(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】プレスブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20220111BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B21D5/02 P
B30B15/00 D
(21)【出願番号】P 2017129414
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】津野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】岩本 典幸
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-219341(JP,A)
【文献】国際公開第2017/041213(WO,A1)
【文献】特表2015-507770(JP,A)
【文献】特開2005-288534(JP,A)
【文献】特開平05-289729(JP,A)
【文献】特開2003-108212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1金型および第2金型によってワークを曲げ加工するプレスブレーキと、前記プレスブレーキと無線通信による接続が可能な携帯電子機器と、を備えた、プレスブレーキシステムであって、
前記携帯電子機器は、
前記プレスブレーキで用いられるCAMデータを生成するCAMデータ生成部と、
生成した前記CAMデータを無線で前記プレスブレーキに送信する第1通信部と、を有し、
前記プレスブレーキは、
前記第1金型が装着される固定テーブルと、
前記第2金型が装着され、前記固定テーブルに対して移動可能な可動テーブルと、
送信された前記CAMデータを無線で受信する第2通信部と、
受信した前記CAMデータに基づいて前記可動テーブルの動作の制御を行うテーブル動作制御部と、
前記無線通信で接続されている状態において、前記CAMデータ生成部によって前記CAMデータの生成が行われている場合に、前記可動テーブルの動作を不可に設定する第1設定部と、を有する
プレスブレーキシステム。
【請求項2】
一対の第1金型および第2金型によってワークを曲げ加工するプレスブレーキと、前記プレスブレーキと無線通信による接続が可能な携帯電子機器と、を備えた、プレスブレーキシステムであって、
前記携帯電子機器は、
前記プレスブレーキで用いられるCAMデータを生成するCAMデータ生成部と、
生成した前記CAMデータを無線で前記プレスブレーキに送信する第1通信部と、を有し、
前記プレスブレーキは、
前記第1金型が装着される固定テーブルと、
前記第2金型が装着され、前記固定テーブルに対して移動可能な可動テーブルと、
送信された前記CAMデータを無線で受信する第2通信部と、
受信した前記CAMデータに基づいて前記可動テーブルの動作の制御を行うテーブル動作制御部と、を有し、
前記携帯電子機器は、
表示部と、
前記無線通信で接続されている状態において、前記プレスブレーキによって前記曲げ加工が行われている場合に、前記曲げ加工の状態を前記表示部に表示させる表示制御部と、を更に有する、
プレスブレーキシステム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記プレスブレーキによって前記曲げ加工における複数の工程を実行する場合、各々の工程において該工程の実行後の前記ワークの状態をシミュレーション表示する、
請求項2に記載のプレスブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1設定部は、前記テーブル動作制御部を、前記可動テーブルの動作を可にする第1モード、または前記可動テーブルの動作を不可にする第2モードに設定可能であり、
前記携帯電子機器は、
前記CAMデータ生成部を、前記CAMデータの生成を可にする第3モード、または前記CAMデータの生成を不可にする第4モードに設定可能な第2設定部を有し、
前記第2設定部によって前記CAMデータ生成部が前記第3モードに設定された場合、前記第3モードに設定した情報が前記第1通信部から前記第2通信部に送信され、前記第1設定部は、前記テーブル動作制御部を前記第2モードに設定する、
請求項
1に記載のプレスブレーキシステム。
【請求項5】
一対の第1金型および第2金型によってワークを曲げ加工するプレスブレーキと、前記プレスブレーキと無線通信による接続が可能な携帯電子機器と、を備えた、プレスブレーキシステムであって、
前記携帯電子機器は、
前記プレスブレーキで用いられるCAMデータを生成するCAMデータ生成部と、
生成した前記CAMデータを無線で前記プレスブレーキに送信する第1通信部と、を有し、
前記プレスブレーキは、
前記第1金型が装着される固定テーブルと、
前記第2金型が装着され、前記固定テーブルに対して移動可能な可動テーブルと、
送信された前記CAMデータを無線で受信する第2通信部と、
受信した前記CAMデータに基づいて前記可動テーブルの動作の制御を行うテーブル動作制御部と、を有し、
前記携帯電子機器は、
表示部と、
前記無線通信で接続されている状態において、前記プレスブレーキによって前記曲げ加工が行われている場合に、前記曲げ加工の状態を前記表示部に表示させる表示制御部と、を有し、
前記プレスブレーキは、
前記テーブル動作制御部を、前記可動テーブルの動作を可にする第1モード、または前記可動テーブルの動作を不可にする第2モードに設定可能な第1設定部を有し、
前記携帯電子機器は、
前記表示制御部、および前記CAMデータ生成部を含むデータ操作部と、
前記データ操作部を、前記CAMデータの生成を可にする第3モード、または前記表示制御部によって前記曲げ加工の状態を前記表示部に表示させる第4モードに設定可能な第2設定部と、を有し、
前記第1設定部によって前記テーブル動作制御部が前記第1モードに設定された場合、前記第1モードに設定した情報が前記第2通信部から前記第1通信部に送信され、前記第2設定部は、前記データ操作部を前記第4モードに設定する、
プレスブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器を備えたプレスブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状のワークを挟圧することによりV曲げ加工を行う装置としてプレスブレーキが用いられている。プレスブレーキには、上金型(パンチ)と下金型(ダイ)が装着され、パンチとダイの協働により板状のワークが折り曲げられる。
プレスブレーキの動作プログラムを作成するためには、金型の組み合わせ及び曲げる順序等を考慮する必要があるが、動作プログラムの作成には熟練が必要なため、近年、プレスブレーキ用CAM(computer aided manufacturing)との連携が行われている。プレスブレーキ用CAMでは、CAD(computer aided design)で作成された形状データを入力データとして加工用の動作プログラム作成が行われる。
【0003】
このようなCAD/CAMシステムは、例えば、工場内の回線を通じてNC工作機械と接続されており、NC工作機械は回線を通して動作プログラムを取得し、取得した動作プログラムに基づいて製品の加工を行う(例えば、特許文献1参照。)。
一方、CAMとNC工作機械が別の場所に設置されておらず、CAMを内蔵したプレスブレーキも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CAMをNC工作機械と別の場所に設置した場合には、NC加工を行っている現場で動作プログラムを修正することができず、CAMの設置場所に戻り修正する必要がある。
一方、NC工作機械にCAMが内蔵された場合には、動作プログラムの作成中はNC加工を行うことが出来ないため、稼働率が低下する。
【0006】
本発明は、従来の課題を考慮し、現場で動作プログラムの作成を行うことができ且つ稼働率の向上を図ることができるプレスブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明のプレスブレーキシステムは、プレスブレーキと、携帯電子機器と、を備える。プレスブレーキは、一対の第1金型および第2金型によってワークを曲げ加工する。携帯電子機器は、プレスブレーキと無線通信による接続が可能である。携帯電子機器は、CAMデータ生成部と、第1通信部と、を有する。CAMデータ生成部は、CAMデータを生成する。第1通信部は、生成したCAMデータを無線でプレスブレーキに送信する。プレスブレーキは、固定テーブルと、可動テーブルと、第2通信部と、テーブル動作制御部と、を有する。固定テーブルは、第1金型が装着される。可動テーブルは、第2金型が装着され、固定テーブルに対して移動可能である。第2通信部は、送信されたCAMデータを無線で受信する。テーブル動作制御部は、受信したCAMデータに基づいて可動テーブルの動作の制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現場で動作プログラムの作成を行うことができ且つ稼働率の向上を図ることができるプレスブレーキシステムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明にかかる実施の形態におけるプレスブレーキシステムの正面図。
【
図2】
図1のプレスブレーキの構成を示すブロック図。
【
図4A】
図1のプレスブレーキとタブレットの使用態様を示す図。
【
図4B】
図1のプレスブレーキとタブレットの使用態様を示す図。
【
図4C】
図1のプレスブレーキとタブレットの使用態様を示す図。
【
図5】
図1のプレスブレーキとタブレットのモードの組み合わせおよび状態遷移を示す図。
【
図6】
図1のタブレットによるCAMデータ生成の動作を示すフロー図。
【
図7】(a)編集モードにおけるタブレットの表示画面の例を示す図、(b)曲げ加工によって作成する製品の一例を示す図。
【
図8】段取りモードにおけるプレスブレーキの表示画面の例を示す図。
【
図9】状態(2)における
図1のタブレットによるシミュレーションの動作を示すフロー図。
【
図10】状態(4)におけるプレスブレーキとタブレットの動作を示すフロー図。
【
図11A】
図1のプレスブレーキの運転モードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図11B】
図1のタブレットのシミュレーションモードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図12A】
図1のプレスブレーキの運転モードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図12B】
図1のタブレットのシミュレーションモードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図13A】
図1のプレスブレーキの運転モードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図13B】
図1のタブレットのシミュレーションモードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図14A】
図1のプレスブレーキの運転モードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図14B】
図1のタブレットのシミュレーションモードの際の表示部の表示例を示す図。
【
図15】
図1のタブレットがプレスブレーキからモード切替情報を受信した際の動作を示すフロー図。
【
図16】
図1のプレスブレーキがタブレットからモード切替情報を受信した際の動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる実施の形態のプレスブレーキシステムについて図面を参照しながら以下に説明する。
<1.構成>
(1-1.プレスブレーキシステムの概要)
