IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

<>
  • 特許-動き検出を用いるMR撮像 図1
  • 特許-動き検出を用いるMR撮像 図2
  • 特許-動き検出を用いるMR撮像 図3
  • 特許-動き検出を用いるMR撮像 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】動き検出を用いるMR撮像
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 376
A61B5/055 ZDM
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017566771
(86)(22)【出願日】2016-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2016066687
(87)【国際公開番号】W WO2017009391
(87)【国際公開日】2017-01-19
【審査請求日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】15176760.5
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィールツ エルウィン
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0243756(US,A1)
【文献】特開2014-108164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158384(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0102864(US,A1)
【文献】特開平09-131333(JP,A)
【文献】米国特許第06434413(US,B1)
【文献】特開2011-036428(JP,A)
【文献】特開平09-294736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 - 24/14
G01R 33/28 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR装置の検査体積内に配置された対象のMR撮像の方法において、
少なくとも1つのRFパルス及び切り替え磁場勾配のMR撮像シーケンスを前記対象に行うことによりMR信号を生成するステップと、
複数の時間的に連続したサブセットとして前記MR信号を取得するステップであって、前記複数のサブセットは各サブセットごとに順次取得され、各サブセットが、k空間のサブサンプリングを持つ複数のk空間プロファイルを有し、前記サブセットが、k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットを形成するように互いに補完する、ステップと、
各サブセットから単一サブセットMR画像を再構成するステップと、
各単一サブセットMR画像から勾配MR画像を計算するステップと、
前記勾配MR画像を互いに比較することにより動きを検出するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記勾配MR画像の前記計算は、前記内部k空間の影響を低減するステップを含み、特に前記勾配MR画像が、前記対応する単一サブセットMR画像の少なくとも1つの空間的方向における前記画像値のボクセルに関する空間導関数として計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットから動き補償されたMR画像を再構成するステップを有し、前記サブセットが、前記検出された動きによって重み付けされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出された動きによって前記サブセットの少なくとも1つに動き補正を提供するステップと、
前記動き補正されたサブセットから形成された前記k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットから動き補正されたMR画像を再構成するステップと、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1以上の動き破損したサブセットを再取得するステップと、
