IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン・リテールシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ショーケースの棚装置 図1
  • 特許-ショーケースの棚装置 図2
  • 特許-ショーケースの棚装置 図3
  • 特許-ショーケースの棚装置 図4
  • 特許-ショーケースの棚装置 図5
  • 特許-ショーケースの棚装置 図6
  • 特許-ショーケースの棚装置 図7
  • 特許-ショーケースの棚装置 図8
  • 特許-ショーケースの棚装置 図9
  • 特許-ショーケースの棚装置 図10
  • 特許-ショーケースの棚装置 図11
  • 特許-ショーケースの棚装置 図12
  • 特許-ショーケースの棚装置 図13
  • 特許-ショーケースの棚装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ショーケースの棚装置
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/06 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A47F3/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017203451
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019076183
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】515118014
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】坂本 卓人
(72)【発明者】
【氏名】神林 伸雄
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126484(JP,A)
【文献】特開2009-078156(JP,A)
【文献】特開2005-124802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショーケースの陳列室内に設けられた左右一対のブラケットと、これらブラケットにスライドレールを介して引き出し自在に設けられ、商品を陳列する棚板を備えたショーケースの棚装置において、
前記棚板に回動自在に取り付けられ、前部に操作部と後部に当接部を一体に有して前後に渡る傾斜操作部材と、
前記ブラケットに設けられ、前部が低く、後部が高く傾斜した案内部を備え、
前記棚板は、その前部が前記スライドレールに回動自在に取り付けられ
前記傾斜操作部材を回動自在に枢支する回動軸は、当該傾斜操作部材の重心よりも前方に位置しており、
前記棚板を前方に引き出した状態で前記傾斜操作部材の操作部を引き上げ、その状態で前記棚板を後方に押し込んだ場合、前記当接部は前記案内部に当接せず、前記棚板は水平になると共に、
前記棚板を前方に引き出した状態で前記傾斜操作部材の操作部を押し下げたとき、当該傾斜操作部材の上縁は前記棚板の下面に当接し、その状態で前記棚板を後方に押し込んだ場合、前記当接部の下縁は前記案内部に当接し、該案内部の傾斜によって前記棚板の後部を前部より高く押し上げ、当該棚板は前部が低く、後部が高く傾斜することを特徴とするショーケースの棚装置。
【請求項2】
前記傾斜操作部材の前後方向の長さ寸法をLとした場合、前記回動軸は、前記傾斜操作部材の重心よりも前方であって、当該傾斜操作部材の前端よりL/3以上後方で、且つ、後端よりL/3以上前方の範囲内に位置していることを特徴とする請求項1に記載のショーケースの棚装置。
【請求項3】
前記傾斜操作部材が前記棚板に当接した状態を着脱自在に保持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のショーケースの棚装置。
【請求項4】
前記棚板と前記傾斜操作部材のうちの少なくとも一方は磁性体にて構成されており、
前記保持部材は、磁石にて構成されていることを特徴とする請求項3に記載のショーケースの棚装置。
【請求項5】
前記傾斜操作部材の当接部下縁は、後方に向かって高く傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載のショーケースの棚装置。
