(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】便器用手摺り
(51)【国際特許分類】
A47K 17/02 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A47K17/02 A
(21)【出願番号】P 2017182813
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】上條 啓子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 諒
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-198928(JP,A)
【文献】特開2017-042503(JP,A)
【文献】特開2013-094179(JP,A)
【文献】特開2006-288563(JP,A)
【文献】米国特許第05329645(US,A)
【文献】特表2010-528701(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0862597(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0293705(US,A1)
【文献】特開2011-206507(JP,A)
【文献】特開2013-078448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
A47K 11/00-11/12
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺り部を旋回軸回りに旋回移動可能に支持する旋回支持部と、
前記手摺り部を前記旋回軸に沿い、かつ上下方向と交差する平面と平行に並進移動可能に支持する並進支持部と、
前記手摺り部の下であり、かつ、前記旋回支持部の近傍に設けられている操作部と、
を備え、
前記操作部は、第1の操作量では、前記並進支持部による前記手摺り部の並進移動の規制、解除を切り替え
、第1の操作量より大きい第2の操作量では前記旋回支持部による前記手摺り部の旋回移動の規制、解除をレバー部材の操作により切り替える
ことを特徴とする便器用手摺り。
【請求項2】
前記旋回支持部が、左右方向に延びる前記旋回軸回りに、前記手摺り部を跳ね上げ可能に支持するとともに、
前記並進支持部が、前記手摺り部を前後方向に並進移動可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の便器用手摺り。
【請求項3】
前記旋回支持部が、前記並進支持部を介して、前記手摺り部を支持していることを特徴とする請求項1又は2に記載の便器用手摺り。
【請求項4】
前記手摺り部を支える支柱を更に備え、
前記支柱には、便器の前面に突き当てる突き当て部と、当該便器の両側面を左右外側から押圧する押圧部とを更に有することを特徴とする請求項1から
3の何れか一項に記載の便器用手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に記載の便器用手摺りが知られている。この便器用手摺りは、便器の前後方向に延びる手摺り部を備える。手摺り部は、左右方向に延びる旋回軸回りに跳ね上げ可能とされている。手摺り部を跳ね上げることで、例えば介護者が使用者をサポートするための空間を便器の周りに大きく確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の便器用手摺りでは、例えば使用者が介護者のサポートを受けずに使用する場合に、使用者が便座に座るための動線の確保のため等に、手摺り部の位置を調整することに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、手摺り部の位置の調整に高い自由度を具備させることができる便器用手摺りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る便器用手摺りは、手摺り部を旋回軸回りに旋回移動可能に支持する旋回支持部と、前記手摺り部を前記旋回軸に沿い、かつ上下方向と交差する平面と平行に並進移動可能に支持する並進支持部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、旋回支持部と並進支持部とを備えているので、手摺り部を旋回移動させることができるとともに、並進移動させることができ、異なる移動の態様により手摺り部の位置を調整することができる。ここで、旋回移動とは旋回軸に直交する平面内での移動であり、並進移動とは旋回軸に沿い、かつ上下方向と交差する平面と平行な移動である。これにより、手摺り部の位置の調整に高い自由度を具備させることができる。
したがって、介護者が使用者をサポートするための空間を、便器の周りに必要に応じて大きく確保しつつ、使用者が介護者のサポートを受けずに使用する場合には、使用者が便座に座るための導線を確保することができる。
【0008】