動き破損していないサブセット及び前記再取得されたサブセットから形成された前記k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットから最終MR画像を再構成するステップと、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記k空間サンプリングの視野が、前記検出された動きによって前記サブセットを再取得するステップにおいて適合される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記動きを検出するステップが、勾配画像の各対に対する相互相関を計算するステップを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出された動きの平行移動及び/又は回転パラメータが、前記勾配画像を互いに比較することにより得られる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
全てのサブセットが、k空間の同じ所定の領域をカバーする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記サブセットが、k空間のデカルトサンプリングを使用して取得され、各サブセットが、複数の等距離の平行なk空間プロファイルを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記撮像シーケンスが、複数のショットを有するマルチエコー撮像シーケンスであり、各サブセットが、前記マルチエコー撮像シーケンスの単一のショットにおいて生成される一連のMRエコー信号に対応する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記サブセットが、k空間の非デカルトサンプリングを使用して取得される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記サブセットが、三次元又はより高次元のk空間データを有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記勾配画像が、少なくとも1つの空間的方向に沿って前記単一サブセットMR画像の画像値の空間導関数を決定することにより計算される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
検査体積内で一様な静磁場を生成する少なくとも1つの主磁石コイルと、前記検査体積内で異なる空間的方向において切り替え磁場勾配を生成する複数の勾配コイルと、前記検査体積内でRFパルスを生成する及び/又は前記検査体積内に配置された対象からMR信号を受信する少なくとも1つのRFコイルと、RFパルス及び切り替え磁場勾配の時間的遷移を制御する制御ユニットと、前記受信されたMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットとを有するMR装置において、
少なくとも1つのRFパルス及び切り替え磁場勾配のMR撮像シーケンスを前記対象に行うことによりMR信号を生成するステップと、
複数の時間的に連続したサブセットとして前記MR信号を取得するステップであって、前記複数のサブセットは各サブセットごとに順次取得され、各サブセットが、k空間のサブサンプリングを持つ複数のk空間プロファイルを有し、前記サブセットが、k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットを形成するように互いに補完する、ステップと、
各サブセットから単一サブセットMR画像を再構成するステップと、
各単一サブセットMR画像から勾配MR画像を計算するステップと、
前記勾配MR画像を互いに比較することにより動きを検出するステップと、
を実行するように構成される、MR装置。
【請求項16】
MR装置上で実行されるコンピュータプログラムにおいて、
少なくとも1つのRFパルス及び切り替え磁場勾配のMR撮像シーケンスを生成する命令と、
複数の時間的に連続したサブセットとして前記MR信号を取得する命令であって、前記複数のサブセットは各サブセットごとに順次取得され、各サブセットが、k空間のサブサンプリングを持つ複数のk空間プロファイルを有し、前記サブセットが、k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットを形成するように互いに補完する、命令と、
各サブセットから単一サブセットMR画像を再構成する命令と、
各単一サブセットMR画像から勾配MR画像を計算する命令と、
前記勾配MR画像を互いに比較することにより動きを検出する命令と、
を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)撮像の分野に関する。これは、MR装置の検査体積内に配置された対象のMR撮像の方法に関する。本発明は、MR装置及びMR装置上で実行されるコンピュータプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
二次元又は三次元画像を形成するために磁場と核スピンとの間の相互作用を使用する画像形成MR方法は、軟組織の撮像に対して、多くの点で他の撮像方法より優れており、電離放射線を必要とせず、通常は侵襲的ではないので、特に医療診断の分野において、現今では幅広く使用されている。
