(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ターメロンを有効成分とするβ‐セクレターゼ阻害剤、及び該阻害剤を含む飲食品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/12 20060101AFI20220111BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220111BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220111BHJP
A61K 36/9066 20060101ALI20220111BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61K31/12
A23L33/10
A23L33/105
A61K36/9066
A61P25/28
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2017551474
(86)(22)【出願日】2015-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2015082611
(87)【国際公開番号】W WO2017085844
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2018-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390019460
【氏名又は名称】稲畑香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】松田 秀秋
(72)【発明者】
【氏名】村田 和也
(72)【発明者】
【氏名】松村 晋一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 百合
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】渕野 留香
【審判官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530305(JP,A)
【文献】特開2013-189385(JP,A)
【文献】特表2009-530305(JP,A)
【文献】International Immunopharmacology,2012年,Volume14/Issue1/pp.13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-36/9068,A61P1/00-43/00,A23L33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンからなる群から選択される1以上の化合物のみを有効成分として含有する、β-セクレターゼの活性を阻害するβ-セクレターゼ阻害剤
。
【請求項2】
AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンを含む、請求項
1に記載のβ-セクレターゼ阻害剤。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のβ-セクレターゼ阻害剤を含む、β-セクレターゼの活性を阻害するβ-セクレターゼ阻害用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターメリック(Curcuma longa)の根茎由来の化合物を有効成分として含有するβ‐セクレターゼ阻害剤、及び該阻害剤を含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の急速な高齢化社会の到来に伴い、老人性痴呆症は、医学的、社会的にも重大な問題となっており、それにより有効な抗認知症治療薬の開発だけではなく、老人性痴呆症を効果的に予防できる薬の開発が強く望まれている(非特許文献1)。
【0003】
病理組織学的研究により、老人班が沈着しそれにより神経細胞が脱落し脳の萎縮が生じると考えられている。老人班の主成分であるβ‐アミロイドは細胞毒性作用を有している(非特許文献2~5)。β‐アミロイドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)からβ‐セクレターゼという酵素の作用によって生成される。β‐セクレターゼに対し阻害作用を有する化合物に関する研究が、近年活発に行われている(特許文献1)。
【0004】
このようなβ‐セクレターゼに対して阻害活性を持つ化合物は、β‐アミロイドの生成のみならず、他の生体内での反応をも阻害する可能性がある。他の生体内での反応を阻害するような物質は、β‐アミロイドの生成を阻害したとしても、患者に深刻な副作用をもたらす虞があるため、安全性の高いβ‐セクレターゼ阻害剤が求められている。
【0005】
安全性の高いβ-セクレターゼ阻害剤を探索した例として、本発明者らによる特許文献2記載の発明が挙げられる。
【0006】
特許文献2では、安全性の高いβ-セクレターゼ阻害剤を得るために、例えばコショウ、ゴマ、ターメリック等のスパイスとして一般的に用いられる天然物からβ-セクレターゼ阻害剤が抽出されている。特許文献2ではさらに抽出物に含まれる化合物の内β-セクレターゼ阻害活性を示す化合物が特定されている。
【0007】
しかし、より阻害活性が高く且つより安価で得られるβ-セクレターゼ阻害剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-137914号公報
【文献】特開2013-189385号公報
【文献】特表2009-530305号公報