(2)上記(1)に係る便器用手摺りの前記旋回支持部が、左右方向に延びる前記旋回軸回りに、前記手摺り部を跳ね上げ可能に支持するとともに、前記並進支持部が、前記手摺り部を前後方向に並進移動可能に支持してもよい。
【0009】
この場合、手摺り部を旋回軸回りに跳ね上げて、例えば便器の周りに介護者が使用者をサポートするための広い空間を確保すること等ができる。また、手摺り部を前後方向に並進移動させて、例えば使用者が便座に座るための動線の確保のために、手摺り部の位置を調整すること等ができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に係る便器用手摺りは、前記旋回支持部が、前記並進支持部を介して、前記手摺り部を支持してもよい。
【0011】
この場合、並進支持部が、旋回支持部よりも手摺り部側に位置することとなる。このため、並進支持部よりも手摺り部側に旋回支持部が位置する構成と比較して、便器用手摺り全体をコンパクトな構成とすることができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに係る便器用手摺りが、前記旋回支持部による前記手摺り部の旋回移動、および前記並進支持部による前記手摺り部の並進移動のうちの少なくとも一方を規制し、かつ前記規制を解除する操作部を備えてもよい。
【0013】
この場合、手摺り部の各方向の移動を規制し、かつ、この規制を解除する操作部を備えているので、使用者が意図しないタイミングで手摺り部が不意に各方向に移動するのを抑制することができる。
【0014】
(5)上記(4)に係る便器用手摺りの前記操作部が、前記手摺り部の前端部に配置されてもよい。
【0015】
この場合、操作部が、手摺り部の前端部に配置されているので、使用者が手摺り部に前腕部を載置した場合、使用者の手のひらと、操作部と、の距離を近づけることが可能になる。これにより、例えば操作部を操作して手摺り部の並進移動の規制を解除する場合に、使用者が手摺り部を並進移動させて、手摺り部の位置を旋回軸に沿い、かつ上下方向と交差する平面と平行に調整する作業等を容易に行うことができる。
【0016】
(6)上記(4)又は(5)に係る便器用手摺りの前記操作部が、回転運動により前記手摺り部の前記規制、およびその解除を切替えてもよい。
【0017】
この場合、操作部が回転運動により、手摺り部における各方向の移動の規制、およびその解除を切替えるので、操作部が直線運動により、手摺り部における前記規制、およびその解除を切替える構成と比較して、操作部の操作における操作量を調整できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、手摺り部の位置の調整に高い自由度を具備させることができる。したがって、介護者が使用者をサポートするための空間を、便器の周りに必要に応じて大きく確保しつつ、使用者が介護者のサポートを受けずに使用する場合には、使用者が便座に座るための導線を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る便器用手摺りを用いて、使用者が便器に着座している状態を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す便器用手摺りに使用者が体重をかけている状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す便器用手摺りの手摺り部を、旋回支持部により跳ね上げた状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す便器用手摺りの手摺り部を、並進支持部により後方に向けて並進移動させた状態を示す図である。
【
図5】
図1に示す便器用手摺りにおける旋回支持部の一部を透過させた図である。
【
図6】
図5に示す旋回支持部における第1操作部を回転させて、手摺り部の旋回移動の規制を解除した状態を示す図である。
【
図7】
図3に示す手摺り部を跳ね上げた状態における旋回支持部の一部を透過させた図である。
【
図8】
図1に示す便器用手摺りにおける並進支持部の縦断面図である。
【
図9】
図8に示す並進支持部における第2操作部を回転させて、手摺り部の並進移動の規制を解除した状態を示す図である。
【
図10】
図4に示す便器用手摺りにおける並進支持部の縦断面図である。
【
図11】
図8に示す並進支持部の第1変形例を示す縦断面図である。
【
図12】
図8に示す並進支持部の第2変形例を示す横断面図であって、(a)手摺り部の並進移動を規制している状態を示す図、(b)手摺り部の並進移動の規制を解除した状態を示す図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る便器用手摺りにおける(a)一部縦断面図、(b)上面図である。
【
図14】
図13に示す便器用手摺りにおいて、(a)操作部を操作して手摺り部の並進移動の規制を解除した状態を示す図、(b)(a)に示す状態から操作部をさらに操作して、手摺り部の並進移動および旋回移動の双方の規制を解除した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図12を参照し、本発明の第1実施形態に係る便器用手摺り1を説明する。
