を形成した。
(2) ウレタンプライマー処理:プライマー処理剤(第一工業製薬社製商品名:スーパーフレックスSF150)をアルミニウム材の表面に塗布し、270℃で10秒間硬化させて膜厚0.6g/m2の耐食塗膜を形成した。
【0030】
得られた表面処理アルミ片の表面に、バーコーターを用いて各実施例及び比較例の有機親水性塗料組成物を塗布し、230℃10秒間の条件で焼付けを行い、表面処理アルミ片の表面に0.6~0.7g/m2の親水性皮膜を形成し、各実施例及び比較例の試験片を調製した。
【0031】
〔親水性(初期親水性及び長期親水性)の評価〕
このようにして調製された各実施例及び比較例の試験片にプレスオイル(出光興産社製商品名:AF-2C)を塗布し、160℃10分間の乾燥条件で加熱乾燥した後、乾燥直後の初期親水性と、逆浸透(RO)膜で浄化したRO水を用いて常温、流水下、及び100時間の浸漬条件で浸漬した後の長期親水性とを測定した。
この際の初期親水性及び長期親水性の測定は、水平に設置した試験片の親水性皮膜上に純水2μLを滴下し、形成された水滴の接触角を接触角計(協和界面科学社製:CA-A)で測定し、また、親水性の評価は、評価点5:接触角≦10°、評価点4:接触角11~20°、評価点3:21~30°、評価点2:31~35°、及び評価点1:≧36°の評価基準で行い、評価点≧2の場合を親水性有り(合格)とした。
【0032】
〔耐水性の評価〕
各実施例及び比較例の試験片を常温のRO水中に流水条件下で240時間浸漬し、浸漬後の試験片表面の塗膜を目視観察し、塗膜にフクレ等の異常の有無を調べると共に、更に碁盤目テープ試験(旧JIS K 5400)でハガレの有無を調べ、これら目視観察での異常及びテープ剥離試験でのハガレがいずれも認められない場合に合格とし、また、目視観察での異常及びテープ剥離試験でのハガレがいずれかでも認められた場合を不合格とした。
【0033】
〔耐汚染性の評価〕
各実施例及び比較例の試験片を常温のRO水中に流水下で24時間浸漬した後に常温で乾燥し、引き続き試験片を1gのステアリン酸が入った容量1Lのビーカー中に封入し、100℃で24時間加熱し、加熱後に接触角を測定した。
そして、この耐汚染性の評価については、評価点5:接触角≦10°、評価点4:接触角11~20°、評価点3:接触角21~30°、評価点2:接触角31~35°、及び評価点1:接触角≧36°の評価基準で行い、評価点≧2の場合を耐汚染性あり(合格)と評価した。
【0034】
〔自浄性の評価〕
各実施例及び比較例の試験片について、市販の油性マーカー(パイロット社製商品名:ツインマーカーMFN-15FB-B)を使用し、試験片の親水性皮膜の表面であって当該表面の下半分の領域に、幅15mm×長さ15mmの四角形(面積225mm2)のマークを記して油性汚れとした。
次に、この油性汚れを付した試験片を、壁に立て掛けて水平面に対する傾斜角度が90°となるようにセットし、噴霧装置を用いてこのセットされた試験片の上半分の領域に霧吹き器(一回の噴霧量:0.8~0.9 ml)で150回繰り返して噴霧し、上半分の領域に噴霧された水が下半分の領域に流れて油性汚れを洗い流す割合(除去率)を調べた。なお、この噴霧装置による水の噴霧の際には、噴霧された水が油性汚れに直接かからないようにした。
【0035】
油性汚れの除去率については、水の噴霧終了後、水の上半分から下半分への流れが終了し、試験片の表面が乾燥するのを待って、油性汚れが洗い流された面積(流失面積:mm2)を測定し、油性汚れの総面積(225mm2)に対する流失面積(mm2)の割合を除去率(%)とした。
そして、この自浄性の評価については、評価点5:除去率>81%、評価点4:除去率61~80%、評価点3:除去率41~60%、評価点2:除去率20~40%、及び評価点1:除去率<20%の評価基準で行い、評価点≧2の場合を自浄性あり(合格)と評価した。
【0036】
〔総合評価〕
各実施例及び比較例で得られた有機親水性塗料組成物の総合評価については、親水性に関する初期親水性と長期親水性、耐水性、耐汚染性、及び自浄性の全ての評価項目が合格であるか否か、及び、親水性に関する初期親水性と長期親水性、耐汚染性、及び自浄性の評価点の合計を加味して評価し、◎:全ての評価項目が合格で合計評価点が16以上である場合、○:全ての評価項目が合格で合計評価点が12~15である場合、△:全ての評価項目が合格で合計評価点が8~11である場合、及び、×:いずれかの評価項目に不合格がある場合の基準で評価した。
【0037】
実施例1~14及び比較例1~5〕
