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特許6998186巻回装置、シートの巻回方法及び巻回素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】巻回装置、シートの巻回方法及び巻回素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/10 20060101AFI20220128BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220128BHJP
   B65H 23/032 20060101ALI20220128BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20220128BHJP
   H01G 13/02 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B65H18/10
H01M10/04 W
B65H23/032
H01M10/0587
H01G13/02 Z
H01G13/02 301Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017224129
(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公開番号】P2019094159
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】多賀 僚治
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191645(JP,A)
【文献】特開2006-059781(JP,A)
【文献】特開2001-176066(JP,A)
【文献】特開2012-046254(JP,A)
【文献】米国特許第05522785(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28
H01M 10/00-10/04
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/06-10/34
H01M 10/36-10/39
B65H 23/00-23/16
B65H 23/24-23/34
B65H 27/00
H01G 4/00-4/10
H01G 4/14-4/22
H01G 4/224
H01G 4/255-4/30
H01G 4/32-4/40
H01G 13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸にて回転可能であるとともに前記回転軸方向に沿って延びる可動芯片を備えてなる巻芯が回転することにより、前記巻芯に供給される帯状のシートを巻取り、前記シートが巻回されてなる巻回素子を製造するための巻回装置であって、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させるための傾斜手段を備え、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させることで、前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状を、先端側に向けて徐々に先細る形状と、先端側に向けて徐々に先太る形状とに変更可能に構成されていることを特徴とする巻回装置。
【請求項2】
前記シートは、金属シートであり、
前記巻芯へと供給される前記シートの幅方向の位置を検出するシート位置検出手段と、
前記シート位置検出手段による検出結果に基づき、前記シートの湾曲量を検出する湾曲量検出手段と、
電力が供給されることにより前記可動芯片を傾斜動作可能な駆動手段と、
前記湾曲量検出手段による検出結果に基づき前記駆動手段を制御することで、前記回転軸に対する前記可動芯片の傾斜角度を調節可能な傾斜角度制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項3】
前記巻芯は、前記回転軸方向に沿って延びるとともに、前記可動芯片と並んだ状態で設けられる固定芯片を具備し、
前記可動芯片は、前記固定芯片に対し接近及び離間する方向に沿って相対移動可能に構成され、
前記傾斜手段は、
前記固定芯片の内部において前記可動芯片の長手方向ほぼ全域に対応した状態で設けられるとともに、それぞれ回動軸から外周面までの距離が一定ではない第一カム部及び第二カム部を有してなる回動可能なカム軸と、
前記第一カム部の外周面に対し、前記相対移動方向に沿って前記可動芯片における先端側部位及び基端側部位のうちの一方を押付けるとともに、前記第二カム部の外周面に対し、前記相対移動方向に沿って前記可動芯片における先端側部位及び基端側部位のうちの他方を押付けた状態とする押圧手段とを備え、
前記駆動手段は、電力が供給されることで前記カム軸を回動させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の巻回装置。
【請求項4】
前記可動芯片は、前記固定芯片に対し平行な状態で配置可能に構成されており、
前記可動芯片及び前記固定芯片を平行とした状態においては、前記カム軸を一方側に回動させることで前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状が先端側に向けて徐々に先細る形状となり、前記カム軸を他方側に回動させることで前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状が先端側に向けて徐々に先太る形状となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の巻回装置。
【請求項5】
前記固定芯片に取付けられ、前記回転軸に対し傾斜可能であるとともに前記固定芯片に対し接近及び離間可能な状態で前記可動芯片を支持するガイドを備え、
前記ガイドは、前記回転軸方向に沿って、前記可動芯片のうち前記シートが巻回される部位から外れた位置に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の巻回装置。
【請求項6】
前記ガイドは、少なくとも前記可動芯片の先端部及び基端部に対応して設けられ、
前記ガイドにより、前記シートの巻回に伴い前記可動芯片に加わる、前記固定芯片に対し前記可動芯片が接近及び離間する方向と交差する方向に沿った巻き締め力に抗して前記可動芯片が支持されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の巻回装置。
【請求項7】
前記ガイドは、
前記固定芯片に対し前記可動芯片が接近及び離間する方向に沿って延びるとともに、直交する2つの平面で形成された溝を有するガイドロッドと、
交互に直交する状態で並べられた複数の回転可能なローラを有するスライドロッドとを備え、
前記溝に対し前記ローラが配置されてなるクロスローラガイドであり、
前記ガイドロッド及び前記スライドロッドは、前記回転軸方向に沿って並んだ状態で設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の巻回装置。
【請求項8】
前記駆動手段は、電力供給により回転する軸部を備えたモータであり、
前記軸部から前記カム軸に対する動力の伝達機構は、前記軸部の回転に伴い回転するウォームと、該ウォームに噛合された歯車とを備えていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項9】
前記駆動手段は、電力供給により回転する軸部を備えるとともに、電力の非供給時に前記軸部の回転を規制可能なブレーキ付きモータであることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項10】
前記駆動手段に対する電力供給は、前記巻芯の停止時のみに行われるように構成されていることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項11】
前記巻芯に対し接近及び離間可能に構成された電力供給用の通電端子と、
前記巻芯の基端側に設けられた接点部とを備え、
前記接点部に対し前記通電端子が接触することで、前記駆動手段に対し電力が供給されるように構成されていることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項12】
前記駆動手段は、前記巻芯の基端側にのみ設けられていることを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項13】
前記巻芯は、前記回転軸方向に沿って延びるとともに、前記可動芯片と並んだ状態で設けられる固定芯片を具備し、
前記巻芯の先端部には、前記巻芯の回転時に、所定の受け部によって支持される被支持部が設けられており、
前記被支持部は、前記固定芯片の先端部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項14】
前記巻芯は、前記シートが配置されるスリットを備え、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜した状態としても、前記スリットの大きさが一定に保たれるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項15】
前記傾斜手段は、前記可動芯片の前記回転軸方向に沿った中心部を回動可能な状態で支持する可動芯片支持部を備え、
前記中心部を回動中心として回動することにより前記回転軸に対し前記可動芯片が傾斜するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻回装置。
【請求項16】
所定の回転軸にて回転可能であるとともに前記回転軸方向に沿って延びる可動芯片を備えてなる巻芯により、供給される帯状のシートを巻取る際に用いられるシートの巻回方法であって、
前記可動芯片は、前記回転軸に対し傾斜可能であり、前記回転軸に対し傾斜することで、前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状を、先端側に向けて徐々に先細る形状と先端側に向けて徐々に先太る形状とに変更可能に構成されており、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させることで、前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状を、先端側に向けて徐々に先細る形状又は先端側に向けて徐々に先太る形状に変更する巻芯形状変更工程と、
前記巻芯形状変更工程の後、前記巻芯により前記シートを巻取る巻取工程とを含むことを特徴とするシートの巻回方法。
【請求項17】
前記シートは、金属シートであり、
前記巻芯へと供給される前記シートの幅方向の位置を検出するシート位置検出工程と、
前記シート位置検出工程による検出結果に基づき、前記シートの湾曲量を検出する湾曲量検出工程と、
前記湾曲量検出工程による検出結果に基づき、前記回転軸に対する前記可動芯片の傾斜角度を算出する傾斜角度算出工程とを含み、
前記巻芯形状変更工程では、前記傾斜角度算出工程により得られた傾斜角度に基づき前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させることを特徴とする請求項16に記載のシートの巻回方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のシートの巻回方法を用いて、前記シートが巻回されてなる巻回素子を製造することを特徴とする巻回素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二次電池等に内蔵される巻回素子を得るための巻回装置、電極シート等のシートの巻回方法、及び、巻回素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻回素子は、所定の帯状のシートが巻回されてなる。巻回素子としては、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池として用いられるものが知られている。この種の巻回素子は、正極活物質が塗布された正電極シートと、負極活物質が塗布された負電極シートと、両電極シートを絶縁するためのセパレータシートとが巻回されることにより製造される。
【0003】
巻回素子を製造するための巻回装置においては、ロール状に巻回された原反から供給される正電極シート等の各種シートがそれぞれ別個の搬送経路に沿って回転可能な巻芯へと搬送される。そして、巻芯の回転により、各種シートが重ね合わされた状態で巻回されることにより巻回素子が得られる。
【0004】
ところで、シート自体に、曲がり(反り)やよれといった形状不良が存在していることがある。すなわち、シートの幅方向端縁部が、シートの長手方向に対し平行な状態とならず、湾曲した状態となっていることがある。このような形状不良がシートに存在していると、得られた巻回素子においてシートの巻きずれ(蛇行)が生じてしまい、製品の品質低下を招いてしまうおそれがある。
【0005】
