(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】光電センサの診断方法及びこれを利用した立体駐車装置の制御方法、並びに、光電センサの診断システム及びこれを利用した立体駐車装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
E04H6/42 C
(21)【出願番号】P 2017172056
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】712005920
【氏名又は名称】新明和パークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】太田 直人
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-015883(JP,A)
【文献】特開2017-138154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 - 6/44
G01C 3/00 - 3/32
G01V 8/12
G01V 8/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断方法であって、
前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させ、前記受光部で受けた光の明滅パターンと前記所定の明滅パターンとを比較し、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定
し、
前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、
利用者により前記操作盤の電源が投入されてから所定時間内であって、前記立体駐車装置の操作がなされる前のタイミングで実行することを特徴とする光電センサの診断方法。
【請求項2】
物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断方法であって、
前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させ、前記受光部で受けた光の明滅パターンと前記所定の明滅パターンとを比較し、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定し、
前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、
前記操作盤の電源が切断中の所定のタイミングで実行することを特徴とする光電センサの診断方法。
【請求項3】
物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断方法であって、
前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させ、前記受光部で受けた光の明滅パターンと前記所定の明滅パターンとを比較し、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定し、
前記立体駐車装置は、前面に開閉ゲートを備え、前記光電センサとして、前記開閉ゲートよりも前面側に設置される、前記立体駐車装置への侵入を検知する侵入検知用センサと、前記開閉ゲートの乗越えを検知する乗越え検知用センサとを含むものであり、
少なくとも前記侵入検知用センサと前記乗越え検知用センサとを診断対象とすることを特徴とする光電センサの診断方法。
【請求項4】
前記立体駐車装置は、前面に開閉ゲートを備え、前記光電センサとして、前記開閉ゲートよりも前面側に設置される、前記立体駐車装置への侵入を検知する侵入検知用センサと、前記開閉ゲートの乗越えを検知する乗越え検知用センサとを含むものであり、
少なくとも前記侵入検知用センサと前記乗越え検知用センサとを診断対象とすることを特徴とする請求項1
又は2記載の光電センサの診断方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の光電センサの診断方法により、前記光電センサの異常を検出した場合に、前記立体駐車装置が備える表示部に前記光電センサが異常であることを表示すると共に、前記立体駐車装置の少なくとも一部の動作を抑止することを特徴とする立体駐車装置の制御方法。
【請求項6】
物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断システムであって、
前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させると共に、前記受光部で受けた光の明滅パターンを取得し、前記所定の明滅パターンと前記受光部から取得した光の明滅パターンとを比較して、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定する診断制御部を含
み、
前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、
前記診断制御部は、利用者により前記操作盤の電源が投入されてから所定時間内であって、前記立体駐車装置の操作がなされる前のタイミングで診断を行うことを特徴とする光電センサの診断システム。
【請求項7】
物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断システムであって、
前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させると共に、前記受光部で受けた光の明滅パターンを取得し、前記所定の明滅パターンと前記受光部から取得した光の明滅パターンとを比較して、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定する診断制御部を含み、
前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、
前記診断制御部は、前記操作盤の電源が切断中の所定のタイミングで診断を行うことを特徴とする光電センサの診断システム。
【請求項8】
物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断システムであって、
前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させると共に、前記受光部で受けた光の明滅パターンを取得し、前記所定の明滅パターンと前記受光部から取得した光の明滅パターンとを比較して、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定する診断制御部を含み、
