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特許6998190タイヤ内面用離型剤、タイヤ内面用離型剤水分散液、タイヤの製造方法およびタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】タイヤ内面用離型剤、タイヤ内面用離型剤水分散液、タイヤの製造方法およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/64 20060101AFI20220128BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20220128BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20220128BHJP
   B29D 30/08 20060101ALI20220128BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220128BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B29C33/64
B29C33/02
B29C35/02
B29D30/08
B60C1/00 Z
B29L30:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017231833
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019098625
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】下原 宗一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】向田 芳純
(72)【発明者】
【氏名】岡 孝生
(72)【発明者】
【氏名】江幡 勝由
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019231(JP,A)
【文献】特開2016-040080(JP,A)
【文献】特開2005-193448(JP,A)
【文献】特開2010-260258(JP,A)
【文献】特開平08-039575(JP,A)
【文献】太田俊一,合成マイカとその応用,粘土科学,日本,一般社団法人 日本粘土学会,2004年05月26日,第44巻、第1号,31-36頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29D 30/00 - 30/72
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含み、
下記成分(A)の含有率が、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して10~90質量%であり、
下記成分(B)の含有率が、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して1~30質量%であり、
下記成分(C)の含有率が、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して1~20質量%であり、
下記成分(D)の含有率が、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して1~75質量%である
ことを特徴とする粉末状のタイヤ内面用離型剤。
(A)下記成分(D)、硼ケイ酸ガラス製ガラスビーズ、および焼成カオリン以外の無機成分
(B)25℃において、1000~10万mPa・sであるシリコーン成分
(C)ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム以外の界面活性剤
(D)L値が15以上、70以下であるマイカ
【請求項2】
前記成分(D)が、マグネシウムを含有するマイカである請求項1記載のタイヤ内面用離型剤。
【請求項3】
前記成分(A)が、タルク、クレー、水膨潤性粘土鉱物、炭酸カルシウムおよびゼオライトからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1または2記載のタイヤ内面用離型剤。
【請求項4】
前記成分(A)の質量(Aw)と、前記成分(D)の質量(Dw)との比が、Aw/Dw=0.1~10である請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ内面用離型剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ内面用離型剤と、水と、を含むことを特徴とするタイヤ内面用離型剤水分散液。
【請求項6】
未加硫ゴム製生タイヤの内面およびブラダーの外面の少なくとも一方に請求項5記載のタイヤ内面用離型剤水分散液を付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程と、
前記離型用前処理工程後、成形型内で前記生タイヤに収容された前記ブラダーを膨張させることにより、前記成形型内面に前記生タイヤ外面を押し当て、その状態で前記生タイヤを加熱して加硫する加硫工程と、
を含むことを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面に付着させ、加硫してなることを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ内面用離型剤、タイヤ内面用離型剤水分散液、タイヤの製造方法およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム用離型剤の一種として、タイヤ内面用離型剤がある。例えば、特許文献1には、粉体からなる無機成分(無機粉末)と、シリコーン成分と、界面活性剤と、多価アルコールと、水とを含むタイヤ内面用離型剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-228783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ内面用離型剤は、例えば、つぎのように用いられる。すなわち、タイヤの製造工程において、未加硫生タイヤの加硫成型では、ブラダーと呼ばれるゴム製袋を未加硫生タイヤの内側に配置し、前記ブラダーを温風、熱水または蒸気で膨張させることで、金型内部に前記未加硫生タイヤを押し当て、圧入成型とともに加硫が行われる。この工程を円滑に行うため、生タイヤのインナーライナー面(内面)に、タイヤ内面用離型剤が予めスプレー塗布される。タイヤ内面用離型剤は、加硫後もタイヤ内面に残るため、タイヤ内面への付着部分の外観を黒くすることが好ましい。そのために、カーボンブラック分散液等で着色することがあるが、この方法では、無機粉末の凝集等で白色化し、外観不良となる。これを防止するために、多価アルコールの含有率を高めることがあるが、この方法は、離型性悪化につながる。また、シリコーン成分の含有率を高めることもあるが、この方法は、コストアップとなる。さらに、白くなりやすい無機粉末(マイカである白雲母)を用いない方法もあるが、この方法では、タイヤ内面用離型剤に必要な離型性や滑性が悪化しやすい。