【文献】特開2011-225478号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Alzheimer, A (1907) Central Bl. Nervenheilk. Phychiatr. 30, 177-179
【文献】Yankner,B. et al. Science, 245, 417-429 (1989)
【文献】Cai,X., Gold, T. & Younkin,S. Science, 259, 514-516 (1993)
【文献】Rose, A. Nature Med. 2, 267-269 (1996)
【文献】Scheuner,D. et al. Nature Med. 2, 864-869 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
安全性の高いβ-セクレターゼ阻害剤を探索したもう一つの例として、本発明者らは特願2015-146208において、それぞれゴマ、ガランガル及びヒハツから抽出されたセサモリン、エチル4-メトキシシンナメート及びピパタリンを有効成分として含むβ-セクレターゼ阻害剤を有する飲食品を提案している。
特願2015-146208記載の発明は、β-セクレターゼ阻害活性を有する化合物として上記3つの化合物を特定しており、それぞれの化合物のIC50値を算出することで具体的な阻害活性を示している。
しかし、より阻害活性が高く且つより安価で得られるβ-セクレターゼ阻害剤が求められている。
【0011】
本発明は、安全性が高く、β‐セクレターゼ活性に対するさらに高い阻害活性を有するβ‐セクレターゼ阻害剤、及び該阻害剤を含む飲食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンからなる群から選択される1以上の化合物のみを有効成分として含有する、β-セクレターゼの活性を阻害するβ‐セクレターゼ阻害剤に関する。
【0013】
本発明はまた、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンが、ターメリックのヘキサン抽出物または酢酸エチル抽出物である、請求項1に記載のβ-セクレターゼ阻害剤に関する。
【0014】
請求項2に係る発明は、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンを含む、請求項1に記載のβ-セクレターゼ阻害剤に関する。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のβ-セクレターゼ阻害剤を含む、β-セクレターゼの活性を阻害するβ-セクレターゼ阻害用飲食品に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、β‐セクレターゼ活性に対するさらに高い阻害活性を有することができる。
【0017】
また、本発明によれば、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンが、ターメリック(Curcuma longa)のヘキサン抽出物または酢酸エチル抽出物であるため、人体に対する安全性が高く、さらに、ターメリックから化合物を抽出する方法が簡便であるため、低いコストで製造することができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、β-セクレターゼ活性に対するさらに高い阻害活性を有することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、β-セクレターゼ活性に対する優れた阻害作用を有するβ-セクレターゼ阻害剤を含む飲食品であるため、β-セクレターゼ阻害剤を日常的に容易に摂取することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤、及び該阻害剤を含む飲食品について説明する。
【0021】
本発明のβ‐セクレターゼ阻害剤は、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンからなる群から選択される1以上の化合物を有効成分として含有する。
【0022】
AR-ターメロンは、CAS番号532-65-0であって、下式(化1)に示す構造を有している。
【0023】
【0024】
α-ターメロンは、CAS番号82508-15-4であって、下式(化2)に示す構造を有している。
【0025】
【0026】
β-ターメロンは、CAS番号82508‐14‐3であって、下式(化3)に示す構造を有している。
【0027】
【0028】
本発明において、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβターメロンは標準品を用いることができる。また、カレースパイス等の抽出物から得たものを用いることができ、特にターメリックの抽出物から得たものを用いることができる。
【0029】
ターメリック(英名:Turmeric、学名:Curcuma longa)は、ショウガ科ウコン属の単子葉植物である。インド原産で、発達した根茎を有する多年草であり、根茎はカレー粉の原料や染料として用いられる。
【0030】
本発明のβ‐セクレターゼ阻害剤には、ARターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンを有効成分とするものを用いることができる。
AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンはターメリックの根茎からヘキサンによって好適に抽出される。その理由は、ターメリックの根茎をヘキサンで抽出することにより、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβターメロンを多く溶出させることができるからである。
