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特許6998184読取表示システム、読取表示方法及び読取値測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】読取表示システム、読取表示方法及び読取値測定装置
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20220111BHJP
   G01D 7/00 20060101ALI20220111BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G08C17/00 A
G01D7/00 303Z
G08C19/00 301G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017220266
(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2019091301
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000150707
【氏名又は名称】長野計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 大司
(72)【発明者】
【氏名】若林 宏誌
(72)【発明者】
【氏名】村松 秀樹
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-042271(JP,A)
【文献】特開2015-212639(JP,A)
【文献】特許第4787584(JP,B2)
【文献】特開2011-081715(JP,A)
【文献】特開2006-285303(JP,A)
【文献】特開昭58-048815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
G01D 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定器で測定した物理量の測定値を読み取って表示する読取表示システムであって、
表示部と、前記表示部に測定値を表示させる表示駆動部と、前記測定器の測定値と前記測定器を特定し機種を含んだID情報とを取得する第一情報取得部と、前記第一情報取得部で取得された測定値及びID情報を送信する第一送信部と、を有する携帯型コンピュータと、
前記第一送信部から送信された測定値及びID情報を取得する第二情報取得部と、前記ID情報に基づき設定された測定値の許容範囲を記憶する許容範囲記憶部と、前記第二情報取得部で取得された測定値が前記許容範囲記憶部で記憶された前記測定値の許容範囲にあるか否かを判断する判断処理演算部と、前記判断処理演算部で判断された結果、前記測定器の測定値及び前記許容範囲を前記表示部で表示させる信号を前記表示駆動部に送る第二送信部と、を有する読取値測定用コンピュータと、を備えた、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項2】
測定器で測定した物理量の測定値を読み取って表示する読取表示システムであって、
表示部と、前記表示部に測定値を表示させる表示駆動部と、前記測定器の目盛板及び指針と前記測定器を特定し機種を含んだID情報とを撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された撮像情報を送信する第一送信部と、を有する携帯型コンピュータと、
前記第一送信部から送信された撮像情報を取得する情報取得部と、前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度、当該傾き角度における指針の読取値及び正しい測定値の対応関係を測定器の機種毎に記憶する対応関係記憶部と、前記情報取得部で取得された撮像情報に基づいて前記目盛板の正面に対する傾きを認識する目盛板傾き認識部と、当該傾きにおける指針の読取値を認識する指針認識部と、前記情報取得部、前記目盛板傾き認識部、前記指針認識部及び前記対応関係記憶部に基づいて、前記目盛板の正面に対する傾きに応じた正しい測定値を演算する測定値演算部と、前記測定値演算部で演算された正しい測定値を前記表示部で表示させる信号を前記表示駆動部に送る第二送信部と、を有する読取値測定用コンピュータと、を備えた、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項3】
請求項2に記載された読取表示システムにおいて、
前記目盛板傾き認識部は、前記目盛板において前記指針の回動中心を中心として円弧状に並んで配置された3点以上の目盛、又は、前記目盛板上の3点以上の印、のうち異なる3点に基づいて、前記目盛板の傾きを認識する、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された読取表示システムにおいて、
前記携帯型コンピュータは、前記目盛板を基に設定され撮像位置を誘導する表示が前記表示部に表示された際に、前記撮像部で自動的に撮像させる撮像誘導部を有する、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載された読取表示システムにおいて、
前記指針認識部は、前記目盛板の前記指針が回動する領域に応じて複数の仮想線を等間隔に設定する仮想線設定部と、前記仮想線設定部で設置された複数の仮想線のうち前記指針で隠れる仮想線を特定する仮想線特定部とを有する、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載された読取表示システムにおいて、
前記測定器の機種毎に前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度と測定値の許容範囲と関係を記憶する許容範囲記憶部と、
前記情報取得部、前記目盛板傾き認識部、前記指針認識部及び前記許容範囲記憶部に基づいて前記目盛板の正面に対する傾きに応じた正しい測定値の許容範囲を演算する許容範囲演算部と、を備え、
前記第二送信部は、前記許容範囲演算部で演算された正しい測定値の許容範囲を前記測定器の目盛板の画像に重ねて前記表示部で表示させる信号を前記表示駆動部に送る、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項7】
請求項6に記載された読取表示システムにおいて、
測定値の最大値、最小値及び平均値を演算する3値演算部を備え、
前記撮像部は、前記指針の動画を撮像する動画撮像部を有し、
前記表示駆動部は前記表示部に前記3値演算部で演算された最大値、最小値及び平均値を表示させる、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載された読取表示システムにおいて、
前記携帯型コンピュータを保持し前記測定器に係止するホルダを備えた、
ことを特徴とする読取表示システム。
【請求項9】