これに対し、例えば、シートにおける形状不良部分や当該部分を用いて得られた巻回素子を不良品として廃棄することが考えられる。しかし、この場合には、歩留まりが悪化してしまい、生産性の低下や製造コストの増大を招いてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、形状不良のあるシートを用いた場合であっても、得られる巻回素子で巻きずれが生じないようにすべく、巻芯よりも上流におけるシートの搬送経路に、シートの幅方向端縁部の位置を検出する検出手段と、当該検出手段による検出結果に基づき、シートの幅方向端縁部の位置を調節する補正手段とを設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-246212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、シートにおける形状不良の程度によっては、補正手段によってシートの幅方向端縁部の位置を調節しても、巻芯に巻き付いたときにシートの幅方向端縁部が所期の位置からずれた状態となってしまい、巻回素子に巻きずれが生じてしまうことがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートに形状不良が存在する場合であっても、得られる巻回素子における巻きずれの発生をより確実に防止できる巻回装置、シートの巻回方法及び巻回素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.所定の回転軸にて回転可能であるとともに前記回転軸方向に沿って延びる可動芯片を備えてなる巻芯が回転することにより、前記巻芯に供給される帯状のシートを巻取り、前記シートが巻回されてなる巻回素子を製造するための巻回装置であって、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させるための傾斜手段を備え、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させることで、前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状を、先端側に向けて徐々に先細る形状と、先端側に向けて徐々に先太る形状とに変更可能に構成されていることを特徴とする巻回装置。
【0012】
上記手段1によれば、傾斜手段によって巻芯の回転軸に対し可動芯片が傾斜可能となっており、可動芯片を傾斜させることによって、巻芯の形状を先端側に向けて先細る形状や、先端側に向けて先太る形状とすることができる。従って、例えば、巻芯の先端側に巻回されるシートの幅方向一端縁が、巻芯の基端側に巻回されるシートの幅方向他端縁よりも長くなるようにしてシートが湾曲している場合には、巻芯の形状を先太り形状とすることで、巻芯に巻き付いたときにシートの幅方向端縁部が所望の位置からずれてしまうことを抑制できる。一方、例えば、巻芯の基端側に巻回されるシートの幅方向他端縁が、巻芯の先端側に巻回されるシートの幅方向一端縁よりも長くなるようにしてシートが湾曲している場合には、巻芯の形状を先細り形状とすることで、巻芯に巻き付いたときにシートの幅方向端縁部が所望の位置からずれてしまうことを抑制できる。
【0013】
このように上記手段1によれば、シートに形状不良がある場合であっても、巻芯に巻き付いたときにシートの幅方向端縁部に位置ずれが生じてしまうことを効果的に抑制できる。そのため、得られる巻回素子における巻きずれの発生をより確実に防止できる。その結果、製品の品質を向上させることができるとともに、形状不良のあるシートを不良品として廃棄せずに済み、生産性の向上や製造コストの抑制を図ることができる。
【0014】
手段2.前記シートは、金属シートであり、
前記巻芯へと供給される前記シートの幅方向の位置を検出するシート位置検出手段と、
前記シート位置検出手段による検出結果に基づき、前記シートの湾曲量を検出する湾曲量検出手段と、
電力が供給されることにより前記可動芯片を傾斜動作可能な駆動手段と、
前記湾曲量検出手段による検出結果に基づき前記駆動手段を制御することで、前記回転軸に対する前記可動芯片の傾斜角度を調節可能な傾斜角度制御手段とを備えることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0015】
巻芯の形状変更を行うにあたっては、人手によって、シートの状態に合わせて巻芯を適切な形状に変更するといったことが考えられる。しかしながら、この場合には、形状変更のために人的資源を割かなければならず、また、装置を一時的に停止させる必要がある。さらに、適切な巻芯の形状を見つけるためには、巻芯の形状を調節した上で巻芯に対し実際にシートを巻き付け、シートの巻きずれが生じないか否かを確認するといった作業を、シートの巻きずれが生じないようになるまで繰り返し行う必要がある。すなわち、非常に面倒で、時間や手間のかかる作業を行う必要がある。加えて、シートの状態が変化すれば、このような作業を再度行う必要が生じる。従って、巻芯の形状変更を人手により行うことは、生産性の著しい低下を招いてしまい、ひいては製造コストの増大が招いてしまうおそれがある。
【0016】
この点、上記手段2によれば、傾斜角度制御手段や湾曲量検出手段などによって、シートの湾曲量に応じた適切な傾斜角度となるように可動芯片の傾斜が調節される。すなわち、シートの状態に合わせた巻芯の形状変更を自動的に行うことができる。そのため、巻芯の形状変更のために人的資源を割いたり、装置を一時的に停止させたりせずに済む。また、面倒で時間や手間のかかる作業を行う必要がなくなる。これらの結果、生産性を極めて効果的に高めることができ、ひいては製造コストの更なる低減を図ることができる。
【0017】
手段3.前記巻芯は、前記回転軸方向に沿って延びるとともに、前記可動芯片と並んだ状態で設けられる固定芯片を具備し、
前記可動芯片は、前記固定芯片に対し接近及び離間する方向に沿って相対移動可能に構成され、
前記傾斜手段は、
前記固定芯片の内部において前記可動芯片の長手方向ほぼ全域に対応した状態で設けられるとともに、それぞれ回動軸から外周面までの距離が一定ではない第一カム部及び第二カム部を有してなる回動可能なカム軸と、
前記第一カム部の外周面に対し、前記相対移動方向に沿って前記可動芯片における先端側部位及び基端側部位のうちの一方を押付けるとともに、前記第二カム部の外周面に対し、前記相対移動方向に沿って前記可動芯片における先端側部位及び基端側部位のうちの他方を押付けた状態とする押圧手段とを備え、
前記駆動手段は、電力が供給されることで前記カム軸を回動させるように構成されていることを特徴とする手段2に記載の巻回装置。
【0018】
上記手段3によれば、カム軸は、回動軸から外周面までの距離が一定ではない第一カム部及び第二カム部を有しており、第一カム部の外周面に対し可動芯片の先端側部位及び基端側部位のうちの一方が押付けられ、第二カム部の外周面に対し可動芯片の先端側部位及び基端側部位のうちの他方が押付けられた状態とされている。そのため、カム軸を回動させることにより、可動芯片のうち両カム部に押付けられる部位の位置を変動させることができ、ひいては可動芯片を傾斜させることができる。従って、巻芯形状を先細り形状や先太り形状に比較的容易に変更することができる。また、カム軸の回動により、可動芯片の先端側部位及び基端側部位のうちの一方だけでなく、両者の位置をそれぞれ変更することができる。そのため、例えば、可動芯片の傾斜角度に関する設定可能範囲をより拡大するといったこと等も可能となる。
【0019】
さらに、上記手段3によれば、可動芯片の先端側部位及び基端側部位は、それぞれ第一カム部又は第二カム部に押付けられた状態とされている。従って、カム軸によって可動芯片を非常に安定した状態で支持することができ、シートの巻回に伴い巻芯に対し巻き締め力が加わったときに、可動芯片に変形(撓みや捻りなど)が生じてしまうことをより確実に防止できる。これにより、巻芯の形状をより確実に一定に保つことができる。
【0020】
また、上記手段3によれば、固定芯片は、カム軸を内部に収容可能な程度の大きさのものであればよい。従って、巻芯の形状変更機能を実現しつつ、巻芯の小型化を図ることができる。
【0021】
さらに、カム軸に可動芯片が押付けられる構造であるため、カム軸が回動しない限り、巻芯の形状が変化することはない。すなわち、上記手段3によれば、時間経過に伴い巻芯の形状が変化するといった事態は生じない。そのため、駆動手段に対し電力を随時供給する等、巻芯の形状を一定に維持するための工程を特段行う必要がなくなり、生産性をより向上させることができる。
【0022】
手段4.前記可動芯片は、前記固定芯片に対し平行な状態で配置可能に構成されており、
前記可動芯片及び前記固定芯片を平行とした状態においては、前記カム軸を一方側に回動させることで前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状が先端側に向けて徐々に先細る形状となり、前記カム軸を他方側に回動させることで前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状が先端側に向けて徐々に先太る形状となるように構成されていることを特徴とする手段3に記載の巻回装置。
【0023】
上記手段4によれば、カム軸を一方側に回動させることで巻芯を先細り形状とすることができ、カム軸を他方側に回動させることで巻芯を先太り形状とすることができる。従って、カム軸の回動方向と巻芯の形状変化との関係が分かりやすいものとなり、巻芯の形状変更に関する調節や設定などをより容易に行うことが可能となる。
【0024】
手段5.前記固定芯片に取付けられ、前記回転軸に対し傾斜可能であるとともに前記固定芯片に対し接近及び離間可能な状態で前記可動芯片を支持するガイドを備え、
前記ガイドは、前記回転軸方向に沿って、前記可動芯片のうち前記シートが巻回される部位から外れた位置に設けられることを特徴とする手段3又は4に記載の巻回装置。
【0025】
可動芯片のうちシートが巻回される部位は、特に剛性を確保すべき部位であり、剛性を確保するために例えば厚肉とされる。従って、このような部位に対応してガイドを設けると、巻芯の大型化(大径化)を招いてしまうおそれがある。
【0026】
この点、上記手段5によれば、ガイドは、可動芯片におけるシートが巻回される部位から外れた位置に設けられている。従って、巻芯の大型化(大径化)を抑えることができ、巻芯の小型化をより確実に図ることができる。
【0027】
手段6.前記ガイドは、少なくとも前記可動芯片の先端部及び基端部に対応して設けられ、
前記ガイドにより、前記シートの巻回に伴い前記可動芯片に加わる、前記固定芯片に対し前記可動芯片が接近及び離間する方向と交差する方向に沿った巻き締め力に抗して前記可動芯片が支持されるように構成されていることを特徴とする手段5に記載の巻回装置。
【0028】
上記手段6によれば、ガイドによって、巻き締め力に抗して可動芯片が支持される。従って、巻き締め力による可動芯片の変形(撓みや捻りなど)や傾斜角度の増減を一層確実に防止することができ、巻芯の形状をより確実に一定に維持することができる。
【0029】
手段7.前記ガイドは、
前記固定芯片に対し前記可動芯片が接近及び離間する方向に沿って延びるとともに、直交する2つの平面で形成された溝を有するガイドロッドと、
交互に直交する状態で並べられた複数の回転可能なローラを有するスライドロッドとを備え、
前記溝に対し前記ローラが配置されてなるクロスローラガイドであり、
前記ガイドロッド及び前記スライドロッドは、前記回転軸方向に沿って並んだ状態で設けられていることを特徴とする手段5又は6に記載の巻回装置。
【0030】
上記手段7によれば、ガイドとして、ガイドロッド及びスライドロッドが巻芯の回転軸方向に沿って並ぶようにして配置されたクロスローラガイドが利用される。そのため、巻芯の回転軸と直交する方向、すなわち、巻芯の径方向に沿ったガイドの厚さをより小さなものとすることができる。これにより、巻芯の小型化をより効果的に図ることができる。
【0031】
手段8.前記駆動手段は、電力供給により回転する軸部を備えたモータであり、
前記軸部から前記カム軸に対する動力の伝達機構は、前記軸部の回転に伴い回転するウォームと、該ウォームに噛合された歯車とを備えていることを特徴とする手段3乃至7のいずれかに記載の巻回装置。
【0032】
上記手段8によれば、軸部を回転させたときに、ウォーム及び歯車を介して、軸部からカム軸へと動力を安定的に伝達することができる。その一方、何らかの理由によりカム軸に対しその回動方向の力が加わったとしても、ウォーム及び歯車(つまりウォームギア)によるセルフロックによって、歯車の回転を規制することができ、ひいてはカム軸をロックした状態で維持することができる。これにより、カム軸の意図しない回動を効果的に抑制することができ、ひいては巻芯形状の意図しない変化をより確実に防止することができる。
【0033】
また、上記手段8によれば、ウォームから歯車に対し、回転数を減じつつ動力を伝達するように構成することで、歯車の回転角度ひいてはカム軸の回動角度を微調整することができる。これにより、可動芯片の傾斜角度を微調整することができ、巻芯形状のより細かな変更が可能となる。
【0034】
手段9.前記駆動手段は、電力供給により回転する軸部を備えるとともに、電力の非供給時に前記軸部の回転を規制可能なブレーキ付きモータであることを特徴とする手段3乃至8のいずれかに記載の巻回装置。
【0035】
尚、上記手段8,9における軸部はそれぞれ同じものを指す。
【0036】
上記手段9によれば、駆動手段としてブレーキ付きモータを用いているため、電力の非供給時、すなわち、電力の供給により巻芯の形状を変更するとき以外における軸部の回転を規制することができる。従って、巻回時の振動などにより軸部が回転してしまうことをより確実に防止でき、巻芯の形状が意図せず変化することをより確実に防止できる。
【0037】
尚、「ブレーキ付きモータ」は、無励磁作動型のものであり、例えば、所定のブレーキライニングと、所定のバネによって前記ブレーキライニング側に向けて付勢されたアーマチュアと、通電に伴い、バネによる付勢力に抗してアーマチュアをブレーキライニングから遠ざけるように移動させるコイルとを備えたものを挙げることができる。この「ブレーキ付きモータ」においては、モータに対する電力の供給時に、通電したコイルによりアーマチュアが引かれ、アーマチュア及びブレーキライニング間にギャップが形成されることにより、軸部が回転可能な状態となる。一方、モータに対する電力の非供給時には、バネによってブレーキライニングに対しアーマチュアが押付けられることで、軸部の回転が規制された状態となる。
【0038】
