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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】農業支援装置および農業支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20220111BHJP
【FI】
G06Q50/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018059217
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019174888
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100208410
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 寛司
(72)【発明者】
【氏名】大川 英敏
(72)【発明者】
【氏名】包 鼎超
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-279928(JP,A)
【文献】特開2013-165687(JP,A)
【文献】特開2005-031875(JP,A)
【文献】特開2012-133422(JP,A)
【文献】特開2002-251453(JP,A)
【文献】特開2003-099122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0150744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培対象の作物毎に予め定められた基準に基づいて作成され、条件を満たす前記作物毎の行為を示す基準栽培計画を、出荷団体からネットワークを介して受信する基準栽培計画受信手段と、
前記栽培対象の作物に対して行われた農業生産者の行為を示す栽培記録情報を前記農業生産者から前記ネットワークを介して受信する栽培記録情報受信手段と、
前記栽培記録情報受信手段が受信した前記栽培記録情報により示される行為が、前記栽培対象の作物に対応する前記基準栽培計画により示される条件を満たす行為であるか否かを判定する条件判定手段と、
前記条件判定手段により前記条件を満たさない行為であると判定された場合、前記条件を満たさない行為であると判定された行為を行った農業生産者を要注意生産者として特定可能に表示する表示手段と、を備え、
前記条件判定手段は、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を、第1の分類と第2の分類とを含む複数の分類のいずれかに分類する分類手段をさらに備え、
前記第1の分類には、危険度に応じて複数の段階が設けられており、
前記分類手段は、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を前記第1の分類のうちいずれの段階の危険度であるかをさらに分類し、
前記表示手段は、前記分類手段により前記第1の分類に分類された行為を行った前記農業生産者を、前記分類手段により分類された前記危険度がいずれの段階であるかに応じて異なる表示態様で表示し、前記分類手段により分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者を、予め記憶された地図情報から前記危険度に応じて予め設定された範囲に基づいて特定し、前記特定した前記近隣の農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
とを特徴とする農業支援装置。
【請求項2】
前記分類手段により分類された前記危険度に応じて、前記分類手段で分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者に、前記分類された行為が行われたことを通知する通知手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項に記載の農業支援装置。
【請求項3】
前記栽培対象の作物の育成に関する相談を示す育成相談情報を、前記農業生産者から前記ネットワークを介して受信する育成相談受信手段をさらに備え、
前記表示手段は、前記条件判定手段による判定結果に関わらず、前記育成相談受信手段により前記育成相談情報を受信した前記農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の農業支援装置
【請求項4】
前記条件判定手段は、前記分類手段により分類された行為が前記第2の分類である場合、前記栽培対象の作物とは異なる作物に対応する前記基準栽培計画により示される条件を満たすか否かを再度判定する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の農業支援装置。
【請求項5】
農業支援装置における農業支援方法であって、
栽培対象の作物毎に予め定められた基準に基づいて作成され、条件を満たす前記作物毎の行為を示す基準栽培計画を、出荷団体からネットワークを介して受信する基準栽培計画受信ステップと
前記栽培対象の作物に対して行われた農業生産者の行為を示す栽培記録情報を前記農業生産者から前記ネットワークを介して受信する栽培記録情報受信ステップと
前記栽培記録情報受信ステップで受信した前記栽培記録情報によりされる行為が、前記栽培対象の作物に対応する前記基準栽培計画により示される条件を満たす行為であるか否かを判定する条件判定ステップと
前記条件判定ステップで前記条件を満たさない行為であると判定した場合、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を行った前記農業生産者を要注意生産者として特定可能に表示する表示ステップとを備え、
前記条件判定ステップは、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を、第1の分類と第2の分類とを含む複数の分類のいずれかに分類する分類ステップをさらに含み、
前記第1の分類には、危険度に応じて複数の段階が設けられており、
前記分類ステップでは、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を前記第1の分類のうちいずれの段階の危険度であるかをさらに分類し、
前記表示ステップでは、前記分類ステップにより前記第1の分類に分類された行為を行った前記農業生産者を、前記分類ステップにより分類された前記危険度がいずれの段階であるかに応じて異なる表示態様で表示し、前記分類ステップにより分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者を、前記分類ステップにより分類された前記危険度に応じて、予め記憶された地図情報から前記危険度に応じて予め設定された範囲に基づいて特定し、前記特定した前記近隣の農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
ことを特徴とする農業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業支援装置および農業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業生産者は、各人の生産方式により野菜や米などの作物の生産を計画し、当該生産計画や作業実績を出荷団体に紙媒体やシステムを利用して提示している。出荷団体側では、その生産計画や作業実績に基づいて契約販売先や市場での販売業務等を行っている。
【0003】
こうした農業生産者や出荷団体を支援するシステムとして、様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、農業生産者がある時期にある額の収入を得るための栽培計画の立案を支援する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/173875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、農業生産者が所望する収入を得るための栽培計画の立案を支援するものであり、出荷団体側における作業進捗率の把握や農薬使用基準の適合確認などといった、出荷団体側における管理を好適に行うという面からすると未だ不十分であった。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、農業生産者における作業効率だけでなく、出荷団体側における管理を好適に行うことができる農業支援装置および農業支援方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る農業支援装置は、
栽培対象の作物毎に予め定められた基準に基づいて作成され、条件を満たす前記作物毎の行為を示す基準栽培計画を、出荷団体からネットワークを介して受信する基準栽培計画受信手段と、
前記栽培対象の作物に対して行われた農業生産者の行為を示す栽培記録情報を前記農業生産者から前記ネットワークを介して受信する栽培記録情報受信手段と、
前記栽培記録情報受信手段が受信した前記栽培記録情報により示される行為が、前記栽培対象の作物に対応する前記基準栽培計画により示される条件を満たす行為であるか否かを判定する条件判定手段と、
前記条件判定手段により前記条件を満たさない行為であると判定された場合、前記条件を満たさない行為であると判定された行為を行った農業生産者を要注意生産者として特定可能に表示する表示手段と、を備え、
前記条件判定手段は、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を、第1の分類と第2の分類とを含む複数の分類のいずれかに分類する分類手段をさらに備え、
前記第1の分類には、危険度に応じて複数の段階が設けられており、
前記分類手段は、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を前記第1の分類のうちいずれの段階の危険度であるかをさらに分類し、
前記表示手段は、前記分類手段により前記第1の分類に分類された行為を行った前記農業生産者を、前記分類手段により分類された前記危険度がいずれの段階であるかに応じて異なる表示態様で表示し、前記分類手段により分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者を、予め記憶された地図情報から前記危険度に応じて予め設定された範囲に基づいて特定し、前記特定した前記近隣の農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
とを特徴とする。
【0008】
前記分類手段により分類された前記危険度に応じて、前記分類手段で分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者に、前記分類された行為が行われたことを通知する通知手段をさらに備える、
ようにしてもよい。
【0009】
前記栽培対象の作物の育成に関する相談を示す育成相談情報を、前記農業生産者から前記ネットワークを介して受信する育成相談受信手段をさらに備え、
前記表示手段は、前記条件判定手段による判定結果に関わらず、前記育成相談受信手段により前記育成相談情報を受信した前記農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
ようにしてもよい。
【0010】
前記条件判定手段は、前記条件を満たさないと判定した行為を、第1の分類と第2の分類とを含む複数の分類のいずれかに分類する分類手段をさらに備え、
前記表示手段は、前記分類手段により前記第1の分類に分類された行為を行った前記農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
ようにしてもよい。
【0011】
前記条件判定手段は、前記分類手段により分類された行為が前記第2の分類である場合、前記栽培対象の作物とは異なる作物に対応する前記基準栽培計画により示される条件を満たすか否かを再度判定する、
ようにしてもよい。
【0012】
前記第1の分類には、危険度に応じて複数段階の段階が設けられており、
前記分類手段は、前記行為を前記第1の分類のうちいずれの段階の危険度であるかをさらに分類し、
前記表示手段は、前記要注意生産者として特定可能な表示態様を、前記危険度がいずれの段階であるかに応じて異なる表示態様で表示する、
ようにしてもよい。
【0013】
前記表示手段は、前記分類手段により分類された前記危険度に応じて、前記分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
ようにしてもよい。
【0014】
前記分類手段により分類された前記危険度に応じて、前記分類手段で分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者に、前記分類された行為が行われたことを通知する通知手段をさらに備える、
ようにしてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る農業支援方法は、
農業支援装置における農業支援方法であって、
栽培対象の作物毎に予め定められた基準に基づいて作成され、条件を満たす前記作物毎の行為を示す基準栽培計画を、出荷団体からネットワークを介して受信する基準栽培計画受信ステップと
前記栽培対象の作物に対して行われた農業生産者の行為を示す栽培記録情報を前記農業生産者から前記ネットワークを介して受信する栽培記録情報受信ステップと
前記栽培記録情報受信ステップで受信した前記栽培記録情報によりされる行為が、前記栽培対象の作物に対応する前記基準栽培計画により示される条件を満たす行為であるか否かを判定する条件判定ステップと
前記条件判定ステップで前記条件を満たさない行為であると判定した場合、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を行った前記農業生産者を要注意生産者として特定可能に表示する表示ステップとを備え、
前記条件判定ステップは、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を、第1の分類と第2の分類とを含む複数の分類のいずれかに分類する分類ステップをさらに含み、
前記第1の分類には、危険度に応じて複数の段階が設けられており、
前記分類ステップでは、前記条件を満たさない行為であると判定した行為を前記第1の分類のうちいずれの段階の危険度であるかをさらに分類し、
前記表示ステップでは、前記分類ステップにより前記第1の分類に分類された行為を行った前記農業生産者を、前記分類ステップにより分類された前記危険度がいずれの段階であるかに応じて異なる表示態様で表示し、前記分類ステップにより分類された行為を行った前記農業生産者の近隣の農業生産者を、前記分類ステップにより分類された前記危険度に応じて、予め記憶された地図情報から前記危険度に応じて予め設定された範囲に基づいて特定し、前記特定した前記近隣の農業生産者を前記要注意生産者として特定可能に表示する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、農業生産者における作業効率だけでなく、出荷団体側における管理を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る農業支援システムの一例を示す概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る農業支援装置の機能ブロック図である。
図3】作型情報の一例を示す図である。
図4】栽培計画情報の一例を示す図である。
図5】栽培記録情報の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る農業支援装置のハードウェア構成図である。
図7】作型登録処理の一例を示すフローチャートである。
図8】計画登録処理の一例を示すフローチャートである。
図9】栽培記録登録処理の一例を示すフローチャートである。
図10】表示処理の一例を示すフローチャートである。
図11】作型要求画面および計画入力画面の一例を示す説明図である。
図12】作業記録選択画面、必須作業登録画面、および防除作業登録画面の一例を示す説明図である。
図13】出荷開始要求通知画面および承認判断画面の一例を示す説明図である。
図14】育成相談選択画面および育成相談画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本願発明における農業支援装置を、図1に示す農業支援システムに適用した実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