【0005】
そこで、本発明は、離型性および滑性を悪化させることなく、外観の向上を実現可能なタイヤ内面用離型剤、およびタイヤ内面用離型剤水分散液を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記タイヤ内面用離型剤水分散液およびタイヤ内面用離型剤を用いたタイヤの製造方法、およびタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のタイヤ内面用離型剤は、下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする。
(A)下記成分(D)以外の無機成分
(B)シリコーン成分
(C)界面活性剤
(D)L値が90未満であるマイカ
【0007】
本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液は、
前記本発明のタイヤ内面用離型剤と、
水と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のタイヤの製造方法は、
未加硫ゴム製生タイヤの内面およびブラダーの外面の少なくとも一方に前記本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液を付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程と、
前記離型用前処理工程後、成形型内で前記生タイヤに収容された前記ブラダーを膨張させることにより、前記成形型内面に前記生タイヤ外面を押し当て、その状態で前記生タイヤを加熱して加硫する加硫工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のタイヤは、前記本発明のタイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面に付着させ、加硫してなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のタイヤは、タイヤの内面に、前記本発明のタイヤ内面用離型剤が付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ内面用離型剤またはタイヤ内面用離型剤水分散液によれば、離型性および滑性を悪化させることなく、外観の向上を実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0013】
本発明において、L値は、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化されたL表色系(CIE1976(L)表色系に基づくものである(JIS Z 8729参照)。このL値は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0014】
本発明のタイヤ内面用離型剤およびタイヤ内面用離型剤水分散液は、例えば、前記成分(D)が、マグネシウムを含有するマイカであってもよい。
【0015】
本発明のタイヤ内面用離型剤およびタイヤ内面用離型剤水分散液は、例えば、前記成分(A)が、タルク、クレー、水膨潤性粘土鉱物、炭酸カルシウムおよびゼオライトからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0016】
本発明のタイヤ内面用離型剤およびタイヤ内面用離型剤水分散液は、例えば、前記成分(A)の質量(Aw)と、前記成分(D)の質量(Dw)との比が、Aw/Dw=0.1~10であってもよい。
【0017】
[1.タイヤ内面用離型剤]
本発明のタイヤ内面用離型剤における各成分は、特に限定されず、例えば、つぎのとおりである。
【0018】
[1-1.成分(A)]
後述の成分(D)(L値が90未満であるマイカ)以外の無機成分(成分(A))は、特に限定されず、例えば、一般的なタイヤ内面用離型剤に用いられている無機成分であってもよい。無機成分(A)としては、例えば、タルク、クレー、水膨潤性粘土鉱物、炭酸カルシウム、ゼオライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、モンモリロナイトを含有するベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられ、これらは天然物でも良いし合成物でも良い。
【0019】
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(A)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して、20~90質量%、25~80質量%、または30~75質量%であってもよい。
【0020】
[1-2.シリコーン成分(B)]
シリコーン成分(B)(成分(B))は、例えば、離型性向上を担う成分として機能する。シリコーン成分(B)は、特に限定されず、例えば、オルガノポリシロキサン類が挙げられる。前記オルガノポリシロキサン類は、シリコーンオイル、シリコーンゴム、およびシリコーン樹脂を含む概念である。前記オルガノポリシロキサン類としては、より具体的には、例えば、[1]ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のアルキルポリシロキサン、[2]メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルポリシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン、[3]メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン、[4]3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等が挙げられる。前記シリコーン成分は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類併用してもよい。
【0021】