図1は、本実施の形態のプレスブレーキシステム3の正面図である。本実施の形態のプレスブレーキシステム3は、プレスブレーキ1と、タブレット2と、を備えている。プレスブレーキシステム3は、プレスブレーキ1とタブレット2の間で無線通信によってデータ(CAMデータモード切替情報等)の送受信を行うことができる。
【0011】
(1-2.プレスブレーキ)
図2は、プレスブレーキ1の構成を示すブロック図である。
図3は、タブレット2の構成を示すブロック図である。
プレスブレーキ1は、パンチ4とダイ5によって板状のワークを曲げ加工する機械であって、フレーム10と、固定テーブル11と、ラム12と、ラム駆動部13と、制御装置17と、を備える。
【0012】
固定テーブル11は、フレーム10の下部に固定されており、上面にダイ5が装着可能である。ラム12は、フレーム10の上部に昇降可能に支持されており、下面にパンチ4が装着可能である。ラム12が下降してラム12の下側に配置されている固定テーブル11に接近し、ダイ5とパンチ4の協働によって、板状のワークに対して曲げ加工が行われる。
【0013】
ラム駆動部13は、油圧シリンダなどであり、圧油が供給または排出されることにより伸縮し、ラム12を昇降させる。なお、ラム駆動部13は、油圧シリンダに限らず、サーボモータなどであってもよい。
制御装置17は、作業者がプレスブレーキ1を動作させるための操作を行い、その操作に基づいてプレスブレーキ1の動作を制御する。制御装置17には、
図2に示すように、操作表示部14、通信部15、制御部16等が含まれる。
【0014】
操作表示部14は、
図2に示すように、操作部141と表示部142とを有する。作業者は、操作部141を操作し、曲げ加工を行う際に、ワーク情報、金型情報、および機械情報などを入力する。ワーク情報は、材質、曲げ線長さ、曲げ角度などの情報を含む。金型情報は、V溝幅、V角度、型高さ、パンチRなどの情報を含む。機械情報は、剛性、スピード仕様、ストローク仕様などの情報を含む。また、表示部142は、曲げ加工時に各工程を表示する。表示部142は液晶画面等である。表示部142は、単なる表示装置であってもよいが、タッチスクリーン等によって構成され操作部141の一部が兼ねられていてもよい。
【0015】
通信部15は、タブレット2の通信部22と無線による通信が可能である。通信部15は、タブレット2からCAMデータを受信でき、CADデータを送信できる。また、通信部15は、プレスブレーキ1のモード切替情報を送信でき、タブレット2のモード切替情報を受信できる。
制御部16は、操作部141からの入力および通信部22からの通信に基づいて、プレスブレーキ1の動作を制御する。
【0016】
(制御部)
プレスブレーキ1の制御部16は、動作プログラム選択部161と、動作プログラム読込部162と、ラム動作制御部163と、CAMデータ/動作プログラム変換部164と、モード選択部165と、モード切替部166と、を有する。
動作プログラム選択部161は、作業者の操作部141を用いた入力によって、予め記憶されている動作プログラムのなかからプレスブレーキ1を動作させる動作プログラムを選択する。動作プログラム読込部162は、動作プログラム選択部161で選択された動作プログラムを読み込む。
【0017】
ラム動作制御部163は、動作プログラム読込部162で読み込まれた動作プログラムでラム駆動部13等の動作を制御する。この制御により、ラム12が昇降動作し、ワークが曲げられる。
CAMデータ/動作プログラム変換部164は、通信部15から受信したCAMデータをプレスブレーキ1の動作プログラムに変換する。動作プログラム読込部162は、変換された動作プログラムを読み込む。
【0018】
ラム動作制御部163は、CAMデータ/動作プログラム変換部164で変換された動作プログラムに基づいてもラム駆動部13の制御を行う。すなわち、ラム動作制御部163は、動作プログラム選択部161で選択された動作プログラムもしくはCAMデータ/動作プログラム変換部164で変換された動作プログラムに基づいてラム駆動部13を制御する。
【0019】
モード選択部165は、作業者の操作部141を用いた操作によってモードの選択を行う。本実施の形態のプレスブレーキ1は、段取モードと運転モードとを有する。段取モードは、ワークの曲げ加工を行うための準備を行うモードであり、ラム12の駆動が不可に設定される。運転モードは、ワークの曲げ加工を行うモードであり、ラム12の駆動が可能に設定される。
【0020】
モード切替部166は、モード選択部165の選択に基づいて、ラム動作制御部163のモードを切り換える。すなわち、モード選択部165によって段取モードが選択された場合には、モード切替部166はラム動作制御部163をラム12の駆動をさせない段取モードに設定する。また、モード選択部165によって運転モードが選択された場合には、モード切替部166はラム動作制御部163をラム12の駆動を可能とする運転モードに設定する。
【0021】
(1-3.タブレット)
図3は、タブレット2の構成を示すブロック図である。
タブレット2は、図に示すように、操作表示部21と、通信部22と、制御部23と、を備える。
操作表示部21は、操作部211と、表示部212とを有する。操作部211および表示部212は、例えば、タブレットの液晶タッチパネルなどであって、操作部211と表示部212は互いに兼ねられている。
【0022】
通信部22は、プレスブレーキ1の通信部15と無線接続可能である。通信部22は、タブレット2で生成したCAMデータを無線で通信部15へと送信可能である。通信部22は、プレスブレーキ1における曲げ加工の進捗を表示するためのCADデータをプレスブレーキ1から受信可能である。また、通信部22は、プレスブレーキ1に、タブレット2のモード切替情報を送信可能であり、プレスブレーキ1からモード切替情報を受信可能である。
制御部23は、操作部141からの入力および通信部22からの通信に基づいて、タブレット2の動作を制御する。
【0023】
(制御部)
制御部23は、通信設定部31と、データ操作部32と、モード選択部33と、モード切替部34とを備える。
【0024】