【0003】
一般的にMR方法によると、検査されるべき患者の身体は、測定が関連付けられる座標系の軸(通常はz軸)を同時に規定する方向を持つ強力な一様磁場B0内に配置される。磁場B0は、規定された周波数(いわゆるラーモア周波数又はMR周波数)の交流磁場(RF場)の印加により励起(スピン共鳴)されることができる磁場強度に依存して個別の核スピンに対して異なるエネルギレベルを生じる。
【0004】
巨視的視点から、個別の核スピンの分布は、適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)の印加により平衡状態から偏向されることができる総磁化を生じ、このRFパルスの対応する磁場B1は、磁化がz軸の周りで歳差運動を行うように、z軸に垂直に延在する。歳差運動は、フリップ角と称される開口角を持つ円錐の表面を描く。フリップ角の大きさは、印加される電磁パルスの強度及び持続時間に依存する。いわゆる90°パルスの場合、磁化は、z軸から横断面に偏向される(フリップ角90°)。
【0005】
横方向磁化及びその変化は、磁化の変化がz軸に垂直な方向において測定されるような形でMR装置の検査体積内に配置及び配向される受信RFコイルを用いて検出されることができる。
【0006】
体内の空間解像度を実現するために、3つの主軸に沿って延在する一定の磁場勾配が、一様磁場B0に重畳され、スピン共鳴周波数の線形の空間的依存性をもたらす。受信コイルにおいて取得される信号は、この場合、体内の異なる場所と関連付けられることができる異なる周波数の成分を含む。
【0007】
受信コイルを介して得られた信号データは、空間周波数領域に対応し、k空間データと称される。k空間データは、通常は、異なる位相符号化の複数の取得されたk空間プロファイル(k空間における線)を含む。各k空間プロファイルは、多数のサンプルを収集することによりデジタル化される。k空間データのセットは、フーリエ変換を用いてMR画像に変換される。
【0008】
様々なMRI応用において、検査される患者の動きは、画質に悪影響を与える可能性がある。画像の再構成に対して十分なMR信号の取得は、有限の時間期間がかかる。有限の取得時間中の患者の動きは、典型的には、再構成MR画像における動きアーチファクトを生じる。従来のMR撮像アプローチにおいて、取得時間は、MR画像の所定の解像度が指定される場合に、非常に小さな範囲のみに減少されることができる。医療MR撮像の場合、動きアーチファクトは、例えば、心臓及び呼吸の循環運動、及び他の生理学的プロセス、並びにぼけ、誤位置合わせ、変形及びゴーストアーチファクトを生じる患者の動きから生じる可能性がある。
【0009】
異なるアプローチが、MR撮像における動きに関する問題を克服するために開発されている。これらのうちの1つは、いわゆるPROPELLER撮像技術である。PROPELLER概念(Periodically Rotated Overlapping ParalEL Lines, see James G. Pipe: 'Motion Correction With PROPELLER MRI: Application to Head Motion and Free-Breathing Cardiac Imaging', Magnetic Resonance in Medicine, vol. 42, 1999, pages 963-969)において、MR信号データは、N個のストリップにおけるk空間において取得され、各ストリップは、デカルトベースのk空間サンプリングスキームにおけるLの最小周波数の位相符号化の線に対応する、Lの平行なk空間の線からなる。k空間ブレード(blade)とも称される各ストリップは、合計のMRデータセットがk空間における円に及ぶように、例えば、180°/Nの角度だけk空間において回転される。直径Mを持つ完全なk空間データマトリクスが望まれる場合、L及びNは、L×N=M×π/2であるように選択されうる。PROPELLERの1つの本質的な特徴は、直径Lを持つk空間における中心の円形部分が、各k空間ブレードに対して取得されることである。この中心部分は、各k空間ブレードに対する低解像度MR画像を再構成するのに使用されることができる。低解像度MR画像は、患者の動きによる面内変位及び位相誤差を検出するように互いに比較される。相互相関のような適切な技術が、いずれのk空間ブレードが著しい動きによる変位で取得されたか又は他のタイプのアーチファクトを含むかを決定するのに使用される。MR画像データは、最終的なMR画像の再構成の前にk空間において結合されるので、k空間ブレードからのMRデータは、アーチファクトが最終MR画像において減少されるように、k空間ブレードを相互相関することにより検出されるアーチファクトレベルによって重み付けされる。PROPELLER技術は、MR信号取得中に検査される患者の動きに対してロバストであるMR画像取得技術を得るためにk空間の中心部分におけるオーバサンプリングを使用する。
