(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】熱交換器用フィン付き管の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 53/08 20060101AFI20220111BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20220111BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20220111BHJP
B21D 39/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B21D53/08 H
F28F1/32 C
F28D1/047 B
B21D53/08 G
B21D53/08 J
B21D39/08 A
(21)【出願番号】P 2018063999
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】丸笠 茂男
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特許第4233317(JP,B2)
【文献】特表2006-507467(JP,A)
【文献】特開昭63-187078(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0969739(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/08
F28F 1/32
F28D 1/047
B21D 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部を有するフィン固定用管と、直管部に並列状に固定されている複数のプレートフィンからなるフィン群とを備えており、直管部は、フィン群が設けられていないフィン無し部分を少なくとも1つ有しており、各プレートフィンに管挿通穴が形成されており、直管部を管挿通穴に通した状態でフィン固定用管の内部に流体圧力を導入して拡管を行うことにより各プレートフィンが直管部の周囲に固定されている熱交換器用フィン付き管を製造する装置であって、
板状ベースと、板状ベースの上に所定ピッチで並列状に立設された多数のフィン支持プレートとを備えており、隣接するフィン支持プレート間がプレートフィンを挿入するためのフィンセット間隙となされ、各フィン支持プレートの上縁にフィン固定用管の直管部を嵌め入れうる切り欠きが形成されているフィンセット治具と、
フィン支持プレートのピッチと同一のピッチで並列状に配されている複数の下プレートと、全ての下プレートの一端どうしおよび他端どうしを連結している1対の端部連結壁とを備えており、各下プレートがフィンセット間隙に挿入されるように板状ベースの上に配置されており、各下プレートの上縁に、直管部を挿通させうる貫通穴の下部を形成するための切り欠きが形成されている管クランプ用下ユニットと、
フィン支持プレートのピッチと同一のピッチで並列状に配されている、管クランプ用下ユニットの下プレートと同数の上プレートと、全ての上プレートの上縁どうしを連結している上部連結壁ならびに全ての上プレートの一端どうしおよび他端どうしを連結している1対の端部連結壁のうち少なくとも一方の連結壁とを備えており、各上プレートの下縁が対応する下プレートの上縁に当接するように管クランプ用下ユニットの上に配置されており、各上プレートの下縁に、直管部を挿通させる貫通穴の上部を形成するための切り欠きが形成されている管クランプ用上ユニットと、
管クランプ用上ユニットを下方に押圧する押圧部材と、
を備えている熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【請求項2】
プレートおよび上プレートの数が異なる複数組の管クランプ用下ユニットおよび管クランプ用上ユニットを備えており、直管部のフィン無し部分の長さに応じて、所要の組の管クランプ用下ユニットおよび管クランプ用上ユニットが選択的に使用されるようになっている、請求項1記載の熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【請求項3】
押圧部材が、管クランプ用上ユニットを上プレートの並列方向に位置調整可能に保持しうる保持部を下面側に有している板状のものであって、押圧部材を下方に移動させることにより、保持部に保持された管クランプ用上ユニットの各上プレートの下縁が管クランプ用下ユニットの対応する下プレートの上縁に当接させられて下方に押圧される、請求項1または2記載の熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【請求項4】
管クランプ用上ユニットが上部連結壁を備えており、上部連結壁の上面に、上プレートの並列方向にフィン支持プレートのピッチと同一のピッチで複数の下歯が形成されており、押圧部材の下面に、上部連結壁の下歯と噛み合わせられる上歯が押圧部材の全長にわたって形成されており、押圧部材の両縁部に、管クランプ用上ユニットの両端部を保持する保持枠が着脱自在に取り付けられている、請求項3記載の熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【請求項5】