【請求項6】
ショーケースの陳列室内に設けられた左右一対のブラケットと、これらブラケットにスライドレールを介して引き出し自在に設けられ、商品を陳列する棚板を備えたショーケースの棚装置において、
前記棚板に回動自在に取り付けられ、前部に操作部と後部に当接部を一体に有して前後に渡る傾斜操作部材と、
前記ブラケットに設けられ、前部が低く、後部が高く傾斜した案内部を備え、
前記棚板は、その前部が前記スライドレールに回動自在に取り付けられ、
前記傾斜操作部材の当接部下縁は、後方に向かって高く傾斜しており、
前記棚板を前方に引き出した状態で前記傾斜操作部材の操作部を引き上げ、その状態で前記棚板を後方に押し込んだ場合、前記当接部は前記案内部に当接せず、前記棚板は水平になると共に、
前記棚板を前方に引き出した状態で前記傾斜操作部材の操作部を押し下げたとき、当該傾斜操作部材の上縁は前記棚板の下面に当接し、その状態で前記棚板を後方に押し込んだ場合、前記当接部の下縁は前記案内部に当接し、該案内部の傾斜によって前記棚板の後部を前部より高く押し上げ、当該棚板は前部が低く、後部が高く傾斜することを特徴とするショーケースの棚装置。
【請求項7】
前記案内部の少なくとも表面は、樹脂製の滑り材にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載のショーケースの棚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板が引き出し自在とされたショーケースの棚装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりコンビニエンスストアやスーパーマーケット等の店舗には商品を陳列販売するためのショーケースが設置されている。そして、ショーケースの陳列室内には、左右一つのブラケットが取り付けられ、これらブラケットにスライドレールを介して棚板を引き出し自在に設け、商品を補充する際には棚板を前方(手前)に引き出すことができるように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3601022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、陳列室内の棚板上に商品が陳列された場合、棚板を前部が低く、後部が高く傾斜させることで、商品が見やすくなる。しかしながら、従来の棚板はブラケットに対して平行となった状態で引出自在に取り付けられていたため、棚板を傾斜させるためには、ブラケット自体を傾斜させなければならず、作業が極めて面倒なものとなっていた。
【0005】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、棚板が水平となった状態と、前部が低く、後部が高く傾斜した状態とに簡単な操作で確実に切り換えることができるショーケースの棚装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明のショーケースの棚装置は、ショーケースの陳列室内に設けられた左右一対のブラケットと、これらブラケットにスライドレールを介して引き出し自在に設けられ、商品を陳列する棚板を備えたものであって、棚板に回動自在に取り付けられ、前部に操作部と後部に当接部を一体に有して前後に渡る傾斜操作部材と、ブラケットに設けられ、前部が低く、後部が高く傾斜した案内部を備え、棚板は、その前部がスライドレールに回動自在に取り付けられ、傾斜操作部材を回動自在に枢支する回動軸は、当該傾斜操作部材の重心よりも前方に位置しており、棚板を前方に引き出した状態で傾斜操作部材の操作部を引き上げ、その状態で棚板を後方に押し込んだ場合、当接部は案内部に当接せず、棚板は水平になると共に、棚板を前方に引き出した状態で傾斜操作部材の操作部を押し下げたとき、当該傾斜操作部材の上縁は棚板の下面に当接し、その状態で棚板を後方に押し込んだ場合、当接部の下縁は案内部に当接し、この案内部の傾斜によって棚板の後部を前部より高く押し上げ、当該棚板は前部が低く、後部が高く傾斜することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明のショーケースの棚装置は、上記発明において傾斜操作部材の前後方向の長さ寸法をLとした場合、回動軸は、傾斜操作部材の重心よりも前方であって、当該傾斜操作部材の前端よりL/3以上後方で、且つ、後端よりL/3以上前方の範囲内に位置していることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明のショーケースの棚装置は、上記各発明において傾斜操作部材が棚板に当接した状態を着脱自在に保持する保持部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明のショーケースの棚装置は、上記発明において棚板と傾斜操作部材の少なくとも一方は磁性体にて構成されており、保持部材は、磁石にて構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明のショーケースの棚装置は、上記各発明において傾斜操作部材の当接部下縁は、後方に向かって高く傾斜していることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明のショーケースの棚装置は、ショーケースの陳列室内に設けられた左右一対のブラケットと、これらブラケットにスライドレールを介して引き出し自在に設けられ、商品を陳列する棚板を備えたものであって、棚板に回動自在に取り付けられ、前部に操作部と後部に当接部を一体に有して前後に渡る傾斜操作部材と、ブラケットに設けられ、前部が低く、後部が高く傾斜した案内部を備え、棚板は、その前部がスライドレールに回動自在に取り付けられ、傾斜操作部材の当接部下縁は、後方に向かって高く傾斜しており、棚板を前方に引き出した状態で傾斜操作部材の操作部を引き上げ、その状態で棚板を後方に押し込んだ場合、当接部は案内部に当接せず、棚板は水平になると共に、棚板を前方に引き出した状態で傾斜操作部材の操作部を押し下げたとき、当該傾斜操作部材の上縁は棚板の下面に当接し、その状態で棚板を後方に押し込んだ場合、当接部の下縁は案内部に当接し、この案内部の傾斜によって棚板の後部を前部より高く押し上げ、当該棚板は前部が低く、後部が高く傾斜することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明のショーケースの棚装置は、上記各発明において案内部の少なくとも表面は、樹脂製の滑り材にて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び請求項6の発明によれば、ショーケースの陳列室内に設けられた左右一対のブラケットと、これらブラケットにスライドレールを介して引き出し自在に設けられ、商品を陳列する棚板を備えたショーケースの棚装置において、前部に操作部と後部に当接部を一体に有して前後に渡る傾斜操作部材を棚板に回動自在に取り付け、前部が低く、後部が高く傾斜した案内部をブラケットに設け、棚板の前部をスライドレールに回動自在に取り付け、棚板を前方に引き出した状態で傾斜操作部材の操作部を引き上げ、その状態で棚板を後方に押し込んだ場合、当接部は案内部に当接せず、棚板は水平になるようにすると共に、棚板を前方に引き出した状態で傾斜操作部材の操作部を押し下げたとき、当該傾斜操作部材の上縁が棚板の下面に当接し、その状態で棚板を後方に押し込んだ場合、当接部の下縁が案内部に当接し、この案内部の傾斜によって棚板の後部を前部より高く押し上げ、当該棚板が、その前部が低く、後部が高く傾斜するようにしたので、棚板を引き出し、次に傾斜操作部材を引き上げ/押し下げ、最後に棚板を押し込むと云った簡単な操作のみで、棚板が水平となる状態と、前部が低く、後部が高く傾斜した状態とに切り換えることができるようになる。
【0014】
特に傾斜操作部材は、前部に操作部と後部に当接部を一体に有する構成とされているので、構造が簡素化されると共に、動作も単純なものとなるので、部品・組立のバラツキにより切り換えが行えなくなる不都合の発生も防止、若しくは、抑制することが可能となり、棚板の状態を確実に切り換えることができるようになるものである。
【0015】
特に、請求項1の発明によれば、傾斜操作部材を回動自在に枢支する回動軸を、当該傾斜操作部材の重心よりも前方に位置させたので、傾斜操作部材前部の操作部が引き上げられた状態を、自重により維持することができるようになる。これにより、傾斜操作部材の状態が不安定となって棚板の状態を切り換える作業に支障を来す不都合も未然に回避することができるようになる。
【0016】