【0031】
上記化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。下記実施例で詳述するように、上記化合物は強いβ‐セクレターゼ阻害活性を有しているので、これらを有効成分として含有する本発明のβ‐セクレターゼ阻害剤は、各種用途に使用することができる。
【0032】
例えば、本発明のβ‐セクレターゼ阻害剤を医薬製剤として用いる場合、哺乳動物(特にヒト)における老人性痴呆症の予防薬、特にアルツハイマー型痴呆症の予防薬として用いられる。
【0033】
本発明のβ‐セクレターゼ阻害剤は、慣用されている方法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、バップ剤、ローション剤等の医薬製剤に製剤化することができる。
【0034】
製剤化に通常使用される賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、および必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤などを使用することができ、一般に医薬製剤の原料として使用される成分及び配合量を適宜選択して定法により製剤化される。
【0035】
本発明の医薬製剤を投与する場合、その形態は特に限定されず、通常使用される方法であればよく、経口投与でも非経口投与でもよい。本発明に係る医薬製剤の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態、疾患の具体的な種類等に応じて、製剤学的な有効量を適宜選択することができる。投与量の一例を挙げると、経口投与の場合、通常、成人において、有効成分量として0.001~1000mg/kg程度が適当であり、これを1日1回~数回に分けて投与すればよい。
【0036】
本発明のβ‐セクレターゼ阻害剤は、食品添加剤として、例えば清涼飲料水、乳製品(加工乳、ヨーグルト)、菓子類(ゼリー、チョコレート、ビスケット、ガム、錠菓)又はサプリメント等の各種飲食品に配合することもできる。
【0037】
食品添加剤として使用する場合、その添加量については、特に限定されず、食品の種類に応じて適宜決定すればよい。一例としては、上記した抽出物の乾燥重量として、含有量が0.0005~50重量%程度の範囲となるように添加すればよい。
【0038】
上記飲食品は、本発明のβ‐セクレターゼ阻害剤の他に、賦形剤、呈味剤、着色剤、保存剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
このうち、賦形剤としては、これらに限定されないが例えば、微粒子二酸化ケイ素のような粉末類、ショ糖脂肪酸エステル、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、小麦デンプン,米デンプン,トウモロコシデンプン,バレイショデンプン,デキストリン,シクロデキストリン等のでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖,ブドウ糖,砂糖,還元麦芽糖,水飴,フラクトオリゴ糖,ガラクトオリゴ糖,大豆オリゴ糖,イソマルトオリゴ糖,キシロオリゴ糖,マルトオリゴ糖,乳果オリゴ糖などの糖類、ソルビトール,エリストール,キシリトール,ラクチトール,マンニトール等の糖アルコール類が挙げられる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
呈味剤としては、これらに限定されないが例えば、果汁エキスであるボンタンエキス、ライチエキス、リンゴ果汁、オレンジ果汁、ゆずエキス、ピーチフレーバー、ウメフレーバー、甘味剤であるアセスルファムK、エリストール、オリゴ糖類、マンノース、キシリトール、異性化糖類、茶成分である緑茶、ウーロン茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶、及びヨーグルトフレーバー等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明することにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0041】
(ヘキサン抽出物の調製)
ターメリックの根茎1kgを粉砕し、40℃のヘキサン5000mlで1時間の攪拌抽出を行い、上澄み液4200mlをろ紙でろ過した。
次いで、その残渣に40℃のヘキサン2500mlで0.5時間の攪拌抽出を行い、ろ紙でろ過した。得られた抽出液に含まれる溶媒をエバポレーター(40℃)で留去し、ターメリックのヘキサン抽出物を得た。
【0042】
(酢酸エチル抽出物の調製)
ターメリックのヘキサン抽出後の残渣を乾燥させ、40℃の酢酸エチル5000mlで1時間撹拌抽出し、上澄み液4800mlをろ紙でろ過した。得られた抽出液に含まれる溶媒をエバポレーター(40℃)で留去し、ターメリックの酢酸エチル抽出物を得た。
ヘキサン抽出物及び酢酸エチル抽出物の収率を以下の表1に示す。
【0043】
【0044】
(β‐セクレターゼ阻害率の測定)
上記のように抽出したヘキサン抽出物及び酢酸エチル抽出物の酵素阻害活性を、以下の方法により検討した。また、Lys-Thr-Glu-Glu-Ile-Ser-Glu-Val-Asn-Sta-Val-Ala-Glu-Phe(Sta: (3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタン酸;ペプチド研究所製)を陽性対照として用いた。