手段10.前記駆動手段に対する電力供給は、前記巻芯の停止時のみに行われるように構成されていることを特徴とする手段2乃至9のいずれかに記載の巻回装置。
【0039】
上記手段10によれば、駆動手段に対する電力供給、すなわち、巻芯の形状変更は、巻芯の停止時(非回転時)のみに行われる。従って、巻芯の回転時に駆動手段へと電力を供給するための複雑な装置(例えば、スリップリング等)を設ける必要がない。これにより、装置の簡素化を図ることができ、装置の製造等に係るコストの低減を図ることができる。
【0040】
手段11.前記巻芯に対し接近及び離間可能に構成された電力供給用の通電端子と、
前記巻芯の基端側に設けられた接点部とを備え、
前記接点部に対し前記通電端子が接触することで、前記駆動手段に対し電力が供給されるように構成されていることを特徴とする手段2乃至10のいずれかに記載の巻回装置。
【0041】
上記手段11によれば、駆動手段に対する電力の供給機構を非常に簡素な構成により実現することができる。これにより、装置の製造等に係るコストの低減をより効果的に図ることができる。
【0042】
手段12.前記駆動手段は、前記巻芯の基端側にのみ設けられていることを特徴とする手段2乃至11のいずれかに記載の巻回装置。
【0043】
上記手段12によれば、駆動手段は巻芯の基端側にのみ設けられている。これにより、装置の小型化や装置の製造等に係るコストの低減を一層効果的に図ることができる。
【0044】
手段13.前記巻芯は、前記回転軸方向に沿って延びるとともに、前記可動芯片と並んだ状態で設けられる固定芯片を具備し、
前記巻芯の先端部には、前記巻芯の回転時に、所定の受け部によって支持される被支持部が設けられており、
前記被支持部は、前記固定芯片の先端部に設けられていることを特徴とする手段1乃至12のいずれかに記載の巻回装置。
【0045】
尚、上記手段3及び上記手段13における固定芯片は同じものを指し、上記手段3に従属する上記手段13において、固定芯片が複数存在することを意図したものではない。
【0046】
上記手段13によれば、被支持部は固定芯片の先端部に設けられているため、巻芯の形状を変更すべく可動芯片を傾斜させたときに、可動芯片の傾斜に合わせて被支持部が移動してしまうといった事態は生じない。従って、受け部によって被支持部を安定した状態で支持することができる。また、被支持部の位置変化に合わせて、受け部の位置を調節したり、受け部を交換したりするといったことは不要となる。そのため、装置の簡素化をより図ることができる。また、メンテナンス等をより容易に行うことが可能となる。
【0047】
手段14.前記巻芯は、前記シートが配置されるスリットを備え、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜した状態としても、前記スリットの大きさが一定に保たれるように構成されていることを特徴とする手段1乃至13のいずれかに記載の巻回装置。
【0048】
上記手段14によれば、可動芯片を傾斜した状態としても、スリットの大きさは、変わることなく一定に保たれる。従って、スリットに対するシートの配置に支障が生じてしまうことをより確実に防止でき、装置の動作安定性をより高めることができる。
【0049】
手段15.前記傾斜手段は、前記可動芯片の前記回転軸方向に沿った中心部を回動可能な状態で支持する可動芯片支持部を備え、
前記中心部を回動中心として回動することにより前記回転軸に対し前記可動芯片が傾斜するように構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の巻回装置。
【0050】
上記手段15によれば、傾斜手段を簡素な構成により実現することができ、装置の製造等に係るコストの低減を図ることができる。
【0051】
また、上記手段15によれば、所定サイズの巻回素子を得るべく、巻芯の前記中心部に対応する部位の周長を所定長さとしてシートの巻取りを行う場合において、シートの状態に応じて巻芯形状を変更したときに、基準となる巻芯の前記中心部に対応する部位の周長を変化させずに済む。また、巻芯における前記中心部に対応する部位とその他の部位との周長差を小さなものとすることができる。そのため、巻芯の形状を変更した場合であっても、所望するサイズの巻回素子をより確実にかつより容易に得ることが可能になり、巻回素子の製造に係る利便性を高めることができる。
【0052】
手段16.所定の回転軸にて回転可能であるとともに前記回転軸方向に沿って延びる可動芯片を備えてなる巻芯により、供給される帯状のシートを巻取る際に用いられるシートの巻回方法であって、
前記可動芯片は、前記回転軸に対し傾斜可能であり、前記回転軸に対し傾斜することで、前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状を、先端側に向けて徐々に先細る形状と先端側に向けて徐々に先太る形状とに変更可能に構成されており、
前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させることで、前記巻芯のうち前記シートの巻回される部位の形状を、先端側に向けて徐々に先細る形状又は先端側に向けて徐々に先太る形状に変更する巻芯形状変更工程と、
前記巻芯形状変更工程の後、前記巻芯により前記シートを巻取る巻取工程とを含むことを特徴とするシートの巻回方法。
【0053】
上記手段16によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることになる。
【0054】
手段17.前記シートは、金属シートであり、
前記巻芯へと供給される前記シートの幅方向の位置を検出するシート位置検出工程と、
前記シート位置検出工程による検出結果に基づき、前記シートの湾曲量を検出する湾曲量検出工程と、
前記湾曲量検出工程による検出結果に基づき、前記回転軸に対する前記可動芯片の傾斜角度を算出する傾斜角度算出工程とを含み、
前記巻芯形状変更工程では、前記傾斜角度算出工程により得られた傾斜角度に基づき前記回転軸に対し前記可動芯片を傾斜させることを特徴とする手段16に記載のシートの巻回方法。
【0055】
上記手段17によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏されることになる。
【0056】
手段18.手段16又は17に記載のシートの巻回方法を用いて、前記シートが巻回されてなる巻回素子を製造することを特徴とする巻回素子の製造方法。
【0057】
上記手段18によれば、上記手段1等と同様の作用効果が奏されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】電池素子の概略構成を示す斜視模式図である。
図2】湾曲した電極シートを示す拡大平面模式図である。
図3】巻回装置の概略構成図である。
図4】巻回部の概略構成図である。
図5】巻芯の断面模式図である。
図6】第一芯片の斜視模式図である。
図7】可動芯片の一部を省略した第一芯片の斜視模式図である。
図8】固定芯片の一部を省略した第一芯片の斜視模式図である。
図9】可動芯片等を固定芯片から分離させた状態における第一芯片の斜視模式図である。
図10】ガイドを示すための第一芯片の拡大断面模式図である。
図11】ガイドの斜視模式図である。
図12】カム軸などの斜視模式図である。
図13図12のJ-J線断面図である。
図14図12のK-K線断面図である。
図15】アクチュエータやウォームギア等の斜視模式図である。
図16】巻芯を先細り形状としたときにおける第一芯片の平面模式図である。
図17】巻芯を先太り形状としたときにおける第一芯片の平面模式図である。
図18】補正角度・供給電力決定工程のフローチャートである。
図19】シート位置検出工程のフローチャートである。
図20】形状変更・巻取工程のフローチャートである。
図21】巻芯形状変更工程のフローチャートである。
図22】巻取工程のフローチャートである。
図23】巻芯の形状を変更する際における巻回部の概略構成図である。
図24】スリットにセパレータシートを配置する際の巻回部の概略構成図である。
図25】ターレットを回転させた後の巻回部の概略構成図である。
図26】巻芯からの電池素子の取外時において、巻芯の周長を減少させる場合の巻回部の概略構成図である。
図27】別の実施形態において、固定芯片の一部を省略した第一芯片の斜視模式図である。
図28】別の実施形態において、固定芯片の一部を省略した第一芯片の平面模式図である。
図29】別の実施形態において、固定芯片の一部を省略した第一芯片の斜視模式図である。
図30】別の実施形態において、可動芯片支持部等を示すための第一芯片の拡大断面模式図である。
図31】別の実施形態における巻芯の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、巻回装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0060】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。本実施形態では、セパレータシート2,3及び両電極シート4,5がそれぞれシートに相当する。尚、2枚のセパレータシート2,3に代えて、折返された1枚のセパレータシートを用いてもよい。また、以下においては、説明の便宜上、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を「各種シート2~5」と称することがある。
【0061】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
【0062】
電極シート4,5は、薄板状の金属シートからなり、セパレータシート2,3と略同一の幅を有している。また、電極シート4,5の表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。
【0063】
加えて、本実施形態では、電池素子1ひとつを構成する両電極シート4,5の長さはそれぞれ予め設定された一定の所定値とされている。本実施形態において、一素子分の負電極シート5の長さは、負電極シート5で正電極シート4をより確実に覆うべく、一素子分の正電極シート4の長さよりも若干大きなものとされている。
【0064】
さらに、正電極シート4の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート5の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
【0065】
リチウムイオン電池を得るに際しては、電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、前記正極リード及び負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0066】
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。図3に示すように、巻回装置10は、各種シート2~5を巻回するための巻回部11と、正電極シート4を巻回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を巻回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ巻回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、制御装置91とを備えている。尚、上記巻回部11や各供給機構31,41,51,61など、巻回装置10内の各種機構は、制御装置91により動作制御される構成となっている。
【0067】
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に巻回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、正電極シート4が引き出されることとなる。
【0068】
尚、正電極シート原反32を構成する正電極シート4には、図2に示すように、曲がり(反り)やよれといった形状不良が存在しており、正電極シート4の幅方向端縁部が、正電極シート4の長手方向に対し湾曲した状態となっていることがある。この点は、負電極シート5においても同様である。尚、図2では、幅方向端縁部が実際よりも極端に湾曲した状態の正電極シート4を示している。
【0069】
図3に戻り、正電極シート供給機構31は、シート挿入機構71と、シート切断カッタ72と、テンション付与機構73と、バッファ機構75と、シート位置検出手段としてのエッジセンサ77とを備えている。
【0070】
シート挿入機構71は、正電極シート4を巻回部11へ供給するものであり、正電極シート4の搬送経路に沿って、巻回部11に接近する接近位置と、巻回部11から離間する離間位置とに移動可能に構成されている。シート挿入機構71は、正電極シート4を把持可能な一対のチャック71a,71bを備えている。チャック71a,71bは、図示しない駆動部により開閉動作可能に構成されている。そして、正電極シート4を巻回部11へ供給する際には、チャック71a,71bにより正電極シート4を把持した上で、シート挿入機構71が巻回部11に対し接近するようになっている。
【0071】
シート切断カッタ72は、正電極シート4を切断するためのものであり、正電極シート4の表裏両側にそれぞれ位置する一対の刃部72a,72bを備えている。シート切断カッタ72は、その一対の刃部72a,72bが正電極シート4を挟むように位置するシート切断位置と、正電極シート4の搬送経路外へ退避する退避位置との間を移動可能に構成されている。
【0072】
尚、正電極シート4の切断は、前記チャック71a,71bにより正電極シート4が把持された状態で行われるようになっている。また、巻回部11へと正電極シート4を供給すべく、シート挿入機構71が巻回部11へ接近移動する際には、一対の刃部72a,72bがそれぞれ正電極シート4の搬送経路から離間することで、シート挿入機構71の移動を阻害しないようになっている。
【0073】