【0010】
しかしながら、既知のPROPELLERアプローチの欠点は、その応用が、多数の連続して回転されるブレードからのk空間プロファイルの特定の円形取得に制限されるという事実から生じる。PROPELLERアプローチの高度に効果的な動き補償及び動き補正概念は、デカルトk空間サンプリングスキームと比較可能ではない。
【0011】
代替例として、いわゆるナビゲータ技術が、撮像体積内の関心体積の位置及び向きを規定する撮像パラメータをプロスペクティブに調整することにより動きに関する問題を克服するように開発されている。ナビゲータ技術において、これにより、ナビゲータ信号のセットが、例えば、患者の呼吸運動を決定するように検査される患者の横隔膜を横断する空間的に制限された体積から取得される。ナビゲータ信号を登録するために、いわゆる2D RFパルスが、使用されてもよい。これらは、例えばペンシルビーム形状である、空間的に制限されたナビゲータ体積を励起し、これは、グラジエントエコーを使用して読み出される。関心体積の動きによって誘発される瞬間位置を検出する他の方法は、横隔膜の上に配置される二次元矢状スライスの取得、又は三次元低解像度データセットの取得である。それぞれのナビゲータ体積は、動いている生体構造の瞬間位置を示す変位値が、取得されたナビゲータ信号から再構成され、関心体積の動き補正に対してリアルタイムで使用されることができるような様式でインタラクティブに配置される。ナビゲータ技術は、主に、呼吸運動が画質を深刻に劣化することができる身体及び心臓検査における呼吸運動の効果を最小化するのに使用される。MRナビゲータ信号に基づくゲーティング及び補正は、これらのアーチファクトを低減するのに使用されうる。
【0012】
しかしながら、ナビゲータ技術の欠点は、ナビゲータ信号の追加の取得が要求され、これが、全体的なスキャン時間の延長を生じることである。更に、既知のナビゲータ方法は、撮像のためのMR信号が取得されるべきである関心体積が、ナビゲータ体積と部分的に重複する場合に、適用するのが難しい。ナビゲータ体積が、それぞれの関心体積上に重ねられる場合、画質は、運動状態の不正確な検出により又はナビゲータ体積内の核磁化の飽和により劣化されうる。
【0013】
米国特許US6144874は、中心k空間ビュー及び周辺k空間ビューが、それぞれ狭い及び広い取得窓において取得される磁気共鳴撮像方法に関する。k空間ビューは、第1及び第2の呼吸ゲーティング信号に対して取得される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行する記載から、改良されたMR撮像技術に対する要望が存在することが、容易に理解される。結果的に、本発明の目的は、効率的な運動補償及び/又は運動補正を可能にし、k空間のデカルトサンプリングと互換性のある方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、MR装置の検査体積内に配置された対象のMR撮像の方法が、開示される。前記方法は、
‐少なくとも1つのRFパルス及び切り替え磁場勾配のMR撮像シーケンスを前記対象に行う(subjecting)ことによりMR信号を生成するステップと、
‐複数の時間的に連続したサブセットとして前記MR信号を取得するステップであって、各サブセットが、k空間のサブサンプリングを持つ複数のk空間プロファイルを有し、前記サブセットが、k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットを形成するように互いに補完する、ステップと、
‐各サブセットから単一サブセット(single-subset)MR画像を再構成するステップと、
‐各単一サブセットMR画像から勾配MR画像を計算するステップと、
‐前記勾配MR画像を互いに比較することにより動きを検出するステップと、
を有する。
【0016】
本発明の教示は、上記のPROPELLER技術の動き検出/補正アプローチを、他の種類のk空間サンプリング、特にデカルトk空間サンプリングに適用することである。本発明は、ナビゲータの追加の取得の必要なしに高速かつロバストな動き検出を可能にする。
【0017】