測定器の測定値と前記測定器を特定し機種を含んだID情報とを携帯型コンピュータの第一情報取得部が取得し、
前記測定値及びID情報を第一送信部が読取値測定用コンピュータの第二情報取得部に送り、
前記第二情報取得部で取得されたID情報に基づいて許容範囲記憶部で記憶された測定値の許容範囲に対して、前記第二情報取得部で取得された測定値が許容範囲か否かを判断処理演算部が判断し、
前記判断処理演算部で判断された結果と、前記測定器の測定値及び前記許容範囲とを、第二送信部が携帯型コンピュータの表示駆動部に送り、前記表示駆動部が表示部に表示させる、
ことを特徴とする読取表示方法。
【請求項10】
携帯型コンピュータの撮像部で撮像された測定器のID情報と目盛板及び指針の撮像情報とを第一送信部が読取値測定用コンピュータの情報取得部に送り、
前記撮像情報から目盛板の正面に対する角度と当該角度における指針の読取値とを目盛板傾き認識部が認識し、
前記目盛板傾き認識部で認識された目盛板の角度と読取値の情報と、対応関係記憶部で機種毎に記憶された前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度、当該傾き角度における指針の読取値及び正しい測定値の対応関係と、前記情報取得部で取得された測定器のID情報と、に基づいて測定値演算部が正しい測定値を演算し、
前記測定値演算部で演算された正しい測定値を第二送信部が前記携帯型コンピュータの表示駆動部に送り、前記表示駆動部が正しい測定値を表示部に表示させる、
ことを特徴とする読取表示方法。
【請求項11】
携帯型コンピュータから送信された測定器の目盛板及び指針と前記測定器を特定し機種を含んだID情報との撮像情報を取得する情報取得部と、
前記測定器の機種、前記目盛板を正面視した場合の前記指針が指す目盛の所定位置と、前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度と、前記測定器を前記目盛板の正面に対して前記傾き角度傾けた場合の前記指針が指す目盛板の所定位置、の関係を記憶する対応関係記憶部と、
前記情報取得部で取得された情報に基づいて前記目盛板の正面に対する角度と当該角度における指針の読取値とを認識する目盛板傾き認識部と、
前記情報取得部、前記目盛板傾き認識部及び前記対応関係記憶部に基づいて前記目盛板の正面に対する傾きに応じた正しい測定値を演算する測定値演算部と、
前記測定値演算部で演算された正しい測定値を前記携帯型コンピュータで表示させる信号を送信する第二送信部と、を備えた、
ことを特徴とする読取値測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取表示システム、読取表示方法及び読取値測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ライン、工場内では、多種多様の測定器が用いられている。作業員は、これらの測定器の測定値を読み取り、必要に応じて手元のノート等に記録する作業を行うことがある。
広い製造ライン、工場内では、測定器の数や機種も多くなり、巡回しながら測定器の機種毎に測定値をチェックする作業を時間内に終了することは作業員にとって大きな負担となっている。
また、測定値が許容範囲か否か、換言すれば、正常範囲か異常範囲かの判断も作業員にとって大きな負担である。
【0003】
測定器には、測定値がデジタル表示されるデジタル式測定器の他、指針が目盛板の指す位置を目視して測定値を読み取るアナログ式測定器がある。
アナログ式測定器は、目盛板の正面から測定値を読み取るものであるが、作業員の経験が浅い場合や、測定器の設置場所が作業員から離れた位置にある場合には、正面に対して斜めから指針を読み取ることになり、読取誤差が生じることになる。
アナログ式測定器の読取誤差を補正するため、指針及び目盛板を撮像装置で撮像し、撮像データを解析や補正する従来例(特許文献1、特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4787584号公報
【文献】特許第5775646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の従来例は、読取値の補正や解析を行うものであって、補正や解析する装置から離れた場所にいる作業員が正しい測定値を直ちに見ることができるものではない。しかも、測定器は、機種、設置場所、その他の条件によって、適正な測定値が異なるので、測定器の機種毎に測定値が許容範囲か否かを判断するのは煩雑な作業となるが、特許文献1,2の従来例では、このような煩雑な作業を十分に改善できるもではない。
また、特許文献1,2の従来例や、デジタル式測定器では、測定値が許容範囲か否かの判断もできるものではない。許容範囲が否かを作業員が手元のマニュアル等でチェックすることになり、この点からも、測定作業が煩雑となる。
【0006】
本発明の目的は、測定器の測定作業を効率的に行える読取表示システム、読取表示方法及び読取値測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の読取表示システムは、測定器で測定した物理量の測定値を読み取って表示する読取表示システムであって、表示部と、前記表示部に測定値を表示させる表示駆動部と、前記測定器の測定値と前記測定器を特定し機種を含んだID情報とを取得する第一情報取得部と、前記第一情報取得部で取得された測定値及びID情報を送信する第一送信部と、を有する携帯型コンピュータと、前記第一送信部から送信された測定値及びID情報を取得する第二情報取得部と、前記ID情報に基づき設定された測定値の許容範囲を記憶する許容範囲記憶部と、前記第二情報取得部で取得された測定値が前記許容範囲記憶部で記憶された前記測定値の許容範囲にあるか否かを判断する判断処理演算部と、前記判断処理演算部で判断された結果、前記測定器の測定値及び前記許容範囲を前記表示部で表示させる信号を前記表示駆動部に送る第二送信部と、を有する読取値測定用コンピュータと、を備えたことを特徴とする。
本発明の読取表示方法は、測定器の測定値と前記測定器を特定し機種を含んだID情報とを携帯型コンピュータの第一情報取得部が取得し、前記測定値及びID情報を第一送信部が読取値測定用コンピュータの第二情報取得部に送り、前記第二情報取得部で取得されたID情報に基づいて許容範囲記憶部で記憶された測定値の許容範囲に対して、前記第二情報取得部で取得された測定値が許容範囲か否かを判断処理演算部が判断し、前記判断処理演算部で判断された結果と、前記測定器の測定値及び前記許容範囲とを、第二送信部が携帯型コンピュータの表示駆動部に送り、前記表示駆動部が表示部に表示させる、ことを特徴とする。
【0008】
一般的に、製造ライン、工場内には、機種の異なる測定器が複数設置されており、作業員は、これらの測定器をそれぞれ測定するために、製造ライン、工場内を巡り、順番に測定器を測定する。