管クランプ用下ユニットの1対の端部連結壁に、板状ベースの両縁部に係り合わせられる下方突出状の係合部が形成されている、請求項1~4のいずれか1つに記載の熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【請求項6】
直管部を有するフィン固定用管と、直管部に並列状に固定されている複数のプレートフィンからなるフィン群とを備えており、直管部は、フィン群が設けられていないフィン無し部分を少なくとも1つ有しており、各プレートフィンに管挿通穴が形成されており、直管部を管挿通穴に通した状態でフィン固定用管をその内部に導入した流体圧力によって拡管することにより各プレートフィンが直管部の周囲に固定されている熱交換器用フィン付き管を製造する方法であって、
直管部を有するフィン固定用管と、管挿通穴が形成された多数のプレートフィンとを用意すること、
各プレートフィンを、請求項1~5のいずれか1つに記載の熱交換器用フィン付き管の製造装置における全てのフィンセット間隙のうちフィン群を設けるべき部分に位置しているフィンセット間隙に挿入して配置すること、
管クランプ用下ユニットを、プレートフィンが配置されていないフィンセット間隙に下プレートが挿入されるように、板状ベースの上に配置すること、
フィン固定用管の直管部を、各プレートフィンの管挿通穴に通すとともに各フィン支持プレートの切り欠き内に嵌め入れて、直管部に、複数の並列状のプレートフィンからなるフィン群と、フィン無し部分とを設けること、
管クランプ用上ユニットを、各上プレートの下縁が対応する下プレートの上縁に当接するように管クランプ用下ユニットの上に配置して、押圧部材により下方に押圧するとともに、両プレートの切り欠きによって形成された貫通穴に、フィン固定用管の直管部を通した状態にすること、および、
フィン固定用管の内部に流体圧力を導入して拡管を行い、各プレートフィンを直管部の周囲に固定すること、
を含んでいる熱交換器用フィン付き管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば冷蔵庫や冷蔵ショーケース等の冷却装置の蒸発器として用いられる熱交換器に関し、より詳細には、同熱交換器を形成するための熱交換器用フィン付き管の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫や冷蔵ショーケースなどの冷却装置の蒸発器に用いられる熱交換器として、例えば下記特許文献1および特許文献2に示すように、2つの管挿通穴を有する複数のプレートフィンが並列状に配されてなるフィン群が間隔をおいて複数設けられ、全てのプレートフィンの2つの管挿通穴にヘアピン状フィン固定用管の両直管部が通され、フィン固定用管内に圧力流体を導入して拡管させることによりプレートフィンが両直管部の周囲に固定されて熱交換器用フィン付き管が形成され、同管の直管部が、隣接するフィン群間の部分で曲げられて全体として蛇行状に形成されたものが知られている。
上記の熱交換器によれば、ヘアピン状フィン固定用管へのプレートフィンの固定が、フィン固定用管内に圧力流体を導入して拡管させることにより行われているので、フィン固定用管の内面に管の長さ方向にのびるインナーフィンを形成しておくことが可能となり、それによって熱交換器性能を向上させることができる。
【0003】
ここで、下記特許文献1には、熱交換器用フィン付き管の製造方法として、1)ヘアピン状フィン固定用管と、2つの管挿通穴が間隔をおいて形成された複数のプレートフィンとを用意し、2)フィン固定用管の両直管部をそれぞれ全てのプレートフィンの両管挿通穴に通すことにより、複数の並列状プレートフィンからなるフィン群を直管部の長さ方向に間隔をおいて複数設けるとともに、フィン固定用管の両直管部における隣り合う2つのフィン群間にそれぞれフィン無し部分を設けておき、3)フィン固定用管の各直管部のフィン無し部分を、所要径の円筒状拘束部を有する拘束用金型により拘束し、4)この状態でフィン固定用管に流体を導入して拡管を行うことにより、各フィン群のプレートフィンをフィン固定用管の直管部の周囲に固定する、という方法が開示されている。
この製造方法によれば、フィン固定用管の各直管部のフィン無し部分が拘束用金型の円筒状拘束部により拘束された状態で拡管が行われるため、拡管時にフィン無し部分が破裂するのが防止される。
【0004】
また、下記特許文献2には、熱交換器用フィン付き管の製造方法として、1)ヘアピン状フィン固定用管と、2つの管挿通穴が間隔をおいて形成された複数のプレートフィンとを用意し、2)プレートフィンを、フィンセット治具の板状ベース上に間隔をおいて立設された複数のフィン支持プレート間のフィンセット間隙のうちフィン群を設けるべき部分に連続して並んでいる複数のフィンセット間隙に挿入して配置し、3)プレートフィンが配置されていないフィンセット間隙に管クランプ用下プレートを挿入して配置し、4)フィン固定用管の両直管部をそれぞれプレートフィンの両管挿通穴に通すとともに両直管部をそれぞれフィン支持プレートの上縁に形成された2つの切り欠き内に嵌め入れて、複数の並列状プレートフィンからなるフィン群とフィン無し部分とを設け、5)管クランプ用下プレートの上に管クランプ用上プレートを配置するとともに両プレート間に形成される両貫通穴にそれぞれフィン固定用管の両直管部を通した状態とし、6)押圧部材により上プレートを下方に押圧し、7)フィン固定用管内に流体を導入して拡管を行い、フィン群のプレートフィンを直管部の周囲に固定する、という方法が開示されている。