通信設定部31は、プレスブレーキ1との無線通信を接続状態または切断状態に設定する。接続状態とは、無線によってタブレット2とプレスブレーキ1との間でデータの送受信が可能な状態であり、切断状態とは、無線によってタブレット2とプレスブレーキ1との間でデータの送受信が不可能な状態である。例えば、複数台のプレスブレーキ1が存在する場合に、タブレット2は特定のプレスブレーキ1とペアリングによって無線接続を行うことができる。
【0025】
データ操作部32は、所望のCADデータからCAMデータの生成を行う。また、データ操作部32は、プレスブレーキ1から受信したCADデータに基づいて、曲げ加工の工程を表示部212に表示させる。また、データ操作部32は、選択したCADデータに基づいて、曲げ加工の工程を表示部212に表示させる。
モード選択部33は、作業者の操作部211による操作によってモードを選択する。本実施の形態のタブレット2は、編集モードとシミュレーションモードとを有する。編集モードは、CADデータからCAMデータを生成するためのモードである。シミュレーションモードは、CADデータに基づいて曲げ加工のシミュレーションを表示部212に表示させるモードである。また、シミュレーションモードでは、プレスブレーキ1における曲げ加工の進捗に従って、曲げ加工の状態を表示部212に表示させる。
【0026】
モード切替部34は、モード選択部33の選択に基づいて、データ操作部32のモードを編集モードまたはシミュレーションモードに切り換える。
次に、データ操作部32の構成について説明する。
【0027】
(データ操作部)
データ操作部32は、CADデータ選択部41と、CADデータ読込部42と、シミュレーション演算部43と、シミュレーション表示制御部44と、CAMデータ生成部45と、を有する。
CADデータ選択部41は、作成する予定のワークに該当するCADデータを作業者の操作部211を用いた操作によって選択する。
CADデータ読込部42は、選択されたCADデータを読み込む。また、CADデータ読込部42は、プレスブレーキ1から受信したCADデータを読み込む。プレスブレーキ1から受信したCADデータとは、曲げ加工の状態を表示部212に表示させるために、プレスブレーキ1から送信されてくるCADデータのことである。
【0028】
シミュレーション演算部43は、CADデータを演算し、曲げ加工する際のシミュレーションを作成する。
シミュレーション表示制御部44は、シミュレーション演算部43による演算結果に基づいて表示部212を制御してシミュレーションを表示させる。
CAMデータ生成部45は、シミュレーション演算部43による演算結果からCAMデータを生成する。このCAMデータは、通信部22を介してプレスブレーキ1に送信される。
【0029】
<2.使用態様>
次に、プレスブレーキ1とタブレット2の使用状態について説明する。
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、プレスブレーキ1とタブレット2の使用態様を示す図である。
図4Aは、プレスブレーキ1の作業エリアにおいてタブレット2を使用している状態を示す図である。
図4Aに示す状態では、タブレット2は、プレスブレーキ1の制御装置17の下側に取り付けられている。タブレット2とプレスブレーキ1は無線で接続されており、タブレット2とプレスブレーキ1の間でCAMデータやモード切替情報などのデータの送受信が行われる。
【0030】
図4Bは、プレスブレーキ1の作業現場においてタブレット2を使用している状態を示す図である。
図4Bは、
図4Aの場合と異なり、プレスブレーキ1の作業エリア内において、作業者Aがプレスブレーキ1から少し離れてタブレット2を用いてCAMデータ等を生成している状態を示す図である。現場においてCAMデータを生成する場合、作業者Aは、プレスブレーキ1の前で作業するとは限らず、少し離れた場所において(例えば、作業机において)作業を行うことも想定される。
図4Bの状態においても、タブレット2とプレスブレーキ1は無線で接続されており、タブレット2とプレスブレーキ1の間でCAMデータやモード切替情報などのデータの送受信が行われる。
【0031】
図4Cは、作業者Aがプレスブレーキ1で作業を行っており、作業者Bが事務所などの作業エリア外においてCAMデータの生成を行っている状態を示す図である。
図4Cに示すように、事務所内においてCAMデータを生成している場合には、
図3に示す通信設定部31によってタブレット2とプレスブレーキ1の接続状態は解除されている。
例えば、
図4Aおよび
図4Bに示す状態では、タブレット2とプレスブレーキ1を一体として使用することができ、現場においてCAMデータを生成し、動作プログラムを修正することができる。
【0032】
また、
図4Cに示す状態では、タブレット2とプレスブレーキ1を別々に使用することができる。すなわち、作業者Bがタブレット2を用いてCAMデータを生成するとともに、作業者Aはプレスブレーキ1が記憶しているCAMデータを利用して曲げ加工を行うことができる。
【0033】
<3.動作>
次に、本実施の形態のプレスブレーキシステム3の動作について説明する。
図5は、無線接続が行われている状態におけるプレスブレーキ1とタブレット2のモードの組み合わせを示す図である。
図5に示す左端の縦列は、状態(1)~(4)を示す。状態(1)は、プレスブレーキ1が段取りモードであり、タブレット2が編集モードの状態を示す。状態(2)は、プレスブレーキ1が段取りモードであり、タブレット2がシミュレーションモードの状態を示す。状態(3)は、本実施の形態のプレスブレーキシステム3では成立しない状態であり、プレスブレーキ1が運転モードであり、タブレット2が編集モードである。状態(4)は、プレスブレーキ1が運転モードであり、タブレットがシミュレーションモードである。
【0034】
(状態(1))
状態(1)では、プレスブレーキ1が段取モードであり、タブレット2が編集モードである。段取りモードでは、曲げ加工を行うための準備が行われる。また、タブレット2では、CAMデータを生成することができる。
タブレット2によるCAMデータの生成について説明する。
図6は、タブレット2によるCAMデータ生成の動作を示す図である。