本発明によると、MR信号は、時間的に連続した複数のサブセットとして、いかなる確立された撮像シーケンス、例えばスピンエコーシーケンス又はグラジエントエコーシーケンスにより取得される。各サブセットは、複数のk空間プロファイルを有し、各サブセットのk空間プロファイルは、サブサンプリングで取得される。これは、各サブセットのk空間サンプリング密度が、撮像されるべき視野(FOV)に対してナイキスト閾値より低いことを意味する。このように減少された数の位相符号化ステップは、短い時間期間内の各サブセットの取得を可能にする。単一のサブセットの取得の持続時間は、各サブセットが前記対象の特定の運動状態を本質的に反映するように前記対象の予測される運動の典型的な時間スケールと比較して短くなくてはならない。人間の対象の医療撮像の典型的なシナリオにおいて、単一のサブセットの取得は、好ましくは、例えば、PROPELLER撮像における単一のk空間ブレードの取得の持続時間と比較可能である、100msより少ない時間がかかるべきである。本発明の方法の最良のパフォーマンスは、各サブセットのk空間データが単一の運動状態に起因することができる限り、(サブセットごとのk空間プロファイルの数を単位として)可能な限り大きなサブセットを使用して得られる。関連する運動の典型的な時間スケールが既知である場合、サブセットごとに取得されるk空間プロファイルの数は、これに応じて決定されることができる。
【0018】
単一サブセットMR画像は、本発明によって各サブセットから再構成される。前記サブセットのk空間データは、k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットを形成するように互いに補完する。換言すると、各サブセットは、他のサブセットとは他のk空間における場所をカバーする。その結果は、前記単一サブセットMR画像が、異なるコンテンツを持ち、運動を検出するためにPROPELLER撮像のように互いに直接的に比較(相互相関)されることができないことである。
【0019】
本発明の本質的なフィーチャは、勾配MR画像が、各単一サブセットMR画像から計算されることである。本発明の意義の範囲内で、勾配MR画像は、それぞれの単一サブセットMR画像から得られたMR画像であり、これにより、コントラスト情報を含むk空間の中心領域(低い空間周波数情報)の影響が、前記勾配MR画像において低減される又は完全に除去される。例えば、各勾配MR画像は、対応する単一サブセットMR画像の(少なくとも1つの空間的方向における)画像値のボクセルに関する空間導関数を含みうる。しかしながら、他の方法又は変換(例えばウェーブレット変換)が、内部k空間の影響を低減するのに使用されてもよい。前記単一サブセットMR画像の間よりも前記勾配MR画像の間に大幅に小さい差が存在することは、本発明の洞察である。空間導関数コンテンツを含むMR画像(前記勾配MR画像)の間の相互相関が、かなり高く、動きに依存することがわかる。2つのサブセットの取得の間に動きが存在する場合、それぞれの勾配MR画像の相互相関は、大幅に低下する。これは、本発明により利用される。動きは、前記勾配MR画像を互いと比較することにより本発明によって検出される。前記比較は、勾配画像の各対の相互相関を計算することにより実行されうる。前記相互相関は、PROPELLER撮像における単一ブレード画像の相互相関のように、前記勾配MR画像の類似性のスカラー尺度として特に適している。前記相互相関は、強度画像である前記勾配MR画像に基づいて計算されうる。しかしながら、前記相互相関は、k空間における前記サブセットの間の位置のシフトを補償するように線形位相補正を実行した後の複素勾配MR画像に基づいてもよい。
【0020】
本発明の好適な実施例において、動き補償MR画像は、k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットから再構成され、前記サブセットは、検出された動きによって重み付けされる。前記サブセットは、重み付けされた重ね合わせによりk空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットになるように結合される。前記重み付けされた重ね合わせは、再構成MR画像における動きにより誘発された画像アーチファクトの標的とされた効果的な低減を可能にする。前記重み付けされた重ね合わせの重み係数は、動きにより破損したサブセットに低減された重みを適用することにより画像アーチファクトが避けられるように前記勾配MR画像の比較から得られる。
【0021】
代替実施例において、動き補正は、動き補正されたMR画像が、動き補正されたサブセットから形成されるk空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットから再構成されることができるように、前記検出された動きによって前記サブセットの少なくとも1つに適用されてもよい。従来のPROPELLER撮像のように、本発明の方法は、前記サブセットにおける動きによって誘発された変位及び位相誤差を推定及び補正するステップを有してもよい。例えば、患者の動きにより引き起こされる変位(平行移動及び/又は回転)及び位相誤差は、前記勾配MR画像の比較から得られることができる。これらの因子は、動き補正されたMR画像を再構成する前に本発明によって各サブセットにおいて補正されてもよい。本発明は、したがって、MR信号取得中の検査される患者の動きに対してロバストであるMR撮像方法を提供する。