この実施の形態に係る農業支援装置1は、図1に示すように、出荷団体2から作物毎に作成された作型情報を受信した後、農業生産者3が実行した当該作物に対する行為を示す栽培記録情報を受信し、農業生産者3の行為が作型情報に含まれる条件を満たすか否かを判定して、条件を満たさないと判定した場合に、当該行為を行った農業生産者3を要注意生産者として出荷団体2に注意喚起を促す装置である。また、農業生産者3は、栽培した作物を出荷するにあたり、出荷団体2に対し作業実績の報告を行う必要があるが、当該農業支援装置1によれば、栽培記録情報を当該農業支援装置1に登録することで、作業実績の報告を簡易に行うことが可能である。
【0020】
出荷団体2は、各農業生産者3が所属する団体であり、例えば、農業協同組合などの、農業の生産力を高めるために様々な事業を行う団体である。出荷団体2は、所属している農業生産者3に対して農業技術の指導、出荷作物の安全性の確保、農業に必要な資材の共同購入、直売所の開催などといった業務を行う。この実施の形態では、出荷団体2における農業生産者3に対する農業技術の指導および、出荷作物の安全性の確保を、出荷団体2における主な業務として、以下説明する。具体的に、出荷団体2は、農業技術の指導の一環として、栽培対象の作物毎(後述する品種毎)に、栽培方法や栽培基準を規定した作型情報を農業生産者3に対して提供する。また、出荷団体2は、農業技術の指導の一環として、農業生産者3が栽培する作物に対する育成相談を受け付け、栽培対象の作物の育成に関するアドバイスを行うこともある。また、出荷団体2は、出荷作物の安全性の確保といった業務の一環として、農業生産者3の作業進捗率や作業実績の確認などの業務を行うことで、出荷作物の安全性を確保する。
【0021】
農業生産者3は、出荷団体2に所属している農家個人または複数の農家によって形成される農業団体である。この実施の形態における農業生産者3は、栽培する作物(栽培対象の作物)に対応した作型情報を出荷団体2から取得し、当該栽培対象作物の作型情報に基づいて栽培対象の作物の栽培計画を作成する。また、農業生産者3は、当該栽培対象の作物に対して行った行為を、栽培記録情報として農業支援装置1に登録することにより、出荷団体2から課されている作業報告を行う。
【0022】
次に、農業支援装置1の機能構成について、図2を参照して説明する。農業支援装置1は、作型情報受信部11と、栽培計画情報受信部12と、栽培記録情報受信部13と、基準判定部14と、結果表示部15と、を備える。
【0023】
作型情報受信部11は、出荷団体2において作成された作型情報を受信する。作型情報受信部11では、出荷団体2において作成された作型情報を、FTP(File Transfer Protocol)やメール添付などの様々な方法によりファイル形式で受信してもよいし、例えば、当該農業支援装置1の側からの要求(作型フォーム要求)により作型登録用のフォームを提供し、当該作型登録用のフォームに入力された内容を受信することで作型情報を受信してもよい。この実施の形態では、当該作型登録用のフォームに入力された内容を受信することで作型情報を受信する。なお、受信した作型情報は、後述するハードディスクドライブ104に記憶される。
【0024】
農業支援装置1に送信される作型情報は、栽培対象の作物毎(後述する品種毎)に、予め設けられた栽培基準に沿って出荷団体2において作成される基準栽培計画である。図3は、出荷団体2にて作成され農業支援装置1に記憶された作型情報の一例を示す図である。作型情報は、図3に示すように、少なくとも基本栽培情報と、使用推奨肥料情報と、農薬情報と、を含んでいる。なお、図3に示す例では、栽培対象の作物の品目が、「米A」の品種の「米」である例を示しているが、その他、栽培対象の作物毎の作型情報が複数記憶される。なお、栽培対象の作物とは、栽培対象となる品種の作物のことをいう。
【0025】
基本栽培情報は、栽培対象の作物についての基本的な情報を示すものであり、図3に示すように、作物の分類を示す分類情報と、当該分類に属する作物の品目を示す品目情報と、当該品目における品種を示す品種情報と、当該品種の作物を栽培する場合における栽培開始から出荷までの日数を示す日数情報と、を少なくとも含んでいる。なお、当該作型情報は、栽培対象の作物毎に作成される。
【0026】
分類情報は、例えば、「穀類」、「芋類」、「葉菜類」などといった栽培対象の作物の属するグループを示す情報である。図3に示す例では、栽培対象の作物が「米A」の「米」であることから、当該分類情報には「穀類」を示す情報が格納されている。品目情報は、分類情報により示される分類に属する作物の名称(作物名)を示す情報であり、図3に示す例では、「穀類」の分類に属する「米」や「麦」などの作物のうち、「米」を示す情報が示されている。品種情報は、品目情報により示される作物名の作物の品種や銘柄を示す情報であり、例えば、品目情報が「米」であれば「こしひかり」や「あきたこまち」などといった「米」の品目に対応する品種が格納される。この実施の形態では、図3に示すように、「米」の品目に対応する品種として「米A」が格納される。なお、この実施の形態では、理解を容易にするため、品種についての情報を簡略化して示している。また、図3に示す開始から出荷までの日数を示す日数情報には、「米A」の品種の「米」の栽培を開始してから出荷するまでにかかる日数を示す情報が格納される。なお、この実施の形態では、栽培対象の作物毎に当該作型情報が作成される例を示しているが、例えば、同じ品種であっても、栽培開始の時期または出荷の時期によって異なる作型情報が作成されてもよい。具体的に、暖かい季節に栽培を開始する場合と、寒い季節に栽培を開始する場合とで異なる日数情報の作型情報がそれぞれ作成されてもよい。
【0027】
使用推奨肥料情報は、基本栽培情報にて示される品種の作物を栽培する場合における肥料に関する情報であり、使用を推奨する肥料の種類を示す使用推奨肥料情報と、当該使用推奨肥料毎の使用頻度を示す推奨使用頻度情報と、を少なくとも含んでいる。図3に示す例では、当該「米A」の「米」を栽培するにあたり、肥料A~肥料Cといった種類の肥料が使用推奨肥料とされ、図示する頻度が推奨使用頻度とされている例を示している。
【0028】
農薬情報は、基本栽培情報にて示される品種の作物を栽培する場合における農薬に関する情報を示しており、使用が許可されている農薬(使用可能農薬)の種類を示す使用可能農薬情報と、当該使用可能農薬毎の使用可能回数を示す使用可能回数情報と、該使用可能農薬毎の希釈基準を示す希釈基準情報と、該使用可能農薬毎の1回の散布につき使用可能な使用量を示す基準使用量と、を少なくとも含んでいる。なお、当該使用可能農薬情報は、栽培対象の作物毎に、例えば公的機関などで予め定められている。また、使用可能回数情報、希釈基準情報、基準使用量についても、栽培対象の作物および使用可能農薬毎に、例えば公的機関などで予め定められている。この実施の形態における農薬情報は、当該栽培対象の作物の栽培基準を示す情報である。
【0029】
図3に示す例では、当該「米A」の「米」を栽培するにあたり、農薬A~農薬Dといった種類の農薬が使用可能農薬とされ、図示する回数、希釈倍率、使用量が、当該農薬A~Dにおけるそれぞれの使用可能回数情報、希釈基準情報、基準使用量となっている。なお、図示する例では、使用可能農薬毎の使用可能回数情報、希釈基準情報、基準使用量が格納されている例を示したが、例えば、農薬Aと農薬Bとを使用する場合には、農薬Aを2回まで、農薬Bを1回まで、といったように、使用可能回数情報として複数の使用可能農薬を組み合わせた場合における回数についても格納されていてもよい。希釈基準情報や基準使用量についても同様に、複数の使用可能農薬を組合せた場合における希釈倍率や使用量が格納されていてもよい。
【0030】
図2に戻り、栽培計画情報受信部12は、農業生産者3からの作型要求に基づいて作型情報を農業生産者3に提供し、農業生産者3にて作成された栽培計画情報を受信する。作型要求には、栽培対象の作物の分類情報、品目情報、品種情報と、当該栽培対象の作物の出荷予定日または栽培開始日が含まれている(図11(A)参照)。なお、栽培対象の作物の品種情報と出荷予定日または栽培開始日が含まれていれば、栽培対象の作物の分類情報、品目情報は含まれていなくてもよい。栽培計画情報受信部12では、当該作型要求にて示される品目情報に対応する作型情報を農業生産者3に提供する。そして、栽培計画情報受信部12は、作型情報に基づいて農業生産者3により作成された栽培計画情報を受信する。栽培計画情報は、当該栽培対象の作物の栽培計画を示す情報である。受信した栽培計画情報は、農業生産者3毎に、栽培対象の作物に応じて後述するハードディスクドライブ104の所定領域に記憶される。なお、栽培計画情報には、当該栽培計画情報を一意に特定可能な識別情報が付与されて記憶されればよい。
