(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】開口部建材
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20220111BHJP
E06B 1/64 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E06B1/56 Z
E06B1/64 B
(21)【出願番号】P 2017249406
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-06-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日:2017年11月16日 発行元:三協立山株式会社 刊行物名:新型ECP用サッシ 該当ページ:p.2、3、5、7、及び添付の設計図面
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】田中 直路
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-120007(JP,A)
【文献】特開2012-162846(JP,A)
【文献】実開昭61-176379(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/56
E06B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形セメント板により形成される開口部に取り付けられるものであって、枠と、
押出成形セメント板の開口補強材に取り付けられる取付具と、室内側湿式シール材と、室外側湿式シール材とを備え、室内側湿式シール材と室外側湿式シール材は、枠と押出成形セメント板との間を塞ぎ、枠は、
上枠、下枠および縦枠の室内側端部
に取付部を有し、
取付部は、取付具が係合して長手方向の適宜箇所に配置される蟻溝状の被係合部であり、取付部の室外側に押出成形セメント板の見込寸法よりも大きな見込寸法の平坦部を形成してあり、平坦部の外周側には
、室内側湿式シール材と室外側湿式シール材を設けてあることを特徴とする開口部建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開口部建材は、躯体とサッシ枠との間に専用枠を設ける必要があり施工に手間が掛かっていた。そのため、より施工性の優れた開口部建材が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「MTG-70 ECP60用枠タイプ 押出成形セメント板納まり専用枠(STB0182H)」三協立山株式会社、2017年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情を鑑み、施工性に優れた開口部建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の開口部建材は、押出成形セメント板により形成される開口部に取り付けられるものであって、枠と、押出成形セメント板の開口補強材に取り付けられる取付具と、室内側湿式シール材と、室外側湿式シール材とを備え、室内側湿式シール材と室外側湿式シール材は、枠と押出成形セメント板との間を塞ぎ、枠は、上枠、下枠および縦枠の室内側端部に取付部を有し、取付部は、取付具が係合して長手方向の適宜箇所に配置される蟻溝状の被係合部であり、取付部の室外側に押出成形セメント板の見込寸法よりも大きな見込寸法の平坦部を形成してあり、平坦部の外周側には、室内側湿式シール材と室外側湿式シール材を設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、枠の取付部が室内側端部に位置するため、室内側湿式シール材と室外側湿式シール材を設ける際の障害がなく、施工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】下枠の縦断面拡大図であり、アングルを省略して示す。
【
図5】室内側から見た下枠の正面図であり、要部を拡大して示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る開口部建材は、
図1及び
図2に示すように、押出成形セメント板4によって形成される開口部に取り付けられるものであって、枠1と、パネル2とを備える。パネル2が枠1の内周に固定され、枠1は取付具3によって押出成形セメント板4に取り付けてあり、枠1と押出成形セメント板4との間を室内側湿式シール材5と室外側湿式シール材6によって塞いだ所謂嵌め殺し窓である。なお開口部建材の構成は、開口部の上下左右で略同じ構成である。
【0009】
開口部を形成する押出成形セメント板4は、室内側に断面L字形状をなす金属製の開口補強材8を固定してある。枠1に取り付けた取付具3が開口補強材8に固定されることによって、枠1は押出成形セメント板4に取り付けられる。
【0010】
枠1は、アルミニウム合金の押出形材等によって形成されており、上枠1aと、下枠1bと、左右の縦枠1cを枠組みして構成されている。また、上枠1aと下枠1bと縦枠1cは、それぞれ室内側端部に開口補強材8への取付部10を有し、取付部10の室外側には平坦部11を有する。
【0011】
上枠1aと下枠1bは略同じ構成であって、取付部10は、