テンション付与機構73は、一対のローラ73a,73bと、両ローラ73a,73b間において揺動自在に設けられたダンサローラ73cとを有している。ダンサローラ73cは、トルク制御された所定のサーボモータ(図示せず)により動作し、制御装置91により前記サーボモータが制御されることで、正電極シート4に付与される張力を変更可能に構成されている。また、ダンサローラ73cは、正電極シート4に張力を付与することで、正電極シート4の弛みを防止する役割も果たす。尚、本実施形態では、テンション付与機構73によって、正電極シート4に対し常に一定の張力が付与されるようになっている。
【0074】
バッファ機構75は、一対の従動ローラ75a,75bと、両ローラ75a,75b間において上下方向に変位可能に設けられた昇降ローラ75cとを有している。バッファ機構75を設けることにより、シート切断カッタ72からエッジセンサ77までの間において、少なくとも電池素子1ひとつ分を構成する長さの正電極シート4が貯留可能となっている。
【0075】
エッジセンサ77は、例えば、レーザー式又は超音波式などのエッジ検出センサにより構成されており、正電極シート原反32から供給される正電極シート4の幅方向の位置を検出するものである。エッジセンサ77は、正電極シート原反32の下流において、正電極シート4の裏表両側にそれぞれ位置している。エッジセンサ77は、正電極シート4の幅方向一端縁の位置を検出するとともに、検出した幅方向の位置を制御装置91へと出力する。幅方向の位置の検出及び出力に係る処理は、巻回部11に対する一素子分の正電極シート4の供給開始から供給終了までの間において、所定時間(例えば、数ms)毎に繰り返し行われる。
【0076】
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に巻回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、負電極シート5が引き出されることとなる。
【0077】
また、負電極シート原反42から巻回部11にかけての負電極シート5の搬送経路の途中には、正電極シート4の搬送経路と同様に、シート挿入機構71、シート切断カッタ72、テンション付与機構73、バッファ機構75及びエッジセンサ77などが設けられている。これらは、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート4の搬送経路に設けられたものと同様である。従って、これらについての詳細な説明は省略する。
【0078】
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に巻回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、セパレータシート2,3が引き出されることとなる。
【0079】
さらに、セパレータ供給機構51,61は、電極シート供給機構31,41と同様に、テンション付与機構73を備えている。これは、セパレータシート2,3を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。従って、これについての詳細な説明は省略する。
【0080】
また、各種シート2~5の搬送経路の途中には、各種シート2~5をひとまとめにする一対のガイドローラ78a,78bなど、各種シート2~5を案内するための各種ガイドローラ(符号略)が設けられている。
【0081】
次に、巻回部11の構成について説明する。図4に示すように、巻回部11は、図示しない駆動部により回転可能に設けられた相対向する2枚の円盤状のテーブルからなるターレット12と、当該ターレット12の回転方向に180度間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、当該巻芯13,14に対しそれぞれターレット12の回転方向にほぼ90度ずつずれた位置に設けられた2つの支持ローラ15a,15bと、セパレータカッタ16と、巻回終了直前の各種シート2~5を押さえるための押えローラ17と、所定の固定用テープを貼付するためのテープ貼付機構18と、通電端子19とを備えている。
【0082】
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周において各種シート2~5を巻取るためのものであり、図示しない駆動部により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯13,14の回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、当該エンコーダから回転量に関する情報が制御装置91へと入力されるようになっている。
【0083】
また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(図4の紙面奥行方向)に沿って、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に設けられている。尚、巻芯13,14は、前記一方のテーブルから突出した状態となったときに、その先端部が他方のテーブルに形成された受け用の穴に挿通され、両テーブルによって回転可能な状態で支持されるようになっている。本実施形態では、他方のテーブルにおける前記受け用の穴を形成する部位が、後述する被支持部85を支持するための受け部に相当する。
【0084】
さらに、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、巻回ポジションP1と、取外しポジションP2との間を旋回移動可能に構成されている。
【0085】
巻回ポジションP1は、巻芯13,14に対し各種シート2~5を巻回するポジションであり、当該巻回ポジションP1に対し上記各供給機構31,41,51,61から各種シート2~5が供給されることとなる。
【0086】
取外しポジションP2は、巻回後の各種シート2~5、すなわち電池素子1の取外しを行うためのポジションである。取外しポジションP2の周辺部には、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(不図示)等が設けられている。
【0087】
支持ローラ15a,15bは、取外しポジションP2へ移動した巻芯13,14と上記供給機構31,41,51,61との間でセパレータシート2,3を引っ掛け、支持するためのものである。
【0088】
セパレータカッタ16は、巻回ポジションP1の近傍に配置されており、ターレット12に接近しセパレータシート2,3を切断する切断位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能である。
【0089】
押えローラ17は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、ターレット12に接近し各種シート2~5を押さえる近接位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0090】
テープ貼付機構18は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、巻回終了時に、ターレット12に接近し、セパレータシート2,3の終端部に所定の固定用テープを貼付する機能を備えている。
【0091】
通電端子19は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、取外しポジションP2に配置された巻芯13(14)に接近する接近位置と、当該巻芯13(14)から離間し巻芯13(14)の移動を妨げない退避位置との間で移動可能である。
【0092】
また、通電端子19は、一対の端子19a,19bによって構成されており(図6参照)、両端子19a,19bは、通電端子19の移動方向に沿って圧縮変形可能となっている。さらに、一方の端子19aは、所定の電源に接続されており、他方の端子19bはアースに接続されている。前記電源から通電端子19へと供給される電力は、制御装置91によって制御されるようになっている。
【0093】
次いで、本実施形態における巻芯13,14のより詳細な構成について説明する。
【0094】
図5に示すように、巻芯13(14)は、その外周面、つまり、各種シート2~5が巻回される部位が、自身の中心軸(回転軸)と直交する断面において楕円形状をなすように構成されている。巻芯13(14)は、第一芯片131(141)及び第二芯片132(142)を備えている。尚、図5では、第一芯片131(141)を特に簡略化した状態で示しており、実際の第一芯片131(141)は、図9等にて示すように種々の部品を備えている。
【0095】
第一芯片131(141)及び第二芯片132(142)は、巻芯13(14)の回転軸方向に沿って延びており、前記回転軸と直交する方向に並んだ状態で設けられている。また、各芯片131,132(141,142)間には、前記回転軸と直交する方向に延びるスリット133(143)が形成されている。
【0096】
さらに、図6に示すように、第一芯片131(141)における基端側には、支持部134(144)が直列的に連結されている。支持部134(144)は、第一芯片131(141)を支持する部位であり、本実施形態では、後述する固定芯片81を支持している。支持部134(144)は、機械的強度に優れる金属により形成されており、第一芯片131(141)を強固に支持可能となっている。これにより、巻芯13,14に対し各種シート2~5を巻回している際などに、巻芯13,14の撓みや傾きをより確実に防止することができるようになっている。尚、本実施形態において、支持部134,144は、断面半楕円形状をなしているが、巻芯13,14を強固に支持可能である限り、その形状は適宜変更可能である。また、図示は省略するが、支持部134,144と同様の部品によって、第二芯片132,142も支持された状態となっている。
【0097】
加えて、支持部134(144)の外表面には、巻芯13(14)の回転軸方向に沿って並んで配置された一対の接点部135(145)が設けられている。接点部135(145)は、導電性材料により形成されており、前記通電端子19の各端子19a,19bとの接触部を構成している。接点部135(145)は、所定の導電線を介して後述するアクチュエータ843と電気的に接続された状態となっている。そして、接点部135(145)に対し通電端子19を接触させることで、アクチュエータ843へと電力を供給し、アクチュエータ843を動作させることができるようになっている。
【0098】
続いて、第一芯片131,141及び第二芯片132,142のより詳細な構成について説明する。まず、第一芯片131,141の構成について説明する。
【0099】
第一芯片131(141)は、図6~9に示すように、固定芯片81と、可動芯片82と、ガイド83と、傾斜手段としての傾斜変更機構84とを備えている。尚、図7では、可動芯片82の一部を省略しており、図8では、固定芯片81の一部(特に後述する第一被巻回部812やブッシュ部813)を省略している。また、図9では、ガイド83の存在などを明確に示すべく、可動芯片82等を固定芯片81から分離させた状態を示している。
【0100】
固定芯片81は、全体として巻芯13,14の回転軸方向に延びる棒状をなしており、ベース部811と、第一被巻回部812と、ブッシュ部813とを備えている。
【0101】
ベース部811は、第一芯片131のベース(土台)となる部位であり、全体として平板状をなしている。ベース部811のうち第二芯片132,142側に位置する平坦面は、第二芯片132,142との間で前記スリット133,143を形成している。また、ベース部811における第一被巻回部812の連結部分とは反対側には、後述するばね842を支持するための支持突起811aが複数形成されている。
【0102】
第一被巻回部812は、巻芯13,14の外周面を構成する湾曲板状部位であり、各種シート2~5の巻回される部位である。第一被巻回部812は、ベース部811のその幅方向端縁部に連なっており、第一被巻回部812とベース部811との間には、巻芯13,14の回転軸方向に延びる空間が形成されている。当該空間は、ブッシュ部813や後述するカム軸841を配置するための空間である。
【0103】
ブッシュ部813は、円筒状をなし、カム軸841を回動可能な状態で支持するためのものである。ブッシュ部813は、前記空間内において第一被巻回部812に固定されており、巻芯13,14の回転軸方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。ブッシュ部813は、例えば、摩擦係数の低い所定の樹脂により形成された樹脂ブッシュで構成されている。尚、巻芯13,14の長さに応じて、ブッシュ部813の数を適宜変更してもよい。
【0104】
可動芯片82は、全体として巻芯13,14の回転軸方向に延びる棒状をなしており、固定芯片81と並んだ状態で設けられている。可動芯片82は、第二被巻回部821及び加圧接触部822を備えている。
【0105】
第二被巻回部821は、巻芯13,14の外周面を構成する湾曲板状部位であり、第二被巻回部821におけるその両端側部位を除いた部位に対し、各種シート2~5が巻回されるようになっている。第二被巻回部821は、ベース部811のうち第一被巻回部812で覆われていない部位を覆うようにして設けられている。また、第二被巻回部821のうち特に各種シート2~5の巻回される部位は、十分な肉厚を有するように構成されている。これにより、第二被巻回部821のうち各種シート2~5の巻回される部位は、十分な剛性を持つものとなっている。
【0106】
加圧接触部822は、カム軸841に対し押付けられる部位であり、カム軸841と接触する部位は湾曲面状をなすものとされている。加圧接触部822は、第二被巻回部821におけるベース部811側に位置する面に固定されており、可動芯片82における先端側部位及び基端側部位にそれぞれ1つずつ設けられている。また、各加圧接触部822は、巻芯13,14の回転軸方向に延びる板状の被押圧部822aを備えている。