この場合、請求項2の発明の如く傾斜操作部材の前後方向の長さ寸法をLとした場合、回動軸を、傾斜操作部材の重心よりも前方であって、当該傾斜操作部材の前端よりL/3以上後方で、且つ、後端よりL/3以上前方の範囲内に位置させることで、前部の操作部の引き上げ/押し下げの操作感を維持しながら、後部における当接部の上下位置の変化幅を十分にとって、棚板の状態の切り換えを確実に行うことができるようになる。
【0017】
更に、請求項3の発明の如く傾斜操作部材が棚板に当接した状態を着脱自在に保持する保持部材を設けることで、棚板を傾斜した状態に切り換える際、傾斜操作部材の操作部を押し下げるのみで、傾斜操作部材の状態を保持させることができるようになる。これにより、傾斜操作部材を押し下げながら棚板を押し込むという面倒な作業を排除し、操作性の向上を図ることができるようになる。
【0018】
この場合、請求項4の発明の如く棚板と傾斜操作部材の少なくとも一方を磁性体にて構成し、保持部材を磁石にて構成することで、傾斜操作部材が棚板に当接した状態を、簡単な構成で着脱自在に保持することができるようになる。
【0019】
更にまた、請求項5や請求項6の発明の如く傾斜操作部材の当接部下縁を、後方に向かって高く傾斜させることで、傾斜操作部材の操作部を押し下げた状態で棚板を押し込んだときに、当接部の下縁が案内部に噛み込み、引っ掛かってしまう等の不都合を回避し、当接部を案内部の傾斜に沿って円滑に移動させることが可能となる。これにより、棚板を傾斜した状態に切り換える作業が円滑化される。
【0020】
また、請求項7の発明の如く案内部の少なくとも表面を、樹脂製の滑り材にて構成することで、当接部を案内部の傾斜に沿って極めて円滑に移動させることができるようになる。特に、前記請求項5や請求項6の発明の如く当接部の下縁を、後方に向かって高く傾斜させた場合には、当接部の下縁が案内部の滑り材に食い込んでしまうことも防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用した一実施例のショーケースの縦断側面図である。
図2】本発明を適用した一実施例の棚装置の水平状態での斜視図である。
図3図2の棚装置の側面図である。
図4図3の棚装置前部の拡大側面図である。
図5図2の棚装置側部の裏面斜視図である。
図6図2の棚装置側部の正面図である。
図7図2の棚装置の棚板を引き出した状態の側面図である。
図8図7の棚装置側部の裏面斜視図である。
図9】傾斜操作部材の操作部を押し下げた状態の図7の棚装置の斜視図である。
図10図9の棚装置の側面図である。
図11図9の状態から棚板を押し込み、傾斜させた状態の棚装置の斜視図である。
図12図11の棚装置の側面図である。
図13図11の棚装置前部の拡大側面図である。
図14図11の棚装置側部の裏面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。実施例のショーケース1は、コンビニエンスストア等の店舗に設置されて商品を冷却しながら陳列する冷蔵冷凍タイプの縦型オープンショーケースである。ショーケース1の本体2は断面コ字状の断熱壁から構成されており、図1では示さないが、実際にはこの本体2の両側に断熱壁から成る側板が取り付けられることになる。
【0023】
ショーケース1の本体2の内側には、間隔を存して仕切板3が取り付けられており、この仕切板3と本体2の間がダクト4とされ、仕切板3の内側が前面に開口する陳列室6とされている。ダクト4の上部前端には、陳列室6の開口上縁に位置して吹出口7が形成され、ダクト4の下部前端には、陳列室6の開口下縁に位置して吸込口8が形成されているい。
【0024】
また、ダクト4内には蒸発器9と送風機11が配設されており、この送風機11により、蒸発器9と熱交換した冷気がダクト4内を吹き上げられ、吹出口7から陳列室6の開口に吹き出される。吹出口7から吹き出された冷気は、陳列室6の開口に冷気エアーカーテンを形成すると共に、陳列室6内を循環して所定の温度(冷蔵又は冷凍温度)に冷却する。この冷気エアーカーテンを形成する冷気及び陳列室6内を循環した冷気は吸込口8からダクト4内に流入し、再び送風機11に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0025】