【0031】
図4は、農業生産者3にて作成され農業支援装置1に記憶される栽培計画情報の一例を示す図である。図4に示す例では、栽培対象の作物が「米A」の品種の「米」であり、出荷予定日を2018年9月30日として作型要求が行われた場合の例を示している。なお、図示は省略しているが、栽培計画情報には、農業生産者3を特定する情報が含まれており、農業生産者3毎に、栽培対象の作物に応じて作成される。
【0032】
栽培計画情報は、図4に示すように、栽培対象の作物に関する情報を示す基本情報と、当該作物の栽培について出荷団体2に対し実績報告をすべき対象の作業行為を示す必須作業予定日情報と、を少なくとも含んでいる。基本情報には、上述した分類情報、品目情報、品種情報の他、圃場を一意に特定する情報を示す圃場情報と、作付面積を示す作付面積情報と、収穫予定の量を示す収穫量と、が少なくとも含まれている。必須作業予定日情報には、当該品種の作物を栽培するに当たり、出荷を行うために出荷団体2に対して報告義務が課されている農業生産者3の作業行為(必須作業行為)として、品種毎に定められた項目が格納される。図示する例では、「米A」の「米」を栽培することから、必須作業予定日情報には、苗床に種を植える予定日を示す「播種日」、育成した苗を田に植える予定日を示す「田植え日」など、予め報告義務として定められている作業行為を行う予定の年月日が格納される。
【0033】
図2に戻り、栽培記録情報受信部13は、栽培対象の作物に対する農業生産者3が行った作業行為の内容を示す栽培記録情報を受信する。栽培記録情報受信部13は、栽培記録情報を受信する度に、当該栽培記録情報を累積的に記憶する。すわなち、栽培記録情報は、作業行為の履歴を示す履歴情報でもある。栽培記録情報は、農業生産者3毎に、栽培対象の作物に応じて後述するハードディスクドライブ104の所定領域に記憶される。栽培記録情報には、栽培計画情報を一意に特定可能な識別情報と同一の識別情報が付与されることで、当該栽培計画情報と対応付けて記憶される。栽培記録情報は、出荷団体2に対して報告義務が課されている必須作業行為が栽培対象の作物に対して行われた場合に、当該農業生産者3から所定の登録処理が行われることにより送信される。また、栽培記録情報は、栽培対象の作物に対して農薬の散布といった防除行為が行われた場合に、当該農業生産者3から所定の登録処理が行われることにより送信される。なお、栽培記録情報受信部13は、この他にも、栽培対象の作物の出荷開始の要求である出荷開始要求を農業生産者3から受信する。なお、この他にも、栽培対象の作物に対して使用した肥料に関する情報を栽培記録情報として受信してもよい
【0034】
図5は、農業生産者3から送信され農業支援装置1に記憶される栽培記録情報の一例を示す図である。なお、図示は省略しているが、栽培記録情報には、農業生産者3を特定する情報が含まれており、農業生産者3毎に、栽培対象の作物に応じて(圃場毎に)記憶される。なお、この実施の形態における栽培記録情報は、図5(A)に示す必須作業行為についての栽培記録情報(必須作業)と、図5(B)に示す農薬の散布についての栽培記録情報(農薬作業)とが、それぞれ農業生産者3毎に、栽培対象の作物に応じて記憶される。
【0035】
栽培記録情報(必須作業)には、図5(A)に示すように、出荷団体2に対して報告義務が課されている必須作業行為とその実施日が、農業生産者3から受信した栽培記録情報に基づいて記憶される。また、栽培記録情報(農薬作業)には、図5(B)に示すように、散布された農薬の種類とその回数、使用目的や希釈倍率、使用量や散布日などの情報が、農業生産者3から受信した栽培記録情報に基づいて記憶される。
【0036】
図2に戻り、基準判定部14は、栽培対象の作物に対する農業生産者3が行った作業行為が、栽培基準を満たしているか否かを判定する。具体的に、基準判定部14は、栽培記録情報受信部13にて受信した栽培記録情報によって示される作業行為が、作型情報受信部11で受信した作型情報によって示される当該栽培対象の作物の栽培基準を満たしているか否かを判定する。この実施の形態における基準判定部14では、栽培記録情報受信部13にて受信した栽培記録情報のうち、農薬の散布についての栽培記録情報(栽培記録情報(農薬作業))に含まれる各種情報が、作型情報受信部11で受信した作型情報のうち、農薬情報にて示される各種基準を満たしているか否かを判定することにより、行われた作業行為が栽培基準を満たす行為であるか否かを判定する。
【0037】
なお、基準判定部14は、栽培記録情報受信部13にて農薬情報に関する栽培記録情報を受信する度に、栽培基準を満たす行為であるか否かを判定する。また、基準判定部14では、栽培基準を満たさないと判定した場合、栽培記録情報に含まれる各種情報のうち、基準を満たさない情報であることを示す違反フラグをオン状態にセットする。例えば、希釈基準を満たさないと判定した場合、栽培記録情報に含まれる希釈倍率が違反であることを示す違反フラグをオン状態にセットする。違反した項目が複数ある場合には、それぞれの情報に対応付けて違反フラグをオン状態にセットすればよい。なお、違反フラグは、出荷団体2のユーザによる所定のタイミングにおける所定の操作によりオフ状態にクリアされればよい。
【0038】
結果表示部15は、出荷団体2のユーザからの要求または農業生産者3からの要求に応じて、基準判定部14にて判定した判定結果を含む作業履歴を、出荷団体2の端末に送信し、表示する。この実施の形態では、出荷団体2のユーザから、特定の農業生産者3を指定して閲覧要求が行われた場合に、栽培記録情報受信部13で受信した栽培記録情報(農薬作業)と、基準判定部14にてセットした違反フラグの状態に基づいて、指定された農業生産者3の作業行為の履歴を表示するとともに、違反項目を特定可能に表示する。また、結果表示部15は、農業生産者3からの出荷開始要求が行われた場合に、栽培記録情報受信部13で受信して記憶した栽培記録情報(農薬作業)と、基準判定部14にてセットした違反フラグの状態に基づいて当該出荷開始要求を行った農業生産者3の作業行為の履歴を表示するとともに、違反項目を特定可能に表示する。その他、結果表示部15は、出荷団体2のユーザからの要求に応じて、栽培記録情報受信部13で受信した栽培記録情報(必須作業)と、栽培計画情報受信部12で受信した栽培計画情報とに基づいて、出荷団体2のユーザが指定した農業生産者3の作業行為の進捗度を示す進捗情報を表示可能である。なお、結果表示部15における表示例については後述する。
【0039】
次に、農業支援装置1のハードウェア構成について、図6を参照して説明する。農業支援装置1は、各種の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)101と、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)102と、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)103と、各種情報を記憶するハードディスクドライブ104と、通信回線とのインターフェースであるネットワークカード105と、を備える。
【0040】
CPU101は、ハードディスクドライブ104に記憶されているプログラムをRAM102に読み出して実行することで、後述する各種処理を実行する。
【0041】
RAM102は、CPU101の作業領域として用いられる。
【0042】
ROM103は、CPU101が実行する農業支援装置1の基本動作のための制御プログラム、BIOS(Basic Input Output System)等を記憶する。
【0043】
ハードディスクドライブ104は、情報を記憶する媒体であり、上述の作型情報、栽培計画情報、栽培記録情報などが格納される。
【0044】