【0035】
はじめに、ステップS10において、作業者が操作部211を操作してモード選択部33によって所望のCADデータが選択される。次に、ステップS11において、CADデータ読込部42によって選択したCADデータの読込が行われる。続いて、ステップS12において、シミュレーション演算部43が、読み込まれたCADデータから、曲げ加工する際のシミュレーションの演算を行う。シミュレーションとは、曲げ加工を行う際の作業手順ともいえる。
【0036】
次に、ステップS13において、CAMデータ生成部45が、演算された作業手順に基づいてCAMデータを生成する。なお、編集モードにおけるタブレット2の表示部212の表示画面の例が、
図7(a)に示されている。
図7(a)に示す例では、
図7(b)に示すような上面の開いた箱50を作成するためのCAMデータが生成される。
図7(a)には、
図7(b)の箱50を展開した状態のワーク51が示されている。中央の四角形の面51aに対して周囲の面51bを垂直に曲げることによって、箱50が作成される。
【0037】
次に、ステップS14において、通信部22は、生成されたCAMデータをプレスブレーキ1に送信する。なお、ステップS14において、タブレット2内で記憶し必要に応じて送信してもよい。また、無線接続が行われていない状態では、タブレット2でCAMデータを生成することは可能であるが、ステップS14における送信が行われない。
プレスブレーキ1は、ステップS15において、タブレット2からCAMデータを受信すると、ステップS16において、CAMデータ/動作プログラム変換部164がCAMデータを動作プログラムへと変換する。次に、ステップS17において、変換された動作プログラムが、動作プログラム読込部162によって読み込まれる。そして、作業者によって、プレスブレーキ1のモードが運転モードにされるまで待機状態となる。なお、段取りモードにおけるプレスブレーキ1の表示部142の表示例が、
図8に示されている。
図8に示すように、各種設定値(例えば、DS目標値)を入力する入力部70等が表示される。
【0038】
(状態(2))
状態(2)では、プレスブレーキ1が段取モードであり、タブレット2がシミュレーションモードである。この状態では、タブレット2によるシミュレーション表示が行われる。すなわち、作成する製品の作成手順をタブレット2上で確認することができる。
図9は、タブレットによるシミュレーションの動作を示す図である。
【0039】
はじめに、ステップS20において、作業者が操作部211を操作してモード選択部33によって所望のCADデータを選択する。次に、ステップS21において、CADデータ読込部42によって選択したCADデータの読込が行われる。続いて、ステップS22において、シミュレーション演算部43が、読み込まれたCADデータから、曲げ加工する際のシミュレーション(作業手順ともいえる)の演算を行う。次に、ステップS23において、シミュレーション表示制御部44が、演算結果に基づいて表示部212にシミュレーション表示を行わせる。
【0040】
(状態(3))
状態(3)は、本実施の形態のプレスブレーキシステム3では成立しない状態であり、プレスブレーキ1が運転モードであり、タブレット2が編集モードの状態である。上述した
図4Bに示す状態では、作業者Aが離れているため別の作業者がプレスブレーキ1を操作するおそれがある。仮に別の作業者がプレスブレーキ1を使用している際に作業者AがCAMデータを生成してプレスブレーキ1に送信すると、送信されたCAMデータに基づいてプレスブレーキ1が誤動作を起こす場合がある。
このため、本実施の形態のプレスブレーキシステム3では、無線接続された状態において状態(3)にならないように制御が行われている。すなわち、プレスブレーキ1が動作モードの際にタブレット2が編集モードにならないように制御が行われる。
【0041】
(状態(4))
状態(4)は、プレスブレーキ1が運転モードであり、タブレット2がシミュレーションモードである。
図10は、状態(4)におけるプレスブレーキ1とタブレット2の動作を示すフロー図である。
【0042】
はじめに、ステップS30において、制御部16は、タブレット2から送信されたCAMデータから変換された動作プログラムが既に読み込まれているか(
図6のステップS17参照)を判断する。
ステップS30において動作プログラムが読み込まれていない場合には、ステップS31において、作業者の操作部141を用いた入力によって、予め記憶されている動作プログラムのなかから動作プログラム選択部161がプレスブレーキ1を動作させる動作プログラムを選択する。
【0043】
次に、ステップS32において、動作プログラム読込部162が、動作プログラム選択部で選択された動作プログラムを読み込む。
次に、ステップS33において、読み込まれた動作プログラムに基づいて表示部142に表示が行われる(
図11A~
図14A)。
次に、ステップS34おいて、通信部15を介して、動作プログラムに基づいて工程のワークの状態を示すCADデータがタブレット2へと送信される。
【0044】
ステップS35において、タブレット2がCADデータを受信すると、ステップS36において、通信部22を介して受信したCADデータの読込が行われる。
続いて、ステップS37において、シミュレーション演算部43が、読み込まれたCADデータをシミュレーション表示する際の演算を行う。次に、ステップS38において、シミュレーション表示制御部44が、演算結果に基づいて表示部212にシミュレーション表示を行わせる。
【0045】
そして、ステップS39において、作業者がフットスイッチを操作することにより、読み込まれた動作プログラムに基づいてラム12が下降し上昇する。このラム12の下降および上昇によって、ワークの曲げ加工が行われる。ステップS39は、ステップS38におけるシミュレーション表示を待たなくても良く、作業者の判断によって実行される。
次に、ステップS40において、全ての作業工程が終了したか否かが判断され、全ての作業工程が完了していない場合には、制御はステップS33へと戻る。そして、次の工程のCADデータがタブレット2へと送信され、ステップS35~ステップS38が実施されて次工程のシミュレーション表示が行われる。