この製造方法の場合も、フィン固定用管の各直管部のフィン無し部分が管クランプ用上下プレートによりクランプされた状態で拡管が行われるため、拡管時にフィン無し部分が破裂するのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4300013号公報
【文献】特許第4233317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、熱交換器用フィン付き管の直管部に設けられるフィン無し部分の位置や長さは、熱交換器の形式や機種によって異なる場合がある。
【0007】
従って、上記特許文献1記載の方法で熱交換器用フィン付き管を製造する場合、熱交換器の形式や機種に応じて、フィン無し部分の位置や長さが異なる拘束用金型を個別に製作する必要があり、特に、小ロットモデル対応のフィン付き管を製造する際には、金型の製作費の負担が過大になるという問題があった。
【0008】
一方、上記特許文献2記載の熱交換器用フィン付き管の製造方法では、直管部のフィン無し部分の位置や長さが異なる複数種類の熱交換器用フィン付き管を製造する場合でも、使用する管クランプ用上下プレートの配置や数を変更するだけで、対応可能である。したがって、この製造方法によれば、管クランプ用上下プレートを多数用意しておくだけで、複数種類の熱交換器用フィン付き管の製造を行うことが可能であり、上記特許文献1の製造方法に比べて、コストが抑えられる。
しかしながら、上記特許文献2の製造方法の場合、直管部のフィン無し部分の位置や長さが異なる熱交換器用フィン付き管を製造する際、フィンセット間隙に配置された複数の管クランプ用の下プレートおよびその上に配置された上プレートを1枚ずつ差し替える必要があるため、差替作業に長時間を要するという問題があった。また、上記特許文献2の製造方法では、管クランプ用上プレートは、その下部がフィンセット間隙に差し込まれているにすぎないので倒れることがあり、そのまま拡管を行うとフィン固定用管に意図しない変形が生じて歩留りの低下を招くおそれがあった。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、フィン固定用管の直管部に設けられるフィン無し部分の位置や長さが異なる複数種類の熱交換器用フィン付き管を製造するに当たり、フィン付き管の種類毎に拘束用金型を用意する必要がある場合と比べて大幅にコストが抑えられ、他種類のフィン付き管を製造する仕様に変更するために要する作業時間が短縮され、拡管時にフィン無し部分を拘束する手段に位置ズレが生じて歩留りの低下を招くおそれのない、熱交換器用フィン付き管の製造装置および製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0011】
1)直管部を有するフィン固定用管と、直管部に並列状に固定されている複数のプレートフィンからなるフィン群とを備えており、直管部は、フィン群が設けられていないフィン無し部分を少なくとも1つ有しており、各プレートフィンに管挿通穴が形成されており、直管部を管挿通穴に通した状態でフィン固定用管の内部に流体圧力を導入して拡管を行うことにより各プレートフィンが直管部の周囲に固定されている熱交換器用フィン付き管を製造する装置であって、
板状ベースと、板状ベースの上に所定ピッチで並列状に立設された多数のフィン支持プレートとを備えており、隣接するフィン支持プレート間がプレートフィンを挿入するためのフィンセット間隙となされ、各フィン支持プレートの上縁にフィン固定用管の直管部を嵌め入れうる切り欠きが形成されているフィンセット治具と、
フィン支持プレートのピッチと同一のピッチで並列状に配されている複数の下プレートと、全ての下プレートの一端どうしおよび他端どうしを連結している1対の端部連結壁とを備えており、各下プレートがフィンセット間隙に挿入されるように板状ベースの上に配置されており、各下プレートの上縁に、直管部を挿通させうる貫通穴の下部を形成するための切り欠きが形成されている管クランプ用下ユニットと、
フィン支持プレートのピッチと同一のピッチで並列状に配されている、管クランプ用下ユニットの下プレートと同数の上プレートと、全ての上プレートの上縁どうしを連結している上部連結壁ならびに全ての上プレートの一端どうしおよび他端どうしを連結している1対の端部連結壁のうち少なくとも一方の連結壁とを備えており、各上プレートの下縁が対応する下プレートの上縁に当接するように管クランプ用下ユニットの上に配置されており、各上プレートの下縁に、直管部を挿通させる貫通穴の上部を形成するための切り欠きが形成されている管クランプ用上ユニットと、
管クランプ用上ユニットを下方に押圧する押圧部材と、
を備えている熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【0012】