【0107】
ガイド83は、固定芯片81及び可動芯片82間の距離(特に、第一被巻回部812及び第二被巻回部821間の距離)が変更する方向に沿って、可動芯片82をスライド移動可能な状態で支持するものである。ガイド83に支持されることで、可動芯片82は固定芯片81に対し接近及び離間する方向に沿って相対移動可能とされている。さらに、ガイド83は、可動芯片82の先端部及び基端部に対応して設けられており、可動芯片82の先端部及び基端部を支持している。
【0108】
また、ガイド83は、巻芯13,14の回転軸方向に沿って、可動芯片82のうち各種シート2~5が巻回される部位から外れた位置に設けられている。すなわち、ガイド83は、第二被巻回部821のうち、剛性確保の点を踏まえて特に肉厚が大きくされる部位から外れた位置に設けられている。
【0109】
さらに、各ガイド83は、図10及び図11に示すように、それぞれ固定芯片81に取付けられるガイドロッド831と、可動芯片82に取付けられるスライドロッド832とを備えている。ガイドロッド831及びスライドロッド832は、巻芯13,14の回転軸方向に沿って並んだ状態で設けられている。
【0110】
ガイドロッド831は、固定芯片81に対し可動芯片82が接近及び離間する方向に沿って延びる溝831aを有している。溝831aは、直交する2つの平面で形成されている。
【0111】
スライドロッド832は、回転軸が交互に直交する状態で並べられた回転可能な複数のローラ832aを有している。そして、各ローラ832aが溝831aに対し配置された状態となっており、各ローラ832aが溝831aを形成する前記平面を摺動することで、ガイドロッド831に対しスライドロッド832がスライド移動する。すなわち、ガイド83は、クロスローラガイドである。
【0112】
また、ガイド83によって、各種シート2~5の巻回に伴いベース部811側に向けた巻き締め力が可動芯片82に対し加わったときに、この巻き締め力に抗して可動芯片82を支持することが可能となっている。
【0113】
さらに、ガイドロッド831及びスライドロッド832間には所定の隙間(遊び)が設けている。これにより、可動芯片82を巻芯13,14の回転軸(固定芯片81)に対し傾斜させることが可能となっている。
【0114】
図6~9に戻り、傾斜変更機構84は、巻芯13,14の回転軸に対し可動芯片82を傾斜させるための機構である。傾斜変更機構84は、カム軸841、押圧手段としてのばね842、駆動手段としてのアクチュエータ843及びウォームギア844を備えている。
【0115】
カム軸841は、上記の通り、固定芯片81の内部において、ブッシュ部813により回動可能な状態で支持されている。カム軸841は、可動芯片82の長手方向ほぼ全域に対応した状態(可動芯片82の先端部から基端部にかけての範囲に対応した状態)で巻芯13,14の回転軸と平行に設けられている。尚、カム軸841の基端側部分は、固定芯片81の外部へと突出した状態となっている。
【0116】
また、カム軸841は、図12に示すように、第一カム部841a及び第二カム部841bを備えている。第一カム部841aは、可動芯片82の先端側に設けられた加圧接触部822と相対する位置に設けられており、第二カム部841bは、可動芯片82の基端側に設けられた加圧接触部822と相対する位置に設けられている。両カム部841a,841bは、カム軸841のうち、回動軸から外周面までの距離が一定ではない部位によって構成されている。
【0117】
また、本実施形態では、図13,14に示すように、両カム部841a,841bは、カム軸841の回動軸と直交する断面において、中心角が90°とされた扇形状部位と、当該扇形状部位の半径を直径とする半円形状部位とが組合わされた断面形状をなしている。そのため、カム軸841の回動軸と直交する断面において、両カム部841a,841bの外周面には、直線部L、円弧部A及び半円部Sが存在している。
【0118】
直線部Lは、カム軸841の回動軸を一端とし、所定長さ(本実施形態では、カム軸841の最大半径と同じ長さ)を有する直線状部位である。円弧部Aは、カム軸841の回転軸を中心とするとともに半径が前記所定長さとされ、かつ、一端が直線部Lの他端に連結された中心角が90度の円弧状部位である。半円部Sは、直線部Lの一端及び円弧部Aの他端を連結するとともに前記所定長さの半分を半径とし、かつ、円弧部Aとは反対側に膨らんだ形状をなす半円状部位である。
【0119】
このように両カム部841a,841bは、カム軸841の回動軸と直交する断面において同一形状を有するものであるが、両者の配置向きはそれぞれ異なるものとされている。具体的には、カム軸841の回動軸と直交する仮想面に対し、当該回動軸方向に沿って両カム部841a,841bの外周面を投影する。このとき、投影された第二カム部841bの外周面形状は、カム軸841の回動軸を通り直線部Aと直交する線を基準として、投影された第一カム部841aの外周面形状と線対称となるように構成されている。
【0120】
本実施形態では、通常時に、両カム部841a,841bの外周面のうち半円部Sから円弧部Aにかけての部位がカム軸841側を向くように、カム軸841の位置が設定されている。
【0121】
図7に戻り、ばね842は、固定芯片81に対する可動芯片82の相対移動方向に沿って、両カム部841a,841bの外周面に対し加圧接触部822を押付けるためのものである。ばね842は、支持突起811a及び被押圧部822aによって自然長よりも圧縮した状態で挟み込まれているため、被押圧部822aに対し支持突起811aから遠ざかる方向の力が加わった状態となっている。その結果、第一カム部841aの外周面に対し、前記相対移動方向に沿って、可動芯片82の先端側部位(可動芯片82の先端側に設けられた加圧接触部822)が押付けられた状態となっている。また、第二カム部841bの外周面に対し、前記相対移動方向に沿って、可動芯片82の基端側部位(可動芯片82の基端側に設けられた加圧接触部822)が押付けられた状態となっている。
【0122】
本実施形態では、通常時に、一方の加圧接触部822は、第一カム部841aの外周面における半円部Sと円弧部Aとの境界部分に押圧された状態となり、他方の加圧接触部822は、第二カム部841bの外周面における半円部Sと円弧部Aとの境界部分に押圧された状態となっている。そのため、通常時に、可動芯片82は、カム軸841と平行な状態となっており、ひいては巻芯13,14の回転軸や固定芯片81に対しても平行な状態となっている。
【0123】
アクチュエータ843は、カム軸841を回転させるための駆動源である。アクチュエータ843は、図15に示すように、電力供給により回転する軸部843aを備えている。アクチュエータ843は、軸部843aを双方向に回転可能であり、かつ、電力の非供給時に軸部843aの回転を規制可能に構成されたブレーキ付きモータによって構成されている。
【0124】
より詳しくは、アクチュエータ843は、無励磁作動型のブレーキ付きモータであり、例えば、それぞれ図示しない、ブレーキライニングと、所定のばねによって前記ブレーキライニング側に向けて付勢されたアーマチュアと、通電に伴い、前記ばねによる付勢力に抗してアーマチュアをブレーキライニングから遠ざけるように移動させるコイルとを備えている。そして、アクチュエータ843に電力が供給されると、通電した前記コイルにより前記アーマチュアが引かれ、前記アーマチュア及び前記ブレーキライニング間にギャップが形成されることにより、軸部843aが回転可能な状態となり、供給された電力により軸部843aが回転する。一方、アクチュエータ843への電力の非供給時には、前記ばねによって前記ブレーキライニングに対し前記アーマチュアが押付けられた状態となることで、軸部843aの回転が規制された状態となる。
【0125】
また、アクチュエータ843は、第一芯片131(141)の基端側にのみ設けられている(図6等参照)。すなわち、アクチュエータ843は、巻芯13,14の基端側にのみ設けられている。
【0126】
ウォームギア844は、軸部843aからカム軸841に対する動力の伝達機構を構成するものである。ウォームギア844は、軸部843aに取付けられ、軸部843aの回転に伴い回転するウォーム844aと、カム軸841に取付けられ、ウォーム844aに噛合された歯車844bとを備えている。本実施形態では、カム軸841の回転数が軸部843aの回転数の1/20~1/50程度となるように、歯車844bの歯数などが設定されている。
【0127】
加えて、第一芯片131(141)の先端部には、ターレット12の前記受け用の穴に配置されることで、ターレット12における前記受け用の穴を形成する部位によって支持される被支持部85が設けられている(図6等参照)。被支持部85は、固定芯片81の先端部に取付けられることで、固定芯片81の先端部に設けられた状態となっている。
【0128】
上記のように構成された第一芯片131(141)では、通電端子19が接点部135(145)へと接触し、アクチュエータ843へと電力が供給されることで、軸部843aの回転規制が解除された上で、軸部843aが回転する。これにより、軸部843aからウォームギア844を介してカム軸841へと動力が伝達され、カム軸841が回動する。カム軸841の回動により、カム部841a,841bの外周面のうち、可動芯片82(加圧接触部822)の押付けられている部位が変化する。その結果、巻芯13,14の回転軸(固定芯片81)に対し可動芯片82が傾斜する。
【0129】
より詳しくは、通常時、すなわち、固定芯片81及び可動芯片82を平行にした状態において、カム軸841を一方側に回動させると、可動芯片82の先端側に設けられた加圧接触部822は、第一カム部841aの外周面における円弧部Aへと押付けられた状態となる。一方、可動芯片82の基端側に設けられた加圧接触部822は、第二カム部841bの外周面における半円部Sへと押付けられた状態となる。そのため、可動芯片82の先端側部位のみが固定芯片81に接近するようにして可動芯片82が傾斜する。その結果、図16に示すように、巻芯13,14のうち各種シート2~5の巻回される部位の形状は、先端側に向けて先細る形状となる。
【0130】
一方、通常時、すなわち、固定芯片81及び可動芯片82を平行にした状態において、カム軸841を他方側に回動させると、可動芯片82の先端側に設けられた加圧接触部822は、第一カム部841aの外周面における半円部Sへと押付けられた状態となる。一方、可動芯片82の基端側に設けられた加圧接触部822は、第二カム部841bの外周面における円弧部Aへと押付けられた状態となる。そのため、可動芯片82の基端側部位のみが固定芯片81に接近するようにして可動芯片82が傾斜する。その結果、図17に示すように、巻芯13,14のうち各種シート2~5の巻回される部位の形状は、先端側に向けて先太る形状となる。
【0131】
また、巻芯13,14の形状を変更するにあたり、可動芯片82は、巻芯13,14の回転軸と直交する断面において、スリット133,143の延びる方向と平行な方向に沿って移動する。従って、巻芯13,14の回転軸に対し可動芯片82を傾斜させた状態としても、スリット133,143の大きさは一定に保たれることになる。
【0132】
図5に戻り、第二芯片132(142)は、固定部材132a(142a)と、チャック機構132b(142b)とを備えている。
【0133】
固定部材132a(142a)は、巻芯13(14)の回転軸方向に延びるとともに、断面半楕円形状をなしている。固定部材132a(142a)の外周面に対し各種シート2~5が巻回される。
【0134】
チャック機構132b(142b)は、固定部材132a(142a)におけるスリット133(143)に対応する部位に設けられている。チャック機構132b(142b)は、内部が中空状とされており、図示しないエア供給排出機構と接続されている。そして、このエア供給排出機構によって、チャック機構132b(142b)の内部空間に対するエアの供給、及び、チャック機構132b(142b)の内部空間からのエアの排出が可能となっている。
【0135】
チャック機構132b(142b)は、その内部空間に対するエアの供給により膨張することで、その一部が固定部材132a(142a)におけるスリット133(143)側の面から突出した状態となる。一方、チャック機構132b(142b)は、その内部空間からのエアの排出により収縮することで、その全体が固定部材132a(142a)におけるスリット133(143)側の面から突出しない状態となる。かかる構成によって、スリット133(143)に挿通されたセパレータシート2,3を、チャック機構132b(142b)及び第一芯片131(141)によって挟持することが可能となっている。
【0136】
続いて、制御装置91の構成について説明する。制御装置91は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、演算データ等を長期記憶するハードディスクなどを備えており、上述の通り、巻回部11や各供給機構31,41,51,61の動作を制御する。制御装置91によって、巻回部11に対する電極シート4,5の供給開始・供給停止タイミング、巻芯13,14の回転、通電端子19の動作などが制御される。例えば、制御装置91は、図示しないエンコーダから電極シート4,5の繰出量に関する情報が入力されるようになっており、電極シート4,5の繰出量がそれぞれ所定値となったときに、電極シート4,5の繰出し(供給)を停止する。
【0137】
また、制御装置91は、図3に示すように、幅方向位置記憶部92と、湾曲量検出手段としての湾曲量検出部93と、傾斜角度制御手段としての傾斜角度制御部94とを備えている。
【0138】