【0046】
ステップS40において、動作プログラムに基づいた作業工程が全て終了したと判断されると、制御が終了する。
ここで、プレスブレーキ1の表示部142とタブレット2の表示部212の表示例について説明する。
図11Aは、プレスブレーキ1の運転モードの際の表示部142の表示例を示す図である。
図11Aには、動作プログラムに基づく作業工程が示されている。
図11Aに示されている作業工程は、
図7で示した箱50を作成するためのものである。4つの面51bを面51aに対して折り曲げるため、第1工程71、第2工程72、第3工程73および第4工程74が示されている。
図11Aでは、第1工程71がハイライト表示されている。このとき、タブレット2には、
図11Aの第1工程のCADデータが送信され、タブレット2の表示部212では、
図11Bに示す表示が行われる。すなわち、第1工程において作業者が行うべき動作が表示される。
図11Bには固定テーブル11に装着されたダイ5とラム12に装着されたパンチ4とダイ5上に載置されたワーク51(
図7参照)が示されている。
【0047】
そして、第1工程71が終了すると、
図12Aに示すように、第1工程71のハイライト表示が消え、第2工程72がハイライト表示される。そして、第1工程が終了した後のCADデータがタブレット2に送信される。送信されたCADデータに基づいて、
図12Bに示すように、第2工程72で行うべき作業がタブレット2の表示部212に表示される。第1工程が終了しているため、
図12Bの表示部212では、1枚の面51bが面51aに対して曲げられた状態が示されている。
【0048】
続いて、第2工程72が終了すると、
図13Aに示すように、第2工程72のハイライトが消え、第3工程73がハイライトされる。そして、第2工程が終了した後のCADデータがタブレット2に送信される。送信されたCADデータに基づいて、
図13Bに示すように、第3工程73で行うべき作業がタブレット2の表示部212に表示される。第2工程が終了しているため、
図13Bの表示部212では、2枚の面51bが面51aに対して曲げられた状態が示されている。
【0049】
続いて、第3工程73が終了すると、
図14Aに示すように、第3工程73のハイライトが消え、第4工程74がハイライトされる。そして、第3工程が終了した後のCADデータがタブレット2に送信される。送信されたCADデータに基づいて、
図14Bに示すように、第4工程74で行うべき作業がタブレット2の表示部212に表示される。第3工程が終了しているため、
図14Bの表示部212では、3枚の面51bが面51aに対して曲げられた状態が示されている。
この第4工程が終了すると、全ての作業工程が終了したとして制御が終了する。
【0050】
(モード切替)
次に、モード切替について
図5を用いて説明する。
図5では、上述した状態(1)、状態(2)、状態(4)におけるプレスブレーキ1とタブレット2のモード切替による状態遷移が示されている。
【0051】
状態(1)では、プレスブレーキ1は段取モードであり、タブレット2は編集モードである。この状態(1)において、プレスブレーキ1が段取モードから運転モードに切り換えられると、プレスブレーキ1が運転モードであり、タブレット2がシミュレーションモードである状態(4)に遷移する。すなわち、状態(3)をとらないように、タブレット2が編集モードからシミュレーションモードに切り換えられる。この切替については、後述する
図15のフロー図において説明する。
【0052】
状態(1)において、タブレット2が編集モードからシミュレーションモードに切り換えられると、プレスブレーキ1が段取りモードであり、タブレット2がシミュレーションモードである状態(2)に遷移する。この遷移においては、プレスブレーキ1のモード切替は発生しない。
状態(2)では、プレスブレーキ1は段取りモードであり、タブレット2はシミュレーションモードである。この状態(2)において、プレスブレーキ1が段取モードから運転モードに切り換えられると、プレスブレーキ1が運転モードであり、タブレット2がシミュレーションモードである状態(4)に遷移する。この遷移においては、タブレット2のモード切替は発生しない。
【0053】
状態(2)において、タブレット2がシミュレーションモードから編集モードに切り換えられると、プレスブレーキ1が段取モードであり、タブレット2が編集モードである状態(1)に遷移する。この遷移においては、プレスブレーキ1のモード切替は発生しない。
状態(4)では、プレスブレーキ1は運転モードであり、タブレット2はシミュレーションモードである。この状態(4)において、プレスブレーキ1が運転モードから段取モードに切り換えられると、プレスブレーキ1が段取モードであり、タブレット2がシミュレーションモードである状態(2)に遷移する。この遷移においては、タブレット2のモード切替は発生しない。
【0054】
状態(4)において、タブレット2がシミュレーションモードから編集モードに切り換えられると、プレスブレーキ1が段取モードであり、タブレット2が編集モードである状態(1)に遷移する。すなわち、状態(3)をとらないように、プレスブレーキ1が運転モードから段取モードに切り換えられる。この切替については、後述する
図16のフロー図において説明する。
【0055】
次に、プレスブレーキ1のモード切替に伴うタブレット2のモード切替について説明する。
図15は、タブレット2がプレスブレーキ1からモード切替情報を受信した際のフロー図である。
プレスブレーキ1では、作業者が操作部141を操作して、モード選択部165が所望のモードを選択すると、モード切替情報がタブレット2へと送信される。モード切替情報には、運転モードから段取モードへの切替か、段取モードから運転モードへの切替かの情報を含む。
【0056】
図15のステップS50に示すように、タブレット2がモード切替情報を受信すると、ステップS51において、モード切替部34は、モード切替情報に基づいて、プレスブレーキ1のモード切替が、段取りモードから運転モードへの切替か判断する。