図1および
図2に示すように、便器用手摺り1は、便器100に取り付けられる。便器100は、いわゆる洋式便器である。便器用手摺り1は、使用者が便座90に着座することや、使用者が便座90に着座した姿勢を維持すること、使用者が便器100から立ち上がること等を補助する。便器用手摺り1は、使用者の体重を受け止める。
なお以下では、便座90に着座した使用者の前後方向Xを単に前後方向Xという。前記使用者の左右方向Yを単に左右方向Yという。また、前後方向Xおよび左右方向Yの双方向と直交する方向を上下方向Zという。
【0021】
便器用手摺り1は、便器100に前方X1から取り付けられる。便器用手摺り1は、本体部10と、突き当て部11と、押圧部12と、を備える。
本体部10は、左右一対の側枠13を備えている。左右一対の側枠13は、便器100の左右方向Yの両側に配置されている。各側枠13は、脚部20と、支柱21と、手摺り部(アームレスト)22と、を備えている。脚部20は、床面に位置する。脚部20は、前後方向Xに長い。支柱21は、脚部20から上方に延びている。支柱21は、上下方向Zに伸縮可能である。手摺り部22は、支柱21の上端部に連結されている。手摺り部22は、前後方向Xに長い。
【0022】
突き当て部11は、便器100の前面に突き当てられる。突き当て部11は、左右一対の側枠13を連結する。突き当て部11は、各側枠13の支柱21に連結されている。
押圧部12は、左右一対設けられている。一対の押圧部12は、便器100の両側面を左右方向Yの外側から押圧する。
便器用手摺り1では、突き当て部11が便器100の前面に突き当てられ、一対の押圧部12が便器100の両側面を左右方向Yの外側から押圧する。その結果、便器用手摺り1が便器100の外面に3部品で当接する。これにより、便器用手摺り1が便器100に固定される。
【0023】
そして本実施形態では、
図3および
図4に示すように、便器用手摺り1は、手摺り部22を旋回軸31回りに旋回移動可能に支持する旋回支持部30と、手摺り部22を、旋回軸31に沿い、かつ上下方向Zと交差する平面と平行に並進移動可能に支持する並進支持部40と、を備えている。ここで、旋回移動とは旋回軸31に直交する平面内での移動であり、並進移動とは旋回軸31に沿い、かつ上下方向Zと交差する平面と平行な移動である。図示の例では、並進移動とは旋回軸31に沿い、かつ上下方向Zと直交する平面と平行な移動となっている。
旋回支持部30は、手摺り部22を支柱21に対して、左右方向Yに延びる旋回軸31回りに跳ね上げ可能に支持している。また、並進支持部40は、手摺り部22を支柱21に対して、前後方向Xに並進移動(スライド移動)可能に支持している。
支柱21に接続された旋回支持部30が、並進支持部40を介して、手摺り部22を支持している。
【0024】
旋回支持部30は、表裏面が左右方向Yを向くとともに、支柱21の上端部の側面に接続された支持板32と、表裏面が左右方向Yを向くとともに、並進支持部40の下面に接続された旋回板33と、を備えている。支持板32と旋回板33とが、旋回軸31を介して相対回転可能に固定されている。
図5に示すように、旋回軸31は、支持板32および旋回板33それぞれにおける後方X2に位置している。支持板32の前端部には、前方X1および下方に向けて突出する被係合突部32Aが形成されている。
【0025】
図8に示すように、並進支持部40は筒状をなし、前後方向Xと直交する断面視で矩形状を呈する。並進支持部40は、矩形筒状をなす受部材(スライド受金具)23と、受部材23の内側に配置され、受部材23の内側を前後方向Xに移動可能とされたスライド部材(スライド金具)24と、を備えている。受部材23における上方の周壁には、この周壁を上下方向Zに貫く位置決め孔25が形成されている。位置決め孔25は前後方向Xに間隔をあけて複数形成されている。スライド部材24は上方に向けて開口している。
スライド部材24は手摺り部22と連結されている。なお、
図8から
図14では、手摺り部22の図示を省略している。手摺り部22はクッション部材である。
【0026】
また本実施形態では、
図5および
図8に示すように、旋回支持部30による手摺り部22の旋回移動、および並進支持部40による手摺り部22の並進移動のうちの少なくとも一方を規制し、かつ前記規制を解除する操作部50を備えている。操作部50は旋回支持部30による手摺り部22の旋回移動を規制する第1操作部51と、並進支持部40による手摺り部22の並進移動を規制する第2操作部52と、を備えている。
【0027】
第1操作部51は、
図5に示すように、レバー部材60と、レバー部材60を付勢する第1付勢部材61と、を備えている。
レバー部材60は、前後方向Xに延びるレバー片60Aと、レバー片60Aの後方X2に接続され、旋回支持部30における旋回板33に第1回転軸60Cにより回転可能に支持された固定部60Bと、を備えている。