幅方向位置記憶部92は、エッジセンサ77から入力された検出結果、すなわち、両電極シート4,5の幅方向一端縁の位置に関する情報を、エッジセンサ77からの入力がある度に前記ハードディスクへと記憶する。本実施形態では、巻芯13,14により一素子分の電極シート4,5を巻取っているときに、次に巻取られる予定の一素子分の電極シート4,5における幅方向一端縁の位置に関する情報が、エッジセンサ77から順次制御装置91へと入力される。結果的に、幅方向位置記憶部92によって、次に巻取られる予定の一素子分の電極シート4,5の各部における幅方向一端縁の位置に関する情報が前記ハードディスクへと記憶される。
【0139】
湾曲量検出部93は、前記ハードディスクに記憶された、両電極シート4,5の幅方向一端縁の位置に関する情報に基づき、次に巻取られる予定の一素子分の電極シート4,5の湾曲量を取得する。ここで、湾曲量とは、電極シート4,5の長手方向に対する電極シート4,5の幅方向への湾曲、すなわち、電極シート4,5の長手方向と幅方向とを含む面に沿った湾曲の度合いをいう。湾曲量としては、例えば、電極シート4,5の長手方向に沿って離間した所定の二箇所に対応する電極シート4,5の幅方向一端縁同士を結ぶ線分Xを基準線とし、この線分Xの中心から、前記二箇所の中心箇所に対応する電極シート4,5の幅方向一端縁までの距離αを用いてもよい(図2参照)。また、電極シート4,5の幅方向一端縁の曲率などを湾曲量として用いてもよい。
【0140】
傾斜角度制御部94は、湾曲量検出部93による検出結果に基づき、通電端子19から接点部135,145に対し供給すべき電力を決定する。また、傾斜角度制御部94は、通電端子19や前記電源の動作を制御し、決定した電力を接点部135,145へと供給することで、巻芯13,14に対する可動芯片82の傾斜角度を調節する。
【0141】
詳述すると、傾斜角度制御部94は、予め取得された、湾曲量と目標傾斜角度との関係を示すテーブルに基づき、湾曲量検出部93により検出された湾曲量に対し最適な目標傾斜角度を得る。目標傾斜角度は、各種シート2~5の巻きずれを抑制する上で最適と考えられる可動芯片82の傾斜角度であり、前記テーブルにおいて湾曲量ごとに設定されている。尚、前記テーブルは、巻芯13,14の周長や電極シート4,5の幅、巻芯13,14に対する電極シート4,5の巻回予定位置などの各種情報に基づき得ることができる。
【0142】
本実施形態において、傾斜角度制御部94は、両電極シート4,5の湾曲量のうち大きい方の湾曲量に基づき、目標傾斜角度を得る。尚、両電極シート4,5の各湾曲量の双方を用いて目標傾斜角度を得ることとしてもよい。例えば、各湾曲量の平均値を用いて目標傾斜角度を得ることとしてもよい。
【0143】
また、傾斜角度制御部94は、目標傾斜角度を得た後、得られた目標傾斜角度と現在の可動芯片82の傾斜角度との差分に基づき、補正角度aを算出する。補正角度aの分だけ可動芯片82を傾斜させることで、巻芯13,14の回転軸に対する可動芯片82の傾斜角度を目標傾斜角度とすることができる。湾曲量の検出対象となった電極シート4,5の巻回に用いられる巻芯13,14に対し適用される。
【0144】
さらに、傾斜角度制御部94は、算出した補正角度aに基づき、通電端子19から接点部135(145)に対する供給電力を決定する。例えば、傾斜角度制御部94は、通電端子19から接点部135(145)へと印加される電圧の大小や正負、印加時間などを決定する。本実施形態において、傾斜角度制御部94は、予め記憶された補正角度aと供給電力との対応関係を示すテーブルに基づき、供給電力を決定する。
【0145】
そして、傾斜角度制御部94は、各種シート2~5の巻回前であって、巻芯13(14)が停止しているときに、通電端子19を接点部135(145)に接触させた上で、アクチュエータ843に電力を供給し、可動芯片82の傾斜角度を補正角度aの分だけ変更させる。これにより、可動芯片82の傾斜角度は、得られた目標傾斜角度に対応するものとされる。尚、傾斜角度制御部94は、変更後における可動芯片82の傾斜角度を、現在の可動芯片82の傾斜角度として前記ハードディスクに記憶する。次に可動芯片82の傾斜角度を変更する際には、この記憶された可動芯片82の傾斜角度に基づき、補正角度aなどが算出される。
【0146】
尚、上述した補正角度aやアクチュエータ843への供給電力の決定手法は一例である。補正角度aやアクチュエータ843への供給電力は、電極シート4,5の湾曲量に基づき決定されるものであればよく、これらの決定手法は上述したものに限定されない。
【0147】
次に、上述の巻回装置10を用いた電池素子1の製造工程について説明する。電池素子1の製造工程は、一素子分の電極シート4,5の湾曲量に基づき、これら一素子分の電極シート4,5が巻回される際に用いられる補正角度aとアクチュエータ843に対する供給電力とを決定する工程(補正角度・供給電力決定工程)、及び、必要に応じて巻芯13,14の形状を変更しつつ、前記一素子分の電極シート4,5を巻取る工程(形状変更・巻取工程)を含む。尚、これら両工程は、同時期に実施されるが、本実施形態では、説明の便宜上、これら両工程を分けて説明する。
【0148】
補正角度・供給電力決定工程では、図18に示すように、まず、ステップS10において、シート位置検出工程を行う。シート位置検出工程では、次の形状変更・巻取工程において他方の巻芯14(13)へと供給される1素子分の電極シート4,5における幅方向一端縁の位置を検出する。
【0149】
シート位置検出工程では、図19に示すように、まず、ステップS101において、負電極シート供給機構41のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し負電極シート5が供給される。具体的には、負電極シート5を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に負電極シート5が挿入されることで、負電極シート5が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による負電極シート5の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
【0150】
負電極シート5の供給に伴い、負電極シート5が一方の巻芯13(14)側へと搬送され始めることとなり、ステップS102において、エッジセンサ77による負電極シート5の幅方向一端縁の位置検出が開始される。
【0151】
次いで、ステップS103において、負電極シート5の供給後、一方の巻芯13(14)が所定数回転(例えば、1回転)した段階で、正電極シート供給機構31のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し、正電極シート4が供給される。具体的には、正電極シート4を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に正電極シート4が挿入されることで、正電極シート4が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による正電極シート4の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
【0152】
正電極シート4の供給に伴い、正電極シート4が一方の巻芯13(14)側へと搬送され始めることとなり、ステップS104にて、エッジセンサ77による正電極シート4の幅方向一端縁の位置検出が開始される。
【0153】
そして、両電極シート4,5が供給されると、一方の巻芯13(14)が回転することで、両電極シート4,5が順次繰出されていく。これにより、電極シート4,5がそれぞれエッジセンサ77を通過していき、電極シート4,5の幅方向一端縁の位置が連続的に検出されていく。また、検出された幅方向位置に関する情報は、制御装置91の前記ハードディスクへと順次記憶されていく。
【0154】
続くステップS105では、供給開始からの正電極シート4の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。
【0155】
ステップS105で肯定判定された場合、つまり、次に巻回される予定の一素子分の正電極シート4の全域における幅方向一端縁の位置が検出されるとともに、検出された幅方向位置に関する情報がハードディスクに記憶された場合、ステップS106に移行する。尚、ステップS105にて肯定判定された時点で、一方の巻芯13(14)に対する正電極シート4の供給は停止されることとなる。
【0156】
続くステップS106では、供給開始からの負電極シート5の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。
【0157】
ステップS106で肯定判定された場合、つまり、次に巻回される一素子分の負電極シート5の全域における幅方向一端縁の位置が検出されるとともに、検出された幅方向位置に関する情報がハードディスクに記憶された場合、シート位置検出工程を終了する。尚、ステップS106において肯定判定された時点で、一方の巻芯13(14)に対する負電極シート5の供給は停止される。
【0158】
図18に戻り、ステップS10のシート位置検出工程に続いて、ステップS20において湾曲量検出工程を行う。湾曲量検出工程では、記憶された電極シート4,5の幅方向位置に関する情報に基づき、湾曲量検出部93によって電極シート4,5の湾曲量を検出する。
【0159】
続くステップS30では、傾斜角度算出工程を行う。傾斜角度検出工程では、傾斜角度制御部94によって、湾曲量と目標傾斜角度との関係を示す前記テーブルに基づき、検出された湾曲量に対し適切な目標傾斜角度を算出する。
【0160】
その後、ステップS40において、現在の可動芯片82の傾斜角度と算出した目標傾斜角度とから補正角度aを算出する。そして、ステップS50において、算出した補正角度aに基づき、通電端子19から接点部135(145)に対する供給電力を決定し、補正角度・供給電力決定工程を終了する。
【0161】
次いで、形状変更・巻取工程について、図20のフローチャートを参照して説明する。形状変更・巻取工程では、ステップS60の巻芯形状変更工程と、ステップS70の巻取工程とを行う。
【0162】
巻芯形状変更工程では、図21に示すように、まず、ステップS601において、ステップS70の巻取工程において各種シート2~5を巻取ることとなる一方の巻芯13(14)の形状を変更する必要性の有無が判定される。一方の巻芯13(14)の形状を変更する必要がある場合、すなわち、ステップS40にて算出された補正角度aが0でない場合、ステップS602に移行する。これに対し、一方の巻芯13(14)の形状を変更する必要がない場合、巻芯形状変更工程を終了する。
【0163】
ステップS602では、可動芯片82の傾斜角度を変更し、巻芯形状変更工程を終了する。より具体的には、通電端子19を、取外しポジションP2に配置された、一方の巻芯13(14)の接点部135(145)に対し接近移動させる(図23参照)。この一方の巻芯13(14)は、電池素子1が取外され、停止状態とされている。そして、通電端子19が接点部135(145)に接触した上で、接点部135(145)を介して、アクチュエータ843に対し、決定された供給電力が供給される。この供給電力は、この一方の巻芯13(14)に巻回される予定の電極シート4,5の湾曲量に基づき決定されたものである。これにより、一方の巻芯13(14)の形状は、一方の巻芯13(14)に対し巻回される予定の電極シート4,5の湾曲量に適したものに変更される。
【0164】
その後、通電端子19を接点部135(145)から離間させて、前記退避位置へと移動させることで、巻芯形状変更工程を終了する。尚、通電端子19を接点部135(145)から離間させたとしても、一方の巻芯13(14)の形状はそのまま維持される。
【0165】
次に、ステップS70の巻取工程について説明する。巻取工程では、図22に示すように、まず、ステップS701において、ターレット12における一方のテーブルに対し一方の巻芯13(14)が没するとともに、チャック機構132b(142b)が収縮した状態で、ターレット12を回転させる。これにより、取外しポジションP2にあった一方の巻芯13(14)が巻回ポジションP1側へと移動していく。
【0166】
そして、一方の巻芯13(14)が巻回ポジションP1へと配置されると、当該一方の巻芯13(14)のスリット133(143)と、ガイドローラ78a,78b及び支持ローラ15a(15b)に架け渡されたセパレータシート2,3の延びる方向とが正面視重なった状態で、一方の巻芯13(14)を、ターレット12における一方のテーブルから突出させる。これにより、一方の巻芯13(14)のスリット133(143)に対しセパレータシート2,3が配置された状態となる(図24参照)。また、巻芯13(14)の先端部に設けられた被支持部85がターレット12における他方のテーブルで支持された状態となる。尚、巻芯13(14)の形状を変更しても、スリット133(143)の大きさは変化しないため、スリット133(143)に対しセパレータシート2,3をより確実に配置することが可能である。
【0167】
次いで、ステップS702において、チャック機構132b(142b)を膨張させ、第一芯片131(141)とチャック機構132b(142b)とでセパレータシート2,3を挟み込んだ状態とする。その上で、一方の巻芯13(14)を所定数だけ回転させる。これにより、一方の巻芯13(14)に対しセパレータシート2,3が所定量だけ巻き取られた状態となる。
【0168】
その上で、続くステップS703において、一方の巻芯13(14)に対し電極シート4,5が供給される。具体的には、上記の通り、負電極シート供給機構41のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)に対し負電極シート5が供給され、その後、一方の巻芯13(14)が所定数回転(例えば、1回転)した段階で、正電極シート供給機構31のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)に対し正電極シート4が供給される。
【0169】