シリコーン成分(B)(成分(B))は、例えば、シリコーン成分と界面活性剤とを含むシリコーン乳化物であってもよい。前記成分(B)が前記シリコーン乳化物である場合、それに含まれる界面活性剤の含有率は、成分(B)の含有率には含ませず、後述の成分(C)の含有率に含ませるものとする。前記シリコーン乳化物において、前記シリコーン成分は、剥離性(離型性)の観点から、分子構造が直鎖状で、重合度が低く常温で流動性を有するシリコーンオイル等が好ましい。前記シリコーン成分の粘度は、特に限定されず、例えば、離型性と製品安定性のバランスの観点から、25℃において、1000~10万mPa・s、5000~5万mPa・sである。
【0022】
前記シリコーン乳化物に含まれる前記界面活性剤は、特に限定されず、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤のいずれでもよいが、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。前記アニオン界面活性剤は、特に限定されず、例えば、[1]高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル(またはアルケニル)アミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型、[2]高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノ硫酸エステル塩等の硫酸エステル型、[3]アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸型、[4]アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型、等が挙げられる。前記ノニオン界面活性剤も、特に限定されず、例えば、[5]ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、[6]ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、等が挙げられる。前記界面活性剤は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0023】
前記シリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)は、例えば、前記シリコーン成分を、前記界面活性剤を用いて水中に分散させ、乳化させて製造してもよい。分散および乳化方法は、特に限定されず、一般的な分散および乳化方法を用いてよい。例えば、まず、シリコーン成分に、ノニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤の少なくとも一方を混合する。一方、予め乳化機を設置した容器に規定量の水を入れる。つぎに、前記水を前記乳化機により撹拌しながら、前記シリコーン成分と前記界面活性剤との混合液を、少しずつ(例えば、1時間かけて)投入し、分散させる。さらに、乳化するまで撹拌することにより、前記シリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)を製造する。前記乳化機は、特に限定されず、一般的な乳化機でもよく、例えば、ホモミキサー、ホモディスパー等が挙げられる。また、前記シリコーン乳化物は、例えば、市販のシリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)をそのまま用いてもよい。前記市販のシリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)としては、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名KM-862T、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名FZ-4157等が挙げられる。前記シリコーン乳化物は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0024】
なお、特に限定するものではないが、前記シリコーン乳化物を120℃で1時間乾燥した後の残渣質量は、前記乾燥前の前記シリコーン乳化物の質量全体に対して、例えば、20~80質量%、30~70質量%、または30~65質量%であってもよい。
【0025】
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(B)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して、1~30質量%、2~20質量%、または5~15質量%であってもよい。
【0026】
[1-3.界面活性剤(C)]
界面活性剤(C)(成分(C))は、例えば、乳化安定性付与を担う成分として機能する。なお、前記「乳化安定性」は、本発明のタイヤ内面用離型剤が乳化物である場合における、前記乳化物の安定性をいう。前記乳化物は、前記成分(A)~(D)が、水の中に分散された乳化物であることが好ましい。このような乳化物は、すなわち、水中油滴型の乳化物(エマルジョン)である。なお、本発明のタイヤ内面用離型剤は、油中水滴型の乳化物でもよいが、スプレー性、付着性、離型性等の観点から、水中油滴型の乳化物であることが好ましい。
【0027】
前記界面活性剤は、特に限定されず、カチオン界面活性剤でも、ノニオン界面活性剤でも、アニオン界面活性剤でもよいが、ノニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤の少なくとも一方が好ましい。前記ノニオン界面活性剤としては、例えば、[1]ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、[2]ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、[3]ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、[4]ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、[5]ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、[6]ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、[7]ポリグリセリン脂肪酸エステル、[8]アルキルグリセリンエーテル、[9]ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、[10]アルキルポリグルコシド、[11]ショ糖脂肪酸エステル、[12]ポリオキシアルキレンアルキルアミン、[13]オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー、等が挙げられる。