樹脂成分のポリビニルアルコール系樹脂(PVA)として、[PVA-1]:鹸化度99.3%及び平均重合度1,000のポリビニルアルコール(日本酢ビポバール社製商品名:VC-10)、[PVA-2]:鹸化度98.0%及び平均重合度1.700のポリビニルアルコール(日本酢ビポバール社製商品名:JF-17L)、及び[PVA-3]:鹸化度97.0%及び平均重合度1700のポリビニルアルコール(日本酢ビポバール社製商品名:VM-17)を用い、また、樹脂成分のポリエチレングリコール系樹脂(PEG)として、[PEG-1]:数平均分子量6000のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)社製商品名:PEG-6000S)、[PEG-2]:数平均分子量1500のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)社製商品名:PEG-1500)、及び[PEG-3]:数平均分子量13000のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)社製商品名:PEG-13000)を用いた。
【0038】
また、添加成分のフェノール化合物として、下記のフェノール化合物を用いた。
[PhOH-1]:2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)(CAS No.119-47-1;Rhein Chemie社製商品名:Additin RC7115)
[PhOH-2]:トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート(CAS No.27676-62-6;ADEKA社製商品名:アデカAO-20)
[PhOH-3]:トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフエニル)-ブタン(CAS No.1843-03-4;ADEKA社製商品名:アデカAO-30)
[PhOH-4]:4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)(CAS No.85-60-9;ADEKA社製商品名:アデカAO-40)
[PhOH-5]:テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン(CAS No.6683-19-8;ADEKA社製商品名:アデカAO-60)
[PhOH-6]:3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(CAS No.90498-90-1;ADEKA社製商品名:アデカAO-80)
[PhOH-7]:1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(CAS No.1709-70-2;ADEKA社製商品名:アデカAO-330)
[PhOH-8]:N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](CAS No.23128-74-7;BASF社製商品名:Irganox 1098)
[PhOH-9]:ヒドロキノン(CAS No.123-31-9)
[PhOH-10]:ヒドロキノンモノメチルエーテル(CAS No.150-76-5)
[PhOH-11]:メチルヒドロキノン(CAS No.95-71-6)
[PhOH-12]:ジブチルヒドロキシトルエン(CAS No.128-37-0)
【0039】
先ず、上記樹脂成分のポリビニルアルコール系樹脂(PVA)について、分散媒として水を用い、PVA濃度120g/LのPVA分散液を調製し、また、上記樹脂成分のポリエチレングリコール系樹脂(PEG)について、分散媒として水を用い、PEG濃度100g/LのPEG分散液を調製した。
次に、添加成分である各フェノール化合物について、フェノール化合物20g/L当り、アセトンを68g/L、及び界面活性剤(東邦化学工業社製商品名:ぺポールA-0858)を20g/Lの割合で水中に添加し、撹拌下に混合してフェノール化合物を乳化させ、各フェノール化合物の分散液(PhOH分散液)を調製した。
更に、以上のようにして調製されたPVA分散液、PEG分散液、及びPhOH分散液を用い、表1に示す組成を有する各実施例及び比較例の有機親水性塗料組成物を調製した。
【0040】
このようにして調製された各実施例及び比較例の有機親水性塗料組成物について、上記の方法に従って各実施例及び比較例の試験片を調製し、また、上記の方法に従って親水性(初期親水性及び長期親水性)、耐水性、耐汚染性、及び自浄性の各性能について評価した。
結果を表1に示す。
【0041】