【0028】
レバー片60Aのうち、後方X2に位置する部分は前後方向Xに真直ぐ延びている。レバー片60Aのうち、前方X1に位置する部分は、前方X1に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている。レバー片60Aのうち、後方X2に位置する部分に第1付勢部材61が接続されている。第1付勢部材61は、並進支持部40における下面と、レバー片60Aの上面と、の間に配置されている。第1付勢部材61は、レバー片60Aを下方に向けて付勢している。
【0029】
固定部60Bは、旋回板33に対して第1回転軸60C回りに回転可能とされている。固定部60Bの前端部と、レバー片60Aの後端部と、が互いに接続されている。図示の例では、固定部60Bおよびレバー片60Aは金属片への曲げ加工により一体に形成されている。
固定部60Bの後端部には、後方X2および上方に向けて突出する係合突部60Dが形成されている。係合突部60Dは、支持板32の被係合突部32Aに前方X1および下方から係合している。これにより、旋回板33の、支持板32に対する旋回軸31回りの旋回移動が規制されている。そして第1操作部51は、回転運動により手摺り部22の旋回移動の規制、およびその解除を切替える。
【0030】
ここで、手摺り部22の動作のうち、旋回支持部30による手摺り部22の旋回移動について説明する。
図6に示すように、第1操作部51のレバー片60Aを、第1付勢部材61に抗して上方に向けて持ち上げることで、レバー部材60を第1回転軸60C回りに回転させる。これにより固定部60Bの係合突部60Dと、支持板32の被係合突部32Aと、の係合が解除される。
【0031】
次に、
図7に示すように、手摺り部22の前端部を上方に向けて持ち上げる。これにより、手摺り部22が、第1操作部51、旋回板33、および並進支持部40とともに、旋回軸31回りに旋回し、手摺り部22が跳ね上がった状態となる。このように手摺り部22を跳ね上げることで、例えば介護者が使用者の便座90への移乗をサポートするための大きな空間を便器100の周囲に確保することができる。
【0032】
図8に示すように、第2操作部52は、スライド部材24の前端部における下方に配置された操作片70と、並進支持部40におけるスライド部材24の内側に配置され、前後方向Xに延びる第1ロック部材(第1ロック金具)71と、スライド部材24の内側における第1ロック部材71の後方X2に配置され、前後方向Xに延びる第2ロック部材(第2ロック金具)72と、を備えている。第2操作部52の操作片70が、手摺り部22の前端部に配置されている。
第1ロック部材71は操作片70と接続されるとともに、スライド部材24の前端部から第2付勢部材74により後方X2に向けて付勢されている。第1ロック部材71の後端部は、上方に向けて屈曲している。
【0033】
第2ロック部材72の前端部には、前方X1に向かうに従い漸次、下方に向けて延びる傾斜部72Aが形成されている。傾斜部72Aの下面が、第1ロック部材71の後端部に上方から当接している。第2ロック部材72の前後方向Xの中間部の下面には、表裏面が左右方向Yを向く回転板73が設けられている。回転板73には、スライド部材24に回転可能に支持された第2回転軸73Aが配置されている。
【0034】
第2ロック部材72のうち、第2回転軸73Aよりも後方X2に位置する部分には、第3付勢部材75が配置されている。第3付勢部材75は、第2ロック部材72のうち、第2回転軸73Aの後方X2に位置する部分を、上方に向けて付勢している。
第2ロック部材72の後端部には、上方に向けて突出するロック片72Bが形成されている。ロック片72Bは、受部材23の位置決め孔25に下方から挿入されている。これにより、受部材23に対するスライド部材24の前後方向Xの並進移動が規制されている。そして、第2操作部52は、第2ロック部材72の、第2回転軸73A回りの回転運動により、手摺り部22の並進移動の規制、およびその解除を切替える。
【0035】
ここで、手摺り部22の動作のうち、旋回支持部30による手摺り部22の並進移動について説明する。
図9に示すように、第2操作部52の操作片70を、第2付勢部材74に抗して前方X1に向けて移動させると、第1ロック部材71の後端部が前方X1に移動して、第2ロック部材72の傾斜部72Aを上方に向けて押し上げる。これにより、第2ロック部材72が第2回転軸73A回りに回転する。この際、第2ロック部材72は第3付勢部材75に抗して、第2回転軸73A回りに回転する。これにより第2ロック部材72のロック片72Bが位置決め孔25から下方に向けて離脱する。
【0036】
次に、
図10に示すように、並進支持部40のスライド部材24を受部材23に対して後方X2に向けて並進移動させる。これにより、スライド部材24が受部材23内を後方X2に向けて並進移動することにより、スライド部材24の前端部の位置が後方X2に移動する。そして、ロック片72Bが後方X2に位置する位置決め孔25内に進入することで、スライド部材24の前後方向Xの位置が決められる。
【0037】