前記立体駐車装置は、前面に開閉ゲートを備え、前記光電センサとして、前記開閉ゲートよりも前面側に設置される、前記立体駐車装置への侵入を検知する侵入検知用センサと、前記開閉ゲートの乗越えを検知する乗越え検知用センサとを含むものであり、
前記診断制御部は、少なくとも前記侵入検知用センサと前記乗越え検知用センサとを診断対象とすることを特徴とする光電センサの診断システム。
【請求項9】
前記立体駐車装置は、前面に開閉ゲートを備え、前記光電センサとして、前記開閉ゲートよりも前面側に設置される、前記立体駐車装置への侵入を検知する侵入検知用センサと、前記開閉ゲートの乗越えを検知する乗越え検知用センサとを含むものであり、
前記診断制御部は、少なくとも前記侵入検知用センサと前記乗越え検知用センサとを診断対象とすることを特徴とする請求項6
又は7記載の光電センサの診断システム。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項記載の光電センサの診断システムから診断結果を取得し、該診断結果が前記光電センサの異常を検出したことを示す場合に、前記立体駐車装置が備える表示部に前記光電センサが異常であることを表示すると共に、前記立体駐車装置の少なくとも一部の動作を抑止することを特徴とする立体駐車装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車装置に設置された光電センサの診断方法、この診断方法を利用した立体駐車装置の制御方法、立体駐車装置に設置された光電センサの診断システム、及び、この診断システムを利用した立体駐車装置の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両を格納する複数の可動式パレットを備える立体駐車装置は、一般的に、より万全な安全確保を目的として、物体を検知する複数の光電センサを備えている(特許文献1参照)。各光電センサは、投光部と受光部とを含み、投光部から受光部に対して出射された光が、物体により遮られたことを検出することによって、物体を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような光電センサは、例えば、当該光電センサを備えた立体駐車装置に隣接する、別の立体駐車装置に具備された別の光電センサの投光部から出射された光等を、当該光電センサの受光部で受けてしまうこと等に起因して、以下のような弊害を生ずることがある。すなわち、当該光電センサの投光部から出射された光が物体により遮られているにも関わらず、当該光電センサの受光部が別の光電センサの投光部から出射された光を受けることで、当該光電センサが物体を検知できない虞がある。このような弊害は、光電センサの故障に起因するものではないため、光電センサの通常の故障診断フローで発見することは困難である。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光電センサの検知精度をより高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。そのため、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断方法であって、前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させ、前記受光部で受けた光の明滅パターンと前記所定の明滅パターンとを比較し、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定する光電センサの診断方法。
【0007】
本項に記載の光電センサの診断方法は、診断対象の光電センサの投光部から、所定の明滅パターンで光を出射させ、診断対象の光電センサの受光部で受けた光の明滅パターンと、投光部から出射させた光の所定の明滅パターンとを比較し、この比較結果に基づいて光電センサの異常を判定するものである。ここで、所定の明滅パターンとは、物体検知動作中の光電センサの投光部から出射される光の出射パターン(光を常時出射)と異なる明滅パターンである。そして、このような所定の明滅パターンで投光部から光が出射されると、通常、投光部と対の受光部では、所定の明滅パターンと一致する明滅パターンの光が受光されることになる。このため、受光部で受けた光の明滅パターンが所定の明滅パターンと一致する場合は、診断対象の光電センサに異常がないと判定する。
【0008】
一方、受光部で受けた光の明滅パターンと所定の明滅パターンとを比較した結果、双方の明滅パターンが一致しなかった場合は、受光部が投光部から出射された光とは別の光を検知していること等が考えられるため、光電センサに異常があると判定する。例えば、診断対象の光電センサとは別の、物体検知動作中の光電センサの投光部から出射されている光を、診断対象の光電センサの受光部が受けていると、その受けた光の明滅パターンは、光が常時出射されているパターンになると考えられる。このような明滅パターンは、上述したように、所定の明滅パターンと異なるものであり、所定の明滅パターンと一致しないため、光電センサに異常があると判定する。
従って、本項に記載の光電センサの診断方法は、診断対象の光電センサの受光部が、この受光部と対の投光部から出射されている光以外の光を検知している場合であっても、光電センサに異常があると判定するものである。このため、受光部が投光部から出射された光と別の光を受光することに起因する、光電センサの検知漏れが回避され、光電センサの検知精度がより高められることとなる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記所定の明滅パターンは、該所定の明滅パターンを成す所定の時間中に、光が出射される時間帯と光が出射されない時間帯とを少なくとも1回ずつ含み、前記比較結果として、前記所定の時間中の光が出射される時間帯の合計時間が、前記所定の明滅パターンよりも前記受光部で受けた光の明滅パターンの方で増えていた場合、前記受光部が前記投光部から出射された光とは別の光を検知していると判定し、前記所定の時間中の光が出射されない時間帯の合計時間が、前記所定の明滅パターンよりも前記受光部で受けた光の明滅パターンの方で増えていた場合、前記光電センサの故障又は障害物があると判定する光電センサの診断方法。
【0010】