ネットワークカード105は、通信回線とのインターフェースであり、出荷団体2および農業生産者3との間で通信可能に接続されている。具体的には、出荷団体2および農業生産者3の端末に接続されている。当該ネットワークカード105と出荷団体2および農業生産者3との間は直接接続されていてもよく、インターネット、イントラネット、VPN(Virtual Private Network)、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介して接続されていてもよい。また、通信方式は有線でも無線でもよい。
【0045】
CPU101、RAM102、ROM103、ハードディスクドライブ104、およびネットワークカード105は、それぞれ協同することにより、上述の作型情報受信部11、栽培計画情報受信部12、栽培記録情報受信部13、基準判定部14、および結果表示部15として機能する。
【0046】
次に、農業支援システムの動作について、農業支援装置1の動作を中心に、図面を参照して説明する。農業支援装置1は、出荷団体2にて作成された作型情報を登録する作型登録処理、農業生産者3により作成された栽培計画情報を登録する計画登録処理、農業生産者3の栽培記録情報を登録する栽培記録登録処理、および農業生産者3の作業履歴を表示する表示処理といった各種処理を実行する。
【0047】
農業支援装置1は、まず、出荷団体2からの作型フォーム要求に応じて作型情報を登録するための作型登録用のフォーム(作型登録フォーム)を出荷団体2の端末に表示する(図示省略)。そして、当該作型登録フォームの各項目(図3に示す基本栽培情報、使用推奨肥料情報および農薬情報の各項目)に情報が入力され、出荷団体2のユーザにより登録ボタンが押下されると、入力された作型情報を登録するための作型登録要求が出荷団体2の側から農業支援装置1に送信される。なお、当該作型登録フォームには、新規に作型情報を登録することを示す「新規」と、既に登録されている作型情報の内容を更新することを示す「更新」とのいずれかが選択可能であり、出荷団体2のユーザは、「新規」と「更新」のうち、所望する項目を選択して登録ボタンを押下すればよい。作型登録要求には、「新規」または「更新」のいずれかを示す情報の他に、出荷団体2のユーザから入力された各種項目に対応する内容が含まれている。農業支援装置1の側では、当該作型登録要求を受信することで、図7に示す作型登録処理を開始する。
【0048】
農業支援装置1が図7に示す作型登録処理を開始すると、作型情報受信部11は、受信した作型登録要求を確認し、今回登録する作型情報が新規の作型登録であるか否かを判定する(ステップS11)。具体的に、ステップS11の処理では、受信した作型登録要求を確認し、「新規」と「更新」のうち「新規」が選択されているか否かを確認する。新規の作型登録である場合、すなわち「新規」が選択されている場合(ステップS11;Yes)、作型情報受信部11は、当該作型登録要求に含まれている、作型登録フォームに入力された内容を、作型情報としてハードディスクドライブ104に新たに記憶(登録)し(ステップS12)、作型登録処理を終了する。
【0049】
一方、新規の作型登録でない場合、すなわち「更新」が選択されている場合(ステップS11;No)、作型情報受信部11は、当該作型登録要求にて示される品種の作型情報を特定し、当該作型登録要求に含まれている、作型登録フォームに入力された内容にて更新登録(上書きして記憶)し(ステップS13)、作型登録処理を終了する。
【0050】
作型登録処理は、出荷団体2の側から送信された作型登録要求を受信する度に実行されればよい。また、上述したように、同じ品種であっても、栽培開始の時期または出荷の時期によって異なる作型情報が作成されてもよく、その場合には、同一の品種について栽培開始の時期または出荷の時期が異なる作型登録要求に基づいて、それぞれ作型登録処理が実行されればよい。なお、この実施の形態では、少なくとも図3に示す米Aの品種の作型情報が、当該作型登録処理により登録されているものとする。
【0051】
作型登録処理により作型情報が登録された状態になると、農業支援装置1は、農業生産者3からの作型要求に応じて、作型登録処理にて登録された栽培対象の作物の作型情報を、当該農業生産者3の端末に表示する。なお、作型要求は、農業生産者3の端末にインストールされたアプリケーションにより送信される。この実施の形態では、当該アプリケーションを農業生産者3が使用するにあたり、農業生産者の氏名、住所、電話番号、圃場などといった個人情報が登録されているものとする。
【0052】
作型要求は、図11(A)に示すように、栽培対象の作物の分類情報、品目情報、品種情報と、当該栽培対象の作物の出荷予定日と、が指定され、作型要求ボタンが農業生産者3にて押下されることにより農業支援装置1へ送信される。この実施の形態では、米Aの品種の米を出荷予定日「2018年9月30日」として作型要求を行うものとする。すなわち、図11(A)に示す分類情報に「穀類」、品目に「米」、品種に「米A」、出荷予定日に「2018.09.30」といった各種情報が入力(選択)されて作型要求ボタンが農業生産者3にて押下されたものとする。
【0053】
農業支援装置1の側では、農業生産者3からの作型要求を受信すると、当該作型要求に対応する作型情報を特定し、当該特定した作型情報を農業生産者3の端末に表示する。具体的に、作型要求が米Aの品種の米に対応する作型情報を要求するものである場合、図11(B)に示すように、米Aの品種の米に対応する作型情報(図3に示す内容)が農業生産者3の端末に表示される。なお、当該作型要求の出荷予定日が「2018年9月30日」であることから、農業支援装置1は、作型情報に含まれる「開始から出荷までの日数」に基づいて、必須作業予定日を、当該作型要求の出荷予定日から逆算して自動的に入力する。なお、図11(B)に示す例では図示を省略しているが、当該農業生産者3の端末には、図3に示す使用推奨肥料情報および農薬情報の各項目に対応する情報についても表示されてもよい。また、図11(B)に示すように、必須作業予定日の各項目については、農業生産者3の側にて日付を変更可能である。さらに、図11(B)に示す例では、農業生産者3が圃場を選択可能である例を示しているが、圃場については、当該農業生産者3の氏名、住所などといった個人情報とともに、予め農業支援装置1に登録されている情報(当該アプリケーションの初期設定時に登録された情報)に基づいて、複数の圃場の中から使用する圃場を選択すればよい。なお、農業支援装置1から提供された作型要求に対応する作型情報は、農業生産者3の端末の所定の領域に記憶されればよい。
【0054】
図11(B)に示すように、農業生産者3により圃場が選択され、必須作業予定日が入力されて(または自動入力されたままの状態で)登録ボタンが押下されると、栽培計画登録要求が農業支援装置1へ送信される。なお、図11(B)に示す計画登録画面には、図示は省略しているが、新規に栽培計画を登録することを示す「新規」と、既に登録されている栽培計画の内容を更新することを示す「更新」とのいずれかが選択可能であり、出荷団体2のユーザは、「新規」と「更新」のうち、所望する項目を選択して登録ボタンを押下すればよい。栽培計画登録要求には、「新規」または「更新」のいずれかを示す情報の他に、栽培対象の作物の基本的情報を示す基本情報と必須作業予定日情報といった栽培計画情報が含まれている(図4参照)。農業支援装置1の側では、当該栽培計画登録要求を受信することで、図8に示す計画登録処理を開始する。
【0055】
農業支援装置1が図8に示す計画登録処理を開始すると、栽培計画情報受信部12は、受信した栽培計画登録要求を確認し、今回登録する栽培計画情報が新規の栽培計画登録であるか否かを判定する(ステップS21)。具体的に、ステップS21の処理では、受信した栽培計画要求を確認し、「新規」と「更新」のうち「新規」が選択されているか否かを確認する。新規の栽培計画登録である場合、すなわち「新規」が選択されている場合(ステップS21;Yes)、栽培計画情報受信部12は、当該栽培計画登録要求に含まれている栽培計画情報の内容を、ハードディスクドライブ104に新たに記憶(登録)し(ステップS22)、計画登録処理を終了する。
【0056】
一方、新規の栽培計画登録でない場合、すなわち「更新」が選択されている場合(ステップS21;No)、栽培計画情報受信部12は、当該栽培計画登録要求にて示される品種の栽培計画情報を特定し、当該栽培計画登録要求に含まれている栽培計画情報の内容にて更新登録(上書きして記憶)し(ステップS33)、計画登録処理を終了する。
【0057】