図3に示すように受部10aと被係合部10bからなる。受部10aは、室内側湿式シール材5の室内側に位置する室内側のバックアップ材9を受けるものであって、枠1の外周側見込面の室内側端部から外周側へ突出しており、室外側見付面がバックアップ材9の室内側見付面に当接する。取付部10の被係合部10bは、取付具3(ブラケット20a,20c)の係合部21と係合するものであって、枠1の室内側見付面に形成してある。枠1は取付部10の被係合部10bに取付具3の係合部21が嵌め込まれ、開口補強材8を介して押出成形セメント板4へ取り付けられる。平坦部11は、受部10aより室外側の枠1の外周側見込面に形成してあり、平坦部11の見込寸法は、押出成形セメント板4の見込寸法より大きい。平坦部11の外周側には、室外側から室内側湿式シール材5と室外側湿式シール材6を設けてある。室内側湿式シール材5と室外側湿式シール材6は、枠1の長手方向に沿って設けてあり、枠1と押出成形セメント板4の間を気密に塞ぐものであって、それぞれ室内側にバックアップ材9を隣接して設けてある。
左右の縦枠1c,1cは、上枠1a及び下枠1bと略同じ構成であるが形状は異なっており、取付部10は受部10aと被係合部10bからなるが、被係合部10bは縦枠1cの室内側端部の外周側見込面に形成してある。
【0012】
パネル2は、断熱性を有する複層ガラスであり、枠1に取り付けられたビード7a,7bによって室内側及び室外側から挟持されて枠1の内周に固定されている。
【0013】
取付具3は、ブラケット20a,20cとアングル30という二つの金属製短尺部材から構成されており、上枠1a、下枠1b及び左右の縦枠1cの長手方向の適宜箇所に適宜数だけ配置される。
ブラケット20a,20cは、枠1の室内側端部に取り付けられる。上枠1a及び下枠1bに取り付けられるブラケット20aと左右の縦枠1c,1cに取り付けられるブラケット20cの形状は一部異なっており、上枠1a及び下枠1bに取り付けられるブラケット20aは、室外側に枠1への係合部21と、室内側にアングル30を挿入する溝22を形成してあり、左右の縦枠1c,1cに取り付けられるブラケット20cは、内周側に枠への係合部21と、外周側にアングルを挿入する溝22を形成してある。いずれのブラケット20a,20cも、溝22は外周側に開口しており枠1の長手方向に沿って形成してある。
図3に示すように、溝22の室内側と室外側に位置する両側壁24,24には溝22内に突出する凸部25a,25bが形成してあり、凸部25a,25bによって溝22内にアングル30が挟持される。
アングル30は、押出成形セメント板4の開口補強材8に取り付けられるものである。見付部31と見込部32によって断面略L字形状をなしており、見付部31がブラケット20a,20cの溝22内に挟持された状態で、見込部32が開口補強材8に溶接される。見込部32が開口補強材8に溶接された状態において、アングル30の見付部31の端部はブラケット20a,20cの溝22の底部から離れた位置にあり、ブラケット20a,20cはアングル30の見付部31の端部と溝22の底部との間に変位吸収空間23を有する。
また、下枠1bに取り付けられるブラケット20aは、
図1、
図4及び
図5に示すように、自重受け具40を備える。自重受け具40は、枠1とパネル2の自重を受けるものであって、アングル30と枠1の長手方向に隣り合うように設けてある。自重受け具40のボルト40aがブラケット20aの上面から下面へ挿通してあり、ブラケット20aの上面と下面にはボルト40aに螺合されたナット40b,40bがそれぞれ当接している。ボルト40aの下端は開口補強材8の見込面に当接しており、ボルト40aの頭を操作してボルト40aを回転させることにより、ブラケット20aが上下方向に移動して高さ調節を行うことができる。
【0014】
次に、押出成形セメント板4の開口部に開口部建材を取り付ける際の手順を説明する。まず、枠1には予めブラケット20a,20cをネジ止めしておく。次に、枠1を開口に建て込んで位置決めを行うが、この際に自重受け具40のボルト40aを調整して高さ調節を行う。位置決めした枠1は図示しないクサビによって仮固定しておく。そして、室内側からブラケット20a,20cの溝22にアングル30の見付部31を挿し込んだ後、見込部32を開口補強材8に溶接する。次いで、枠1の平坦部11の外周側において、室外側から押出成形セメント板4と枠1の間のシーリングを行う。まず、室内側端部の受部10aへ当接する位置にバックアップ材9を取り付ける。そして、この室内側のバックアップ材9の室外側に隣接して室内側湿式シール材5を施工する。さらに、室内側湿式シール材5から室外側に間隔をあけて、室外側のバックアップ材9を取り付け、その室外側に隣接して室外側湿式シール材6を施工する。このようにして、開口部建材は枠1と押出成形セメント板4の間を二重にシールされた状態で取り付けられる。
【0015】
このように構成した開口部建材によれば、枠1は、室内側端部に開口補強材8への取付部10を有し、取付部10の室外側に押出成形セメント板4の見込寸法よりも大きな見込寸法の平坦部11を有するため、開口部を形成する押出成形セメント板4の見込寸法が異なる場合も、同一の枠形状を有する開口部建材を取り付けることができる。また、室内側湿式シール材5と室外側湿式シール材6を室外側から施工する際に作業の障害となるものがないため、施工性に優れる。
【0016】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。例えば、開口部建材は嵌め殺し窓に限られず、引き違い窓や、すべり出し窓等、様々な窓種に適用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 枠
2 パネル
3 取付具
4 押出成形セメント板
5 室内側湿式シール材
6 室外側湿式シール材
8 開口補強材
10 取付部
11 平坦部
20a ブラケット
20c ブラケット
22 溝
23 変位吸収空間
30 アングル
40 自重受け具