前記アニオン界面活性剤としては、例えば、[1]オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩、[2]ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、[3]ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、[4]ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、[5]ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、[6]ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、[7]ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩、[8]モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、[9]ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、[10]ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、[11]N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩、等が挙げられる。成分(C)は、界面活性剤を1種類のみ含んでもよいし、2種類以上の界面活性剤を併用してもよい。
【0028】
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(C)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して、0.2~20質量%、1~10質量%、または2~6質量%であってもよい。タイヤ内面用離型剤の乳化安定性の観点、および、生タイヤ若しくはブラダーへの濡れ性が低下しハジキが発生する現象を防止する観点から、前記成分(C)の含有率は、0.2質量%以上が好ましい。また、タイヤ内面用離型剤の付着性および離型性の観点、並びに、タイヤの貼り合せ部に離型剤が入り込んで接着阻害を起こす現象を防止する観点から、前記成分(C)の含有率は、20質量%以下が好ましい。
【0029】
[1-4.L値が90未満であるマイカ(D)]
値が90未満であるマイカ(成分(D))としては、例えば、黒雲母、金雲母、イライト、カラーマイカ等が挙げられる。黒雲母、金雲母およびイライトの化学構造式の一例および後述の実施例に記載の方法で測定したL値は、下記表1に示すとおりである。
【0030】
【表1】
【0031】
成分(D)は、L値が90未満であるマイカを1種類のみ含んでもよいし、2種類以上のマイカの併用により、L値が90未満であってもよい。
【0032】
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(D)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対して、1~60質量%、2~50質量%、または5~40質量%であってもよい。
【0033】
本発明のタイヤ内面用離型剤によれば、L値が90未満であるマイカ(成分(D))を用いたことで、離型性および滑性を悪化させることなく、外観を向上可能である。
【0034】
前記成分(D)のL値は、例えば、86未満、83以下、または75以下であってもよい。前記L値の下限は、特に限定されず、例えば、5以上、10以上、または15以上であってもよい。
【0035】
前述のとおり、前記成分(D)は、例えば、マグネシウムを含有するマイカであってもよい。前述の黒雲母、金雲母がこれに該当し、前記表1に示した化学構造式の一例には表れていないが、前述のイライトも、マグネシウムを含有することがある。前記成分(D)がマグネシウムを含有するマイカであれば、例えば、外観をより向上可能である。
【0036】
本発明のタイヤ内面用離型剤において、前記成分(A)の質量(含有率Aw)と、前記成分(D)の質量(含有率Dw)との比(Aw/Dw)は、特に限定されず、例えば、0.1~10、0.5~5、または2~5であってもよい。
【0037】
[1-5.任意成分]
本発明のタイヤ内面用離型剤は、成分(A)~(D)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、例えば、透明性向上に寄与し得る多価アルコール、水、シリコーン系消泡剤、鉱物油系消泡剤等の各種消泡剤、各種防腐剤等が挙げられる。
【0038】
前記多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、[1]ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、[2]ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール類、[3]ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、ペンタブチレングリコール、ヘキサブチレングリコール等のポリブチレングリコール類、[4]エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ジメチルペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1、5-ペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロへプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、およびこれらの2種類以上の共重合体等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種類のみ用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0039】
本発明のタイヤ内面用離型剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、一般的な乳化機を用いて、本発明のタイヤ内面用離型剤の各成分を乳化することにより製造してもよい。前記乳化機も、特に限定されず、例えば、一般的な攪拌機、ホモミキサー、ホモディスパー等が挙げられる。
【0040】
本発明のタイヤ内面用離型剤の形態は、特に限定されず、例えば、前記成分(A)~(D)が、水の中に分散された乳化物(水分散液)であることが好ましい。
【0041】