計画登録処理は、農業生産者3の側から送信された栽培計画登録要求を受信する度に実行されればよい。なお、この実施の形態では、少なくとも図4に示す米Aの品種を栽培対象の作物とした栽培計画情報が、当該計画登録処理により登録されるものとする。
【0058】
このように、作型登録処理により作型情報が登録され、計画登録処理により栽培計画情報が登録された後、農業支援装置1は、農業生産者3から栽培記録情報を受信すると、図9に示す栽培記録登録処理を開始する。農業生産者3には、必須作業行為や、農薬の散布といった防除行為を行った場合に、当該行為を出荷団体2に対して報告する義務が課されており、農業生産者3は、農業生産者3の端末から当該栽培記録情報を農業支援装置1に送信することで当該報告を行う。なお、栽培記録情報は、農業生産者3の端末にインストールされた上述のアプリケーションにより送信される。
【0059】
まず、図9の栽培記録登録処理が実行される起因となる栽培記録情報が送信される流れについて説明する。農業生産者3は、まず、当該アプリケーションを起動し、栽培対象の作物(圃場)を選択する。この実施の形態では、米Aの品種の米が栽培対象の作物であり、田1Aの圃場が選択される。栽培対象の作物(圃場)が選択されると、図12(A)に示す作業記録選択画面が表示され、農業生産者3は、必須作業行為を行ったことを報告するための「作業の記録をする」ボタンまたは、農薬の散布を行ったことを報告するための「防除の記録をする」ボタンのいずれかを押下する。
【0060】
「作業の記録をする」ボタンが押下された場合には、図12(B)に示す必須作業登録画面が表示される。そして、農業生産者3は、行った必須作業を、図示する必須作業項目から選択するとともに、必須作業を行った日付を必須作業実施日に入力する。必須作業項目としては、米Aの米の必須作業のうち、既に報告済みの作業以外が選択可能に表示されればよい。また、必須作業実施日については、当該アプリケーションを起動した日の日付が自動的に入力されていてもよい。農業生産者3は、当該必須作業項目を選択し、必須作業日を入力した後、図示する登録ボタンを押下することで、必須作業を行ったことを示す栽培記録情報、すなわち栽培記録情報(必須作業)を農業支援装置1に送信する。これにより、農業支援装置1の側では、栽培記録登録処理を開始する。
【0061】
一方、「防除の記録をする」ボタンが押下された場合には、図12(C)に示す防除作業登録画面が表示される。そして、農業生産者3は、散布した農薬の種類、希釈倍率、使用量(図示省略)、使用目的(図示省略)、回数(図示省略)などを選択するとともに、農薬を散布した日付を実施日に入力する。農薬の種類については、米Aの米について使用が可能な農薬名として、農薬A~農薬Dが作型情報に基づいて選択可能に表示されればよい。また、回数については、当該栽培対象の作物ごとに薬品に応じた散布回数をカウントしておき、今回の散布が何回目の散布に該当するのかが自動的に表示されればよい。また、希釈倍率や使用量については、選択ではなく、農業生産者3が数値を入力するようにしてもよい。また、実施日については、当該アプリケーションを起動した日の日付が自動的に入力されていてもよい。農業生産者3は、当該防除作業に関する項目を選択し、実施日を入力した後、図示する登録ボタンを押下することで、防除作業を行ったことを示す栽培記録情報、すなわち栽培記録情報(防除作業)を農業支援装置1に送信する。これにより、農業支援装置1の側では、栽培記録登録処理を開始する。
【0062】
農業支援装置1が図9に示す栽培記録登録処理を開示すると、栽培記録情報受信部13は、当該受信した栽培記録情報が防除作業を示すものであるか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31の処理では、受信した栽培記録情報が、栽培記録情報(防除作業)であるか否かを判定する。受信した栽培記録情報が防除作業を示すものである場合(ステップS31;Yes)、基準判定部14は、当該栽培記録情報(防除作業)に示される項目が基準を満たすか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32の処理では、当該栽培対象の作物に対応する作型情報に基づいて、散布した農薬の種類、希釈倍率、使用量、回数などといったそれぞれの項目が作型情報に含まれるそれぞれの基準を満たすか否かを判定する。
【0063】
基準を満たさない、すなわち違反項目があると判定した場合(ステップS32;No)、基準判定部14は、当該違反項目に対応する違反フラグをオン状態にセットする(ステップS33)。例えば、栽培記録情報(防除作業)に示される農薬の種類が「農薬A」で、希釈倍率が「50倍」である場合、米Aの米に対応する作型情報にて示される希釈倍率の基準値は「500倍」であることから(図3参照)、基準判定部14は、当該希釈倍率の項目が違反であると判定し、希釈倍率違反を示すフラグをオン状態にセットする。
【0064】
ステップS33の処理を実行した後、ステップS31にて防除作業ではない、すなわち受信した栽培記録情報が、栽培記録情報(必須作業)であると判定した場合(ステップS31;No)、またはステップS32にて基準を満たすと判定して場合(ステップS32;Yes)、栽培記録情報受信部13は、受信した栽培記録情報をハードディスクドライブ104の所定領域に記憶して(ステップS34)、栽培記録登録処理を終了する。ステップS34の処理では、ステップS33にてオン状態にセットされた違反フラグの状態についても合わせて記憶されればよい。また、受信した栽培記録情報が栽培記録情報(必須作業)である場合には、図5(A)に示すように栽培記録情報(必須作業)が記憶され、栽培記録情報(防除作業)である場合には、図5(B)に示す栽培記録情報(防除作業)が、違反フラグの状態(図示省略)と合わせて記憶されればよい。また、栽培記録情報(必須作業)および栽培記録情報(防除作業)は、それぞれ栽培対象の作物(圃場)および農業生産者3ごとに対応付けて記憶され、さらに、栽培計画情報と栽培対象の作物(圃場)および農業生産者3ごとに対応付けて記憶されればよい。
【0065】
なお、当該栽培記録登録処理は、農業生産者3の側から送信された栽培記録情報を受信する度に実行されればよい。
【0066】
栽培記録登録処理により栽培記録情報が農業支援装置1に登録(記憶)されると、図10に示す表示処理が実行可能となる。図10に示す表示処理は、出荷団体2のユーザからの要求または農業生産者3からの要求に応じて実行される。具体的に、出荷団体2のユーザからの要求としては、例えば当該農業生産者3の作業の進捗を確認するための要求が含まれる。農業生産者3からの要求としては、栽培対象の作物の出荷を行うための承認要求としての出荷開始要求が含まれる。当該表示処理は、その他にも様々な要求に応じて実行されてよいが、この実施の形態では、出荷団体2のユーザからの要求が、農業生産者3の作業の進捗を確認するための要求であり、農業生産者3からの要求が、栽培対象の作物の出荷を行うための承認を要求する出荷開始要求である場合を例に、以下説明する。なお、出荷団体2のユーザからの要求は、当該出荷団体2のユーザが任意のタイミングにおいて、進捗を確認したい農業生産者3とその生産者の栽培対象の作物を指定して、出荷団体2の端末より当該要求を送信することにより行われる。また、農業生産者3からの要求は、栽培対象の作物の出荷を行うことが可能な状態となったタイミングにおいて、栽培対象の作物を指定して、農業生産者3の端末より出荷開始要求を送信することにより行われる。
【0067】
出荷開始要求は、農業生産者3によるアプリケーションに対する操作(承認申請ボタンの押下)により送信される。なお、出荷団体2のユーザからの要求は、作型情報受信部11の機能にて受信され、農業生産者3からの要求は、栽培記録情報受信部13の機能により受信されればよい。また、農業生産者3の端末から送信される出荷開始要求は、栽培記録情報の送信と同様に、農業生産者3の端末にインストールされたアプリケーションに対する農業生産者3の操作に基づいて送信される。
【0068】