本項に記載の光電センサの診断方法は、投光部から出射させる光の所定の明滅パターンが、この所定の明滅パターンを成す所定の時間中に、光が出射される(以下、「光がON」とも言う。)時間帯と、光が出射されない(以下、「光がOFF」とも言う。)時間帯とを、少なくとも1回ずつ含むものであり、夫々の時間帯の回数や長さ(時間)は任意である。そして、所定の明滅パターンと受光部で受けた光の明滅パターンとを比較した結果、所定の明滅パターンの所定の時間中に含まれる、光がONの時間帯の合計時間よりも、受光部で受けた光の明滅パターンの所定の時間中に含まれる、光がONの時間帯の合計時間の方が増えていた場合に、受光部が投光部から出射された光とは別の光を検知していると判定する。すなわち、この場合には、所定の明滅パターンに含まれる、光がOFFの時間帯に相当するタイミングであるにも関わらず、受光部において何かしらの光を受光して、光がONの合計時間が増えていると考えられるため、上記のように判定する。
【0011】
一方、所定の明滅パターンの所定の時間中に含まれる、光がOFFの時間帯の合計時間よりも、受光部で受けた光の明滅パターンの所定の時間中に含まれる、光がOFFの時間帯の合計時間の方が増えていた場合は、光電センサの故障又は障害物があると判定する。すなわち、この場合は、所定の明滅パターンに含まれる、光がONの時間帯に相当するタイミングであるにも関わらず、受光部において光が検知されず、光がOFFの合計時間が増えていると考えられるため、投光部の故障及び/又は受光部の故障や、投光部からの光を遮る何らかの障害物があると判定するものである。このように、本項に記載の光電センサの診断方法は、光電センサの異常判定のみではなく、異常の要因をある程度切り分けることで、その後に行うこととなる光電センサの復旧作業を効率よく進めるものである。なお、上述した光がON又はOFFの時間帯の合計時間とは、明滅パターンに光がON又はOFFの時間帯が2回以上含まれている場合は、光がON又はOFFの各時間帯の長さ(時間)を合計した時間を示している。
【0012】
(3)上記(1)(2)項において、前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、利用者により前記操作盤の電源が投入されてから所定時間内であって、前記立体駐車装置の操作がなされる前のタイミングで実行する光電センサの診断方法(請求項1)。
本項に記載の光電センサの診断方法は、操作盤を備える立体駐車装置を診断対象とし、操作盤は、利用者によって立体駐車装置の各種操作が入力されると共に、その電源も利用者によって投入及び切断されるものである。すなわち、立体駐車装置が利用される際、まずは利用者により操作盤の電源が投入され、操作盤に入力された操作に応じて立体駐車装置が動作した後、利用者により操作盤の電源が切断される。そして、本項に記載の光電センサの診断方法は、上記(1)(2)項に記載したような診断を、利用者により操作盤の電源が投入されてから所定時間内であり、利用者により立体駐車装置の操作がなされる前のタイミングで実行するものである。このタイミングは、利用者が立体駐車装置の利用を開始する毎の、利用者が立体駐車装置のパレットの呼び出し操作やゲート開閉操作等を行う前のタイミングである。このようなタイミングで診断を実行することで、立体駐車装置が利用される毎に、立体駐車装置のパレットや開閉ゲート等が動作する前に、光電センサの異常が検出されることになるため、立体駐車装置の安全性がより高められるものである。
【0013】
(4)上記(1)(2)項において、前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、前記操作盤の電源が切断中の所定のタイミングで実行する光電センサの診断方法(請求項2)。
本項に記載の光電センサの診断方法は、上記(3)項の光電センサの診断方法と同様に、操作盤を備える立体駐車装置を診断対象とするものである。そして、上記(1)(2)項に記載したような診断を、操作盤の電源が切断中、すなわち、立体駐車装置が利用されていない状態の、所定のタイミングで実行するものである。診断を実行する所定のタイミングは、立体駐車装置が利用されていない状態であれば、日毎の所定時間のタイミングや、利用者により操作盤の電源が切断された直ぐ後のタイミング等の、任意のタイミングでよい。これにより、立体駐車装置の利用時の制御や動作に何ら影響を与えることなく、光電センサの異常が検出されるものとなる。
【0014】
(5)上記(1)から(4)項において、前記立体駐車装置は、前面に開閉ゲートを備え、前記光電センサとして、前記開閉ゲートよりも前面側に設置される、前記立体駐車装置への侵入を検知する侵入検知用センサと、前記開閉ゲートの乗越えを検知する乗越え検知用センサとを含むものであり、少なくとも前記侵入検知用センサと前記乗越え検知用センサとを診断対象とする光電センサの診断方法(請求項3、4)。
【0015】
本項に記載の光電センサの診断方法は、光電センサを具備する立体駐車装置が、前面に開閉ゲートを備えると共に、光電センサとして侵入検知用センサと乗越え検知用センサとを含み、少なくともこれら侵入検知用センサと乗越え検知用センサとを診断対象とするものである。侵入検知用センサは、立体駐車装置への人等の侵入を検知するために、開閉ゲートよりも前面側の下方に設置され、乗越え検知用センサは、開閉ゲートの乗越えを検知するために、開閉ゲートよりも前面側かつ上方に設置されるものである。すなわち、これら2つの光電センサは、何れも、一般的に立体駐車装置に人等が侵入する際の侵入口となる、立体駐車装置の前面側において物体を検知するものである。このような2つの光電センサを診断対象とすることで、立体駐車装置の特に前面側からの侵入に係る光電センサの検知漏れが回避され、より万全な安全性が立体駐車装置に確保されるものである。
【0016】
(6)上記(1)から(5)項のいずれか1項の光電センサの診断方法により、前記光電センサの異常を検出した場合に、前記立体駐車装置が備える表示部に前記光電センサが異常であることを表示すると共に、前記立体駐車装置の少なくとも一部の動作を抑止する立体駐車装置の制御方法(請求項5)。
本項に記載の立体駐車装置の制御方法は、上記(1)から(5)項のいずれか1項の光電センサの診断方法を利用するものであり、それらの診断方法によって光電センサの異常を検出した場合に、立体駐車装置が備える表示部に光電センサが異常であることを表示すると共に、立体駐車装置の少なくとも一部の動作を抑止するものである。
【0017】