そして、陳列室6内には本発明の商品陳列用の棚装置12が複数段(実施例では上下に8段)設けられている。尚、本発明の棚装置12は、棚板13を後方に押し込んで陳列室6内に位置させた状態と、前方(手前)に引き出した状態とに切り換えられる引き出し自在の棚装置であり、更に後述する如く棚板13を水平とした状態と、前部が低く、後部が高く傾斜した状態とに切り換え可能とされている。
【0026】
図1図8は棚板13が水平とされた状態の棚装置12を示している。次に、これらの図面を参照しながら本発明の一実施例の棚装置12の構造について説明する。実施例の棚装置12は、陳列室6内に取り付けられた左右一対のブラケット14と、商品を載置して陳列するための前述した棚板13と、この棚板13を各ブラケット14に引き出し自在に取り付けるための左右一対のスライドレール16と、棚板13に取り付けられた左右一対の傾斜操作部材17と、各ブラケット14の外側の面にそれぞれ取り付けられた案内部18等から構成されている。
【0027】
前記各ブラケット14は比較的圧肉の鋼板から構成されており、その後端には複数の係合爪21が形成され、左右のブラケット14の係合爪21が、陳列室6の背面の仕切板3の左右両側に設けられた上下方向の支柱22の係合孔23(図6)にそれぞれ係脱自在に係合され、各支柱22から前方に延在して取り付けられている。尚、棚装置12の後方に位置する支柱22の係合孔23は図6では省略している。また、左右のブラケット14の後部には補強材26が取り付けられ、各ブラケット14間に渡っている。
【0028】
前記案内部18は左右のブラケット14の前後方向の中央よりも少許前側に位置して、各ブラケット14の外側の面にそれぞれ取り付けられている(図7)。実施例の案内部18は鋼板にて構成されており、各ブラケット14から外方に向かって張り出している。また、案内部18は前部が低く、後部が高く所定角度で傾斜しており、その上面には例えばフッ素樹脂製の滑り材24がコーティングされている。
【0029】
前記各スライドレール16は、固定レール27と、移動レール28と、これらを前後方向にスライド自在に連結する中間レール29と、固定レール27に対する移動レール28の移動を係脱自在に規制するために前端に設けられたストッパ31と、棚取付板32等から構成されている。そして、固定レール27が各ブラケット14の内側の面にそれぞれ取り付けられると共に、移動レール28に棚取付板32が取り付けられている。この棚取付板32は、各スライドレール16のレール27~29及び各ブラケット14の上側を回って、各ブラケット14の外側まで渡っている(図6)。
【0030】
実施例の棚板13は、鋼板(磁性体)にて構成された枠状の棚板本体33と、この棚板本体33の前部に取り付けられた透明なガラス板34と、棚板本体33の前部両側下面に取り付けられた棚板側板36等から構成されている。そして、この棚板側板36の前部(棚板13の前部)が、水平方向に軸芯を有する回動軸37にて前記スライドレール16の棚取付板32に回動自在に枢支されている。また、棚板本体33の両側の後部には、保持部材としての磁石38がそれぞれ取り付けられている。
【0031】
前記傾斜操作部材17は、 棚板13の前後寸法に略等しい長さの鋼板(磁性体)にて構成されており、前部に操作部39、後部に当接部41を一体に有している。操作部39の上下縁は内側に直角に折曲されて、手指による操作を行いやすいように構成されている。また、当接部41の下縁も内側に直角に折曲され、更に後方に延在したヒレ部41Aが一体に形成されている。そして、この当接部41のヒレ部41Aは、後方に向かって高く傾斜している。
【0032】
また、この当接部41より少許操作部39側の傾斜操作部材17の上縁も内側に直角に折曲され、そこに傾斜保持部42が形成されている。このような傾斜操作部材17は、水平方向に軸芯を有する回動軸43にて棚板13両側の棚板側板36の外側にそれぞれ回動自在に枢支されている。この状態で、各傾斜操作部材17は各棚板側板36の外側に位置し、前後に渡っている。また、回動軸43は、傾斜操作部材17の重心よりも前方に位置している。更に、傾斜操作部材17の前後方向に長さ寸法をLとした場合に、回動軸は43の位置は、傾斜操作部材17の前端よりL/3以上後方であって、傾斜操作部材17の後端よりL/3以上前方の領域の範囲内に設定されている。
【0033】