農業支援装置1が図10に示す表示処理を開始すると、受信した要求が進捗を確認するための要求(進捗確認要求)であるか否かを判定する(ステップS41)。進捗確認ではない場合、すなわち農業生産者3の端末から送信された出荷開始要求である場合(ステップS41;No)、結果表示部15は、栽培記録情報(防除作業)と違反フラグの状態とに基づく履歴情報を出荷団体2の端末に送信し(ステップS42)、表示処理を終了する。出荷団体2の側では、当該履歴情報を受信したことに基づいて、当該出荷団体2の端末に、図13(A)に示す出荷開始要求を受信したことを示す表示(出荷開始要求受信表示)が行われる。そして、出荷団体2のユーザにより当該出荷開始要求受信表示がクリックされると、図13(B)に示すような承認判断画面において、履歴情報が表示される。この実施の形態における履歴情報は、図示するように、違反フラグがオン状態である項目(図示する例では2回目の農薬Aの希釈倍率の項目)が、違反フラグがオフ状態である項目とは異なる態様で表示されるよう、ステップS42の処理にて設定される。また、履歴情報は、違反フラグがオンである項目が1つ以上ある場合には、違反行為を行った農業生産者3であるとして「この生産者は要注意!」などといったメッセージが表示されるよう、ステップS42の処理にて設定される。また、ステップS42の処理において、図13(B)に示すように、承認するか、承認保留するかといった表示ボタンを表示するよう設定される。すなわち、違反項目がある場合には、当該農業生産者3が要注意生産者であることが報知されることで、出荷を保留するよう示唆する表示が行われる。そして承認が保留されると、作物を出荷する直前に出荷団体2の職員による目視などにより行われる実際の出荷審査において、当該農業生産者3に対して重点的な審査が行われることとなる。一方、承認された場合には、実際の出荷審査においてスムーズな審査が行われ、出荷作業の効率化につながることになる。
【0069】
図10に戻り、受信した要求が出荷団体2の端末から送信された進捗確認要求である場合(ステップS41;Yes)、結果表示部15は、当該進捗確認要求により示される農業生産者3の栽培対象の作物の栽培計画情報と、当該栽培計画情報に対応する栽培記録情報(必須作業)とに基づいて、栽培計画情報により示される必須作業予定日に対する当該必須作業の実績を示す進捗情報(図示省略)を作成し、出荷団体2の端末に送信することで(ステップS43)出荷団体2の端末に当該進捗情報を表示し、表示処理を終了する。なお、この実施の形態では、進捗確認要求において一人の農業生産者3の栽培対象の作物が指定された例を示しているが、例えば、米Aの米を栽培している農業生産者3全体の進捗情報を要求するなど、栽培対象の作物のみを指定し、複数の農業生産者3の進捗情報を要求するようにしてもよい。この場合、ステップS43の処理では、複数の農業生産者3の進捗情報の平均を算出するなどすればよい。このような進捗確認を行うことにより、特定の日における出荷数などを大まかに予想することができる。なお、計画に対する実績が予め定められた日数よりも遅い農業生産者3に対し、出荷団体2の側からの要求に基づいて、農業支援装置1から注意情報を送信するようにしてもよい。
【0070】
このように、栽培対象の作物に対する進捗の確認や、当該作物の出荷を承認するための判断材料を表示することなどにより、出荷作物の安全性の確保といった出荷団体2の側における管理を好適に行うことができる。
【0071】
(変形例)
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、農業支援装置1では、上記実施の形態で示した全ての技術的特徴を備えるものでなくてもよく、従来技術における少なくとも1つの課題を解決できるように、上記実施の形態で説明した一部の構成を備えたものであってもよい。また、下記の変形例それぞれについて、少なくとも一部を組み合わせても良い。
【0072】
上記実施の形態では、農業生産者3から栽培記録情報を受信し、作型情報に含まれる条件を満たさないと判定した場合に、当該行為を行った農業生産者3を要注意生産者として出荷団体2に注意喚起を促す例を示したが、これに加え、農業支援装置1は、農業生産者3から栽培対象の作物に対する育成相談を受信してもよく、育成相談を受信した農業生産者3を要注意生産者と同様に扱うようにしてもよい。育成相談は、例えば、栽培対象の作物が病気になった場合にどのような対応をすべきかどうかといった病気に対する対応や、虫や鳥、動物などの生き物への対処法などである。
【0073】
育成相談は、栽培記録情報の送信と同様に、農業生産者3によるアプリケーションに対する操作により送信されればよい。具体的に、農業生産者3は、当該アプリケーションを起動し、図14(A)に示す育成相談画面において「育成相談をするボタン」を押下し、栽培対象の作物(圃場)を選択する。米Aの品種の米に対する育成相談を行う場合、米Aの米を栽培中の田1Aの圃場を選択する。そして、農業生産者3は、必要があれば、育成相談の対象の作物の写真を撮影する。その後、図14(B)に示す相談事項を入力して「相談ボタン」を押下する。これにより、農業支援装置1に育成相談要求が送信される。
【0074】
農業支援装置1の側では、栽培記録情報受信部13にて農業生産者3から育成相談要求を受信すればよい。また、上述した違反フラグに加え、育成相談が行われたことを示す育成相談フラグが、農業生産者3ごとの栽培対象の作物に応じて設けられていればよい。そして、栽培記録情報受信部13にて育成相談を受信した場合に、当該農業生産者3の栽培対象の作物に対応する育成相談フラグをオン状態にセットすればよい。そして、図10のステップS42の処理において、育成相談フラグがオン状態にセットされている場合には、例えば、図13に示す「この生産者は要注意!」のメッセージに代えて、またはそれに加えて「育成相談あり」のメッセージ表示を行えばよい。なお、育成相談フラグと違反フラグの両方がオン状態である場合には、両方のメッセージを表示すればよい。なお、育成相談フラグは、出荷団体2のユーザによる所定のタイミングにおける所定の操作によりオフ状態にクリアされればよい。
【0075】
また、農業支援装置1は、育成相談要求を受信した場合、当該育成相談要求にて示される育成相談の内容(写真も含む)を出荷団体2の端末に送信し、育成相談が行われたことを通知する。そして、出荷団体2の側では、当該育成相談の内容に応じたアドバイスを、出荷団体2の端末から農業支援装置1に送信する。農業支援装置1の側では、当該アドバイスを受信する度に、対応する農業生産者3の端末に当該アドバイスの内容を送信すればよい。このように、育成相談が行われることの多くは、栽培対象の作物が病気にかかっていたり、動物の被害にあっている場合であるため、出荷団体2の職員による目視などにより行われる実際の出荷審査において、当該農業生産者3に対して重点的な審査を行う必要がある。そのため、育成相談を行った農業生産者3を、違反行為を行った農業生産者3と同様に扱うことで、出荷団体2に対して注意喚起を促している。これによれば、出荷作物の安全性の確保といった農業生産者3の管理をより好適に行うことができる。
【0076】
また、上記実施の形態では、栽培対象の作物に対応する作型情報に含まれる条件を満たさないと判定した場合に、当該行為を行った農業生産者3を要注意生産者として出荷団体2に注意喚起を促す例を示したが、例えば、米Aの米に対応する作型情報の条件を満たさない場合であっても、それよりも基準の低い条件となる米Bの米に対応する作型情報の条件を満たす場合がある。そのため、栽培対象の作物に対応する作型情報に含まれる条件を満たさない場合には、当該栽培対象の作物と同一の品目の作物であって、当該条件よりも低い条件の品種の作物に対応する作型情報の条件を満たすか否かをさらに判定するようにしてもよい。そして、当該条件よりも低い条件の品種の作物に対応する作型情報の条件についても満たすことのない場合に、当該行為を行った農業生産者3を要注意生産者として出荷団体2に注意喚起を促すようにすればよい。
【0077】
その場合、例えば、ステップS32の処理において、農業生産者3に対して、米Aの米の作型情報に含まれる条件を満たさないことを通知するとともに、米Bや米Cの作型情報に含まれる条件についての判定を行うか否かを問い合わせるようにしてもよい。また、米Aよりも基準の低い米B、米Bよりも条件の低い米Cに対する判定を行うなど、複数段階の条件について、ステップS32の処理にて判定するように、農業生産者3による設定操作にて予め設定されていてもよい。また、どの段階の条件まで判定するかについても農業生産者3により設定されていてもよい。そして、当該栽培対象の作物よりも低い条件の品種の作物(低条件の作物)について判定を行った場合には、当該栽培対象の作物に対応する栽培記録情報(防除作業)と、低条件の作物に対応する栽培記録情報(防除作業)との両方が記憶されればよい。なお、低条件の作物に対応する栽培記録情報(防除作業)は、品種情報が低条件の作物に変更されている他は、栽培対象の作物に対応する栽培記録情報(防除作業)にて示される防除作業の内容と同一であればよい。また、低条件の作物に対応する栽培記録情報(防除作業)が記憶された場合、栽培対象の作物に対応する栽培記録情報(必須作業)の品種を変更して複製することで、当該品種の作物に対応する栽培記録情報(必須作業)についても作成されてもよい。