本発明では、測定器から送られる測定値とID情報との情報を携帯型コンピュータの第一情報取得部で取得する。例えば、測定器と携帯型コンピュータとの無線又は有線で通信が可能な場合では、測定器から送信された測定値とID情報とを携帯型コンピュータの第一情報取得部で取得し、測定器と携帯型コンピュータとの無線又は有線で通信が不可能な場合には、測定器のデジタル表示と測定器の外面に予め表示されているID情報とを携帯型コンピュータの撮像部で撮像し、この撮像部から送られる信号に基づいて第一情報取得部が測定値とID情報とを取得する。
携帯型コンピュータの第一送信部が測定器の測定値とID情報とを読取値測定用コンピュータの第二情報取得部に送信する。
読取値測定用コンピュータにおいて、ID情報と関連づけて測定値の許容範囲を許容範囲記憶部で記憶させておく。そして、許容範囲記憶部で記憶された測定値の許容範囲に対して第二情報取得部で取得された測定値が許容範囲か否かを判断処理演算部が判断する。そして、判断処理演算部で判断された結果、測定値及びID情報を第二送信部が携帯型コンピュータの表示駆動部に送り、表示駆動部が表示部にこれらの情報を表示させる。
そのため、本発明では、機種が異なる測定器毎に、測定値が許容範囲か否かを測定値及びID情報とともに手元の携帯型コンピュータでチェックすることができるので、機種の異なる測定器であっても、その機種を目視で確認し、マニュアル等でチェックする手間が省かれることになり、測定作業が効率的に行える。
ここで、携帯型コンピュータとしては、例えば、スマートフォン、タブレット端末を例示できる。読取値測定用コンピュータとしては、例えば、ホストコンピュータを例示できる。
【0009】
本発明の読取表示システムは、測定器で測定した物理量の測定値を読み取って表示する読取表示システムであって、表示部と、前記表示部に測定値を表示させる表示駆動部と、前記測定器の目盛板及び指針と前記測定器を特定し機種を含んだID情報とを撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された撮像情報を送信する第一送信部と、を有する携帯型コンピュータと、前記第一送信部から送信された撮像情報を取得する情報取得部と、前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度、当該傾き角度における指針の読取値及び正しい測定値の対応関係を測定器の機種毎に記憶する対応関係記憶部と、前記情報取得部で取得された撮像情報に基づいて前記目盛板の正面に対する傾きを認識する目盛板傾き認識部と、当該傾きにおける指針の読取値を認識する指針認識部と、前記情報取得部、前記目盛板傾き認識部、前記指針認識部及び前記対応関係記憶部に基づいて、前記目盛板の正面に対する傾きに応じた正しい測定値を演算する測定値演算部と、前記測定値演算部で演算された正しい測定値を前記表示部で表示させる信号を前記表示駆動部に送る第二送信部と、を有する読取値測定用コンピュータと、を備えた、ことを特徴とする。
本発明の読取表示方法は、携帯型コンピュータの撮像部で撮像された測定器のID情報と目盛板及び指針の撮像情報とを第一送信部が読取値測定用コンピュータの情報取得部に送り、前記撮像情報から目盛板の正面に対する角度と当該角度における指針の読取値とを目盛板傾き認識部が認識し、前記目盛板傾き認識部で認識された目盛板の角度と読取値の情報と、対応関係記憶部で機種毎に記憶された前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度、当該傾き角度における指針の読取値及び正しい測定値の対応関係と、前記情報取得部で取得された測定器のID情報と、に基づいて測定値演算部が正しい測定値を演算し、前記測定値演算部で演算された正しい測定値を第二送信部が前記携帯型コンピュータの表示駆動部に送り、前記表示駆動部が正しい測定値を表示部に表示させる、ことを特徴とする。
本発明の読取値測定装置は、携帯型コンピュータから送信された測定器の目盛板及び指針と前記測定器を特定し機種を含んだID情報との撮像情報を取得する情報取得部と、前記測定器の機種、前記目盛板を正面視した場合の前記指針が指す目盛の所定位置と、前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度と、前記測定器を前記目盛板の正面に対して前記傾き角度傾けた場合の前記指針が指す目盛板の所定位置、の関係を記憶する対応関係記憶部と、前記情報取得部で取得された情報に基づいて前記目盛板の正面に対する角度と当該角度における指針の読取値とを認識する目盛板傾き認識部と、前記情報取得部、前記目盛板傾き認識部及び前記対応関係記憶部に基づいて前記目盛板の正面に対する傾きに応じた正しい測定値を演算する測定値演算部と、前記測定値演算部で演算された正しい測定値を前記携帯型コンピュータで表示させる信号を送信する第二送信部と、を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
本発明では、作業員は、製造ライン、工場内にある複数の測定器を、巡回しながら順番に測定する。作業員が携帯型コンピュータの撮像部で、被測定対象である測定器のID情報、目盛板及び指針を撮像する。撮像部で撮像された撮像情報及びID情報が第一送信部を介して読取値測定用コンピュータに送られる。
読取値測定用コンピュータでは、撮像情報及びID情報が情報取得部で取得され、情報取得部で取得された撮像情報が目盛板傾き認識部に送られる。目盛板傾き認識部では、撮像情報に基づいた目盛板の正面に対する角度と当該角度における指針の読取値とを認識する。目盛板傾き認識部で認識された目盛板の角度及び読取値の情報と、対応関係記憶部で記憶された測定器毎の測定器の目盛板の正面に対する傾き角度と正しい測定値と関係の情報と、情報取得部で取得された測定器を特定し機種を含んだID情報とに基づいて測定値演算部で正しい測定値を演算する。測定値演算部で演算された正しい測定値を第二送信部が携帯型コンピュータの表示駆動部に送り、表示駆動部により正しい測定値を表示部で表示させる。
作業員は、手元にある携帯型コンピュータで、目盛板の正面に対して傾いた状態で測定器を撮像したとしても、測定器の機種毎に正しい測定値が演算される。そのため、指針の読取誤差がなく、表示部で表示された正しい測定値を読み取ることができるから、測定作業を効率的に行える。
【0011】
本発明では、前記目盛板傾き認識部は、前記目盛板において前記指針の回動中心を中心として円弧状に並んで配置された3点以上の目盛、又は、前記目盛板上の3点以上の印、のうち異なる3点に基づいて、前記目盛板の傾きを認識する、構成としてもよい。
目盛板のうち3点を結ぶ三角形は、目盛板の傾きに応じて隣合う頂点間の寸法比が相違する。例えば、目盛板を正面から見た場合の三角形と、目盛板を斜めから見た場合の三角形とでは、三角形を構成する頂点のうち隣合う頂点間の寸法比が相違する。そのため、三角形のうち隣合う頂点間の寸法比を、目盛板を正面から見た場合と斜めから見た場合とで比較することで、斜めから見た場合に目盛板の傾きを認識することができる。
従って、目盛のうち異なる3点に基づいて目盛板の傾きを認識することで、目盛板の傾きを容易に認識することができる。その上、3点の間で目盛が欠けていたとしても、3点があれば、適正に目盛板の傾き角を認識できる。