2)下プレートおよび上プレートの数が異なる複数組の管クランプ用下ユニットおよび管クランプ用上ユニットを備えており、直管部のフィン無し部分の長さに応じて、所要の組の管クランプ用下ユニットおよび管クランプ用上ユニットが選択的に使用されるようになっている、上記1)の熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【0013】
3)押圧部材が、管クランプ用上ユニットを上プレートの並列方向に位置調整可能に保持しうる保持部を下面側に有している板状のものであって、押圧部材を下方に移動させることにより、保持部に保持された管クランプ用上ユニットの各上プレートの下縁が管クランプ用下ユニットの対応する下プレートの上縁に当接させられて下方に押圧される、上記1)または2)の熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【0014】
4)管クランプ用上ユニットが上部連結壁を備えており、上部連結壁の上面に、上プレートの並列方向にフィン支持プレートのピッチと同一のピッチで複数の下歯が形成されており、押圧部材の下面に、上部連結壁の下歯と噛み合わせられる上歯が押圧部材の全長にわたって形成されており、押圧部材の両縁部に、管クランプ用上ユニットの両端部を保持する保持枠が着脱自在に取り付けられている、上記3)の熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【0015】
5)管クランプ用下ユニットの1対の端部連結壁に、板状ベースの両縁部に係り合わせられる下方突出状の係合部が形成されている、上記1)~4)のいずれか1つの熱交換器用フィン付き管の製造装置。
【0016】
6)直管部を有するフィン固定用管と、直管部に並列状に固定されている複数のプレートフィンからなるフィン群とを備えており、直管部は、フィン群が設けられていないフィン無し部分を少なくとも1つ有しており、各プレートフィンに管挿通穴が形成されており、直管部を管挿通穴に通した状態でフィン固定用管をその内部に導入した流体圧力によって拡管することにより各プレートフィンが直管部の周囲に固定されている熱交換器用フィン付き管を製造する方法であって、
直管部を有するフィン固定用管と、管挿通穴が形成された多数のプレートフィンとを用意すること、
各プレートフィンを、上記1)~5)のいずれか1つの熱交換器用フィン付き管の製造装置における全てのフィンセット間隙のうちフィン群を設けるべき部分に位置しているフィンセット間隙に挿入して配置すること、
管クランプ用下ユニットを、プレートフィンが配置されていないフィンセット間隙に下プレートが挿入されるように、板状ベースの上に配置すること、
フィン固定用管の直管部を、各プレートフィンの管挿通穴に通すとともに各フィン支持プレートの切り欠き内に嵌め入れて、直管部に、複数の並列状のプレートフィンからなるフィン群と、フィン無し部分とを設けること、
管クランプ用上ユニットを、各上プレートの下縁が対応する下プレートの上縁に当接するように管クランプ用下ユニットの上に配置して、押圧部材により下方に押圧するとともに、両プレートの切り欠きによって形成された貫通穴に、フィン固定用管の直管部を通した状態にすること、および、
フィン固定用管の内部に流体圧力を導入して拡管を行い、各プレートフィンを直管部の周囲に固定すること、
を含んでいる熱交換器用フィン付き管の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
上記1)の熱交換器用フィン付き管の製造装置にあっては、フィン固定用管の直管部に設けられるフィン無し部分の拡管を抑えるために同部分をクランプする複数の下プレートおよび複数の上プレートが、それぞれ下ユニットおよび上ユニットとして一体化されている。そのため、フィン無し部分の位置が異なる熱交換器用フィン付き管を製造する場合、下ユニットおよび上ユニットの配置を変更するのみで対応することが可能である。
したがって、上記装置によれば、フィン無し部分の位置が異なる複数種類の熱交換器用フィン付き管を製造する場合のコストが抑えられ、特に、小ロットモデルの熱交換器に対応するフィン付き管の製造に好適に用いることができる。また、上記装置によれば、上下プレートの差替が上下ユニットとして一括で行われるため、他種類のフィン付き管を製造する仕様に変更するために要する作業時間が大幅に短縮される。さらに、上記装置によれば、複数の上プレートが、上ユニットとして一体化されており、配置後に位置ズレを生じることがないので、拡管の不具合による歩留りの低下を招くおそれがない。
【0018】
上記2)の熱交換器用フィン付き管の製造装置によれば、下プレートおよび上プレートの数が異なる複数組の管クランプ用下ユニットおよび管クランプ用上ユニットを用意しておき、これらのユニットを選択的に使用することによって、フィン無し部分の位置および長さが異なる複数種類の熱交換器用フィン付き管を、コストを抑えて効率よく製造することができる。
【0019】
上記3)の熱交換器用フィン付き管の製造装置によれば、保持部によって管クランプ用上ユニットを所要位置に保持した状態で、押圧部材を下方に移動させれば、管クランプ用上ユニットが管クランプ用下ユニットの上に配置されて下方に押圧されるので、フィン付き管の製造工程の数を少なくすることができ、製造効率が向上する。
【0020】
上記4)の熱交換器用フィン付き管の製造装置によれば、製造すべき熱交換器用フィン付き管における直管部のフィン無し部分の位置や長さに合わせて、管クランプ用上ユニットの交換や配置の変更を容易に行うことができ、使い勝手がよい。