ステップS51において、段取りモードから運転モードへのモード切替と判断した場合、モード切替部34は、タブレット2が編集モードであるか否かを判断する。
【0057】
編集モードであると判断された場合には、モード切替部34は、ステップS53において、編集モードからシミュレーションモードへと切替を行う。
一方、ステップS51において段取りモードから運転モードへのモード切替ではないと判断した場合、およびステップS52において編集モードではないと判断した場合には、タブレット2はモードを変更する必要がないため制御は終了する。
【0058】
以上のように、プレスブレーキ1において段取りモードから運転モードに切替された際に、タブレット2を編集モードに設定しないようにすることにより、上述した状態(3)になることを防ぐことができる。
次に、タブレット2のモード切替に伴うプレスブレーキ1のモード切替について説明する。
【0059】
図16は、プレスブレーキ1がタブレット2からモード切替情報を受信した際のフロー図である。
タブレット2では、作業者が操作部211を操作して、モード選択部33が所望のモードを選択すると、モード切替情報がプレスブレーキ1へと送信される。モード切替情報には、編集モードからシミュレーションモードへの切替か、シミュレーションモードから編集モードへの切替かの情報を含む。
【0060】
図16のステップS60に示すように、プレスブレーキ1がモード切替情報を受信すると、ステップS61において、モード切替部166は、モード切替情報に基づいてタブレット2のモード切替がシミュレーションモードから編集モードへの切替か判断する。
ステップS61において、シミュレーションモードから編集モードへのモード切替と判断した場合、モード切替部166は、プレスブレーキ1が運転モードであるか否かを判断する。
【0061】
運転モードであると判断された場合には、モード切替部166は、ステップS63において、運転モードから段取モードへと切替を行う。
一方、ステップS61においてシミュレーションモードから編集モードへのモード切替ではないと判断した場合、およびステップS62において運転モードではないと判断した場合には、プレスブレーキ1のモードを変更する必要がないため制御は終了する。
以上のように、タブレット2においてシミュレーションモードから編集モードに切替された際に、プレスブレーキ1を運転モードに設定しないようにすることにより、上述した状態(3)になることを防ぐことができる。
【0062】
<4.特徴>
(4-1)
本実施の形態のプレスブレーキシステム3は、プレスブレーキ1と、タブレット2(携帯電子機器の一例)と、を備える。プレスブレーキ1は、一対のダイ5(第1金型の一例)およびパンチ4(第2金型の一例)によってワーク51を曲げ加工する。タブレット2は、プレスブレーキ1と無線通信による接続が可能である。タブレット2は、CAMデータ生成部45と、通信部22(第1通信部の一例)と、を有する。CAMデータ生成部45は、CAMデータを生成する。通信部22は、生成したCAMデータを無線でプレスブレーキ1に送信する。プレスブレーキ1は、固定テーブル11と、ラム12(可動テーブルの一例)と、通信部15(第2通信部の一例)と、ラム動作制御部163(テーブル動作制御部の一例)と、を有する。固定テーブル11は、ダイ5が装着される。ラム12は、パンチ4が装着され、固定テーブル11に対して移動可能である。通信部15は、送信されたCAMデータを無線で受信する。ラム動作制御部163は、受信したCAMデータに基づいてラム12の動作の制御を行う。
【0063】
これによりCAMデータ生成部45を有するタブレット2をプレスブレーキ1と一体として使用することができるとともに、プレスブレーキ1と別々に使用することもできる。
すなわち、プレスブレーキ1とタブレット2が無線通信で接続されている状態では、プレスブレーキ1の傍において現場で動作プラグラムの作成を行うことができる。また、プレスブレーキ1とタブレット2の無線通信で接続されていない状態では、プレスブレーキ1とタブレット2を別々に用いて、タブレット2でCAMデータを生成しながら、プレスブレーキ1は曲げ加工を行うことができる。
このように、現場で動作プログラムの作成を行うことができ、且つ稼働率の向上を図ることができる。
【0064】
(4-2)
本実施の形態のプレスブレーキシステム3では、プレスブレーキ1は、モード切替部166(第1設定部の一例)を更に有する。モード切替部166は、無線通信で接続されている状態において、CAMデータ生成部45によってCAMデータの生成が行われている場合に、ラム12の動作を不可に設定する。
これによって、無線通信可能な範囲内であるプレスブレーキ1の傍(作業エリア内)で、プレスブレーキシステム3の作業者がCAMデータの生成を行っているときに、他の作業者がプレスブレーキ1を使用することを防止することができる。
【0065】
(4-3)
本実施の形態のプレスブレーキシステム3では、タブレット2は、表示部212と、シミュレーション表示制御部44(表示制御部の一例)と、を更に有する。シミュレーション表示制御部44は、無線通信で接続されている状態において、プレスブレーキ1によって曲げ加工が行われている場合に、曲げ加工の状態を表示部212に表示させる。
これによって、作業者は、タブレット2によって曲げ加工の状態を確認することができる。
【0066】
(4-4)
本実施の形態のプレスブレーキシステム3では、モード切替部166(第1設定部の一例)は、ラム動作制御部163(テーブル動作制御部の一例)を、ラム12(可動テーブルの一例)の動作を可にする運転モード(第1モードの一例)、またはラム12の動作を不可にする段取モード(第2モードの一例)に設定可能である。タブレット2は、モード切替部34(第2設定部の一例)を有する。モード切替部34は、CAMデータ生成部45を、CAMデータの生成を可にする編集モード(第3モードの一例)、またはCAMデータの生成を不可にするシミュレーションモード(第4モードの一例)に設定可能である。モード切替部34によってCAMデータ生成部45が編集モードに設定された場合、編集モードに設定した情報が通信部22(第1通信部の一例)から通信部15(第2通信部の一例)に送信され、モード切替部34(第1設定部の一例)は、ラム動作制御部163(テーブル動作制御部の一例)を段取モード(第2モードの一例)に設定する。