【0022】
他の代替例によると、1又は複数の動きにより破損したサブセットが、再取得され、最終MR画像が、動きにより破損していないサブセット及び再取得されたサブセットから形成されたk空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットから再構成される。動きにより破損したサブセットは、前記勾配MR画像の比較により識別される。それぞれのサブセットは、この場合、再取得される。オプションとして、k空間サンプリングのFOVは、前記検出された動きによって前記サブセットを再取得するステップにおいて適合される。このようにして、前記FOVは、撮像された対象の前記検出された動きに続く。
【0023】
好ましくは、本発明によって取得された全てのサブセットは、それぞれの撮像タスクに対応するk空間の同じ所定の領域をカバーする。前記サブセットは、k空間のデカルトサンプリングを使用して取得されてもよく、各サブセットは、複数の等距離の平行なk空間プロファイルを有する。換言すると、各サブセットのk空間プロファイルは、k空間上に均等に広がり、1つのサブセットは、異なるサブセットの測定されたk空間プロファイルの間の一定のオフセットで、個別のk空間プロファイルのk空間位置に関してのみ他のサブセットと異なる。これは、マルチエコー撮像シーケンス(例えば「ターボ」スピンエコーTSEシーケンス)の典型的なk空間取得スキームであり、各サブセットは、前記マルチエコー撮像シーケンスの単一の「ショット」において生成された(すなわち単一のRF励起の後の)一連のMRエコー信号に対応する。しかしながら、本発明により使用される撮像シーケンスは、k空間プロファイルの取得の適切な順序を持ついかなる従来のスピンエコー又はグラジエントエコーシーケンスであってもよい。
【0024】
代わりに、前記サブセットは、(インタリーブされたスパイラルk空間軌道を持つ)マルチショットスパイラルスキャン又はラジアルスキャンのような、非デカルトサンプリングパターンを使用して取得されてもよい。基本的に、比較されるべきサブセットのk空間サンプリングパターン/軌道は、(上記のデカルトサンプリングの場合のように)k空間において平行移動されるか又は(スパイラル/ラジアルスキャンに対して)回転されるかのいずれかである同じ幾何構成を持つべきである。
【0025】
本発明の他の好適な実施例において、前記サブセットは、三次元又はより高次元のk空間データを有してもよい。本発明の方法は、二次元及び三次元MR撮像並びに例えばダイナミックMR撮像又は分光MR撮像のような、より高次のMR撮像に対して同等に適している。
【0026】
記載された本発明の方法は、これまで、検査体積内で一様な静磁場B0を生成する少なくとも1つの主磁石コイルと、前記検査体積内で異なる空間的方向において切り替え磁場勾配を生成する複数の勾配コイルと、前記検査体積内でRFパルスを生成する及び/又は前記検査体積内に配置された対象からMR信号を受信する少なくとも1つのRFコイルと、RFパルス及び切り替え磁場勾配の時間的遷移を制御する制御ユニットと、前記受信されたMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットとを含むMR装置を用いて実行されることができる。本発明の方法は、前記MR装置の前記再構成ユニット及び/又は前記制御ユニットの対応するプログラミングにより実施されることができる。
【0027】
本発明の方法は、現在、臨床的使用におけるほとんどのMR装置において有利に実行されることができる。このために、前記MR装置が、本発明の上で説明された方法ステップを実行するように制御されるコンピュータプログラムを使用することが、単に必要である。前記コンピュータプログラムは、データ担体上に存在するか、又は前記MR装置の前記制御ユニットにおけるインストールに対してダウンロードされるようにデータネットワークに存在するかのいずれかでありうる。
【0028】
添付の図面は、本発明の好適な実施例を開示する。しかしながら、図面が、本発明の限定の規定としてではなく、説明の目的に対して設計されると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の方法を実行するMR装置を示す。
図2】本発明によるK空間プロファイルのデカルト取得を概略的に示す。
図3】本発明による動き検出に対して使用される単一サブセットMR画像及び対応する勾配MR画像を示す。
図4】TSEスキャンと組み合わせた本発明の動き検出アプローチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照すると、MR装置1が示される。前記装置は、実質的に一様な時間的に一定の主磁場B0が検査体積を通るz軸に沿って作成されるような超伝導又は常伝導主磁石コイル2を有する。前記装置は、更に、(一次、二次、及び利用可能である場合に3次)シミングコイル2'のセットを有し、セット2'の個別のシミングコイルを流れる電流は、前記検査体積内のB0偏差を最小化する目的で制御可能である。