【0021】
上記5)の熱交換器用フィン付き管の製造装置によれば、1対の端部連結壁に設けられた係合部が板状ベースの両縁部に係り合わせられることにより、管クランプ用下ユニットが板状ベースの幅方向にずれるのが防止されるので、拡管時にフィン固定用管の直管部のフィン無し部分を確実にクランプしておくことができる。
【0022】
上記6)の熱交換器用フィン付き管の製造方法によれば、直管部のフィン無し部分をクランプする上下ユニットを交換したり配置変更したりするだけで、フィン無し部分の位置や長さが異なる複数種類の熱交換器用フィン付き管を製造することができるので、コストが抑えられる。また、上記方法によれば、上下プレートの配置の変更を上下ユニットとして一括で行うことができるため、他種類のフィン付き管を製造する仕様に変更するために要する作業時間が大幅に短縮される。また、上記方法によれば、管クランプ用上ユニットとして一体化された複数の上プレートが、配置後に位置ズレを生じることがないので、拡管の不具合による歩留りの低下を招くおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の実施形態に係る製造装置を用いて製造する熱交換器用フィン付き管を示す部分省略平面図である。
【
図2】同製造装置を示すものであって、管クランプ用上ユニットが装着された押圧部材を下方に移動させる前の状態の要部を示す斜視図である。
【
図3】同製造装置の管クランプ用下ユニットを示すものであって、(a)は斜視図、(b)は底面図である。
【
図4】同製造装置の押圧部材および管クランプ用上ユニットを分解して示す下方斜視図である。
【
図5】同製造装置の管クランプ用上ユニットの平面図である。
【
図6】同製造装置の拡管工程前のセット完了状態を示す部分拡大垂直縦断面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】同製造装置を用いて拡管を行う際の状態を示す水平断面図である。
【
図9】同製造装置の拡管工程後の状態を示す部分拡大垂直縦断面図である。
【
図10】同製造装置により製造された熱交換器用フィン付き管を曲げ加工する工程を示す斜視図である。
【
図11】同工程を経て製造された熱交換器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施形態を、
図1~
図11を参照しながら、以下に説明する。
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
また、以下の説明において、
図1,8,11の各左側を「前」、同右側を「後」といい、「左右」は前から見た場合の左右をいうものとする。
【0025】
図1は、この発明の実施形態に係る製造装置を用いて製造される熱交換器用フィン付き管を示すものである。
図1に示す通り、熱交換器用フィン付き管(10)は、アルミニウム製のヘアピン状フィン固定用管(11)と、フィン固定用管(11)の左右2つの直管部(11a)の長さ方向(前後方向)に間隔をおいて複数設けられたフィン群(12)とにより構成されている。フィン固定用管(11)の両直管部(11a)における隣り合う2つのフィン群(12)間にそれぞれフィン無し部(13)が設けられている。フィン群(12)は、フィン固定用管(11)の左右2つの直管部(11a)にまたがって前後方向に並列状に固定された複数のアルミニウム製のプレートフィン(14)からなる。
【0026】
図示は省略したが、フィン固定用管(11)の内周面には、管(11)の長さ方向に伸びるとともに管(11)の中心に向かって突出する複数のインナーフィンが、周方向に間隔をおいて管(11)と一体に形成されている。
【0027】
フィン固定用管(11)の屈曲部(11b)は、全体に拡管され、直管部(11a)における屈曲部(11b)側の端部(後端部)のフィン群(12)を構成するプレートフィン(14)が固定されている部分と同径となっている。フィン固定用管(11)の開口側の端部(前端部)のフィン群(12)よりも開口側の部分に、拡管前のフィン固定用管(11)の外径と等しいか或いはこれよりも若干大径である被拘束小径部(17)が形成されている。また、被拘束小径部(17)の両端部には、左右方向外側に向かって拡径されたテーパ部(18)が設けられている。
【0028】
各プレートフィン(14)には、左右2つの管挿通穴(14a)が形成されている。また、各プレートフィン(14)には、各管挿通穴(14a)の周縁から短く突出したカラー(14b)が形成されている。このカラー(14b)の突出長さにより、フィン群(12)におけるプレートフィン(14)のピッチが規定されるようになっている。
フィン固定用管(11)の両直管部(11a)がそれぞれ全てのプレートフィン(14)の両管挿通穴(14a)に通され、フィン固定用管(11)を水、油、空気などの流体圧力を用いて拡管することにより、プレートフィン(14)が両直管部(11a)の周囲に固定されている。
【0029】
図2~
図9は、上記の熱交換器用フィン付き管(10)の製造装置を示すものである。
図示の製造装置は、フィンセット治具(20)と、管クランプ用下ユニット(24)と、管クランプ用上ユニット(25)と、押圧部材(26)とを備えている。