【0012】
本発明では、前記携帯型コンピュータは、前記目盛板を基に設定され撮像位置を誘導する表示が前記表示部に表示された際に、前記撮像部で自動的に撮像させる撮像誘導部を有する、構成としてもよい。
この構成では、携帯型コンピュータの表示部に撮像位置を誘導する円形や矩形状の表示が表示されており、この表示に、目盛板を基に設定された撮像位置が一致すると、撮像部が自動的に撮像する。例えば、表示が円形から構成される場合、表示部に円形の一部が表示されたとすると、作業員は円形の全部が表示部に表示されるように、携帯型コンピュータを傾け、あるいは、左右上下に移動させる。円形の表示に撮像位置が全て表示されると、撮像誘導部により、撮像部で自動的に撮像される。
そのため、撮像における角度補正を作業員が効率的に行えるので、コンピュータ処理の軽減と処理のスピードアップを図ることができる。
【0013】
本発明では、前記指針認識部は、前記目盛板の前記指針が回動する領域に応じて複数の仮想線を等間隔に設定する仮想線設定部と、前記仮想線設定部で設置された複数の仮想線のうち前記指針で隠れる仮想線を特定する仮想線特定部とを有する、構成としてもよい。
この構成では、実際に目盛板に表示される目盛の間隔が大きくても、目盛を構成する複数の仮想線のうち指針で隠れる仮想線の位置を複数の仮想線との関係で割り出すことで、指針を示す位置を正確に認識することができる。そのため、正しい測定値を測定値演算部で演算することができるとともに、表示部で表示することができる。
【0014】
本発明では、前記測定器の機種毎に前記測定器の前記目盛板の正面に対する傾き角度と測定値の許容範囲と関係を記憶する許容範囲記憶部と、前記情報取得部、前記目盛板傾き認識部、前記指針認識部及び前記許容範囲記憶部に基づいて前記目盛板の正面に対する傾きに応じた正しい測定値の許容範囲を演算する許容範囲演算部とを備え、前記第二送信部は、前記許容範囲演算部で演算された正しい測定値の許容範囲を前記測定器の目盛板の画像に重ねて前記表示部で表示させる信号を前記表示駆動部に送る、構成としてもよい。
この構成では、撮像部で撮像された指針の撮像情報及びID情報が情報取得部で取得され、許容範囲演算部では、許容範囲記憶部から呼び出した正しい測定値の許容範囲と、目盛板傾き認識部で認識された目盛板の傾きとに基づいて、目盛板の傾きに応じた許容範囲を演算し、この演算結果を第二送信部で携帯型コンピュータの表示駆動部に送り、表示部で表示される。
そのため、測定値が正しい範囲にあるか否かを測定者は表示部で表示された情報に基づいて、直ちに認識することができるから、測定作業の効率化が図れる。
【0015】
本発明では、測定値の最大値、最小値及び平均値を演算する3値演算部を備え、前記撮像部は、前記指針の動画を撮像する動画撮像部を有し、前記表示駆動部は前記表示部に前記3値演算部で演算された最大値、最小値及び平均値を表示させる、構成としてもよい。
ポンプの振動等によって、測定中の指針が所定の範囲内で振動を繰り返すことがあり、この場合、指針の静止位置が特定しにくく、表示部を通じて測定値が目視しにくい。
そのため、動画撮像部によって、指針の動画を撮像し、3値演算部によって、動画を所定時間毎の静止画に分割し、これらの静止画における測定値の最大値、最小値及び平均値のそれぞれの平均を演算し、これらの演算値を表示部に表示させる。
この構成では、最大値、最小値及び平均値を作業員が手元にある携帯型コンピュータで容易に読み取ることができる。
【0016】
本発明では、前記携帯型コンピュータを保持し前記測定器に係止するホルダを備えた、構成としてもよい。
この構成では、携帯型コンピュータを目盛板の正面に向けた状態で、ホルダにて保持するようにすれば、補正の必要のない位置での撮像により、より正確な測定値を求めることができるとともに、手ぶれ等の撮像時に生じる不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の読取表示システムを示す概略図。
図2】読取表示システムのブロック図。
図3】(A)は目盛板を正面から傾けて見た場合の模式図、(B)は目盛板を正面視した場合の模式図。
図4】指針認識部を説明する概略構成図。
図5】第1実施形態の読取表示方法を説明するためのフローチャート。
図6】本発明の第2実施形態の読取表示システムを示すブロック図。
図7】撮像誘導部を説明する概略構成図。
図8】第2実施形態の読取表示方法を説明するためのフローチャート。
図9】本発明の第3実施形態の読取表示システムを示す概略図。
図10】読取表示システムのブロック図。
図11】読取表示方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を図1から図6に基づいて説明する。
図1には、第1実施形態の読取表示システムの概略構成が示されている。
図1において、読取表示システムは、測定器1で測定した物理量の測定値を読み取って表示する読取表示システムであり、スマートフォン、タブレット端末等からなる携帯型コンピュータ2と、携帯型コンピュータ2と無線通信あるいはインターネット通信する読取値測定用コンピュータ3とを備える。
第1実施形態では、測定器1は、配管10に取り付けられ物理量として被測定流体の圧力を測定する圧力計であり、ケース11と、目盛板12と、目盛板12の目盛を先端部が指す指針13と、配管10の内部の圧力を指針13に伝達する圧力伝達機構(図示せず)とを有する。
【0019】
目盛板12には、指針13の回動中心を中心として形成された円弧状部14と、円弧状部14に沿って所定間隔毎に配置された目盛15とが表示されている。
目盛板12の下部には、型式、シリアル番号、製造年月日、メンテナンス日時等のID情報16が表示されている。なお、図1のように、型式やシリアル番号等のID情報16が目盛板12に直接表示されるものの他、型式、シリアル番号、圧力レンジ、製造年月日等のID情報16をICタグに記録したものでもよい。
第1実施形態では、携帯型コンピュータ2を正視した状態で保持し測定器1に係止するホルダ17を備えてもよい。
【0020】
図2には、読取表示システムのブロック図が示されている。
図2において、携帯型コンピュータ2は、入力部20と、表示部21と、表示部21に測定値を表示させる表示駆動部22と、測定器1の目盛板12、指針13及びID情報16を撮像する撮像部23と、撮像部23で撮像された目盛板12、指針13及びID情報16の撮像情報を読取値測定用コンピュータ3に送信する第一送信部24と、を有する。
表示部21は、図1で示される携帯型コンピュータ2の正面では平面矩形状とされる。
【0021】
撮像部23は、図示しないレンズを通して画像情報を取り込み、第一送信部24に送るものであり、図示しない操作ボタンにより、取り込んだ画像を撮像する。
撮像部23は、静止画像を撮像する静止画撮像部231と、動画を撮像する動画撮像部232とを有する。