光電センサが異常であることの表示は、立体駐車装置が備える複数の光電センサが診断対象である場合は、立体駐車装置内で異常のある光電センサを特定して表示してもよく、又、上記(2)項に記載した如く異常の要因が一部判明している場合は、その要因と共に表示してもよい。更に、光電センサの異常を検出した場合に抑止する立体駐車装置の動作は、例えば、パレットの呼び出し動作や開閉ゲートの開閉動作等であり、その実現のために、立体駐車装置が備える操作盤等に対して利用者により入力される操作を受け付けないようにしてもよい。これにより、光電センサの異常が利用者等に認知されると共に、光電センサの異常が検出された状態での、立体駐車装置の利用が制限されるため、立体駐車装置の安全性が維持されるものである。
【0018】
(7)物体検知のために立体駐車装置に設置された投光部と受光部とを備える光電センサの診断システムであって、前記投光部から所定の明滅パターンで光を出射させると共に、前記受光部で受けた光の明滅パターンを取得し、前記所定の明滅パターンと前記受光部から取得した光の明滅パターンとを比較して、該比較結果に基づいて前記光電センサの異常を判定する診断制御部を含む光電センサの診断システム。
(8)上記(7)項において、前記所定の明滅パターンは、該所定の明滅パターンを成す所定の時間中に、光が出射される時間帯と光が出射されない時間帯とを少なくとも1回ずつ含み、前記診断制御部は、前記比較結果として、前記所定の時間中の光が出射される時間帯の合計時間が、前記所定の明滅パターンよりも前記受光部で受けた光の明滅パターンの方で増えていた場合、前記受光部が前記投光部から出射された光とは別の光を検知していると判定し、前記所定の時間中の光が出射されない時間帯の合計時間が、前記所定の明滅パターンよりも前記受光部で受けた光の明滅パターンの方で増えていた場合、前記光電センサの故障又は障害物があると判定する光電センサの診断システム。
【0019】
(9)上記(7)(8)項において、前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、前記診断制御部は、利用者により前記操作盤の電源が投入されてから所定時間内であって、前記立体駐車装置の操作がなされる前のタイミングで診断を行う光電センサの診断システム(請求項6)。
(10)上記(7)(8)項において、前記立体駐車装置は、利用者により該立体駐車装置の操作が入力される操作盤を備え、該操作盤の電源が利用者によって投入及び切断されるものであり、前記診断制御部は、前記操作盤の電源が切断中の所定のタイミングで診断を行う光電センサの診断システム(請求項7)。
(11)上記(7)から(10)項において、前記立体駐車装置は、前面に開閉ゲートを備え、前記光電センサとして、前記開閉ゲートよりも前面側に設置される、前記立体駐車装置への侵入を検知する侵入検知用センサと、前記開閉ゲートの乗越えを検知する乗越え検知用センサとを含むものであり、前記診断制御部は、少なくとも前記侵入検知用センサと前記乗越え検知用センサとを診断対象とする光電センサの診断システム(請求項8、9)。
【0020】
(12)上記(7)から(11)項のいずれか1項の光電センサの診断システムから診断結果を取得し、該診断結果が前記光電センサの異常を検出したことを示す場合に、前記立体駐車装置が備える表示部に前記光電センサが異常であることを表示すると共に、前記立体駐車装置の少なくとも一部の動作を抑止する立体駐車装置の制御装置(請求項10)。
そして、(7)から(11)項の光電センサの診断システムは、各々、上記(1)から(5)項の光電センサの診断方法に用いられることで、上記(1)から(5)項の光電センサの診断方法と同等の作用を奏するものであり、又、(12)項の立体駐車装置の制御装置は、上記(6)項の立体駐車装置の制御方法に用いられることで、上記(6)項の立体駐車装置の制御方法と同等の作用を奏するものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明はこのように構成したので、光電センサの検知精度をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る光電センサの診断システムと立体駐車装置の制御装置とを含む、立体駐車装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の光電センサの診断システムと立体駐車装置の制御装置とを備えた立体駐車装置の斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法と立体駐車装置の制御方法との一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法による診断時に、光電センサの投光部から出射させる光の明滅パターン及び受光部により受ける光の明滅パターンを例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。又、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断システム10と、この光電センサの診断システム10を利用した立体駐車装置の制御装置40とを含む、立体駐車装置30の構成の一例を示している。又、
図2は、
図1に示した立体駐車装置30の構造の一例を示している。
【0024】
まず、
図1及び
図2を参照して、立体駐車装置30について概略的に説明すると、立体駐車装置30は、複数の支柱42a~42hと複数の梁44とによって構成された略矩形の構造体に、複数の可動式パレット32が移動可能に支持された構造である。
図2の例において、立体駐車装置30は、地上4段3連基(
図2中上下方向に4段、左右方向に3列)の構造であり、複数の可動式パレット32として、9基の可動式パレット32a~32iを備えている。更に、立体駐車装置30は、開閉ゲート34(34a~34c)、操作盤36、制御装置40、及び、駆動部50を備えている。なお、
図2では、制御装置40及び駆動部50の図示を省略している。
【0025】
複数の可動式パレット32a~32iのうち、32b、32cは、車両を入出庫する高さ位置で横行移動のみ行い、32d~32gは、立体駐車装置30の使用者による呼び出し操作に応じて、車両を入出庫可能な位置(
図2において、可動式パレット32a~32cがある位置)まで、高さ方向及び並列方向に移動可能なものである。一方、可動式パレット32a、32h、32iは、昇降のみ行うものである。又、開閉ゲート34a~34cの各々は、その後面側の入出庫位置に所望の可動式パレット32が呼び出された後に開かれ、車両の入出庫が終わった後に、使用者の操作により閉じられるものである。
図2の例では、開閉ゲート34a~34cは、支柱レール46a~46dの夫々の間に、上下方向に移動可能に案内支持されている。