【0030】
フィンセット治具(20)は、前後方向に長い板状ベース(21)と、板状ベース(21)の上に前後方向に所定ピッチ(P1)で並列状に立設された多数のフィン支持プレート(22)を備えている。そして、隣接するフィン支持プレート(22)間が、プレートフィン(14)を挿入するためのフィンセット間隙(23)となされている。
板状ベース(21)は、複数のベースユニット(21A)を前後方向に直列状に並べることにより構成されている。各ベースユニット(21A)の上面のうち左右両縁部を除いた幅中間部に、複数のフィン支持プレート(22)が立設されている。
各フィン支持プレート(22)は、左右に長い方形をしている。各フィン支持プレート(22)の左右方向の長さは、板状ベース(21)の左右方向の幅よりもやや小さくなされている。各フィン支持プレート(22)は、その上縁がプレートフィン(14)の両管挿通穴(14a)の上端とほぼ同じレベルになるような高さを有している。各フィン支持プレート(22)の上縁に、フィン固定用管(11)の直管部(11a)を嵌め入れうる略U字状の切り欠き(22a)が、左右方向に間隔をおいて2つ形成されている。各フィン支持プレート(22)の上縁部は、フィンセット間隙(23)へのプレートフィン(14)の挿入を容易にするために、先端の尖った形状となされている。
【0031】
図3に詳しく示すように、管クランプ用下ユニット(24)は、フィン支持プレート(22)のピッチ(P1)と同一のピッチ(P2)で前後方向に並列状に配されている複数の下プレート(241)と、全ての下プレート(241)の左端どうしおよび右端どうしを連結している左右1対の端部連結壁(242)とを備えている。この管クランプ用下ユニット(24)は、複数の下プレート(241)がそれぞれフィンセット間隙(23)に挿入されるように、板状ベース(21)の上に配置されている。
各下プレート(241)は、その下辺がベースユニット(21A)の左右方向の幅と等しいかそれよりも若干大きい長さを有し、その上辺がフィン支持プレート(22)の左右方向の長さと等しいかそれよりも若干大きい長さを有している。各下プレート(241)の左右各辺は、その下部が垂直となされ、その上部が上辺に向かって左右方向内側に傾斜させられている。各下プレート(241)の高さは、プレートフィン(22)の高さの2分の1程度であって、フィン支持プレート(22)の高さよりもやや低いものとなされている。
各下プレート(241)の上縁に、直管部(11a)を挿通させる貫通穴(27)の下部を形成するための半円形の切り欠き(241a)が形成されている。
左右それぞれの端部連結壁(242)は、下プレート(241)の左右各辺に合わせて、その下部が垂直となされているとともに、その上部が傾斜させられている。
左端部連結壁(242)の下縁に、板状ベース(21)の左縁部に係り合わせられる下方突出状の係合部(242a)が延長状に形成されているとともに、右端部連結壁(242)の下縁に、板状ベース(21)の右縁部に係り合わせられる下方突出状の係合部(242a)が延長状に形成されている。
【0032】
図4および
図5に詳しく示すように、管クランプ用上ユニット(25)は、フィン支持プレート(22)のピッチ(P1)と同一のピッチ(P3)で前後方向に並列状に配されている、管クランプ用下ユニット(24)の下プレート(241)と同数の上プレート(251)と、全ての上プレート(251)の上縁どうしを連結している上部連結壁(252)と、全ての上プレート(251)の左端どうしおよび右端どうしを連結している左右1対の端部連結壁(253)とを備えている。この管クランプ用上ユニット(25)は、各上プレート(251)の下縁が対応する下プレート(241)の上縁に当接するように管クランプ用下ユニット(24)の上に配置されている。
各上プレート(251)は、横長方形状のものであって、フィン支持プレート(22)の左右方向の長さと等しいかそれよりも若干大きい長さを有している。各上プレート(251)の高さは、プレートフィン(14)の高さの2分の1程度である。
各上プレート(251)の下縁に、直管部(11a)を挿通させうる貫通穴(27)の上部を形成するための半円形の切り欠き(251a)が形成されている。管クランプ用上ユニット(25)が管クランプ用下ユニット(24)の上に配置されることにより、上下プレート(251)(241)の各左右2つの切り欠き(251a)(241a)によって、フィン固定用管(11)の直管部(11a)を挿通しうる左右2つの円形の貫通穴(27)が形成される。これらの貫通穴(27)の内径は、拡管前のフィン固定用管(11)の外径以上の大きさとなされるが、好適には、拡管時の管(11)の破裂を確実に防止するために、フィン固定用管(11)の外径+約0.4mm以下となされる。
上部連結壁(252)は左右に長い水平状のものであり、左右それぞれの端部連結壁(253)は、垂直状のものである。上部連結壁(252)の左右両端部には、左右方向外方に向かって伸びる水平突出部(252a)が延長状に形成されている。上部連結壁(252)の上面には、左右方向の長さの中央部に、上プレート(251)の並列方向(前後方向)に沿ってフィン支持プレートのピッチ(P1)と同一のピッチ(P4)で複数の下歯(254)が形成されている。
【0033】