このように、手摺り部22を前後方向Xに並進移動させることで、例えば使用者の便座90に移乗するための導線を確保するために、便器100の前方X1の空間を確保することができる。また、使用者が着座位置を調整する際や、使用者が便座90から立ち上がるために手摺り部22に体重をかける際等に、手摺り部22の前後方向Xの位置を調整することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る便器用手摺り1によれば、旋回支持部30と並進支持部40とを備えている。このため、手摺り部22を旋回移動させることができるとともに、並進移動させることができ、異なる移動の態様により手摺り部22の位置を調整することができる。これにより、手摺り部22の位置の調整に高い自由度を具備させることができる。
したがって、介護者が使用者をサポートするための空間を、便器100の周りに必要に応じて大きく確保しつつ、使用者が介護者のサポートを受けずに使用する場合には、使用者が便座90に座るための導線を確保することができる。
【0039】
また、並進支持部40が、旋回支持部30よりも手摺り部22側に位置することとなる。このため、並進支持部40よりも手摺り部22側に旋回支持部30が位置する構成と比較して、便器用手摺り1全体をコンパクトな構成とすることができる。
【0040】
また、手摺り部22を支柱21に対して旋回軸31回りに跳ね上げて、例えば便器100の周りに介護者が使用者をサポートするための広い空間を確保すること等ができる。また、手摺り部22を支柱21に対して前後方向Xに並進移動させて、例えば使用者が便座90に座るための動線の確保等のために、手摺り部22の位置を調整すること等ができる。
【0041】
また、手摺り部22の各方向の移動を規制し、かつ、この規制を解除する操作部50を備えているので、使用者が意図しないタイミングで手摺り部22が不意に各方向に移動するのを抑制することができる。
また、第2操作部52が、手摺り部22の前端部に配置されているので、使用者が手摺り部22に前腕部を載置した場合、手摺り部22に載置した使用者の手のひらと、第2操作部52と、の距離を近づけることが可能になる。これにより、例えば第2操作部52を操作して手摺り部22の並進移動の規制を解除する場合に、使用者が手摺り部22を並進移動させて、手摺り部22の位置を旋回軸31に沿い、かつ上下方向と交差する平面と平行に調整する作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、第2操作部52の第2ロック部材72が回転運動により、手摺り部22における各方向の移動の規制、およびその解除を切替える。このため、第2ロック部材72が直線運動により、手摺り部22における前記規制、およびその解除を切替える構成と比較して、第2ロック部材72の操作における操作量を調整できる。
【0043】
次に、
図11を用いて、並進支持部40の第1変形例について説明する。
第1変形例に係る並進支持部40では、第1ロック部材71、および第2ロック部材72に代えて、前後方向Xに延びる操作バー80が、並進支持部40におけるスライド部材24の内側に配置されている。操作バー80は後方X2に向かうに従い漸次、上方に向けて延びている。
【0044】
操作バー80の前後方向Xの中間部には回転板73が配置されている。操作バー80は回転板73の第2回転軸73A回りに回転可能とされている。操作バー80は、前端部に配置された操作片70を備えている。操作片70は、スライド部材24の前端部における下端部に形成された開口孔24Aから下方に向けて突出している。
【0045】
操作バー80の後端部には、上方に向けて突出し、かつ位置決め孔25内に挿入されたロック片72Bが形成されている。図示の例では、第2回転軸73Aは、操作バー80における前後方向Xのうち、操作バー80の重心位置より後方X2に配置されている。操作バー80は、第3付勢部材75の付勢により、前端部の操作片70が下方に位置する姿勢となっている。
そして、使用者が操作片70を上方に向けて押し上げることで、操作バー80が第2回転軸73A回りに回転し、ロック片72Bを位置決め孔25から離脱させることができる。このように、第1ロック部材71、および第2ロック部材72に代えて、操作バー80を採用することで、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。
【0046】
次に、
図12を用いて、並進支持部40の第2変形例について説明する。
第2変形例に係る並進支持部40では、第2回転軸73Aが上下方向Zに延びている。操作片70は操作バー80と別体に設けられ、左右方向Yの一方側(例えば内側)に向けて突出している。操作片70の後端部に板カム77が接続されている。板カム77と操作バー80の前端部とが互いに当接している。操作バー80の前後方向Xにおける第2回転軸73Aよりも後方X2の部分には、第4付勢部材76が配置されている。
【0047】