具体的には、まず各抽出物及び陽性対照について、それぞれを含むDMSO溶液2μlを、0.02M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5、0.1%Triton X-100)78μlとともに0.6mlサンプルチューブに入れた。コントロールとして2μlのDMSOを上記の78μlの0.02M酢酸ナトリウム緩衝液とともに0.6mlサンプルチューブに入れた。
その後、酵素溶液(β-セクレターゼ、17.4 μg protein/ml)10 μlを入れて混合し、37℃で10分間前培養した。
基質としてMOCAc-Ser-Glu-Val-Asn-Leu-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-Lys(Dnp)-Arg-Arg-NH2 (ペプチド研究所製)0.1 mmol/l溶液を10 μl加えて混合し、37℃で1時間培養した。反応後,2.5 M 酢酸ナトリウム溶液50 μlを加え、反応を停止させた。
【0045】
反応液100 μlを、水900 μlが入ったバイアル瓶に添加し、以下の条件の蛍光HPLC分析に供した。
・カラム;L-column ODS (4.6 id × 250 mm)
・移動相;water / 0.1% formic acid : acetonitrile(9:1 v/v)→17.50 min(11:9,v/v)→17.51 min(1:19,v/v)→22.50 min(1:19,v/v)→22.51 min(9:1,v/v)→27.50 min(STOP)
・カラム温度;40℃
・検出;Ex. 325 nm / Em. 395 nm
・注入量;20 μl
生成した蛍光ペプチド断片のピーク面積値から,下記の式より阻害率(%)を算出した。
β-セクレターゼ阻害率(%)= 100-〔(各抽出物由来のピークの面積値/コントロール由来のピーク面積値)×100〕
【0046】
上記計算より各ヘキサン抽出物及び酢酸エチル抽出物のβ-セクレターゼ阻害率を算出した結果、以下の通りであった。
【0047】
【0048】
【0049】
上記阻害率により、ターメリックの抽出物が、非常に高いβ‐セクレターゼ阻害活性を有することがわかった。
【0050】
ヘキサン抽出物を以下の条件でのGCMSを用いて分析した。
・カラム;Intertcap Pure Wax (0.25 i.d. × 0.25 μm × 60 m)
・注入量;1.0 μl
・昇温;50℃で2分保持、2.5℃昇温/分→240℃まで
・気化室温;250℃
・キャリーガス流量;ヘリウム 1.2 ml/分
・スプリット比;1/80
GCMS分析の結果から付属のライブラリー検索(wiley7nおよびNIST08)で化合物をAR-ターメロン、α-ターメロン及びβターメロンと推定した。
ヘキサン抽出物はAR-ターメロンを9.9%、α-ターメロンを30.4%、及びβ-ターメロンを11.5%含有していた。
【0051】
ヘキサン抽出物を以下のHPLC条件で分画した。
・カラム;L-column ODS (20 id × 250 mm)
・移動相;water:acetonitrile(20:80, v/v)
・流速:18.9 ml/min
・カラム温度;室温
・検出;UV 243 nm
・注入量;10 μl
ヘキサン抽出物の有効成分としてRT7.5、10.5及び11.0の画分よりそれぞれ無色のオイル状物質を得た。従来、α-ターメロン及びβ-ターメロンは分離することが難しい物質として知られていたが、上記のような簡便な方法で抽出できたのは特筆すべきことである。
【0052】
上記無色のオイル状物質について、上記段落[0050]記載のGCMS条件で分析し、その結果から付属のライブラリー検索(wiley7nおよびNIST08)およびNMR解析を用いて化合物がそれぞれAR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンであることを確認した(Hideji Itokawa,Fusayoshi Hirayama,Kazuko Funakoshi and Koichi Takeya Chem.Pharm.Bull.33(8)3488-3492(1985)及びShin-ichi Uehara,Ichiro Yasuda,Koichi Takeya,Hideji Itokawa Yakugaku zasshi 112(11),817-823の文献値との比較により確認した)。
【0053】
上記で同定した化合物(AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロン)の標準品の酵素阻害活性を、上記の(β‐セクレターゼ阻害率の測定)と同様の方法で検討し、各標準品についてIC50値を算出した結果、以下の通りであった。
AR-ターメロン:92μM
α-ターメロン:39μM
β-ターメロン:62μM
上記IC50値により、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンが、β-セクレターゼ阻害活性を有することがわかった。
このIC50値は、本発明者らが以前に見出し、特願2015-146208において記載したセサモリン、ピパタリン及びエチル4-メトキシシンナメートのIC50値(セサモリン:0.14mM、エチル4-メトキシシンナメート:0.676mM、ピパタリン:0.304mM)と比較しても顕著に低いものであり、AR-ターメロン、α-ターメロン及びβ-ターメロンは非常に高いβ‐セクレターゼ阻害活性を有することが明らかになった。
また、本発明の抽出方法は特願2015-140208記載の抽出方法と比較して簡便なものであるため、生産コストを1/10以下に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、清涼飲料水、乳製品、菓子類又はサプリメント等の各種飲食品の添加剤に好適に使用することができる。