詳しい図示は省略したが、管クランプ用下ユニット(24)および管クランプ用上ユニット(25)としては、下プレート(241)および上プレート(251)の数、言い換えれば、上下ユニット(25)(24)の前後方向の幅が異なる複数組が用意される。そして、製造すべきフィン付き管(10)のフィン無し部分(13)の長さに応じて、所要の組の管クランプ用下ユニット(24)および管クランプ用上ユニット(25)が選択的に使用される。具体的には、上下ユニット(25)(24)は、それぞれの前後幅が10~70mm程度となる範囲内で、複数組が用意される。また、2組以上の上下ユニット(25)(24)を同時に使用することも可能であり、例えば、長さ80mm程度のフィン無し部分(13)をクランプする場合、前後幅10mmの上下ユニット(25)(24)と、前後幅70mmの上下ユニット(25)(24)とを組み合わせて使用してもよい。
【0034】
図4等に示すように、押圧部材(26)は、前後方向にのびる板状のものであって、その下面側に、管クランプ用上ユニット(25)を上プレート(251)の並列方向(前後方向)に位置調整可能に保持しうる保持部(26a)を有している。
押圧部材(26)の下面に、上部連結壁(252)上面の下歯(254)と噛み合わせられる上歯(411)が押圧部材(26)の全長にわたって形成されている。上歯(411)は、押圧部材(26)下面の左右幅中央部に取り付けられたラック(41)の下面の歯によって形成されている。ラック(41)は、前後方向に伸びかつ上辺が下辺よりも長い四角形の横断面を有するものであって、押圧部材(26)下面の左右幅中央部に形成されかつラック(41)の横断面に合致する横断面を有する収容溝(261)に嵌め入れられている。
上歯(411)のピッチ(P5)は、下歯(254)のピッチ(P4)と同一、つまり、フィン支持プレート(22)のピッチ(P1)と同一である。
押圧部材(26)の左右両縁部には、管クランプ用上ユニット(25)の左右両端部を保持する保持枠(42)が、着脱自在に取り付けられている。各保持枠(42)は、前後に長い垂直壁(421)と、垂直壁(421)の下縁から左右方向内方に短くのびた下部水平壁(422)とを有する横断面L形のものであって、垂直壁(421)の上部が、例えば図示のようなビス(43)によって、押圧部材(26)の左右両縁部に着脱自在に取り付けられている。保持枠(42)の下部水平壁(422)と、押圧部材(26)の下面と、これらの間に位置する保持枠(42)の垂直壁(421)部分とによって、左右方向内方に開口した水平凹溝(44)が形成されている。
そして、管クランプ用上ユニット(25)の上部連結壁(252)上面に設けられた下歯(254)が、押圧部材(26)下面に設けられた上歯(411)のうち前後長さ方向の所要位置にあるものに噛み合わせられるとともに、上記の水平凹溝(44)に、管クランプ用上ユニット(25)の左右各水平突出部(252a)が嵌め込まれることによって、管クランプ用上ユニット(25)が押圧部材(26)に保持されている。つまり、押圧部材(26)の下面側に設けられる保持部(26a)は、ラック(41)の上歯(411)および左右の保持枠(42)によって形成されている。
この押圧部材(26)を下方に移動させることにより、保持部(26a)に保持された管クランプ用上ユニット(25)の各上プレート(251)の下縁が、管クランプ用下ユニット(24)の対応する下プレート(241)の上縁に当接させられて、下方に押圧されるようになっている。
なお、押圧部材(26)の移動手段は、特に限定されないが、例えば、フィンセット治具(20)の板状ベース(21)が上面に設置されたテーブル(図示略)の左右いずれかの側縁部に、押圧部材(26)を、左右方向にのびるアーム(図示略)を介してヒンジ結合し、モータや流体圧シリンダ機構等によって上下に開閉駆動させるようにすればよい。
【0035】
次に、上記の製造装置を用いて熱交換器用フィン付き管(10)を製造する方法の一例を説明する。
【0036】
まず、2つの直管部(11a)を有するアルミニウム製のヘアピン状フィン固定用管(11)と、2つの管挿通用貫通穴(14a)が間隔をおいて形成された多数のアルミニウム製のプレートフィン(14)とを用意する。
そして、各プレートフィン(14)を、上記製造装置における全てのフィンセット間隙(23)のうちフィン群(12)を設けるべき部分に位置しているフィンセット間隙(23)に挿入して配置する。
【0037】
次に、所要数の下プレート(241)を有する管クランプ用下ユニット(24)を、プレートフィン(14)が配置されていないフィンセット間隙(23)に下プレート(24)が挿入されるように、板状ベース(21)上に配置する。このとき、下ユニット(24)の左右端部連結壁(242)の下方突出部(242a)が、板状ベース(21)の左右縁部に係り合わせられる。
【0038】
次いで、フィン固定用管(11)の両直管部(11a)を、各プレートフィン(14)の両管挿通穴(14a)に通すとともに、各フィン支持プレート(22)の両切り欠き(22a)内に嵌め入れて、両直管部(11a)に、これらにまたがる複数の並列状プレートフィン(14)からなるフィン群(12)と、フィン無し部分(13)とを設ける。
【0039】