入力部20は、表示部21に表示された図示しない操作パネルやボタン等によって、あるいは、携帯型コンピュータ2の表示部21の周囲に設けられたボタン2A(図1参照)によって、携帯型コンピュータ2を操作するために必要な情報の入力を行う他、静止画撮像部231と動画撮像部232との切換を行う。
第一送信部24は、撮像情報の他、撮像した日時、GPS、ビーコン等で取得した位置情報、別途取得した天気及び温度情報を読取値測定用コンピュータ3に送る。
【0022】
読取値測定用コンピュータ3は、読取値測定装置であり、第一送信部24から送信された撮像情報を取得する情報取得部31と、記憶部32と、目盛板傾き認識部33と、目盛板傾き認識部33で認識された傾きにおける指針13の読取値を認識する指針認識部34と、演算部35と、演算部35で演算された結果を表示部21で表示させるように表示駆動部22に信号を送る第二送信部36と、入力部37とを有する。入力部37は、読取値測定用コンピュータ3の操作に必要な情報を入力する他、記憶部32へ記憶する情報を入力する。
記憶部32は、対応関係記憶部321と、測定器1の機種毎に測定器1の目盛板12の正面に対する傾き角度αと測定値の許容範囲Wと関係を記憶する許容範囲記憶部322と、を有する。
【0023】
対応関係記憶部321は、目盛板12を正面視した場合の指針13が指す目盛の所定位置と、目盛板12の正面視に対して指針13の回動中心を含む所定線分を中心とした傾き角度αと、角度αを傾けた場合の指針13が指す目盛15の所定位置との関係を記憶する。目盛板12を正面視した場合の指針13が指す目盛15の位置と、目盛板12を正面視に対して角度αだけ傾けた場合の指針13が指す目盛15の位置とを、所定間隔毎、例えば、0.001MPa間隔毎に記憶する。さらに、傾き角度αに関して、目盛板12の正面視に対して指針13の回動中心を含む線分は、図1における上下だけでなく左右方向も含まれる。
例えば、目盛板12を正面視した場合の指針13が目盛の0.620MPaを指しており、目盛板12の正面視に対して指針13の回動中心を含む上下の線分を中心として角度αを傾けた場合に、指針13が0.618MPaを指したとすると(図1参照)、正面視での指針13が目盛15を指す位置、傾き角度α、角度αにおける指針13が目盛15を指す位置を対応関係記憶部321で記憶する。
目盛板12の大きさや目盛15の配置、測定レンジ等は、測定器1の機種毎に異なるので、機種と紐づけて、目盛板12を正面視した場合の指針13が指す目盛の所定位置と、目盛板12の正面視に対して指針13を傾けた角度αと、角度αを傾けた場合の指針13が指す目盛の所定位置との関係を予め求め、対応関係記憶部321で記憶する。
許容範囲記憶部322で記憶される測定器1の測定値の許容範囲Wは、上限値W1と下限値W2とで規定されるものであり(図1参照)、かつ、測定器1が設置されるプラント等により異なる。
【0024】
目盛板傾き認識部33は、情報取得部31で取得されたID情報16及び撮像情報に基づいて目盛板12の正面に対する傾き角度αを認識するものである。
目盛板傾き認識部33について、図3に基づき説明する。
図3において、目盛板12は、正面視から角度αだけ傾けて見た場合(図3(A)参照)と、正面視で見た場合(α=0、図3(B)参照)とでは、見え方が相違する。
【0025】
目盛板12のうち所定の目盛15に3点の円形の印33A,33B,333Cを設定する。3点の印33A,33B,33Cを結ぶ三角形33Tは、図3(A)に示される正面に対して斜めから見た場合では、図3(B)で示される正面視の場合に比べて、各辺の長さが変化する。例えば、印33Aと印33Bとの間(底辺)の長さをL1、印33Aと印33Cとの間(斜辺)の長さをL2、印33Bと印33Cとの間(斜辺)の長さをL3、三角形の高さをL4とすると、目盛板12を正面視から左右方向(水平方向)に対して斜めで見た場合は、高さL4は変化しないが、長さL1が変化する。目盛板12を正面から上下方向に対して斜めで見た場合は、長さL1は変化しないが、高さL4が変化する。これらの長さL1,L2,L3,L4の相対的な変化の割合と、目盛板12の傾き角度αとの関係を予め求めておき、対応関係記憶部321に記憶させておく。なお、3点の印33A,33B,33Cを円形としたが、四角形や三角形の形状でもよい。さらに、印は4点以上でもよい。印33A,33B,33Cに変えて、所定の目盛15を用いてもよい。
【0026】
図2において、指針認識部34は、仮想線設定部341と仮想線特定部342とを有する。
図4には指針認識部34を説明する概略構成が示されている。
図4において、仮想線設定部341は、円弧状部14に並んで配置された目盛15のうち隣合う目盛15の間に等間隔に仮想線343を複数本(例えば、隣合う目盛15を十等分するように目盛15の間に9本)を表示部21に表示させる。仮想線343は、指針13の回動中心に向け、かつ、その指針側の端部が指針13の先端に隠れる長さ、つまり、目盛15と同じ長さに設定される。なお、図4では、仮想線343は、目盛15との相違を分かりやすくするため、破線で示されているが、目盛15と同じ実線で表示されるものでもよい。
仮想線特定部342は、仮想線設定部341で設置された複数の仮想線343のうち指針13で隠れる仮想線343を特定するものであり、複数の仮想線343のうち指針13で隠れて長さが短くなった仮想線343を指針13が指している値として画像認識する。
【0027】
図2において、演算部35は、目盛板12の正面に対する傾き角度αに応じた正しい測定値を演算する測定値演算部351と、目盛板12の正面に対する傾き角度αに応じた正しい測定値の許容範囲Wを演算する許容範囲演算部352と、動画撮像時における測定値の最大値、最小値及び平均値の3値を演算する3値演算部353とを有する。
測定値演算部351は、情報取得部31で取得した撮像情報及びID情報16と、目盛板傾き認識部33で取得した目盛板12の傾き角度α、指針認識部34で取得した傾き角度αにおける指針13の位置、対応関係記憶部321で機種毎に記憶された測定器1の目盛板12の正面に対する傾き角度α、当該傾き角度αにおける指針13の読取値及び正しい測定値の対応関係から、目盛板12の正面に対する傾き角度αに応じた正しい測定値を演算する。測定値演算部351で演算された正しい測定値Xは、ID情報16とともに表示部21において、デジタル表示される(図1参照)。なお、測定値演算部351で演算された測定値は、図示しない演算値記憶部で一旦記憶させ、必要に応じて携帯型コンピュータ2の表示部21や読取値測定用コンピュータ3の図示しない表示部に、測定日時、測定器1のID情報16とともに表示させるようにしてもよい。
【0028】
許容範囲演算部352は、情報取得部31で取得した撮像情報及びID情報16と、目盛板傾き認識部33で取得した目盛板12の傾き角度α、指針認識部34で取得した傾き角度αにおける指針13の位置、許容範囲記憶部322で記憶された測定器1の目盛板12の正面に対する傾き角度αと測定値の許容範囲Wと関係に基づいて、許容範囲Wを目盛板12が角度αだけ傾いた状態の指針13が目盛15を指す位置を求める。