【0078】
また、例えば、栽培対象の作物に対応する作型情報に含まれる条件を満たさないと判定した場合に、当該違反行為を危険度に応じて複数段階に段階分けをしてもよい。例えば、米Aの米に使用可能な農薬Aの希釈基準は500倍以上であるが(図3参照)、500倍以上であれば初期値である危険度0、300倍~499倍を危険度1、150倍~299倍を危険度2、50倍~149倍を危険度3、1倍~49倍を危険度4とし、ステップS32の処理において、いずれの危険度の違反行為であるか否かについても判定してもよい。また、危険度がいずれであるかを示す危険度情報を、違反フラグをオンにセットする際に合わせて記憶してもよい。そして、ステップS42の処理において、危険度情報により示される危険度をともに送信し、危険度に応じて異なる態様により、履歴情報の違反項目が表示されればよい。例えば、図13(B)に示す例では、2回目の農薬Aの希釈倍率の項目が、危険度3であることから、危険度3に対応する色で表示すればよい。これによれば、危険度に応じて表示態様が異なることから、出荷団体2の側において審査をどの程度厳重に行うかを容易に把握することができ、出荷作物の安全性の確保するための管理を容易に行うことができる。
【0079】
さらに、上述した危険度が高い場合、当該違反行為を行った農業生産者3の圃場のみならず、その周辺の圃場についても例えば汚染などの被害を受けている可能性が考えられる。そのため、例えば、それぞれの農業生産者3の圃場について、地名地番だけでなく、緯度経度により示される地図情報を、各農業生産者3の氏名と住所と合わせて記憶しておき、危険度が3以上の違反行為が行われた場合、予め危険度に応じて定められた範囲内の圃場を有する農業生産者3を、要注意生産者として扱うようにしてもよい。例えば、ある農業生産者3にて図13(B)に示す例のように希釈倍率50倍の農薬Aが散布された場合、危険度3の行為が行われたことから、半径3km以内の圃場を有する農業生産者3を、要注意生産者とすればよい。危険度4の行為が行われた場合には、半径5km以内の圃場を有する農業生産者3を、要注意生産者とすればよい。なお、この場合、例えば、農業生産者3ごとに関連違反フラグを設け、危険度が3以上の違反行為が行われた場合に、当該違反行為が行われた圃場の半径3km以内の圃場を有する農業生産者3に対応する関連違反フラグの状態をオン状態にセットすればよい。そして、ステップS42の処理にて関連違反フラグの状態をともに送信し、当該関連違反フラグがオン状態である場合に、出荷団体2の端末に対し、当該農業生産者3が要注意生産者であることを表示すればよい。なお、危険度3以上の違反行為を行った農業生産者3の影響で要注意生産者となったことを特定可能に表示してもよい。なお、関連違反フラグは、出荷団体2のユーザによる所定のタイミングにおける所定の操作によりオフ状態にクリアされればよい。これによれば、汚染されている可能性がある作物に対して重点的な審査が行われることになるため、出荷作物の安全性の確保といった出荷団体2の側の管理を好適に行うことができる。
【0080】
また、危険度が3以上の違反行為が行われた場合には、図9に示す栽培記録登録処理において栽培記録情報(農薬作業)を登録する際に、出荷団体2へその旨を通知するとともに、当該違反行為が行われた圃場の半径3km以内の圃場を有する農業生産者3に対してその旨を通知するようにしてもよい。これによれば、除染作業などといった対策を早急に練ることができ、出荷作物の安全性の確保といった出荷団体2の側の管理を好適に行うことができる。また、育成相談により予め定められた危険度の高い病気が発見された場合には、その圃場の周辺の圃場を有する農業生産者3に対してその旨を通知するようにしてもよい。また、当該危険度の高い病気について複数の農業生産者3から育成相談を受けた場合には、出荷団体2のユーザの操作に基づいて、その周辺の圃場を有する農業生産者3を要注意生産者と同様に扱うようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、栽培対象の作物に対応する作型情報に含まれる条件を満たさないと判定した場合に、当該行為を行った農業生産者3を要注意生産者とし「この生産者は要注意!」などといったメッセージを表示して出荷団体2に注意喚起を促す例を示したが、これは一例である。違反行為を行った農業生産者3であることが出荷団体2の側にて特定できさえすれば、メッセージ表示ではなくとも、例えば、農業生産者3のIDや、圃場、氏名を表示してもよい。さらに、違反リストといったように、履歴情報とは別途違反行為を行った農業生産者3のリストを表示するようにしてもよい。また、例えば、一の農業生産者3が複数種類の作物を栽培した場合において、違反行為が行われた作物と、違反行為が行われていない作物とが混在した場合には、いずれかの作物にて違反行為が行われた場合には、全ての作物に対して要注意生産者として表示してもよい。それとは反対に、違反行為が行われた作物に対してのみ要注意生産者として表示してもよい。また、違反行為が行われた作物とその行為、および違反行為が行われていない作物とその履歴情報など、当該生産者3の栽培対象の作物全ての一覧が表示されてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、一つの圃場で一つの品種の作物を栽培する例を示したが、例えば、一つの圃場で複数の作物を栽培することも可能であり、その場合には、「田1A-1」、「田1A-2」といったように、予め農業支援装置1に予め登録されている「田1A」の圃場を区分け可能としてもよい。これによれば、農業生産者3における圃場の利用の効率化を図ることができる。
【0083】
また、上記実施の形態では、農業生産者3から出荷開始要求が送信された場合に、図10に示す表示処理により栽培記録情報(防除作業)と違反フラグの状態とに基づく履歴情報が表示される例を示した。すなわち、上記実施の形態では、栽培対象の作物が出荷可能な状態となる度に出荷開始要求を送信する例を示したが、これは一例である。一度出荷を開始した栽培対象の作物については、例えば、その翌週に同一の作物の出荷を行うこともあるものの、当該作物についての栽培記録情報(防除作業)は、先に出荷した作物の栽培記録情報(防除作業)と同一である場合がほとんどである。そのため、一度出荷開始要求が送信された対象の品種の作物については、再度の表示処理を行わず(作業行為が行われた場合には栽培記録情報としての記憶は行われる)、農業生産者3から出荷終了確認要求が送信された場合に、再度表示処理を行って、栽培記録情報(防除作業)と違反フラグの状態とに基づく履歴情報を表示するようにしてもよい。これによれば、承認作業が煩雑になることを防止して効率化を図ることができる。
【0084】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションとの分担、またはOSとアプリケーションとの協同により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納してもよい。
【0085】
また、搬送波にプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS、Bulletin Board System)に当該プログラムを掲示し、ネットワークを介して当該プログラムを配信してもよい。そして、これらのプログラムを起動し、オペレーティングシステムの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 農業支援装置、2 出荷団体、 3 農業生産者、11 作型情報受信部、12 栽培計画情報受信部、13 栽培記録情報受信部、14 基準判定部、15 結果表示部、101 CPU、102 RAM、103 ROM、104 ハードディスクドライブ、105 ネットワークカード
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