尚、傾斜保持部42は回動軸43よりも後側(当接部41側)に位置する。また、棚板13の棚板本体33の両側部後端には、支持部44が下方に向かって突出形成されている(傾斜操作部材17を見やすくするため、図3のみに破線で示す)。この支持部44の下端は内側に直角に折曲されており、傾斜操作部材17の当接部41は、この支持部44の下端上方の内側で移動自在とされている。
【0034】
以上の構成で、実施例の棚装置12の動作と操作手順について説明する。先ず、図1図8は前述した如く棚装置12の棚板13が水平とされた状態である。この水平状態では、傾斜操作部材17はその前部の操作部39が引き上げられ、後部の当接部41が降下した状態であり、案内部18は傾斜操作部材17の内側に位置し、棚板13が前後に移動されても傾斜操作部材17(当接部41)は案内部18に当接せず、両者は干渉し合わない状態である。
【0035】
また、傾斜操作部材17後部の当接部41は棚板13の保持部44下端に当接して保持されている。尚、前述した如く回動軸43は傾斜操作部材17の重心よりも前方に位置しているので、傾斜操作部材17は常に回動軸43を中心として図3中時計周りに回動しようとする。これにより、上述した如く操作部39が引き上げられ、当接部41が保持部44に保持された状態が、傾斜操作部材17の自重により維持される。
【0036】
この水平状態(図1図5)から、棚板13を傾斜状態に切り換える際には、最初に左右両側のスライドレール16のストッパ31を操作し、移動レール28の規制を解除して、棚板13を図7図8の如く前方に引き出す。次に、図9図10の如く左右両側の傾斜操作部材17の前部の操作部39を押し下げる。
【0037】
前部の操作部39が押し下げられると、傾斜操作部材17は回動軸43を中心に図7中反時計回りに回動するので、後部の当接部41は上昇し、回動軸43より後側の上縁に位置する傾斜保持部42は、棚板本体33の両側後部の下面に当接する。また、この傾斜保持部42の後側の部分の傾斜操作部材17は棚板本体33に取り付けられた磁石38に着脱自在に吸着されるので、傾斜操作部材17の操作部39が押し下げられた状態は保持される(図9図10)。
【0038】
このとき、傾斜操作部材17の当接部41の位置は、図10に破線矢印で示す如く案内部18の前端部よりも少なくとも高い位置に来る。この図9図10の状態で、棚板13を破線矢印の如く後方の陳列室6内に押し込むと、やがて傾斜操作部材17の後部の当接部41下縁に形成されたヒレ部41Aが案内部18の上面(滑り材24)に当接する。そして、更に棚板13を後方に押し込むと、当接部41のヒレ部41Aが案内部18の上面の滑り材24を滑り、その傾斜に案内されて上昇する。
【0039】
このとき、傾斜操作部材17の傾斜保持部42は棚板本体33の下面に当接しているので、傾斜操作部材17は棚板13の後部を押し上げ、棚板13は回動軸37を中心に図10中反時計回りに回動する。これにより、棚板13の後部は前部より高く押し上げられるので、最終的に棚板13が陳列室6内に格納された状態では、図11図14に示す如く、棚板13は前部が低く、後部が高く傾斜した状態に切り換わる。
【0040】
このような傾斜状態から棚板13を水平に戻す際には、図9の如く再び棚板13を前方に引き出し、傾斜操作部材17の操作部39を引き上げる(図7の状態)。これにより、傾斜操作部材17は磁石38から離れ、棚板13は水平に戻る。その状態で後方の陳列室6内に棚板13を押し込めばよい。この後方への移動の過程で傾斜操作部材17の当接部41は案内部18に当接せず、案内部18は傾斜操作部材17の内側に位置することになる。
【0041】
以上詳述した如く、本発明では前部に操作部39と後部に当接部41を一体に有して前後に渡る傾斜操作部材17を棚板13の棚板側板36に回動自在に取り付け、前部が低く、後部が高く傾斜した案内部18をブラケット14に設け、棚板13の棚板側板36の前部をスライドレール16の棚取付板32に回動自在に取り付け、棚板13を前方に引き出した状態で傾斜操作部材17の操作部39を引き上げ、その状態で棚板13を後方に押し込んだ場合、当接部41は案内部18に当接せず、棚板13は水平になるようにすると共に、棚板13を前方に引き出した状態で傾斜操作部材17の操作部39を押し下げたとき、当該傾斜操作部材17の上縁の傾斜保持部42が棚板13の棚板本体33の下面に当接し、その状態で棚板13を後方に押し込んだ場合、当接部41の下縁が案内部18に当接し、この案内部18の傾斜によって棚板13の後部を前部より高く押し上げ、当該棚板13が、その前部が低く、後部が高く傾斜するようにしたので、棚板13を引き出し、次に傾斜操作部材17を引き上げ/押し下げ、最後に棚板13を押し込むと云った簡単な操作のみで、棚板13が水平となる状態と、前部が低く、後部が高く傾斜した状態とに切り換えることができるようになる。