【0026】
操作盤36は、立体駐車装置30の各操作を行うための入力が行われるものであり、例えばタッチパネル方式で、開閉ゲート34の開閉操作や、可動式パレット32の呼び出し操作等が入力される。又、操作盤36は、各種の情報を表示するための表示部38を備えている。更に、操作盤36は、例えば利用者が所有するキー等によって、その電源が投入及び切断されるようになっている。制御装置40は、立体駐車装置30全体の制御を担うものであり、例えば、操作盤36に入力された操作に応じて、駆動部50を介して、可動式パレット32の移動や開閉ゲート34の開閉動作を行わせるものである。駆動部50は、制御装置40による制御に応じて、可動式パレット32の移動や開閉ゲート34の開閉動作を行うための動力を発生、伝達するものである。
【0027】
更に、立体駐車装置30は、
図1に示すように、複数の光電センサ12を含んでいる。複数の光電センサ12は、車両を入出庫する高さにある各可動式パレット32の周辺の物体を検知するものであり、本実施例では、8つの光電センサ12A~12Hを含んでいる。
図2には、車両を入出庫する高さにある3基の可動式パレット32a~32cの周辺に、各組が光電センサ12を構成する投光部14と受光部16との複数の組を図示している。すなわち、
図2に示すように、開閉ゲート34の前面側(図中右手前側)を検知する光電センサ12として、支柱レール46a、46dに、侵入検知用センサ12Aを構成する投光部14a及び受光部16aと、乗越え検知用センサ12Bを構成する投光部14b及び受光部16bとが設置されている。又、開閉ゲート34の後面側(図中左奥側)を検知する光電センサ12として、支柱42a、42dに、ゲート後面センサ12Cを構成する投光部14c及び受光部16cが設置されている。
【0028】
又、3基の可動式パレット32a~32cの後部側(図中左奥側)を検知する光電センサ12として、支柱42e、42hに、後部センサ12Dを構成する投光部14d及び受光部16dが設置されている。更に、可動式パレット32a~32cの各々の側部を検知する光電センサ12として、支柱42a~42hに、側部センサ12E~12Hが設置されている。より詳しくは、支柱42e及び42aに、側部センサ12Eの投光部14e及び受光部16eが、支柱42f及び42bに、側部センサ12Fの投光部14f及び受光部16fが、支柱42g及び42cに、側部センサ12Gの投光部14g及び受光部16gが、そして、支柱42h及び42dに、側部センサ12Hの投光部14h及び受光部16hが、夫々設置されている。なお、
図2には、各光電センサ12による検知範囲を破線で示している。
【0029】
続いて、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断システム10について説明すると、
図1に示すように、光電センサの診断システム10は、診断制御部18を含み、本実施例では、立体駐車装置30の制御装置40に組み込まれている。診断制御部18は、詳しくは後述するが、診断対象の光電センサ12を診断し、光電センサ12の異常を判定するものである。又、立体駐車装置30の制御装置40は、上述したような立体駐車装置30の制御に加え、光電センサの診断システム10の診断制御部18から、光電センサ12の診断結果を取得し、この診断結果に応じて、立体駐車装置30の一部の動作を抑止するものである。
【0030】
次に、
図3に示すフロー図の流れに沿って、
図1及び
図2に示した光電センサの診断システム10及び立体駐車装置の制御装置40を利用する、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法及び立体駐車装置の制御方法について説明する。
図3では、S20~S70の処理が、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法に該当し、S80~S100の処理が、本発明の実施の形態に係る立体駐車装置の制御方法に該当する。なお、光電センサの診断システム10及び立体駐車装置の制御装置40を含む、立体駐車装置30の構成については、適宜、
図1及び
図2を参照のこと。
S10(電源投入):光電センサの診断システム10及び立体駐車装置の制御装置40を含む立体駐車装置30の電源を、立体駐車装置30の利用者により、操作盤36を操作することで投入する。ここでの立体駐車装置30の電源とは、操作盤36の電源を意味する。
【0031】
S20(診断開始):立体駐車装置30が備える複数の光電センサ12のうち、光電センサの診断システム10が診断対象とする光電センサ12の診断を開始する。本実施例では、立体駐車装置30の開閉ゲート34の前面側に備えられた2つの光電センサ12、すなわち、投光部14a及び受光部16aを備える侵入検知用センサ12Aと、投光部14b及び受光部16bを備える乗越え検知用センサ12Bとを診断対象とする。まず、侵入検知用センサ12Aを診断する場合を例にして説明を進める。なお、光電センサ12の診断中は、診断中の光電センサ12(侵入検知用センサ12A)を除く他の光電センサ12(乗越え検知用センサ12B、ゲート後面センサ12C、後部センサ12D、側部センサ12E~12H)は、物体検知動作中であるか、或いは、少なくとも投光部14から光を常時出射していることが好ましい。
【0032】
S30(光出射):光電センサの診断システム10の診断制御部18により、診断対象の光電センサ12の投光部14(侵入検知用センサ12Aの投光部14a)から、所定の明滅パターンで光を出射させる。本実施例では、
図4(a)のタイムチャートに示すような明滅パターンで光を出射させることとする。ここで、
図4のタイムチャートは、図中左側から右側へと進む時系列になっており、図中に「ON」で示された時間帯は、光が出射される時間帯を示し、図中に「OFF」で示された時間帯は、光が出射されない時間帯を示している。すなわち、
図4(a)に示す光の明滅パターンは、所定の時間T1中に、光がONの時間帯とOFFの時間帯とが交互に続き、光がONの時間帯が合計3回、光がOFFの時間帯が合計2回含まれたものである。各時間帯の長さは略等しくなっている。
【0033】
なお、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法で用いる光の所定の明滅パターンは、上記の実施例に限定されるものではなく、光がONの時間帯やOFFの時間帯の回数、各時間帯の長さ、所定の明滅パターンを成す所定の時間T1の長さ等は任意に設定できる。例えば、所定の明滅パターンは、光がONの時間帯とOFFの時間帯とが1回ずつ含まれたものでもよく、極端には、光がOFFの時間帯が続き、所定の時間T1が経過する間際に光がONとなるようなものであってもよい。しかしながら、検知動作中の光電センサ12の投光部14から出射される光の明滅パターン、すなわち、光が常時ONとなる明滅パターン(