演算された結果の許容範囲Wは、表示駆動部22によって、表示部21に測定器1の目盛板12の上に重ねて表示される(図1参照)。
3値演算部353は、動画撮像部232から第一送信部24及び情報取得部31を介して送られた指針13の動画を所定時間毎の静止画に分割し、これらの静止画における測定値の最大値、最小値及び平均値のそれぞれの平均を演算する。演算結果は、表示駆動部22によって、表示部21に、例えば、デジタル表示される(図示せず)。
【0029】
次に、第1実施形態の読取表示方法を図5のフローチャートに基づいて説明する。
作業員は、製造ライン、工場内にある機種の異なる複数の測定器1を測定するにあたり、携帯型コンピュータ2を所持し、測定ルートに沿って巡回し、測定器1を測定する。
図5において、まず、作業員は、携帯型コンピュータ2を操作し、入力部20で静止画を撮像するか動画を撮像するかを選択する(S101)。圧力測定時において、指針13の振動が少ない場合には、作業員は静止画を選択する。
作業員は携帯型コンピュータ2の図示しないレンズを測定器1に向ける。すると、測定器1のID情報16と目盛板12及び指針13の静止画情報とが静止画撮像部231で取得され、静止画撮像部231で取得された測定器1のID情報16と目盛板12及び指針13の静止画情報とを、第一送信部24が読取値測定用コンピュータ3の情報取得部31に送る(S102)。
【0030】
情報取得部31で取得された測定器1のID情報16と目盛板12及び指針13の撮像情報から、目盛板12の正面に対する角度αと当該角度αにおける指針13の読取値とを機種に応じて目盛板傾き認識部33が認識する(S103)。
目盛板傾き認識部33で認識された目盛板12の角度αと読取値の情報と、対応関係記憶部321で機種毎に予め記憶された測定器1の目盛板12の正面に対する傾き角度α、当該傾き角度αにおける指針13の読取値及び正しい測定値の対応関係と、情報取得部31で取得された測定器1のID情報16と、に基づいて測定値演算部351が正しい測定値を演算する(S104)。
測定値演算部351で演算された正しい測定値を第二送信部36が携帯型コンピュータ2の表示駆動部22に送り、表示駆動部22が正しい測定値を表示部21にデジタル表示させる(S105)。さらに、許容範囲演算部352は、許容範囲Wを目盛板12が角度α傾いた状態での値を演算し(S106)、その演算した許容範囲Wを第二送信部36から信号を受けた表示駆動部22が表示部21に目盛板12と重ねて表示させる(S107)。
【0031】
一方、測定器1が接続されている配管10がポンプ等に連通されており、このポンプ等の影響により、指針13が所定の位置に一定せず、常に振動している場合には、作業員は、携帯型コンピュータ2を操作して入力部20で動画を選択する(S101)。
動画撮像部232で取得された動画情報を、第一送信部24が情報取得部31に送る(S108)。
情報取得部31で取得された測定器1のID情報16と目盛板12及び指針13の撮像情報から、目盛板12の正面に対する角度αと当該角度αにおける指針13の読取値とを機種に応じて目盛板傾き認識部33が認識する(S109)。
【0032】
目盛板傾き認識部33で認識された目盛板12の角度αと、角度αにおける読取値の情報と、情報取得部31から出力された動画情報とを3値演算部353が取得する。3値演算部353は、指針13の動画を所定時間毎の静止画に分割し、これらの静止画における測定値の最大値、最小値及び平均値のそれぞれの平均を演算する(S110)。
そして、演算結果を、表示駆動部22が表示部21に測定器1の目盛板12の上に重ねて表示させる(S111)。さらに、許容範囲演算部352は目盛板12が角度α傾いた状態での許容範囲Wの値を演算し(S106)、その演算した許容範囲Wを表示駆動部22が表示部21に目盛板12と重ねて表示させる(S107)。
このように1つの測定器1の測定が終了したら、作業員は次の測定器1のある場所に向かい、前述と同様の測定作業を行う。
【0033】
第1実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)読取表示システムは、携帯型コンピュータ2及び読取値測定用コンピュータ3を備え、携帯型コンピュータ2は、表示部21に測定値を表示させる表示駆動部22と、測定器1の目盛板12及び指針13とID情報16とを撮像する撮像部23と、撮像部23で撮像された撮像情報を送信する第一送信部24とを有し、読取値測定用コンピュータ3は、第一送信部24から送信された撮像情報を取得する情報取得部31と、測定器1の目盛板12の正面に対する傾き角度α、傾き角度αにおける指針13の読取値及び正しい測定値の対応関係を測定器1の機種毎に記憶する対応関係記憶部321と、情報取得部31で取得された撮像情報に基づいて目盛板12の正面に対する傾きを認識する目盛板傾き認識部33と、当該傾きにおける指針13の読取値を認識する指針認識部34と、情報取得部31、目盛板傾き認識部33、指針認識部34及び対応関係記憶部321に基づいて目盛板12の正面に対する傾き角度αに応じた正しい測定値を演算する測定値演算部351と、測定値演算部351で演算された正しい測定値を表示部21で表示させる信号を表示駆動部22に送る第二送信部36と、を有する。これにより、作業員は、手元にある携帯型コンピュータ2で、目盛板12の正面に対して傾いた状態で測定器1を撮像したとしても、測定器1の機種毎に正しい測定値が演算され、この演算値を表示部21で読み取ることができるから、測定作業を効率的に行える。
【0034】
(2)目盛板傾き認識部33は、目盛板12において指針13の回動中心を中心として円弧状に並んで配置された3点の印33A,33B,33Cに基づいて、目盛板12の傾きを認識するから、目盛板12の傾きを容易に認識することができる上、3点の印33A,33B,33Cの間で目盛15が欠けていたとしても、適正に目盛板12の傾き角を認識できるから、測定を正確に行える。
【0035】
(3)指針認識部34は、目盛板12の指針13が回動する領域に応じて複数の仮想線343を等間隔に設定する仮想線設定部341と、仮想線設定部341で設置された複数の仮想線343のうち指針13で隠れる仮想線343を特定する仮想線特定部342とを有するから、目盛板12に表示される目盛15の間隔が大きくても、目盛15を構成する複数の仮想線343のうち指針13で隠れる仮想線343の位置を割り出すことで、指針13を示す位置を正確に認識することができる。
【0036】
(4)測定器1の目盛板12の正面に対する傾き角度αと測定値の許容範囲との関係を記憶する許容範囲記憶部322と、目盛板12の正面に対する傾きに応じた正しい測定値の許容範囲を演算する許容範囲演算部352とを備え、第二送信部36は、許容範囲演算部352で演算された正しい測定値の許容範囲を測定器1の目盛板12の画像に重ねて表示部21で表示させる信号を表示駆動部22に送るから、測定値が正しい範囲にあるか否かを測定者は表示部21で表示された情報に基づいて直ちに認識することができることになり、測定作業の効率化が図れる。
【0037】