これにより、プレスブレーキシステム3の作業者が、プレスブレーキ1の傍(作業エリア内)でタブレット2のモードをCAMデータの生成が可能なモードに切り替えると、自動的にプレスブレーキ1のラム12の動作を不可とできる。そのため、CAMデータ生成中において他の作業者がプレスブレーキ1を使用することを防止することができる。
【0067】
(4-5)
本実施の形態のプレスブレーキシステム3では、プレスブレーキ1は、モード切替部34(第1設定部の一例)を有する。モード切替部34は、ラム動作制御部163(テーブル動作制御部の一例)を、ラム12(可動テーブルの一例)の動作を可にする運転モード(第1モードの一例)、またはラム12の動作を不可にする編集モード(第2モードの一例)に設定可能である。タブレット2は、データ操作部32と、モード切替部34(第2設定部の一例)と、を有する。データ操作部32は、シミュレーション表示制御部44(表示制御部)およびCAMデータ生成部45を含む。モード切替部34は、データ操作部32を、CAMデータの生成を可にする編集モード(第3モードの一例)、またはシミュレーション表示制御部44によって曲げ加工の状態を表示部212に表示させるシミュレーションモード(第4モードの一例)に設定可能である。モード切替部34によってラム動作制御部163が運転モード(第1モードの一例)に設定された場合、運転モードに設定したモード切替情報(情報の一例)が通信部15(第2通信部の一例)から通信部22(第1通信部の一例)に送信され、モード切替部34は、データ操作部32をシミュレーションモード(第4モードの一例)に設定する。
これによって、プレスブレーキ1を曲げ加工が可能なモードに設定すると、自動的にタブレット2のモードが曲げ加工の状態を表示するシミュレーションモードに設定される。このため、作業者は、特に設定を行わない場合であってもタブレット2によって曲げ加工の状態を確認することができる。
【0068】
<5.他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0069】
(A)
上記実施の形態では、携帯電子機器の一例としてタブレット2を用いて説明しているが、タブレット2に限らなくても良く、モバイルパソコン等であってもよい。また、上記説明では、タッチパネルなどによって表示部212と操作部211が兼ねられていると説明したが、別々に設けられていてもよい。
【0070】
(B)
上記実施の形態では、状態(1)において、プレスブレーキ1が段取モードから運転モードに切り換えられると、タブレット2が編集モードからシミュレーションモードに切替られることによって状態(3)にならないように制御されているが、このような制御に限られるものではない。例えば、タブレット2が編集モードである場合には、プレスブレーキ1のモードが運転モードに切り換えられないように制御が行われてもよい。例えば、運転モードの選択が行われると、モード切替部166が通信部15を介してタブレット2の現在のモードを取得する。そして、タブレット2が編集モードである場合には、モード切替部166はモード切替を行わず、表示部142が、モード切替を行わない旨の表示を行う。
【0071】
(C)
上記実施の形態では、状態(4)において、タブレット2がシミュレーションモードから編集モードに切り換えられると、プレスブレーキ1が運転モードから段取モードに切替られることによって状態(3)にならないように制御されているが、このような制御に限られるものではない。例えば、プレスブレーキ1が運転モードである場合には、タブレット2のモードが編集モードに切り換えられないように制御が行われてもよい。例えば、編集モードの選択が行われると、モード切替部34が通信部22を介してプレスブレーキ1の現在のモードを取得する。そして、プレスブレーキ1が運転モードである場合には、モード切替部34はモード切替を行わず、表示部212が、モード切替を行わない旨の表示を行う。
【0072】
(D)
上記実施の形態では、プレスブレーキ1が段取モードと運転モードの2種類のモードを有していると述べたが、2種類に限らず3種類以上あってもよい。
また、上記実施の形態では、タブレット2が編集モードとシミュレーションモードの2種類のモードを有していると述べたが、2種類に限らず3種類以上あってもよい。
【0073】
(E)
上記実施の形態では、タブレット2に無線通信の設定を行う通信設定部31が設けられているが、プレスブレーキ1に設けられていてもよい。
また、通信設定部31が設けられておらず、無線通信可能な範囲(近距離無線通信)が決まっており、その範囲内では自動で無線接続され、範囲外では無線接続が切断されてもよい。
【0074】
(F)
図6において、プレスブレーキ1は、タブレット2から受信したCAMデータを動作プログラムに変換し、動作プログラムを読み込んだ後に待機すると説明したが、動作プログラムに変換した後、記憶し、動作プログラム選択部161によって選択される動作プログラムの1つとしてもよい。
【0075】
(G)
上記実施の形態では、下金型を固定式とし上金型を駆動式とする上金型駆動式のプレスブレーキ1(所謂オーバードライブ式)について説明したが、上金型を固定式として下金型を駆動式とする所謂アンダードライブ式のプレスブレーキにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のプレスブレーキシステムは、現場で動作プログラムの作成を行うことができ且つ稼働率の向上を図ることが可能であり、板材の曲げ加工に広く適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 :プレスブレーキ
2 :タブレット
3 :プレスブレーキシステム
4 :パンチ
5 :ダイ
11 :固定テーブル
12 :ラム
15 :通信部
163 :ラム動作制御部