図4(c)参照)は避けるものとする。
【0034】
S40(明滅パターン比較):上記S30で診断対象の光電センサ12の投光部14から出射させた光の明滅パターンと、この出射タイミングと略同じタイミングで、診断対象の光電センサ12の受光部16において受光された光の明滅パターンとを、診断制御部18により比較する。すなわち、本実施例では、
図4(a)に示す光の明滅パターンと、侵入検知用センサ12Aの受光部16aで検知された光の明滅パターンとを比較する。そして、侵入検知用センサ12Aの受光部16aで検知された光の明滅パターンが、
図4(a)に示す明滅パターンと同じである場合、すなわち、侵入検知用センサ12Aの投光部14aから出射された光の明滅パターンと、受光部16aで受けた光の明滅パターンとが一致する場合(YES)は、S50へ移行する。一方、侵入検知用センサ12Aの受光部16aで検知された光の明滅パターンが、
図4(a)に示す明滅パターンと異なる場合、すなわち、侵入検知用センサ12Aの投光部14aから出射された光の明滅パターンと、受光部16aで受けた光の明滅パターンとが一致しない場合(NO)は、S60へ移行する。
【0035】
S50(光電センサ正常判定):上記S40での比較の結果、診断対象の光電センサ12の投光部14から出射させた光の明滅パターンと、診断対象の光電センサ12の受光部16で受けた光の明滅パターンとが、一致している場合は、診断制御部18により、診断対象の光電センサ12(侵入検知用センサ12A)が正常であると判定する。
S60(光電センサ異常判定):上記S40での比較の結果、診断対象の光電センサ12の投光部14から出射させた光の明滅パターンと、診断対象の光電センサ12の受光部16で受けた光の明滅パターンとが、一致していない場合は、診断制御部18により、診断対象の光電センサ12(侵入検知用センサ12A)に異常があると判定する。
【0036】
この際、侵入検知用センサ12Aの受光部16aで受けた光の明滅パターンが、例えば、
図4(b)及び(c)に示す明滅パターンのように、投光部16aから出射させた
図4(a)に示す光の明滅パターンよりも、光がONの時間帯が増えている場合は、侵入検知用センサ12Aの受光部16aが、別の光電センサ12の投光部14から出射された光等の、侵入検知用センサ12Aの投光部14aから出射された光とは別の光を受光していると想定される。他方、侵入検知用センサ12Aの受光部16aで受けた光の明滅パターンが、例えば、
図4(d)及び(e)に示す明滅パターンのように、投光部16aから出射させた
図4(a)に示す光の明滅パターンよりも、光がOFFの時間帯が増えている場合は、侵入検知用センサ12Aの投光部14aや受光部16aが故障したこと、投光部14aと受光部16aとの間に障害物があること等が想定される。このように、上記S40での比較結果から想定される、光電センサ12の異常の要因を、光電センサ12の異常判定の情報の一部として保持してもよい。
【0037】
S70(診断対象確認):診断制御部18により、まだ診断を行っていない診断対象の光電センサ12が残っているか否かを判定する。そして、そのような光電センサ12(本実施例では乗越え検知用センサ12Bが相当)が残っている場合(YES)は、上記S30へ復帰し、その光電センサ12の診断を実行する。一方、診断を行っていない診断対象の光電センサ12が残っていない場合(NO)は、S80へ移行する。
S80(異常判定確認):立体駐車装置30の制御装置40により、診断制御部18から診断対象の光電センサ12の診断結果を取得し、異常と判定された光電センサ12が存在するか否かを判定する。そして、異常と判定された光電センサ12が1つでも存在する場合(YES)は、S90へ移行し、異常と判定された光電センサ12が1つも存在しない場合(NO)は、S120へ移行する。
【0038】
S90(光電センサ異常表示):上記S60で異常と判定された光電センサ12が異常であることを、立体駐車装置30の制御装置40により、操作盤36の表示部38に表示する。この際、上記S60に記載したように、光電センサ12の異常の要因がある程度想定される場合は、その要因を示す情報を表示部38に表示してもよい。
S100(立体駐車装置の動作抑止):立体駐車装置30の制御装置40により、立体駐車装置30の一部の動作を抑止する。本実施例では、立体駐車装置30が備える複数の可動式パレット32(32a~32i)の呼び出し動作と、複数の開閉ゲート34(34a~34c)の開閉動作とを抑止する。以降、後述する光電センサ12の点検・復旧作業S110が完了するまで、後述する可動式パレット32の呼び出し操作S120や、開閉ゲート34の閉操作S150等を受け付けないようにする。
【0039】
S110(光電センサの点検・復旧作業):作業員等により、上記S60で異常と判定された光電センサ12(侵入検知用センサ12A)の点検を行うと共に、異常から復旧するための復旧作業を行う。この際、表示部38に、異常の要因の情報が表示されている場合は、その情報を考慮しながら作業を行えばよい。例えば、異常の要因情報として、光電センサ12の受光部16に、この受光部16と対の投光部14から出射された光以外の光が入光していることが表示されている場合は、その入光している光の排除及び発光元の調整や、光電センサ12の受光部16の調整等を行えばよい。又、異常の要因情報として、障害物が存在することや、光電センサ12の故障が表示されている場合は、障害物の排除や、光電センサ12の修理又は交換等を行えばよい。
【0040】
ここで、以下に示すS120~S170の処理は、立体駐車装置30が利用される際の通常の処理であるため、簡単に説明する。
S120(パレット呼出し操作):立体駐車装置30の利用者により、車両を入出庫する所望の可動式パレット32の呼び出し操作を、操作盤36に対して入力する。
S130(パレット呼出し動作):制御装置40により駆動部50を制御して、上記S120で入力された可動式パレット32を、車両を入出庫可能な位置まで移動する。可動式パレット32の移動が完了したら、制御装置40により駆動部50を制御して、可動式パレット32の前面側にある開閉ゲート34を上昇させ、可動式パレット32に車両を入出庫できる状態にする。
【0041】
S140(車両の入出庫):上記S130で呼び出された所望の可動式パレット32に対して、立体駐車装置30の利用者により車両を入出庫する。