本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液の製造(調製)方法も、特に限定されず、例えば、水に前記本発明のタイヤ内面用離型剤を混合して分散させるのみで良い。本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液において、前記本発明のタイヤ内面用離型剤の濃度は、特に限定されず、例えば、20~75質量%、30~70質量%、または30~65質量%であってもよい。
【0042】
本発明のタイヤ内面用離型剤の使用方法も、特に限定されず、例えば、一般的なタイヤ内面用離型剤と同様でよい。具体的には、例えば、本発明のタイヤ内面用離型剤を、原液の状態で、または水に希釈した状態で、スプレーを用いて、未加硫ゴム製生タイヤの内面およびブラダー外面の少なくとも一方に塗布して用いればよい。
【0043】
本発明のタイヤ内面用離型剤は、前述のとおり、乳化物(エマルジョン、水分散液)であってもよい。前記乳化物の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、50~2000nm、100~1500nm、または150~1300nmであってもよい。界面活性剤の必要配合量が増大することによる付着性低下および離型性低下防止の観点、並びに、貼り合せ部に離型剤が入り込んだ際の接着阻害防止の観点から、前記乳化物の平均粒子径は、50nm以上が好ましい。また、乳化粒子のクリーミングおよび合一防止の観点、並びに、水溶成分と油溶成分が分離し製品安定性が不良となることを防止し得る観点から、前記乳化物の平均粒子径は、2000nm以下が好ましい。なお、本発明において、前記乳化物の平均粒子径は、例えば、BECKMAN社製のサブミクロン粒子アナライザー(レーザー回折/散乱法)を用いて乳化粒子の体積分布を測定し、測定した前記乳化粒子の体積分布に基づいて、前記平均粒子径を算出することができる。ただし、この測定方法は、例示であり、本発明は、この測定方法により限定されない。
【0044】
[2.タイヤの製造方法およびタイヤ]
本発明のタイヤの製造方法およびタイヤについては、前述のとおりである。これらについても、特に限定はなく、例えば、一般的なタイヤ内面用離型剤(水分散液の形態であるタイヤ内面用離型剤)に代えて、前記本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液またはタイヤ内面用離型剤を用いること以外は、一般的なタイヤの製造方法およびタイヤと同様でよい。本発明のタイヤの製造方法において、前記成形型としては、例えば、金型等が挙げられる。本発明のタイヤの製造方法は、前述の剥離用前処理工程および加硫工程に加えて、加硫タイヤと前記ブラダーとの間、および、加硫タイヤと前記成形型との間を離型処理する離型処理工程を有してもよい。
【実施例
【0045】
[実施例1~10、比較例1および2]
下記表2および3に記載された各成分(原料)を、市販の電動コンパクトミル(容量500mL)中に、順次撹拌しながら添加し、その後、3分間撹拌し、粉末状のタイヤ内面用離型剤を製造した。実施例1~10は、下記表2に示すとおり、(A)~(D)成分を全て配合した。これに対し、下記表3に示すとおり、比較例1は、成分(A)、(B)、(C)を配合したが、成分(D)に代えて、L値が90である白雲母を配合し、比較例2は、成分(A)、(B)、(C)を配合したが、成分(D)を配合しなかった。なお、下記表2および3に記載された各成分の製品名(商品名)および製造元を、下記表4に示す。また、下記表2および3における成分(D)または白雲母のL値は、下記方法により測定した。
(成分(D)または白雲母のL値の測定方法)
表2および3に記載の実施例1~10および比較例1における各成分(D)または白雲母をガラスセルに入れ、Color meter ZE6000(日本電色工業(株)製)にて反射モードでL値を3回測定し、平均値を算出した。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表2および3に記載の実施例1~10、比較例1および2の各タイヤ内面用離型剤水分散液を用いて、下記の評価を行った。各例のタイヤ内面用離型剤水分散液の製造方法は、つぎのとおりである。すなわち、まず、2Lガラスビーカーに水道水450gを仕込んだ後、直径5cmの3枚のプロペラ羽を備えた攪拌機で20rpmの速度で撹拌した。前記水中に、撹拌しながら、各例で製造した粉末状のタイヤ内面用離型剤550gを投入し、30分間撹拌して分散させることで、各例のタイヤ内面用離型剤水分散液を製造した。
【0050】
(塗布面外観)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液に市販のカーボンブラック分散液(御国色素(株)製、固形分40%)0.5%を配合したものを、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した。つぎに、この未加硫ゴムシートを、卓上型テストプレス機にセットし、金型温度180℃、圧力20kg/cmで20分間加圧し、加硫した後の外観を目視により評価した。塗布面外観は、外観が灰色で白色の斑点のないものを○、白色の斑点が塗布面積の0.5%以上あるものを△、白色の斑点が塗布面積の1%以上あるものを×と評価した。
【0051】
(離型性)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液を、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した。つぎに、この未加硫ゴムシートに同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、金型温度180℃、圧力20kg/cmで20分間加圧し、加硫した。その後、加硫済みの前記ゴムシートを引き剥がした。剥離性(離型性)は、密着無く容易に剥離(離型)できたものを5級、剥離(離型)できたものを4級、剥離抗力が大きいが離型できたものと3級、一部密着し剥離(離型)しがたいものを2級、全面密着し剥離(離型)不可能なものを1級と評価した。
【0052】
(滑性)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液を、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した。つぎに、この未加硫ゴムシートに加硫ブラダーゴムシート(3cm×3cm×0.1cm)を重ね合わせ、1kgの重量をかけて20cm引っ張った際の滑り状態を評価した。滑性は、引っ掛かり回数が多いほど悪いと判断し、3回以下を合格とした。
【0053】
上記評価結果を、前記表2および3に示した。表2に示したとおり、実施例1~10は、塗布面外観、離型性および滑性の評価のいずれも良好であった。これに対し、表3に示したとおり、成分(D)に代えて、L値が90である白雲母を用いた比較例1は、塗布面外観が不良となった。また、成分(D)を用いなかった比較例2は、離型性および滑性が悪かった。