次いで、所要数の上プレート(251)を有する管クランプ用上ユニット(25)が保持部(26a)によって管クランプ用下ユニット(24)に対応する位置に保持されている押圧部材(26)を、上方の待機位置から下方に移動させると、管クランプ用上ユニット(25)が、各上プレート(251)の下縁が対応する下プレート(241)の上縁に当接するように管クランプ用下ユニット(24)の上に配置され、この状態で押圧部材(26)により下方に押圧される。また、これにより、上下プレート(251)(241)の両切り欠き(251a)(241a)によって形成された両貫通穴(27)に、フィン固定用管(11)の両直管部(11a)が通された状態となる。
また、
図8に示すように、フィン固定用管(11)の屈曲部(11b)を、拘束用金型(28)により拘束する。この拘束用金型(28)は、横断面円形でかつU字状のキャビティ(29)を有している。キャビティ(29)の内径は、拡管前のフィン固定用管(11)の外径よりも大きくかつプレートフィン(14)の管挿通穴(14a)の内径と等しくなされている。さらに、フィン固定用管(11)の両端部を管チャック金型(31)により拘束するとともに、管チャック金型(31)に流体圧シールブロック(32)を密に接続する。管チャック金型(31)は、左右方向に間隔をおいて形成されかつ拡管前のフィン固定用管(11)の外径と等しい内径を有する2つの円筒状拘束部(33a)と、各円筒状拘束部(33a)の両端に連なって設けられ、かつ左右方向外方に向かって拡径された2つのテーパ部(33b)と、テーパ部(33b)の大径端部に連なって設けられ、かつプレートフィン(14)の管挿通穴(14a)の内径以上の内径を有する短円筒状の拡管許容部(33c)とよりなるキャビティ(33)を有している。流体圧シールブロック(32)には、左右方向に間隔をおいて2つの流体導入路(34)が形成されている。流体導入路(34)の左半部は拡管前のフィン固定用管(11)の外径よりも小さい。また、流体導入路(34)の右半部には、段部を介して大径部(34a)が形成されている。大径部(34a)の内径は管チャック金型(31)の拡管許容部(33c)の内径と等しくなっている。そして、フィン固定用管(11)の端部が、流体圧シールブロック(32)の流体導入路(34)の大径部(34a)内に挿入され、その端面が上記段部に密に当接させられている。
【0040】
そして、この状態で、フィン固定用管(11)内に、流体圧シールブロック(32)の流体導入通路(34)から、たとえば水、油、空気などからなる圧力流体を導入し、フィン固定用管(11)を、管チャック金型(31)の拘束部(33a)により拘束された部分を除いて拡管させ、それによって、各フィン群(12)のプレートフィン(14)を、フィン固定用管(11)の両直管部(11a)の周囲に固定する。
こうして、
図1に示す熱交換器用フィン付き管(10)が製造される。
【0041】
上記の製造方法によれば、フィン固定用管(11)における両直管部(11a)のフィン無し部分(13)が、管クランプ用上下ユニット(25)(24)の上下プレート(251)(241)によってクランプされた状態で拡管が行われるので、拡管によるフィン無し部分(13)の破裂が確実に防止される。また、上記方法によれば、圧力流体により拡管が行われるので、フィン固定用管(11)の内部に形成されたインナーフィンの潰れが防止される。
【0042】
上記の熱交換器用フィン付き管(10)から熱交換器(1)を製造するに当たっては、
図10に示すように、フィン付き管(10)の両直管部(11a)を、隣り合うフィン群(12)間のフィン無し部分(13)において曲げることにより、全体として蛇行状に形成する。こうして、
図11に示すように、冷蔵庫や冷蔵ショーケースなどの蒸発器として用いられる熱交換器(1)が製造される。
この熱交換器(1)は、蛇行状に屈曲されたフィン固定用管(11)からなる蛇行状熱交換管(2)と、蛇行状熱交換管(2)の各直管部(2a)の周囲に設けられかつ複数の並列状プレートフィン(14)からなるフィン群(12)とを備えている。蛇行状熱交換管(2)における左右両側の複数の屈曲部(2b)は、それぞれフィン無し部分(13)からなる。
なお、図示は省略したが、蛇行状熱交換管(2)における左右両側の複数の屈曲部(2b)は、それぞれ側板により保持されている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明は、例えば冷蔵庫や冷蔵ショーケース等の冷却装置の蒸発器として用いられる熱交換器を形成するための熱交換器用フィン付き管を製造する際に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
(1):熱交換器
(10):熱交換器用フィン付き管
(11):フィン固定用管
(11a):直管部
(12):フィン群
(13):フィン無し部分
(14):プレートフィン
(14a):管挿通穴
(20):フィンセット治具
(21):板状ベース
(22):フィン支持プレート
(23):フィンセット間隙
(24):管クランプ用下ユニット
(241):下プレート
(241a):切り欠き
(242):端部連結壁
(242a):係合部
(25):管クランプ用上ユニット
(251):上プレート
(251a):切り欠き
(252):上部連結壁
(253):端部連結壁
(254):下歯
(26):押圧部材
(26a):保持部
(27):貫通穴
(411):上歯
(42):保持枠