S150(開閉ゲート閉操作):立体駐車装置30の利用者により、操作盤36に対して、上記S130で開かれた開閉ゲート34を閉じるための操作を入力する。
S160(開閉ゲート閉動作):制御装置40により駆動部50を制御して、上記S130で開かれた開閉ゲート34を下降させて閉じる。
S170(電源切断):立体駐車装置30の利用者により、操作盤36に対して操作を行うことで、立体駐車装置30の電源(操作盤36の電源)を切断する。
【0042】
なお、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断システム10及び立体駐車装置の制御装置40は、
図1及び
図2に示したような構造の立体駐車装置30への適用に限定されるものではない。すなわち、立体駐車装置30は、高さ方向(
図2の上下方向)や並列方向(
図2の左右方向)により多くの(又はより少ない)可動式パレット32を備えた構成であってもよく、地上だけではなく地下に可動式パレット32を備えた構成であってもよい。又、可動式パレット32が並列方向には移動せずに、高さ方向の列毎に連動して高さ方向のみに移動するものであってもよい。更に、高さ方向や並列方向だけではなく、前後方向(
図2の右手前から左奥方向)に複数列の可動式パレット32を備えた構成であってもよい。又、立体駐車装置30が備える光電センサ12も、
図1及び
図2の実施例に限定されるものではなく、より多くの(又はより少ない)光電センサ12を備えていてもよく、各光電センサ12が設置される位置も任意である。更に、当然のことながら、光電センサの診断システム10が診断対象とする光電センサ12も任意であり、侵入検知用センサ12A及び乗越え検知用センサ12B以外の光電センサ12を、診断対象としてもよいものである。
【0043】
又、
図3に示したフロー図は、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法及び立体駐車装置の制御方法を説明するための、工程の流れの一例を示したものである。従って、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法及び立体駐車装置の制御方法を適用する工程フローは、
図3に示した工程フローに限定されるものではなく、例えば、立体駐車装置30の構造や使用状況等に応じて、
図3に示した工程の一部が削除、変更、ないし適宜追加された工程フローであってもよいものである。更に、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法(
図3のS20~S70)及び立体駐車装置の制御方法(
図3のS80~S100)は、
図3に示すタイミングでの実行に限定されるものではなく、例えば、立体駐車装置30が利用されていないタイミングで実行してもよい。このタイミングでは、立体駐車装置30の操作盤36の電源が投入されていないことになるが、立体駐車装置30は、メンテナンス時等の特殊なタイミングを除き、主電源が投入された状態であるため、診断の実行に何ら問題はない。なお、操作盤36の電源が投入されていない間に、光電センサ12の異常が検出された場合は、次に操作盤36の電源が投入されたときに、操作盤36の表示部38へ、光電センサ12に異常があることを表示すればよい。
【0044】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法は、
図1及び
図2に示すような立体駐車装置30に具備される光電センサ12を診断するものである。具体的には、診断対象の光電センサ12の投光部14から、所定の明滅パターンで光を出射させ(
図3のS30参照)、診断対象の光電センサ12の受光部16で受けた光の明滅パターンと、投光部14から出射させた光の所定の明滅パターンとを比較し(
図3のS40参照)、この比較結果に基づいて光電センサ12の異常を判定するものである。ここで、所定の明滅パターンとは、物体検知動作中の光電センサ12の投光部14から出射される光の出射パターン(光を常時出射、
図4(c)参照)と異なる、例えば
図4(a)に示すような明滅パターンである。そして、このような所定の明滅パターンで投光部14から光が出射されると、通常、投光部14と対の受光部16では、所定の明滅パターンと一致する明滅パターンの光が受光されることになる。このため、受光部16で受けた光の明滅パターンが所定の明滅パターンと一致する場合は、診断対象の光電センサ12に異常がないと判定する(
図3のS50参照)。
【0045】
一方、受光部16で受けた光の明滅パターンと所定の明滅パターンとを比較した結果、双方の明滅パターンが一致しなかった場合は、受光部16が投光部14から出射された光とは別の光を検知していること等が考えられるため、光電センサ12に異常があると判定する(
図3のS60参照)。例えば、診断対象の光電センサ12とは別の、物体検知動作中の光電センサ12の投光部14から出射されている光を、診断対象の光電センサ12の受光部16が受けていると、その受けた光の明滅パターンは、光が常時出射されているパターンになると考えられる。このような明滅パターンは、上述したように、所定の明滅パターンと異なるものであり、所定の明滅パターンと一致しないため、光電センサ12に異常があると判定する。従って、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法は、診断対象の光電センサ12の受光部16が、この受光部16と対の投光部14から出射されている光以外の光を検知している場合であっても、光電センサ12に異常があると判定することができる。このため、受光部16が投光部14から出射された光と別の光を受光することに起因する、光電センサ12の検知漏れを回避することができ、光電センサ12の検知精度をより高めることが可能となる。
【0046】
又、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法は、光電センサ12を具備する立体駐車装置30が、
図1及び
図2に示すように、前面に開閉ゲート34を備えると共に、光電センサ12として侵入検知用センサ12Aと乗越え検知用センサ12Bとを含み、少なくともこれらの侵入検知用センサ12A及び乗越え検知用センサ12Bを診断対象とするものである。侵入検知用センサ12Aを構成する投光部14a及び受光部16aは、立体駐車装置30への人等の侵入を検知するために、開閉ゲート34よりも前面側の下方に設置され、乗越え検知用センサ12Bを構成する投光部14b及び受光部16bは、開閉ゲート34の乗越えを検知するために、開閉ゲート34よりも前面側かつ上方に設置されるものである。すなわち、これら2つの光電センサ12は、何れも、一般的に立体駐車装置30に人等が侵入する際の侵入口となる、立体駐車装置30の前面側において物体を検知するものである。このような2つの光電センサ12を診断対象とすることで、立体駐車装置30の特に前面側からの侵入に係る光電センサ12の検知漏れを回避することができるため、より万全な安全性を立体駐車装置30に確保することができる。