そして、操作片70を左右方向Yの他方側(例えば外側)に移動させて、板カム77と操作バー80の前端部との当接状態を変化させることで、操作バー80が第4付勢部材76から受ける付勢力により第2回転軸73A回りに回転し、ロック片72Bが位置決め孔25から離脱する。これにより、スライド部材24を受部材23に対して前後方向Xに並進移動可能な状態とすることができる。
なお、このような態様に限られず、操作片70を左右方向Yの一方側に移動させることで、ロック片72Bが位置決め孔25から離脱する構成としてもよい。
【0048】
(第2実施形態)
次に、
図13および
図14を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、本実施形態においては、第1実施形態に係る構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。また、同一の作用についてもその説明を省略する。
【0049】
図13に示すように、本実施形態に係る便器用手摺り2では、旋回支持部30および並進支持部40それぞれの操作部50が、一体に形成されている。このように一体に形成された第3操作部53の固定部60Bには、上方に向けて突出するロック片72Bが形成されている。ロック片72Bは、左右方向Yに間隔をあけて一対形成されている。
並進支持部40のスライド部材24における下方の周壁には、この周壁を上下方向Zに貫通する位置決め孔25部が形成されている。位置決め孔25部は、
図13(b)に示すように、左右方向Yに間隔をあけて一対形成されるとともに、前後方向Xに間隔をあけて複数形成されている。
【0050】
図14に示すように、第3操作部53では、レバー片60Aの回転角度により、手摺り部22の旋回移動の規制、および手摺り部22の並進移動の規制を段階的に切りかえることが可能となっている。具体的には、
図14(a)に示すように、レバー片60Aの第1回転軸60C回りの回転角度が、
図13(a)に示す初期状態から一定の範囲内である場合には、固定部60Bの係合突部60Dと、支持板32の被係合突部32Aと、の係合状態は維持されたまま、ロック片72Bが位置決め孔25から離脱する。これにより、スライド部材24を受部材23に対して前後方向Xに並進移動させて、手摺り部22を前後方向Xに並進移動させることができる。
【0051】
一方、
図14(b)に示すように、レバー片60Aを第1回転軸60C回りに更に回転させた場合には、固定部60Bの係合突部60Dと、支持板32の被係合突部32Aと、の係合状態が解除される。これにより、手摺り部22を前後方向Xに並進移動させることができるとともに、手摺り部22を旋回軸31回りに旋回移動させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る便器用手摺り2によれば、旋回支持部30および並進支持部40それぞれの操作部50を第3操作部53として一体に形成することで、1つの部材への操作量を調整して、手摺り部22の位置の調整を容易に行うことができる。これにより、部品点数を削減し、コスト低減を図ることができる。
【0052】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、上記各実施形態においては、手摺り部22の旋回移動が、手摺り部22を跳ね上げる動作であり、手摺り部22の並進移動が、手摺り部22の前後方向Xへのスライド移動である構成を示したが、このような態様に限られない。例えば手摺り部22の旋回移動としては、後端部に位置する旋回軸31回りに、手摺り部22の前端部を下方に向けて旋回させてもよい。また、手摺り部22の並進移動としては、例えば手摺り部22を左右方向Yにスライド移動させてもよいし、例えば前端部又は後端部回りに、旋回軸31に沿い、かつ上下方向Zと交差する平面と平行に回動するように並進移動させてもよい。
【0054】
また、上記各実施形態においては、旋回支持部30が、並進支持部40を介して、手摺り部22を支持している構成を示したが、このような態様に限られない。並進支持部40および旋回支持部30それぞれの位置は任意に変更可能である。
【0055】
また、上記各実施形態においては、便器用手摺り1が手摺り部22の前端部に配置された第2操作部52を備える構成を示したが、このような態様に限られない。第2操作部52は手摺り部22の前端部に配置されなくてもよいし、便器用手摺り1が操作部50を備えなくてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態においては、操作部50は回転運動により手摺り部22における各方向の移動の規制、およびその解除を切替える構成を示したが、このような態様に限られない。例えば操作部50は、直線運動により手摺り部22における各方向の移動の規制、およびその解除を切替えてもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1、2 便器用手摺り
22 手摺り部
30 旋回支持部
31 旋回軸
40 並進支持部
50 操作部
51 第1操作部(操作部)
52 第2操作部(操作部)
53 第3操作部(操作部)