両電極シート4,5の供給後、一方の巻芯13(14)の回転に伴い、一方の巻芯13(14)に対し各種シート2~5が巻回されていく。
【0170】
続くステップS704では、供給開始からの正電極シート4の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。ステップS704で肯定判定された場合、つまり、現在巻回されている一素子分の正電極シート4の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止され、正電極シート4の供給が停止される。
【0171】
さらに、続くステップS705において、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。その後、一方の巻芯13(14)の回転動作が再開される。
【0172】
次いで、ステップS706において、供給開始からの負電極シート5の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。ステップS706で肯定判定された場合、すなわち、現在巻回されている一素子分の負電極シート5の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合には、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止され、負電極シート5の供給が停止される。
【0173】
そして、続くステップS707において、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。
【0174】
次いで、ステップS708において、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることにより、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。
【0175】
続くステップS709では、セパレータシート2,3が切断されることなく、ターレット12を回転させる。これにより、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)がセパレータ供給機構51,61からセパレータシート2,3を引き出しつつ、取外しポジションP2側へと移動していく。一方、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が、ターレット12の一方のテーブルに没した状態で、巻回ポジションP1側へと移動していく。尚、ターレット12の回転前に、他方の巻芯14(13)の形状は、次に巻回される予定の電極シート4,5の湾曲量に対応したものに予め調節されている。
【0176】
続いて、ステップS710において、ターレット12の回転に併せて、各種シート2~5の巻回されている一方の巻芯13(14)を回転させる。
【0177】
そして、次のステップS711において、巻終わり処理を実行する。巻終わり処理では、まず、一方の巻芯13(14)の回転数が所定数に到達した時点で、一方の巻芯13(14)の回転が停止される。尚、一方の巻芯13(14)の回転が停止する前、停止と同時、又は、停止した後に、ターレット12の回転が停止されることとなる。
【0178】
一方の巻芯13(14)及びターレット12の回転が停止されると、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)が取外しポジションP2に位置し、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が巻回ポジションP1に位置した状態となる(図25参照)。さらに、このときには、一方の巻芯13(14)とガイドローラ78a,78b間において、セパレータシート2,3が一方の支持ローラ15a(15b)に架けられた状態となっている。
【0179】
この状態で、押えローラ17を一方の巻芯13(14)に接近させ、押えローラ17により各種シート2~5を押えた上で、セパレータカッタ16がセパレータシート2,3に接近することにより、セパレータシート2,3を切断する。
【0180】
尚、セパレータシート2,3の切断に先立って、他方の巻芯14(13)がターレット12の一方のテーブルから突出することで、他方の巻芯14(13)のスリット143(133)にセパレータシート2,3が挿通される。さらに、チャック機構142b(132b)等によりセパレータシート2,3を挟持した上で、他方の巻芯14(13)が所定量だけ回転することにより、他方の巻芯14(13)の外周にセパレータシート2,3が所定量だけ巻き付けられる。
【0181】
セパレータシート2,3の切断後、押えローラ17により各種シート2~5を押えた状態のまま、一方の巻芯13(14)を回転させる。これにより、各種シート2~5の終端部分がばらけることなく完全に巻取られる。その後、テープ貼付機構18により、セパレータシート2,3の終端部が前記固定用テープにより巻止めされ、巻終わり処理が終了される。
【0182】
そして最後に、ステップS712において、チャック機構132b(142b)が収縮し、セパレータシート2,3の把持が解除された上で、前記取外装置によって、一方の巻芯13(14)から電池素子1が取外されることにより、巻取工程を終了する。
【0183】
尚、ステップS712に先立って、通電端子19を一方の巻芯13(14)の接点部135(145)と接触させてアクチュエータ843へと所定の電力を供給し、可動芯片82を固定芯片81側へと接近させることで、一方の巻芯13(14)の周長を減少させてもよい(図26参照)。本実施形態では、通常時のカム軸841を約半回転させることで、固定芯片81及び可動芯片82間の距離を最も小さなものとすることができる。一方の巻芯13(14)の周長を減少させることで、一方の巻芯13(14)からその外周に位置する電池素子1(各種シート2~5)へと加わる応力が減少するため、電池素子1の取外しが容易になる。尚、通電端子19を接点部135(145)へと接触させた状態のままで、電池素子1の取外後に、この通電端子19に対し、巻芯13(14)の形状を変更するための電力を供給してもよい。
【0184】
以上詳述したように、本実施形態によれば、傾斜変更機構84によって可動芯片82を傾斜させることが可能となっており、可動芯片82を傾斜させることによって、巻芯13,14の形状を先端側に向けて先細る形状や、先端側に向けて先太る形状とすることができる。従って、例えば、巻芯13,14の先端側に巻回される電極シート4,5の幅方向一端縁が、巻芯13,14の基端側に巻回される電極シート4,5の幅方向他端縁よりも長くなるようにして電極シート4,5が湾曲している場合には、巻芯13,14の形状を先太り形状とすることで、巻芯13,14に巻き付いたときに電極シート4,5の幅方向端縁部が所望の位置からずれてしまうことを抑制できる。一方、例えば、巻芯13,14の基端側に巻回される電極シート4,5の幅方向他端縁が、巻芯13,14の先端側に巻回される電極シート4,5の幅方向一端縁よりも長くなるようにして電極シート4,5が湾曲している場合には、巻芯13,14の形状を先細り形状とすることで、巻芯13,14に巻き付いたときに電極シート4,5の幅方向端縁部が所望の位置からずれてしまうことを抑制できる。
【0185】
このように本実施形態によれば、電極シート4,5に形状不良がある場合であっても、巻芯13,14に巻き付いたときに電極シート4,5の幅方向端縁部に位置ずれが生じてしまうことを効果的に抑制できる。そのため、得られる電池素子1における巻きずれの発生をより確実に防止できる。その結果、製品の品質を向上させることができるとともに、形状不良のある電極シート4,5を不良品として廃棄せずに済み、生産性の向上や製造コストの抑制を図ることができる。
【0186】
また、傾斜角度制御部94や湾曲量検出部93などによって、電極シート4,5の湾曲量に応じた適切な傾斜角度となるように可動芯片82の傾斜が調節される。すなわち、電極シート4,5の状態に合わせた巻芯13,14の形状変更を自動的に行うことができる。そのため、巻芯13,14の形状変更のために人的資源を割いたり、装置を一時的に停止させたりせずに済む。また、面倒で時間や手間のかかる作業を行う必要がなくなる。これらの結果、生産性を極めて効果的に高めることができ、ひいては製造コストの更なる低減を図ることができる。
【0187】
さらに、カム軸841は、回動軸から外周面までの距離が一定ではない第一カム部841a及び第二カム部841bを有しており、カム軸841の回動により、両カム部841a,841bに押付けられる部位(加圧接触部822)の位置を変動させて、可動芯片82を傾斜させることができる。これにより、巻芯13,14を先細り形状や先太り形状に比較的容易に変更することができる。また、カム軸841の回動により、可動芯片82の先端側部位及び基端側部位のうちの一方だけでなく、両者の位置をそれぞれ変更することができる。そのため、例えば、可動芯片82の傾斜角度に関する設定可能範囲をより拡大するといったこと等も可能となる。
【0188】
加えて、加圧接触部822が第一カム部841a又は第二カム部841bに対し押付けられた状態とされているため、カム軸841によって可動芯片82を非常に安定した状態で支持することができる。そのため、各種シート2~5の巻回に伴い巻芯13,14に対し巻き締め力が加わったときに、可動芯片82に変形(撓みや捻りなど)が生じてしまうことをより確実に防止できる。これにより、巻芯13,14の形状をより確実に一定に保つことができる。
【0189】
また、固定芯片81はカム軸841を内部に収容可能な程度の大きさのものであればよいため、巻芯13,14の形状変更機能を実現しつつ、巻芯13,14の小型化を図ることができる。
【0190】
さらに、カム軸841に対し可動芯片82が押付けられる構造であるため、カム軸841が回動しない限り、巻芯13,14の形状が変化することはない。従って、アクチュエータ843に対し電力を随時供給する等、巻芯13,14の形状を一定に維持するための工程を特段行う必要がなくなり、生産性をより向上させることができる。
【0191】
加えて、本実施形態では、通常時(固定芯片81及び可動芯片82を平行とした状態)において、カム軸841を一方側に回動させることで巻芯13,14を先細り形状とすることができ、カム軸841を他方側に回動させることで巻芯13,14を先太り形状とすることができる。従って、カム軸841の回動方向と巻芯13,14の形状変化との関係が分かりやすいものとなり、巻芯13,14の形状の変更に関する調節や設定などをより容易に行うことが可能となる。
【0192】
また、ガイド83は、可動芯片82における各種シート2~5が巻回される部位から外れた位置に設けられている。従って、巻芯13,14の大型化(大径化)を抑えることができ、巻芯13,14の小型化をより確実に図ることができる。
【0193】
加えて、ガイド83によって、巻き締め力に抗して可動芯片82が支持される。従って、巻き締め力による可動芯片82の変形(撓みや捻りなど)や傾斜角度の増減を一層確実に防止することができ、巻芯13,14の形状をより確実に一定に維持することができる。
【0194】
さらに、本実施形態では、ガイド83として、ガイドロッド831及びスライドロッド832が巻芯13,14の回転軸方向に沿って並ぶようにして配置されたクロスローラガイドが利用されている。そのため、巻芯13,14の回転軸と直交する方向、すなわち、巻芯13,14の径方向に沿ったガイド83の厚さをより小さなものとすることができる。これにより、巻芯13,14の小型化をより効果的に図ることができる。
【0195】
また、軸部843aを回転させたときには、ウォーム844a及び歯車844bを介して、軸部843aからカム軸841へと動力を安定的に伝達することができる。その一方、何らかの理由によりカム軸841に対しその回動方向の力が加わったとしても、ウォーム844a及び歯車844bによるセルフロックによって、歯車844bの回転を規制することができ、ひいてはカム軸841をロックした状態で維持することができる。これにより、カム軸841の意図しない回動を効果的に抑制することができ、ひいては巻芯13,14の形状の意図しない変化をより確実に防止できる。
【0196】
さらに、ウォーム844aから歯車844bに対し、回転数を減じつつ動力を伝達するため、歯車844bの回転角度ひいてはカム軸841の回動角度を微調整することができる。これにより、可動芯片82の傾斜角度を微調整することができ、巻芯13,14の形状のより細かな変更が可能となる。
【0197】
加えて、アクチュエータ843はブレーキ付きモータであるため、電力の非供給時、すなわち、電力の供給により巻芯13,14の形状を変更するとき以外における軸部843aの回転を規制することができる。従って、巻回時の振動などにより軸部843aが回転してしまうことをより確実に防止でき、巻芯13,14の形状が意図せず変化することをより確実に防止できる。
【0198】
また、アクチュエータ843に対する電力供給、すなわち、巻芯13,14の形状変更は、巻芯13,14の停止時(非回転時)のみに行われる。従って、巻芯13,14の回転時にアクチュエータ843へと電力を供給するための複雑な装置を設ける必要がない。これにより、装置の簡素化を図ることができ、装置の製造等に係るコストの低減を図ることができる。
【0199】
さらに、本実施形態では、通電端子19及び接点部135,145によって、アクチュエータ843に対し電力が供給されるように構成されている。従って、アクチュエータ843に対する電力の供給機構を非常に簡素な構成により実現することができる。これにより、装置の製造等に係るコストの低減をより効果的に図ることができる。
【0200】
加えて、アクチュエータ843は巻芯13,14の基端側にのみ設けられている。これにより、装置の小型化や装置の製造等に係るコストの低減を一層効果的に図ることができる。
【0201】