(5)測定値の最大値、最小値及び平均値を演算する3値演算部353を備え、撮像部23は、指針13の動画を撮像する動画撮像部232を有し、表示駆動部22は表示部21に3値演算部353で演算された測定値の最大値、最小値及び平均値を表示させるので、指針13の振動が大きく、目盛板12を目視しただけでは最大値、最小値及び平均値がわかりにくい場合でも、作業員が手元にある携帯型コンピュータ2でこれらの値を読み取ることができる。
【0038】
(6)携帯型コンピュータ2を保持し測定器1に係止するホルダ17を備えれば、補正の必要のない位置での撮像により、より正確な測定値を求めることができるとともに、手ぶれ等の撮像時に生じる不具合を回避することができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図6から図8に基づいて説明する。第2実施形態は、携帯型コンピュータ2に撮像誘導部25を設けた点、及び撮像部23を静止画撮像部231から構成した点が第1実施形態と異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
図6には、読取表示システムのブロック図が示されている。
図6において、携帯型コンピュータ2は、入力部20、表示駆動部22、撮像部23、第一送信部24及び撮像誘導部25を有する。
撮像部23は静止画撮像部231から構成されており、静止画撮像部231は、
入力部20は、第1実施形態とは異なり、静止画撮像部231と動画撮像部232との切換を行わない。
読取値測定用コンピュータ3は、情報取得部31、記憶部32、目盛板傾き認識部33、指針認識部34、演算部35、第二送信部36及び入力部37を有する。
【0041】
撮像誘導部25は、撮像位置を誘導する表示Sを表示部21に表示させる(図1参照)とともに、表示Sの全てが表示部21に表示された際に、当該画像情報を撮像部23に自動的に撮像させるものである。
撮像位置を誘導する表示Sを図7に基づいて説明する。図7は、測定器1と、測定器1を撮像する表示部21を有する携帯型コンピュータ2を示す。
【0042】
図7で示される通り、表示Sは、目盛板12を基に設定されたものであり、例えば、目盛板12の円弧状部14に対応した円として、あるいは、印33A,33B,33Cを円内に含む円として表示部21に表示される。
携帯型コンピュータ2で目盛板12の一部あるいは全部が映し出された際に、表示Sの一部あるいは全部が表示部21に表示される。表示Sの一部のみが表示部21に表示される場合には、作業員が表示部21に表示Sの全てが表示されるように、携帯型コンピュータ2の向き、姿勢、距離、ズーム、照明を調整する。表示部21に円の表示Sの全てが表示されたら、撮像部23に取り込まれた画像情報が自動的に撮像される。
なお、図7では、表示Sが円であるが、本実施形態では、表示Sは正方形、その他の形状であってもよい。
【0043】
次に、第2実施形態の読取表示方法を図8のフローチャートに基づいて説明する。
図8において、作業員は、第1実施形態と同様に、携帯型コンピュータ2の図示しないレンズを測定器1に向ける。
作業員が目盛板12に携帯型コンピュータ2のレンズを向けると、撮像誘導部25が携帯型コンピュータ2の表示部21に円形の表示Sを表示する(S201)。作業員によって、携帯型コンピュータ2の向きや姿勢が変わり、表示Sの全体が表示部21に表示されると(S202)、撮像誘導部252が静止画撮像部231にID情報16と静止画とを自動的に撮像させる(S203)。
【0044】
静止画撮像部231で撮像されたID情報16及び静止画を第一送信部24が情報取得部31に送る(S204)。
情報取得部31で取得されたID情報16、目盛板12及び指針13の撮像情報から、目盛板12の正面に対する角度αと当該角度αにおける指針13の読取値とを機種に応じて目盛板傾き認識部33が認識する(S205)。
目盛板傾き認識部33で認識された目盛板12の角度αと読取値の情報と、予め記憶された測定器1の目盛板12の正面に対する傾き角度α、指針13の読取値及び正しい測定値の対応関係と、情報取得部31で取得された測定器1のID情報16と、に基づいて測定値演算部351が正しい測定値を演算する(S206)。
正しい測定値を第二送信部36が携帯型コンピュータ2の表示駆動部22に送り、表示駆動部22が正しい測定値を表示部21にデジタル表示させる(S207)。さらに、許容範囲演算部352は、許容範囲Wを目盛板12が角度α傾いた状態での値を演算し(S208)、その演算した許容範囲Wを第二送信部36から信号を受けた表示駆動部22が表示部21に目盛板12と重ねて表示させる(S209)。
【0045】
第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(7)目盛板12を基に設定され撮像位置を誘導する表示Sが表示部21に表示された際に、撮像部23で自動的に撮像させる撮像誘導部25を備えている。そのため、撮像における角度補正を作業員が効率的に行うことができるから、コンピュータ処理の軽減と処理のスピードアップを図ることができる。
なお、第2実施形態において、撮像部23を動画撮像部232から構成してもよい。
【0046】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図9から図11に基づいて説明する。第3実施形態は、圧力値をデジタル表示する測定器4を測定するものである点で、第1実施形態と異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。第3実施形態の説明において、第1実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図9には第3実施形態にかかる読取表示システムの概略が示されている。
図9において、読取表示システムは、スマートフォン、タブレット端末等からなり測定器4からの情報を取得する携帯型コンピュータ5と、携帯型コンピュータ5と無線通信あるいはインターネット通信する読取値測定用コンピュータ6とを備える。
第3実施形態では、測定器4は、ケース41と、測定値を演算する演算部42と、演算部42で演算された測定値をデジタル表示するデジタル表示部43と、測定器4のID情報16を記憶するID情報記憶部44と、演算部42で演算された測定値とID情報記憶部44で記憶されたID情報16とを携帯型コンピュータ5に送信する送信部45とを備えた圧力計である。
ケース41の正面には、ID情報16が表示されている。なお、ID情報16がケース41に直接表示されるものの他、ICタグに記録したものでもよい。
【0048】
図10には、読取表示システムのブロック図が示されている。
図10において、携帯型コンピュータ5は、入力部20と、表示部21と、表示部21に測定値を表示させる表示駆動部22と、測定器4から送信された測定値XとID情報16とを取得する第一情報取得部51と、第一情報取得部51で取得された測定値X及びID情報16を読取値測定用コンピュータ6に送信する第一送信部52と、を有する。
【0049】