【0042】
特に傾斜操作部材17は、前部に操作部39と後部に当接部41を一体に有する構成とされているので、構造が簡素化されると共に、動作も単純なものとなるので、部品・組立のバラツキにより切り換えが行えなくなる不都合の発生も防止、若しくは、抑制することが可能となり、棚板13の状態を確実に切り換えることができるようになるものである。
【0043】
また、実施例では傾斜操作部材17を回動自在に枢支する回動軸43を、当該傾斜操作部材17の重心よりも前方に位置させたので、傾斜操作部材17の前部の操作部39が引き上げられた状態を、自重により維持することができるようになる。これにより、傾斜操作部材17の状態が不安定となって、傾斜させる必要がないときに傾斜操作部材17が案内部18に当接することも無くなり、棚板13の状態を切り換える作業に支障を来す不都合も未然に回避することができるようになる。
【0044】
この場合、実施例では傾斜操作部材17の前後方向の長さ寸法をLとした場合、回動軸43を、傾斜操作部材17の重心よりも前方であって、当該傾斜操作部材17の前端よりL/3以上後方で、且つ、後端よりL/3以上前方の範囲内に位置させたので、前部の操作部39の引き上げ/押し下げの操作感を維持しながら、後部における当接部41の上下位置の変化幅を十分にとって、棚板13の状態の切り換えを確実に行うことができるようになる。
【0045】
更に、実施例では傾斜操作部材17が棚板13に当接した状態を着脱自在に保持する保持部材(磁石38)を設けているので、棚板13を傾斜した状態に切り換える際、傾斜操作部材17の操作部39を押し下げるのみで、傾斜操作部材17の状態を保持させることができるようになる。これにより、傾斜操作部材17を押し下げながら棚板13を押し込むという面倒な作業を排除し、操作性の向上を図ることができるようになる。
【0046】
この場合、実施例では棚板13の棚板本体33と傾斜操作部材17を磁性体にて構成し、保持部材を磁石38にて構成しているので、傾斜操作部材17が棚板13の棚板本体33に当接した状態を、簡単な構成で着脱自在に保持することができるようになる。
【0047】
更にまた、実施例では傾斜操作部材17の当接部41の下縁にヒレ部41Aを形成し、このヒレ部41Aを後方に向かって高く傾斜させているので、傾斜操作部材17の操作部39を押し下げた状態で棚板13を押し込んだときに、当接部41下縁が案内部18に噛み込み、引っ掛かってしまう等の不都合を回避し、当接部41を案内部18の傾斜に沿って円滑に移動させることが可能となる。これにより、棚板13を傾斜した状態に切り換える作業が円滑化される。
【0048】
また、実施例では案内部18の上面を、フッ素樹脂製の滑り材24にて構成しているので、当接部41のヒレ部41Aを案内部18の傾斜に沿って極めて円滑に移動させることができるようになる。特に、当接部41下縁のヒレ部41Aを、後方に向かって高く傾斜させていることから、当接部41下縁が案内部18の滑り材24に食い込んでしまうことも防止できる。
【0049】
尚、実施例では棚板本体33と傾斜操作部材17の双方を磁性体にて構成したが、何れか一方のみを磁性体とし、他方に磁石38を取り付ける構成でもよい。また、実施例では保持部材を磁石38にて構成したが、それに限らず、一方を他方に押し込むことで着脱自在に保持できる所謂キャッチャー等で構成してもよい。更に、実施例では案内部18の上面に滑り材24をコーティングしたが、それに限らず、案内部18自体を滑り材で構成してもよく、全体を滑り材でコーティングしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ショーケース
6 陳列室
12 棚装置
13 棚板
14 ブラケット
16 スライドレール
17 傾斜操作部材
18 案内部
24 滑り材
27 固定レール
28 移動レール
32 棚取付板
33 棚板本体
36 棚板側板
37 回動軸
38 磁石(保持部材)
39 操作部
41 当接部
41A ヒレ部
43 回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14