【0031】
磁気共鳴生成及び操作システムは、MR撮像を実行するために核磁気スピンを反転又は励起する、磁気共鳴を誘起する、磁気共鳴をリフォーカスする、磁気共鳴を操作する、前記磁気共鳴を空間的に及び他の形で符号化する、及びスピンを飽和させる等のためにRFパルス及び切り替え磁場勾配の系列を印加する。
【0032】
より具体的には、勾配増幅器3は、前記検査体積のx、y及びz軸に沿った全身勾配コイル4、5及び6の選択されたものに電流パルス又は波形を印加する。デジタルRF周波数送信器7は、前記検査体積内にRFパルスを送信するように送信/受信スイッチ8を介してボディRFコイル9にRFパルス又はパルスパケットを送信する。典型的なMR撮像シーケンスは、いかなる印加された磁場勾配とも一緒に、核磁気共鳴信号の選択された操作を達成する短い持続時間のRFパルスセグメントのパケットからなる。前記RFパルスは、飽和させる、共鳴を励起する、磁化を反転させる、共鳴をリフォーカスする、又は共鳴を操作する、及び前記検査体積内に配置された体10の一部を選択するのに使用される。前記MR信号は、ボディRFコイル9によっても取得される。
【0033】
体10の制限された領域のMR画像の生成に対して又は並列撮像を用いるスキャン加速に対して、局所アレイRFコイル11、12、13のセットが、撮像に対して選択された領域に隣接して配置される。アレイコイル11、12、13は、体‐コイルRF送信により誘起されたMR信号を受信するのに使用されることができる。
【0034】
結果として生じるMR信号は、ボディRFコイル9により及び/又はアレイRFコイル11、12、13により取得され、好ましくは前置増幅器(図示されない)を含む受信器14により復調される。受信器14は、送信/受信スイッチ8を介してRFコイル9、11、12及び13に接続される。
【0035】
ホストコンピュータ15は、エコープラナー撮像(EPI)、エコー体積撮像、グラジエント及びスピンエコー撮像、及び高速スピンエコー撮像等のような複数のMR撮像シーケンスのいずれかを生成するようにシミングコイル2'並びにグラジエントパルス増幅器3及び送信器7を制御する。選択されたシーケンスに対して、受信器14は、各RF励起パルスに続いて高速に連続して単一の又は複数のMRデータラインを受信する。データ取得システム16は、受信された信号のアナログ‐デジタル変換を実行し、各MRデータラインを更なる処理に適したデジタル形式に変換する。近年のMR装置において、データ取得システム16は、生画像データの取得に特化された別のコンピュータである。
【0036】
最終的に、デジタル生画像データは、フーリエ変換又はSENSE若しくはGRAPPAのような他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成プロセッサ17により画像表現に再構成される。前記MR画像は、前記患者を通る平面スライス、平行な平面スライスのアレイ、又は三次元体積等を表しうる。前記画像は、次いで、スライス、投影、又は画像表現の他の部分を、例えば結果として生じるMR画像の人間可読ディスプレイを提供するビデオモニタ18を介して、視覚化に対する適切な形式に変換するのにアクセスされうる画像メモリに記憶される。
【0037】
図2は、本発明の実施例によるデカルトk空間サンプリングスキームを示す。
【0038】
いわゆるターボスピンエコー(TSE)シーケンスは、周知のマルチエコー撮像シーケンスである。前記TSEシーケンスの1つの「ショット」は、磁気共鳴の励起のための最初のRFパルスに続いて、異なって位相符号化された一連のスピンエコー信号を生成する複数の迅速に印加された(典型的には180°の)リフォーカスRFパルスを有する。前記エコー信号が、取得され、各エコー信号は、k空間プロファイル、すなわちk空間の一次元サンプルを表し、k空間における前記k空間プロファイルの位置は、前記シーケンスの印加された周波数符号化及び位相符号化切り替え磁場勾配により決定される。いわゆるターボ係数は、各励起の後に取得されたエコーの数である。典型的には、前記マルチエコーシーケンスの複数のショットが、前記取得されたk空間プロファイルからMR画像を再構成することができるためにk空間を完全にサンプリングするように印加される。TSEシーケンスは、今日、ほとんどすべての応用において使用される。幅広い使用にもかかわらず、これは、セグメント化k空間分配取得により動きに対して非常に敏感であることが知られている。撮像される対象の小さな移動は、関心生体構造と重複するゴーストを導入し、スキャンの全体的な診断値を妨害する可能性がある。
【0039】