【0047】
更に、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法は、投光部14から出射させる光の所定の明滅パターンが、
図4(a)に例示するように、この所定の明滅パターンを成す所定の時間T1中に、光が出射される(光がONの)時間帯と、光が出射されない(光がOFFの)時間帯とを、少なくとも1回ずつ含むものである。そして、所定の明滅パターンと受光部16で受けた光の明滅パターンとを比較した結果、所定の明滅パターンの所定の時間T1中に含まれる、光がONの時間帯の合計時間よりも、受光部16で受けた光の明滅パターンの所定の時間T1中に含まれる、光がONの時間帯の合計時間の方が増えていた場合に、受光部16が投光部14から出射された光とは別の光を検知していると判定する。例えば、
図4(b)及び(c)の明滅パターンの光を、受光部16で受けた場合がこれに該当する。すなわち、この場合には、所定の明滅パターンに含まれる、光がOFFの時間帯に相当するタイミングであるにも関わらず、受光部16において何かしらの光を受光して、光がONの合計時間が増えていると考えられるため、上記のように判定する。
【0048】
一方、所定の明滅パターンの所定の時間T1中に含まれる、光がOFFの時間帯の合計時間よりも、受光部16で受けた光の明滅パターンの所定の時間T1中に含まれる、光がOFFの時間帯の合計時間の方が増えていた場合は、光電センサ12の故障又は障害物があると判定する。例えば、
図4(d)及び(e)の明滅パターンの光を、受光部16で受けた場合がこれに該当する。すなわち、この場合は、所定の明滅パターンに含まれる、光がONの時間帯に相当するタイミングであるにも関わらず、受光部16において光が検知されず、光がOFFの合計時間が増えていると考えられるため、投光部14の故障及び/又は受光部16の故障や、投光部14からの光を遮る何らかの障害物があると判定するものである。このように、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法は、光電センサ12の異常判定のみではなく、異常の要因をある程度切り分けることで、その後に行うこととなる光電センサ12の復旧作業(
図3のS110参照)を効率よく進めることができる。
【0049】
又、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法は、上記のような診断を、
図3で確認できるように、利用者により操作盤36の電源が投入(S10)されてから所定時間内であり、利用者により立体駐車装置30の操作がなされる前のタイミングで実行するものである。このタイミングは、利用者が立体駐車装置30の利用を開始する毎の、利用者が立体駐車装置30の可動式パレット32の呼び出し操作(S120)やゲート開閉操作(S160)等を行う前のタイミングである。このようなタイミングで診断を実行することで、立体駐車装置30が利用される毎に、立体駐車装置30の可動式パレット32や開閉ゲート34等が動作する前に、光電センサ12の異常を検出することができるため、立体駐車装置30の安全性をより高めることが可能となる。
【0050】
更に、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法は、上記のような診断を、操作盤36の電源が切断中、すなわち、立体駐車装置30が利用されていない状態の、所定のタイミングで実行してもよいものである。診断を実行する所定のタイミングは、立体駐車装置30が利用されていない状態であれば、日毎の所定時間のタイミングや、利用者により操作盤36の電源が切断された直ぐ後のタイミング等の、任意のタイミングでよい。これにより、立体駐車装置30の利用時の制御や動作に何ら影響を与えることなく、光電センサ12の異常を検出することができる。
【0051】
一方、本発明の実施の形態に係る立体駐車装置の制御方法は、上述したような光電センサの診断方法を利用するものであり、それらの診断方法によって光電センサ12の異常を検出した場合に、立体駐車装置30が備える表示部38に光電センサ12が異常であることを表示する(
図3のS90参照)と共に、立体駐車装置30の少なくとも一部の動作を抑止する(
図3のS100参照)ものである。光電センサ12が異常であることの表示は、立体駐車装置30が備える複数の光電センサ12が診断対象である場合は、立体駐車装置30内で異常のある光電センサ12を特定して表示してもよく、又、異常の要因が一部判明している場合は、その要因と共に表示してもよい。更に、光電センサ12の異常を検出した場合に抑止する立体駐車装置30の動作は、例えば、可動式パレット32の呼び出し動作(
図3のS130参照)や開閉ゲート34の開閉動作(
図3のS160参照)等であり、その実現のために、立体駐車装置30が備える操作盤36等に対して利用者により入力される操作(
図3のS120、S150参照)を受け付けないようにしてもよい。これにより、光電センサ12の異常を利用者等に認知させることができると共に、光電センサ12の異常が検出された状態での、立体駐車装置30の利用を制限することができるため、立体駐車装置30の安全性を維持することが可能となる。
【0052】
なお、
図1に示す本発明の実施の形態に係る光電センサの診断システム10は、上述したような光電センサの診断方法に用いられることで、本発明の実施の形態に係る光電センサの診断方法と同等の作用効果を奏することができる。同様に、本発明の実施の形態に係る立体駐車装置の制御装置40は、上述したような立体駐車装置の制御方法に用いられることで、本発明の実施の形態に係る立体駐車装置の制御方法と同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:光電センサの診断システム、12:光電センサ、12A:侵入検知用センサ、12B:乗越え検知用センサ、14(14a~14h):投光部、16(16a~16h):受光部、18:診断制御部、30:立体駐車装置、34(34a~34c):開閉ゲート、36:操作盤、38:表示部、40:立体駐車装置の制御装置