また、被支持部85は固定芯片81の先端部に設けられているため、巻芯13,14の形状を変更すべく可動芯片82を傾斜させたときに、可動芯片82の傾斜に合わせて被支持部85が移動してしまうといった事態は生じない。従って、前記受け部によって被支持部85を安定した状態で支持することができる。また、被支持部85の位置変化に合わせて、前記受け部の位置を調節したり、受け部を交換したりするといったことは不要となる。そのため、装置の簡素化をより図ることができる。また、メンテナンス等をより容易に行うことが可能となる。
【0202】
さらに、可動芯片82を傾斜した状態としても、スリット133,143の大きさは、変わることなく一定に保たれる。従って、スリット133,143に対するセパレータシート2,3の配置に支障が生じてしまうことをより確実に防止でき、装置の動作安定性をより高めることができる。
【0203】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0204】
(a)上記実施形態における巻芯13,14の構成は一例であって、巻芯13,14の構成は適宜変更可能である。
【0205】
従って、上記実施形態において、カム軸841は、2つのカム部841a,841bを備えているが、回動軸から外周面までの距離が一定でないカム部を、カム軸841の先端側に1つのみ設け、可動芯片82の先端側部位を当該カム部に押付けた状態とする一方、可動芯片82における基端側部位をカム軸841における前記カム部以外の部位に押付けた状態としてもよい。勿論、カム軸841の基端側にカム部を1つのみ設けてもよい。
【0206】
さらに、上記実施形態において、両カム部841a,841bは、カム軸841における断面円形状の部位(両カム部841a,841b以外の部位)よりも細いものとされているが、両カム部841a,841bを前記部位よりも太いものとしてもよい。この場合、可動芯片82からの負荷などによるカム軸841の変形をより確実に防止することができ、巻芯13,14の形状を一定に保つことが一層確実に可能となる。
【0207】
さらに、図27及び図28に示すように、傾斜変更機構86が、巻芯13,14の回転軸に対し傾斜した状態の傾斜部861a,861bを側面に有するとともに、アクチュエータ862により前記回転軸方向に沿って往復移動可能な棒状のスライド部861を備えたものとし、傾斜部861a,861bに対し可動芯片82(加圧接触部822)が押付けられるように構成してもよい。この場合には、スライド部861を往復移動させることで、可動芯片82を傾斜させることができ、巻芯13,14を先細り形状や先太り形状とすることができる。尚、図27,28では、固定芯片81の一部を省略している。
【0208】
また、図29及び図30に示すように、傾斜変更機構87が、ウォーム軸871、可動芯片支持部872及び半歯車873を備えたものであってもよい。ウォーム軸871は、アクチュエータ874の動作により回動可能であるとともに、先端部にウォーム871aを有する。可動芯片支持部872は、巻芯13,14の回転軸方向に沿った可動芯片82の中心部を回動可能な状態で支持するものであり、本例では、固定芯片81に突出形成された円柱状突起により構成されている。半歯車873は、可動芯片82のうち可動芯片支持部872によって支持される部位の外周に形成されたものであり、前記ウォーム871aに噛合されている。尚、図29では、固定芯片81の一部を省略している。また、図30は、可動芯片支持部872を明確に示すべく、固定芯片81の一部やウォーム軸871等を省略した拡大断面模式図である。
【0209】
上記のように傾斜変更機構87を構成することで、アクチュエータ874を動作させてウォーム軸871を回動させることにより、可動芯片82の中心部を回動中心として巻芯13,14の回転軸に対し可動芯片82が傾斜させることができる。従って、傾斜変更機構87を簡素な構成により実現することができ、装置の製造等に係るコストの低減を図ることができる。
【0210】
また、所定サイズの電池素子1を得るべく、巻芯13,14の中心部に対応する部位の周長を所定長さとして各種シート2~5の巻取りを行う場合において、電極シート4,5の状態に応じて巻芯13,14の形状を変更したときに、基準となる巻芯13,14の前記中心部に対応する部位の周長を変化させずに済む。さらに、巻芯13,14における前記中心部に対応する部位とその他の部位との周長差を小さなものとすることができる。そのため、巻芯13,14の形状を変更した場合であっても、所望するサイズの電池素子1をより確実にかつより容易に得ることが可能になり、電池素子1の製造に係る利便性を高めることができる。
【0211】
尚、図29,30に示す例では、ウォーム軸871の回動により半歯車873を回動させることで、可動芯片82を傾斜させる構成となっているが、勿論、上記実施形態におけるカム軸841等を用いた手法により可動芯片82を傾斜させることとしてもよい。また、可動芯片82の先端側部位又は基端側部位を回動可能な状態で支持し、可動芯片82における支持されていない側の部位を固定芯片81に対し接近又は離間させることで、可動芯片82を傾斜させるように構成してもよい。
【0212】
さらに、例えば、図31に示すように、固定芯片88に対し、可動芯片89が、巻芯13(14)の回転軸と直交する断面におけるスリット133(143)の延びる方向と交差する方向(例えば、図31の黒塗り矢印方向)に沿って移動することで、可動芯片89が傾斜するように構成してもよい。
【0213】
勿論、巻芯の形状に関しても適宜変更可能である。例えば、巻芯の回転軸と直交する断面において、巻芯の外周が円形状や長円形状、扁平状等をなすように構成してもよい。
【0214】
(b)上記実施形態において、エッジセンサ77は、電極シート4,5の搬送経路に沿った一箇所に設けられているが、電極シート4,5の搬送経路に沿った複数箇所に設けることとしてもよい。そして、各エッジセンサによる電極シート4,5の幅方向の位置に関する検出結果に基づき、電極シート4,5の湾曲量を算出することとしてもよい。
【0215】
(c)上記実施形態における、両カム部841a,841bの形状は一例であり、カム軸841の回動により可動芯片82を傾斜させることが可能である限り、両カム部841a,841bの形状を適宜変更してもよい。
【0216】
(d)上記実施形態では、シート位置検出工程において、1素子分の電極シート4,5の全域における幅方向の位置を検出するように構成されている。これに対し、シート位置検出工程において、一素子分の電極シート4,5のうちの一部における幅方向の位置を検出することとしてもよい。例えば、一素子分の電極シート4,5のうち最下流側や中間側に位置する部位における幅方向の位置を検出してもよい。
【0217】
(e)上記実施形態では、電極シート4,5を対象として幅方向の位置や湾曲量の検出を行い、検出結果に基づき巻芯13,14の形状を変更するように構成されている。これに対し、セパレータシート2,3を対象として幅方向の位置や湾曲量を検出し、検出結果に基づき巻芯13,14の形状を変更するように構成してもよい。勿論、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を対象として幅方向の位置や湾曲量の検出を行い、検出結果に基づき巻芯13,14の形状を変更するように構成してもよい。
【0218】
(f)上記実施形態では、押圧手段としてばね842を用いているが、押圧手段は、両カム部841a,841bの外周面に対し可動芯片82を押付けるものであればよい。従って、例えば、磁石などによって押圧手段を構成してもよい。
【0219】
(g)上記実施形態では、軸部843aに取付けられたウォーム844aが、カム軸841に取付けられた歯車844bに噛合されるように構成されている。すなわち、軸部843aからカム軸841に対する動力の伝達機構は、ウォーム844a及び歯車844bからなるウォームギア844のみによって構成されている。これに対し、軸部843aからカム軸841に対する動力の伝達機構に、ウォームギア以外の機構(例えば、歯車など)を設けてもよい。勿論、動力の伝達機構に、ウォームギアを設けなくてもよい。
【0220】
(h)上記実施形態において、チャック機構132b,142bはエアにより膨張・収縮することで動作するように構成されているが、チャック機構の構成は適宜変更可能である。また、チャック機構を設けないように構成してもよい。
【0221】
(i)上記実施形態では、第一芯片131,141のみが巻芯13,14の形状を変更するための機能を備えたものとされている。これに対し、例えば、チャック機構を設けない場合などでは、第一芯片131,141及び第二芯片132,142の双方が、巻芯13,14の形状を変更するための機能を備えていてもよい。また、第一芯片131,141及び第二芯片132,142のうちの少なくとも一方を巻芯13,14の回転軸に対し傾斜可能とすることで、巻芯13,14の形状を変更可能としてもよい。この場合、巻芯13,14の回転軸に対し傾斜可能な第一芯片131,141や第二芯片132,142が可動芯片に相当する。
【0222】
(j)上記実施形態では、巻回前の電極シート4,5の湾曲量に基づき、補正角度aやアクチュエータ843への供給電力が決定されているが、巻回後の電極シート4,5の湾曲量(得られた電池素子1における電極シート4,5の湾曲量)に基づき、次回以降の巻回時にて使用される補正角度aや供給電力を決定するように構成してもよい。すなわち、得られた電池素子1における電極シート4,5の湾曲量に基づき、次回以降の巻回時に使用される補正角度aや供給電力がフィードバック制御されるように構成してもよい。尚、巻回後の電極シート4,5の湾曲量は、例えば、得られた電池素子1における巻始め部分と巻終わり部分との高さの差に基づき得ることができる。
【0223】
また、例えば、シート原反32,42を構成する電極シート4,5の湾曲量を予め計測しておき、その予め計測した湾曲量に基づいて補正角度aなどを決定してもよい。
【0224】
(k)上記実施形態において、巻芯13(14)の形状は、取外しポジションP2に配置されているときに変更されるように構成されているが、巻芯13(14)が巻回ポジションP1へと配置された段階で、巻芯13(14)の形状を変更するように構成してもよい。尚、この場合には、巻回ポジションP1に対応して通電端子19を設けることが好ましい。
【0225】
(l)上記実施形態では、アクチュエータ843等によって可動芯片82を適切な傾斜角度に自動的に調節可能とされているが、人手によって可動芯片の傾斜角度を調節することとしてもよい。例えば、所定のロック機構により可動芯片を回動不能な状態でロック可能とする一方、前記ロック機構によるロックを解除することで可動芯片をその基端部にて回動可能となるように構成する。すなわち、固定芯片に対し可動芯片を傾斜可能としつつ、前記ロック機構によって可動芯片の傾斜状態を一定に維持することができるように構成する。そして、前記ロック機構によるロックを解除した状態で、電極シート4,5の湾曲量に適した傾斜角度となるように可動芯片を回動させ、その後、前記ロック機構により可動芯片をロックすることを人手で行うことにより、可動芯片の傾斜角度を調節することとしてもよい。尚、電極シート4,5の湾曲量に適した傾斜角度は、エッジセンサ77からの出力結果に基づき制御装置91によって自動的に得られるように構成してもよい。
【0226】
(m)上記実施形態では、セパレータシート2,3をある程度巻回した後に、シート挿入機構71によって、巻芯13(14)に対し両電極シート4,5が供給されるように構成されている。これに対し、チャック機構132b(142b)によってセパレータシート2,3とともに両電極シート4,5を把持した上で巻回を開始することにより、巻芯13(14)に対する電極シート4,5の供給工程が不要となるように構成してもよい。この場合、スリット133(143)には、各種シート2~5が配置されることになる。
【0227】
(n)上記実施形態において、巻回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、巻芯の数はこれに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上の巻芯を備えた構成であってもよい。
【0228】
(o)上記実施形態では、巻回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、巻回装置10によって製造される巻回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの巻回素子等を製造することとしてもよい。
【0229】
(p)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態で例示したものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、セパレータシート2,3をPPにより形成することとしているが、他の絶縁性材料によってセパレータシート2,3を形成することとしてもよい。また、例えば、電極シート4,5に塗布される活物質を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0230】
1…電池素子(巻回素子)、2,3…セパレータシート、4…正電極シート、5…負電極シート、10…巻回装置、13,14…巻芯、19…通電端子、77…エッジセンサ(シート位置検知手段)、81…固定芯片、82…可動芯片、83…ガイド、84…傾斜変更機構(傾斜手段)、85…被支持部、92…湾曲量検出部(湾曲量検出手段)、93…傾斜角度制御部(傾斜角度制御手段)、133,143…スリット、135,145…接点部、831…ガイドロッド、832…スライドロッド、841…カム軸、841a…第一カム部、841b…第二カム部、842…ばね(押圧手段)、843…アクチュエータ(駆動手段)、843a…軸部、844a…ウォーム、844b…歯車、872…可動芯片支持部。
図1
図2
図3
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