読取値測定用コンピュータ6は、第一送信部52から送信された測定値X及びID情報16を取得する第二情報取得部61と、ID情報16に基づき設定された測定値の許容範囲Wを記憶する許容範囲記憶部322と、第二情報取得部61で取得された測定値Xが測定値の許容範囲Wにあるか否かを判断する判断処理演算部62と、判断処理演算部62で判断された演算結果Y、測定器4の測定値X及び許容範囲Wを表示部21で表示させる信号を表示駆動部22に送る第二送信部36と、入力部37と、を有する。
入力部37は、読取値測定用コンピュータ6の操作に必要な情報を入力する他、許容範囲記憶部322へ記憶する情報を入力する。
【0050】
判断処理演算部62は、許容範囲記憶部322で記憶された測定値の許容範囲Wと第二情報取得部61で取得された測定値Xとを対比し、測定値Xが許容範囲Wにあるか否かを判断する。
第二送信部36は、判断処理演算部62で判断された演算結果Y、測定器1の測定値及び許容範囲Wを携帯型コンピュータ5の表示駆動部22に送る。
表示駆動部22は、表示部21に、測定値X、許容範囲W及び演算結果Yを表示部21に表示させる。ここで、許容範囲Wは、例えば、0.1≦P≦0.2のように表示され、演算結果Yは、例えば、測定値Xが許容範囲Wにある場合には「OK」の表示、許容範囲Wにない場合には「NO」の表示がされる。なお、第2実施形態では、演算結果Yを測定値Xとともに図示しない演算結果記憶部に一旦記憶させておき、必要に応じて、測定した年月日、ID情報16とともに表示部21に表示させるようにしてもよい。
【0051】
次に、第3実施形態の読取表示方法を図11に基づいて説明する。
図11において、まず、測定器4の送信部45から送信された測定値XとID情報16とを携帯型コンピュータ5の第一情報取得部51が取得する(S301)。
測定値X及びID情報16は第一送信部52に送られ、第一送信部52が読取値測定用コンピュータ6の第二情報取得部61に送る(S302)。
第二情報取得部61で取得されたID情報16に基づいて、第二情報取得部61で取得された測定値Xが許容範囲記憶部322で記憶された許容範囲Wにあるか否かを判断処理演算部62が判断する(S303)。
判断処理演算部62で判断された演算結果Yが許容範囲Wにある場合には演算結果としての「OK」の表示、測定器4の測定値X及び許容範囲Wを表示部21に表示させるように、第二送信部36が携帯型コンピュータ5の表示駆動部22に信号を送る(S304)。一方、判断処理演算部62で判断された演算結果Yが許容範囲Wにない場合には演算結果としての「NO」の表示、測定器4の測定値X及び許容範囲Wを表示部21に表示させるように、第二送信部36が表示駆動部22に信号を送る(S305)。
表示駆動部22が表示部21に測定値X、許容範囲W及び許容範囲か否かの演算結果Yを表示させる(S306)。
【0052】
従って、第3実施形態では、次の効果を奏することができる。
(8)読取表示システムは、携帯型コンピュータ5及び読取値測定用コンピュータ6を備え、携帯型コンピュータ5は、表示部21に測定値Xを表示させる表示駆動部22と、測定器4の測定値XとID情報16を取得する第一情報取得部51と、第一情報取得部51で取得された測定値X及びID情報16を送信する第一送信部52と、を有し、読取値測定用コンピュータ6は、第一送信部52から送信された測定値X及びID情報16を取得する第二情報取得部61と、ID情報16に基づき設定された測定値Xの許容範囲Wを記憶する許容範囲記憶部322と、第二情報取得部61で取得された測定値Xが許容範囲記憶部322で記憶された測定値の許容範囲Wにあるか否かを判断する判断処理演算部62と、判断処理演算部62で判断された演算結果Y、測定器4の測定値X及び許容範囲Wを表示部21で表示させる信号を表示駆動部22に送る第二送信部36と、を有する。そのため、測定値Xが許容範囲Wにあるか否かを、測定値X及びID情報16とともに手元の携帯型コンピュータ5でチェックすることができるので、測定作業が容易となる。
【0053】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、目盛板傾き認識部33は、目盛板12において指針13の回動中心を中心として円弧状に並んで配置された3点の印33A,33B,33Cに基づき、目盛板12の傾きを認識する構成としたが、本発明では、目盛板12の傾きを認識する構成は第1実施形態に限定されるものではなく、例えば、特許第4787584号公報に記載される通り、撮像した斜めの目盛板を円に補正する構成としてもよい。
【0054】
さらに、第1実施形態及び第2実施形態では、指針13が指す位置を認識するために、目盛板12の指針13が回動する領域に応じて複数の仮想線343を等間隔に設定する仮想線設定部341と、仮想線設定部341で設置された複数の仮想線343のうち指針13で隠れる仮想線343を特定する仮想線特定部342とを有する指針認識部34を備えたが、本発明では、特許第4787584号公報や特許第5775646号公報に記載される通り、指針の角度により認識するものでもよい。
【0055】
また、第1実施形態において、撮像誘導部25を設けるものでもよい。
第3実施形態では、測定器4は、測定値X及びID情報16を無線で携帯型コンピュータ5に送信したが、本発明では、有線で接続するものでもよい。
また、第3実施形態では、ID情報16及びデジタル表示された測定値を携帯型コンピュータ5の撮像部(図示せず)で撮像し、これらの撮像データを、第一送信部52を介して読取値測定用コンピュータ6に送る構成としてもよい。この構成では、ID情報記憶部44がない測定器4を測定することができる。
【0056】
前記各実施形態では、測定器1,4を圧力計としたが、本発明に適用できる測定器は圧力計に限定されるものではなく、プラント等に配置される配管に接続され配管内を流通する流体の物理量、例えば、差圧、温度、流量を測定するものに適用できる。
また、測定器1,4を圧力計とした場合、ブルドン管を有する機械的圧力計に圧力センサを組み入れた複合型装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,4…測定器、2,5…携帯型コンピュータ、3…読取値測定用コンピュータ(読取値測定装置)、6…読取値測定用コンピュータ、12…目盛板、13…指針、15…目盛、16…ID情報、21…表示部、22…表示駆動部、23…撮像部、231…静止画撮像部、232…動画撮像部、24,52…第一送信部、25…撮像誘導部、31…情報取得部、32…記憶部、321…対応関係記憶部、322…許容範囲記憶部、33…目盛板傾き認識部、34…指針認識部、341…仮想線設定部、342…仮想線特定部、35…演算部、351…測定値演算部、352…許容範囲演算部、353…3値演算部、36…第二送信部、51…第一情報取得部、61…第二情報取得部、62…判断処理演算部、X…測定値、W…許容範囲、Y…演算結果、S…表示
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