本発明によると、前記TSEシーケンスの1つのショット中に取得されたk空間プロファイルは、複数の時間的に連続して取得されたサブセットの1つのサブセットを構成する。図2に示された実施例において、ターボ係数5を持つTSEシーケンスの3つのショットが、k空間をサンプリングするように印加される。図2の図の水平な線は、前記TSEシーケンスにより生成された前記エコー信号を表す。S11乃至S15により示されるk空間プロファイルは、第1のショット中に取得され、第1のサブセットを構成する。S21乃至S25により示されるk空間プロファイルは、第2のショット中に取得され、第2のサブセットを構成し、S31乃至S35により示されるk空間プロファイルは、第3のショット中に取得され、第3のサブセットを構成する。各サブセットは、サブサンプリングを用いてk空間をサンプリングする5つのk空間プロファイルを有する。前記3つのサブセットは、k空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットを形成するように互いに補完する。異なるサブセットのk空間プロファイルの間の差Δkは、位相符号化方向kyにおけるFOVのサイズを決定する。
【0040】
本発明によると、単一サブセットMR画像は、各サブセットから再構成される。これは、図3に示される。図3に示される左の9つのMR画像は、33のターボ係数及び9つのショットを持つTSEシーケンスを使用して図2に示されるように取得されたエコー信号から再構成された単一サブセットMR画像である(頭部スキャン)。見られることができるように、前記9つの単一サブセットMR画像におけるコントラストは、前記サブセットがk空間における異なる位置をカバーするので、大幅に異なる。本発明によると、勾配MR画像は、各単一サブセットMR画像から再構成される。図3の右の9つのMR画像は、位相符号化方向kyにおいて画像値のボクセルに関する空間導関数を計算することにより図3の左部分に示された前記単一サブセットMR画像から得られた対応する勾配MR画像である。見られることができるように、前記9つの勾配MR画像のコンテンツは、前記単一サブセットMR画像より高度な類似性を示す。
【0041】
図4は、本発明の動き検出スキームを示す。動きは、前記勾配MR画像を互いに比較することにより検出される。これは、前記勾配MR画像の対ごとの相互相関を計算することにより実行される。図4に示される実施例において、MR信号は、30のターボ係数及び10のショットを持つTSEシーケンスを使用して取得される。中央上の図は、動き破損なしの場合に対する相関マトリクスを示す。前記マトリクスは、前記TSEシーケンスのショットの数、すなわち本発明の意義の範囲においてサブセットの数に対応する10の行及び10の列を持つ。前記マトリクスの各フィールドは、それぞれの単一サブセットMR画像から計算された勾配MR画像の対の相互相関の値を有する。本発明の原理を示すために、ショット2及び4は、1つのボクセルによるシフトを導入することにより動き破損される。右上の図は、x方向におけるシフトに対する相関マトリクスを示し、中央下の図は、y方向におけるシフトに対する相関マトリクスを示す。両方の場合に、相互相関の大幅な低下が、それぞれの相関マトリクスの列2及び4並びに行2及び4において観測される。右下の図は、それぞれのマトリクスの各行に対する列にわたる相互相関の和を示す。前記図は、両方のシフト方向に対して行2及び4における相互相関の効果を明らかに反映する。この和は、動き検出尺度として本発明により使用されることができる。低い値は、それぞれの勾配MR画像及び他の勾配MR画像の低い相関を示し、したがって、動き破損の増大された確率を示す。これは、例えば、前記サブセットの全体から形成されたk空間プロファイルの完全にサンプリングされたセットから動き補償されたMR画像を再構成するのに使用されてもよく、前記サブセットは、前記動き検出尺度によって重み付けされる。代わりに、前記動き検出尺度が所定の閾値より小さいサブセットに対して、再取得が自動的に開始されることができる。対応して再構成されるMR画像(頭部画像)は、図4に沿いて左に示される。
【0042】
本発明は、TSE撮像シーケンスを参照して上に記載されているが、(TFE、FFE又はSEのような)他の既知の撮像シーケンスが、前記取得されたk空間プロファイルの対応する順序で同様に使用されることができることに注意しなければならない。
【0043】
本発明の概念は、例えばky及びkz方向において位相符号化され、三次元k空間上に均等に広がったk空間プロファイルを有するサブセットを使用して、容易に3D又はより高次元の撮像に拡張されることができる。各サブセットは、この場合、(周波数符号化方向kxに沿って延在する)複数の等距離の平行なk空間プロファイルを有する。1つのサブセットは、2つの位相符号化方向ky及びkzにおける異なるサブセットの測定されたk空間プロファイルの間の一定のオフセットΔky及びΔkzで、個別のk空間プロファイのk空間位置に関して他のサブセットとは異なる。
図1
図2
図3
図4